説明

高床作業車の荷台支持装置

【課題】クロスリンク機構を用いて荷台を昇降させる形態では、クロスリンクのリンク杆身の方向が、従来技術のように車体の進行方向に沿った状態に設定されると、荷台幅変更時に重心位置が左右に大きく偏倚して、作業車の左右方向の重量バランスを維持し難くなる。
【解決手段】メインフレーム3の上側部にクロスリンク6,7を介して昇降可能の荷台8を設けるに、前記クロスリンク6,7は、リンク杆身の方向を車体5に対して横方向に沿わせた形態にして、これらメインフレーム3及び荷台8に対して枢支するクロスリンク6,7の一端側の回動支持部9,10をサイドフレーム4寄り側に位置して設定すると共に、他端側の摺動支持部11,12をこれとは反対側に位置して設定し、前記クロスリンク6,7の回動支持部9,10の位置する荷台8の外側端に、外側へ拡縮可能の側部荷台13連設することを特徴とする高床作業車の荷台支持装置の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作物収穫作業乃至コンテナの運搬等に使用される高床作業車において、車幅を変更可能とし、荷台を昇降可能とする荷台支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高床作業車において、リンク杆身方向を前後方向に沿わせた形態のクロスリンクを介して荷台を昇降させる技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−359184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車幅を変更可能の作業車にあって、荷台を昇降する機構としてクロスリンク機構を用いて昇降させる形態では、このクロスリンクのリンク杆身の方向が、従来技術のように車体の進行方向に沿った状態に設定されると、前記車幅変更と同時に荷台幅を変更したとき、前記クロスリンクの拡縮による荷台の重心位置が左右に大きく偏倚して、作業車の左右方向の重量バランスを維持し難くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、左右一側のクローラ1を有したメインフレーム3に対して他側のクローラ2を有したサイドフレーム4を横方向へ移動可能に連設して、車体幅変更可能の車体5を構成した高床作業車の荷台支持装置において、前記メインフレーム3の上側部にクロスリンク6,7を介して昇降可能の荷台8を設けるに、前記クロスリンク6,7は、リンク杆身の方向を車体5に対して横方向に沿わせた形態にして、これらメインフレーム3及び荷台8に対して枢支するクロスリンク6,7の一端側の回動支持部9,10をサイドフレーム4寄り側に位置して設定すると共に、他端側の摺動支持部11,12をこれとは反対側に位置して設定し、前記クロスリンク6,7の回動支持部9,10の位置する荷台8の外側端に、外側へ拡縮可能の側部荷台13連設することを特徴とする高床作業車の荷台支持装置とする。
【0006】
前記車体5は、左右のクローラ1,2を駆動して前進、又は後進走行する。車幅を変更するときは、伸縮機構等によってメインフレーム3に対してサイドフレーム4を側方へ移動させる。クローラ1に対するクローラ2の踏位置も変更され、作業畝幅等に応じた車体5幅を設定できる。又、車幅が決まった後で荷台8、及び側部荷台13を昇降するには、リフトシリンダの伸縮によってクロスリンク6,7を拡縮させて昇降させる。このクロスリンク6,7の回動支持部9,10は、メインフレーム3、及び荷台8のサイドフレーム4側寄り位置に枢支されているため、これらクロスリンク6,7の反対側の摺動支持部11,12は、このメインフレーム3のクローラ1寄りの上部位置において、左右方向へ摺動支持して案内される。そして、このクロスリンク6,7による荷台8、側部荷台13の支持位置は、上昇位置が高くなるに伴って回動支持部9,10側へ偏倚する。前記車幅を広くして支持されている側部荷台13は、このクロスリンク6,7の回動支持部9,10位置よりも外側域へ広く拡張された状態として、これら荷台8及び側部荷台13の広幅域の中央部重心位置に近い位置を上昇支持する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記車体5に対して昇降可能の荷台8の外側に連設する側部荷台13は、車体5に対する下降位置でサイドフレーム4の一部に係合可能で、前記サイドフレーム4の横方向移動によってこの係合状態を維持して側部荷台13を一体的に拡縮移動可能に設けたことを特徴とする。
【0008】
