説明

高度にZ−選択的なオレフィンメタセシス

本発明は、一般的に、ホモメタセシス反応による末端オレフィン(1種類または複数種)からの内部オレフィン(1種類または複数種)のZ−選択的形成のための触媒および方法に関する。本発明は、一部の実施形態において、末端二重結合を含む第1の分子と第2の同一の分子をホモメタセシス反応によって反応させ、内部二重結合を含む生成物を得る工程を含み、生成物の内部二重結合が第1の分子の末端二重結合の一方の炭素原子および第2の炭素原子の末端二重結合の一方の炭素原子を含み、そして生成物の内部二重結合の少なくとも約60%がZ−異性体として形成される方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援による研究または開発に関する陳述
本発明は、以下の政府契約の下、支援された:the National Science Foundationにより授与されたCHE−0554734、およびthe National Institutes of Healthより授与された5−R01−GM59426。政府は本発明において一定の権利を有し得る。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的に、末端オレフィンのメタセシスカップリングによって作製される内部オレフィンのZ−選択的形成に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
遷移金属触媒によって触媒される炭素−炭素カップリング反応は、有機合成化学の中でも最も重要である。末端オレフィンの自己同士のメタセシスにより、エチレンと内部オレフィンが生成する(反応式1):
【0004】
【化1】

(式中、xは0〜2の値である)
これは、ホモメタセシスまたはホモカップリング反応と称される。カップリング反応用のメタセシス触媒は、数十年にわたって報告されている。しかしながら、通常、可能な2種類の生成物(E−異性体とZ−異性体)の混合物が生成され、E−異性体が優勢な異性体である。多くの場合、医薬品の合成、または他の化学物質生成物のために有機化学者に必要とされる異性体は、Z−異性体である。また、1,2−二置換内部オレフィンを含む天然生成物に広く見られるのもZ−異性体である。Z−異性体とE−異性体の混合物は、通常、分離するのが困難であり、したがって一般的に望ましくない。内部オレフィンのZ−選択的カップリングは、末端オレフィンのZ−選択的カップリングよりもずっと有用性が低い。これは、Z型の内部オレフィン自体を末端オレフィンのZ−選択的カップリングによって調製しなければならないためである。代替的な内部オレフィンの調製方法(例えば、ウィッティヒ反応)は、一般的に、触媒的でない、および/またはZ−選択的ではない。
【0005】
したがって、改善された方法および触媒が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、一部の実施形態において、末端二重結合を含む第1の分子と第2の同一の分子をホモメタセシス反応によって反応させ、内部二重結合を含む生成物を得る工程を含み、生成物の内部二重結合が第1の分子の末端二重結合の一方の炭素原子および第2の炭素原子の末端二重結合の一方の炭素原子を含み、そして生成物の内部二重結合の少なくとも約60%がZ−異性体として形成される方法を提供する。
【0007】
一部の場合において、該方法は、構造:
【0008】
【化2】

(式中、Mは、MoまたはWであり、Rは、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ヘテロアルキルであって、任意選択的に置換されており、RおよびRは、同じであっても異なっていてもよく、および水素、アルキル、アルケニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであって、任意選択的に置換されており、RおよびRは、同じであっても異なっていてもよく、およびアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シリルアルキルまたはシリルオキシであって、任意選択的に置換されており、ここで、RまたはRの少なくとも一方は、Mに結合している酸素を含む配位子である)を有する触媒を準備する工程、ならびに末端二重結合を含む第1の分子と第2の同一の分子を該触媒の存在下で反応させ、内部二重結合を含む生成物を得る工程(ここで、生成物の内部二重結合は、第1の分子の末端二重結合の一方の炭素原子および第2の炭素原子の末端二重結合の一方の炭素原子を含み、そして生成物の内部二重結合の少なくとも約30%がZ−異性体として形成される)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一部の実施形態によるメタセシス用触媒の非限定的な例を示す。
【図2】図2は、一部の実施形態による非限定的な反応機構を示す。
【図3】図3は、一部の実施形態によるホモメタセシス反応を示す。
【図4A】図4Aは、一部の実施形態による一部の含酸素配位子の合成を示す。
【図4B】図4Bは、一部の実施形態による一部の含酸素配位子の合成を示す。
【図4C】図4Cは、一部の実施形態による一部の含酸素配位子の合成を示す。
【図4D】図4Dは、一部の実施形態による一部の含酸素配位子の合成を示す。
【図4E】図4Eは、一部の実施形態による一部の含酸素配位子の合成を示す。
【図4F】図4Fは、一部の実施形態による一部の含酸素配位子の合成を示す。
【図4G】図4Gは、一部の実施形態による一部の含酸素配位子の合成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の他の態様、実施形態および特長は、添付の図面と合わせて考慮すると以下の詳細説明から自明となろう。添付の図面は模式的であり、一定の縮尺での図示を意図していない。明瞭性重視のため、当業者が本発明を理解するのに図示が必要でない場合は、図ごとにすべての成分を表示していない場合があり、本発明の各実施形態のすべての成分を図示していない場合がある。引用により本明細書に組み込まれる特許出願および特許はすべて、引用によりその全体が組み込まれる。矛盾する場合は、本明細書(定義を含む)に支配される。
【0011】
詳細説明
本発明は、一般的に、内部オレフィンのZ−異性体を同一の末端オレフィンからホモメタセシス反応によって高度に選択的に形成するための触媒およびプロセスに関する。内部オレフィンのZ−異性体は、価値の高い最終生成物を得るための供給原料として使用される重要な化学物質である。Z−異性体とE−異性体の混合物は、異性体の分離が困難で費用のかかるプロセスであり得るため、一般的に望ましくない。したがって、Z−異性体としての生成物が高率で得られるメタセシス用触媒反応が望ましい。
【0012】
本明細書に記載のホモメタセシス反応は、高い選択性および/または高い転化率を伴って進行し得るものである。用語「ホモメタセシス」は、本明細書で用いる場合、二重結合を含む第1の分子と第2の同一の分子間でのメタセシス反応をいう。形成される生成物は内部二重結合を含み、該二重結合は、第1の分子の二重結合の一方の炭素原子および、第2の分子の二重結合の一方の炭素原子を含むものである。反応式1に示すように、および当業者にはわかるように、生成物の内部二重結合は、Z−配置(すなわち、シス)を有するもの、またはE−配置(すなわち、トランス)を有するもののいずれかであり得る。一部の実施形態では、該方法により、ホモメタセシス反応によって、二重結合に関してZ−配置を高率で有する生成物を選択的に合成することが可能となり得る。当業者であれば、本発明との関連において用いる用語「シス」または「Z」および「トランス」または「E」の意味は理解され得よう。
【0013】
一部の実施形態において、該方法は、末端二重結合を含む第1の分子と第2の同一の分子をホモメタセシス反応によって反応させ、内部二重結合を含む生成物を得ることを含む。一部の場合において、第1の分子および第2の分子の該末端結合は一置換型である。したがって、生成物の内部二重結合は、第1の分子の末端二重結合の一方の一置換オレフィン性炭素原子と、第2の炭素原子の末端二重結合の一方の一置換オレフィン性炭素原子を含むものであり得る。生成物の内部二重結合は、本明細書に記載のようにZ−異性体が優位な高いZ:E比で生成され得る。「末端二重結合」は、本明細書で用いる場合、メタセシス反応との関連において、第1の炭素原子と第2の炭素原子間の二重結合(例えば、C=C)であって、第1の炭素原子上の2つの置換基がともに水素であり、第2の炭素原子上の少なくとも1つの置換基は水素でないもの(例えば、HC=CRH)をいう。「内部二重結合」は、本明細書で用いる場合、メタセシス反応との関連において、第1の炭素原子と第2の炭素原子間の二重結合(例えば、C=C)であって、第1および第2の各炭素原子上の少なくとも1つの置換基は水素でないもの(例えば、RC=CR、式中、RとRの少なくとも一方は水素でなく、RとRの少なくとも一方は水素でない)をいう。
【0014】
一部の場合において、第1の分子および第2の分子は、式:
【0015】
【化3】

(式中、Rは、アルキル、アルケニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、アリール、ヘテロアリールまたはアシルであって、任意選択的に置換されている)
を有するものであり得る。生成物の内部二重結合は、第1および第2の各分子の一方のCHRを含む(例えば、RHC=CHRのZ−またはE−異性体を形成している)ものであり得る。
【0016】
当業者には理解されるように、2つの末端オレフィンのホモメタセシス反応の副生成物はエチレンである。少なくとも1種類の内部オレフィンが関与する交差−および/またはホモ−メタセシス反応と比較すると、エチレンの形成(または存在)は、この型の反応における大きな違いである。一部の場合では、エチレンの存在により、エチレンの存在下で行なわれたものでないメタセシス反応と比べて、触媒の性能(例えば、収率、Z:E比など)の低下がもたらされることがあり得る。性能低下の考えられ得る原因は、出発物質の再形成(例えば、エチレンと、ホモメタセシスにより形成された生成物との間でメタセシス反応が起こる場合)および/またはホモメタセシス生成物の異性化によるE−異性体の形成(例えば、ホモメタセシス反応のZ−異性体が金属中心と会合してメタロシクロブタンが形成された後、E−異性体であり得る化合物が放出され得る場合)である。したがって、本明細書に記載の一部の触媒は、エチレンの存在下で行なわれた場合、エチレンの非存在下で行なわれた反応と比べて、性能の低下がほとんどまたは全く示されないものである。触媒の選択方法は本明細書に記載している。
【0017】
一部の実施形態において、ホモメタセシス反応の生成物の内部二重結合は、Z−異性体に対して高い選択性で形成され得る。例えば、生成物の内部二重結合は、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約10:1、約25:1、約50:1、約100:1、またはそれより高いZ:E(すなわち、シス:トランス)比で形成され得る。一部の実施形態では、該二重結合は、Z−異性体が優位な約1:1より高い、約2:1より高い、約3:1より高い、約4:1より高い、約5:1より高い、約10:1より高い、約20:1より高い、約30:1より高い、約40:1より高い、約50:1より高い、約75:1より高い、約100:1より高い、またはそれより高いZ:E比で、生成され得る。一部の場合では、Z−またはE−選択性は、形成される生成物の割合で表示され得る。一部の場合において、生成物は、約50%より多くがZ−異性体、約60%より多くがZ−異性体、約70%より多くがZ−異性体、約80%より多くがZ−異性体、約90%より多くがZ−異性体、約95%より多くがZ−異性体、約98%より多くがZ−異性体、約99%より多くがZ−異性体であり得、または一部の場合では、約99.5%より多いことがあり得る。一部の場合では、生成物は、約50%〜約99%がZ−異性体、約50%〜約90%がZ−異性体、約60%〜約99%がZ−異性体、約60%〜約95%がZ−異性体、約70%〜約98%がZ−異性体、約80%〜約98%がZ−異性体、約90%〜約99%がZ−異性体などであり得る。
【0018】
一部の場合において、該メタセシス反応は高い転化率で進行するものであり得る。転化率は、生成物に変換された制限(limiting)試薬の割合をいう。一部の実施形態では、転化率パーセントは、下記の式:
転化率%=100−{(制限試薬の最終モル数)×100/(制限試薬の初期モル数)}
(式中、制限試薬の初期モル数は、反応槽に添加された制限試薬の量から計算され得、制限試薬の最終モル数は、当業者に知られた手法(例えば、試薬の単離、GPC、HPLC、NMRなど)を用いて求められ得る)
に従って計算され得る。一部の場合において、メタセシス反応は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上の転化率で進行するものであり得る。一部の場合において、転化率は約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%、約99%などである。一部の場合では、転化率は約60%〜約99%、約70%〜約95%、約70%〜約90%、またはこれらの間の任意の他の範囲である。
【0019】
一部の実施形態において、メタセシス反応は、良好なターンオーバー数で進行するものであり得る。用語「ターンオーバー数」は、本明細書で用いる場合、触媒が反応を促進することができる平均回数をいう。一部の実施形態では、ターンオーバー数は、下記の式:
ターンオーバー数=収率%/100×{(制限試薬のモル数)/(触媒のモル数)}
に従って計算され得、ここで、収率パーセントは、下記の式:
収率%=100×{(所望の生成物のモル数)/(制限試薬のモル数)}
に従って計算され得る。例えば、ホモメタセシス反応において、触媒のモル数は、供給した触媒(または触媒前駆物質)の重量から求められ得、関連制限試薬のモル数(例えば、一般的には、2モルの出発物質としての末端オレフィン出発物質のモル数の2分の1が反応し、1モルの生成物が形成される)は、反応槽に添加した制限試薬の量から求められ得、所望の生成物のモル数(例えば、生成物のZ−異性体および/またはE−異性体)は、当業者に知られた手法(例えば、生成物の単離、GPC、HPLC、NMRなど)を用いて求められ得る。一部の場合において、メタセシス反応は、少なくとも約10、少なくとも約25、少なくとも約50、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約1000、少なくとも約3,000、少なくとも約5,000、またはそれ以上のターンオーバー数で進行するものであり得る。一部の場合において、ターンオーバー数は約10〜約1000、約50〜約500、約50〜200、またはこれらの間の任意の他の範囲である。一部の実施形態では、ターンオーバー数は約10、約20、約30、約50、約75、約100、約200、約500、約1000、約5000などである。ターンオーバー頻度は、ターンオーバー数を反応時間の長さ(例えば、秒数)で除算したものである。
【0020】
メタセシス反応は、当業者に知られた手法を用いて行なわれ得る。一部の場合において、該反応は、触媒(例えば、本明細書に記載の)を、末端オレフィンを含む複数の同一の分子に曝露することを伴うものであり得る。一部の場合では、反応混合物はアジテーションされ得る(例えば、撹拌、振盪など)。反応生成物は、一般的に知られた手法を用いて、単離(例えば、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどによって)および/または解析(例えば、ガス液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴分光法など)され得る。
【0021】
少なくとも1つの末端オレフィンを含む分子は、当業者にわかるであろう。少なくとも1つの末端オレフィンを含む分子は、1つ以上のエチレン単位および/またはヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、ケイ素、イオウ、リンなど)を含むものであり得る。末端オレフィンは、一般的に、式:
【0022】
【化4】

(式中、Rは、本明細書に記載のとおりである)
を有する分子を含むものである(comprising)。末端オレフィンを含む分子の非限定的な例は、置換および非置換の線状アルキル内部オレフィン、例えば、C〜C30オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、アリルベンゼン、アリルトリメチルシラン、メチル−10−ウンデセノエート、アリルボロン酸ピナコール(pincol)エステル、アリルベンジルエーテル、N−アリル−4−メチルベンゼンスルホンアミド、アリルアニリン、メチル−9−デセノエート、アリルオキシ(tert−ブチル)ジメチルシラン、アリルシクロヘキサンなど)である。
【0023】
記載のように、ホモメタセシス反応において予期しない結果をもたらす一群の触媒が、本発明により特定された。一部の実施形態において、提供する触媒は、構造:
【0024】
【化5】

