説明

高嵩密度洗浄剤組成物の製造方法

【課題】 溶解速度が向上した高嵩密度洗浄剤組成物が得られる方法を提供する。
【解決手段】 固体水溶性アルカリ無機物質100重量部に対し、粘土鉱物10〜80重量部を混合し得られる混合物(A)を調製する工程(a)、混合物(A)に陰イオン界面活性剤の酸前駆体を添加する事により乾式中和、造粒し得られる混合物(B)を調製する工程(b)、混合物(B)に流動助剤を添加し表面改質を行う工程(c)により、嵩密度500g/L以上の高嵩密度洗浄剤組成物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高嵩密度洗浄剤組成物の製造方法及び高嵩密度洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄剤組成物の製造方法としては、界面活性剤やビルダーを水溶液中に分散させたスラリーを噴霧乾燥する方法が一般的であるが、エネルギー効率が悪いなどの課題があり、近年陰イオン界面活性剤の液体酸前駆体を炭酸ナトリウムのような水溶性固体アルカリ無機物質によって乾式中和、造粒する技術は特許文献1、特許文献2に記載されており、これらは、高嵩密度の洗浄剤組成物を高収率に製造する事が出来る優れた技術である。
【特許文献1】特開平10−152700号公報
【特許文献2】特許第3313372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし乾式中和法では、一般的には得られた洗浄剤組成物の溶解速度が噴霧乾燥法に比較して若干悪いという課題があり、解決が求められる。
【0004】
従って、本発明の課題は、溶解速度が向上した高嵩密度洗浄剤組成物が得られる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記工程(a)〜(c)を含む、嵩密度500g/L以上の高嵩密度洗浄剤組成物の製造方法に関する。
工程(a):固体水溶性アルカリ無機物質100重量部に対し、粘土鉱物10〜80重量部を混合し得られる混合物(A)を調製する工程
工程(b):混合物(A)に陰イオン界面活性剤の酸前駆体を添加する事により乾式中和、造粒し得られる混合物(B)を調製する工程
工程(c):混合物(B)に流動助剤を添加し表面改質を行う工程。
【0006】
また、本発明は、上記本発明の製造方法によって得られる、嵩密度500g/L以上の高嵩密度洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、溶解速度に優れた高嵩密度洗浄剤組成物が得られる。これは、本発明では、粘土鉱物を特定の製造法で配合することにより、洗浄剤粒子内部に均一に担持でき、粘土鉱物の膨潤効果がより顕著に発現するためと推察される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<工程(a)>
工程(a)は、固体水溶性アルカリ無機物質100重量部に対し、粘土鉱物10〜80重量部を混合し得られる混合物(A)を調製する工程である。
【0009】
固体水溶性アルカリ無機物質としては、通常洗浄剤組成物においてアルカリ剤として用いられるものが挙げられ、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等が例示される。アルカリ無機物質の中でも、好ましい実施態様として炭酸ナトリウムがあり、炭酸ナトリウムは最終組成物において、洗剤ビルダー及びアルカリ剤として機能させ得るものである。従って、上記機能のための炭酸ナトリウムも含めた量で工程(a)において添加混合させることにより、工程(b)での中和反応を良好に行うことができる。即ち、かかるアルカリ無機物質の量は、中和に必要な量以上が好ましく、例えば、中和当量の1〜20倍であり、より好ましくは2〜10倍、特に好ましくは3〜8倍である。
【0010】
