説明

高所作業車の安全装置

【課題】作業台と構造物との間に作業者が挟み込まれる事故を未然に防止して安全性を確保できる構成の高所作業車の安全装置。
【解決手段】安全装置は、作業台に作業者が搭乗していることが検出されたとき、測距センサ60において検出された離隔距離と予め設定された距離閾値とを比較して、離隔距離が第1の距離閾値以下である場合に警報装置56に警報作動を行わせ、離隔距離が第1の距離閾値よりも小さな値の第2の距離閾値以下である場合に作業台を対象物に接近させる方向への昇降装置の作動を規制する規制判断部73とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者搭乗用の作業台を所望の高さに昇降移動させる昇降装置を備えた高所
作業車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車は、走行可能な車体上に昇降移動自在に配設された昇降装置(例えばブーム
装置)と、この昇降装置の先端部に設けられた作業者搭乗用の作業台とを備え、作業台に
搭乗した作業者が作業台上に設けられた操作装置を操作して昇降装置を作動させることに
より、作業台を任意の高所位置へ移動自在に構成した車両であり、電線工事、ビルディン
グや船舶の建造、高速道路建設等、種々の高所での作業に用いられている(例えば、特許
文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−208913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建造物の屋内や道路トンネル内などの作業現場で高所作業を行う場合には、
上方に設置された天井や梁等の構造物との関係で安全に作業を行い得る作業高さには制限
がある。このような状況下で作業台を上方に移動させるような操作が行われたとき、作業
者が上方構造物の存在を気付かずに、或いは誤って作業台を上方構造物に接近させ過ぎる
と、作業者が作業台と上方構造物との間に挟み込まれる危険性がある。一方、このような
事態を回避するために、作業者は作業台の上方への移動操作には十分な注意を払い安全確
保を最優先にして行う必要があるが、上方構造物を常に意識しなければならず、本来の作
業に対して注意力が散漫になってしまい、作業効率が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、作業効率の低下を招くことな
く、作業台と構造物との間に作業者が挟み込まれる事故を未然に防止して安全性を確保で
きる構成の高所作業車の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る高所作業車の安全装置は、走行可能な車体と
、車体に昇降自在に取り付けられた昇降装置(例えば、実施形態におけるブーム30)と
、昇降装置に取り付けられて作業者が搭乗可能な作業台と、昇降装置の作動操作を行うた
めの操作手段(例えば、実施形態における操作装置50)と、操作手段からの操作信号に
基づいて昇降装置の作動を制御する作動制御手段(例えば、実施形態におけるコントロー
ラ70のバルブ制御部71)と、作業台に作業者が搭乗しているか否かを検出する作業者
搭乗検出手段と、作業台上方の対象物までの離隔距離を検出する距離検出手段(例えば、
実施形態における測距センサ60)と、所定の警報作動を行う警報手段(例えば、実施形
態における警報装置56)と、作業者搭乗検出手段において作業台に作業者が搭乗してい
ることが検出されたとき、距離検出手段において検出された離隔距離と予め設定された距
離閾値とを比較して、離隔距離が第1の距離閾値(例えば、実施形態における警告距離T
1)以下である場合に警報手段に警報作動を行わせ、離隔距離が第1の距離閾値よりも
小さな値の第2の距離閾値(例えば、実施形態における危険距離TD2)以下である場合
に作業台を対象物に接近させる方向への昇降装置の作動を規制する規制判断手段(例えば
、実施形態におけるコントローラ70の規制判断部73)とを備えて構成される。
【0007】
なお、上記構成の高所作業車の安全装置において、作業者搭乗検出手段は、作業台に搭
乗した作業者自身に装着される安全帯と、安全帯が作業台に設けられた安全帯係止手段(
例えば、実施形態におけるフック係止金具17)に係止されているか否かを検出する安全