(式中、Mは、金属であり;Rは、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ヘテロアルキルであって、任意選択的に置換されており;RおよびRは、同じであっても異なっていてもよく、および水素、アルキル、アルケニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであって、任意選択的に置換されており;RおよびRは、同じであっても異なっていてもよく、およびアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シリルオキシまたはシリルアルキルであって、任意選択的に置換されているか、あるいはRとRが一緒になってMに対する任意選択的に置換された二座配位子を形成している)
を有する金属錯体である。一部の場合において、RまたはRの少なくとも一方は、Mに結合している酸素を含む配位子(例えば、含酸素配位子)またはMに結合している窒素を含む配位子(例えば、含窒素配位子)である。一部の場合において、Rはアルキルである。一部の場合では、MはMoまたはWである。特定の場合では、MはWである。
【0025】
特定の実施形態では、RとRのうち一方が、Mに結合している酸素を含む任意選択的に置換された配位子(例えば、含酸素配位子)であり、そして他方が、Mに結合している窒素を含む任意選択的に置換された配位子(例えば、含窒素配位子)である。一部の場合では、含酸素配位子および/または含窒素配位子は対称面がないものであり得る。他の実施形態では、RとRの両方が含酸素配位子である。
【0026】
式Iの触媒による末端オレフィン(例えば、(R)HC=CH)のZ−選択的ホモカップリングの考えられ得る機構を図2に示す。該触媒の式中、Rは含窒素配位子(例えば、図2ではPyr)であり、Rは含酸素配位子(例えば、図2ではOR’’’)である。一般に、1つの含酸素配位子と1つの含窒素配位子を含むこの型の触媒のNMRまたはX線試験では、syn異性体のみが観察される。一置換アルキリデン錯体のsyn異性体では、アルキリデン炭素原子に結合しているアルキリデン置換基の原子は、N(イミド)−M−C−(アルキリデン)面内に存在したものであり得る、および/またはN(イミド)原子と同じ方向を向いたものであり得る。末端オレフィンでは、配位圏はピロリド(Pyr)に対してトランス側であり、R置換基が隣接している中間体メタラシクロブタンが得られ得る。理論に拘束されることを望まないが、OR’’’が、(R)がOR’’’と同じ方向を向いたメタラ環(あれば)の形成が抑制されるのに充分「大型」である場合、隣接している(R)は、アキシャルなOR’’’基と反対方向を向くことになり得、それにより、生成物のZ−異性体の形成がもたらされ得る。したがって、一部の実施形態において、立体的に大型またはバルキーなOR’’’配位子(例えば、含酸素配位子)により、立体的に大型または立体的にバルキーなOR’’’配位子の含有が少ない実質的に類似した触媒と比べて、形成される生成物のZ−異性体の割合が増大することになり得る。Z−(R)CH=CH(R)の減少により、金属中心において反転配置(図2においてS→R)を有する中間体メチレン種がもたらされる。次いで、メチレン種と(R)CH=CH間の生成的メタセシス反応により、エチレンが生成され、(S)−M(NR)(CH(R))(Pyr)(OR’’’)がリフォーミングされる。当業者は、式Iの触媒の置換基と、(R)がR’’’と同じ方向を向いたメタラ環の形成が抑制されるのを補助する相当な大きさのR’’’基との適切な組合せを選択することができよう(例えば、スクリーニング試験、モデル設計試験などにより)。一部の場合では、N(イミド)基は充分に大型ではないことがあり得る。
【0027】
当業者には、触媒の一般的な化学的性質のため、どの基質と触媒の組合せでも高率のZ−異性体生成物が得られるとは限らないことは理解されよう。当業者は、ある程度の予測を基質/触媒組合せに適用することができよう。例えば、本明細書のどこかに記載のように、一般的な傾向として(だが、各場合に適用可能ではない)、含酸素配位子が立体的に大型または立体的にバルキーとなるように選択される場合、一般的には、高い割合のZ−異性体が得られる。さらに、当業者は、触媒と基質の組合せをスクリーニングし、高率のZ−異性体生成物が得られる組合せの特定を容易に行なうための方法および手法を承知しているであろう。例えば、触媒と基質の適切な組合せのスクリーニング方法は、触媒を含む第1の溶液と、反応体(1種類または複数種)を含む第2の溶液を準備することを伴うものであり得る。該溶液(1種類または複数種)には、所望の解析と適合性である溶媒(例えば、NMR手法のための重水素化溶媒、HPLC、GLC手法のための極性/無極性溶媒など)が含まれ得る。第1の溶液と第2の溶液は、適切な条件(例えば、温度、時間、アジテーションなど)下で合わされ得、適切な反応時間が経過した後、得られた溶液は、当該技術分野で知られた種々の方法を用いて解析され得る。一部の場合において、解析前に、該溶液をフィルタリングしてもよい。Z:E比、転化率などの解析では、生成物は、NMR(例えば、H NMR、13C NMRなど)、HPLC、GLCなどによって解析され得る。一部の場合では、1種類より多くの解析が行なわれ得る。当業者は、解析対象の生成物に基づいて、使用する適切な方法または方法の組合せを決定することができよう。一部の場合において、スクリーニング試験は自動化されたものであり得る(例えば、ロボットの使用により)。さらなる反応条件およびパラメータは、本明細書に記載している。
【0028】
本明細書で用いる場合、用語「含酸素配位子」は、金属原子に配位することができる少なくとも1個の酸素原子を含む配位子(例えば、Rおよび/またはR)をいうために使用され得る。すなわち、該用語は、Mに結合している酸素を含む配位子をいう。また、一部の場合では、用語「含酸素配位子」は、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む配位子前駆体を示していることもあり得、この場合、ヒドロキシル基の脱プロトン化により負荷電酸素原子がもたらされ、次いで、これが金属原子に配位する。含酸素配位子は、少なくとも1個の酸素原子を含むヘテロアリールまたはヘテロアルキル基であり得る。一部の場合において、該酸素原子は、アルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基の置換基上に位置するものであり得る。例えば、含酸素配位子はヒドロキシ置換アリール基であり得、この場合、金属中心に配位されると、ヒドロキシル基が脱プロトン化される。含酸素配位子は、キラルであってもアキラルであってもよい、および/または単座であっても二座であってもよい。単座配位子は、金属中心に、金属の1つだけの配位部位および/または配位子の1つだけの部位によって結合または配位する配位子である。二座配位子は、金属中心に、金属の2つの配位部位および/または配位子の2つの部位によって結合または配位する配位子である(例えば、ジアルコキシド配位子)。非限定的なアキラルな単座の含酸素配位子としては、−OC(CH)(CF、−OC(CH(CF)、−OC(CH、−OSiR(例えば、−OSiPh)、−OAr(Ar=アリール基、例えば、フェニル、Mes(Mes=2,4,6−Me)、2,6−i−Pr、HIPT(ヘキサイソプロピルターフェニル)、TPP(2,3,5,6−PhH)など)などが挙げられる。特定の実施形態では、アキラルな単座の含酸素配位子は−OHIPTである。一部の場合では、含酸素配位子はシリルオキシ基であり得る。
【0029】
一部の場合において、含酸素配位子はキラルであってもよく、ラセミ混合物または精製された立体異性体として提供され得る。一部の実施形態では、キラルな含酸素配位子は少なくとも80%の光学純度で存在し得る、すなわち、含酸素配位子試料は、90%の一方のエナンチオマーと10%の他方のものを含むものであり得る。一部の実施形態では、キラルな含酸素配位子は、少なくとも90%光学的に純粋、少なくとも95%光学的に純粋、または一部の場合では、少なくとも99%光学的に純粋であり得る。
【0030】
一部の場合において、対称面がない含酸素配位子(例えば、RまたはR)は、下記の構造
【0031】
【化6】

(式中、Rは、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはヘテロアルキルであって、任意選択的に置換されており;Rは、水素、−OH、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アシルオキシまたは−OPであって、任意選択的に置換されているか;あるいは、RとRが一緒になって、任意選択的に置換された環を形成しており;Rは、−OH、−OPまたはアミノであって、任意選択的に置換されており;R10は、水素、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはアシルであって、任意選択的に置換されており;R11、R12、R13およびR14は各々、同じであっても異なっていてもよく、およびアリール、ヘテロアリール、アルキル、ヘテロアルキルまたはアシルであって、任意選択的に置換されているか;あるいは、R11とR12が一緒になって、任意選択的に置換された環を形成しているか;あるいは、R13とR14が一緒になって、任意選択的に置換された環を形成しており;そしてPは保護基である)を含むものであり得る。該環は芳香族または非芳香族の環であり得る。一部の実施形態では、該環は複素環であり得る。一部の場合において、保護基はSi保護基(例えば、tert−ブチルジメチルシリルまたはTBS)であり得る。一部の実施形態では、含酸素配位子は、置換アルキル基(CFなど)を含むものであり得る。
【0032】
一部の実施形態において、RおよびRは、ビアリール親構造にヘテロ原子(酸素原子など)を介して結合される。例えば、RおよびRは、−OH、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシまたは−OP(式中、Pは保護基(例えば、Si保護基)である)であり得る。一部の場合では、Rは−OPであり、Rは−OHまたはアミノである。
【0033】
対称面がない含酸素配位子または対称面がない含窒素配位子の例は、構造:
【0034】
【化7】

(式中、RおよびRは各々、同じであっても異なっていてもよく、および水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、アシルまたは保護基であって、任意選択的に置換されており、R10は、水素、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはアシルであって、任意選択的に置換されており、R11、R12、R13およびR14は各々、同じであっても異なっていてもよく、およびアリール、ヘテロアリール、アルキル、ヘテロアルキルまたはアシルであって、任意選択的に置換されているか、あるいはR11とR12が一緒になって、任意選択的に置換された環を形成しているか;あるいは、R13とR14が一緒になって、任意選択的に置換された環を形成しており、R15は、アルキル、アリールまたは保護基であって、任意選択的に置換されており、R16は、水素またはアミン保護基であり、Xは存在していても存在していなくてもよく、および存在する場合は非妨害基であり、各Zは、同じであっても異なっていてもよく、および(CH、N、Oであって、任意選択的に置換されており、nは0〜5であり、mは1〜4である)
を有する基であり得る。一部の実施形態では、RおよびRは各々、同じであっても異なっていてもよく、および水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、CF、Si−トリ−アルキル、Si−トリ−アリール、Si−アルキル−ジフェニル、Si−フェニル−ジアルキルまたはアシル(例えば、エステル)であって、任意選択的に置換されており;R10は、水素、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはアシルであって、任意選択的に置換されており;R11、R12、R13およびR14は各々、同じであっても異なっていてもよく、およびアリール、ヘテロアリール、アルキル、ヘテロアルキルまたはアシルであって、任意選択的に置換されているか;あるいは、R11とR12が一緒になって、任意選択的に置換された環を形成しているか;あるいは、R13とR14が一緒になって、任意選択的に置換された環を形成しており;R15は、アルキル、アリール、保護基Si−トリアルキル、Si−トリアリール、Si−アルキルジフェニル、Si−フェニルジアルキルまたはアシルであって、任意選択的に置換されており;R16は、水素またはアミン保護基であり;Xは存在する場合は非妨害基であり得;各Zは、同じであっても異なっていてもよく、および(CH、N、Oであって、任意選択的に置換されており;nは0〜5(またはその間の任意の範囲)であり;mは1〜4(またはその間の任意の範囲)である。一部の場合において、RおよびR10は各々、同じであるか異なっており、およびハロゲン、メチル、t−ブチル、CFまたはアリールであって、任意選択的に置換されている。
【0035】
ある群の実施形態では、R(またはR)が、対称面を含む、もしくは対称面がない単座の含酸素配位子、または対称面がない含窒素配位子であり;R(またはR)が、対称面を有する含窒素配位子である。本明細書で用いる場合、「含窒素配位子」(例えば、Rおよび/またはR)は、金属中心に窒素原子を介して結合することができる任意の種であり得る。すなわち、該用語は、Mに結合している窒素を含む配位子をいう。また、一部の場合では、用語「含窒素配位子」は、少なくとも1つの窒素基を含む配位子前駆体を示していることもあり得、この場合、該窒素基の脱プロトン化により負荷電窒素原子がもたらされ、次いで、これが金属原子に配位する。一部の場合において、該窒素原子は、ヘテロアリールまたはヘテロアルキル基の環内原子であり得る。一部の場合では、該窒素原子は置換アミン基であり得る。本明細書に記載の触媒において、含窒素配位子は、金属中心(MoまたはWなどの金属中心)に配位するのに充分なイオン性を有するものであり得ることを理解されたい。含窒素配位子(例えば、対称面を有するもの)の例としては、限定されないが、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、インドリル、インダゾリル、カルバゾリル、モルホリニル、ピペリジニル、オキサジニル、その置換誘導体などが挙げられる。一実施形態において、RおよびRはピロリル基であり得る。一部の実施形態では、含窒素配位子はキラルであってもよく、ラセミ混合物または精製された立体異性体として提供され得る。一部の場合では、対称面を有する含窒素配位子は、構造:
【0036】
【化8】

(式中、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、および水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールであって、任意選択的に置換されており;Xは存在していても存在していなくてもよく、および存在する場合は非妨害基である)
を有する基であり得る。本明細書で用いる場合、用語「非妨害基」は、該化合物の性質(例えば、触媒活性、溶解性など)に対して有意に影響または改変しない任意の基(例えば、有機基または有機基に対する許容置換基)をいう。
【0037】
一部の場合において、Rは、連結されてRまたはRと環を形成していてもよい。例えば、金属錯体は、触媒として使用する前は連結されてRまたはRと環を形成しているRを含むものであり得、メタセシス反応において触媒が作用し始めるとRとRまたはR間の連結が崩壊され、したがって、各配位子が単座となり得る。該環は、任意の数の炭素原子および/またはヘテロ原子を含むものであり得る。一部の場合において、該環状オレフィンは、1つより多くの環を含むものであり得る。該環は、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、またはそれより多くの原子を含むものであり得る。
【0038】
一部の場合において、RとRが一緒になって、キラルな二座配位子を形成している。一部の場合において、該配位子は少なくとも80%の光学純度のものであり得る。キラルな二座配位子の例としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アルカリール、アラルキルで任意選択的に置換されており、任意選択で、ヘテロ原子、カルボニル基、シアノ、NO、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、アミノ、チオアルキル、チオアリール、含硫基、ハライドが割り込んだ、またはこれらで終結したビフェノレートおよびビナフトレート、その置換誘導体などが挙げられる。一部の場合において、キラルな二座配位子は、触媒の反応性部位に立体選択性を付与するために、金属中心の近位の位置が置換され得る。
【0039】
本発明の触媒および/または触媒前駆物質は、置換イミド基(例えば、N−R)を含むものであり得る。理論に拘束されることを望まないが、該イミド基は、立体的保護をもたらすこと、および/または二分子分解の可能性を低減させることにより、本明細書に記載の有機金属組成物を安定化させ得る。一部の実施形態では、Rは、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはヘテロアルキルであり得、任意選択的に置換されている。一部の場合では、Rは、アリールまたはアルキルである。一部の場合では、Rは、立体的に大型またはバルキーとなるように選択され得、フェニル基、置換フェニル基(例えば、2,6−二置換フェニル、2,4,6−三置換フェニル)、多環式の基(例えば、アダマンチル)、または他の立体的に大型基が挙げられる。一部の実施形態では、Rは、2,6−ジイソプロピルフェニルなどの2,6−ジアルキルフェニルであり得る。例えば、一部の実施形態において、Rは、
【0040】
【化9】

(式中、各R17は、同じであっても異なっていてもよく、および水素、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル(例えば、アルコキシ)、アリール、アシルまたは−OP(式中、Pは保護基である)であって、任意選択的に置換されている)
である。
【0041】
一部の場合において、MはWであり、R
【0042】
【化10】

でない。
【0043】
一部の場合では、MはWであり、R
【0044】
【化11】

(式中、各R17は、同じであっても異なっていてもよく、および水素、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、アシルまたは−OPであって、任意選択的に置換されており、Pは保護基である)
である。
【0045】
一部の実施形態において、R
【0046】
【化12】

であり;Rは、CMePhまたはCMeであり;Rは、下記の構造
【0047】
【化13】

(式中、各R17は、同じであるか異なっており、およびハロゲン、メチル、t−ブチル、CFまたはアリールであって、任意選択的に置換されており、Rは、対称面を有する含窒素配位子であり、R、R10およびR15は、本明細書に記載のとおりである)
のエナンチオマーである。
【0048】
本発明の触媒および/または触媒前駆物質は、さらに、置換アルキリデン基(例えば、CR)を含むものであってもよい。該アルキリデン基は、一置換(例えば、RとRの一方が水素である)であっても、例えば、アルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基(任意選択的に置換されている)での二置換であってもよい。一部の場合において、該アルキリデンは、例えば、t−ブチル、ジメチルフェニルなどでの一置換であり得る。一部の場合において、RはCMePhまたはCMeであり、Rは水素である。
【0049】
一部の場合において、1つ以上の立体的に大型の配位子を含む触媒が合成され得る。例えば、R〜Rの少なくとも1つは、立体的に大型基、例えば、tert−ブチル、イソプロピル、フェニル、ナフチル、アダマンチル、その置換誘導体などを含むものであり得る。また、立体的に大型の配位子として、配位子が金属に結合している場合は金属中心のごく近位に位置する置換基を含む配位子も挙げられ得る。一部の場合において、触媒が含酸素配位子と含窒素配位子を含む場合、含酸素配位子が立体的に大型であり得る。
【0050】
一部の実施形態において、該触媒は、下記の構造:
【0051】
【化14】