また、固体水溶性アルカリ無機物質の平均粒径は特に限定されないが、さらに収率向上及び保存安定性の観点から30μm以上が好ましく、より好ましくは40〜200μmであり、特に好ましくは50〜100μmである。なお、本明細書でいう固体水溶性アルカリ無機物質の平均粒径は体積基準で算出されるものであり、レーザー回折式粒度分布測定装置:LA−500(堀場製作所(株)製)を用いて測定される値である。
【0011】
粘土鉱物の中でもベントナイト等は耐酸性を有しているので工程(b)を有する本発明においては、ベントナイト等が好ましい。また、ベントナイトは、耐酸性を有するため、造粒収率低下を抑制する点に加え、膨潤効果により、最終組成物の溶解速度向上の点でも好適である。
【0012】
また、粘土鉱物の平均粒径は特に限定されないが、収率向上、及び最終組成物の外観の観点から50μm以上が好ましく、より好ましくは100〜2000μmであり、特に好ましくは200〜1200μmである。なお、本明細書でいう粘土鉱物の平均粒径は体積基準で算出されるものであり、レーザー回折式粒度分布測定装置:LA−500(堀場製作所(株)製)を用いて測定される値である。
【0013】
工程(a)では、固体水溶性アルカリ無機物質100重量部に対し、粘土鉱物10〜80重量部、好ましくは15〜75重量部、より好ましくは30〜70重量部を混合して両者を含有する混合物(A)を調製する。
【0014】
また、工程(a)においては、一般に洗浄剤組成物に用いられる公知の物質を添加して混合しても良い。かかる物質としては、トリポリリン酸塩、結晶性又は非結晶性アルカリ金属アルミノケイ酸塩、結晶性ケイ酸塩、蛍光剤、顔料、再汚染防止剤(ポリカルボキシレートポリマー、ナトリウムカルボキシメチルセルロース等)、界面活性剤(脂肪酸又はその塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等)、噴乾粉末、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。かかる物質は、その用途に応じて任意に用いられる。かかる物質を添加する場合、固体水溶性アルカリ無機物質と混合して用いることが好ましい。
【0015】
トリポリリン酸塩の平均粒径は特に限定されるものではないが、好ましくは1〜30μmであり、より好ましくは5〜20μmであり、特に好ましくは6〜15μmである。最終組成物の凝集を抑制する観点から、トリポリリン酸塩の平均粒径は小さい程収率が良くなるが、小粒径の粒子からなる最終組成物を工業的に得るための生産性の観点から、平均粒径は1μm以上が好ましく、最終組成物の凝集抑制の観点から30μm以下が好ましい。なお、本明細書でいうトリポリリン酸塩の平均粒径は体積基準で算出されるものであり、レーザー回折式粒度分布測定装置:LA−500(堀場製作所(株)製)を用いて測定される値である。
【0016】
トリポリリン酸塩を添加する場合、その量は特に限定されるものではないが、最終組成物中、2〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましく、15〜35重量%が特に好ましい。最終組成物の凝集抑制の観点から2重量%以上が好ましく、洗浄剤組成物の組成自由度確保の観点から50重量%以下が好ましい。
【0017】
さらに工程(a)においては、平均粒径1〜30μmの結晶性又は非結晶性アルカリ金属アルミノケイ酸塩を添加することもできる。かかるアルカリ金属アルミノケイ酸塩を添加することにより、過度の凝集が抑制され、且つ凝集物を攪拌造粒機のチョッパーで解砕する際の助剤となるため好適である。かかるアルカリ金属アルミノケイ酸塩の量は特に限定されないが、最終産物である洗浄剤組成物中1〜8重量%が好ましく、2〜5重量%がより好ましい。上記効果を効率良く得るために、上記範囲が好ましい。なお、本明細書でいう上記アルミノケイ酸塩の平均粒径は体積基準で算出されるものであり、レーザー回折式粒度分布測定装置:LA−500(堀場製作所(株)製)を用いて測定される値である。
