説明

高屈折率の感圧性接着剤

本発明は、少なくとも1.50の屈折率を有する感圧性接着剤を提供する。感圧性接着剤は、置換又は非置換ビフェニル基を含有する少なくとも1つのモノマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧性及び熱活性化接着剤に関する。より具体的には、本発明は、高屈折率を有する接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧性接着剤(「PSA」)は本明細書では、室温において永久的粘着を示す接着剤であると定義される。この特性により、感圧性接着剤は、軽い指の圧力のみで適用したときにしっかりと接着する。PSAは、接着性、粘着性、伸張度、及び弾性などの特性のバランスがとれている。接着は、表面への即時の接着、及び圧力をかけた際に発現する固着強度(「剥離強度」として測定されることが多い)の両方を指す。粘着は、「剪断強度」、又は剪断力を受けたときの適用されたPSAの破壊に対する抵抗を指す。伸張度は、低応力下での伸長する能力を指す。弾性は、材料が伸張されたときに収縮力を示し、力が解放されたときに収縮する特性を指す。
【0003】
熱活性化接着剤(「HA」)は本明細書では、室温においては非粘着性であるが、高温では一時的に粘着性になり、基材に固着することができる接着剤であると定義される。この活性化温度以上になると、HAはPSAと同じ特徴、即ち接着性、粘着性、伸張度、及び弾性を有する。これらの接着剤は、通常、室温を超えるT又は融点(T)を有する。温度がT又はTを超えて上昇すると、貯蔵弾性率は通常低下し、接着剤は粘着性になる。
【0004】
感圧性及び熱活性化の接着剤は、光学製品における用途を含む多くの様々な用途を有する。特定の光学用途では、接着剤の屈折率(RI)を、それが適用される基材の屈折率と一致させるのが有用である。屈折率のこの一致は、グレア及び反射を低減することにより、構造体の光学特性を高める。グレアは本明細書では、450〜650ナノメートルの範囲を超える平均反射として定義され、反射は本明細書では、表面上に入射する放射束の一部が、基部がその表面であり入射放射線を含む同じ半球内に戻るプロセスとして定義される(光学ハンドブック(Handbook of Optics)、第2版、マッグロー・ヒル社、1995年参照)。基材は、1.48〜1.65の範囲の屈折率を有する高分子材料であることが多く、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)は1.489のRIを有し、ポリカーボネートは1.585のRIを有し、ポリエチレンテレフタレート(PET)は1.64のRIを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
典型的なPSA及び熱活性化接着剤は、約1.47以下の屈折率を有する。これらのPSAが光学用途に使用される場合、グレア及び反射が起こり得る。したがって、高屈折率を有する接着剤に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1.50の屈折率を有する接着剤を提供する。これらの感圧性及び熱活性化接着剤は、基材、即ち被着体が、同じように高屈折率を有する光学用途に特に好適である。本発明の感圧性接着剤は、有利にも、グレア及び反射を低減させる屈折率の一致を可能にする。
【0007】
多くの実施形態において、本発明は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%の光学透過率値を有する、光学的に透明な接着剤を更に提供する。用語「光学透過率値」とは、光源に戻るように反射しない、又はフィルムによって吸収されない、光の割合(550nmの波長での総入射光線における割合(放射光線/光源×100))を意味する。接着剤は、2%未満、好ましくは1%未満のヘイズを更に有する。
【0008】
本発明の接着剤は、置換又は非置換ビフェニル基を含有する少なくとも1つのモノマーを含む。本発明の一態様は、相互重合された(a)(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーと(b)置換又は非置換ビフェニル基を含有する少なくとも1つのモノマーとの反応生成物を含む感圧性接着剤である。本明細書で使用するとき、用語「(メタ)アクリル」又は「(メタ)アクリレート」は、アクリル及びメタクリル(又はアクリレート及びメタクリレート)の両方を含む。
【0009】
本発明の別の態様は、相互重合された(a)少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステルモノマーと(b)置換又は非置換ビフェニル基を含有する少なくとも1つのモノマーと(c)酸官能性モノマーを含有する少なくとも1つとの反応生成物を含む感圧性接着剤である。
【0010】
本発明の更に別の態様は、相互重合された(a)少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステルモノマーと(b)置換又は非置換ビフェニル基を含有する少なくとも1つのモノマーと(c)所望により、少なくとも1つの酸官能性モノマーと(d)構成要素(a)、(b)及び(c)のモノマーと共重合可能である、少なくとも1つの非酸含有極性モノマーとの反応生成物を含む感圧性接着剤である。
【0011】
本発明の感圧性接着剤は、所望により、その他のモノマー、架橋剤、及びその他の添加剤を含んでもよい。
【0012】
本発明の別の実施形態は、本発明の感圧性接着剤でコーティングされた基材である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、少なくとも1.50の屈折率を有する接着剤に関する。好ましくは、接着剤は、少なくとも1.54の屈折率を有する。
【0014】
本発明の感圧性接着剤は、高屈折率を有し、更に、感圧性接着剤に関連する4つの特性、即ち接着性、粘着性、伸張度、及び弾性の良好なバランスを保つ。本接着剤は、使用温度にてダルキスト(Dahlquist)基準(感圧性接着剤技術ハンドブック(Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology)、D.サタス(D. Satas)、第2版、172頁(1989年)に記載)を満たす。この基準は、良好な感圧性接着剤を、1×10−6cm/ダインを超える1秒クリープコンプライアンスを有するものとして定義する。あるいは、弾性率は1次近似まではコンプライアンスの逆数であるため、感圧性接着剤は100kPa(1×10ダイン/cm)未満の剪断率を有する接着剤として定義され得る。
【0015】
屈折率は本明細書では、材料(例えば、モノマー又は重合されたその生成物)の絶対屈折率として定義され、これは、自由空間における電磁放射線の速度とその材料における放射線の速度との比として理解され、放射線は、約583.9ナノメートル(nm)の波長での黄ナトリウム灯である。屈折率は、既知の方法を使用して測定でき、一般にアッベ屈折計(Abbe Refractometer)を用いて測定される。
【0016】
本発明の感圧性接着剤は、少なくとも1つのビフェニルモノマーを含む(メタ)アクリレート接着剤である。感圧性接着剤は、非三級アルコールの少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステル、少なくとも1つ以上の酸官能性モノマー、及び任意に、1つ以上の非酸官能性極性モノマーを含む。本発明の感圧性接着剤は、所望により、接着剤の物理的特性を改善するために添加し得る、架橋剤などのその他のモノマー、及び粘着付与剤又は可塑剤などのその他の添加剤を含む。
【0017】
本発明の感圧性接着剤に有用な(メタ)アクリルモノマーは、通常、100重量部の総モノマーに対して約5〜約95重量部、好ましくは10〜90重量部の範囲で存在する。有用なアクリルモノマーは、非三級アルキルアルコールの単量体のアクリル又はメタクリル酸エステル、約1〜約12の炭素原子、好ましくは約4〜約8の炭素原子を含むもののアルキル基、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む。
【0018】
好適な(メタ)アクリルエステルモノマーには、1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−メチル−1−ブタノール、1−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、及びこれらの混合物などの非三級アルキルアルコールを有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルからなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。このような単量体のアクリル又はメタクリルエステルは、当該技術分野において既知であり、市販されている。
【0019】
好ましくは、アクリレートモノマーは、得られる接着剤に低ガラス転移温度(T)を付与するように選択される。このモノマーは、ホモポリマーの関数として測定されたとき、通常、0℃未満、より好ましくは−20℃未満のTを有する。感圧性接着剤技術ハンドブック(Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology)、D.サタス(D. Satas)、第2版、399頁(1989年)を参照することができる。
【0020】
ビフェニルモノマーは、高屈折率のアクリルモノマーであり、好ましくはそれら全ては70℃以下のホモポリマーガラス転移温度を有する。これらのビフェニルモノマーは、単独で重合されたとき、又は他のアクリルモノマーの存在下で重合されたとき、他の方法で得られるよりも高いRIを有するPSAをもたらす。モノマーの比率を調整することにより、少なくとも1.50のRIを有するPSAを作製することが可能である。通常、接着剤は、100重量部の総モノマーに対して、95〜約5重量部、好ましくは90〜10重量部のビフェニルモノマーを含む。
【0021】
本発明の芳香族モノマーは、以下の一般式:
【0022】
【化1】

