説明

高性能潤滑油添加剤

有機リン酸エステル及び有機フッ素化合物を混合し、有機リン酸エステル及び有機フッ素化合物を反応させて、潤滑油添加剤を含む反応混合物を生成することを含むプロセスにより生成される潤滑油添加剤。また、有機リン酸エステル及び有機フッ素を反応させ、反応混合物の少なくとも一部分を潤滑基剤に添加することによって反応混合物を形成することを含むプロセスにより生成される潤滑油。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に潤滑油添加剤、より詳細には潤滑油の望ましい潤滑油特性を向上する高性能潤滑油添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油は、耐摩耗及び耐摩擦特性のような望ましい性質のために選択される多様な化合物を含む。多くの場合、市販の潤滑油は、炭化水素油又はグリースのような潤滑基剤を含有する組成物であり、それには、追加的な望ましい特性のために選択された多数の潤滑油添加剤が添加されている。潤滑油添加剤は、潤滑基剤の潤滑性を向上することができる、及び/又は耐摩耗若しくは他の望ましい性質を提供することができる。
【0003】
潤滑油は大量に使用される。例えば、四十億クォートを超えるクランクケース油が、米国で毎年使用される。しかし、現在使用されている多くの潤滑油は望ましくない性質も有する。現在入手可能なクランクケース油は、一般に耐摩耗添加剤の亜鉛ジアルキルジチオリン酸(ZDDP)を含み、これはリン及び硫黄を含有する。リン及び硫黄は触媒コンバーターを被毒し、自動車排出物の増加を引き起こす。EPAは、最終的にZDDPの完全な排除を義務づけるか、又はクランクケース油において極めて低いレベルのZDDPしか認めないことが予測される。しかし、エンジン油においてZDDPに代わる許容可能な耐摩耗添加剤で、現在入手可能なものはない。
【0004】
加えて、従来の潤滑油に使用される潤滑基剤は、通常、潤滑性を改善するために潤滑油添加剤が添加されている。これらの潤滑油添加剤の多くは、十分な追加の潤滑性を提供しない及び/又は追加の望ましくない性質を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、耐摩耗添加剤におけるリン及び硫黄の量が有意に低減され、ゼロに近づいている、環境に優しい耐摩耗添加剤を潤滑油に提供することが本発明の目的である。望ましい耐摩耗及び耐摩擦特性を有する化合物を生成することが、本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、亜鉛ジアルキルジチオリン酸(ZDDP)のような有機リン酸エステル及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような有機フッ素化合物を共に反応させることにより潤滑油添加剤及び潤滑油を調製する方法を含む。本発明の実施形態に使用されるPTFEは、40個を超える炭素原子を含む。一つの実施形態において、ZDDP及びPTFEを、約−20℃〜約150℃で共に反応させる。好ましい実施形態において、ZDDP及びPTFEを、約60℃〜約150℃の温度で共に反応させる。反応を、約20分間から約24時間続けさせる。反応の際に形成される上澄みと沈殿物の両方を、潤滑油添加剤として使用することができる。これらの潤滑油添加剤を、油、グリース、オートマティック・トランスミッション液、クランクケース液、エンジン油、作動油及び歯車油のような潤滑油に添加することができる。特定の実施形態において、有機リン酸エステル及び有機フッ素化合物を、潤滑基剤に添加することができ、次に特定の条件下で反応させることができる。
【0007】
本発明の他の実施形態は、粉末状にし、素練りした金属ハロゲン化物の混合物を、ZDDPのような有機リン酸エステル及びPTFEのような有機フッ素と反応させて、潤滑油添加剤及び潤滑油を形成する。さらに別の実施形態において、粉末状にしない及び/又は素練りしない他の形態の金属ハロゲン化物を使用することができる。使用される金属ハロゲン化物は、本発明の好ましい実施形態において金属フッ化物である。好ましい実施形態において、金属フッ化物、ZDDP及びPTFEを、約−20℃〜約150℃で共に反応させ、潤滑油添加剤を形成する。次に潤滑油添加剤を潤滑油に添加する。潤滑油添加剤が添加される潤滑油は、好ましくは、ZDDPを含まない完全配合GF4エンジン油である。しかし、上記に提示されたもののような他の潤滑油を使用してもよい。
【0008】
前記は、以下の本発明の詳細な記載がより良く理解されるために、本発明の特徴及び技術的利点を多少広範囲に概説した。本発明の追加の特徴及び利点は、本明細書以下に記載され、本発明の請求項の主題を形成する。開示される概念及び特定の実施形態は、本発明と同じ目的を実施するために他の構造を修正又は設計する基礎として容易に利用されうることを認識されるべきである。そのような等価構成は、添付の請求項に記載された本発明から逸脱しないことも理解されるべきである。その機構及び操作方法の両方で本発明の特質であると考えられる新規特徴は、更なる目的及び利点と共に、添付の図面と関連して考慮されると、以下の記載によってより良好に理解されるであろう。しかし、各図は、説明及び記載の目的のためだけに提供され、本発明の限定を明示することを意図しないことが明確に理解されるべきである。
【0009】
本発明のより完全な理解のために、添付の図面と共に以下の記載が参照される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態は、向上された摩耗保護、低摩擦係数及び低凝集エネルギー表面を提供する、改善された高性能潤滑油添加剤及び潤滑油を提供する。本発明の実施形態の潤滑油添加剤を、グリース、クランクケース油、炭化水素溶媒などのような潤滑油に添加することができる。本発明の実施形態は、一般に、有機リン酸エステル化合物及び有機フッ素化合物を、金属ハロゲン化物及び/又は二硫化モリブデンと共に又はなしで共に反応させて、潤滑油添加剤を生成する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に使用することができる幾つかの有機リン酸エステル化合物を示す表である。一般に、ジチオホスフェート、並びにモノチオホスフェート及びジチオホスフェートのアンモニウム及びアミン塩を使用することができる。亜鉛ジアルキルジチオリン酸(ZDDP)のような金属有機リン酸エステル及び有機チオリン酸塩は、本開示の目的のため用語「有機リン酸エステル」に包含される。図1に提示されている他の有機リン酸エステルには、中性ZDDP(第一級)、中性ZDDP(第二級)、塩基性ZDDP、(RS)P(s)(ここでR>CH)、(RO)(R′S)P(O)SZn、(RO)(RS)PS(ここでR>CH)、P(S)(S)Zn、(RO)P(S)(SR)、R(R′S)PS(ここでR=CH及びR′>CH)、(RO)PS(ここでR=CH及びR′=アルキル)、MeP(S)Cl、(RO)(S)PSP(S)(OR)、P(S)(SH)、(RO)(R′S)P(O)SZn、SPH(OCH(ここでR=任意のアルキル及びR′=任意のアルキル)、並びにこれらの組み合わせが含まれる。図1の代表的な化合物及び本発明に使用できる追加的な有機リン酸エステル化合物の化学構造が、図2A〜2Cに示されている。本発明の特定の実施形態において、図1及び2A〜2Cに示されていない有機リン酸エステルを使用することができる。