(式中、R19は、F、Cl、BrまたはIである)
のうちの1つを含むものであり得る。該触媒の他の非限定的な例としては、M(NAr)(Pyr)(CHR)(OHIPT)、M(NAr)(Pyr)(C)(OHIPT)、M(NAr)(CHCMePh)(Pyr)(BiphenTMS)、M(NAr)(CHCMePh)(MePyr)(BrBitet)、M(NAr)(CHCMePh)(MePyr)(MesBitet)、W(NAr)(CHCMePh)(MePyr)(OPhPh)、M(NAr)(CHCMePh)(Pyr)((Trip)BitetTMS)、M(NArCl)(CHCMe)(Pyr)(BiphenTMS)、M(NArCl)(CHCMe)(MePyr)(OSi(TMS))、M(NArCl)(CHCMe)(MePyr)(OPhPh)、M(NArCl)(CHCMe)(MePyr)(HIPTO)、M(NArCl)(CHCMe)(MePyr)(HIPTO)、M(NArCl)(CHCMe)(MePyr)(BrBitet)、M(NArCl)(CHCMe)(MePyr)(MesBitet)、M(NArCl)(CHCMe)(Pyr)(MesBitet)、M(NAd)(MePyr)(CHR)(BrBitet)、M(NAr’)(Pyr)(CHR)(MesBitetOMe)、M(NAd)(CHCMePh)(MePyr)(OSi(TMS))、M(NAd)(CHCMePh))(MePyr)(HIPTO)、M(NAd)(CHCMePh)(MePyr)(MesBitet)、M(NAr’)(Pyr)(CHR)(OHIPT)、M(NAr’)(CHCMePh)(MePyr)(OSi(TMS))、M(NAr’)(CHCMePh)(MePyr)(OPhPh)、M(NAr’)(CHCMePh)(MePyr)(HIPTO)、M(NAr’)(CHCMePh)(MePyr)(BrBitet)、M(NAr’)(CHCMePh)(Pyr)(MesBitet)、M(NAr’)(CHCMePh)(MePyr)(MesBitet)、M(NAr’)(CHCMePh)(Pyr)(MesBitetOMe)、M(NAr’)(CHCMePh)(Pyr)(MesBitet)などが挙げられ、式中、Mは、MoまたはWであり、Arは2,6−ジイソプロピルフェニルであり、ArClは2,6−ジクロロフェニルであり、Ar’は2,6−ジメチル(dimethy)フェニルであり、Adは1−アダマンチルであり、Mesはメシチルであり、MePyrは2,5−ジメチルピロリドであり、Pyrはピロリドであり、TBSはジメチル−t−ブチルシリルであり、Tsはトシルであり、OTfはトリフラートであり、Tripは2,4,6−トリイソプロピルフェニルであり、HIPTOはヘキサイソプロピルターフェノレートであり、OSi(TMS)は1,1,1,3,3,3−ヘキサメチル−2−(トリメチルシリル)トリシラン−2−オレートであり、Biphenは3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’,6,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジオールであり、BiphenTMSは3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’,6,6’−テトラメチル−2’−(トリメチルシリルオキシ)ビフェニル−2−オレートであり、Bitetは5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジオールであり、TripBitetは3,3’−ビス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジオールであり、TripBitetTMSは3,3’−ビス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)−2’−(トリメチルシリルオキシ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレートであり、BrBitetは3,3’−ジブロモ−2’−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレートであり、MesBitetは2’−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−3−メシチル−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレートであり、MesBitetは3,3’−ジメシチル−2’−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレートであり、そしてMesBitetOMeは3,3’−ジメシチル−2’−メトキシ−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレートである。
【0052】
一部の場合において、該触媒は、ステレオジェン金属原子を含むものである。本明細書で用いる場合、用語「ステレオジェン金属原子」は、その通常の意味を示し、少なくとも2つの配位子(例えば、少なくとも4つの配位子)に配位された金属原子であって、配位子が金属原子のまわりに、全体構造(例えば、金属錯体)に金属原子に対して対称面がないように配列されているものをいう。一部の場合において、ステレオジェン金属原子は、少なくとも3つの配位子、少なくとも4つの配位子、少なくとも5つの配位子、少なくとも6つの配位子、またはそれ以上に配位されたものであり得る。特定の実施形態では、ステレオジェン金属原子は4つの配位子に配位されたものであり得る。ステレオジェン金属中心を含む金属錯体では、該金属錯体の反応部位に、対称面を有する基質分子が該反応部位において反応して対称面がない生成物が形成され得るような充分な空間特異性がもたらされ得る。すなわち、金属錯体のステレオジェン金属中心により、ステレオジェネシティ(stereogenicity)が有効に誘導されるのに充分な形状特異性が付与され、キラルな分子生成物が得られ得る。
【0053】
一部の場合において、該触媒が、ステレオジェン金属原子と該金属原子に結合している2つ以上の配位子を含むものである場合、該金属錯体と会合している各配位子は有機基を含むものである。配位子は単座配位子であり得る、すなわち、配位子はステレオジェン金属原子に、該配位子の1つの部位(例えば、配位子の炭素原子またはヘテロ原子)によって結合する。一部の場合において、単座配位子は金属中心に、単結合または多重結合によって結合するものであり得る。一部の場合において、金属錯体は、対称面がない少なくとも1つの配位子を含むものである。すなわち、ステレオジェン金属原子に結合している少なくとも1つの配位子はキラル配位子である。一部の場合において、金属錯体は、含酸素配位子、例えば、キラルおよび/またはアキラルな含酸素配位子を含むものである。一部の場合において、金属錯体は、含窒素配位子、例えば、キラルおよび/またはアキラルな含窒素配位子を含むものである。例えば、配位子は、キラルまたはアキラルな窒素複素環(ピロリドなど)であり得る。一部の場合において、金属原子は少なくとも1つの炭素原子に結合され得る。一部の実施形態では、該触媒は、1:1より大きい、約5:1より大きい、約7:1より大きい、約10:1より大きい、約20:1より大きい、または一部の場合では、より大きいジアステレオマー比の金属錯体を含むものである。
【0054】
適宜、本発明で用いる触媒は、所望の具体的な化学反応を媒介し得る金属の使用を伴うものであってもよい。一般的に、任意の遷移金属(例えば、d電子を有するもの)、例えば、周期表の第3〜12族またはランタノイド系列のうちの1つから選択される金属が該触媒の形成に使用され得る。しかしながら、一部の実施形態において、金属は、第3〜8族、または一部の場合では、第4〜7族から選択されるものであるのがよい。一部の実施形態では、金属は第6族から選択され得る。本明細書で用いる規則によれば、用語「第6族」は、クロム、モリブデンおよびタングステンを含む遷移金属群をいう。一部の場合において、金属はモリブデンまたはタングステンである。一部の実施形態では、金属はルテニウムではない。このような触媒は、類似した反応(メタセシス反応など)を行なうことが知られているため、類似した性能を示すことが予測され得る。しかしながら、異なる配位子では、例えば、反応性が改良されること、および望ましくない副反応が抑制されることにより、触媒性能が改良されると考えられる。特定の実施形態では、該触媒はモリブデンを含むものである。さらに、本発明はまた、これらの元素形態を含む不均一系触媒の形成も含み得る。
【0055】
一部の場合において、触媒はルイス塩基付加体であり得る。用語「ルイス塩基」および「ルイス塩基付加体」は当該技術分野で知られており、別の化学物質部分に電子対を供与し得る化学物質部分をいう。例えば、金属錯体は、テトラヒドロフラン(THF)と合わされ得、この場合、少なくとも1つのTHF分子が金属中心に配位してルイス塩基付加体を形成する。一部の場合において、ルイス塩基付加体はPMeであり得る。一部の実施形態では、触媒は、ルイス塩基付加体として形成および保存され得、後続の反応工程で「活性化」され、ルイス塩基付加体を含まない触媒に回復され得る。
【0056】
当業者は、メタセシス反応における使用のための本明細書に記載の触媒を合成する方法を承知しているであろう。触媒は、単離してもよく、インサイチュで形成し、後続の反応(例えば、ワンポット反応)に利用してもよい。用語「ワンポット」反応は当該技術分野で知られており、別の場合では多工程の合成が必要とされたであろう生成物が1つの工程で得られ得る化学反応、および/または単一の反応槽で行なわれ得る一連の工程を含む化学反応をいう。ワンポット手順では、触媒および/または中間体の単離(例えば、精製)の必要性が排除され得るとともに、合成工程の数および廃棄物(例えば、溶媒、不純物)の生成が低減され得る。さらに、該触媒および/または他の生成物を合成するのに必要とされる時間とコストが低減され得る。一部の実施形態において、ワンポット合成は、少なくともいくつかの反応成分を単一の反応チャンバに同時添加することを含むものであり得る。一実施形態では、ワンポット合成は、種々の試薬を単一の反応チャンバに逐次添加することを含むものであり得る。
【0057】
一部の実施形態において、式中のMがMまたはWである構造(I)を有する触媒は、以下の手順に従って調製され得る。モリブデン酸塩またはタングステン酸塩、例えば、モリブデン酸アンモニウム(例えば、(NHMo)、モリブデン酸アルキルアンモニウム(例えば、[Mo26][CHN(C17、[Mo26][N(C1225)またはその等価体が、不活性雰囲気下で、一般式NHXR(式中、Rは本明細書に定義したとおりであり、Xは水素またはトリメチルシリル(例えば、(CHSiNHAr(式中、Arはアリールまたはヘテロアリール基である)である)のアミンと合わされ得る。NHXRを脱プロトン化し得る化合物、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、置換ピリジンまたは他の等価な窒素塩基と、ハロゲン化剤またはトリフラート化剤(例えば、MeSiCl、MeSiBr、MeSiSOCFまたはその等価体)が、反応混合物に添加され得る。等価量の配位ルイス塩基を含めても含めなくてもよい適当な溶媒(例えば、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、ピリジン、キヌクリジン、(R)PCHCHP(R)、およびP(R)(式中、R=アルキル、アリール))が使用され得、反応混合物は、およそ60〜70℃まで少なくとも約6時間、不活性雰囲気(例えば、窒素雰囲気)下で加熱され得、それにより、Mo(NR(ハロゲン)(ルイス塩基)(式中、xは0、1または2である)が得られ得る。
【0058】
反応生成物は、溶液中に保持してもよく、蒸留手法を用いた溶液からの揮発性成分のエバポレーションによって固形物として単離してもよい。該化合物を2当量のグリニャール試薬またはリチウム試薬(または等価体)(ClMgCHRなど)で処理すると、一般式M(NR(CHR(式中、R、RおよびRは、先に定義したものである)を有する中間体の生成がもたらされ得る。この錯体は、次いで、1,2−ジメトキシエタン(DMEまたは他の適当な溶媒)中で、3当量の強酸(トリフリン酸(HOSOCF)など)で処理され、それにより、6配位錯体M(NR)(CR)(OSOCF・(DME)(またはたの等価体)が生成され得る。1当量ずつのYRとYR(式中、RおよびRは先に定義したとおりであり、Yは、H、Li、Na、Kなどである)または2当量のYR(このとき、RとRは同じである)または1当量の二座配位子(このとき、RとRが一緒になって二座配位子を形成している)をこの錯体と反応させると、構造M(NR)(CR)(R)(R)を有する触媒が得られ得る。
【0059】
一部の実施形態において、触媒は、構造(II)
【0060】
【化15】

(式中、MはMoまたはWであり;Rは、アルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであって、任意選択的に置換されており;RおよびRは、同じであっても異なっていてもよく、および水素、アルキル、アルケニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであって、任意選択的に置換されており;R20およびR21は、同じであっても異なっていてもよく、およびヘテロアルキルまたはヘテロアリールであって、任意選択的に置換されているか、あるいはR20とR21が一緒になってMに対する任意選択的に置換された二座配位子を形成しており;この場合、R20とR21の各々が、少なくとも1個の窒素原子を含むもの(例えば、含窒素配位子)である)を有する触媒前駆物質から形成され、単離されるもの、またはインサイチュで生成されるものであり得る。一部の場合において、R20とR21の各々が窒素原子を介してMに配位する。例えば、R20とR21は、ともに、金属にピロリル環の窒素原子を介して配位するピロリル基であり得る。含窒素配位子は、含酸素配位子が含窒素配位子と容易に置き換わって触媒が生成され得るように含酸素配位子と相互作用するように、選択され得る。
【0061】
スキーム1の実例としての実施形態によって示すように、触媒は、触媒前駆物質(II)から、触媒前駆物質を含酸素配位子(例えば、RおよびR)と、該含酸素配位子がR20およびR21と置き換わって構造(III)を有する触媒が形成されるように反応させることにより形成され得、このとき、R20とR21(プロトン化形態または非プロトン化形態)は放出され得る。RおよびRは含酸素配位子であってもよく、RとRが一緒になって二座の含酸素配位子を形成していてもよい。一部の実施形態では、R20またはR21の一方のみが含酸素配位子と反応し、例えば、スキームIに示す構造(IV)または(V)を有する触媒を形成する。
【0062】
【化16】