帯係止検出手段(例えば、実施形態における安全帯係止検出器19)とから構成されるこ
とが好ましい。
【0008】
また、上記構成の高所作業車の安全装置において、作業者の装着するヘルメットに距離
検出手段(例えば、実施形態における測距センサ160)が設けられ、この距離検出手段
は作業台に搭乗した作業者上方の対象物までの離隔距離を検出することが好ましい。
【0009】
また、上記構成の高所作業車の安全装置において、作業台に作業者が搭乗したときに、
作業台に設けられた距離検出手段(例えば、実施形態における測距センサ60)と、作業
者の装着するヘルメットに設けられた距離検出手段(例えば、実施形態における測距セン
サ160)とにより、作業台上方の対象物までの離隔距離を夫々検出するように構成して
もよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る高所作業車の安全装置は、作業台に作業者が搭乗していることが検出され
たときに、距離検出手段により検出される作業台上方の対象物までの離隔距離と、予め設
定された二つの距離閾値とを相互に比較して、離隔距離が第1の距離閾値に達した場合に
は警報装置に警報作動を行わせて作業者に注意を促し、離隔距離が第2の距離閾値に達し
た場合には昇降装置の作動が規制されるように構成されている。従って、作業台に作業者
が搭乗している場合に、意図しない状態で作業台及びこれに搭乗する作業者が対象物に接
近し過ぎるのが抑制されるため、高所作業中において作業台と構造物との間に作業者が挟
み込まれるのを未然に防止して、作業者の安全を確保することができるとともに、従前の
ように作業者は対象物までの距離を過度に配慮する必要がなく本来の作業に集中できるた
め、作業者の負担が減って作業効率を向上させることが可能である。
【0011】
また、作業者搭乗検出手段を、作業台に搭乗した作業者自身に装着される安全帯と、安
全帯が作業台に設けられた安全帯係止手段に係止されているか否かを検出する安全帯係止
検出手段とから構成することで、作業台に作業者が搭乗したことだけでなく、作業者の安
全帯の係留状態をも検出できるため、高所作業中の転落事故及び挟み込まれ事故の両方を
防止して、作業の安全性をより高めることができる。
【0012】
また、作業者の装着するヘルメットに距離検出手段を設けることで、作業者の作業姿勢
(例えば、起立した状態、中腰の状態、屈んだ状態)や、作業者の身長に応じた離隔距離
を検出することができるため、作業者の安全性をより向上させることができる。
【0013】
また、作業台に作業者が搭乗したときに、作業台に設けられた距離検出手段と、作業者
の装着するヘルメットに設けられた距離検出手段との双方により、作業台上方の対象物ま
での離隔距離を夫々検出する構成とすることで、作業台の位置、作業者の姿勢、対象物の
状態等、互いに異なる条件のもとで作業台及びこれに搭乗する作業者と対象物との間の相
互の離隔距離をその状況に応じて検出することが可能であり、移動方向に存在する未知の
対象物に対しても臆することなく安全に作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る安全装置の構成を示すブロック図である。
【図2】上記安全装置を搭載した高所作業車を示す側面図である。
【図3】上記高所作業車の作業台を示す部分断面図である。
【図4】上記作業台に備えられるフック係止金具を示す正面図である。
【図5】上記作業台に備えられる操作装置を示す斜視図である。
【図6】上記作業台に備えられる測距センサの配置を示す平面図である。
【図7】離隔距離と距離閾値との関係を示す模式図であり、(a)は警告距離<離隔距離、(b)は危険距離<離隔距離≦警告距離、(c)は離隔距離≦危険距離、の場合を示す。
【図8】上記安全装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る安全装置の構成を示すブロック図である。
【図10】第2実施形態においてヘルメットに備えられる測距センサの配置を示す側面図である。
【図11】第2実施形態において離隔距離と距離閾値との関係を示す模式図であり、(a)は警告距離<離隔距離、(b)は危険距離<離隔距離≦警告距離、(c)は離隔距離≦危険距離、の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図2に本実施形態