前記のようにサイドフレーム4はメインフレーム3の横側に拡縮移動でき、この上部の側部荷台13も、メインフレーム3上の荷台8に対して横方向へ拡縮移動できるもので、しかも、これら左右の荷台8、及び側部荷台13は、クロスリンク6,7を介してメインフレーム3及びサイドフレーム4に対して昇降させることができる。そして、このサイドフレーム4に対して側部荷台13が下降した位置にあるときは、サイドフレーム4の一部に対して側部荷台13底部の一部が係合して、横方向移動が一体として行われる状態となる。従って、このサイドフレーム4を伸縮機構等によって横方向へ拡縮移動することによって、前記下降位置にある荷台8に対して側部荷台13を一体的に連れ移動して、荷台幅を拡縮することができる。又、この拡縮された荷台8,13を上昇するときは、クロスリンク6,7の拡縮によって行われ、側部荷台13の係合部もサイドフレーム4の係合部から離脱する。この側部荷台13の上昇位置で、荷台8に対する拡縮移動が行われない限り、この状態で側部荷台13が下降したときは、同位置にあるサイドフレーム4の係合部に係合することができ、このサイドフレーム4の拡縮移動によって一体的に移動される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、メインフレーム3及び荷台8に対してサイドフレーム4及び側部荷台13を、横方向へ拡縮移動することができるが、これらメインフレーム3に対して荷台8及び側部荷台13を昇降するためのクロスリンク7は、リンク杆身の方向を前記車体5に対して横方向に沿わせて設ける形態として、しかも、このクロスリンク6,7の回動支持部9,10をサイドフレーム4側寄りに設定し、かつ摺動支持部11,12をこれとは反対側のメインフレーム3側のクローラ1の上方位置に設定して、横方向へ摺動案内しながら支持するもので、従って、側部荷台13を外側へ張出位置側に偏倚させた荷台8,13の重心位置としてクロスリンク6,7によって支持するもので、このクロスリンク6,7自体の回動支持部9,10の直上位置へ移動させて、側部荷台13の張出された幅広い荷台8、及び側部荷台13の荷物重量を、左右方向の重量バランスを図りながら安定した姿勢、状態に支持することができる。又、これらクロスリンク6,7による荷台8等の支持構成においても、クローラ2を有するサイドフレーム4と、この上側部の側部荷台13を、メインフレーム3、及び荷台8に対して横側へ拡張移動させるが、クロスリンク6,7は、このリンク杆身の向きを横向きにして設定するだけの構成であるから、簡単、容易である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記のように一方のクローラ1を有したメインフレーム3に対して、他方のクローラ2を有したメインフレーム4を横方向へ拡縮移動させると共に、このメインフレーム3上側の荷台8に対して、サイドフレーム4上の側部荷台13を横方向へ拡縮移動させる形態とし、しかも、これら上側部の荷台8、及び側部荷台13をメインフレーム3及びサイドフレーム4に対して昇降可能に構成する形態にあって、これら荷台8及び側部荷台13を下降させた位置では、これらの部材の一部の重合係合によって一体的に横移動させることができ、従って、サイドフレーム4を車幅変更すべく横移動操作することによって、上側の側部荷台13をも一体的に同調移動して荷台幅を変更することができ、クロスリンク6,7の拡縮によるこれら荷台8、側部荷台13の昇降とは各別の操作、及び作動として正確で、的確な操作を行うことができる。しかも、前記側部荷台13の横方向拡縮移動は、下側のサイドフレーム4との重合係合によって、このサイドフレーム4を拡縮移動するための伸縮機構等によって行われるものであるから、構成を簡潔、軽量にすることができ、左右クローラ1,2間のトレッド間隔に応じた車体5幅、及び荷台幅に拡縮設定して収穫作業等を行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】作業車の側面図。
【図2】その平面図。
【図3】その背面図。
【図4】その荷台上昇時の背面図。
【図5】荷台拡縮状態を示す背面図。
【図6】作業形態を示す背面図。