【0018】
工程(a)では、上記の各成分を攪拌造粒機を用いて混合する。攪拌造粒機としては特に限定されるものではないが、攪拌羽根と解砕/分散用チョッパー(又はこれに機能的に同等なもの)を具備するものが好ましい。本発明に用いられる攪拌造粒機の具体例としては、バッチ式のものとして、バーチカルグラニュレータ((株)パウレック製)、ハイスピードミキサー(深江工業(株)製)、レディゲミキサー(松坂技研(株)製)、プロシェアミキサー(太平洋機工(株)製)、ゲーリッケミキサー(明治機械(株)製)等が挙げられる。特に好ましくは、レディゲミキサー、プロシェアミキサーである。連続式のものとして、連続式レディゲミキサー(中速ミキサー:滞留時間が比較的長い)や、高速ミキサー(滞留時間が比較的短い)としてCBリサイクラー(Loedige 製)、タービュライザー(ホソカワミクロン(株)製)、シュギミキサー((株)パウレック製)、フロージェットミキサー((株)粉研製)等が挙げられる。なお、本発明においては上記ミキサーを適宜組み合わせて用いても良い。また、攪拌造粒機は、内部の温度を調節するためのジャケットを具備するものや、ガス吹き込み操作を行うためのノズルを具備するものがより好適である。
【0019】
工程(a)における攪拌造粒機の作動条件は特に限定されるものではない。例えば混合時間は5分間以内が好ましい。主軸攪拌速度及び解砕/分散用チョッパー速度は機種によって適宜設定し得るが、例えばバッチ式のものであれば、主軸攪拌周速度は2〜15m/sが好ましく、解砕/分散用チョッパー周速度は20〜60m/sが好ましい。
【0020】
なお、工程(a)における混合中、混合終了後、及び/又は工程(b)における陰イオン界面活性剤の酸前駆体の添加と同時に、反応開始剤としての水を加えても良い。反応開始剤を添加することにより、中和反応を促進させることができるため好適である。水の添加量は特に限定されないが、工程(a)で得られた混合物100重量部に対して0.2〜3重量部が好ましく、0.5〜1.5重量部がより好ましい。中和反応を開始させる観点から0.2重量部以上が好ましく、洗浄剤組成物の凝集を抑える観点から3重量部以下が好ましい。なお、上記混合物や陰イオン界面活性剤の酸前駆体が水を含む場合、あるいは他の水溶液原料を用いる場合、それらの水分量を考慮して、添加すべき水分量を決定すれば良い。
【0021】
<工程(b)>
工程(b)は、工程(a)で得られた混合物(A)に陰イオン界面活性剤の酸前駆体を添加する事により乾式中和、造粒し得られる混合物(B)を調製する工程である。
【0022】
陰イオン界面活性剤の酸前駆体とは、陰イオン界面活性剤の酸形態であって、好ましくは液状のものをいい、中和反応により塩を形成するものである。よって陰イオン界面活性剤の酸前駆体としては公知の陰イオン界面活性剤の酸形態のものであれば特に限定されるものではなく、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)、α−オレフィンスルホン酸(AOS)、アルキル硫酸(AS)、内部オレフィンスルホン酸、脂肪酸エステルスルホン酸、アルキルエーテル硫酸、ジアルキルスルホコハク酸、脂肪酸等が例示される。酸前駆体は一成分のみを用いても良く、二成分以上を組み合わせて用いても良い。
【0023】
陰イオン界面活性剤の酸前駆体の量は、所望の洗浄剤組成物の組成より適宜設定し得るが、最終産物である洗浄剤組成物中、中和反応により生成する陰イオン界面活性剤として5〜45重量%であることが好ましく、10〜40重量%であることがより好ましく、20〜40重量%であることが特に好ましく、20〜35重量%であることがさらに好ましい。尚、洗浄剤組成物中の主界面活性剤が別の形態で提供される場合においても本発明は有効である。
【0024】