に係る安全装置が適用された高所作業車(ブーム式作業車)を示しており、まず、この図
を参照して高所作業車1の全体構成について概要説明する。
【0016】
高所作業車1は、走行用のタイヤ車輪11,11,…を備えて運転キャブ12から走行
運転操作が可能なトラック式車両の車体10と、この車体10上に設けられた旋回台20
と、この旋回台20から上方に延びて設けられた支柱21の上部にフートピン22を介し
て基端部が支持された伸縮ブーム(以下、単に「ブーム」と称する)30と、このブーム
30の先端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台40とを有して構成される。
【0017】
旋回台20は、車体10の後部に上下軸まわり360度回動自在に取り付けられている
。車体10の内部には旋回モータ23が設けられており、この旋回モータ23を回転作動
させることにより、図示しないギヤを介して旋回台20を水平旋回動させることができる
。ブーム30は、基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式
に組み立てられた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31の伸縮作動
により、基端ブーム30aに対して中間ブーム30b及び先端ブーム30cを相対的に移
動させて、ブーム30全体を軸方向に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30
aと旋回台20の支柱21との間には起伏シリンダ24が跨設されており、この起伏シリ
ンダ24を伸縮作動させることによりブーム30全体を上下面内で起伏動させることがで
きる。なお、ここでは、ブーム30を三段伸縮構成としているが、二段若しくは四段以上
の多段伸縮構成としてもよい。
【0018】
先端ブーム30cの先端部にはブームヘッド32が取り付けられており、このブームヘ
ッド32により垂直ポスト33の下端部が枢支されている。垂直ポスト33は、先端ブー
ム30c先端あるいはブームヘッド32と垂直ポスト33との間に配設されたレベリング
装置(図示しない)により揺動制御が行われ、ブーム30の起伏の如何に拘らずこの垂直
ポスト33が常時垂直姿勢に保持される構成となっている。
【0019】
作業台40は上端が開口した略箱形状を呈しており、その外部に突出して設けられた作
業台保持ブラケット41を介して垂直ポスト33の上端部に回動自在に取り付けられてい
る。作業台保持ブラケット41の内部には首振りモータ42が設けられており、この首振
りモータ42を回転作動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト33まわりに首
振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポスト33は上述のように常時
垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず
常時水平に保持される。
【0020】
作業台40に搭乗する作業者(図3中において符号「OP」で示す)は、いわゆる安全
帯と称される身体保持具を身に付ける。この安全帯90は、図3に示すように、作業者が
自身に身に付けるベルト91と、一端部がベルト91に取り付けられたロープ92と、こ
のロープ92の他端部に取り付けられたフック93とから構成される。一方、作業台40
の作業台保持ブラケット41には、フック係止金具17が固定されており、その中央部に
は安全帯90のフック93を係止させることが可能なフック係止孔17aが開口されてい
る。作業者は作業台40に搭乗したときには、必ず安全帯90のフック93をフック係止
金具17のフック係止孔17aに係止させた状態にしておく。これにより作業者の身体は
作業台40に係留され、作業台40から誤って転落することが防止される。また、安全帯
90のロープ92は絶縁材料で形成されており、作業台40側からの電気的導通を絶縁し
、作業者の感電が防止されるようになっている。
【0021】
また、図4に示すように、フック係止金具17には、フック係止孔17aの一部を覆う
非検出位置と、このフック係止孔17aを覆わずに完全に開口させる検出位置との間でヒ