【0023】
により表され、
式中、
及びX刃それぞれ独立して、−O−、−S−、又は−NR−であり、RはH又はC〜Cアルキル、好ましくはX及びXはそれぞれ−O−であり、
は、1以上のエーテル酸素原子及び1以上のペンダントヒドロキシ基を任意に含有する1〜8炭素のアルキレンであり、
nは0〜3であり、
はH又はCHのいずれかである。
【0024】
特定の好ましい実施形態では、Rは1〜8炭素のアルキレン、即ち−CaH2a−であり、aは1〜8である。他の実施形態では、Rは1以上のカテナリーエーテル酸素原子、例えば、−C2b−O−C2c−を含有してもよく、b及びcは少なくとも1であり、b+cは2〜8である。別の実施形態では、Rは、ペンダントヒドロキシ基、例えば、−C2b−CH(OH)−C2c−を含有してもよく、b及びcは少なくとも1であり、b+cは2〜8である。必要に応じて、ビフェニル基を臭素化して、得られる接着剤の屈折率を高めてもよい。しかしながら、そのような臭素置換は、接着剤のTgをも上昇させ得る。ビフェニル環は、0〜2の臭素原子を有してよく、典型的には、オルト位及び/又はパラ位の臭素原子はX基に置換される。
【0025】
が6〜8である式Iの化合物は、新種であると考えられている。これらの化合物が、R≦が4以下の同族体よりもかなり低いTを有し、なお高屈折率を維持し、したがって高屈折率のPSAとして有用であることが、更にわかっている。任意に、ホモポリマー及びコポリマーを必要に応じて可塑剤及び粘着付与剤とブレンドしてもよい。
【0026】
ドナタス・サタス(Donatas Satas)の感圧性接着剤ハンドブック(Handbook of Pressure Sensitive Adhesives)、第1版、ファン・ノストランド・レインホルド(Von Nostrand Rheinhold)、ニューヨーク、1982年によると、「ガラス転移温度は、室温におけるポリマー剛性の正確な測定値でもなく、感圧特性の正確な測定値でもない。感圧性接着剤用途に対するポリマーの適合性を予測し、コポリマー特性に対するコモノマーの効果を予測するのは、簡単で便利な方法である。」
nが0である式Iのビフェニル含有モノマーは、(メタ)アクリロイル化合物(エステル又は酸ハロゲン化物など)と求核性−XH基を有するビフェニル化合物との単純な縮合によって調製され得る。nが1〜3である式Iの化合物は、求核性−XH基を有するビフェニル化合物を式Z−R−XHの化合物(Zは、ハロゲン化物などの離脱基である)でまずアルキル化し、続いて(メタ)アクリロイル化合物と縮合する、2段階の合成によって調製され得る。
【0027】
【化2】