工程(b)では、工程(a)で得られる混合物を好ましくは粒状に維持しつつ陰イオン界面活性剤の酸前駆体の添加が行われる。混合物を粒状に維持するためには、酸前駆体を徐々に添加すれば良い。陰イオン界面活性剤の酸前駆体の添加に要する時間は添加する量に依存するため一概には言えないが、バッチ式の場合、一般的には1分以上、より好ましくは1〜10分、更に好ましくは2〜5分である。ここで、陰イオン界面活性剤の酸前駆体の添加を著しく短時間で行うと、急激な中和反応による発熱のため、後述する温度上昇の影響があるので、1分以上で添加することが好ましい。また、添加方法としては、連続的または複数回に分割して行ってもよく、添加手段は複数設けても良い。なお、陰イオン界面活性剤の酸前駆体の添加段階において、即ち工程(b)では中和反応と造粒とが同時並行的に起こり、混合物を形成していく。陰イオン界面活性剤の酸前駆体の添加後、さらに攪拌造粒機を30秒以上、より好ましくは1分以上作動させても良い。このような操作を設けることにより、中和反応を完結させることができるため好適である。
【0025】
工程(b)においては、ガスを吹き込みつつ中和を行うことが好ましい。これは中和反応で生じた余剰の水分を蒸発させ、かつ混合物をガスを用いて冷却させることにより混合物が大きな塊となるのを防止するためである。かかるガスとしては、N2ガス、空気等が挙げられる。ガスの吹き込み量(通気量)は特に限定されないが、混合物(混合物(A)と陰イオン界面活性剤の酸前駆体)100重量部に対して毎分0.002重量部以上が好ましく、毎分0.02重量部以上がより好ましい。
【0026】
工程(b)では中和反応による反応熱が発生するため、混合物の温度が上昇する。混合物の温度が上昇すると、香料等の熱により劣化する成分や揮散性成分の添加が困難となるため、工程(b)において、混合物の温度は90℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。かかる範囲に混合物の温度を調節するには、上記のガスの吹き込み以外に例えば攪拌造粒機のジャケットに冷水を通す等の方法を用いれば良い。
【0027】
さらに本発明においては、工程(b)において、陰イオン界面活性剤の酸前駆体を添加する前に、工程(a)で得られる混合物に、陰イオン界面活性剤の酸前駆体を中和するのに必要な量の0.05〜0.5倍量のアルカリ水溶液を添加してさらに混合しても良い。工程(a)で得られる混合物に特定量のアルカリ水溶液を添加することにより、中和反応を促進できるだけでなく、得られる洗浄剤組成物を構成する粒子の粒径を小さくすることや、嵩密度を高くすることができるため好適である。アルカリ水溶液の添加量は、陰イオン界面活性剤の酸前駆体の中和当量の0.05〜0.5倍量が好ましく、0.10〜0.45倍量がより好ましく、0.15〜0.40倍量が特に好ましい。中和反応を開始させ、所望の効果を得る観点から、中和当量の0.05倍量以上が好ましく、洗浄剤組成物の凝集を抑える観点から0.5倍量以下が好ましい。なお、アルカリ水溶液の濃度は特に限定されないが、低い濃度である場合、所定量のアルカリ水溶液を添加するのに伴って過剰の水が混合物に供給されるため、洗浄剤組成物の凝集が起こる場合がある。したがって、アルカリ水溶液の濃度は20〜50重量%が好ましく、30〜50重量%がより好ましく、40〜50重量%が特に好ましい。
【0028】
また、用いられるアルカリ水溶液の種類としては特に限定されるものではないが、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の陰イオン界面活性剤の酸前駆体と容易に中和反応を生じる強アルカリ水溶液が挙げられる。これらのうち、水酸化ナトリウム水溶液がコストの観点から好適に用いられる。また、かかるアルカリ水溶液は、pHが12以上のものがより好ましい。また、本工程における混合は、添加したアルカリ水溶液が一様に分散する程度で良い。
【0029】