ンジ18aまわりに揺動自在なフック検出用作動片18が設けられており、スプリング1
8bにより非検出位置方向(図4中に示す矢印R方向と反対の方向)に常時付勢されてい
る。このフック検出用作動片18は、フック係止孔17aの側部に設けられた後述の安全
帯係止検出器19により安全帯90の端部が作業台40のフック係止金具17に係止され
ているか否かを検出する際に用いられる。
【0022】
また、作業台40にはこれに搭乗した作業者が操作する操作装置50が設けられており
、ここには作業台40の移動操作、すなわちブーム30の起伏、伸縮及び旋回操作を行う
ためのブーム操作レバー51と、作業台40の首振り操作を行うための作業台操作レバー
52とが備えられている(図5を参照)。作業台40に搭乗した作業者は、これらブーム
操作レバー51及び作業台操作レバー52を操作することにより、起伏シリンダ24の伸
縮作動、伸縮シリンダ31の伸縮作動、旋回モータ23の回転作動、及び首振りモータ4
2の回転作動の各操作を行うことができる。ここで、ブーム操作レバー51は前後方向及
び左右方向の傾動操作のほかに軸回り左右両方向に捩り操作をすることが可能であり、ブ
ーム操作レバー51の前後方向への傾動操作がブーム30の起伏操作(起伏シリンダ24
の伸縮作動操作)に相当し、ブーム操作レバー51の左右方向への傾動操作がブーム30
の伸縮操作(伸縮シリンダ24の伸縮作動操作)に相当し、ブーム操作レバー51の軸回
り捩り操作がブーム30(旋回台20)の旋回操作(旋回モータ23の回転作動操作)に
相当する。また、作業台操作レバー52は左右方向への傾動操作が可能であり、この作業
台操作レバー52の左右方向への傾動操作は作業台40の首振り操作(首振りモータ42
の回転作動操作)に相当する。なお、ブーム操作レバー51の軸回り捩り操作とは、レバ
ー全体を軸回り方向に捩り操作する形態のみならず、例えばレバー先端に備えたグリップ
(つまみ)のみを軸回り方向に捩り操作する形態も含まれる。
【0023】
図1に示すように、起伏シリンダ24には第1制御バルブV1経由で、伸縮シリンダ3
1には第2制御バルブV2経由で、旋回モータ23には第3制御バルブV3経由で、首振
りモータ42には第4制御バルブV4経由で、走行体10に設けられた油圧ポンプPより
吐出された作動油(圧油)が供給されるようになっており、起伏シリンダ24、伸縮シリ
ンダ31、旋回モータ23及び首振りモータ42(以降では、これらを総称して「油圧ア
クチュエータ」とも称する)はそれぞれ対応する制御バルブV1,V2,V3,V4の各
スプールの駆動状態に応じた方向及び速度で作動する。なお、油圧ポンプPは、走行体1
0の前部に設けられたパワーテイクオフ機構PTO(図1を参照)により取り出された走
行用のエンジンE(図1を参照)の駆動力を利用して回転駆動されて所定油圧・流量の作
動油を吐出する。ここで、制御バルブV1〜V4の各スプールの駆動方向は対応する油圧
アクチュエータの駆動方向(伸縮方向または回転方向)に関係し、各スプールの駆動量は
対応する油圧アクチュエータに供給される作動油の流量(単位時間当たりの流量)、すな
わち各油圧アクチュエータの作動速度に関係する。したがって、各制御バルブV1〜V4
におけるスプールの駆動方向が逆になると対応する油圧アクチュエータの作動速度が逆に
なり、各制御バルブV1〜V4におけるスプールの駆動量が大きくなるほど対応する油圧
アクチュエータの作動速度は大きくなる。
【0024】
走行体10内にはコントローラ70(図1を参照)が設置されており、コントローラ7
0のバルブ制御部71はブーム操作レバー51の各方向(前後方向、左右方向及び軸回り
方向)への操作により出力された操作信号に基づいて制御バルブV1〜V3の各スプール
を駆動し、また作業台操作レバー52の操作により出力された操作信号に基づいて制御バ
ルブV4の各スプールを駆動する。ここで、ブーム操作レバー51及び作業台操作レバー
52の操作状態(操作方向及び操作量)は操作装置50内に設けられたレバー操作状態検
出器51a,52a(例えば、ポテンショメータから構成される)により検出され、その
検出信号が操作レバー51,52の操作方向及び操作量に対応した操作信号として、コン
トローラ70のバルブ制御部71に入力されるようになっている。
【0025】
