説明

高所作業車のレベリング装置

【課題】レベリング装置の油圧回路内が負圧状態になることを抑制しつつ、作業台の傾斜の進行を防止すること。
【解決手段】油圧回路は、上部レベリングシリンダ20のロッド側と下部レベリングシリンダ10のロッド側を繋ぐ第1の油路(ロッド側油路31)と、上部レベリングシリンダ20のチューブ側と下部レベリングシリンダ10のチューブ側を繋ぐ第2の油路(チューブ側油路33)と、を備え、第1の油路及び第2の油路には、作業油をタンクTに戻す戻り回路35に接続され、第1の油路及び第2の油路が所定の圧力以上になったときに開状態となるリリーフバルブ32a,34aが設けられ、第1の油路又は第2の油路のいずれか一方のみに、戻り回路35から作動油が補給可能なチェックバルブ45が設けられていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車のレベリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高所作業車における作業台の水平を保持するためのレベリング装置として、ブームの起伏動に連動して動作する下部レベリングシリンダと、作業台を揺動自在に支持する上部レベリングシリンダとを備え、この上部レベリングシリンダが、下部レベリングシリンダの動作に連動して動作することで、ブームが起伏動したときにも作業台の水平を保持できるレベリング装置が知られている。このようなレベリング装置では、例えば、上部レベリングシリンダと下部レベリングシリンダとのチューブ側同士及びロッド側同士がそれぞれ接続されるように、チューブ側回路及びロッド側回路によって油圧回路が形成されている。そして、チューブ側回路の油圧が所定のパイロット圧を越えたときに上部レベリングシリンダのロッド側から下部レベリングシリンダのロッド側に作動油が流れるように、また、ロッド側回路の油圧が所定のパイロット圧を越えたときに上部レベリングシリンダのチューブ側から下部レベリングシリンダのチューブ側に作動油が流れるようにパイロットチェックバルブが設けられている。これにより、例えば、ブーム起仰動作に連動して、下部レベリングシリンダが伸動作すると、これに伴いロッド側回路の油圧が上昇し、ロッド側回路の油圧がパイロットチェックバルブのパイロット圧以上になったときに上部レベリングシリンダのチューブ側から下部レベリングシリンダのチューブ側への回路が開状態となり、上部レベリングシリンダが縮動作する、というように上部レベリングシリンダと下部レベリングシリンダとが連動して動作するものである。
【0003】
このような従来のレベリング装置では、油圧回路が閉回路によって構成されているため、外気温の変化等による油温変化によって作動油の体積が減少し、油圧回路内の作動油の圧力が低下することがある(いわゆる、負圧状態)。このような場合、パイロットチェックバルブのパイロット圧力にまで回路内の油圧を上昇させるために、通常の油圧の状態より多くの下部シリンダの伸縮動作が必要になり、上部レベリングシリンダの動作遅れの原因となる。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、シリンダのロッド側回路とチューブ側回路の両方に負圧防止のチェックバルブを配置したものが記載されている。このような構成によれば、確かに、シリンダのロッド側回路及びチューブ側回路のうち負圧状態となった回路に対して作動油が供給されるため、油温変化によって生じる作動油の体積減少に対応することができるとも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−321895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、チェックバルブからの作動油の吸い込み頻度が高くなると、チェックバルブのシート面に傷がついたり、異物が噛み込んだりしてチェックバルブから作動油がリークすることがある。そのため、特許文献1による構成では、例えば、チューブ側回路に配置されたチェックバルブから作動油がリークすると、これによって作業台が傾き、ロッド側回路が負圧状態となる。するとロッド側回路に設けられたチェックバルブから作動油が供給され、さらにチューブ側回路に配置されたチェックバルブから作動油がリークするという現象が起こり、これを繰り返すと、チューブ側回路からは作動油がリークし続け、ロッド側回路には作動油が供給され続けることになり、作業台の傾斜が進行し続ける虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、レベリング装置の油圧回路内が負圧状態になることを抑制しつつ、作業台の傾斜の進行を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、車体に起伏可能に設けられたブームと、該ブームの先端に揺動可能及び旋回可能に設けられた作業台と、該作業