なお、アルカリ水溶液の添加は、工程(a)の処理後に行っても良く、工程(a)と同時に行っても良い。後者の場合、具体的には、工程(a)の一態様としての下記の工程(a’)により混合物を得る。即ち、工程(a’)は、工程(b)で用いる陰イオン界面活性剤の酸前駆体を中和するのに必要な量以上の固体水溶性アルカリ無機物質及び陰イオン界面活性剤の酸前駆体を中和するのに必要な量の0.05〜0.5倍量のアルカリ水溶液とを攪拌造粒機を用いて混合する工程、である。
【0030】
アルカリ水溶液を添加する場合に重要なことは、アルカリ水溶液の添加を少なくとも工程(b)よりも先に行うことである。よって、アルカリ水溶液の添加を必ずしも工程(a)の後に行うことに限定されない。さらに言及すれば、固体水溶性アルカリ無機物質とアルカリ水溶液を混合した後に、他の洗浄剤成分を添加混合しても良い。これは、混合物中に耐アルカリ性に劣る成分を添加する場合に有効である。なお、アルカリ水溶液を混合物に均一に分散させる観点からは、前者の態様、即ち、工程(a)の処理後にアルカリ水溶液の添加を行うことが好ましい。
【0031】
<工程(c)>
工程(c)は、工程(b)により得られた混合物(B)に流動助剤を添加し表面改質を行う工程である。本発明の製造方法により得られる高嵩密度洗浄剤組成物のさらなる流動性の向上、保存安定性の向上のために、工程(c)は有効である。
【0032】
工程(c)における表面改質は、得られる洗浄剤粒子を攪拌造粒機で混合しつつ、流動助剤としての表面改質剤を添加する(表面改質工程)ことにより実施される。
【0033】
流動助剤としては通常用いられる公知のものが使用でき、結晶性又は非結晶性アルカリ金属アルミノケイ酸塩(ゼオライト)、方解石、ケイソウ土、シリカ等が好適に用いられる。かかるアルミノケイ酸塩は、平均粒径が10μm以下のものがより好ましい。またその量としては、最終産物である洗浄剤組成物の2〜15重量%が好ましく、4〜12重量%がより好ましい。なお、流動助剤の平均粒径は体積基準で算出されるものであり、レーザー回折式粒度分布測定装置:LA−500(堀場製作所(株)製)を用いて測定される値である。
【0034】
また、流動助剤を添加した場合の攪拌造粒機の運転時間は特に限定されないが、1〜5分間が好ましい。
【0035】
なお、本製造方法において、得ようとする洗浄剤組成物の組成により、所望の液体成分を添加することができる。液体成分の添加は、工程(a)、(b)、(c)のどの工程で行っても良く、例えば工程(c)の流動助剤の添加前に行うことが好ましい。液体成分としては、例えば液体非イオン界面活性剤、水溶性ポリマー(ポリエチレングリコール、アクリル酸マレイン酸コポリマー等)、脂肪酸等の洗浄剤組成物中の任意の液体成分が挙げられる。液体成分は一成分のみを用いてもよく、二成分以上を併用しても良い。液体成分の量としては、洗浄剤組成物の凝集抑制の観点から、最終産物である洗浄剤組成物の15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。また、液体成分を流動助剤の添加前に行った場合の攪拌造粒機の運転時間は特に限定されないが、0.5〜8分間が好ましい。
【0036】
なお、本発明において、さらにその他の任意成分を添加しても良い。かかる任意成分としては、例えば酵素、香料、漂白剤、色素等が挙げられる。かかる成分は、本発明の製造方法によって得られる洗浄剤組成物と上記の成分とを、回転ドラム等の混合機を用いて混合することにより配合される。また、本発明の製造方法によって得られる高嵩密度洗浄剤組成物を、他の洗浄剤組成物構成用成分として用いても良い。本発明により得られた高嵩密度洗浄剤組成物は、衣料等、繊維製品の洗浄用に好適である。
【0037】
上記の工程を含む製造方法により、嵩密度500g/L以上、更に650g/L以上の、好ましくは粒状の高嵩密度洗浄剤組成物を得ることができる。本発明の製造方法によって得られる高嵩密度洗浄剤組成物は、以下の物性を示すものがより好ましい。