このような構成により、作業台40に搭乗した作業者は、ブーム操作レバー51を操作
してブーム30を起伏、伸縮及び旋回作動させ、或いは作業台操作レバー52を操作して
作業台40を首振り作動させることで、自身が搭乗する作業台40を所望の位置に移動さ
せることが可能である。なお、走行体10の前後左右4箇所にはアウトリガジャッキ13
が設けられており、これらアウトリガジャッキ13を下方に張り出して接地させることに
より、走行体10を持ち上げ状態に支持させることができる。また、各アウトリガジャッ
キ13は走行体10の側方(車幅方向)に張り出すことも可能であり、これにより走行体
10の安定姿勢が得られるようになっている。このアウトリガジャッキ13の作動操作は
、走行体10の後方に設けられたジャッキ操作レバー14の操作により行われる。なお、
パワーテイクオフ機構PTOをオン・オフ作動させる(油圧ポンプPを駆動させたり停止
させたりする)ためのPTO操作レバー15は、運転キャブ12内の運転席に設けられて
いる(図1を参照)。
【0026】
また、作業台40の床面には、作業台40に搭乗した作業者が足で踏みこんで操作する
ペダル型のフートスイッチ53(図1を参照)が備えられている(このフートスイッチ5
3も操作装置50の一部とする)。このフートスイッチ53は、操作されているときのみ
ブーム操作レバー51或いは作業台操作レバー52の操作による各油圧アクチュエータの
作動を可能にするスイッチであり、作業者が足で踏みこんでいるオンの状態(操作状態)
では信号(「スイッチ操作信号」と称する)を出力し、踏み込みを解除しているオフの状
態(非操作状態)ではスイッチ操作信号を出力しない。このフートスイッチ53から出力
されるスイッチ操作信号は、図1に示すように、コントローラ70に入力され、コントロ
ーラ70のバルブ制御部71は、フートスイッチ53からスイッチ操作信号が出力されて
いるときにのみ、ブーム操作レバー51の操作により出力された操作信号と作業台操作レ
バー52の操作により出力された操作信号とをそれぞれ有効なものとして扱う。よって、
作業台40上の作業者がブーム操作レバー51或いは作業台操作レバー52の操作を行っ
たとしても、これがフートスイッチ53を踏み込んだ状態(フートスイッチ53をオンに
した状態)で行ったものでなければその操作は有効とはならないため、作業者は先ずフー
トスイッチ53を踏み込み操作した上で、ブーム操作レバー51或いは作業台操作レバー
52の操作を行う必要がある。そのため、以下においては説明の便宜上、ブーム操作レバ
ー51或いは作業台操作レバー52が操作されるときには、常にフートスイッチ53も踏
み込み操作されているものとして、その説明を省略する。
【0027】
このような構成の高所作業車1には、高所作業中において作業台40と上方構造物との
間に作業者が挟み込まれる事故を未然に防止するための安全装置が備えられている。それ
では、この安全装置の構成について二つの実施形態を以下に例示して詳しく説明する。
【0028】
まず、第1実施形態に係る安全装置の構成について、図1及び図6〜図7を追加参照し
て説明する。この第1実施形態の安全装置は、図1に示すように、前述の操作装置50の
ほか、安全帯係止検出器19、測距センサ60、コントローラ70、警報装置56、解除
スイッチ54を有して構成されている。なお、操作装置50の操作レバー51,52、及
びコントローラ70のバルブ制御部71については、前述したので、以下ではその説明を
省略する。
【0029】
安全帯係止検出器19は、フック係止金具17に安全帯90のフック93が係止されて
いるか否かを検出するためのものであり、いわゆるリミットスイッチで構成されている(
但し、これに限定されるものではなく、例えば光電センサや近接スイッチを用いてもよい
)。安全帯係止検出器19は、安全帯90のフック93がフック係止孔17aに係止され
ると、フック検出用作動片18が図4中に示す矢印R方向に揺動して、これによりスイッ
チ操作片19aが上方に押し上げられてオン信号を出力するようになっている。一方、前
述したようにフック検出用作動片18はスプリング18bによって非検出位置方向(矢印
R方向とは反対の方向)に常時付勢されているため、安全帯係止検出器19はフック93
がフック係止孔17aに係止されていないときにはオフ信号を出力するようになっている