【0028】
式Iのビフェニルモノマーを調製する他の方法は、当業者には明らかであろう。例えば、nが2である式Iのモノマーは、求核性−XH基を有するビフェニル化合物をエチレンカーボネートと反応させ、続いて(メタ)アクリロイル化合物と縮合させることよって調製され得る。
【0029】
接着剤ポリマーは、酸官能性モノマーを含んでもよく、ここで酸官能基は、本質的に酸、例えばカルボン酸、又はその塩、例えばアルカリ金属カルボン酸塩であり得る。有用な酸官能性モノマーとして、エチレン系不飽和カルボン酸、エチレン系不飽和スルホン酸、エチレン系不飽和ホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されたものが挙げられるが、これらに限定されない。このような化合物の例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されたものが挙げられる。
【0030】
それらの入手可能性のため、本発明の酸官能性モノマーは一般に、エチレン性不飽和カルボン酸、すなわち(メタ)アクリル酸から選択される。更にはより強酸を所望の場合、酸性モノマーとしては、エチレン性不飽和スルホン酸及びエチレン性不飽和ホスホン酸が挙げられる。酸官能性モノマーは存在する場合、一般に、100重量部の総モノマーを基準として1〜15重量部、好ましくは1〜10重量部の量で使用される。電子装置用途などのいくつかの実施形態では、酸官能性モノマーは、そのような装置の性能に悪影響を及ぼすので、存在しない。
【0031】
接着剤コポリマーは、感圧性接着剤の粘着強度を高めるために、酸官能性モノマーを除く他の極性モノマーを更に含んでもよい。有用な極性モノマーには、アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクタム、及びN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な例には、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートなど、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
好ましい非酸極性モノマーには、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びこれらの混合物が挙げられる。概して、非酸極性モノマーは通常、100重量部の総モノマーを基準にして、約0〜約12重量部、好ましくは約2〜約8重量部の範囲で存在する。
【0033】
大幅に性能を高めコストを減らすなどのために、感圧性接着剤を非粘着性にしないその他のビニルモノマーを添加してもよい。使用されるとき、接着剤コポリマーに有用なビニルモノマーは、ビニルエステル(例えば、ビニルアセテート及びビニルプロピオネート)、スチレン、置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン)、及びこれらの混合物が挙げられる。そのようなビニルモノマーは一般に、100重量部の総モノマーを基準として0〜5重量部、好ましくは1〜5重量部で使用される。
【0034】
モノマーの共重合可能な混合物は、連鎖移動剤を更に含んで、得られるコポリマーの分子量を制御してもよい。有用な連鎖移動剤の例には、アルコール、メルカプタン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい連鎖移動剤は、イソオクチルチオグリコレートである。混合物は100重量部の総モノマー混合物を基準として、約0.5重量部まで、使用する場合は典型的には約0.01〜約0.5重量部、好ましくは約0.05重量部〜約0.2重量部の連鎖移動剤を更に含んでもよい。
【0035】
ポリ(メタ)アクリレート感圧接着剤の貼着力を増大させるために、架橋剤を接着剤組成物中へ組み込んでよい。主たる2つのタイプの化学架橋剤は、代表的なものである。第一の架橋添加剤は、多官能アジリジン、イソシアネート、オキサゾール及びエポキシ化合物などの熱架橋剤である。アジリジン架橋剤の一例は、1,1’−(1,3−フェニレンジカルボニル)−ビス−(2−メチルアジリジン)(CAS番号7652−64−4)である。その他のビスアミド架橋剤は、米国特許第6,893,718号(メランコン(Melancon)ら)に記載されている。一般的な多官能性イソシアネート架橋剤は、トリメチロールプロパントルエンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、及び当該技術分野において既知のその他のものである。このような化学架橋剤は、重合後に溶剤系PSAに加えて、コーティングされた接着剤のオーブン乾燥中に、熱によって活性化することができる。
【0036】
ビスアミド架橋剤は、式
【0037】
【化3】

【0038】
ここで、
各Rは独立して、H及びC2n+1からなる群から選択され、
nは、1〜5の範囲の整数であり、
は、フェニル、置換フェニル、トリアジン、及び−C2m−(式中、mは1〜10の範囲の整数)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される二価のラジカルである。
【0039】
本発明にて有用な多官能オキサゾリン架橋剤は、2−オキサゾリン、2−オキサジン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される基を、1分子当たり2つ以上含有するようなものである。好ましい1,3−オキサジル複素環式化合物は、1,3−オキサゾリンであり、特に好ましい1,3−オキサゾリンは、2−フェニル−2−オキサゾリンである。ビスオキサゾリンは、典型的には、ポリカルボン酸から誘導され、このようなポリカルボン酸としては、芳香族酸、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、5−t−ブチルイソフタル酸、トリメシン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(1,2,4,5-benezenetetracarboxylic acid)及び2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいポリカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸及びトリメシン酸が挙げられる。
【0040】
本発明にて有用な多官能性1,3−オキサジル複素環式化合物は、対応する、ポリカルボン酸エステル及びアルカノールアミンエステルの反応により、都合よく調製することができる。ビスオキサゾリンを含むポリ(1,3−オキサジル複素環式)化合物の非限定例は、以下の式IIIによって表される核を有するようなものであり、
【0041】
【化4】