【0012】
有機リン酸エステルであるZDDPが、本発明の好ましい実施形態において使用される。ZDDPを単独で又は他の有機リン酸エステルと組み合わせて使用する実施形態は、ZDDPの1つ以上の部分を使用することができる。好ましくは、使用されるZDDPは、中性又は塩基性部分である。幾つかのZDDP部分が構造1及び5として図2Aに示されている。好ましい実施形態において、ZDDPアルキル基は、合計でおよそ1〜20個の炭素原子になる。ZDDPのアルキル基は、分岐鎖又は直鎖の第一級、第二級又は第三級アルキル基のような、当業者に既知の多様な形態をとることができる。
【0013】
本発明の実施形態に使用することができる追加的な有機リン酸エステル構造が図2Dに示されている。本明細書に特定的に開示されている有機リン酸エステル構造は、代表的な構造であり、本発明の実施形態をこれらの構造に限定することを意図しない。本発明の多くの実施形態は、特定的に示されていない有機リン酸エステル化合物を利用する。
【0014】
多様な有機フッ素化合物を本発明に使用することができる。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びその誘導体は、本発明の実施形態における使用に特に適している。PTFE構造は図3に示されている。使用できる他の有機フッ素化合物には、フルオロアルキルカルボン酸、フルオロアリールカルボン酸、フルオロアルキルアリールカルボン酸など;フルオロアルキルスルホン酸、フルオロアリールスルホン酸又はフルオロアルキルアリールスルホン酸など、並びにアルキル及びフルオロアルキルエステル、アルキル又はフルオロアルキルアルコール及びアルキル又はフルオロアルキルアミドのようなこれらの誘導体を含む組成物が含まれるが、これらに限定されない。特に好ましい組成物は、1つを超える官能基を有する上記に記載されたものであり、そのような組成物は、カルボン酸、スルホン酸、エステル、アルコール、アミン及びアミド、並びにこれらの混合物を含む2つ以上の官能基の任意の組み合わせを含む。有機フッ素化合物を、部分的にフッ素化する又は過フッ素化することができる。これらの有機フッ素化合物の特定のものは、有機リン酸エステル物質の分解を触媒することができ、これによって、これらの物質が存在しないときより低い温度で混合される。同様に、これらの組成物を、FeF及びTiF、ZrF、AlFなどのような金属フッ化物と反応させることができる。一般に、有機フッ素物質は、高、低又は中分子量であることができる。
【0015】
本発明の特定の実施形態は、亜鉛ジアルキルジチオリン酸(ZDDP)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を共に反応させることによって潤滑油添加剤を調製する方法を含み、ここでPTFEは、40個を超える炭素原子を含む。40個を超える炭素原子を含むPTFE分子は、この種類のPTFEが一般に鉱物油及び他の潤滑油に可溶性であるので、本発明の実施形態における使用に特に適している。本発明の好ましい実施形態は、40〜6000個の炭素原子の組成を有するPTFEを使用する。本発明の実施形態によるPTFEとZDDPの反応は、潤滑油環境の外で発生させることができ、反応混合物を生成する。次に反応混合物又はその成分を基剤潤滑油に潤滑油添加剤として添加して、基剤潤滑油の多様な性質を改善することができる。あるいは、本発明の特定の実施形態は、PTFE及びZDDPの混合物を基剤潤滑油に添加することを含む。次にPTFEとZDDPの反応を、望ましい用途に使用する前又はその間に潤滑油環境で発生させる。好ましい実施形態において、基剤潤滑油は、約0.01重量%のリンから約0.1重量%のリンを含む。
【0016】
本発明の実施形態に使用されるPTFE化合物のような有機フッ素化合物は、多様な分子量及び多様な粒径であることができる。約2500〜約300,000の分子量のPTFEが、本発明の特定の実施形態において使用される。本発明の特定の実施形態におけるPTFEの粒径は、約50nm〜約10μmの範囲である。好ましい実施形態において、使用されるPTFEは、およそ50〜500nmの直径の粒子の形態の固体として添加される。図1Bは、本発明の特定の実施形態において使用することができるPTFEの例示的な分子構造を示す。
【0017】
また好ましい実施形態に使用されるものは、電子ビーム照射PTFEである。照射PTFEは、空気環境で照射プロセスを実施することにより形成される追加の活性末端基を含む。そのプロセスの際に、長鎖PTFE分子が開裂され、カルボキシル基のような極性末端基を有する短鎖分子を形成する。カルボキシル基が存在する荷電PTFE分子は、Shaub et al.,“Mechanism Studies with Special Boundary Lubricant Chemistry”,SAE Publication No.952475及びShaub et al.,“Engine Durability, Emissions and Fuel Economy Studies with Special Boundary Lubricant Chemistry”,SAE Publication No.941983に説明されているように、金属表面に結合することができ、その内容は本明細書において参考として援用される。例えばZDDPのような有機リン酸エステルと組み合わせた照射PTFEは、ZDDPの分解率を向上することができ、高性能潤滑油添加剤として使用できる反応生成物を形成することができる。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、ZDDP及びPTFEは、懸濁固体形態のPTFEをZDDP懸濁液に特定の条件下で添加することによって共に反応させる。好ましい実施形態において、使用されるPTFEは、Shamrock Technologies, Inc.により製造されるNanoflon(商標)粉末及びDuPontにより製造されるNF1Aのような照射PTFEである。さらに別の実施形態において、Acheson Industries, Inc.により製造されるSLA−1612(油中のPTFEの分散体)が使用される。しかし、多様な市販されている及び市販されていないPTFE化合物を本発明の実施形態に使用することもできる。また、好ましい実施形態において、ZDDPは、パラフィン又は炭化水素油中に68重量%のZDDPを含む懸濁液に含有されている。しかし、ZDDPを、当業者に既知の他の液相化合物に懸濁することができる。
【0019】