。安全帯係止検出器19とコントローラ70とは電気的に接続されており、このような安
全帯係止検出器19のオン・オフ信号はコントローラ70に入力される。なお、本実施形
態において、作業者搭乗検出手段は、安全帯90、フック係止金具17及び安全帯係止検
出器19からなり、安全帯係止検出器19において安全帯90のフック93がフック係止
金具17に係止されているか否かが検出されることにより、間接的に、作業台40に作業
者が搭乗しているか否かが検出されるようになっている。
【0030】
測距センサ60は、レーザ光、赤外線、超音波等を用いて、検出対象の対象物(例えば
、作業現場の上方に設置された構造物)Kとの間の距離を非接触で検出するためのもので
あり、本実施形態では、センサヘッド内に投光部(投光素子)及び受光部(受光素子)を
有して三角測距方式により距離測定を行う反射型測距センサを例示する。なお、距離測定
は三角測距方式に限定されず、例えば、投光部から射出された光が対象物Kにて反射され
て受光部に戻ってくるまでの経過時間に基づいて距離が測定される方式などであってもよ
い。また、測距センサ60は、長距離測定を可能とし、耐環境性(防塵防滴、耐振動、耐
衝撃など)に優れたものが好ましい。
【0031】
測距センサ60は、図6に示すように、作業台40の上部開口外縁部の四隅に取り付け
られており(すなわち、本実施形態では4箇所設置されており)、この測距センサ60に
より検出されるセンサヘッドと対象物Kとの間の距離は、実質的に見て作業台40と対象
物Kとの間の離隔距離Dとみなすことができる。各測距センサ60は、外部からの荷重・
衝撃を受け難くするために、その検出方向(鉛直上方向)に開口を向けた角筒形状の取付
金具61内に収容保持された状態で作業台40に取り付けられている。なお、測距センサ
60とコントローラ70とは電気的に接続されており、この各測距センサ60において検
出された検出値(離隔距離Dの検出情報)はコントローラ70に入力される。
【0032】
コントローラ70は、バルブ制御部71、記憶部72、規制判断部73、及び規制解除
部74を有して構成される。
【0033】
記憶部72には、作業台40(及びこれに搭乗する作業者)の位置が対象物Kに対して
接近し過ぎる関係(危険性のある関係)であるか否かを判定するための離隔距離Dに対す
る二つの距離閾値、すなわち、第1の距離閾値として警告距離TD1、第2の距離閾値と
して危険距離TD2、が予め設定記憶されている(但し、「危険距離TD2<警告距離TD
1」の関係である)。なお、距離閾値(警告距離TD1,危険距離TD2)は任意に設定す
ることができるように構成してもよい。例えば、作業者が数値キー等により距離閾値を直
接入力したり、予め記憶されている複数の設定値より選択したりしてもよく、また、一方
の距離閾値を入力または選択するだけで他方の距離閾値が自動的に算出されるものであっ
てもよい。これにより、作業を行う現場の状態や作業者の身長に合わせて距離閾値を任意
に設定することができるため、作業性及び安全性の向上を図ることができる。
【0034】
規制判断部73は、安全帯係止検出器19において安全帯90のフック93がフック係
止金具17に係止されていること(作業者が作業台40に搭乗していること)が検出され
た場合、すなわち、安全帯係止検出器19からオン信号が入力された場合には、記憶部7
2に記憶された警告距離TD1及び危険距離TD2と、各測距センサ60から入力される検
出値(現時点における作業台40と対象物Kとの間の離隔距離D)とを相互に比較して(
図7を参照)、作業台40(及びこれに搭乗した作業者)が対象物Kに接近し過ぎる可能
性があるか否かを判定する。なお、この規制判断部73では、4箇所の測距センサ60の
各検出値ごとに上記比較演算がパラレルに実行されるようになっており、いずれかの測距
センサ60の検出値(4箇所ある測距センサ60のうちで最小値を示す離隔距離D)が警
告距離TD1及び危険距離TD2以下であると判断されたときに、以下に例示するブーム3
0の作動規制及び警報装置56による警報作動が実行される。
【0035】
先ず第1段階として、規制判断部73は、図7(b)に示すように、離隔距離Dが警告
距離TD1以下である場合(TD2<D≦TD1)、すなわち作業台40が警告距離TD1
りも対象物Kに接近している場合には、操作装置50内に備えられた警報装置56に警報