【図7】積み込み状態を示す平面図及び側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面に基づいて、高床作業車は、畝条間をまたいだり、作物条間をまたぐようにして走行しながら作業するものであるから、左右のクローラ1,2間の間隔(トレッド)を変更可能とし、上部に支架する車体5の床下面を高く構成している。各クローラ1,2は、後端上部の駆動スプロケットと、前端上部の従動輪と、これらの間の低部に配置の転輪等をトラックフレーム30に配置してゴムクローラ1,2を巻き掛けて、前記駆動スプロケットの駆動によって走行する。前記トラックフレーム30の外側からアーム31を介して各クローラ1,2上側部にメインフレーム3、サイドフレーム4を支持するように構成している。これらクローラ1を有したメインフレーム3や、クローラ2を有したサイドフレーム3の上面は、水平状に形成されて、これら左右両側のメインフレーム3とサイドフレーム4との間は、このサイドフレーム4の内側に向けて複数本のガイドアーム51を形成して、このガイドアーム51をメインフレーム3側のアームベース24に摺動自在に嵌合させて、相対向して同水平面に沿って左右横方向へ移動して接近したり、離隔することができる形態で、これら両側のメインフレーム3とサイドフレーム4との間に伸縮機構16を設けて、メインフレーム3に対してサイドフレーム4を左右方向へ移動して車幅間隔を変更調節する形態である。サブフレーム4に設けたガイドアーム51の内、最前部と最後部のガイドアーム51は、メインフレーム3側に設けたローラ70,71間を摺動するよう構成し、サブフレーム3の横方向への拡縮を正確に、円滑に案内させるものである。前記伸縮機構16はハンドル38回動させるとネジ61が回転し、このネジ61はサイドフレーム4側から内側に向け設けたアーム62先端のナット63に螺合してあり、ネジ61が回転することによってサイドフレーム4を拡張乃至伸縮できるものである。又、前記サイドフレーム4を横方向へ拡縮移動するために、伸縮シリンダ等を設けた形態とすることも可能である。
【0013】
車体5のメインフレーム3上部にはメインベース3bを設け、サイドフレーム4上部にはサイドベース4bを設け、これらメインベース3b及びサイドベース4bに対して昇降の荷台8及び側部荷台13が設けてあり、荷台8及び側部荷台13の外周部はメインベース3b及びサイドベース4bよりも外方へ突出するよう形成してある。この突出部は張出縁66と、該張出縁66の外側端から下側へ向けて垂下形成される外側縁67と、この外側縁67下端縁から内側へ折り曲げるように形成の折返し縁68とから形成されたガード枠69を設けてある。又、前記外側縁67は、荷台8及び側部荷台13最下降状態時に、メインベース3b及びサイドベース4b上面高さよりも下位になるよう垂下延設されている。従って、作業者が外周部から昇降される荷台8、乃至側部荷台13のガード枠69に接触しても、内側のメインベース3bやサイドベース4bまで身体(手先等)が届き難く荷台8及び側部荷台13下降の際、荷台8とメインベース3b、又は、側部荷台13とサイドベース4bとの間に身体の一部を挟まれることがなく、作業の安全を確保することができる。
【0014】
前記メインフレーム3の後端部には操作台33を構成し、この操作台33の上側にエンジン34を搭載して、伝動ケース部の伝動機構を介してクローラ1の駆動スプロケットを回転する。又、操作台33の後側にはハンドル35や、各種操作レバー等を配置の操作盤36等を配置して、作業車の各種運転操作を行うことができる。又、前記サイドフレーム4側のクローラ2を駆動する駆動するスプロケットのスプロケット軸は、メインフレーム3側の軸とスプライン嵌合によって伸縮自在に設けられ、(図面省略)車幅変更に拘らず左右両クローラ1,2を駆動できるように伝動軸65で連動構成してある。
【0015】
前記車体5のメインフレーム3上側には荷台8を形成し、荷台8に対し側部荷台13をクローラ2拡張方向と同方向へ拡張可能に構成し、これら荷台8側部荷台13はクロスリンク6,7の拡縮によって昇降される。側部荷台13の拡張は、側部荷台13側から荷台8側に向け突設のパイプ90を荷台8側のパイプ91に挿嵌した構成とし、パイプ90先端には側部荷台13抜け止め用のストッパ92を設けてある。前記車体5に対して荷台8及び側部荷台13を昇降するクロスリンク6,7は、車体5の前部位置と後部位置との二箇所に設けて、これら前後箇所の中間位置に昇降シリンダ37を設けている。これら前後二組のクロスリンク6,7は、厚板偏平材等からなり、長手方向の中央位置にクロスピン45を有して、このクロスピン45の周りに拡縮回動することができる。このようなクロスリンク6,7の長手方向の杆身方向を車体5の横方向に向けて設置する。クロスリンク6,7の先端部はヒンジピン14,15で枢支して、回動支持部9,10を構成している。又、クロスリンク6,7のクローラ1側の先端部には、ガイドロール26,27を有し、このガイドロール26,27を摺動案内する断面コ字状のガイドレール28,29を設けてある。昇降シリンダ37の基端部はメインフレーム3の一部にセットピン46で回動自在に取付けているが、この伸縮されるスピンドル47の先端部は、前後のクロスリンク6,6間を連結する連結板48に連結して、油圧力により昇降シリンダ37を伸縮して、クロスリンク6,7をクロスピン45周りに拡縮回動させて、荷台8をメインフレーム3上で昇降させる。この昇降シリンダ37の伸縮は、エンジン34の右側に設けた油圧ポンプPの油圧レバーP1の操作により行う。