いったん組み合わせると、ZDDP及びPTFEは、約−20℃〜約150℃の温度で焼き付けることによって反応する。好ましい実施形態において、反応混合物を、約60℃〜約150℃の温度で反応させる。反応を、約20分間から約24時間続けさせる。一般に、本発明の実施形態において温度が減少すると、反応の持続時間が増加する。反応を空気、酸素、窒素若しくは貴ガスのような特定のガスの下で実施すること、又は反応体を撹拌して反応の進行を助長すること、又は超音波処理を適用してより速い反応を実施することのような、多様な追加的な反応パラメータを使用することができる。反応の際に形成される上澄み及び沈殿物の両方を、本発明の特定の実施形態において、潤滑油添加剤として使用することができる。上澄み及び沈殿物は、当業者に既知の濾過又は遠心分離のような標準的な技術を使用して分離することができる。
【0020】
好ましい実施形態において、上記に記載された反応の意図は、2つの生成物を生成することである。1つは、中性ZDDP、フッ素化ZDDP及び/又はZDDPに結合しているPTFE錯体、ホスフェート及びチオホスフェート基を含む明澄な上澄み液である。第1生成物を、低リンの高性能添加剤として油に、高性能添加剤としてグリースに使用することができる。沈降又は遠心分離固体生成物を含む第2生成物は、主にPTFE及びZDDPとのPTFE錯体、ホスフェート及びチオホスフェートを含み、グリース用添加剤として使用することができる。反応生成物は、両方とも金属表面に親和性を有すると考えられる。潤滑組成物において使用される(又は下記に更に記載されるように、形成される)場合、反応生成物は、金属表面に結合するか又は濃縮して、摩耗及び摩擦保護を提供する。図4A及び4Bは、本発明の特定の実施形態において形成されうる可能な反応生成物である、PTFE/ZDDP錯体を示す。しかし、これらは例示的生成物にすぎず、追加的な構造を、本発明のこれら又は他の実施形態において形成することができる。ZDDP及びPTFEが上記の考察の焦点であるが、他の有機リン酸エステル及び有機フッ素化合物が、高性能添加剤として使用できる同様の反応生成物を生成することが予測される。
【0021】
特定の実施形態において、反応を促進するか又は実施するように、反応性を有する1つ以上の化合物をZDDP及びPTFEの反応混合物に添加することができる。これらの反応性作用物質は、ZDDP、PTFE若しくは両方、又はこれらの組成を有する他の物質との反応を加速して、新たな潤滑油添加剤を与えることができる。フッ化鉄のような金属ハロゲン化物は、本発明の好ましい実施形態において使用される反応性物質である。本発明の特定の実施形態に使用される金属ハロゲン化物は、例えば、三フッ化アルミニウム、四フッ化ジルコニウム、三フッ化チタン、四フッ化チタン及びこれらの組み合わせであることができる。他の実施形態において、例えば二フッ化及び三フッ化クロム、二フッ化及び三フッ化マンガン、二フッ化ニッケル、二フッ化及び四フッ化スズ、並びにこれらの組み合わせのような、他の遷移金属ハロゲン化物が使用される。フッ化鉄は、2003年9月15日に出願された同時係属米国特許出願番号10/662,992に記載のプロセスに従って生成することができ、その内容は本明細書において参考として援用される。金属ハロゲン化物をZDDF及びPTFEと反応させる実施形態において、得られる反応混合物は、固相及び液相成分の両方を含むことができる。フッ素化ZDDP及びZDDPが結合しているPTFE錯体、ホスフェート及びチオホスフェート基を含む液相生成物を、低リンで高性能の添加剤として油及びグリースの両方にそれぞれ使用することができる。沈降又は遠心分離固体生成物を含む固相生成物は、主に、PTFE及び未反応フッ化鉄を含み、グリース添加剤として使用することができる。反応生成物は、両方とも金属表面に親和性を有すると考えられる。固相成分は、図4A及び4Bに例示されているものと同様であることができる。より小さい潤滑性を有する場合がある追加の化合物が、そのような反応からもたらされる場合がある。
【0022】
照射PTFEは、高性能潤滑油添加剤として使用できる反応生成物をもたらすような化合物と強力に相互作用するので、有機リン酸エステル及び金属ハロゲン化物を含む反応混合物と使用するのに特に適している。中から高分子量のペルフルオロアルキルカルボン酸又は実質的にフッ素化しているアルキル、アリール若しくはアルキルアリールカルボン酸も、本発明の実施形態における使用に特に適している。全ての分子量のフルオロアルキル、フルオロアルキルアリール、フルオロアリール及びフルオロアリールアルキルアルコール及びアミンのような有機フッ素化合物も、本発明の実施形態に使用することができる。特に好ましい組成物は、1つを超える官能基を有する上記に記載されたものであり、例えば、カルボン酸、スルホン酸、エステル、アルコール、アミン及びアミド、並びにこれらの混合物を含む2つ以上の官能基の任意の組み合わせを含む組成物である。本発明の特定の実施形態において、使用される有機フッ素化合物は、室温で中性油に可溶性である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、上記で記載されたように生成された潤滑油添加剤又は添加剤を、ZDDPを含まない完全配合エンジン油と混合する。本発明の特定の実施形態を説明するために本明細書で使用されるとき、用語「完全配合油」は、添加剤を含むがZDDPは含まないエンジン油である。特定の実施形態において、完全配合油は、例えば、分散剤、洗剤及び酸化防止剤のような標準的な添加剤を含むが、ZDDPを含まない添加剤パッケージを有するGF4油であることができる。次にZDDPとPTFEの反応を、潤滑油の意図される使用の前又は間に得ることができる。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、有機リン酸エステルと有機フッ化物の反応は、反応体と、反応体又は触媒としての二硫化モリブデンとの相互作用を更に含む。なお他の実施形態において、金属ハロゲン化物組成物を混合物に添加して、得られる反応生成物の潤滑性を更に向上させる。下記の図5A〜5Cの実験結果で示されているように、二硫化モリブデンは、有機リン酸エステル及び有機フッ化物反応体により形成される反応生成物との可能な二硫化モリブデン錯体の形成によって、潤滑油添加剤の潤滑性を向上することができる。しかし、図5A〜5Cに例示されているように、他の機序が二硫化モリブデンの相乗効果の原因でありうる。相乗効果は、例えば、第1の化合物が単独で第1の効果を生じ、第2の化合物が単独で第2の効果を生じるが、共に組み合わせた化合物が、単独で使用されたときの化合物の効果の合計よりも大きい効果を生じる場合に起こる。
【0025】
下記は、本発明の実施形態により生成された潤滑油及び潤滑油添加剤の特性を決定するために実施された一連の実験の結果を表す。
【0026】
4球融着試験(ASTM D2596)
