説明

高層魚礁

【課題】魚類の蝟集性に優れる高層魚礁を提供する。
【解決手段】鋼製立体構造物を備え、前記鋼製立体構造物は、面状部材をその直下に陰影を生ずるように配した面を複数有し、前記複数の面はその層間の鉛直方向で見通しが効かないように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置水深が50mを超える比較的深いところに設置される鋼製の高層魚礁に関し、特に回遊魚の蝟集に優れるものに関する。
【背景技術】
【0002】
人工魚礁を用いて、漁場を造成し、造養殖を行う人工漁業は従来比較的水深が浅い沿岸域が対象であったが、最近、高級魚に対する嗜好が高まり、より深いところに高層の人工魚礁を設置し、水深50〜120mの広範囲な海中に生息する魚類を蝟集、定着させることが行われるようになってきた。
【0003】
特許文献1は、クレーンなどによる設置が容易な培養型超高層魚礁に関するもので、水深60m以上の海域で用いられる高さが20〜50mの魚礁であって、吊り上げ用フックを設けた鋼製高層魚礁が記載されている。
【0004】
魚礁は下部構造体、上部構造体および搭乗構造物からなり、上部構造物を馬蹄形としその上に設置される搭乗構造物の一側を開放することにより、吊り上げ用フックを上部構造物に溶接することが可能で、高さが40m以上であっても普通のクレーン船で容易に施工できる。
【0005】
特許文献2は、沿岸域の比較的深いところに用いられる人工魚礁に関し、高さ40m以上の高層魚礁であっても、クレーンによる設置が容易なように、また漁網が人工魚礁に接触しても抜けやすいようにその最上部に可動部を有していることを特徴としている。
【0006】
図4は、その斜視図を示すもので、下段部8、中段部9、上段部10および可動部11から構成され、可動部11は水平に寝ることが可能な構造で、その鉛直方向中心軸は立体構造物12の鉛直方向中心軸とオフセットし、クレーンによる吊り下げが容易なように構成されている。
【特許文献1】特許第2659037号公報
【特許文献2】特開2002−51664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、高層魚礁に関する先行技術は、40m以上となる高さの構造物を安全に且つ容易に設置する技術に関し、その魚礁としての形状は実施例などによれば設置の容易さや設置後の安定性を優先していることが窺え、魚礁本来の目的である魚類の蝟集性や海藻の繁茂の観点から十分検討した形状とは言い難い。
【0008】
そこで、本発明は魚礁本来の機能である魚群の蝟集効果に優れる高層魚礁を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は以下の手段により達成可能である。
1.鋼製立体構造物を備えた高層魚礁であって、前記鋼製立体構造物は、面状部材をその直下に陰影を生ずるように千鳥格子状に配した面を複数有し、前記複数の面はその層間の鉛直方向で見通しが効かないように配置されていることを特徴とする高層魚礁。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば魚類の蝟集性に優れた高層魚礁が得られ、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る高層魚礁は、鋼製立体構造物に、千鳥格子状に面状部材を配した水平面を複数設け、各層の面状部材をその層間の鉛直方向で見通しが効かないように配置することを特徴とする。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態である高層魚礁に用いる鋼製立体構造物の斜視図、図2はその側面図を模式的に示す図である。
【0013】
図1に示される鋼製立体構造物は、上部構造を形成する上部構造物1、中間構造物2、下部構造を形成する下部構造物3を有し、これらの構造物は各々形鋼および/または鋼管等の鋼材を溶接等により接合して形成される。上部構造物1の上部には更に中層魚礁体4を設けることが可能である。
【0014】
上部構造物1は、面状部材5を配した面を少なくとも一層有し、浮魚の隠れ場を提供するとともに、その直下に陰影を生じ回遊魚を蝟集させる。面状部材を取付ける面は、水平面に限定せず、曲面などとすることも可能で、特にその形状は規定しない。
【0015】
面状部材は千鳥格子状に取付けると魚類の蝟集効果に優れ、特に千鳥格子状に面状部材5を配した水平面を複数設ける場合は、各層の面状部材をその層間の鉛直方向で見通しが効かないように配置することが、浮魚の隠れ場として好ましい。
【0016】