【0042】
式中、Aは、1個〜20個の炭素原子を有する、環式若しくは非環式脂肪族又は置換環式若しくは非環式脂肪族部分、あるいは6個〜20個の炭素原子を有する、芳香族(アリール)モノ−若しくは多核又は脂肪族置換アリール残基、及び約2〜200,000の反復単位を含むポリマー若しくはオリゴマー残基からなる群から選択され、
は独立して、H、CH、CHCH、又はCを表し、
及びRは独立して、H又はCHを表し、好ましくはR及びRは両方共にCHとなることはなく、
xは、整数0又は1を表し、
nは2以上の整数、好ましくは2又は3である。
【0043】
有用な多官能オキサゾリン架橋剤としては、4,4’−5,5’−テトラヒドロ−2,2’−ビスオキサゾール(即ち、2,2’−ビス(2−オキサゾリン));2,2’−(アルカンジイル)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]、例えば、2,2’−(1,4−ブタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]及び2,2’−(1,2−エタンジイル)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール];2,2’−(アリーレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]、例えば、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール];2,2’−(1,5−ナフタレニル)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]及び2,2’−(1,8−アントラセニル)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール];スルホニル、オキシ、チオ又はアルキレンビス2−(アリーレン)[4,5−ジヒドロオキサゾール]、例えば、スルホニルビス2−(1,4−フェニレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]、オキシビス2−(1,4−フェニレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]、チオビス2−(1,4−フェニレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール]及びメチレンビス2−(1,4−フェニレン)ビス[4,5−ジヒドロオキサゾール];2,2’,2’’−(アリーレントリス[4,5−ジヒドロオキサゾール]、例えば、2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレントリス[4,5−ジヒドロオキサゾール];2,2’,2’’,2’’’−(アリーレンテトラ[4,5−ジヒドロオキサゾール]、例えば、2,2’,2’’,2’’’−(1,2,4,5−フェニレンテトラ[4,5−ジヒドロオキサゾール]並びに末端オキサゾリン基を有するオリゴマー及びポリマー材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
典型的に、このような架橋剤は、45.4kg/時間(100pph)の接着剤コポリマーにつき、約22.7〜453.6グラム/時間(約0.05〜1.0pph)の架橋剤の量(固体で)で使用される。
【0045】
別の実施形態では、フリーラジカルを利用して架橋反応を行う化学架橋剤を用いてもよい。例えば、過酸化物などの試薬は、フリーラジカル供給源として機能する。十分に加熱した場合、これら前駆体は、ポリマーの架橋反応を生じさせるフリーラジカルを水素引き抜きにより発生させる。一般的なフリーラジカル発生試薬は、過酸化ベンゾイルである。フリーラジカル発生剤はほんの少量のみ必要であるが、架橋反応を達成させるためには、一般にはビスアミド試薬に要求される温度よりも高い温度を必要とする。
【0046】
第二のタイプの化学架橋剤は、高強度の紫外線(UV)光によって活性化される感光性架橋剤である。アクリル系PSAに使用される2つの汎用の感光性架橋剤は、ベンゾフェノン、及び米国特許第4,737,559号に記載されているような共重合可能な芳香族ケトンモノマーである。溶液ポリマーに後から添加(post-added)し、紫外線によって活性化することができる別の光架橋剤は、トリアジン、例えば2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−s−トリアジンである。これらの架橋剤は、中圧水銀ランプ又はUVブラックライトなどの人工光源から発生する紫外線光によって活性化する。
【0047】
多官能アクリレートなどのポリエチレン性不飽和化合物は、バルク又はエマルション重合プロセスにおける架橋剤として有用である。ポリエチレン性不飽和化合物の例としては、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ビスフェノール−Aジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジ−、トリ−及びテトラアクリレート、並びに1,12−ドデカンジオールジアクリレートなどのポリアクリル官能性モノマー;アリルメタクリレート、2−アリルオキシカルボニルアミドエチルメタクリレート及び2−アリルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのオレフィン性アクリル官能性モノマー;アリル2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテート;ジビニルベンゼン;2−(エテニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(エチニルオキシ)−1−プロペン、4−(エチニルオキシ)−1−ブテン、及び4−(エテニルオキシ)ブチル−2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテートなどのビニルオキシ基置換官能性モノマー、並びにその類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
ポリエチレン性不飽和架橋剤は、100重量部の接着剤コポリマー固形物を基準にして、通常、0.05〜約1重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部で存在する。
【0049】
架橋はまた、δ放射線又は電子線放射線などの高エネルギー電磁放射線を使用して達成してもよい。この場合、追加の架橋剤は必要とされなくてよい。
【0050】
共重合に続いて、その他の添加剤が、得られるアクリレート又はメタクリレートのコポリマーとブレンドされてもよい。例えば、PSAの最終的な粘着及び剥離特性を最適化するのを助けるために、相溶性のある粘着付与剤及び/又は可塑剤が添加されてもよい。このような粘着付与剤の使用は、感圧性接着剤技術ハンドブック(Handbook of Pressure-Sensitive Adhesive Technology)、ドナタス・サタス編(1982年)に記載されるように、当該技術分野において一般的である。
【0051】
有用な粘着付与剤の例には、ロジン、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、クマロンインデン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の接着剤に添加することができる可塑剤は、多種多様の市販材料から選択され得る。
【0052】
代表的な可塑剤には、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ジアルキルアジパート、2−エチルへキシルジフェニルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジ−(2−エチルへキシル)アジパート、トルエンスルホンアミド、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリオキシプロピレンアリールエーテル、ジブトキシエトキシエチルホルマール、及びジブトキシエトキシエチルアジパートが挙げられる。使用されるとき、粘着付与剤は、好ましくは、100重量部のコポリマーにつき約50重量部を超えない量で添加され、可塑剤は、100重量部のコポリマーにつき約50重量部までの量で添加されてよい。
【0053】
好ましくは、添加された粘着付与剤及び/又は可塑剤はどれも、少なくとも1.50の屈折率を有し、その結果、それらを組み込むことは、感圧性接着剤の屈折率を下げない。可塑剤ハンドブック(Handbook of Plasticizers)、ジョージ・ヴィピフ(George Wypych)編、ケムテック出版(ChemTec Publishing)、トロント−スカーボロ、オンタリオ州、カナダ、ISBN1−895198−29−1、及びアンナ・ヴィピフ(Wypych, Anna)の可塑剤データベース(Plasticizers Database)(第2電子版)、ケムテック出版を参照してもよい。オンライン版は
http://www.knovel.com/knovel2/Toc.jsp?BookID=976&VerticalID=0
で入手可能である。
【0054】
有用な高屈折率の可塑剤には、芳香族ホスフェートエステル、フタレート、安息香酸エーテル、芳香族スルホンアミド、及びいくつかのロジンが挙げられる。ホスフェートエステル及びフタレートが好ましい。代表的な可塑剤にはジエチレングリコールジベンゾエート(1.5424 n25/D)、4−(tert−ブチル)フェニルジフェニルホスフェート(1.555 n25/D)、トリメチルフェニルホスフェート(1.5545 n25/D)、トリフェニルホスフェート(1.5575 n25/D)、フェニルメチルベンゾエート(1.56 n25/D)、ジエチレングリコールジベンゾエート(1.5424 n25/D)、ブチルベンジルフタレート(1.537 n25/D)、ロジンのメチルエステル(1.531 n20/D)、アルキルベンジルフタレート(1.526 n25/D)、ブチル(フェニルスルホニル)アミン(1.525 n20/D)、ベンジルフタレート(1.518 n25/D)、トリメチルトリメリテート(1.523 (n20/D)、及び2−エチルへキシルジフェニルホスフェート(1.51 (n20/D))が挙げられる。
【0055】
更に、光学用途では、粘着付与剤、可塑剤、及びその他の添加剤は、低色度、即ち3未満、好ましくは1未満のガードナー(Gardner)値を有するべきである。更に、可塑剤は、ポリマーマトリックス及び重合媒体と相溶性、即ち混和性であるように選択されるべきである。
【0056】
接着剤組成物の性能を向上させるために、他の添加剤を加えることができる。例えば、レべリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、酸素阻害剤、湿潤剤、レオロジー変性剤、消泡剤、殺生物剤、染料、顔料などをこれに包含することができる。これらの添加剤及びその使用のすべてが、当該技術分野において周知である。これらの化合物のいずれも、それらが接着特性及び光学特性に悪影響を及ぼさない限り使用できることが理解される。
【0057】
UV吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤も本組成物に対する添加剤として有用である。UV吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤は、最終硬化製品への紫外線の有害な影響を減少させるように作用し、それによりコーティングの亀裂、黄変及び層間剥離に対する耐候性すなわち耐性を強化させる。好ましいヒンダードアミン光安定剤は、ニューヨーク州ホーソーン(Hawthorne)のチバ・ガイギー社(CIBA-GEIGY Corporation)からチヌビン(Tinuvin)(商標)144として入手可能なビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]ブチルプロパンジオエートである。
【0058】
総モノマー組成物の5重量部未満の濃度である以下のUV吸収剤及びこれらの組み合わせは、望ましい結果を生じ得る:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル1−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ブチルプロパンジオエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−ヒドロキシル−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、α−(3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシルフェニル)−1−オキソプロピル)−ω−ヒドロキシ、及びBASFワイアンドット社(BASF Wyandotte Inc.)(ニュージャージー州、パーシッパニー(Parsippany))から販売されるユビナール(Uvinul)(登録商標)D−50及びMS−40。しかし、UV吸収剤の濃度は、組成物の総重量に対し1〜5%の範囲内が好ましい。