この実験プロトコールは、グリースのような潤滑油の極圧特性を測定する。1800rpmで回転する最初の球を他の3つの球と摺動接触させる。最初の球と他3つの球との接触力を調整することができ、4つの球全体のアセンブリーを、試験される潤滑油の中に漬ける。この試験の間に、球の間の接触力又は試験荷重を、融着荷重として知られている点で球が共に融着するまで、段階的に上昇させる。融着荷重が高いほど望ましく、それは、一般に、より良好な潤滑性を有する化合物の性質である。図5A〜5Cは、多様な容量のZDDP、PTFE、触媒及び/又は二硫化モリブデンを含有する潤滑油グリースが存在した、実験の結果を例示するグラフを示す。図5A〜5Cに示されている結果は、グリースの幾つかの化学的性質が試験された実験の設計及び提示された化学的性質の結果を予測するのに使用されたにデータ基づいている、融着荷重の予測値である。予測値に使用された実際のデータは、図6A及び6Bに提示されている。
【0027】
図5Aは、0.5重量%の二硫化モリブデンを有する異なる量のZDDP及びPTFEを含むグリースの融着荷重を示すグラフである。最小限のフッ化鉄触媒が存在するZDDP及びPTFEのそれぞれ2.0重量%の濃度では、組成物の融着荷重は、基剤溶着荷重のおよそ197kgと比較しておよそ642kgであると決定された。
【0028】
図5Bに示された結果を生じる試験組成物は、異なる量のZDDP及びPTFEを1.25重量%の二硫化モリブデンと共に含んだ。ここで、融着荷重は、最小限のフッ化鉄触媒が存在するZDDP及びPTFEの2.0重量%の濃度で、およそ719kgであると決定された。1.25重量%の二硫化モリブデンを有するグリースの基剤溶着荷重は、およそ258kgである。
【0029】
図5Cに示された結果を生じる試験組成物は、異なる量のZDDP及びPTFEを2.0重量%の二硫化モリブデンと共に含んだ。フッ化鉄触媒(0.2重量%)が存在した。別の実施形態において、約0.1〜約1.0重量%の濃度のフッ化鉄を使用することができる。それぞれ2.0重量%の濃度のZDDP及びPTFEでは、組成物の融着荷重は、最小限のフッ化鉄触媒が存在しておよそ796kgであると決定された。2.0重量%の二硫化モリブデンを有するグリースの基剤溶着荷重は、およそ319kgである。
【0030】
図5A〜5Cのグラフに示されている実験の結果は、二硫化モリブデンの濃度を増加すると、グリース配合物の潤滑性の増加をもたらすが、その増加は、ZDDP及びPTFEをグリースに添加する効果と比較すると相当控えめであることを示す。グラフは、ZDDP及びPTFEそれ自体は有意な極圧保護を提供しないので、ZDDPとPTFEとの相乗的相互作用が存在することを示す。2.0重量%のZDDP及びPTFEのグリースへの添加は、基剤グリース及び二硫化モリブデン単独と比較して、グリース組成物の融着荷重を二倍超にした。フッ化鉄触媒の添加も、PTFEが、ZDDPが不在下でグリース/二硫化モリブデン組成物に添加されたとき、PTFEと相乗効果を生じた。この効果は、二硫化モリブデンの濃度が高いと最大になった。フッ化鉄触媒とのより小さい相乗効果も、PTFEが不在のZDDP含有グリース/二硫化モリブデン組成物によって存在した。
【0031】
図6Aは、図5A〜5Cの立方体グラフを生成するのに使用された実験の結果をまとめた棒グラフである。得られた最高の融着荷重(796kg)は、0.2重量%のフッ化鉄触媒を共に有する2.0重量%のZDDP、PTFE及び二硫化モリブデンのグリース組成物によってであった。図6Bは、図6Aの横軸ラベルに対応する説明である。結果は、620kgの融着荷重を、2%のZDDP及び2%のPTFEだけで他の成分なしに得ることができ、PTFEとZDDPの強力な相乗作用を示している。
【0032】
ブロック・オン・シリンダー試験(改変チムケン試験)
図7〜9は、ブロックに対するリングの回転運動下での潤滑油の摩耗寿命特性のモデルであるブロック・オン・シリンダー試験の結果を示す。4グラムの試験潤滑油がその外面に均一に塗布されたシリンダーを、試験ブロックに対して700rpmで回転させる。試験ブロックをシリンダーの下から持ち上げ、空気圧系により所定荷重を付加してシリンダーに接触させる。ブロックの摩耗傷の幅を、摩耗性能の測度として使用する。摩擦係数及び試験温度を試験の一部として決定する。試験は、20kgの荷重を42,000周期で合計1時間実施した。
【0033】
図7は、照射PTFEを含む潤滑油組成物が、非照射PTFEよりも良好に機能することを示す。基剤グリース組成物は、最高の摩耗係数(>0.35)及び試験実施の完了時に最高温度を示した。基剤グリース、2.0重量%のZDDP、2.0重量%の非照射PTFE及び2.0重量%の粉末フッ化鉄触媒を含む組成物は、およそ0.26の摩耗係数及び約15℃の試験温度で有意に良好に機能した。基剤グリース、2.0重量%のZDDP、2.0重量%の照射PTFE及び2.0重量%の粉末フッ化鉄触媒を含む試験組成物は、およそ0.22の摩耗係数及び約10℃の試験温度で最適に機能した。添加剤の不在下では、接触温度は連続的に増加し、保護膜は表面に形成されない。照射PTFEを含む組成物のグラフは、表面上の保護摩擦膜(トライボフィルム)の形成及び試験ブロックの対応する温度の低下を明らかに示す。光学顕微鏡写真(図示せず)は、照射PTFEを有するグリース組成物が、3つの試験組成物において最も狭く最も浅い摩耗傷を生じることを示す。図7にまとめられた結果は、照射PTFEを含む組成物が、ZDDP含有量が低くても、非照射PTFEを含む組成物より良好に機能することを示す。
【0034】
図8は、幾つかのグリース組成物を比較するブロック・オン・シリンダー試験の実験結果のグラフである。このグラフは、幾つかの実験化合物の計算された摩擦係数を示す。2.0重量%のZDDPを有する基剤グリース組成物は、0.74mmの摩耗傷幅を生じた。基剤グリース、0.5重量%のZDDP、2.0重量%のPTFE、2.0重量%の二硫化モリブデン及び0.2重量%のフッ化鉄触媒から構成されるグリース組成物は、0.676mmの摩耗傷幅を生じた。最適の結果を、基剤グリース、2.0重量%のZDDP、2.0重量%のPTFE、0.5重量%の二硫化モリブデン及び0.2重量%のフッ化鉄触媒から構成されるグリース組成物から得て、0.3949mmの摩耗傷幅を生じた。このデータセットは、ZDDP、PTFE及びフッ化鉄の相乗的相互作用が、低摩擦係数及び最良の摩耗結果を生じることを示す。
【0035】
図9は、グリース組成物を比較するブロック・オン・シリンダー試験の実験結果に基づく摩耗傷の寸法の三次元予測を示す。これらの試験で使用される荷重は30kgであった。0.5重量%のZDDPを含むグリース組成物での摩耗傷は0.456mmの寸法であったが、増加された2.0重量%のZDDPを含む同じグリース組成物は、かなり小さい0.365mmの摩耗傷を生じた。ZDDPのこの有益な挙動は、多様な二硫化モリブデン濃度で維持される。両方の組成物において、二硫化モリブデンの濃度が増加すると、摩耗傷幅も増加する。例えば、2.0重量%の濃度のZDDPでは、摩耗傷幅は、組成物が2.0重量%の二硫化モリブデンを含むとき1.319mmであり、0.5重量%の二硫化モリブデンでは1.076mmのみであった。この結果は、二硫化モリブデンが低荷重で摩耗性能に拮抗的であり、摩耗の増加をもたらすことを示す。
