説明

高張力鋼グレーチング

【課題】強度を維持しながら、軽量化を可能とし、拡大する鉄鋼材の需要拡大にも対応可能で、地球にやさしいグレーチングを提供する。
【解決手段】道路の側溝Uなどの蓋として用いられ、矩形断面のベアリングバー1を立てた状態で平行に並べ、突き合わせ抵抗溶接により、ベアリングバー1の上端側をクロスバー2でクロスバー2がベアリングバー1の上端面から突出しない状態で連結して格子窓Wを形成し、ベアリングバー1の両端部をエンドバー3で連結した構成のグレーチング5であって、少なくともベアリングバー1の素材を高張力鋼とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の側溝などの蓋や床板として用いられる、格子状のグレーチングに関する。
【背景技術】
【0002】
舗装道路の側溝などの蓋として用いられるグレーチングは、I字形を含む断面矩形のベアリングバーを立てた状態で平行に並べ、その上端側をクロスバーで連結して、格子窓を形成し、ベアリングバーの両端部をそれぞれエンドバーで連結したもので、道路上の雨水や土砂がその格子窓を通過して側溝内に落ち込むようになっている。
【0003】
また、通常、グレーチングの上を人や車両が通過するものなので、凹凸をなくすように、クロスバーはベアリングバーに対して、クロスバーがベアリングバーの上端面から突出しない状態となるように、突き合わせ抵抗溶接されている。
【0004】
図2は、そのようなグレーチングであって、本発明の背景技術となるものの一例を示すもので、(a)はその要部断面図、(b)はその使用状態を上から見た図である。このグレーチングは、特許文献1に記載されたものである。
【0005】
このグレーチング20は、ベアリングバー11とクロスバー12とで格子窓W′を形成し、エンドバー13を備え、更に、開閉可能となっていて、その開閉のための取っ手15と、この取っ手15の開閉操作に従動して、閉止ロック手段16のロックを解除、設定する従動桿12とを備えて、別途操作をすることなく、グレーチング20の跳ね上がり防止あるいは解除ができるものである。
【0006】
ここで、この例を含み、一般に、グレーチングの強度を構成するベアリングバーの素材としては、JIS G3101に規定される一般構造用圧延鋼材であるSS400が使用されることが通常であり、そのため、ベアリングバーの断面寸法も、その素材の機械的性質(降伏点=245N/mm 以上、引張強さ=400〜510N/mm)に基づいたものとなっている。
【0007】
具体的には、溝幅300mmの側溝用で、6トンの荷重に耐えるものでは、I字形断面で、厚い部分が5mm、薄い部分が3mm、高さが38mmというベアリングバーが用いられ、また、外径6ミリのツイストバーがクロスバーとして用いられ、グレーチングの長さを995mm(1メートル用)とすると、全体重量が、めっきを含めて19.3kgというものであった。
【0008】
しかしながら、鉄鋼材の需要が拡大している現代において、強度を保ちながら、軽量化を図ることができるグレーチングが求められているが、既存の素材に固執している限りは、そのような要請に応えることはできなかった。
【0009】
また、強度を保ちながら、軽量化を図ることは、限りある地球資源の有効利用し、地球にやさしい技術という点でも望まれていることであった。
【特許文献1】特開2006−257706号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題を改善しようとするもので、強度を維持しながら、軽量化を可能とし、拡大する鉄鋼材の需要拡大にも対応可能で、地球にやさしいグレーチングを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の高張力鋼グレーチングは、道路の側溝などの蓋や床板として用いられ、矩形断面のベアリングバーを立てた状態で平行に並べ、突き合わせ抵抗溶接により、前記ベアリングバーの上端側をクロスバーで前記クロスバーが前記ベアリングバーの上端面から突出しない状態で連結して格子窓を形成し、前記ベアリングバーの両端部をエンドバーで連結した構成のグレーチングであって、少なくとも前記ベアリングバーの素材を高張力鋼としたことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の高張力鋼グレーチングは、請求項1に従属し、クロスバーの断面積を、ベアリングバーの薄肉化に比例した値から、この比例値より40%小さい値までの範囲内のものとしたことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の高張力鋼グレーチングは、請求項1または2に従属し、クロスバーをベアリングバーに突き合わせ抵抗溶接する際の加圧力、溶接電流、通電時間、通電間隔の内の少なくともいずれか一つを、ベアリングバーの薄肉化に比例した値から上下20%の範囲内のものとしたことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の高張力鋼グレーチングは、請求項1から3のいずれかに従属し、外形寸法、開口率を変化させることなく、強度を向上させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の高張力鋼グレーチングによれば、道路の側溝などの蓋や床板として用いられ、矩形断面のベアリングバーを立てた状態で平行に並べ、突き合わせ抵抗溶接により、前記ベアリングバーの上端側をクロスバーで前記クロスバーが前記ベアリングバーの上端面から突出しない状態で連結して格子窓を形成し、前記ベアリングバーの両端部をエンドバーで連結した構成のグレーチングであって、少なくとも前記ベアリングバーの素材を高張力鋼としたので、ベアリングバーを薄肉化しても強度を維持でき、強度を維持しながら、軽量化を可能とし、拡大する鉄鋼材の需要拡大にも対応可能で、地球にやさしいグレーチングを提供することを可能とする。
【0016】
請求項2記載の高張力鋼グレーチングによれば、請求項1の効果に加え、クロスバーの断面積を、ベアリングバーの薄肉化に比例した値から、この比例値より40%小さい値までの範囲内のものとしたので、突き合わせ抵抗溶接による好適なベアリングバーとクロスバーの溶融結合を可能とする上に、クロスバーの軽量化によるグレーチングの重量の更なる軽量化を図ることができる。
【0017】
請求項3記載の高張力鋼グレーチングによれば、請求項1または2に従属の効果に加え、クロスバーをベアリングバーに突き合わせ抵抗溶接する際の加圧力、溶接電流、通電時間、通電間隔の内の少なくともいずれか一つを、ベアリングバーの薄肉化に比例した値から上下20%の範囲内のものとしたので、上記効果を有するグレーチングを製造するための突き合わせ抵抗溶接をより好適に実現することができる。
【0018】
請求項4記載の高張力鋼グレーチングによれば、請求項1から3のいずれかに従属し、外形寸法、開口率を変化させることなく、強度を向上させたので、取り回り関係品を変えることなく、グレーチングの交換だけで、強度アップさせたい場合に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態(実施例)について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の高張力鋼グレーチングの一例を示すもので、(a)はその使用状態の外観斜視図、(b)はその要部断面図、(c)は(b)のA矢視図である。
【0020】
この高張力鋼グレーチング5は、この図1(a)では、道路の側溝Uの蓋として、グレーチング受部UAに設置されているものを示しているが、その他に、クリーンルームや多数階駐車場などの床板、あるいは、階段の踏み板としても用いることができるものである。
【0021】
その構成は、矩形断面のベアリングバー1を立てた状態で平行に並べ、突き合わせ抵抗溶接により、ベアリングバー1の上端側をクロスバー2で、このクロスバー2がベアリングバー1の上端面から突出しない状態で連結して格子窓Wを形成し、ベアリングバー1の両端部をそれぞれエンドバー3で連結したもので、少なくともベアリングバー1の素材を高張力鋼としたことを特徴とする。
【0022】
ここで、高張力鋼とは、基本としては、JIS G3129、G3134、G3135に規定された高張力鋼が例示されるが、これらに限定されず、従来用いられていた一般構造用圧延鋼材であるSS400の強度の2倍程度以上の強度を持ち、一般に高張力鋼とか、高強度鋼とか称されるものを含むものである。
【0023】
このような高張力鋼、例えば、HT80(降伏点=365N/mm 以上、引張強さ=780N/mm 以上)を用いると、ベアリングバ−1の厚さtを、従来の同じ仕様のSS400のものの約半分とすることができ、グレーチング5全体としての重量も約半分とすることができる。
【0024】
また、ベアリングバ−1を配置するベアリングバー配置ピッチBPを変えないとすると、格子窓Wの開口幅BWは、従来より、ベアリングバ−1の厚さtだけ大きくなり、開口率を拡大させることができる。
【0025】
つまり、この高張力鋼グレーチング5によれば、強度を維持しながら、軽量化を可能とし、拡大する鉄鋼材の需要拡大にも対応可能で、地球にやさしいグレーチングを提供することができる。
【0026】
なお、高張力鋼グレーチング5の重量を約半分にすることができるということは、材料の重量単価が2倍高くなっても、材料費は同じとすることができるということに加え、製造過程及び販売過程に於ける製品の取り扱いのしやすさ、運搬重量の軽減による運送費の軽減とも相まって、全体として、グレーチングの価格をも従前に比べ高くならないようにすることができるということである。