【0059】
本明細書の接着剤コポリマーは、任意の従来のフリーラジカル重合法により調製してもよく、これには溶解、放射、バルク、分散、乳化、及び懸濁プロセスが含まれる。光学用途では、溶解、UV、及びバルクプロセスが好ましい。その他のプロセスは、複屈折、又は光学特性に影響を及ぼし得る異物を取り込む可能性がある。
【0060】
接着剤コポリマーは懸濁重合により調製してもよく、これは米国特許第3,691,140号(シルバー(Silver))、同第4,166,152号(ベイカー(Baker)ら)、同第4,636,432号(シバノ(Shibano)ら)、同第4,656,218号(キノシタ(Kinoshita))、及び同第5,045,569号(デルガード(Delgado))に開示されている。好ましくは、(メタ)アクリレートコポリマーは、フリーラジカル反応開始剤の存在下においてエマルション重合プロセスにより調製される。
【0061】
本発明に使用される(メタ)アクリレート接着剤コポリマーの調製に有用な水溶性及び油溶性反応開始剤は、熱に暴露するとモノマー混合物の(共)重合を開始するフリーラジカルを生成する反応開始剤である。水溶性反応開始剤は、エマルション重合により(メタ)アクリレートポリマーを調製するのに好ましい。好適な水溶性反応開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物;上記過硫酸塩とメタ重亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムからなる群から選択されるものなどの還元剤との反応生成物のような酸化還元反応開始剤;並びに4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)及びその可溶性塩(例えば、ナトリウム、カリウム)からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい水溶性反応開始剤は、過硫酸カリウムである。好適な油溶性反応開始剤としては、いずれもE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール社(E.I. du Pont de Nemours Co.)から入手可能な、VAZO64(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル))及びVAZO52(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル))のようなアゾ化合物、過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウロイルなどの過酸化物、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい油溶性熱反応開始剤は、(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル))である。使用する場合、反応開始剤は、モノマー構成成分の100重量部を基準として、約0.05重量部〜約1重量部、好ましくは約0.1重量部〜約0.5重量部で、感圧接着剤中に含まれてよい。
【0062】
エマルション技術による重合は、乳化剤(emulsifier)(乳化剤(emulsifying agent)又は界面活性剤と呼ばれる場合もある)の存在を必要とする場合がある。本発明に有用な乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0063】
好ましくは、エマルション重合は、アニオン性界面活性剤の存在下で行われる。有用な界面活性剤濃度の範囲は、エマルション感圧性接着剤の全てのモノマーの総重量を基準として、約0.5〜約8重量パーセント、好ましくは約1〜約5重量パーセントである。
【0064】
あるいは、コポリマーは、これらに限定されないが、溶媒重合、分散重合、及び無溶媒バルク重合などの従来の技術によって重合されることができる。モノマー混合物は、上述したように、コモノマーを重合させるのに効果的なタイプ及び量の重合開始剤、特に熱反応開始剤又は光反応開始剤を含んでよい。
【0065】
典型的な溶液重合法は、モノマー、好適な溶媒、及び任意の連鎖移動剤を反応槽に加えること、フリーラジカル反応開始剤を添加すること、窒素でパージすること、並びにバッチサイズ及び温度に応じて、反応が完了するまで、典型的には約1〜約20時間、典型的には約40℃〜100℃の範囲の高温に反応槽を維持すること、によって実施される。溶媒の例は、メタノール、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアセテート、エチルアセテート、トルエン、キシレン、及びエチレングリコールアルキルエーテルである。それらの溶媒は、単独で又はそれらの混合物として使用することができる。
【0066】
典型的な光重合法では、モノマー混合物は、光重合開始剤(即ち、光反応開始剤)の存在下で紫外(UV)線を照射してよい。好ましい光反応開始剤には、チバ・スペシャルティ・ケミカル社(Ciba Speciality Chemical Corp.)(ニューヨーク州タリータウン)からイルガキュア(IRGACURE)及びダロキュア(DAROCUR)の商標名にて入手可能なものであり、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア(IRGACURE)184)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア(IRGACURE)651)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(IRGACURE)819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュア(IRGACURE)2959)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン(イルガキュア(IRGACURE)369)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(イルガキュア(IRGACURE)907)、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア(DAROCUR)1173)が挙げられる。特に好ましい光反応開始剤は、イルガキュア(IRGACURE)819、651、184、及び2959である。
【0067】
米国特許第4,619,979号及び同第4,843,134号(コトナー(Kotnour)ら)に記載されている連続フリーラジカル重合法などの無溶媒重合法、米国特許第5,637,646号(エリス(Ellis))に記載されているバッチ反応器を使用する実質的に断熱の重合法、及び米国特許第5,804,610号(ヘイマー(Hamer)ら)に記載されている、パッケージ化されたプレ接着剤組成物(pre-adhesive composition)を重合するために記載された方法を使用して、ポリマーを調製することもできる。
【0068】
本発明の接着剤は、接着剤でコーティングされた材料を作るための従来のコーティング技術を使用して、様々な可撓性及び非可撓性の裏材上にコーティングされてもよい。可撓性の基材は、本明細書において、テープ裏材として通常利用される、又はその他の可撓性の材料のものであり得る、任意の材料として定義される。例には、これらに限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)ポリカーボネート、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、及びエチルセルロースなどのプラスチックフィルムが挙げられる。非可撓性の基材の例には、これらに限定されないが、金属、金属化高分子フィルム、酸化インジウムスズコーティングされたガラス及びポリエステル、PMMA板、ポリカーボネート板、ガラス、又はセラミックシート材が挙げられる。接着剤コーティングされたシート材は、接着剤組成物と共に利用されることが通常知られている任意の物品、例えばラベル、テープ、張り紙、カバー、マーキングインデックス、ディスプレイコンポーネント、タッチパネルなどの形態をとり得る。
【0069】
上記組成物は、特定の基材に適するように調整された従来のコーティング技術を使用して基材にコーティングされる。例えば、これらの組成物は、ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、及びダイコーティングなどの方法によって様々な固体基材に塗布することができる。これらの種々のコーティング法は、組成物を可変の厚さで基材に設置することを可能にし、それにより組成物をより広い範囲で使用することを可能にする。コーティング厚さは変えられてもよいが、2〜500マイクロメートル(乾燥厚さ)、好ましくは約25〜250マイクロメートルのコーティング厚さが意図される。
【0070】
接着剤エマルション(接着剤コポリマー及び水を含有する)は、続くコーティングのために任意の所望の濃度のものであってよいが、典型的には30〜70重量%が水、より典型的には50〜65重量%が水である。エマルションを更に希釈することにより、又は一部乾燥することにより、所望の濃度を得ることができる。
【実施例】
【0071】
本発明は、以下の非限定例及び試験方法を参照して更に説明される。部、パーセント、及び比はすべて、特に明記されていない限り重量基準である。
【0072】
調製例1
6−(ビフェニル−2−イルオキシ)−へキサン−1−オルの合成
2リットルの3つ口丸底フラスコに、2−ヒドロキシビフェニル(100g)、水(635g)、ヨウ化ナトリウム(8.8g)、及び水酸化ナトリウム(水中50%、94g)を加えた。この混合物を攪拌しながら100℃まで過熱した。これに6−クロロ−1−ヘキサノール(160.5g)を約1時間にわたって滴下して加えてから、更に3時間、100℃で加熱した。ガスクロマトグラフィーは、2%未満の残留出発物質を示した。反応混合物を室温まで冷却し、エチルアセテート(900g)を加え、水相を除去した。有機相を(25gのHClを含有した500gの)水で洗浄してから、水(500g)で第2の洗浄を行った。溶媒をロータリーエバポレーターで減圧下にて除去した。粗生成物を真空下にて抽出して、まず残留6−クロロヘキサノールを除去し、それからポットが1mmHgで約100℃に達するまで続けた。150gの黄色油が得られた。GCは、6−(ビフェニル−2−イルオキシ)−へキサン−1−オルが95.5%純粋であることを示した。
【0073】
調製例2
アクリル酸6−(ビフェニル−2−イルオキシ)−へキシルエステル(BPHA)の合成
1リットルの3つ口丸底フラスコに、6−(ビフェニル−2−イルオキシ)−へキサン−1−オル(145g)、トルエン(500g)、パラトルエンスルホン酸(5.5g)、アクリル酸(46.4g)、ヒドロキノン(0.06g)、及びヒドロキノンモノメチルエーテル(0.06g)を加える。混合物を加熱して還流させ、ディーンスタークトラップ(Dean-Stark trap)を使用して水共沸混合物を採取した。6時間後、ガスクロマトグラフィーは、<1%未満の出発物質を示した。反応混合物を室温まで冷却し、(10gのHClを含有した200gの)水で洗浄してから、(10gの炭酸ナトリウムを含有した200gの)水、その後(10gのNaClを含有した200gの)水で洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーターで減圧下にて除去して、淡黄色油としてのアクリレートモノマー生成物(101g)を得た。GCは、それが96%純粋であることを示した。生成物モノマーは1.5497の屈折率を有し、ホモポリマーのTは−2℃であった。
【0074】
予備実施例3
8−(ビフェニル−2−イルオキシ)−オクタン−1−オルの合成
基本的に予備実施例1の手順を用いて、2−ヒドロキシビフェニル(40g)、水(250g)、ヨウ化ナトリウム(3.5g)、及び水酸化ナトリウム(水中50%、37.6g)で化合物を調製した。この混合物を攪拌しながら100℃まで加熱し、8−クロロ−1−オクタノール(77.4g)を加えた。生成物は、基本的に予備実施例1のように回収された。
【0075】
予備実施例4
アクリル酸8−(ビフェニル−2−イルオキシ)−オクチルエステル
基本的に予備実施例3の手順を用いて、8−(ビフェニル−2−イルオキシ)−オクタン−1−オル(50g)、トルエン(300g)、パラトルエンスルホン酸(1.7g)、アクリル酸(14.5g)、ヒドロキノン(0.02g)、及びヒドロキノンモノメチルエーテル(0.02g)でモノマーを調製した。このアクリレートモノマーは、1.5438の屈折率を有し、そのホモポリマーは、−13℃のTを有する。
【0076】
重合法
感圧性接着剤は、従来のフリーラジカル重合法及び好適なリビングラジカル重合法によって調製できる。好適な重合法は、溶液重合、懸濁液重合、エマルション重合、及びバルク重合が挙げられる。以下の構成成分が使用された。
【0077】
【表1】