【0036】
図10は、ZDDPの分解温度を決定する示差走査熱量測定法(DSC)試験の結果を示す。DSC試験を、窒素下、1℃/分の増加率で−30℃〜250℃で実施した。試料を気密封止アルミニウムパンの中で加熱した。ZDDPは単独ではおよそ181℃で分解する。PTFE(照射Nanoflon(商標)粉末)の存在下では、ZDDPはおよそ166℃で分解し、PTFE及びフッ化鉄触媒の存在下では、155℃で分解する。ZDDP及びPTFEを1:1の比率で混合し、ZDDP/PTFE/フッ化鉄を2:2:1の比率で混合した。DSCの結果は、PTFEの存在下では、ZDDPの分解温度はおよそ15℃低減されることを示す。PTFE及びフッ化鉄の両方の存在下では、分解温度はおよそ26℃低減される。
【0037】
ボール・オン・シリンダー試験
図11は、エンジン油の摩耗容量試験の結果を示す。使用される試験は、潤滑油の摩耗保護特性を評価するボール・オン・シリンダー試験である。スチールシリンダー(67HRC)を、30kgの荷重を付加するレバーアームにより荷重が加えられているタングステンカーバイド(78HRC)ボールに対して700rpmで回転させる。50μLの試験潤滑油を、ボールの接触点でシリンダーの外面に均一に塗布する。摩耗跡深さ及び摩耗容量を試験の終了時に計算する。潤滑油組成物を以下のように調製した。1:1の比率のZDDPとPTFEを、150℃で20分間、空気中で焼付けし、次に遠心分離して全ての固体を除去した。上澄み液の測定容量をChevron 100N基剤油に添加して、潤滑油組成物のために0.05重量%未満のリンを生じた。グラフは、この組成物の摩耗容量が、750ppmのリン及び80ppmの二硫化モリブデンを含む完全配合市販GF4油の摩耗容量の0.136mmと比較して、0.859mmであったことを示す。この結果は、ZDDP/PTFE組成物の相乗効果が、エンジンでの使用が意図される配合物において有効であることを示す。
【0038】
本発明及びその利点が詳細に記載されてきたが、多様な変化、置換及び代替案を添付の請求項に定義されている本発明の精神及び範囲を逸脱することなく本明細書において行えることが理解されるべきである。更に、本出願の範囲は、本明細書に記載されているプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法及び工程の特定の実施形態に限定されることを意図しない。当業者が本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載されている対応する実施形態と実質的に同じ機能を実施するか又は実質的に同じ結果を達成する、現在存在するか又は後に開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法又は工程を、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の請求項は、その範囲内にそのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法又は工程を含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の特定の実施形態において使用される可能な有機リン酸エステル配合物の表である。
【図2A】本発明の特定の実施形態において使用される多様な有機リン酸エステル構造を示す。
【図2B】本発明の特定の実施形態において使用される多様な有機リン酸エステル構造を示す。
【図2C】本発明の特定の実施形態において使用される多様な有機リン酸エステル構造を示す。
【図2D】本発明の特定の実施形態において使用される多様な有機リン酸エステル構造を示す。
【図3】本発明の特定の実施形態において使用されるPTFE構造を示す。
【図4A】本発明の特定の実施形態の反応生成物を示す。
【図4B】本発明の特定の実施形態の反応生成物を示す。
【図5A】多様な容量のZDDP、PTFE、触媒及び/又は二硫化モリブデンを含有する潤滑油グリースが存在した、ASTM D2596の4球融着荷重実験の結果を例示するグラフを示す。
【図5B】多様な容量のZDDP、PTFE、触媒及び/又は二硫化モリブデンを含有する潤滑油グリースが存在した、ASTM D2596の4球融着荷重実験の結果を例示するグラフを示す。
【図5C】多様な容量のZDDP、PTFE、触媒及び/又は二硫化モリブデンを含有する潤滑油グリースが存在した、ASTM D2596の4球融着荷重実験の結果を例示するグラフを示す。
【図6A】図5A〜5Cの立方体グラフを生成するのに使用されたASTM D2596の4球融着荷重実験の結果をまとめた表である。
【図6B】図5A〜5Cの立方体グラフを生成するのに使用されたASTM D2596の4球融着荷重実験の結果をまとめた表である。
【図7】多様な潤滑油のブロック・オン・シリンダー試験の結果をまとめたグラフである。
【図8】幾つかのグリース組成物を比較したブロック・オン・シリンダー試験の実験結果のグラフである。
【図9】グリース組成物を比較するブロック・オン・シリンダー試験の実験結果に基づく摩耗傷の寸法の三次元予測を示す。
【図10】ZDDPの分解温度を決定する示差走査熱量測定法(DSC)試験の結果を示す。
【図11】ボール・オン・シリンダー試験におけるエンジン油の摩耗容量試験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機リン酸エステル及び有機フッ素化合物を混合する工程、及び
潤滑油添加剤を含む反応混合物を生成するために、前記有機リン酸エステル及び前記有機フッ素化合物を反応させる工程、を含むプロセスにより生成される潤滑油添加剤。
【請求項2】
前記有機リン酸エステルがZDDPであり、前記有機フッ素化合物がPTFEであり、ここで前記PTFE分子が40個を超える炭素原子を含む、請求項1記載のプロセスにより生成される潤滑油添加剤。
【請求項3】
前記反応混合物を相に分離し、少なくとも1つの相が前記潤滑油添加剤を含む工程を更に含むプロセスにより生成される、請求項1記載のプロセスにより生成される潤滑油添加剤。
【請求項4】
前記ZDDPが、中性ZDDP(第一級)、中性ZDDP(第二級)、塩基性ZDDP、ZDDP塩、照射ZDDP、非照射ZDDP及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2記載のプロセスにより生成される潤滑油添加剤。
【請求項5】
前記有機フッ素化合物が照射PTFEである、請求項1記載の潤滑油。
【請求項6】
前記PTFEが、フルオロアルキルカルボン酸、フルオロアリールカルボン酸、フルオロアルキルアリールカルボン酸、フルオロアルキルスルホン酸、フルオロアリールスルホン酸又はフルオロアルキルアリールスルホン酸を含む有機フッ素化合物の組成物から構成される、請求項2記載の潤滑油。
【請求項7】