【0027】
また、この高張力鋼グレーチング5では、クロスバー2の断面積、この例では丸棒なので、その外径dを、ベアリングバー1の薄肉化に比例した値(例えば、従前の外径の2分の1)から、この比例値より40%小さい値(例えば、従前の30%)までの範囲内のもの(例えば、従前の外径の40%)のものとしたことを特徴とする。
【0028】
このようなクロスバー2の小径化(断面積の縮小)は、本願発明者の従前の素材におけるベアリングバーの厚さとクロスバーの外径との間の関係についての知見に基づき、今般、素材として高張力鋼を用いたことで薄肉化されたベアリングバー1に対して、最適な相互溶融による突き合わせ抵抗溶接を達成すべく試行錯誤した結果、見いだされたものである。
【0029】
つまり、上記のようなベアリングバー1の薄肉化と、クロスバー2の断面積との間の関係を維持しておくと、ベアリングバ1とクロスバー2の接点である溶接部分において、相互の溶接部分が同様に溶融結合して好適な突き合わせ抵抗溶接が可能となり、かつ、クロスバー2がベアリングバー1の上端面から突出しない状態で溶接できることを見いだしたものである。
【0030】
この結果については、この突き合わせ抵抗に関する一般の知見によると、ベアリングバー1とクロスバー2との接点である溶接部分について、ここに発生する抵抗に基づくジュール熱に対する熱容量を等しくするものであるという理解や、この溶接部分の電流集中を均等なものとしているという理解や、あるいは、この溶接部分の電流密度を均等なものとしているという理解が可能である。
【0031】
加えて、この高張力鋼グレーチング5については、本発明者は、上記関係に基づいて、同時に、クロスバーの軽量化、その結果のグレーチングの更なる軽量化も可能となることも見いだしたものである。
【0032】
言い換えれば、本発明者は、これまで、この突き合わせ抵抗溶接によって、上面面一の状態で、ベアリングバーとクロスバーとを好適に溶接してグレーチングという商品とするために必要とされていたクロスバーの外径(断面積)は、構造体としての強度的には、必要以上のものであって、この溶接法と、高張力鋼とを用いることで、その余肉をそぎ取ることができるということを見いだしたものである。
【0033】
つまり、この高張力鋼グレーチング5によれば、突き合わせ抵抗溶接と高張力鋼を素材とする薄肉化されたベアリングバー1と、このベアリングバー1の薄肉化に比して、上記関係にある断面積のクロスバー2を用いることで、好適な突き合わせ抵抗溶接の達成に加え、強度を維持しながら、グレーチング5の更なる軽量化を図ることができる。
【0034】
なお、上記のベアリングバーの薄肉化にたいするクロスバーの断面積(外径)の範囲は、クロスバーの形状(角棒タイプや、ツイストタイプ)や、材質、ベアリングバーの形状(I字形状や、矩形形状)等に対応して、好適な突き合わせ抵抗溶接が達成される範囲として設定されたもので、ベアリングバーが矩形形状でクロスバーが丸棒の場合には、上述したように、薄肉化に比例した値より20%小さい値が最適なものであることが解っている。
【0035】
また、この高張力鋼グレーチング5は、クロスバー2をベアリングバー1に突き合わせ抵抗溶接する際の加圧力、溶接電流、通電時間、通電間隔の内の少なくともいずれか一つを、ベアリングバー1の薄肉化に比例した値(例えば、2分の1)から上下20%の範囲(例えば、従前の40%から60%)内のものとしたことを特徴とする。
【0036】
このようなデータも、本願発明者の従前の素材におけるベアリングバーの厚さとクロスバーの外径との間の関係についての知見に基づき、今般、素材として高張力鋼を用いたことで薄肉化されたベアリングバー1に対して、上記関係を有するクロスバー2を、最適な相互溶融による突き合わせ抵抗溶接を達成すべく試行錯誤した結果、見いだされたものである。
【0037】
なお、上記のベアリングバーの薄肉化に対する、突き合わせ抵抗溶接する際の加圧力、溶接電流、通電時間、通電間隔の範囲は、クロスバーの形状(角棒タイプや、ツイストタイプ)や、材質、ベアリングバーの形状(I字形状や、矩形形状)等に対応して、好適な突き合わせ抵抗溶接が達成される範囲として設定されたもので、ベアリングバーが矩形形状でクロスバーが丸棒の場合には、薄肉化に比例した値と同じとするのが最適なものであることが解っている。
【0038】
また、上記の説明から解るように、本発明の高張力鋼グレーチングによれば、例えば、ベアリングバーを同じ板厚の素材とすることで、強度を2倍とすることができ、グレーチングの外形寸法、開口率を変化させることなく、強度を向上させることができる。
【0039】
加えて、例えば、2倍の強度を持つ高張力鋼を素材としながら、ベアリングバーの板厚を従来より70%とすることで、クロスバーの断面積も60%程度とすることができ、グレーチングの外径寸法を変えることなく、開口率と軽量化を達成しながら、かつ、強度を1.4倍程度増加させることができる。