台を揺動させる上部レベリングシリンダと、前記ブームの起伏動作に連動して動作する下部レベリングシリンダと、前記上部レベリングシリンダと前記下部レベリングシリンダとを繋ぐ油圧回路と、を備える高所作業車のレベリング装置であって、前記油圧回路は、前記上部レベリングシリンダのロッド側と前記下部レベリングシリンダのロッド側を繋ぐ第1の油路と、前記上部レベリングシリンダのチューブ側と前記下部レベリングシリンダのチューブ側を繋ぐ第2の油路と、を備え、前記第1の油路及び前記第2の油路には、作業油をタンクに戻す戻り回路に接続され、前記第1の油路及び前記第2の油路が所定の圧力以上になったときに開状態となるリリーフバルブが設けられ、前記第1の油路又は前記第2の油路のいずれか一方のみに、前記戻り回路から作動油が補給可能なチェックバルブが設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明では、前記チェックバルブは、設けられている油路の圧力が前記戻り回路の圧力より小さくなったときに開状態となることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明では、前記チェックバルブは、設けられている油路の圧力が大気圧より小さくなったときに開状態となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、油路が過度に高圧になった場合にはリリーフバルブによって回路の保護が図られ、油路が負圧になった場合にはチェックバルブによって作業油が供給される。そして、チェックバルブからリークがあっても、チェックバルブが設けられていない側の油路には作動油が供給されないため、作業台の傾斜が進行し続けることを抑制できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、ブーム動作中には、戻り回路圧によって作動油が供給されるため、リークによって作業台が傾斜していたとしても元の状態に復元する。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ブーム動作中以外の例えば高所作業車保管中のときに、油温変化によって起こる作動油の体積減少があっても作業油の供給がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る高所作業車の側面図である。
【図2】本発明の一の実施の形態に係る高所作業車のレベリング装置の油圧回路図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る高所作業車のレベリング装置の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。なお、本発明は、少なくとも起伏可能に設けられたブームの先端に、作業者搭乗用のバケット、作業用のマニピュレータ等の各種の作業台が取り付けられた高所作業車に広く適用可能であるが、ここでは作業台として作業者搭乗用のバケットが設けられた高所作業車に本発明を適用した場合の一例について説明する。
【0016】
図1及び図2に本発明に係る一の実施の形態を示す。図1は、高所作業車の側面図である。高所作業車1は、車台2に前輪3F,3F及び後輪3R,3Rを有しており、前輪3F,3Fの上方には、高所作業車1の走行操作を行うためのキャブ4が設けられている。そして、車台2の後端近傍には、不図示のポンプから供給される作動油によって旋回される旋回台6が設けられ、該旋回台6には、起伏自在にブーム5が枢支されている。なお、ブーム5には、チューブ側端部が旋回台6に枢支された起伏シリンダ8のロッド側端部が枢支されており、この起伏シリンダ8を伸縮させることで、ブーム5が起伏するようになっている。このブーム5は伸縮自在な多段式に構成されており、その先端には、水平方向に設けられた回動軸5aを中心に作業台7が揺動自在に枢支されている。そして、作業台7は、ブーム5の伸縮と起伏シリンダ8の伸縮とによって高さ方向の位置を調節することができ、また、旋回台6の旋回によって水平方向の位置を調節することができる。さらに作業台7は、ブーム5に対して首振り自在となるように旋回軸を有しており、これによっても水平方向の位置を調節することができる。これらの動作を操作するブーム操作バルブ50は旋回台6に位置している。なお、ブーム5、起伏シリンダ8及びこれらに作動油を供給するポンプPによって昇降装置が構成されている。
【0017】