前記化合物が1つを超える官能基を有する、請求項6記載の潤滑油。
【請求項8】
前記化合物が、カルボン酸、スルホン酸、エステル、アルコール、アミン、アミド及びこれらの混合物からなる2つ以上の官能基の任意の組み合わせを有する、請求項7記載の潤滑油。
【請求項9】
前記混合する工程が、二硫化モリブデンを有機リン酸エステル及び有機フッ素組成物と混合する工程を更に含む、請求項1記載のプロセスにより生成される潤滑油添加剤。
【請求項10】
前記混合する工程が、金属ハロゲン化物を有機リン酸エステル及び有機フッ素と混合する工程を更に含み、前記反応させる工程が、金属ハロゲン化物を有機リン酸エステル及び有機フッ素と反応させる工程を更に含む、請求項1記載のプロセスにより生成される潤滑油添加剤。
【請求項11】
前記金属ハロゲン化物が、
三フッ化アルミニウム、四フッ化ジルコニウム、三フッ化チタン、四フッ化チタン、フッ化鉄、二フッ化クロム、三フッ化クロム、二フッ化マンガン、三フッ化マンガン、二フッ化ニッケル、二フッ化スズ、四フッ化スズ及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10記載のプロセスにより生成される潤滑油添加剤。
【請求項12】
前記混合する工程が、金属ハロゲン化物、二硫化モリブデン、有機リン酸エステル及び有機フッ化物を混合する工程を更に含み、前記反応させる工程が、金属ハロゲン化物、二硫化モリブデン、有機リン酸エステル及び有機フッ素を反応させる工程を更に含む、請求項10記載のプロセスにより生成される潤滑油添加剤。
【請求項13】
前記金属ハロゲン化物が、約0.1〜約1.0重量%のフッ化鉄である、請求項10記載のプロセスにより生成される潤滑油添加剤。
【請求項14】
前記ZDDPが、約0.01重量%〜約0.05重量%のリン含有量を有するZDDPである、請求項2記載のプロセスにより生成される潤滑油添加剤。
【請求項15】
前記反応させる工程が、約20分間から約24時間の持続時間のものである、請求項1記載のプロセスにより生成される潤滑油添加剤。
【請求項16】
前記反応させる工程が、約−20℃〜約150℃の温度で反応させる工程を含む、請求項1記載のプロセスにより生成される潤滑油添加剤。
【請求項17】
前記反応させる工程が、約60℃〜約150℃の温度で反応させる工程を含む、請求項1記載のプロセスにより生成される潤滑油添加剤。
【請求項18】
有機リン酸エステル及び有機フッ素を混合する工程、及び
潤滑油添加剤を含む反応混合物を生成するために、前記有機リン酸エステル及び前記有機フッ素を反応させる工程、及び
前記反応混合物を固相及び液相に分離する工程を含み、少なくとも1つの相が前記潤滑油添加剤を含む、潤滑油添加剤の製造方法。
【請求項19】
前記混合する工程が、二硫化モリブデンを有機リン酸エステル及び有機フッ素と混合する工程を更に含み、前記反応させる工程が、二硫化モリブデンを有機リン酸エステル及び有機フッ素と反応させる工程を更に含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記有機リン酸エステルが、ZDDPであり、前記有機フッ素が、40個を超える炭素原子を含むPTFEである、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記有機フッ素化合物が照射PTFEである、請求項16記載の潤滑油。
【請求項22】
前記潤滑油添加剤が前記固相にある、請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記潤滑油添加剤が前記液相にある、請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記ZDDPが、中性ZDDP(第一級)、中性ZDDP(第二級)、塩基性ZDDP、ZDDP塩、照射ZDDP、非照射ZDDP及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項19記載の潤滑油添加剤。
【請求項25】
前記PTFEが、フルオロアルキルカルボン酸、フルオロアリールカルボン酸、フルオロアルキルアリールカルボン酸、フルオロアルキルスルホン酸、フルオロアリールスルホン酸又はフルオロアルキルアリールスルホン酸を含む有機フッ素化合物の組成物から構成される、請求項20記載の潤滑油。
【請求項26】
前記化合物が1つを超える官能基を有する、請求項25記載の潤滑油。
【請求項27】
前記化合物が、カルボン酸、スルホン酸、エステル、アルコール、アミン、アミド及びこれらの混合物からなる2つ以上の官能基の任意の組み合わせを有する、請求項26記載の潤滑油。
【請求項28】
前記混合する工程が、金属ハロゲン化物を有機リン酸エステル及び有機フッ素と混合する工程を更に含み、前記反応させる工程が、前記金属ハロゲン化物を前記有機リン酸エステル及び前記有機フッ素と反応させる工程を更に含む、請求項18記載の方法。
【請求項29】
前記混合する工程が、二硫化モリブデンを金属ハロゲン化物、有機リン酸エステル及び有機フッ素と混合する工程を更に含み、前記反応させる工程が、二硫化モリブデンを金属ハロゲン化物、有機リン酸エステル及び有機フッ素と反応させる工程を更に含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記金属ハロゲン化物が、三フッ化アルミニウム、四フッ化ジルコニウム、三フッ化チタン、四フッ化チタン、フッ化鉄、二フッ化クロム、三フッ化クロム、二フッ化マンガン、三フッ化マンガン、二フッ化ニッケル、二フッ化スズ、四フッ化スズ及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記反応させる工程が、約20分間から約24時間反応させる工程を含む、請求項18記載の方法。
【請求項32】
前記反応させる工程が、約−20℃〜約150℃の温度で反応させる工程を含む、請求項18記載の方法。
【請求項33】
前記反応させる工程が、約60℃〜約150℃の温度で反応させる工程を含む、請求項18記載の方法。
【請求項34】
前記ZDDPが、約0.01重量%〜約0.05重量%のリン含有量を含む、請求項20記載の方法。
【請求項35】
前記金属ハロゲン化物が、約0.1重量%〜約1.0重量%の金属ハロゲン化物である、請求項28記載の方法。
【請求項36】
有機リン酸エステル及び有機フッ素を反応させることによって、反応混合物を形成する工程、及び
前記反応混合物の少なくとも一部分を潤滑基剤に添加する工程、を含むプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項37】
前記反応混合物を形成する工程が、
ZDDP及びPTFEを反応させることによって反応混合物を形成する工程を更に含み、ここで前記PTFEが40個を超える炭素原子を含む請求項36記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項38】
前記有機フッ素化合物が照射PTFEである、請求項36記載の潤滑油。