一部の場合において、含酸素配位子は、金属中心に配位する前はプロトン化形態であり得、次いで、金属中心に配位されると、充分なイオン性を有するものとなり得る(例えば、脱プロトン化され得る)。同様に、含窒素配位子は、金属中心に結合しているときは脱プロトン化形態であり得るが、金属中心から放出されるとプロトン化された状態になり得る。例えば、R20およびR21は、金属中心に、触媒前駆物質がビフェノレートなどの含酸素配位子に曝露されると、ビフェノレート配位子がピロリル基と置き換わって触媒が形成され、2当量のピロールの放出がもたらされ得るように配位するピロリル基であり得る。本発明の配位子は、そのプロトン化形態または脱プロトン化形態に従う命名法を用いて記載している場合があり得るが、各場合において、配位子には、例えば、金属中心または反応混合物中の不活性種に結合されるいずれかの配位子としてのその機能が果たされるための適切な形態が採用されることを理解されたい。例えば、実例としての一実施形態において、用語「ピロリル」は、金属中心に配位し得る脱プロトン化されたアニオン性ピロール基を示すために使用され得、一方、用語「ピロール」は、金属中心に配位しないが、溶液中に、反応混合物中の他の成分と反応しない不活性種として存在し得る中性ピロール基を示すために使用され得る。
【0063】
化学反応を行なうための触媒をインサイチュで生成させ得る場合、最初に、含窒素配位子が、含酸素配位子で置き換えられると該含窒素配位子またはそのプロトン化型が化学反応を妨害しないように選択され得る。すなわち、R20およびR21は、放出されたR20および/またはR21基によって、該触媒が関与し得る後続の反応が妨害され得ないように、または反応液中の任意の他の種と反応し得ないように選択され得る。一部の場合において、R20およびR21基は、プロトン化形態(例えば、H−R20およびH−R21、またはH(R20−R21))で放出され得るが、他の種または試薬(例えば、後続の反応に関与するもの)に対しても同様に不活性であり得る。当業者であれば、具体的な適用における使用に適した適切な含窒素配位子(1種類または複数種)(例えば、R20およびR21)を、例えば、放出された含窒素配位子(1種類または複数種)に炭素−炭素二重結合(生成されたオレフィンメタセシス触媒と反応することがあり得る)が含まれないように選択することができよう。
【0064】
一部の実施形態において、ステレオジェン金属中心を含む触媒は、対称面を有する有機金属組成物(例えば、触媒前駆物質)を、対称面がない単座配位子と反応させ、ステレオジェン金属原子を含む触媒を生成させることにより作製され得る。一部の場合では、該方法は、ステレオジェン金属中心を含む有機金属組成物のラセミ混合物を、対称面がない単座配位子と反応させ、ステレオジェン金属原子を含む金属錯体を生成させることを含むものであり得る。該金属錯体は2つ以上の配位子を含むものであってもよく、このとき、各配位子はステレオジェン金属原子に1つの結合によって結合する、すなわち、各配位子は単座配位子である。一部の場合において、該方法は、反応槽において、対称面を有する有機金属組成物を含み、2つ以上の配位子を含む触媒前駆物質を準備することを含むものであり得る。少なくとも1つの配位子が単座配位子(例えば、含酸素または含窒素配位子)で置き換えられ、それにより、ステレオジェン金属原子を含む金属錯体が合成され得る。
【0065】
本明細書に記載のように、イミド、アルコキシド、および/またはアルキリデン配位子の組合せが、具体的な適用に適合するように選択され得る。例えば、一部の場合では、立体的に大型または立体的にバルキーな配位子および/または配位子置換基によって、より高度の安定性が触媒に付与され得るが、一部の場合では触媒の反応性が低下し得る。一部の場合では、より小型の配位子および/または置換基によって、より反応性の触媒(安定性は低減され得る)が生成されることがあり得る。一部の実施形態では、立体的に大型または立体的にバルキーなアルコキシド配位子が、立体的にあまり大型またはバルキーでないアルコキシド配位子と比べて、生成物のZ−異性体の形成に有用であり得る。当業者であれば、かかる要素のバランスをとり、本発明の触媒のための適切な配位子の組合せを選択することができよう。
【0066】
該触媒(または触媒前駆物質)は、反応混合物中に準化学量論量(例えば、触媒量)で供給され得る。一部の特定の実施形態において、該量は、どの試薬が化学量論的過剰であるかによるが、化学反応の制限試薬に対して約0.01〜約50mol%の範囲である。一部の実施形態では、触媒は、制限試薬に対して約40mol%以下で存在させる。一部の実施形態では、触媒は、制限試薬に対して約30mol%以下で存在させる。一部の実施形態では、触媒は、制限試薬に対して約20mol%未満、約10mol%未満、約5mol%未満、約4mol%未満、約3mol%未満、約2mol%未満、約1mol%未満、約0.5mol%未満で、またはそれより少なく存在させる。一部の場合において、触媒は、約0.5mol%、約1mol%、約2mol%、約4mol%、約5mol%、約10mol%などで存在させる。触媒錯体の分子式に1つより多くの金属が含まれている場合、反応に使用される触媒錯体の量は、相応して調整され得る。
【0067】
一部の場合において、本明細書に記載のメタセシス反応は溶媒の非存在下(例えば、未希釈)で行なわれ得る。一部の場合では、メタセシス反応は、1種類以上の溶媒の存在下で行なわれ得る。本発明における使用に適したものであり得る溶媒の例としては、限定されないが、ベンゼン、p−クレゾール、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルエーテル、グリコール、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ジクロロメタン(または塩化メチレン)、クロロホルム、四塩化炭素、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチル−リン酸トリアミド、酢酸エチル、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、その混合物などが挙げられる。
【0068】
メタセシス反応は任意の適当な温度で行なわれ得る。一部の場合において、反応は、だいたい室温(例えば、約25℃、約20℃、約20℃〜約25℃など)で行なわれる。しかしながら、一部の場合において、反応は、室温より下または上の温度、例えば、約−70℃、約−50℃、約−30℃、約−10℃、約−0℃、約10℃、約30℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約120℃、約140℃など行なわれることがあり得る。一部の実施形態では、反応は、1つより多くの温度で行なわれ得る(例えば、反応体を第1の温度で添加し、反応混合物を第2の温度でアジテーションする、ここで、第1の温度から第2の温度の移行は緩徐であっても急速であってもよい)。
【0069】
メタセシス反応は、任意の適当な時間進行させ得る。一部の場合において、反応は、約10分間、約20分間、約30分間、約40分間、約50分間、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、約16時間、約24時間、約28時間など進行させる。一部の場合において、反応混合物のアリコートを取り出し、中間時点で解析して反応の進行を調べてもよい。
【0070】
本明細書で用いる場合、用語「反応させる(こと)」は、2種類以上の成分間の結合の形成による化合物の生成をいう。一部の場合において、化合物は単離される。一部の場合では、化合物は単離せず、インサイチュで形成させる。例えば、第1の成分と第2の成分を反応させると、共有結合(例えば、配位子と金属間に形成される結合、またはメタセシス反応の2つの基質間に形成される結合)によって連結された第1の成分と第2の成分を含む1種類の反応生成物が形成され得る。すなわち、用語「反応させる(こと)」は、溶媒、触媒、塩基、配位子、または該成分(1種類または複数種)との反応が起こることを促進させる機能を果たし得る他の物質の相互作用をいうのではない。
【0071】
本明細書で用いる場合、用語「有機基」は、少なくとも1つの炭素−炭素結合および/または炭素−水素結合を含む任意の基をいう。例えば、有機基としては、アルキル基、アリール基、アシル基などが挙げられる。一部の場合において、有機基は、1個以上のヘテロ原子を含むもの(ヘテロアルキルまたはヘテロアリール基など)であり得る。また、有機基は有機金属基を含むものであってもよい。有機基でない基の例としては、−NOまたは−Nが挙げられる。有機基は、後述するように、任意選択的に置換されたものであってもよい。
【0072】
用語「有機金属」は、当該技術分野におけるその通常の意味を示し、1つまたは1つより多くの有機配位子に結合された少なくとも1つの金属原子を含む組成物をいう。一部の場合において、有機金属化合物は、少なくとも1つの炭素原子に結合された金属原子を含むものであり得る。
【0073】
用語「キラル」は、当該技術分野におけるその通常の意味を示し、その鏡像と重ね合わすことができない分子をいい、得られる重ね合わすことができない鏡像は、「エナンチオマー」として知られており、(R)エナンチオマーまたは(S)エナンチオマーのいずれかで表示される。典型的には、キラル分子には対称面がない。
【0074】
用語「アキラル」は、当該技術分野におけるその通常の意味を示し、その鏡像と重ね合わすことができる分子をいう。典型的には、アキラルな分子は対称面を有する。
【0075】
語句「保護基」は、本明細書で用いる場合、潜在的に反応性の官能基を望ましくない化学変換から保護する一時的な置換基をいう。かかる保護基の例としては、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、ならびにそれぞれ、アルデヒドおよびケトンのアセタールおよびケタールが挙げられる。「Si保護基」は、Si原子を含む保護基、例えば、Si−トリアルキル(例えば、トリメチルシリル、トリブチルシリル、t−ブチルジメチルシリル)、Si−トリアリール、Si−アルキル−ジフェニル(例えば、t−ブチルジフェニルシリル)、またはSi−アリール−ジアルキル(例えば、Si−フェニルジアルキル)である。一般に、Si保護基は酸素原子に結合されている。保護基の化学分野は概説されている(例えば、Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.Protective Groups in Organic Synthesis,第2版;Wiley:New York,1991参照)。
【0076】
本明細書で用いる場合、用語「アルキル」は、当該技術分野におけるその通常の意味を示し、飽和脂肪族基、例えば、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基が挙げられ得る。一部の特定の実施形態において、直鎖または分枝鎖のアルキルは、主鎖に約30個以下の炭素原子を有し(例えば、直鎖ではC〜C30、分枝鎖ではC〜C30)、あるいはまた約20個以下である。同様に、シクロアルキルは、環構造内に約3〜約10個の炭素原子、あるいはまた、環構造内に約5、6または7個の炭素を有する。一部の実施形態では、アルキル基は低級アルキル基であり得、ここで、低級アルキル基は、主鎖内に10個以下の炭素原子を含むものである(例えば、直鎖低級アルキルではC〜C10)。
【0077】
用語「ヘテロアルキル」は、当該技術分野におけるその通常の意味を示し、1個以上の原子がヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、イオウなど)である本明細書に記載のアルキル基をいう。ヘテロアルキル基の例としては、限定されないが、アルコキシ、ポリ(エチレングリコール)−、アルキル置換アミノ、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、モルホリニルなどが挙げられる。
【0078】
用語「アリール」は、任意選択的に置換されており、単一の環(例えば、フェニル)、多数の環(例えば、ビフェニル)、または少なくとも1つが芳香族である多数の縮合環
(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリル、またはフェナントリル)を有する芳香族炭素環式基をいう。すなわち、少なくとも1つの環は共役π電子系を有するものであり得るが、他の隣接環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/またはヘテロシクリルであり得る。アリール基は、本明細書に記載のように任意選択的に置換されていてもよい。「炭素環式アリール基」は、芳香族環上の環内原子が炭素原子であるアリール基をいう。炭素環式アリール基としては、単環式炭素環式アリール基および多環式または縮合化合物(例えば、2つ以上の隣接した環内原子が2つの隣接環に共通している)(ナフチル基など)が挙げられる。一部の場合では、アリール基として、単環式炭素環式アリール基および多環式または縮合化合物(例えば、2つ以上の隣接した環内原子が2つの隣接環に共通している)(ナフチル基など)が挙げられ得る。アリール基の非限定的な例としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどが挙げられる。用語「ヘテロアリール」は、当該技術分野におけるその通常の意味を示し、1つ以上の原子がヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、イオウなど)であり、任意選択的に置換された本明細書に記載のアリール基をいう。アリールおよびヘテロアリール基の例としては、限定されないが、フェニル、アリールオキシ、ピロリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニルおよびピリミジニルなどが挙げられる。
【0079】
また、アリールおよびヘテロアリール部分は、本明細書に定義しているように、脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、アルキルまたはヘテロアルキル部分を介して結合され得、したがって、−(脂肪族)アリール、−(ヘテロ脂肪族)アリール、−(脂肪族)ヘテロアリール、−(ヘテロ脂肪族)ヘテロアリール、−(アルキル)アリール、−(ヘテロアルキル)アリール、−(ヘテロアルキル)アリール、および−(ヘテロアルキル)−ヘテロアリール部分も包含されることは認識されよう。したがって、本明細書で用いる場合、語句「アリールまたはヘテロアリール」および「アリール、ヘテロアリール、(脂肪族)アリール、−(ヘテロ脂肪族)アリール、−(脂肪族)ヘテロアリール、−(ヘテロ脂肪族)ヘテロアリール、−(アルキル)アリール、−(ヘテロアルキル)アリール、−(ヘテロアルキル)アリール、および−(ヘテロアルキル)ヘテロアリール」は互換的である。
【0080】
用語「オレフィン」は、本明細書で用いる場合、少なくとも1つのエチレン性二重結合を有する任意の種、例えば、直鎖および分枝鎖の脂肪族オレフィン、シクロ脂肪族オレフィン、アリール置換オレフィンなどをいう。オレフィンは、末端二重結合(1つもしくは複数)(「末端オレフィン」)および/または内部二重結合(1つもしくは複数)(「内部オレフィン」)を含むものであり得、環状または非環式、線状または分枝状であり得、任意選択的に置換されていてもよい。炭素原子の総数は1〜100、または1〜40であり得;末端オレフィンの二重結合は一−または二置換であり得、内部オレフィンの二重結合は二−、三−または四置換であり得る。一部の場合では、内部オレフィンは二置換である。
【0081】
用語「環状オレフィン」は、本明細書で用いる場合、環内に少なくとも1つのエチレン性二重結合を含む任意の環状種をいう。環の原子は、任意選択的に置換されていてもよい。該環は、任意の数の炭素原子および/またはヘテロ原子を含むものであり得る。一部の場合では、環状オレフィンは1つより多くの環を含むものであり得る。該環は、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、またはそれ以上の原子を含むものであり得る。環状オレフィンの非限定的な例としては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ化合物、オキサビシクロ化合物など(すべて、任意選択的に置換されている)が挙げられる。「ビシクロ化合物」は、2つだけの環からなり、共通の原子を2個以上有する類型の化合物である。「オキサビシクロ化合物」は、2つだけの環からなり、共通の原子を2個以上有し、少なくとも1つの環が酸素原子を含む類型の化合物である。
【0082】
用語「カルボキシル基」、「カルボニル基」および「アシル基」は当該技術分野で認知されており、一般式:
【0083】
【化17】

(式中、Wは、H、OH、O−アルキル、O−アルケニルまたはその塩である)
で表され得るものなどの部分が挙げられ得る。WがO−アルキルである場合、この式は「エステル」を表す。WがOHである場合、この式は「カルボン酸」を表す。用語「カルボキシラート」はアニオン性のカルボキシル基をいう。一般的に、上記の式の酸素原子がイオウで置き換えられた場合、この式は「チオールカルボニル」基を表す。WがS−アルキルである場合、この式は、「チオールエステル」を表す。WがSHである場合、この式は「チオールカルボン酸」を表す。他方で、Wがアルキルである場合、上記の式は「ケトン」基を表す。Wが水素である場合、上記の式は「アルデヒド」基を表す。
【0084】
本明細書で用いる場合、用語「ハロゲン」または「ハライド」により−F、−Cl、−Brまたは−Iが指定される。
【0085】
用語「アルコキシ」は、−O−アルキル基をいう。
【0086】
用語「アリールオキシ」は、−O−アリール基をいう。
【0087】
用語「アシルオキシ」は、−O−アシル基をいう。
【0088】
用語「アリールアルキル」は、本明細書で用いる場合、アリール基で置換されたアルキル基をいう。
【0089】
用語「アミン」および「アミノ」は、当該技術分野で認知されており、非置換および置換型のアミンの両方、例えば、一般式:N(R’)(R’’)(R’’’)(式中、R’、R’’およびR’’’は各々、独立して、結合価の規則によって許容される基を表す)で表され得る部分をいう。
【0090】
用語「ジアルキルアミン」は、当該技術分野で認知されており、一般式:N(R’)(R’’)(式中、R’およびR’’はアルキル基である)で表され得る。
【0091】
本明細書における「アルコキシド」配位子は、ヒドロキシルプロトンがアルコールから除去されることにより負荷電アルコキシドがもたらされることでアルコールから調製される配位子をいう。
【0092】
用語「シリルオキシ」は、本明細書で用いる場合、−OSi(R22(式中、各R22は、同じであっても異なっていてもよく、およびアルキル、アリール、ヘテロアルキルまたはヘテロアリール(任意選択的に置換されている)であり得る)を表す。シリルオキシ基の非限定的な例としては、−OSiPh、−OSiMe、および−OSiPhMeが挙げられる。
【0093】
本明細書で用いる場合、用語「置換され(てい)る」は、当業者に知られた化学結合価の規則との関連において「許容され得る」有機化合物の許容され得るすべての置換基を含むことを想定する。一部の場合において、「置換され(てい)る」は、一般的には、本明細書に記載の置換基での水素原子の置き換えをいうものであり得る。しかしながら、「置換され(てい)る」は、本明細書で用いる場合、分子が同定される重要な官能基の(例えば、「置換され(てい)る」官能基が置換によって異なる官能基となるような)置き換えおよび/または改変は包含しない。例えば、「置換フェニル」基は、依然としてフェニル部分を含んでいなければならず、この定義における置換によって、例えばシクロヘキシル基となるような修飾であってはならない。広義の態様では、許容置換基としては、有機化合物の非環状および環状、分枝状および非分枝状、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の置換基が挙げられる。実例としての置換基としては、例えば、本明細書に記載のものが挙げられる。許容置換基は、適切な有機化合物に対して1種類以上であってもよく、同じであっても異なっていてもよい。例えば、置換アルキル基はCFであり得る。本発明の解釈上、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/または該ヘテロ原子の結合価が満たされる本明細書に記載の有機化合物の任意の許容置換基を有するものであり得る。本発明は、有機化合物の許容置換基になんら限定されることを意図しない。
【0094】
置換基の例としては、限定されないが、アルキル、アリール、アリールアルキル、環状アルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ペルハロアルコキシ、アリールアルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルコキシ、アジド、アミノ、ハロゲン、アルキルチオ、オキソ、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキシル、−カルボキサミド、ニトロ、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、アルキルスルホニル、−カルボキサミドアルキルアリール、−カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ−、アミノカルボキサミドアルキル−、シアノ、アルコキシアルキル、ペルハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキルなどが挙げられる。
【0095】
以下の実施例は、本発明の一部の特定の実施形態の実例を示すことを意図したものであって、本発明の全範囲を例示したものではない。
【実施例】
【0096】
実施例1
以下の実施例に、非限定的な実施形態による高度にZ−選択的なオレフィンホモメタセシスを記載する。Moの高度に反応性のモノアリールオキシド−ピロリド(MAP)オレフィンメタセシス触媒(例えば、図1参照)を、ビスピロリド前駆物質からインサイチュで調製し、選択したメタセシス反応に使用した。例えば、Schrock,R.R.,Chem.Rev.,2009,109,3211;Hock,A.ら,J.Am.Chem.Soc.,2006,128,16373;およびSingh,R.ら,J.Am.Chem.Soc.,2007,129,12654を参照のこと。MAP触媒は、一般的に、金属中心と会合しているイミド配位子、およびアルキリデン配位子、含酸素配位子、および含窒素配位子を含むものである。
【0097】
(syn,rac)MAP触媒によるRCH=CH(例えば、一置換末端オレフィン)のZ−選択的ホモカップリングの考えられ得る機構を図2に示す。一般に、MAP触媒のNMRまたはX線試験では、syn異性体のみが観察される。末端オレフィンでは、配位圏はピロリド(Pyr)に対してトランス側であり、R置換基が隣接している中間体メタラシクロブタンが得られ得る。一部の場合において、OR’’’は、RがOR’’’と同じ方向を向いたメタラ環(あれば)の形成が抑制されるのに充分「大型」であり得、それにより、隣接しているR置換基がアキシャルなOR’’’基と反対方向を向いたメタラシクロブタンの形成がもたらされ、生成物のZ−異性体の形成がもたらされ得る。Z−RCH=CHRの減少により、金属中心において反転配置(図2においてS→R)を有する中間体メチレン種がもたらされる。次いで、メチレン種とRCH=CH間の生成的メタセシス反応により、エチレンが生成され、(S)−M(NR)(CHR)(Pyr)(OR’’’)がリフォーミングされる。金属中心における配置の反転は、正反応の各メタセシス工程の結果であるが、反転自体はホモカップリング反応の重要な特長でない場合もある。しかしながら、OR’’’がエナンチオマー的に純粋な場合は、両方のジアステレオマーが充分に機能性であり得る。
【0098】
最初に、実験を小規模で、1−ヘキセン(S)または1−オクテン(S;表2;図3の式)を伴い、4mol%の触媒を用いて閉鎖系(NMRチューブ)内で行なった。シス−3−ヘキセン(表1の2Me)とのシス−4−オクテンのメタセシスで好成績であった触媒は、この条件下の1−オクテンでは、満足のいくものではないことに注意されたい。さらなるスクリーニングに基づくと(実施例2の結果参照)、一部の場合では、「小型」イミド基は必ずしも(necessary)、一部の場合において末端オレフィンの高度にZ−選択的カップリングに必要とされないようであり(ii)Wを含む触媒は、関連Mo類似体と比べて改善された性能を有するものであり得るようである。タングスタシクロブタン開始剤(4)は3と同一の様式の性能を示し、低転化率で95%のZ型生成物が得られた。当然のことながら、Z型生成物は時間と転化に伴ってE−異性体に異性化する(例えば、5参照)。1−ヘキセンのホモカップリングの結果は、すべての場合で表1に示したものと類似していた;例えば、触媒4では33%の転化率で95%のZ−5−デセンが示された(3日間)。
【0099】
【表1】