旋回台6とブーム5の間には、下部レベリングシリンダ10が設けられている。下部レベリングシリンダ10は、そのチューブ側端部10aが旋回台6に、ロッド側端部10bがブーム5にそれぞれ枢支されており、ブーム5の起伏動作に連動して伸縮動作するようになっている。すなわち、下部レベリングシリンダ10は、ブーム5が起仰動作した場合には伸動作し、ブーム5が倒伏動作した場合には縮動作するものである。また、作業台7の回動軸5a近傍には下方に向かって延設されたアーム25が設けられ、該アーム25とブーム5の間には上部レベリングシリンダ20が設けられている。上部レベリングシリンダ20は、そのロッド側端部20aがアームの下端に、チューブ側端部20bがブーム5の先端にそれぞれ枢支されている。本実施例においては、上部レベリングシリンダ20、下部レベリングシリンダ10及びこれらを接続するレベリング回路30によってレベリング装置100の動作機構が構成されるものである。
【0018】
上記構成の高所作業車1におけるレベリング装置100について、図2に示す油圧回路図を参照しながらさらに説明する。上部レベリングシリンダ20と下部レベリングシリンダ10とを接続するレベリング回路30は、上部レベリングシリンダ20のロッド側及び下部レベリングシリンダ10のロッド側を接続するロッド側油路31と上部レベリングシリンダ20のチューブ側及び下部レベリングシリンダ10のチューブ側を接続するチューブ側油路33とによる閉回路を備える。レベリング回路30(ロッド側油路31及びチューブ側油路33)の上部レベリングシリンダ20側には、パイロットチェックバルブ41が設けられており、下部レベリングシリンダ10から上部レベリングシリンダ20への作動油は所定のクラッキング圧に達するとその流れが許容される。そして、上部レベリングシリンダ20から下部レベリングシリンダ10への作動油は、ロッド側油路31では、チューブ側油路33の油圧が所定のパイロット圧を越えたときにその流れが許容され、チューブ側油路33では、ロッド側油路31の油圧が所定のパイロット圧を越えたときにその流れが許容される。
【0019】
高所作業車1のような状態に作業台7がある場合には、上部レベリングシリンダ20には縮側の力が作用しており、チューブ側油路33が高圧側となる。まず、この場合について説明する。このようなレベリング回路30を備えるレベリング装置100により、ブーム5が起仰動作したときには、これに連動して下部レベリングシリンダ10が伸動作し、ロッド側油路31の圧力が上昇する。そして、ロッド側油路31の圧力がパイロットチェックバルブ41のパイロット圧に達すると、チューブ側油路33における上部レベリングシリンダ20から下部レベリングシリンダ10への作動油の流通が許容されるため、上部レベリングシリンダ20が縮動作する。反対に、ブーム5が倒伏動作したときには、これに連動して下部レベリングシリンダ10が縮動作し、チューブ側油路33の圧力が上昇する。そして、チューブ側油路33の圧力がパイロットチェックバルブ41のパイロット圧に達すると、ロッド側油路31における上部レベリングシリンダ20から下部レベリングシリンダ10への流通が許容され、さらにチューブ側油路33の圧力が上部レベリングシリンダ20の保持圧に達すると、上部レベリングシリンダ20が伸動作する。このように、下部レベリングシリンダ10に連動して上部レベリングシリンダ20が動作することで、作業台7が所定の範囲内で水平レベルを保持することができる。また上述のように、ロッド側油路31及びチューブ側油路33にパイロットチェックバルブ41が設けられていることにより、レベリング回路30が破損したときでも、上部レベリングシリンダ20が大きく伸縮動作することがなく、作業台7が大きく傾斜することを防止することができる。
【0020】
ロッド側油路31及びチューブ側油路33は、それぞれ戻り回路35に接続される接続油路32,34を備えており、それぞれにリリーフバルブ32a,34aが設けられている。戻り回路35は、ブーム5の伸縮シリンダ等を操作するためのブーム操作バルブ50からタンクTに作動油が循環するように設けられている。この戻り回路35は、ポンプ動作中には所定の背圧が立っているものである。なお、実施例ではタンクTと戻り回路35の間にロータリジョイント60が配置されている。このようにレベリング回路30にリリーフバルブ32a,34aが設けられていることにより、レベリング回路30における油圧が過度に高圧になった場合にはリリーフバルブ32a,34aから戻り回路35に作動油が流れるため、レベリング回路30の保護が図られる。なお、接続油路32,34(チューブ側油路33、ロッド側油路31)と戻り回路35の間には作業台傾斜修正用のバルブ43とコック46,47が設けられており、点検や整備の際に作業台7の傾斜が修正可能となっている。
【0021】