【0078】
溶液重合
全ての構成成分は、120グラムの容量を有するガラスボトル内に、表IIに示される量に計量された。ボトルの内容物を、1分間当たり1リットルの流量にて窒素で5分間パージすることによって脱酸素化した。ボトルを密閉し、本質的に完全な重合をもたらすために60℃の回転水浴に24時間入れた。0.10固形部のビスアミドを架橋剤としてポリマー溶液に更に加えることにより、接着剤フィルムを調製した。25マイクロメートル(およそ1ミル)の乾燥コーティング厚さをもたらすように、37マイクロメートル(1.5ミル)のポリエステルフィルム上にポリマー溶液をコーティングした。70℃のオーブン内で10分間、熱乾燥させた後、コーティングされたフィルムを平衡化し、その後、接着剤試験方法で説明されるように約23℃及び50%の相対湿度の条件下で試験した。平衡化されたフィルムを利用して、屈折率を測定した。
【0079】
エマルション重合
表IIIに示される量の全ての構成成分を500mLのビーカーに加え、水相及び有機相が均質になるまで混合した。次に、混合物をワーリングブレンダー内で2分間均質化して、重合用のエマルションを調製した。120グラムの容量を有するガラスボトル内に、エマルションを入れた。ボトルの内容物を、1分間当たり1リットルの流量にて窒素で5分間パージすることによって脱酸素化した。ボトルを密閉し、本質的に完全な重合をもたらすために60℃の回転水浴に24時間入れた。重合後、チーズクロスを通してラテックスを濾して、コーティング及び評価の前に凝塊を除去した。約25マイクロメートル(およそ1ミル)の乾燥コーティング厚さをもたらすように、37マイクロメートル(1.5ミル)のポリエステルフィルム上にポリマーラテックスをコーティングした。コーティングされたフィルムを平衡化し、その後、接着剤試験方法で説明されるように約23℃及び50%の相対湿度の条件下で試験した。平衡化されたフィルムを利用して、屈折率を測定した。
【0080】
バルク重合
表IVに示される量のモノマー構成成分を、250mLのグラスボトル内で混合し、これにイルガキュア(IRGACURE)651(総モノマー重量の0.2%)を加えた。ボトルの内容物を十分に混合し、1分間当たり1リットルの流量にて窒素で5分間パージすることによって脱酸素化した。ナイフコーターを使用して、準備された38マイクロメートル(1.5ミル)のポリエステルフィルムと剥離ライナーとの間で約50〜80マイクロメートル(およそ2〜3ミル)の厚さに混合物をコーティングした。蛍光ブラックライトの下で紫外線放射を使用して(約680ミリジュール/cm)、得られたコーティングを重合し、その後、接着剤試験方法で説明されるように約23℃及び50%の相対湿度の条件下で試験した。上述のように、平衡化されたフィルムを利用して、屈折率を測定した。
【0081】
試験方法
実施例にあるPSAでコーティングされた可撓性のシート材を評価するのに使用される試験方法は、業界標準試験である。業界標準は、米国材料試験協会(ASTM)(ペンシルベニア州フィラデルフィア)及び感圧テープ協議会(PSTC)の様々な出版物に記載されている。
【0082】
剥離接着性(ASTM D3330−78 PSTC−1(11/75))
剥離接着性は、コーティングされた可撓性シート材を試験パネルから除去するのに必要な、特定の角度及び除去速度で測定された力である。実施例では、この力は、コーティングされたシートの100mm幅当たりのニュートン(N/100mm)で表されている。以下は、行われた手順である。
【0083】
1. 12.7mm幅のコーティングされたシートを、少なくとも12.7線状cmがしっかりと接触した状態で、汚れていないガラス試験板の水平表面に適用する。2kgの硬いゴムローラを使用して、ストリップを適用する。
【0084】
2. 除去の角度が180°となるように、コーティングされたストリップの自由端を、ほとんどそれ自体に接触するように折りかえす。自由端を接着性試験スケールに取り付ける。
【0085】
3. ガラス試験板を引張試験機のジョーに締めつける。この試験機は、ガラス板をスケールから0.3m/分の一定速度で引離すことができる。
【0086】
4. ニュートンでのスケールの読みを、テープがガラス表面から剥離されるのに伴って記録する。データを、試験中に観測された数の範囲の平均値として記録する。
【0087】
屈折率の測定
接着剤の屈折率は、アッベ屈折計(Abbe Refractometer)(日本、東京のエルマ社(Erma Inc)により作製され、フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)により流通)を使用して測定された。
【0088】
ガラス転移(T)の測定
熱活性化接着剤のTは、示差走査熱量計(DSC)Q200計器(米国デラウェア州ニューキャッスルのTAインスツルメンツ(TA Instruments)製造)を使用して測定された。
【0089】
ヘイズ値の測定
接着剤フィルムのヘイズ及び透過率は、ASTM D1003に従ってBYKガードナー分光光度計(BYK Gardner Spectrophotometer)で測定され、A2値として報告されるが、これは、タングステン電球(約2854Kの相関温度で作動)の光の下でのヘイズを表す。
【0090】
【表2】