【0040】
このような外形寸法、開口率を変化させることなく強度を向上させることができるグレーチングは、仕様強度を超える荷重が作用することとなった場合に、取り回り部分を変更することなく、グレーチング部分だけを交換するだけで、その過大荷重に対応することができるので好適である。
【0041】
一方、この高張力鋼を用いることにより高強度化は、同じ強度を維持するのに、グレーチング自体を小型化することができるということである。
【0042】
例えば、従来、300mm□で、高さ32mm必要とされていたグレーチング蓋を、同じ300mm□で、高さ25mmとすることができ、その分、このグレーチング蓋を設置すべき、例えば、受水枡のグレーチング蓋受け部の高さを短くすることができ、それだけ、同じ有効深さなら、全体としての高さの小さい受水枡とすることができる。
【0043】
つまり、本発明の高張力鋼グレーチングによれば、同じ強度を維持しながら、グレーチングを小型化して、それを取り付ける部分の関係する寸法も小型化できるという効果を発揮することができる。
【実施例1】
【0044】
背景技術で記載した例と同じ条件、つまり、溝幅300mmの側溝用で、6トンの荷重に耐えるものとして、素材がHT80の矩形断面で、厚さが2.3mm、高さが38mmというベアリングバーを用い、クロスバーの外径を4mmとした場合、同じ、グレーチングの長さを995mm(1メートル用)とすると、全体重量が、めっきを含めて11.3kgというものであった。
【0045】
つまり、同じ強度を維持しながら、約半分の重量を達成することができた。
なお、本発明の高張力鋼グレーチングは、上記の実施態様(実施例)に限定されない。また、特許請求の範囲に記載された範囲、実施態様(実施例)の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の高強度グレーチングは、強度を維持しながら、軽量化を可能とし、拡大する鉄鋼材の需要拡大にも対応可能で、地球にやさしいことが要請される産業分野に、特に、溝蓋や、クリーンルームや多数階駐車場などの床板や、階段の踏み板として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の高張力鋼グレーチングの一例を示すもので、(a)はその使用状態の外観斜視図、(b)はその要部断面図、(c)は(b)のA矢視図
【図2】本発明の高張力鋼グレーチングの背景技術となるグレーチングの一例を示すもので、(a)はその要部断面図、(b)はその使用状態を上から見た図
【符号の説明】
【0048】
1 ベアリングバー
2 クロスバー
3 エンドバー
5 高張力鋼グレーチング
U 側溝
UA グレーチング受部
W 格子窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の側溝などの蓋や床板として用いられ、矩形断面のベアリングバーを立てた状態で平行に並べ、突き合わせ抵抗溶接により、前記ベアリングバーの上端側をクロスバーで前記クロスバーが前記ベアリングバーの上端面から突出しない状態で連結して格子窓を形成し、前記ベアリングバーの両端部をエンドバーで連結した構成のグレーチングであって、
少なくとも前記ベアリングバーの素材を高張力鋼としたことを特徴とする高張力鋼グレーチング。
【請求項2】
クロスバーの断面積を、ベアリングバーの薄肉化に比例した値から、この比例値より40%小さい値までの範囲内のものとしたことを特徴とする請求項1記載の高張力鋼グレーチング。
【請求項3】
クロスバーをベアリングバーに突き合わせ抵抗溶接する際の加圧力、溶接電流、通電時間、通電間隔の内の少なくともいずれか一つを、ベアリングバーの薄肉化に比例した値から上下20%の範囲内のものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の高張力鋼グレーチング。
【請求項4】
外形寸法、開口率を変化させることなく、強度を向上させたことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の高張力鋼グレーチング。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−57750(P2009−57750A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226042(P2007−226042)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(593159903)株式会社宝機材 (16)
【出願人】(507294155)フジデン株式会社 (1)
【出願人】(507293538)堺鋼板株式会社 (1)
【Fターム(参考)】