面状部材5として、海藻などの付着生物培養機能に優れる製鋼スラグを原料に製造されるものを用いることが望ましい。製鋼スラグを原料として製造されるマリンブロックは、CaCOを主成分とし、Fe,Mg等の金属元素を海中に溶出し、海藻類を付着させ、魚類を蝟集させる。
【0017】
下部構造物3は、その内部に石6を充填させ、底魚や小動物を生息させ、餌場を提供するとともに、ウエイトとして高層魚礁を安定させる。従って、その底面形状は内容積を増やすため、円に近い八角形とし、上部構造物より大きな断面積とすることが好ましい。石6にかわり、ブロック、自然石の集積籠などを使用することができる。
【0018】
上部構造物1と下部構造物3は中間構造物2によって連結される。図2の側面図で示されるように、中間構造物2は鼓状に構成され、上部構造物1による陰影効果が発揮される広い遊泳空間を創出し、回遊魚を強力に蝟集する。
【0019】
中間構造物2は、魚類の接触面積を増大させるため、上部構造物1、下部構造物3に対し、その構成部材の数を少なくした疎な空間とすることが好ましいが、海底部からの湧昇流発生を容易とするため、下部構造物3との連結部端部に垂直方向に部材7を取付けたり、上部構造物1に準じて面状部材5を取付けることが可能である。部材7は矩形で面状であれば好ましく、材質は特に規定しない。
【0020】
中層魚礁体4はその高さが調節可能なように伸縮自在の構造を有し、上部構造物1の上面に必要に応じて取付けられる。中層魚礁体4は、高層魚礁の礁高が30m前後であるので、例えば設置水深が100mの場合における表層から魚礁上面までの約70mの水深において回遊魚を蝟集させるために用いる。尚、一般的に高層魚礁の設置水深は50〜120mとされている。図3に、魚礁設置水深に応じて、中層魚礁体4の長さを調整する様子を模式的に示す。
【0021】
上部構造物1、下部構造物3および中間構造物2は上述した機能を有している構造物であれば良く、図1、2に示されるような区分に限定されるものでない。製造性、設置条件を考慮して、それぞれを構成することが可能である。
【0022】
以上、本発明に係る高層魚礁に用いる鋼製立体構造物を上部構造物1、下部構造物3、中間構造物2で構成したものについて説明したが、上部構造物1、下部構造物3を形成し、直接両者を連接したり、全体を鼓状の一体物として組上げることも可能である。
【0023】
尚、本発明で鼓状とは、上部構造物による陰影効果と下部構造物による湧流効果が得られる程度に鋼製立体構造物の上部から下部にかけて断面積が連続的および/または段階的に変動する形状のものであれば良く、断面形状、最も断面積が小さくなる位置は問わない。
【0024】
上述した鋼製立体構造物を魚礁として用いる場合、更に上部構造の外縁に線状部材を簾状に吊り下げたり、鋼製立体構造物から鉄イオンが海水中に供給されるように、形成する形鋼および/または鋼管の成分を調整し、魚類の蝟集効果を高めることは何ら差し支えなく本発明の効果を損なうものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る高層魚礁に用いる鋼製立体構造物の概略斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係る高層魚礁に用いる鋼製立体構造物の模式的側面図。
【図3】設置水深によって本発明に係る高層魚礁の中層魚礁体が伸縮する様子を模式的に示す図。
【図4】従来技術による高層魚礁を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0026】
1 上部構造物
2 中間構造物
3 下部構造物
4 中層魚礁体
5,5a,5b 面状部材
6 石
7 部材
8 下段部
9 中段部
10 上段部
11 可動部
12 立体構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製立体構造物を備えた高層魚礁であって、前記鋼製立体構造物は、面状部材をその直下に陰影を生ずるように千鳥格子状に配した面を複数有し、前記複数の面はその層間の鉛直方向で見通しが効かないように配置されていることを特徴とする高層魚礁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−195561(P2007−195561A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76942(P2007−76942)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【分割の表示】特願2002−216640(P2002−216640)の分割
【原出願日】平成14年7月25日(2002.7.25)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】