【0038】
嵩密度:650〜950g/Lのものが好ましく、700〜900g/Lのものがより好ましい。なお、本明細書において嵩密度は、JIS K 3362で規定された方法で求められる値である。
【0039】
粒径:平均粒径については、溶解速度の観点から1000μm以下のものが好ましく、さらに850μm以下のものが好ましく、300〜800μmのものがより好ましく、350〜650μmのものが特に好ましい。また、1400μm以下のものの占める割合(1400μmパス収率)(%)は55%以上のものが好ましく、さらに60%以上のものが好ましく、65%以上のものがより好ましく、70%以上のものが特に好ましい。なお、本明細書において洗浄剤組成物の平均粒径は、JIS K 8801の標準篩を用いて5分間振動させた後、篩目のサイズによる重量分率から求められる値であり、1400μmパス収率はこの重量分率のうち、1400μm以下の粒子が占める割合から求められる値である。
【0040】
流動性:8秒以下のものが好ましく、7秒以下のものがより好ましい。本明細書において洗浄剤組成物の流動性は、JIS K 3362に規定された嵩密度測定用のホッパーから、100mLの粉末が流出するのに要する時間である。
【実施例】
【0041】
実施例1
レディゲミキサーFKM−130D((株)マツボー製)高速ミキサーを用いて、表1に示す組成の洗浄剤組成物を35kg単位で製造した。このミキサーは攪拌羽根と解砕/分散用チョッパーに相当する剪断機を具備するものである。ここで洗浄剤組成物は以下の操作により調製した。
【0042】
<粉体混合:工程(a)>
固体成分である炭酸ナトリウム(ライト灰:セントラル硝子(株)製、平均粒径56.1μm)34.1重量%(最終組成物中の比率、以下同様)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP:平均粒径11.2μm)25.2重量%、、及びベントナイト(SUD−CHEMICAL 粒径200μm〜1200μm)5重量%をレディゲミキサーにより、攪拌羽根回転数130rpm(周速3.4m/s)、剪断機回転数2850rpm(周速27m/s)の条件で1分間混合した。
【0043】
<乾式中和、造粒:工程(b)>
ミキサーを前記と同上件で作動させながら、直鎖アルキル(炭素数12)ベンゼンスルホン酸28.5重量%を4分間で加え乾式中和、造粒した。この間、ミキサージャケットは25℃の水を通して冷却した。この段階で温度は最高68.8℃に達した。尚、この段階を通して、反応混合物は粒状であった。直鎖アルキルベンゼンスルホン酸添加後、引き続きミキサーを同条件で1分間作動させた。
【0044】
<液体成分の添加・表面改質:工程(c’)、:工程(c)>
中和反応が完了した時点で、ミキサーを前記と同条件で作動させながら、40重量%アクリル酸マレイン酸コポリマー(アクリル酸/マレイン酸=7/3モル比、重量平均分子量70000)水溶液を0.5重量%ミキサーに加え1分30秒混合し、続いて流動助剤として平均粒径4μmのゼオライト6.7重量%を加え2分間ミキサーを作動させることにより表面改質処理を行った。なお上記ゼオライトは20重量%の結晶水を含有するものであった。得られた洗浄剤組成物を1400μmの篩にかけ、通過した粒子を最終洗浄剤組成物とした。該組成物の溶解速度は81.2%であり、優れた溶解速度を有した粒子であった。なお、溶解速度は、以下の方法で測定されたものである。
【0045】
[溶解速度]