表1において、(a)22℃でC中4mol%の触媒;(b)インサイチュで調製、実施例2参照(新規触媒)。R=CMePh;Ad=1−アダマンチル。Ar=2,6−i−Pr。HIPTOは、構造2(図1)に示すアリールオキシドである。MesBitetは、R”=メシチルである構造1の配位子である(図1)。
【0100】
基質S〜Sを使用した選択したさらなる一部の結果を表2に示す(よりさらなる一覧については実施例2を参照のこと)。7Moと3は、Sに対して同様に良好な性能を示しているが、W 1−アダマンチルイミド種は一般的に知られたものでないため、MoとWの直接比較は不可能であることに注意されたい。また、通常、高い転化率が望ましいが、このことは、生成物からの出発物質の分離が比較的容易なことに鑑みると、必ずしも必要とされないことにも注意されたい。
【0101】
【表2】

表2において、(a)22℃でC中4mol%の触媒。(b)インサイチュで調製;実施例2参照(新規触媒)。R=CMePh。ArCl=2,6−Cl。Ar’=2,6−Me。BrBitetは、R”=Brである構造1の配位子である(図1)。MesBitetOMeは、R”=メシチル;R=t−Buである構造1の配位子のメチル保護類似体である(図1)。
【0102】
エチレンの存在が反応のZ−選択性に対してどのような効果(あれば)を有するのかを調べるため、いくつかの高沸点基質を伴い、充分ないし中等度の真空(0.5〜10mmHg)下で1%の触媒を用いて、より大規模での反応を検討し、この所見を、1気圧の窒素下で得られたものと比較した。当然、一部の場合で約0.5mmにおいて、長い反応時間にわたって、いくらかの単量体の減少が観察された。表3に示す結果は、反応を減圧下で行なう効果は劇的でないことを示す。
【0103】
【表3】

表3において、(a)反応規模 約200mg、未希釈基質、触媒は固体で添加。(b)収率86%。(c)12Mo=Mo(NAr)(Pyr)(CHR)(MesBitetOMe)。
【0104】
高温(適当な基質に対する還流温度)、大規模および低触媒%で行なった反応の結果を表4に示す。いくつか場合では、残留単量体を真空除去してZ型生成物の収率を確立した。いくつかの反応において、>90%Z含有量の生成物が良好な収率で得られた。高温および低触媒負荷量で最良の結果が得られるようである。
【0105】
【表4】