作動信号を出力して作業者に警報を与える。警報装置56による警報作動とは、警報装置
56を、例えば図5に示すように、警報ブザー57、警報ランプ58、警報表示ディスプ
レイ59等により構成して、視覚や聴覚により作業者に危険を知らしめるあらゆるものを
いう。なお、規制判断部73は、離隔距離Dが警告距離TD1以下となっている間、すな
わち、作業台40が警告距離TD1よりも対象物Kから離れるまでの間、警報作動信号を
自己保持して、警報装置56による警報作動を継続させる。
【0036】
続いて第2段階として、規制判断部73は、図7(c)に示すように、離隔距離Dが危
険距離TD2以下である場合(D≦TD2)、すなわち、作業台40が危険距離TD2より
も対象物Kに接近している場合には、ブーム30の起伏、伸縮及び旋回作動を規制する規
制信号をバルブ制御部71に出力して、ブーム30の作動を規制(すなわち、ブーム30
の作動を強制停止)する。このとき、規制判断部73から規制信号を受信したバルブ制御
部71は、ブーム30の作動操作が行われても、その操作信号を無視(或いは、ブーム3
0の作動が行われないように、各油圧アクチュエータへの圧油供給を遮断)することで、
ブーム30の作動を規制する。また、規制判断部73は、(離隔距離Dが警告距離TD1
以下である状態が続いているため)引き続き警報作動信号を自己保持して、そのまま警報
装置56による警報作動を継続させる。
【0037】
規制解除部74は、操作装置50内に設けられた解除スイッチ54(「モーメンタリス
イッチ」で構成される)と電気的に接続されており、作業台40に搭乗した作業者により
解除スイッチ54がオン操作されている間のみオン信号(規制解除指令信号)が入力され
るようになっている(解除スイッチ54の操作を離すと中立位置に自動復帰してオフ状態
となる)。規制解除部74は、ブーム30の作動が規制された状態(規制判断部73から
規制信号が出力されている状態)において、解除スイッチ54のオン操作によって出力さ
れる規制解除指令信号を受けた場合には、作業台40を対象物Kから離間させる方向(つ
まり下降方向)へ移動させるようなブーム30の作動操作が行われたときに限り、規制判
断部71に規制解除信号を出力(すなわち、ブーム30の作動規制を解除)して、当該操
作状態に応じたブーム30の作動を許容する。一方、規制解除部74は、それ以外のブー
ム30の作動操作として、例えば作業台40を対象物Kに接近させる方向(つまり上昇方
向)へ移動させるようなブーム30の作動操作が行われたときには、安全性の観点から好
ましくないため、規制判断部73に規制解除信号を出力せず、ブーム30の作動規制を継
続させるようになっている。
【0038】
なおこのとき、規制解除部74は、レバー操作状態検出器(ポテンショメータ)51a
において検出されるブーム操作レバー51の操作状態(操作方向)に基づいて、作業台4
0を対象物Kから離間させる方向(下降方向)へ移動させるようなブーム30の作動操作
が行われたか否かを判断する。なお、作業台40を対象物Kから離間させる方向へのブー
ム30の作動操作とは、例えば、ブーム30の倒伏操作(起伏シリンダ24の収縮作動操
作)、ブーム30の収縮操作(伸縮シリンダ31の収縮作動操作)、或いはこれらブーム
30の倒伏操作及び収縮操作を複合させて作業台40を直線的に下降方向に移動させるよ
うな操作が該当する。本実施形態では、作業台40を対象物Kから離間させる方向(下降
方向)へ移動させるようなブーム30の作動操作が行われた場合にブーム30の作動規制
を解除する構成であるが、作業台40を対象物Kに接近させる方向(上昇方向)へ移動さ
せるようなブーム30の作動操作が行われた場合にもブーム30の作動規制を解除する構
成としてもよい。この場合、ブーム30の作動速度を通常よりも遅い低速作動にする、警
報装置56による警報作動の警報音を変える等により対象物Kに接近していることの注意
喚起を行う、又はその両方を行うものでもよい。これにより、作業者の判断により対象物
Kへ接近することができるので、安全性を損なうことなく作業性が向上する。
【0039】
このような構成の安全装置を備えた高所作業車1において、所望の高所作業(例えば、
道路トンネル内でのメンテナンス作業)を行うため、高所作業車1を運転して目的とする