電気伝導度計(東亜電波工業株式会社CM−60S)と電極(東亜電波工業株式会社CG511B TH1005B)を用い、10℃に調温したイオン交換水1Lを、1Lビーカー(内径105mm、高さ150mmの円筒型、例えば岩城硝子社製1Lガラスビーカー)に満たし、10℃の水温をウオーターバスにて一定に保った状態で、攪拌子(長さ35mm、直径8mm、例えば型式:ADVANTEC社製、テフロン(登録商標)丸型細型)にてスターラー(Shimadzu SST−172 Magnetic−Stirrer)を用い、700rpmで攪拌する。JIS Z 8801規定の目開き1400μmの標準篩(直径200mm)にかけ、通過した洗浄剤組成物粒子を1.0000±0.0010gとなるように秤量し、攪拌下に水中に投入する。電気伝導度の測定値の上昇率が0.2%以下に達した時点を溶解率100%とし、洗浄剤組成物粒子投入1分後の電気伝導度の測定値を溶解率100%の時の値と比較して溶解率とした。
【0046】
実施例2
レディゲミキサーFKM−130D((株)マツボー製)高速ミキサーを用いて、以下の操作により表1に示す組成の洗浄剤組成物を35kg単位で製造した。用いた成分は実施例1と同じものである。
【0047】
<粉体混合:工程(a)>
固体成分である炭酸ナトリウム(ライト灰:セントラル硝子(株)製、平均粒径56.1μm)32.3重量%、トリポリリン酸ナトリウム(STPP:平均粒径11.2μm)23.9重量%、、及びベントナイト(Sued-Chemie AG 粒径200μm〜1200μm)10重量%をレディゲミキサーにより、攪拌羽根回転数130rpm(周速3.4m/s)、剪断機回転数2850rpm(周速27m/s)の条件で1分間混合した。
【0048】
<乾式中和、造粒:工程(b)>
ミキサーを前記と同上件で作動させながら、直鎖アルキル(炭素数12)ベンゼンスルホン酸27.0重量%を4分間で加え乾式中和、造粒した。この間、ミキサージャケットは25℃の水を通して冷却した。この段階で温度は最高68.8℃に達した。尚、この段階を通して、反応混合物は粒状であった。直鎖アルキルベンゼンスルホン酸添加後、引き続きミキサーを同条件で1分間作動させた。
【0049】
<液体成分の添加・表面改質:工程(c’)、工程(c)>
中和反応が完了した時点で、ミキサーを前記と同条件で作動させながら、40重量%アクリル酸マレイン酸コポリマー(有効分0.18重量部)水溶液を0.5重量%ミキサーに加え1分30秒混合し、続いて流動助剤として平均粒径4μmのゼオライト6.3重量%を加え2分間ミキサーを作動させることにより表面改質処理を行った。なお上記ゼオライトは0.84重量部の結晶水を含有するものであった。得られた洗浄剤組成物を1400μmの篩にかけ、通過した粒子を最終洗浄剤組成物とした。該組成物の溶解速度(実施例1と同じ)は86.8%であり、優れた溶解速度を有した粒子であった。
【0050】
実施例3
レディゲミキサーFKM−130D((株)マツボー製)高速ミキサーを用いて、以下の操作により表1に示す組成の洗浄剤組成物を35kg単位で製造した。用いた成分は実施例1と同じものである。
【0051】
<粉体混合:工程(a)>
固体成分である炭酸ナトリウム(ライト灰:セントラル硝子(株)製、平均粒径56.1μm)28.7重量%、トリポリリン酸ナトリウム(STPP:平均粒径11.2μm)21.2重量%、、及びベントナイト(Sued-Chemie AG 粒径200μm〜1200μm)20重量%をレディゲミキサーにより、攪拌羽根回転数130rpm(周速3.4m/s)、剪断機回転数2850rpm(周速27m/s)の条件で1分間混合した。
【0052】
<乾式中和、造粒:工程(b)>
ミキサーを前記と同上件で作動させながら、直鎖アルキル(炭素数12)ベンゼンスルホン酸24.0重量%を4分間で加え乾式中和、造粒した。この間、ミキサージャケットは25℃の水を通して冷却した。この段階で温度は最高68.8℃に達した。尚、この段階を通して、反応混合物は粒状であった。直鎖アルキルベンゼンスルホン酸添加後、引き続きミキサーを同条件で1分間作動させた。
【0053】
<液体成分の添加・表面改質:工程(c’)、工程(c)>