表4において、(a)反応規模 約0.5g〜約4g;触媒を約1mLのベンゼンに溶解させ、基質を一度に添加した。混合物を、N雰囲気下、高温にて冷却器で還流した。(b)W(NAr’)(Pyr)(C)(OHIPT)。
【0106】
Z型生成物の形成の機構は図2に示すものであること、および配位子の組合せは、中間形態の大部分がsynアルキリデンのα,R/β,Rメタラシクロブタン中間体となるように選択され得ることが仮定され得る。したがって、一部の実施形態では、Z型生成物を高い選択性で形成させるために、大型のOR’’’配位子が必要とされ得る。また、必要とするsyn−α,R/β,Rメタラシクロブタン中間体の立体的要求度は、すべてのシス三置換メタラシクロブタンの立体的要求度ほど著明(pronounces)でないため、「小型」イミド基は必要とされないのかもしれない。
【0107】
E生成物の考えられ得る3つの「直接」形成様式(例えば、Z型生成物の異性化でないもの)は、(i)synアルキリデンへの単量体のアプローチにより、OR’’’と同じ方向を向いたRを有するメタラ環を得ること;(ii)単量体と高度に反応性の(観察不能)antiアルキリデン(synアルキリデンと平衡状態)との反応により、トランス二置換メタラシクロブタン中間体を得ること;または(iii)図2に示したものと異なる様式での単量体のアプローチにより、異なる型のメタラシクロブタン中間体を得ることが考えられ得る。ほとんどの場合、OR’’’が充分に大型だと「直接」法では有意な量のE生成物は形成されない。
【0108】
考えられ得るE生成物形成の「間接」様式の1つは、M=CHR種との反応によるZ−生成物の異性化であり、隣接した2つのトランスR置換基を含む三置換メタラ環中間体が得られる。この反応は、おそらく、立体的理由で多くの状況において比較的低速である。というのは、メタラシクロブタン中間体において、2つのR基が大型のOR’’’基と同じ方向を向いているはずだからである。第2の非限定的な間接様式は、図1に示した反応の逆反応が高速であることである。単量体が、エチレンの存在下でリフォーミングされて何度も再カップリングされると、任意の単一の工程(反応式1および直前)でE生成物の形成がもたらされるという「間違い」が大きく増幅される。表3に示された結果に基づくと、急速なエテン分解(ethenolysis)は、おそらく、ほとんどの実施形態において、この実施例で検討した触媒と基質を用いたE生成物の形成の主要機構ではない。
【0109】
実施例2
以下の実施例に、実施例1で使用した合成の手順と方法の概要、ならびに反応基質と触媒のさらなる例を示す。
【0110】
略号.Ar:2,6−ジイソプロピルフェニル;ArCl:2,6−ジクロロフェニル;Ar’:2,6−ジメチルフェニル;Ad:1−アダマンチル;Mes:メシチル;MePyr:2,5−ジメチルピロリド;Pyr:ピロリド;TBS:ジメチル−t−ブチルシリル;Ts:トシル;OTf:トリフラート;Trip:2,4,6−トリイソプロピルフェニル;HIPTO:ヘキサイソプロピルターフェノレート;OSi(TMS):1,1,1,3,3,3−ヘキサメチル−2−(トリメチルシリル)トリシラン−2−オレート;Biphen:3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’,6,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジオール;BiphenTMS:3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’,6,6’−テトラメチル−2’−(トリメチルシリルオキシ)ビフェニル−2−オレート;Bitet:5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジオール;TripBitet:3,3’−ビス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジオール;TripBitetTMS:3,3’−ビス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)−2’−(トリメチルシリルオキシ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレート;BrBitet:3,3’−ジブロモ−2’−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレート;MesBitet:2’−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−3−メシチル−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレート;MesBitet:3,3’−ジメシチル−2’−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレート;MesBitetOMe:3,3’−ジメシチル−2’−メトキシ−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレート。
【0111】
基質.S1−CH=CH(CHCH;S2−CH=CH(CHCH;S3−CH=CHCHPh;S4−CH=CHCHSiMe;S5−CH=CH(CHCOMe;S6−CH=CH(CHCOMe;S7−CH=CHCH(Bpin);S8−CH=CHCHOBn;S9−CH=CHCHNHTs;S10−CHCHCHNHPh;S11−CH=CHCH(OTBs);S12−CH=CHCHCy。
【0112】
一般注釈.ガラス器具は175℃でオーブン乾燥させ、二分岐管Schlenkラインにて窒素をパージするか、または窒素充填グローブボックスのエバキュエーション済アンテチャンバ内で冷却した。実験は、窒素ドライボックス内または無空気二分岐管Schlenkライン内のいずれかで実施した。NMRスペクトルは、Varian 300または500 MHz分光計で取得し、テトラメチルシランに対するδ(ppm)で報告し、重水素化溶媒残留H/13Cシグナルを参照とした(H(δ):ベンゼン7.16;クロロホルム7.27;塩化メチレン5.32.13C(δ):ベンゼン128.39;クロロホルム77.23;塩化メチレン54.00)。元素分析の結果はMidwest Microlab,LLCから得た。試薬はすべて、特に記載のない限り、さらに精製せずに使用した。ペンタンは、HSO、続いて水および飽和NaHCO水溶液で洗浄し、CaClペレット上で少なくとも2週間にわたって乾燥させた後、精製システムの溶媒に使用した。HPLC等級のジエチルエーテル、トルエン、テトラヒドロフラン、ペンタン、および塩化メチレンは、窒素をスパージし、活性化アルミナに通した;また、ベンゼンを銅触媒に通し;次いで、有機溶媒を活性化4Å Linde型モレキュラーシーブス上で保存した。ベンゼン−dをケタールナトリウム上で乾燥させ、脱気し、真空供給し、活性化4 Linde型モレキュラーシーブス上で保存した。LiMePyrは、n−BuLiを、新鮮蒸留2,5−ジメチルピロール含有EtO(−27℃に冷却)で処理し、塩を濾別し、これを真空乾燥させて所望のLiMePyrを得ることにより合成した。LiPyrは、同様の手順に従って単離した。N−アリル−4−メチルベンゼンスルホンアミド(S)は、アリルアミンと塩化トシルから調製し、ヘキサンとジエチルエーテルの濃縮溶液から再結晶させた。1−ヘキセン、1−オクテン、アリルベンゼン、アリルトリメチルシラン、アリルボロン酸ピナコールエステル、アリルシクロヘキサン、およびアリルオキシ(tert−ブチル)ジメチルシランは、CaH上で乾燥させ、真空供給した。アリルベンジルエーテルは、CaH上で乾燥させ、蒸留した。メチル−10−ウンデセノエートは、P上で乾燥させ、真空供給した。2,3,5,6−テトラフェニルフェノール(HOPhPh)、BrBitetOH、BiphenOH、TripBitetOH、およびHIPTOHは、文献の手順に従って調製した。また、W(NAr)(CHMePh)(MePyr)、W(NAr)(CHCMePh)(Pyr)DME、W(NArCl)(CHCMe)(Pyr)DME、Mo(NAr)(CHCMePh)(MePyr)、およびMo(NAr)(CHCMePh)(Pyr)も、公開された手順に従って調製した。
【0113】
配位子の調製に関する実験の詳細
TripBitetTMS(反応式については図4A参照)。50mL容フラスコにスターラーバー、(S)−TripBitet(0.782,1.118mmol)、および塩化メチレン(約15mL)を仕込んだ。この混合物に、トリエチルアミン(0.24mL,1.342mmol,1.2当量)を添加した後、トリメチルシリルトリフラート(0.19mL,1.342mmol,1.2当量)を添加した。混合物を1時間撹拌し、NaHCO(濃縮水溶液,約10mL)を添加した。有機層を分離し、水層をジクロロメタン(約20mL)で2回抽出した。すべての有機層を合わせ、MgSO上で乾燥させ、セライト床に通して濾過した。濾液を乾燥させ、白色固形物を得、これを一晩真空乾燥させた。次いで、固形物を塩化メチレンに再溶解させ、グローブボックス内で一晩、4 Linde型モレキュラーシーブス上で撹拌した。混合物をセライトに通して濾過し、濾液を真空乾燥させ、アルコールを定量的収率で得た。H NMR(500 MHz,C)δ 7.26(d,2,Ar−H,JHH = 8 Hz),7.22(d,2,Ar−H,JHH = 8 Hz),7.12(s,1,Ar−H),6.90(s,1,Ar−H),4.66(s,1,OH),3.13(m,2),3.02(m,3),2.89(m,3),2.70(m,4),2.48(m,2),1.68(m,8),1.50(d,3,CHMe,JHH = 7 Hz),1.25(m,33,CHMe),−0.24(s,9,SiMe)。
【0114】
(S)−BiphenTMS(反応式については図4B参照)。(S)−TripBitetTMSと同じ手順を、出発物質(S)−BiphenOH(1.289g,3.635mmol)、トリメチルシリルトリフラート(0.79mL,4.362mmol,1.2当量)、およびトリエチルアミン(0.608g,4.362mmol,1.2当量)を用いて行なった。所望の生成物を定量的収率で白色粉末として単離した。H NMR(500 MHz,C)δ 7.24(s,1,Ar−H),7.19(s,1,Ar−H),4.90(s,1,OH),2.17(s,3,Me),2.09(s,3,Me),2.88(s,3,Me),1.78(s,3,Me),1.60(s,9,t−ブチル),1.47(s,9,t−ブチル),−0.07(s,9,SiMe)。
【0115】
3−ブロモ−Bitet(反応式については図4C参照)。Bitet(2.94g,10.0mmol)を60mLのCHClに溶解させ、ドライアイス/アセトン浴で−78℃まで冷却した。臭素を含有する20mLのCHClを滴下漏斗から滴下した。添加が終了した後、反応混合物をさらに10分間撹拌し、80mLの飽和NaHSOをゆっくり添加することによりクエンチした。次いで、混合物を周囲温度まで昇温させ、1時間撹拌した。2つの層を分離した。有機層を2×30mLの飽和NaHSOで洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、粗製反応混合物を得た。NMRにより、出発物質のジオール:所望の生成物:ビス−ブロモbitetが1:4.2:3.7の比率の混合物が示された。シリカゲルクロマトグラフィーでの精製(ヘキサンから1:1のヘキサン:CHClまで)により、所望の純粋な生成物を白色固形物として得た(1.10g,30%)。H NMR(500 MHz,C):δ 7.12(1H,s,Ar−H),6.86(1H,d,J = 8.5 Hz,Ar−H),6.83(1H,d,J = 8.5 Hz,Ar−H),5.02(1H,s,OH),4.19(1H,s,OH),2.58−2.46(2H,m,ArCH),2.40−2.16(4H,m,ArCH),2.13−2.00(2H,m,ArCH),1.54−1.28(8H,m,ArCHCH)。
【0116】
3−メシチル−Bitet(反応式については図4D参照)。この配位子は、Collazo,L.R.;Guziec,Jr.,F.S.J.Org.Chem.1993,58,43と密に関連した手順を用いて調製した。Pd(OAc)(9mg,0.04mmol)と(アダマンチル)−ブチル−ホスフィン(18mg,0.05mmol)を、不活性雰囲気内で、3−ブロモ−Bitet(0.75g,2.0mmol)とメシチルボロン酸(0.49g,3.0mmol)を含む10mLの1,2−ジメトキシエタンと10mLの1M KCO溶液の溶液に添加した。混合物を90℃まで16時間加熱した。冷却後、有機相を分離し、CHClで希釈し、飽和NHCl溶液ならびにHOで洗浄し、MgSOで乾燥させた。次いで、溶媒をエバポレートし、固形残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製し(3/1 ヘキサン/CHCl)、3−メシチル−Bitetを白色固形物として得た(0.71g,86%)。H NMR(500 MHz,C):δ 6.97(1H,d,J = 8.5 Hz,Ar−H),6.90(1H,d,J = 8.5 Hz,Ar−H),6.85(1H,s,Mes−H),6.84(1H,s,Mes−H),6.77(1H,s,Ar−H),4.69(1H,s,OH),4.56(1H,s,OH),2.66−2.26(8H,m,ArCH),2.17(3H,s,Me),2.16(3H,s,Me),2.09(3H,s,Me),1.64−1.44(8H,m,ArCHCH)。
【0117】
3−メシチル−Bitet(反応式については図4E参照,0.2g,0.5mmol)を2mLのCHClに溶解させた。反応液に、EtN(84mL,0.5mmol)を添加した後、TBSOTf(138mL,0.6mmol)を添加した。反応混合物を周囲温度で16時間撹拌した。TLCにより、出発物質が完全に消費されたことが示された。反応液を、5mLの1N HClの添加によってクエンチし、3×30mLのCHClで抽出した。合わせた有機層をMgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、黄色固形物を得た。カラムクロマトグラフィーによって精製し(5%EtOを含むヘキサン)、所望の生成物をオフホワイト色固形物として得た(220mg,84%)。H NMR(500 MHz,C):δ 6.90(1H,d,J = 8.0 Hz,Ar−H),6.88(1H,s,Mes−H),6.84(1H,s,Mes−H),6.79(1H,d,J = 8.5 Hz,Ar−H),6.76(1H,s,Ar−H),4.46(1H,s,OH),2.78−2.38(8H,m,ArCH),2.30(3H,s,Me),2.18(3H,s,Me),2.16(3H,s,Me),1.76−1.10(8H,m,ArCHCH),0.84(9H,s,SitBu),0.13(3H,s,SiMe),0.04(3H,s,SiMe);13C NMR(125 MHz,CDCl):δ 151.41,147.44,138.05,137.54,137.31,136.99,135.53,134.44,130.51,130.04,129.88,129.04,128.50,128.33,126.09,123.88,123.65,116.41,29.59,27.38,27.35,25.66,23.56,23.50,23.45,23.26,21.33,21.04,20.72,18.02,−4.09,−4.22。
【0118】
3,3’−ビス−メシチル−bitet(反応式については図4F参照)を、3−メシチル−Bitetと同じスズキカップリングを用いて調製した。3,3’−ビス−メシチル−Bitet(2.65g,5.00mmol)を、N下で5mLのDMFに溶解させた。イミダゾール(0.82g,12mmol)を一気に添加した。TBSOTf(1.4mL,6.0mmol)を反応液に、シリンジによって添加した。反応混合物を70℃まで加熱し、3日間撹拌した。TLCにより、転化率が不完全であることが示された。反応液を、10mLの1N HClの添加によってクエンチし、3×30mLのCHClで抽出した。合わせた有機層を4×40mLのHOで洗浄し(DMFを除去するため)、MgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、褐色固形物を得た。粗製物のNMRにより80転化率%が示された。カラムクロマトグラフィーによって精製し(20%CHClを含むヘキサン)、所望の生成物を白色固形物として得た(2.4g,75%)。H NMR(500 MHz,CDCl):δ 6.97(1H,s,Ar−H),6.96(1H,s,Ar−H),6.89(1H,s,Ar−H),6.88(1H,s,Ar−H),6.78(1H,s,Ar−H),6.75(1H,s,Ar−H),4.54(1H,s,OH),2.80−−2.68(4H,m,ArCH),2.66−2.58(2H,m,ArCH),2.46−2.39(2H,m,ArCH),2.33(3H,s,Me),2.30(3H,s,Me),2.16(3H,s,Me),2.12(3H,s,Me),2.10(3H,s,Me),2.07(3H,s,Me),1.84−1.60(8H,m,ArCHCH),0.46(9H,s,SitBu),−0.47(3H,s,SiMe),−0.56(3H,s,SiMe).13C NMR(125 MHz,CDCl):δ 149.1,148.0,137.7,137.5,137.1,137.0,136.8,136.6,136.57,136.54,136.3,134.2,132.7,130.9,130.5,130.3,129.6,128.6,128.5,128.3,128.1,126.8,124.34,124.31,29.5,29.4,27.4,27.3,25.7,23.5,23.4,23.3,23.1,21.4,21.3,21.2,21.1,20.61,20.60,18.1,−4.49,−5.18.C4456Siの分析計算値:C,81.93;H,8.75.実測値:C,82.21;H,8.61。
【0119】
3,3−Mesbitet(反応式については図4G参照,0.53g,1.0mmol)を、100mL容丸底フラスコ内の5mLのDMFに溶解させ、氷浴を用いて0℃まで冷却した。NaH(48mg,1.2mmol)を反応液に一気に添加した。得られた混合物を半時間撹拌した。MeI(187mL,3.0mmol)を反応液に、シリンジを用いて添加した。混合物を周囲温度まで昇温させ、36時間撹拌した。反応液を20mLの飽和NaHCOの添加によってクエンチした。20mLのエーテルを添加し、2つの層を分離した。水層を2×20mLのEtOによって抽出した。合わせた有機層を3×20mLのHOで洗浄し(DMFを洗い流すため)、MgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、黄色がかった固形物を得た。シリカゲルクロマトグラフィーによって精製を行なった(ヘキサンから20%CH2Cl2を含むヘキサンまで)。所望の生成物を0.40gで収集した(74%)。H NMR(500 MHz,CDCl):d 6.97(1H,s,Ar−H),6.95(1H,s,Ar−H),6.93(1H,s,Ar−H),6.92(1H,s,Ar−H),6.82(1H,s,Ar−H),6.76(1H,s,Ar−H),4.40(1H,s,OH),3.12(3H,s,OMe),2.84−−2.72(4H,m,ArCH),2.46−2.20(4H,m,ArCH),2.32(6H,s,Me),2.11(3H,s,Me),2.10(3H,s,Me),2.08(3H,s,Me),2.04(3H,s,Me),1.82−1.62(8H,m,ArCHCH)。13C NMR(125 MHz,CDCl):d 153.6,147.0,137.37,137.36,137.2,137.0,136.5,136.4,136.0,135.7,135.5,133.9,133.3,131.8,131.6,129.9,129.3,128.8,128.4,128.3,128.1,128.0,124.0,123.5,60.0,29.6,29.4,27.4,27.0,23.4,23.34,23.32,23.1,21.25,21.23,21.20,20.7,20.66,20.58. C3944の分析計算値:C,85.99;H,8.14.実測値:C,85.85;H,8.20。
【0120】
触媒の調製に関する実験の詳細
W(NAr’)(CHCMePh)(MePyr)(1).スターラーバーを備えた100mL容フラスコに、W(NAr’)(CHCMePh)(OTf)DME(1.64g,2.00mmol)、LiMePyr(0.404g,4.00mmol)、および40mLのトルエンを添加した。溶液を16時間撹拌し、この時点で、溶液をセライト床に通して濾過した。濾液を真空乾燥させ、黄色粉末を得た。ペンタン(約5mL)を添加し、混合物を濾別した。黄白色(off yellow)粉末を収集し、1時間真空乾燥させ、0.98gを得た(79収率%)。H NMR(500 MHz,C)δ 10.83(s,1,CHCMePh),7.31(d,2,Ar−H,JHH = 8 Hz),7.09(t,2,Ar−H,JHH = 8 Hz),6.98(t,1,Ar−H,JHH = 8 Hz),6.92(m,3,Ar−H),5.90(br s,4,Pyr−H),2.17(s,6,Me),2.11(s,12,Me),1.59(s,6,Me)。
【0121】
W(NAr’)(CHCMePh)(Pyr)DME(2).スターラーバーを備えた100mL容フラスコに、W(NAr’)(CHCMePh)(OTf)DME(10.284g,12.489mmol)、LiPyr(2.280g,31.222mmol,2.5当量)、および50mLのトルエンを添加した。溶液を3時間撹拌し、この時点で、溶液をセライト床に通して濾過した。濾液を真空乾燥させ、黄色粉末を得た。ペンタン(約10mL)を添加し、混合物を濾別した。黄白色粉末を収集し、1時間真空乾燥させ、4.711gを得た(57収率%)。H NMR(500 MHz,C)δ 10.78(br s,1,CHCMePh),7.56(d,2,Ar−H,JHH = 8 Hz),7.18(t,2,Ar−H,JHH = 8 Hz),7.00(t,1,Ar−H,JHH = 8 Hz),6.84(br s,4,Pyr−H),6.80(m,2,Ar−H),6.73(m,1,Ar−H),6.54(br s,4,Pyr−H),2.87(s,6,DME),2.35(s,4,DME),2.26(s,6,Me),1.75(s,6,Me);13C NMR(125 MHz,C):δ 278.6(CHCMePh),153.6,151.7,137.7,134.2,128.4,128.3,127.8,126.6,126.3,126.0,109.0,70.8,61.8,53.5,32.6,18.2.C3039Wの分析計算値:C,54.80;H,5.98;N,6.39.実測値:C,54.57;H,5.68;N,6.17。
【0122】
W(NAr’)(C)(Pyr)(OHIPT)(3).25mL容Schlenkフラスコに、スターラーバー、W(NAr’)(CHCMePh)(Pyr)DME(0.554g,0.842mmol)、HOHIPT(0.420g,0.842mmol)、および5mLのベンゼンを仕込んだ。反応液を65℃で一晩撹拌した。次いで溶液を室温まで冷却し、次いでグラスウールに通して濾過した。濾液を真空濃縮した。残渣を約5mLの1:1のEtO/ペンタンに溶解させた。溶液を3回の凍結−ポンピング−解凍サイクルによって脱気し、1気圧のエチレンに曝露した。数分間の撹拌後、オフホワイト色固形物が析出した。白色固形物を濾別し、0.331gを得た(43収率%)。H NMR(500 MHz,C)δ 7.40(br s,2,Pyr−H),7.28(d,2,Ar−H,JHH = 8 Hz),7.21(s,4,Ar−H),6.90(t,1,Ar−H,JHH = 8 Hz),6.73(d,2,Ar−H,JHH = 8 Hz),6.56(t,1,Ar−H,JHH = 8 Hz),6.23(s,2,Pyr−H),4.14(br s,2,WCHα),3.49(br s,2,WCHα),3.36(v br s,2,CHMe),2.89(sept,2,CHMe),2.67(v br s,CHMe),2.13(s,6,Me),1.32(d,12,CHMe,JHH = 7 Hz),1.18(v br s,24,CHMe),−0.85(br s,1,WCHα),−1.23(br s,1,WCHα);13C NMR(125 MHz,C)δ 160.22,148.9,148.16(br),138.72,136.18,132.47,131.88,131.75,129.55(br),127.98,127.00,121.33(br),119.93,110.73,98.88(WCα),35.16,31.59,26.80,24.85,23.32,19.28,−4.18(WCα).C5168OWの分析計算値:C,67.39;H,7.54;N,3.08.実測値:C,67.31;H,7.36;N,3.29。
【0123】
W(NArCl)(CHCMe)(Pyr)(OHIPT)(4).20mL容フラスコに、スターラーバー、W(NArCl)(CHCMe)(Pyr)(DME)1/2(0.405g,0.685mmol)、HOHIPT(0.342g,0.685mmol)、および5mLのベンゼンを仕込んだ。反応液を室温で一晩撹拌した。次いで、溶液を室温まで冷却し、次いでセライト床に通して濾過した。濾液を真空濃縮すると油状残渣になった。この油状物にペンタンを添加すると黄色粉末が析出した。黄色固形物を濾別し、0.381gを得た(56収率%)。H NMR(500 MHz,C)δ 9.47(s,1,syn−CHCMe,JCH=119 Hz,JCW=17 Hz),7.24(d,4,Ar−H,JHH = 8 Hz),7.11(d,2,Ar−H,JHH = 8Hz),6.87(m,3,Ar−H),6.43(s,2,Pyr−H),6.29(s,2,Pyr−H),6.22(t,1,Ar−H,JHH = 8 Hz),3.05(sept,2,CHMe),2.90(sept,2,CHMe),2.83(sept,2,CHMe),1.35(3)(d,6,CHMe),1.34(7)(d,6,CHMe),1.33(d,6,CHMe),1.17(d,6,CHMe),1.11(d,6,CHMe),1.09(d,6,CHMe),1.00(s,9,CHCMe);13C NMR(125 MHz,C)δ 269.22(CHCMe),158.99,151.57,149.08,147.71,135.95,133.79,132.30,131.98,131.96,125.35,123.29,122.60,121.30,111.76,46.53,35.12,33.17,31.78,31.66,26.17,25.35,24.76,24.75,24.62,23.80.C5166ClOWの分析計算値:C,62.64;H,6.80;N,2.86.実測値:C,63.08;H,6.76;N,2.89。
【0124】
W(NAr)(CHCMePh)(Pyr)(MesBitet).25mL容フラスコに、スターラーバー、W(NAr)(CHCMePh)(Pyr)DME(0.357g,0.500mmol)、MesBitet−OH(0.323g,0.500mmol)、および5mLのベンゼンを仕込んだ。反応液を、グローブボックス内で一晩、室温で撹拌した。溶液を真空濃縮し、明黄色粉末を得た(0.560g,93%)。H NMR(500 MHz,C)δ 10.07((br s,1,CHCMePh),7.30(d,2H,Ar−H,JHH = 4.0 Hz),7.17(t,2H,Ar−H,JHH = 8.0 Hz),7.03(m,2,Ar−H),6.97(m,2,Ar−H),6.87(d,2,Ar−H,JHH = 9.0 Hz),6.82(m,2,Ar−H),6.68(s,2,Ar−H),6.57(s,2,pyr−H),6.22(s,2,Ar−H),3.33(m,2,CHCMe),2.27(1)(s,3,Me),2.26(8),2.21(s,3,Me),2.19(s,3,Me),2.04(s,3,Me),2.01(s,3,Me),1.68(s,3,Me),1.46(s,3,Me),1.22(d,6,CHMe,JHH = 8.5 Hz),1.08(d,6,CHMe,JHH = 8.5 Hz),0.66(s,9,t−Bu),−0.24(s,3,SiMe),−0.36(s,3,SiMe),3.0−2.4(m,8),1.8−1.3(m,8);13C NMR(125 MHz,C)δ 266.29(WCα),157.19,152.44,151.32,149.54,138.12,137.85,137.68,137.65,137.55,137.38,137.25,136.91,136.88,135.81,133.59,133.20,131.64,131.30,131.26,130.09,130.06,129.93,129.58,129.36,129.25,129.00,128.97,128.94,128.72,128.61,126.75,126.56,126.31,123.33,111.86,53.49,34.82,34.31,32.61,30.22,30.06,28.50,28.41,28.30,26.48,26.44,25.26,24.32,24.10,23.93,23.68,23.24,23.12,22.99,22.28,22.08,21.46,18.74,14.68,−3.66,−4.06.C7080SiWの分析計算値:C,69.98;H,7.38;N,2.33.実測値:C,69.58;H,7.28;N,2.13。
【0125】
Mo(NAr)(CHCMePh)(Pyr)(OTf)DME.Mo(NAr)(CHCMePh)(OTf)DME(1.837g,2.307mmol)を含む30mLのトルエンの橙色混濁溶液に、0.186g(2.538mmol)のLi(NC)を固体で一気に添加した。反応混合物は粘性となり、暗黄色になった。室温で2.5時間撹拌後(この時、溶液はあまり粘着性でなかった)、溶液をセライトに通して濾過した。濾液を真空乾燥させ、残留にEtO(約5mL)を添加した。混合物を撹拌し、揮発物質を、混合物が黄色固形物になるまで真空除去した。淡黄色粉末をEtO/ペンタン(1:1,約10mL)から単離し、0.885gを得た(54%)。H NMR(500 MHz,C)δ 13.91(s,1,syn MoCHα,JCH=119 Hz),7.55(d,2,ArH),7.23(t,2,ArH),7.07(t,1,ArH),6.97(m,3,ArH),6.57 (br s,2,NC),6.37(t,2,NC),4.22(sept,1,CHMe),3.59(br s,1,DME−CH),3.24(sept,1,CHMe),3.08(s,3,DME−CH),2.98(s,3,DME−CH),2.83(br s,1,DME−CH),2.32(br d,2,DME−CH),1.97(s,3,CHCMePh),1.89(s,3,CHCMePh),1.50(d,3,CHMe),1.32(d,3,CHMe),1.11(br s,6,CHMe);13C NMR(125 MHz,CDCl)d 316.31(MoCα),152.92,152.01,150.73,149.44,129.95,129.21,128.69,127.01,126.74 124.66,124.60,124.51,122.14,119.60,117.07,108.66,72.42(DME),70.35(DME),63.23(DME),62.33(DME),57.89(DME),31.86,30.69,28.46,27.61,26.91,25.55,24.26,24.17;19F NMR(282 MHz,CDCl)δ −78.15. C3143MoNSの分析計算値:C,52.54;H,6.12;N,3.95.実測値:C,52.44;H,6.25;N,3.86。
【0126】
Mo(NAd)(CHCMe)(Pyr)(HIPTO).この触媒の調製は、Mo(NAd)(CHCMePh)(Pyr)(HIPTO)のものと同様であり、Mo(NAd)(CHCMe)(Pyr)(d 13.87および12.88ppmにおけるHαは、1:1の比でブロード一重項)は、Mo(NAd)(CHCMePh)(Pyr)の調製に使用した方法と同様にして調製した。Mo(NAd)(CHCMe)(Pyr)(0.567g,1.267mmol)とHIPTOH(0.632g,1.267mmol)を固体で、スターラーバーを入れた50mL容フラスコ内で混合した。この混合物にベンゼン(約20mL)を添加した。暗橙色溶液を1時間撹拌し、この時点で、混合物をセライト床に通して濾過した。濾液を真空乾燥させ、暗色残渣を得た。ペンタンを添加し、真空を負荷して揮発物質を除去した;このプロセスを、もう3回繰り返した。黄色固形物が観察された。この混合物にペンタン/EtO(1:1,約5mL)を添加した。溶液を冷蔵庫(−30℃)内に1日放置した。黄色針様結晶を単離し、0.275gを得た(1回目の収集物)。残りの濾液を−30℃で1日静置し、0.632gを得(2回目の収集物)、全収率は84%であった。H NMR(500 MHz,C)δ 11.89(s,1,syn MoCHα,JCH=121 Hz),7.24(s,4,ArH),7.05(d,2,ArH,JHH = 8 Hz),6.87(t,1,ArH,JHH = 8 Hz),6.58(m,2,NC),6.43(m,2,NC),3.06(sept,2,CHMe),2.97(sept,4,CHMe),1.81(br s,3,NAd−H),1.78(br s,1,NAd−H),1.76(br s,2,NAd−H),1.72(br s,2,NAd−H),1.70(br s,1,NAd−H),1.36(m,18,CHMe and NAd−H),1.28(d,6,CHMe,JHH = 8 Hz),1.21(m,15,CHMe and CHCMe),1.15(d,6,CHMe,JHH = 8 Hz),1.13(d,6,CHMe,JHH = 8 Hz);13C NMR(125 MHz,CDCl)δ 293.44(MoCα),159.54,148.24,147.66,147.62,135.12,134.44,132.14,131.51,121.81,121.78,121.61,110.16,44.67,36.25,32.67,31.77,31.70,30.20,25.40,25.07,24.92,24.72,24.66,24.08.C5578MoNOの分析計算値:C,75.14;H,8.94;N,3.19.実測値:C,75.24;H,9.05;N,3.20。
【0127】
表5に、多数の触媒の選出した特性評価と合成手順を示す。
【0128】
インサイチュで調製した触媒:方法1−秤量した量のビピロリド錯体とアルコールを固体で、テフロン(登録商標)製密封J−Youngチューブ内で混合した。約0.6mLのベンゼン−dを添加した。反応液をH NMRによってモニタリングした。場合によっては、混合物を加熱した。方法2−秤量した量のビスピロリド錯体とアルコールを5mL容バイアルに移し、ベンゼン−dを添加した。混合物のアリコートを採取し、H NMRによって反応の進行をモニタリングした。方法3−Mo(NAr)(CHCMePh)(Pyr)((Trip)BitetTMS)の場合は、秤量した量のMo(NAr)(CHCMePh)(Pyr)(OTf)DMEをLi[(Trip)BitetTMS]と、J−Youngチューブ内で混合し、ベンゼン−dを添加した。1当量のn−BuLiをTripBitetTMSフェノール(エーテル中)に添加することにより、Li[(Trip)BitetTMS]を調製した。混合物をH NMRによってモニタリングした。混合物を60℃で24時間加熱後、セライト床に通して濾過し、Li(OTf)を除去した。
【0129】
【表5】