戻り回路35とレベリング回路30とは、上述のリリーフバルブ32a,34aを介さない負圧防止油路37によってさらに接続されている。実施例では、チューブ側油路33に接続された接続油路34と戻り回路35とが負圧防止油路37によって接続されており、この負圧防止油路37に戻り回路35からチューブ側油路33への流れを許容するチェックバルブ45が設けられている。これにより、チューブ側油路33の油圧が負圧状態になったときには、負圧防止油路37を経由して作動油が供給され、チューブ側油路33の負圧状態が解消される。なお、チェックバルブ45のクラッキング圧は、少なくとも戻り回路35の背圧より小さく設定されるものであり、これにより、チューブ側油路33が負圧状態になってもポンプ動作中に作動油が供給されるものである。また、チェックバルブ45のクラッキング圧は、例えば大気圧より小さく設定することもできる。この場合には、ポンプPが動作していないときでも、チューブ側油路33の油圧が負圧状態になれば、作動油が補充されるため、高所作業車保管中における外気温の変化によって負圧状態が発生したときにも作動油の補給が行われる。そのため、戻り回路35に対して補給圧力を確保するための背圧弁などを設ける必要がない。
【0022】
このように、チューブ側油路33のみに負圧防止油路37及びチェックバルブ45を設けているため、異物の噛み込み等によりチェックバルブ45から作動油がリークしたとしても、少なくともポンプ動作中にはチューブ側油路33に作動油が補給されるものである。そして、ロッド側油路31は負圧防止油路37及びチェックバルブ45が設けられておらず、作動油がリークする可能性が低いため、チューブ側油路33に作動油が補給された状態では作業台7の傾斜が回復し所定の水平レベルに戻ることになる。また、チューブ側油路33のチェックバルブ45から作動油がリークしても、ロッド側油路31には負圧防止油路及びチェックバルブがないため、ロッド側油路31に作動油が補給されず、作業台7の傾斜が進行することがない。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、負圧防止油路及びチェックバルブがチューブ側油路のみに設けられた例を示したが、ロッド側油路のみに負圧防止油路及びチェックバルブが設けられているものであっても構わない。
【0024】
また、チューブ側油路に接続された接続油路と戻り回路とが負圧防止油路によって接続されており、この負圧防止油路に戻り回路からチューブ側油路への流れを許容するチェックバルブが設けられている例を示したが、これに限定されない。例えば図3に示すように、コック46,47に代えてチューブ側油路33及びロッド側油路31にパイロットチェックバルブ141を設け、該パイロットチェックバルブ141の一方側(実施例と同じ動作であれば、ロッド側油路のパイロットチェックバルブ)のクラッキング圧を高くして、他方側のクラッキング圧を低く設定することもできる。このようにすると、他方側のパイロットチェックバルブが負圧防止のために機能するとともに、一方側は負圧状態となっても作動油の供給がされないものとなり、第1の実施例と同等の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 高所作業車
5 ブーム
7 作業台
10 下部レベリングシリンダ
20 上部レベリングシリンダ
31 ロッド側油路(第1の油路)
32a リリーフバルブ
33 チューブ側油路(第2の油路)
34a リリーフバルブ
35 戻り回路
45 チェックバルブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に起伏可能に設けられたブームと、該ブームの先端に揺動可能及び旋回可能に設けられた作業台と、該作業台を揺動させる上部レベリングシリンダと、前記ブームの起伏動作に連動して動作する下部レベリングシリンダと、前記上部レベリングシリンダと前記下部レベリングシリンダとを繋ぐ油圧回路と、を備える高所作業車のレベリング装置であって、
前記油圧回路は、
前記上部レベリングシリンダのロッド側と前記下部レベリングシリンダのロッド側を繋ぐ第1の油路と、
前記上部レベリングシリンダのチューブ側と前記下部レベリングシリンダのチューブ側を繋ぐ第2の油路と、を備え、
前記第1の油路及び前記第2の油路には、作業油をタンクに戻す戻り回路に接続され、前記第1の油路及び前記第2の油路が所定の圧力以上になったときに開状態となるリリーフバルブが設けられ、
前記第1の油路又は前記第2の油路のいずれか一方のみに、前記戻り回路から作動油が補給可能なチェックバルブが設けられていることを特徴とする高所作業車のレベリング装置。
【請求項2】
前記チェックバルブは、設けられている油路の圧力が前記戻り回路の圧力より小さくなったときに開状態となることを特徴とする請求項1記載の高所作業車のレベリング装置。
【請求項3】
前記チェックバルブは、設けられている油路の圧力が大気圧より小さくなったときに開状態となることを特徴とする請求項1記載の高所作業車のレベリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−136344(P2012−136344A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291481(P2010−291481)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】