【0016】
前記側部荷台13の横端下面には、適宜高さ形状の係合凸部49,50を形成して、荷台8等の下降時にはこの左右係合凸部49,50間の内側に車体5側の外周のフレームベース25を位置させることができる。この係合凸部49,50間に側部荷台13の一部を位置させた状態で、サイドフレーム4を横方向へ拡縮移動すると、このサイドフレーム4上側に下降している側部荷台13を一体的に拡縮移動させることができる。荷台8及び側部荷台13の外周部にはパイプ材42,43を設け、パイプ枠42,43間をガイドロッド44で拡縮自在に連結してある。
【0017】
図6は、畝80を跨いでの作物収穫状態を示すものであり、キャベツK収穫作業形態を一実施例として説明する。本発明の高床作業車の荷台8及び側部荷台13上面には2本のローラコンベア81を搭載し、その上には収穫箱82を載せ、畝跨ぎ走行をさせながらキャベツKを収穫箱82に収穫する。この場合は、図7の(a),(b)に示すように、山積み状態の収穫箱82を畑外に停車させたトラックTの荷台に積み込む作業形態である。積み込み作業は、高床作業車に載せられた収穫箱82底面高さと、トラックT荷台上に載せたローラコンベア81t上面高さとを略同高さにして、収穫箱82を高床作業車側からトラックT荷台側へ横移動させて行うのであるが、トラックTの荷台高さは様々であり、路面状況にも影響され、又、トラックT荷台に複数個の収穫箱82を積み込む場合には、積み込む毎にトラックT側の荷台が沈み込み、高さが変わってしまうという不都合がある。このような場合においても本発明の高床作業車はトラックT荷台高さと高床作業車側荷台8高さとを略同高さに合わせることが可能であり、又、荷台8及び拡張させた側部荷台13上の広幅域に載置した収穫箱82を昇降させても左右重量バランスが安定した安全、容易なトラックTへの横移動積み込みが可能である。更にローラコンベア81の載置方向を変えればトラックT荷台の左右及び後方からの収穫箱82積み込みが可能であり、高床作業車のトラックT荷台に対する横付け方向についても任意の方向に変更設定することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 クローラ
2 クローラ
3 メインフレーム
4 サイドフレーム
5 車体
6 クロスリンク
7 クロスリンク
8 荷台
9 回動支持部
10 回動支持部
11 摺動支持部
12 摺動支持部
13 側部荷台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一側のクローラ(1)を有したメインフレーム(3)に対して他側のクローラ(2)を有したサイドフレーム(4)を横方向へ移動可能に連設して、車体幅変更可能の車体(5)を構成した高床作業車の荷台支持装置において、前記メインフレーム(3)の上側部にクロスリンク(6),(7)を介して昇降可能の荷台(8)を設けるに、前記クロスリンク(6),(7)は、リンク杆身の方向を車体(5)に対して横方向に沿わせた形態にして、これらメインフレーム(3)及び荷台(8)に対して枢支するクロスリンク(6),(7)の一端側の回動支持部(9),(10)をサイドフレーム(4)寄り側に位置して設定すると共に、他端側の摺動支持部(11),(12)をこれとは反対側に位置して設定し、前記クロスリンク(6),(7)の回動支持部(9),(10)の位置する荷台(8)の外側端に、外側へ拡縮可能の側部荷台(13)連設することを特徴とする高床作業車の荷台支持装置。
【請求項2】
前記車体(5)に対して昇降可能の荷台(8)の外側に連設する側部荷台(13)は、車体(5)に対する下降位置でサイドフレーム(4)の一部に係合可能で、前記サイドフレーム(4)の横方向移動によってこの係合状態を維持して側部荷台(13)を一体的に拡縮移動可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の高床作業車の荷台支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−63721(P2013−63721A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204235(P2011−204235)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000144980)株式会社アテックス (111)