スクリーニング結果:スクリーニング反応の一般手順
1−ヘキセンの場合:秤量した量の触媒をテフロン(登録商標)製密封J−youngチューブに移し、0.6mLのベンゼン−dをシリンジによって送達して試料を溶解させ、次いで、基質をシリンジによって添加する。インサイチュで生成させる触媒は、ビスピロリド金属錯体をアルコールと0.6mLのベンゼン−d中(テフロン(登録商標)製密封J−youngチューブ内)で混合することにより調製する。一般に、室温で3時間撹拌した後、次いで基質を送達し、反応混合物を密封する。反応温度が高い場合は、試料を閉鎖系内で加熱した。転化率と選択性をH NMRおよび13C NMRによってモニタリングした。
【0130】
1−オクテン、アリルベンゼン、アリルトリメチルシラン、メチル−10−ウンデセノエート、アリルボロン酸ピナコールエステル、アリルベンジルエーテル、N−アリル−4−メチルベンゼンスルホンアミド、アリルアニリン、メチル−9−デセノエート、アリルオキシ(tert−ブチル)ジメチルシラン、およびアリルシクロヘキサンの場合:N充填グローブボックス内で、4mL容バイアルに、オレフィン基質(0.05mmol)と150μLのCを仕込んだ。このバイアルに、異なる触媒を含むC(50μL,4mol%)の溶液を一気に添加した。混合物を22℃で一定時間撹拌し、次いで、反応液のアリコートをNMRチューブに移し、ボックスから取り出した。すると、アリコートは大気への曝露によってクエンチされ、CDCl中で希釈した。反応の転化率と選択性をH NMRによってモニタリングした。
【0131】
【表6】

【0132】
【表7】

【0133】
【表8】

【0134】
【表9】

【0135】
【表10】

【0136】
【表11】

【0137】
【表12】

【0138】
【表13】

【0139】
【表14】

【0140】
【表15】

【0141】
【表16】

【0142】
【表17】

【0143】
【表18】

高温でのオレフィンメタセシス反応に関する実験の一般注釈:秤量した触媒試料を約1mLのベンゼンに溶解させた(スターラーバーを仕込んだ25mL容Schlenkフラスコ内で)。次いで、基質(液状)をシリンジによって送達し、固形基質の場合は、量り取って固体で、触媒溶液に一気に送達した。次いで、試料を窒素下にて記載の温度で還流した。ホモカップリングした生成物を後述のようにして単離した。Z−含有量の割合は触媒に依存する。E−類似体は混合物中の割合が小さいため、Z−生成物のデータのみ報告する。各場合の単離でのZ%を13C NMRによって確認した。
【0144】
【表19】

真空下で行なった反応に関する実験の詳細:秤量した量の触媒をバイアルに移した。触媒をインサイチュで生成させた場合は、基質を添加する前に溶媒を除去した。部分真空下で、基質を分割してシリンジによって送達した。反応液を真空内に置き、H NMRによってモニタリングした。
【0145】
【表20】

5−デセン([CH(CH(CH)]).反応液を室温まで冷却した後、混合物をヘキサンとともに100mLのシリカゲルプラグに通して濾過し、金属錯体を取り出した。ロータバップによって溶媒、また基質1−ヘキセンを除去して濾液を乾燥させ、生成物を無色の液状物として得た。典型的な反応規模は基質(1−ヘキセン)5mLとした。(Z)−5−デセン:H NMR(500 MHz,CDCl)δ 5.38(m,2,CH),2.06(m,4,CH),1.35(m,8,CH),0.93(m,6,CH);13C NMR(125 MHz,CDCl)δ 130.06,32.31,27.21,22.66,14.33。
【0146】
7−テトラデセン([CH(CH(CH)]).この生成物の単離を(Z)−5−デセンと同様にし、生成物を無色の液状物として得た。典型的な反応規模は、基質(1−オクテン(ocetene)3mLとした。(Z)−テトラデカ−7−エン:H NMR(500 MHz,CDCl)δ 5.38(m,2,CH),2.06(m,4,CH),1.34(m,16,CH),0.92(m,6,CH);13C NMR(125 MHz,CDCl)δ 130.16,32.10,30.05,29.30,27.50,22.96,14.33。
【0147】
1,4−ジフェニルブタ−2−エン([Ph(CH)CH]).反応液を室温まで冷却した後、生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した(ヘキサンを溶離液として使用)。ロータバップによって溶媒を除去して生成物含有画分を乾燥させ、生成物を無色の液状物として得た。典型的な反応規模は、基質(アリルベンゼン)2mLとした。(Z)−1,4−ジフェニルブタ−2−エン:H NMR(500 MHz,CDCl)δ 7.30(m,10,Ar−H),5.76(m,2,CH),3.57(d,4,CH2,HH = 6 Hz);13C NMR(125 MHz,CDCl)δ 141.03,129.31,138.73,128.63,126.22,33.74。
【0148】
1,4−ビス(トリメチルシリル)ブタ−2−エン(CHCHSiMe.反応混合物をシリカプラグに通して濾過した(ヘキサンを溶離液として使用)。ロータバップによって溶媒と出発物質を除去して濾液を乾燥させた。所望の生成物を無色の液状物として収集した。典型的な反応規模は、出発物質(アリルトリ(ti)メチルシラン)2mLとした。(Z)−1,4−ビス(トリメチルシリル)ブタ−2−エン:H NMR(500 MHz,CDCl)δ 5.31(m,2,CH),1.41(d,4,CH,JHH = 7 Hz),0.00(s,18,SiMe);13C NMR(125 MHz,CDCl)δ 123.34,18.02,−1.48。
【0149】
ジメチルイコサ−10−エンジオエート.反応混合物をシリカゲルプラグに通して精製した(1:9 EtO:ヘキサンを使用)。所望の生成物を無色の油状物として得、これは、放置すると固化した。(Z)−ジメチルイコサ−10−エンジオエート:H NMR(500 MHz,CDCl)δ 5.34(m,2,CH),3.66(s,6,CH),2.30(t,4,MeOCCH,JHH = 7.5 Hz),2.00(m,2,CHCH=CH),1.61(m,2,CHCH=CH),1.28(m,24,CH);13C NMR(125 MHz,CDCl)δ 174.57,130.09,51.69,34.35,29.97,29.58,29.47,29.38,27.43,25.19.C2240の分析計算値:C,71.70;H,10.94.実測値:C,71.85;H 10.87。
【0150】
ジメチルオクタデカ−9−エンジオエート.所望の生成物を、ジメチルイコサ−10−エンジオエートと同じ方法を用いて単離した。(Z)−ジメチルオクタデカ−9−エンジオエート:H NMR(500 MHz,CDCl)δ 5.34(m,2,CH),3.66(s,6,CH),2.30(t,4,MeOCCH,JHH = 7.5 Hz),2.00(m,4,CHCH=CH),1.61(m,4,CH),1.30(m,16,CH);13C NMR(125 MHz,CDCl)δ 174.50,130.02,51.63,34.28,29.85,29.34,29.30,29.27,27.34,25.12.(E)−ジメチルオクタデカ−9−エンジオエートの選出したピーク:H NMR(500 MHz,CDCl)δ 5.37(m,2,CH);13C NMR(125 MHz,CDCl)δ 130.49,32.73,29.72,29.12。
【0151】
1,4−ビス(ベンジルオキシ)ブタ−2−エン.反応混合物をシリカゲルプラグに通して精製した(ヘキサンから1:1 EtO:ヘキサンまでを使用)。所望の生成物をわずかに黄色の油状物として得た。(Z)−1,4−ビス(ベンジルオキシ)ブタ−2−エン:H NMR(500 MHz,CDCl)δ 7.38−7.32(m,10,Ar−H),5.82(m,2H,CH),4.52(s,4,PhCH),4.09(d,4,OCHCH,JHH = 5.0 Hz;13C NMR(125 MHz,CDCl)δ 138.29,129.70,128.59,127.98,127.96,72.43,65.93。
【0152】
N,N’−(ブタ−2−エン−1,4−ジイル)ビス(4−メチルベンゼンスルホンアミド)([トシル(NH)(CHCH)]).反応液を室温まで冷却した後、生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した(1:1 エチルエーテル/ヘキサンを純エチルエーテルまで上げて溶離液として使用)(注:所望の生成物を溶解させるために、粗製混合物に少量の酢酸エチルを負荷)。ロータバップによって溶媒を除去して生成物含有画分を乾燥させた。生成物をを無色の液状物として収集し、これは、室温で一晩放置すると固化し、白色固形物が得られた。典型的な反応規模は、基質(アリルトシルアミド)0.5gである。(Z)−N,N’−(ブタ−2−エン−1,4−ジイル)ビス(4−メチルベンゼンスルホンアミド):H NMR(500 MHz,CDCl)δ 7.72(d,4,Ar−H,JHH = 8 Hz),7.30(d,4,Ar−H,JHH = 8 Hz),5.43(m,2,CH),5.07(br s,2,NH),3.50(t,4,CH2,HH = 6 Hz),2.44(s,6,CH);13C NMR(125 MHz,CDCl)δ 143.84,136.95,129.99,128.50,127.34,127.31,39.72,21.76。
【0153】
,N−ジフェニルブタ−2−エン−1,4−ジアミン([CHCH(NHPh)]).反応混合物をシリカゲルカラムに通して精製した(ヘキサンを5:95 EtO:ヘキサンまで上げて使用)。所望の生成物をわずかに黄色の油状物として得、これは、放置すると固化した。(Z)−N,N−ジフェニルブタ−2−エン−1,4−ジアミン:H NMR(500 MHz,CDCl)δ 7.20(t,4,Ar−H,JHH = 8.0 Hz),6.76(t,2,Ar−H,JHH = 7.5 Hz),6.65(d,4,Ar−H,JHH = 7.5 Hz),5.76(m,2,CH=CH),3.88(d,4,CH2,HH = 5.0 Hz),3.72(br s,2,NH);13C NMR(125 MHz,CDCl)δ 148.08,130.01,129.47,117.99,113.22,41.52.C1618の分析計算値:C,80.63;H,7.61;N,11.75.実測値:C,80.74;H,7.63;N,11.59。
【0154】
本明細書において、本発明のいくつかの実施形態を記載し、例示したが、当業者には、本明細書に記載の機能を発揮させるため、および/または本明細書に記載の結果および/または1つ以上の利点を得るための、さまざまな他の手段および/または構造が容易に想到されよう。かかる変形例および/または修正例は各々、本発明の範囲に含まれるものとする。より一般的に、当業者には、本明細書に記載のパラメータ、寸法、材料および配置はすべて例示を意図していること、ならびに実際のパラメータ、寸法、材料、および/または配置は、本発明の教示が使用される具体的な適用(1つまたは複数)に依存することが容易に認識されよう。当業者には、常套的な範囲内の実験手法を用いて、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態に対する多くの等価物が認識され、確認することができよう。したがって、前述の実施形態は、単なる例示として提示していること、ならびに添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内において、本発明は、具体的に記載し、特許請求の範囲に示したもの以外の方法でも実施され得ることは理解されよう。本発明は、本明細書に記載の個々の各特長、系、物品、材料、キットおよび/または方法に関するものである。また、かかる特長、系、物品、材料、キットおよび/または方法の2種類以上の任意の組合せが(かかる特長、系、物品、材料、キットおよび/または方法が相互に矛盾しなければ)本発明の範囲に包含される。
【0155】
不定冠詞「a」および「an」は、本文書において本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、そうでないことを明示していない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されたい。
【0156】
語句「および/または」は、本文書において本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、その等位構成要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、ある場合では接続的に存在する構成要素、別のある場合では選言的に存在する構成要素を意味すると理解されたい。そうでないことを明示していない限り、「および/または」節で具体的に特定した構成要素以外の他の構成要素(具体的に特定した構成要素に関係するものであれ、無関係のものであれ)が任意選択で存在してもよい。したがって、非限定的な一例として、「Aおよび/またはB」に対する言及は、「含む(comprising)」などのオープンエンドの文言とともに用いている場合、一実施形態では、BのないA(任意選択で、B以外の構成要素を含む);別の実施形態では、AのないB(任意選択で、A以外の構成要素を含む);また別の実施形態では、AとBの両方(任意選択で、他の構成要素を含む)などに対する言及であり得る。
【0157】
本文書において本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、「または」は、上記に規定した「および/または」と同じ意味を有すると理解されたい。例えば、列挙された対象物間に記載されている場合、「または」あるいは「および/または」は包含的である、すなわち、いくつかの構成要素または列挙された構成要素の少なくとも1つの包含であるが、1つより多く、任意選択で、列挙していないさらなる対象物の包含でもあると解釈されたい。「〜のうちの1つだけ」または「〜のうちの厳密に1つ」、あるいは特許請求の範囲で使用される「〜からなる」などの、そうでないことを明示する用語だけが、いくつかの構成要素または列挙された構成要素のうちの厳密に1つの構成要素の包含を示す。一般に、用語「または」は、本明細書で用いる場合、「いずれか」、「〜のうちの1つ」、「〜のうちの1つだけ」または「〜のうちの厳密に1つ」などの排他性を示す用語が前にある場合のみ、排他的選択肢(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)を示していると解釈されたい。「本質的に〜からなる」は、特許請求の範囲で用いる場合、特許法の領域で使用されている通常の意味を有するものとする。
【0158】
本文書において本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、列挙された1つ以上の構成要素に関する語句「少なくとも1つ」は、該構成要素の列挙内の構成要素の任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの構成要素を意味するが、必ずしも、該構成要素の列挙内に具体的に列挙された1つ1つの構成要素の少なくとも1つを含むものでなくてよく、該構成要素の列挙内の構成要素の任意の組合せを排除しないことを理解されたい。また、この規定により、語句「少なくとも1つ」の言及対象の構成要素の列挙において具体的に特定される構成要素以外の構成要素(具体的に特定した構成要素に関係するものであれ、無関係のものであれ)が任意選択で存在し得ることを許容する。したがって、非限定的な一例として、「AとBの少なくとも1つ」(あるいは、同等の「AまたはBの少なくとも1つ」あるいは同等の「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在しない少なくとも1つのA(任意選択で、1つより多い場合を含む)(および任意選択で、B以外の構成要素を含む);別の実施形態では、Aが存在しない少なくとも1つのB(任意選択で、1つより多い場合を含む)(および任意選択で、A以外の構成要素を含む);また別の実施形態では、少なくとも1つのA(任意選択で、1つより多い場合を含む)と、少なくとも1つのB(任意選択で、1つより多い場合を含む)(および任意選択で、他の構成要素を含む)などに対する言及であり得る。
【0159】
特許請求の範囲ならびに上記の本明細書において、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「担持する」、「を有する」、「含む(containing)」、「伴う」、「保有する」などの移行句はすべて、オープンエンドである、すなわち、包含しているが限定されないことを意味すると理解されたい。移行句「〜からなる」および「本質的に〜からなる」のみが、それぞれ、米国特許庁の審査手続便覧,セクション2111.03に示されたクローズドまたはセミクローズドの移行句であるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端二重結合を含む第1の分子と第2の同一の分子をホモメタセシス反応によって反応させ、内部二重結合を含む生成物を得る工程
を含み、
前記生成物の内部二重結合は、前記第1の分子の末端二重結合の一方の炭素原子および前記第2の炭素原子の末端二重結合の一方の炭素原子を含み、そして
前記生成物の内部二重結合の少なくとも約60%がZ−異性体として形成される、
方法。
【請求項2】
構造:
【化18】