中和反応が完了した時点で、ミキサーを前記と同条件で作動させながら、40重量%アクリル酸マレイン酸コポリマー(有効分0.18重量部)水溶液0.5重量%をミキサーに加え1分30秒混合し、続いて流動助剤として平均粒径4μmのゼオライト5.6重量%を加え2分間ミキサーを作動させることにより表面改質処理を行った。なお上記ゼオライトは0.84重量部の結晶水を含有するものであった。得られた洗浄剤組成物を1400μmの篩にかけ、通過した粒子を最終洗浄剤組成物とした。該組成物の溶解速度(実施例1と同じ)は92.4%であり、優れた溶解速度を有した粒子であった。
【0054】
実施例4
粉体混合時のトリポリリン酸ナトリウムを全量炭酸ナトリウムに置換した以外は実施例2と同様の操作により洗浄剤組成物を得た。用いた成分は実施例1と同じものである。得られた洗浄剤組成物の溶解速度(実施例1と同じ)は86.3%であり、優れた溶解速度を有した粒子であった。
【0055】
比較例1
粉体混合時のベントナイトを乾式中和、造粒、及び液体成分の添加後、表面改質時に添加した以外は実施例1と同様の組成、操作により洗浄剤組成物を得た。用いた成分は実施例1と同じものである。得られた洗浄剤組成物は、溶解速度(実施例1と同じ)が74.5%であり溶解速度の遅い粒子であった。
【0056】
比較例2
粉体混合時のベントナイトを乾式中和、造粒、及び液体成分の添加後、表面改質時に添加した以外は実施例2と同様の組成、操作により洗浄剤組成物を得た。用いた成分は実施例1と同じものである。得られた洗浄剤組成物は、溶解速度(実施例1と同じ)が76.2%であり溶解速度の遅い粒子であった。
【0057】
比較例3
粉体混合時のベントナイトを乾式中和、造粒、及び液体成分の添加後、表面改質時に添加した以外は実施例3と同様の組成、操作により洗浄剤組成物を得た。用いた成分は実施例1と同じものである。得られた洗浄剤組成物は、溶解速度(実施例1と同じ)が79.7%であり溶解速度の遅い粒子であった
【0058】
比較例4
粉体混合時のベントナイトを乾式中和、造粒、及び液体成分の添加後、表面改質時に添加した以外は実施例4と同様の組成、操作により洗浄剤組成物を得た。用いた成分は実施例1と同じものである。得られた洗浄剤組成物は、溶解速度(実施例1と同じ)が78.7%であり溶解速度の遅い粒子であった。
【0059】
上記実施例1〜4及び比較例1〜4を表1にまとめた。なお、工程(c’)は工程(b)と工程(c)の間に行った液体成分(アクリル酸マレイン酸コポリマー、表中、コポリマーと表記する)の添加工程である。なお、表中、LAS−Naは直鎖アルキル(炭素数12)ベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(a)〜(c)を含む、嵩密度500g/L以上の高嵩密度洗浄剤組成物の製造方法。
工程(a):固体水溶性アルカリ無機物質100重量部に対し、粘土鉱物10〜80重量部を混合し得られる混合物(A)を調製する工程
工程(b):混合物(A)に陰イオン界面活性剤の酸前駆体を添加する事により乾式中和、造粒し得られる混合物(B)を調製する工程
工程(c):混合物(B)に流動助剤を添加し表面改質を行う工程。
【請求項2】
粘土鉱物が、平均粒径200μm〜1200μmのベントナイトである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
陰イオン界面活性剤の酸前駆体が、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の製造方法によって得られる、嵩密度500g/L以上の高嵩密度洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−291070(P2006−291070A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114656(P2005−114656)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】