【請求項39】
前記PTFEが、フルオロアルキルカルボン酸、フルオロアリールカルボン酸、フルオロアルキルアリールカルボン酸、フルオロアルキルスルホン酸、フルオロアリールスルホン酸又はフルオロアルキルアリールスルホン酸を含む有機フッ素化合物の組成物から構成される、請求項37記載の潤滑油。
【請求項40】
前記化合物が1つを超える官能基を有する、請求項39記載の潤滑油。
【請求項41】
前記化合物が、カルボン酸、スルホン酸、エステル、アルコール、アミン、アミド及びこれらの混合物からなる2つ以上の官能基の任意の組み合わせを有する、請求項40記載の潤滑油。
【請求項42】
前記反応混合物を形成する工程が、二硫化モリブデンを有機リン酸エステル及び有機フッ素と反応させることによって反応混合物を形成する工程を含む、請求項36記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項43】
前記形成された反応混合物が、上澄みを含み、前記上澄みが、前記反応混合物から分離され、前記潤滑基剤に添加される、請求項36記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項44】
前記形成された反応混合物が、沈殿物を含み、前記沈殿物が、前記反応混合物から分離され、前記潤滑基剤に添加される、請求項36記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項45】
前記潤滑基剤が、GF4エンジン油、ZDDPを含まないGF4エンジン油、オートマティック・トランスミッション液、クランクケース液、エンジン油、作動油、歯車油、グリース及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項36記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項46】
前記潤滑基剤が、約0.01重量%のリンから約0.1重量%のリンを含む潤滑基剤である、請求項36記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項47】
前記形成する工程が、金属ハロゲン化物を有機リン酸エステル及び有機フッ素と反応させることによって反応混合物を形成する工程を更に含む、請求項36記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項48】
前記反応混合物を形成する工程が、二硫化モリブデンを金属ハロゲン化物、有機リン酸エステル及び有機フッ素と反応させることによって反応混合物を形成する工程を含む、請求項47記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項49】
前記金属ハロゲン化物が、三フッ化アルミニウム、四フッ化ジルコニウム、三フッ化チタン、四フッ化チタン、フッ化鉄、二フッ化クロム、三フッ化クロム、二フッ化マンガン、三フッ化マンガン、二フッ化ニッケル、二フッ化スズ、四フッ化スズ及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項47記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項50】
前記ZDDPが、中性ZDDP(第一級)、中性ZDDP(第二級)、塩基性ZDDP、ZDDP塩、照射ZDDP、非照射ZDDP及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項37記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項51】
前記潤滑油添加剤は、前記有機リン酸エステル及び前記有機フッ素を約20分間から約24時間共に反応させることによって形成される、請求項36記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項52】
前記潤滑油添加剤は、前記有機リン酸エステル及び前記有機フッ素を約−20℃〜約150℃の温度で共に反応させることによって形成される、請求項36記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項53】
前記潤滑油添加剤は、前記有機リン酸エステル及び前記有機フッ素を約60℃〜約150℃の温度で共に反応させることによって形成される、請求項36記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項54】
有機リン酸エステル及び有機フッ素を反応させることによって、反応混合物を形成する工程、及び
前記反応混合物の少なくとも一部分を潤滑基剤に添加する工程を含む、潤滑油の生成方法。
【請求項55】
前記形成する工程が、ZDDP及びPTFEを反応させることによって反応混合物を形成する工程を更に含み、ここで前記PTFEが40個を超える炭素原子を含む請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記PTFEが、フルオロアルキルカルボン酸、フルオロアリールカルボン酸、フルオロアルキルアリールカルボン酸、フルオロアルキルスルホン酸、フルオロアリールスルホン酸又はフルオロアルキルアリールスルホン酸を含む有機フッ素化合物の組成物から構成される、請求項55記載の潤滑油。
【請求項57】
前記化合物が1つを超える官能基を有する、請求項56記載の潤滑油。
【請求項58】
前記化合物が、カルボン酸、スルホン酸、エステル、アルコール、アミン、アミド及びこれらの混合物からなる2つ以上の官能基の任意の組み合わせを有する、請求項57記載の潤滑油。
【請求項59】
前記反応混合物が上澄みを含む方法であって、
前記上澄みを前記形成された反応混合物から分離し、前記上澄みの少なくとも一部分を前記潤滑基剤に添加する工程を更に含む、請求項54記載の方法。
【請求項60】
前記反応混合物が沈殿物を含む方法であって、
前記沈殿物を前記形成された反応混合物から分離し、前記沈殿物の少なくとも一部分を前記潤滑基剤に添加する工程を更に含む、請求項54記載の方法。
【請求項61】
前記形成する工程が、二硫化モリブデンを前記有機リン酸エステル及び前記有機フッ素と反応させることによって反応混合物を形成する工程を更に含む、請求項54記載の方法。
【請求項62】
前記形成する工程が、金属ハロゲン化物を前記有機リン酸エステル及び前記有機フッ素と反応させることによって反応混合物を形成する工程を更に含む、請求項54記載の方法。
【請求項63】
前記形成する工程が、二硫化モリブデンを前記金属ハロゲン化物、有機リン酸エステル及び有機フッ素と反応させることによって反応混合物を形成する工程を更に含む、請求項62記載の方法。
【請求項64】
前記金属ハロゲン化物が、三フッ化アルミニウム、四フッ化ジルコニウム、三フッ化チタン、四フッ化チタン、フッ化鉄、二フッ化クロム、三フッ化クロム、二フッ化マンガン、三フッ化マンガン、二フッ化ニッケル、二フッ化スズ、四フッ化スズ及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項62記載の方法。