【0091】
実施例17〜20は、0.025gのイソチオグリコレートを更に含有した。
【0092】
実施例21〜23は、0.05gのイソチオグリコレートを更に含有した。
【0093】
実施例24〜27は、0.08gのイソチオグリコレートを更に含有した。
【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
本発明の更なる有用な実施例は、最終的な生成物の粘着性、剥離性、柔軟性、及び屈折率を修正するために先の実施例で可塑剤と合成されたものなどの配合ポリマーを含む。表には、様々な処方の剥離接着性、T、及び屈折率が示されている。これは、様々な接着性能及び屈折率値を示す接着剤を処方するための可塑剤の実用性を実証する。
【0097】
PSAの処方は、室温で基材への固着を形成するのに十分な柔軟性、粘着性、及び接着性を有する。特定の用途に対する材料の適合性の1つの評価基準は、その材料のガラス転移温度(T)である。原則として、室温で効果的な接着性を有するためには、PSA材料は、0℃以下のTを有するべきであり、熱活性化接着剤(HAA)は、それよりも著しく高いが通常の加工温度(例えば100℃)よりは低いTを示し得る。HAAは、基材への適用時又は適用に先立ち活性化温度を超えて加熱されると、物品の最終的な使用温度にて持続する効果的な接着接合を形成する。BPAベースのPSA及びHAAの処方は、表Vに示されており、BPEAベースのPSA及びHAAの処方は、表VIに示されており、BPHAベースのPSAの処方は、表VIIに示されている。表V〜VIIIに示される実施例に利用される可塑剤添加剤は、少なくともある程度は、およそ1.55の屈折率を示すトリフェニルホスフェートからなっていた。
【0098】
【表5】