(式中、MはMoまたはWであり;
は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、ヘテロアルキルであって、任意選択的に置換されており;
およびRは、同じであっても異なっていてもよく、および水素、アルキル、アルケニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであって、任意選択的に置換されており;
およびRは、同じであっても異なっていてもよく、およびアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シリルアルキルまたはシリルオキシであって、任意選択的に置換されており、ここで、RまたはRの少なくとも一方は、Mに結合している酸素を含む配位子である)
を有する触媒を準備する工程;ならびに
末端二重結合を含む第1の分子と第2の同一の分子を前記触媒の存在下で反応させ、内部二重結合を含む生成物を得る工程
を含み、
前記生成物の内部二重結合は、前記第1の分子の末端二重結合の一方の炭素原子および前記第2の炭素原子の末端二重結合の一方の炭素原子を含み、そして
前記生成物の内部二重結合の少なくとも約30%がZ−異性体として形成される、
方法。
【請求項3】
前記反応工程が遷移金属触媒の存在下で行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生成物の内部二重結合の少なくとも約50%がZ−異性体として形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記生成物の内部二重結合の少なくとも約70%がZ−異性体として形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記生成物の内部二重結合の少なくとも約80%がZ−異性体として形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記生成物の内部二重結合の少なくとも約90%がZ−異性体として形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記生成物の内部二重結合の少なくとも約95%がZ−異性体として形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記生成物の内部二重結合の少なくとも約98%がZ−異性体として形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記反応が少なくとも約30%の転化率で進行する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記反応が少なくとも約50%の転化率で進行する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記反応が少なくとも約60%の転化率で進行する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記反応が少なくとも約70%の転化率で進行する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記反応が少なくとも約80%の転化率で進行する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記反応が少なくとも約90%の転化率で進行する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の分子および第2の分子が式:
【化19】

(式中、Rは、H、アルキル、アルケニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、アリール、ヘテロアリールまたはアシルであって、任意選択的に置換されている)
を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
とRのうち一方が、Mに結合している酸素を含む任意選択的に置換された配位子であり、そして他方が、Mに結合している窒素を含む任意選択的に置換された配位子である、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
Mに結合している酸素を含む前記少なくとも1つの配位子に対称面がない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
Mに結合している窒素を含む前記配位子が、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、インドリル、インダゾリル、カルバゾリル、モルホリニル、ピペリジニル、およびオキサジニル(すべて、任意選択的に置換されている)からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
Mに結合している窒素を含む前記配位子が、任意選択的に置換されたピロリルである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
Mに結合している酸素を含む前記配位子が、式−OSi(R22(式中、各R22は、同じであっても異なっていてもよく、およびアリールまたはアルキルであって、任意選択的に置換されている)を有する基を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
およびRは同じであるか異なっており、およびアリールまたはアルキルであって、任意選択的に置換されており、そしてRは水素である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
Mに結合している窒素を含む前記配位子が構造:
【化20】

(式中、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、および水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであって、任意選択的に置換されており;そして
Xは存在していても存在していなくてもよく、および存在する場合は非妨害基である)
を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
Mに結合している酸素を含む前記配位子が下記の構造:
【化21】

(式中、Rは、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはヘテロアルキルであって、任意選択的に置換されており;
は、水素、−OH、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アシルオキシまたは−OPであって、任意選択的に置換されているか;あるいは
とRが一緒になって、任意選択的に置換された環を形成しており;
は、−OH、−OPまたはアミノであって、任意選択的に置換されており;
10は、水素、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはアシルであって、任意選択的に置換されており;
11、R12、R13およびR14は各々、同じであっても異なっていてもよく、およびアリール、ヘテロアリール、アルキル、ヘテロアルキルまたはアシルであって、任意選択的に置換されているか;あるいは
11とR12が一緒になって、任意選択的に置換された環を形成しているか;あるいは
一緒にR13とR14が連接されて、任意選択的に置換された環を形成しており;そして
Pは保護基である)
を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
がシリル保護BINOL誘導体である、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
が:
【化22】

(式中、各R17は、同じであっても異なっていてもよく、および水素、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、アシルまたは−OPであって、任意選択的に置換されており;そして
Pは保護基である)
である、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
が:
【化23】

(式中、各R17は、同じであっても異なっていてもよく、および水素、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、アシルまたは−OPであって、任意選択的に置換されており;そして
Pは保護基である)
である、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
がアルキルである、請求項2に記載の方法。
【請求項29】

【化24】

(式中、各R17は、同じであっても異なっていてもよく、および水素、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、アシルまたは−OPであって、任意選択的に置換されている)
であり;
が、CMePhまたはCMeであり;
がHであり;そして
が、下記の構造
【化25】

(式中、RおよびR10は各々、同じであるか異なっており、およびハロゲン、メチル、t−ブチル、CFまたはアリールであって、任意選択的に置換されており;そして
Pは保護基である)
のエナンチオマーである、
請求項2に記載の方法。
【請求項30】
が下記の構造:
【化26】

(式中、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、および水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールであって、任意選択的に置換されており;そして
Xは存在していても存在していなくてもよく、および存在する場合は非妨害基である)
を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
Mに結合している酸素を含む前記配位子が下記の構造:
【化27】

【化28】

(式中、RおよびRは各々、同じであっても異なっていてもよく、および水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、アシルまたは保護基であって、任意選択的に置換されており;
10は、水素、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはアシルであって、任意選択的に置換されており;
11、R12、R13およびR14は各々、同じであっても異なっていてもよく、およびアリール、ヘテロアリール、アルキル、ヘテロアルキルまたはアシルであって、任意選択的に置換されているか;あるいは
11とR12が一緒になって、任意選択的に置換された環を形成しているか;あるいは
13とR14が一緒になって、任意選択的に置換された環を形成しており;
15は、アルキル、アリールまたは保護基であって、任意選択的に置換されており;
16は水素またはアミン保護基であり;
Xは、存在する場合は非妨害基であり得;
各Zは、同じであっても異なっていてもよく、および(CH、N、Oであって、任意選択的に置換されており;
nは0〜5であり;そして
mは1〜4である)
を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項32】
およびR10は同じであるか異なっており、およびF、Cl、BrまたはIからなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
がCMePhまたはCMeであり、そしてRが水素である、請求項2に記載の方法。
【請求項34】
MがWであり、そしてRが:
【化29】

でない、請求項2に記載の方法。
【請求項35】
MがWであり、そしてRが:
【化30】

(式中、各R17は、同じであっても異なっていてもよく、および水素、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、アシルまたは−OPであって、任意選択的に置換されており、そしてPは保護基である)
である、請求項2に記載の方法。
【請求項36】
Mに結合している酸素を含む前記配位子がヘキサイソプロピルターフェノレートである、請求項2に記載の方法。
【請求項37】
前記触媒が、M(NAr)(Pyr)(CHR)(OHIPT)、M(NAr)(Pyr)(C)(OHIPT)、M(NAr)(CHCMePh)(Pyr)(BiphenTMS)、M(NAr)(CHCMePh)(MePyr)(BrBitet)、M(NAr)(CHCMePh)(MePyr)(MesBitet)、W(NAr)(CHCMePh)(MePyr)(OPhPh)、M(NAr)(CHCMePh)(Pyr)((Trip)BitetTMS)、M(NArCl)(CHCMe)(Pyr)(BiphenTMS)、M(NArCl)(CHCMe)(MePyr)(OSi(TMS))、M(NArCl)(CHCMe)(MePyr)(OPhPh)、M(NArCl)(CHCMe)(MePyr)(HIPTO)、M(NArCl)(CHCMe)(MePyr)(HIPTO)、M(NArCl)(CHCMe)(MePyr)(BrBitet)、M(NArCl)(CHCMe)(MePyr)(MesBitet)、M(NArCl)(CHCMe)(Pyr)(MesBitet)、M(NAd)(MePyr)(CHR)(BrBitet)、M(NAr’)(Pyr)(CHR)(MesBitetOMe)、M(NAd)(CHCMePh)(MePyr)(OSi(TMS))、M(NAd)(CHCMePh))(MePyr)(HIPTO)、M(NAd)(CHCMePh)(MePyr)(MesBitet)、M(NAr’)(Pyr)(CHR)(OHIPT)、M(NAr’)(CHCMePh)(MePyr)(OSi(TMS))、M(NAr’)(CHCMePh)(MePyr)(OPhPh)、M(NAr’)(CHCMePh)(MePyr)(HIPTO)、M(NAr’)(CHCMePh)(MePyr)(BrBitet)、M(NAr’)(CHCMePh)(Pyr)(MesBitet)、M(NAr’)(CHCMePh)(MePyr)(MesBitet)、M(NAr’)(CHCMePh)(Pyr)(MesBitetOMe)、またはM(NAr’)(CHCMePh)(Pyr)(MesBitet)、(式中、Mは、MoまたはWであり、Arは2,6−ジイソプロピルフェニルであり、ArClは2,6−ジクロロフェニルであり、Ar’は2,6−ジメチルフェニルであり、Adは1−アダマンチルであり、Mesはメシチルであり、MePyrは2,5−ジメチルピロリドであり、Pyrはピロリドであり、TBSはジメチル−t−ブチルシリルであり、Tsはトシルであり、OTfはトリフラートであり、Tripは2,4,6−トリイソプロピルフェニルであり、HIPTOはヘキサイソプロピルターフェノレートであり、OSi(TMS)は1,1,1,3,3,3−ヘキサメチル−2−(トリメチルシリル)トリシラン−2−オレートであり、Biphenは3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’,6,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジオールであり、BiphenTMSは3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’,6,6’−テトラメチル−2’−(トリメチルシリルオキシ)ビフェニル−2−オレートであり、Bitetは5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジオールであり、TripBitetは3,3’−ビス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジオールであり、TripBitetTMSは3,3’−ビス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)−2’−(トリメチルシリルオキシ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレートであり、BrBitetは3,3’−ジブロモ−2’−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレートであり、MesBitetは2’−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−3−メシチル−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレートであり、MesBitetは3,3’−ジメシチル−2’−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレートであり、そしてMesBitetOMeは3,3’−ジメシチル−2’−メトキシ−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル−2−オレートである)からなる群より選択される構造を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項38】
前記ヘテロアルキルがアルコキシである、前記請求項いずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記ヘテロアリールがアリールオキシである、前記請求項いずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【公表番号】特表2013−506663(P2013−506663A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532065(P2012−532065)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/002644
【国際公開番号】WO2011/040963
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【出願人】(503054225)トラスティーズ オブ ボストン カレッジ (1)
【Fターム(参考)】