【請求項65】
前記ZDDPが、中性ZDDP(第一級)、中性ZDDP(第二級)、塩基性ZDDP、ZDDP塩、照射ZDDP、非照射ZDDP及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項55記載の方法。
【請求項66】
前記潤滑基剤が、GF4エンジン油、ZDDPを含まないGF4エンジン油、オートマティック・トランスミッション液、クランクケース液、エンジン油、作動油、歯車油、グリース及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項54記載の方法。
【請求項67】
前記潤滑基剤が、約0.01重量%のリンから約0.1重量%のリンを含む潤滑基剤である、請求項54記載の方法。
【請求項68】
前記反応混合物が、前記有機リン酸エステル及び前記有機フッ素を約20分間から約24時間共に反応させることによって形成される、請求項54記載の方法。
【請求項69】
前記反応混合物が、前記有機リン酸エステル及び前記有機フッ素を約−20℃〜約150℃の温度で共に反応させることによって形成される、請求項54記載の方法。
【請求項70】
前記反応混合物が、前記有機リン酸エステル及び前記有機フッ素を約60℃〜約150℃の温度で反応させることによって形成される、請求項54記載の方法。
【請求項71】
有機リン酸エステル及び有機フッ素を潤滑基剤に添加する工程、及び
潤滑油を形成するために、前記有機リン酸エステルと前記有機フッ素とを前記潤滑基剤中で反応させる工程を含むプロセスによって生成される潤滑油。
【請求項72】
前記添加する工程が、ZDDP及びPTFEを潤滑基剤に添加する工程を含み、ここで前記PTFEが40個を超える炭素原子を含む請求項71記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項73】
前記有機フッ素化合物が照射PTFEである、請求項71記載の潤滑油。
【請求項74】
前記添加する工程が、二硫化モリブデン、有機リン酸エステル及び有機フッ素を潤滑基剤に添加する工程を更に含み、前記反応させる工程が、前記二硫化モリブデン、前記有機リン酸エステル及び前記有機フッ素を前記潤滑基剤中で反応させる工程を含む、請求項71記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項75】
前記形成された潤滑油が上澄みを含み、前記上澄みが分離されて前記潤滑油を形成する、請求項71記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項76】
前記形成された潤滑油が固体潤滑油を含む、請求項71記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項77】
前記潤滑基剤が、GF4エンジン油、ZDDPを含まないGF4エンジン油、オートマティック・トランスミッション液、クランクケース液、エンジン油、作動油、歯車油、グリース及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項71記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項78】
前記潤滑基剤が、約0.01重量%のリンから約0.1重量%のリンを含む潤滑基剤である、請求項71記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項79】
前記添加する工程が、金属ハロゲン化物を有機リン酸エステル及び有機フッ素と共に潤滑基剤に添加する工程を更に含み、前記反応させる工程が、金属ハロゲン化物を有機リン酸エステル及び有機フッ素と反応させて潤滑油を形成する工程を更に含む、請求項71記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項80】
前記添加する工程が、二硫化モリブデン、金属ハロゲン化物、有機リン酸エステル及び有機フッ素を潤滑基剤に添加する工程を更に含み、前記反応させる工程が、二硫化モリブデン、金属ハロゲン化物、有機リン酸エステル及び有機フッ素を反応させて潤滑油を形成する工程を更に含む、請求項79記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項81】
前記金属ハロゲン化物が、三フッ化アルミニウム、四フッ化ジルコニウム、三フッ化チタン、四フッ化チタン、フッ化鉄、二フッ化クロム、三フッ化クロム、二フッ化マンガン、三フッ化マンガン、二フッ化ニッケル、二フッ化スズ、四フッ化スズ及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項79記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項82】
前記ZDDPが、中性ZDDP(第一級)、中性ZDDP(第二級)、塩基性ZDDP、ZDDP塩、照射ZDDP、非照射ZDDP及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項72記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項83】
前記反応させる工程が、約20分間から約24時間反応させる工程を含む、請求項71記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項84】
前記反応させる工程が、約−20℃〜約150℃の温度で反応させる工程を含む、請求項71記載のプロセスにより生成される潤滑油。
【請求項85】
前記反応させる工程が、約60℃〜約150℃の温度で反応させる工程を含む、請求項71記載のプロセスにより生成される潤滑油。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−513779(P2009−513779A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537787(P2008−537787)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/040823
【国際公開番号】WO2007/050414
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(508011577)プラチナム・インテレクチュアル・プロパティ・エルピー (2)
【住所又は居所原語表記】2777 STEMMONS FRWY, STE. 1440, DALLAS, TEXAS 75207, UNITED STATES OF AMERICA
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】