【0099】
【表6】

【0100】
【表7】

【0101】
【表8】

【0102】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ペンダントビフェニル基を有するモノマーユニットとb)アルキル(メタ)アクリレートモノマーユニットとのコポリマーを含む、接着剤。
【請求項2】
前記コポリマーが、c)酸官能性モノマーユニットを更に含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
ペンダントビフェニル基を有する重合モノマーユニットが、式:
【化1】

のものであり、
式中、
及びXはそれぞれ独立して、−O−、−S−、又は−NR−であり、RはH又はC〜Cアルキルであり、
は、1以上のカテナリーエーテル酸素原子又はペンダントヒドロキシ基を任意に含有する1〜8炭素のアルキレンであり、
nは0〜3であり、
はH又はCHのいずれかである、請求項1に記載の接着剤。
【請求項4】
前記ビフェニル基が、2−又は4−置換ビフェニルである、請求項3に記載の接着剤。
【請求項5】
ビフェニルモノマーユニットを総モノマー100部当たり5〜95重量部の量で含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項6】
及びXが酸素である、請求項3に記載の接着剤。
【請求項7】
が、6〜8炭素のアルキレンである、請求項3に記載の接着剤。
【請求項8】
nが1である、請求項3に記載の接着剤。
【請求項9】
屈折率が少なくとも1.50である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項10】
前記アルキル(メタ)アクリレートモノマーが、約1〜約12炭素の非三級アルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルから選択される、請求項1に記載の接着剤。
【請求項11】
前記アルコールが、1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−メチル−1−ブタノール、1−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の接着剤。
【請求項12】
芳香族モノマーと共重合可能な少なくとも1つの非酸含有極性モノマーを更に含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項13】
前記極性モノマーが、アクリルアミド、N,N−ジアルキル置換アクリルアミド、N−ビニルラクタム、及びN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、エチレン性不飽和ニトリル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の接着剤。
【請求項14】
前記極性モノマーが、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の接着剤。
【請求項15】
前記酸官能性モノマーが、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和スルホン酸、及びエチレン性不飽和リン酸から選択される、請求項2に記載の接着剤。
【請求項16】
前記エチレン性不飽和カルボン酸が、アクリル酸、メタクリル酸、及びイタコン酸から選択される、請求項2に記載の接着剤。
【請求項17】
架橋剤を更に含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項18】
可塑剤を更に含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項19】
前記可塑剤が、少なくとも1.5の屈折率を有する、請求項18に記載の接着剤。
【請求項20】
a)5〜95重量部の、ペンダントビフェニル基を有する前記モノマーユニットと、
b)95〜55重量部の前記アルキル(メタ)アクリレートモノマーユニットと、
c)0〜15重量部の酸官能性モノマーユニットと、
d)0〜15重量部の極性モノマーと、
e)0〜5重量部のその他のモノマーと、
を有するコポリマーであって、
前記モノマーの合計が100重量部である、コポリマーと、
所望により、可塑剤と、を含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項21】
a)10〜90重量部の、ペンダントビフェニル基を有するモノマーユニットと、
b)90〜10重量部のアルキル(メタ)アクリレートモノマーユニットと、
c)1〜15重量部の酸官能性モノマーユニットと、
d)0〜15重量部の極性モノマーと、
e)0〜5重量部のその他のモノマーと、
を有するコポリマーであって、
前記モノマーの合計が100重量部である、コポリマーと、
所望により、可塑剤と、を含む、請求項20に記載の接着剤。
【請求項22】
前記接着剤が熱活性化接着剤である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項23】
少なくとも85%の光学透過率値を有する、請求項1に記載の接着剤。
【請求項24】
式:
【化2】

の化合物であって、
式中、
及びXはそれぞれ独立して、−O−、−S−、又は−NR−であり、RはH又はC〜Cアルキルであり、
は、1以上のカテナリーエーテル酸素原子又はペンダントヒドロキシ基を任意に含有する6〜8炭素のアルキレンであり、
nは0〜3であり、
はH又はCHのいずれかである、化合物。
【請求項25】
請求項24に記載の化合物のホモポリマー又はコポリマーを含む、接着剤。

【公表番号】特表2011−500920(P2011−500920A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530066(P2010−530066)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/079865
【国際公開番号】WO2009/052111
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】