作業現場に到着した作業者は、運転キャブ12内の運転席に設けられたPTO操作レバー
15をオン操作してパワーテイクオフ機構PTOにより取り出されたエンジンEの駆動力
により油圧ポンプPを駆動させた後、車体10後方のジャッキ操作レバー14を操作して
各アウトリガジャッキ13を接地状態まで張り出させて車体10を安定姿勢にし、車体1
0上から格納状態の作業台40に乗り込む。そして、作業者の身体に巻き付けた安全帯9
0のフック93を作業台40のフック係止金具17のフック係止孔17aに係止させた後
、操作装置50内のブーム操作レバー51を操作して、ブーム30を起伏、伸縮及び旋回
作動させ、或いは作業台操作レバー52を操作して、作業台40を首振り作動させる。こ
れにより作業台40に搭乗した作業者は、自らのレバー操作により作業台40を任意の高
所位置に移動させて所望の高所作業を行うことができる。
【0040】
次に、上記のように作業台40を移動させるときの安全装置の制御内容について、図8
に示すフローチャートを追加参照して以下に説明する。
【0041】
まず、コントローラ70の規制判断部73において、安全帯係止検出器19から入力さ
れるオン・オフ信号に基づいて、作業者の安全帯90が作業台40に係留されているか否
か、すなわち、作業者が作業台40に搭乗しているか否かが判定される(ステップS10
1)。安全帯係止検出器19からオフ信号が入力されている場合(安全帯90が係留され
ていない場合)には、このステップS101で否定判定がなされて、安全帯係止検出器1
9からのオン信号の入力待ち状態となり、安全帯係止検出器19からオン信号が入力され
たときに次のステップへと移行する。
【0042】
作業者によってブーム操作レバー51が操作されると、ブーム操作レバー51の操作状
態(操作方向及び操作量)に応じた作動方向及び作動速度でブーム30が作動する(ステ
ップS102)。ブーム30が作動して作業台40が移動すると、この作業台40に設け
られた各測距センサ60から入力される検出値に基づいて、作業台40と対象物Kとの間
の離隔距離Dが検出される(ステップS103)。
【0043】
次に、コントローラ70の規制判断部73において、記憶部72に設定された距離閾値
(TD1,TD2)が読み込まれ、第1の距離閾値としての警告距離TD1と測距センサ6
0で検出された離隔距離Dとが比較されて、作業台40が警告距離TD1よりも対象物K
に接近しているか否かが判定される(ステップS104)。ここで、作業台40が警告距
離TD1よりも対象物Kから離間している場合には、ここでは否定判定がなされ、既に警
報装置56による警報作動が実行されている場合には警報作動を解除してから(ステップ
S105)、ステップS102に戻り、ブーム操作レバー51の操作状態に応じた作動方
向及び作動速度でブーム30が作動され続ける。一方、ステップS104において、作業
台40が警告距離TD1よりも対象物Kに接近している場合には肯定判定がなされて、警
報装置56による警報作動が実行されて、作業者に対して警報が発せられる(ステップS
106)。
【0044】
次に、コントローラ70の規制判断部73において、第2の距離閾値としての危険距離
TD2と測距センサ60で検出された離隔距離Dとが比較され、作業台40が危険距離T
2よりも対象物Kに接近しているか否かが判定される(ステップS107)。このステ
ップS107において、作業台40が危険距離TD2よりも対象物Kから離間している場
合(すなわち、作業台40が警告距離TD1より接近し、且つ、危険距離TD2より離間す
る場合)には否定判定がなされ、警報装置56による警報作動が続行されたままでステッ
プS101に戻る。なお、この警報作動は、ステップS104において作業台40が警告
距離TD1よりも対象物Kから離間したことが判断され、これによりステップS105で
警報作動が解除される、までの間は継続して行われる。一方、ステップS107で、作業
台40が危険距離TD2よりも対象物Kに接近していると判断された場合には肯定判定が
なされて、規制判断部73からバルブ制御部71へ向けて規制信号が出力され、これによ
りブーム30の作動が規制される(ステップS108)。
【0045】
次に、コントローラ70の規制解除部74において、操作装置50内の解除スイッチ5
4がオン操作されているか否かが判定される(ステップS109)。ここで、解除スイッ
チ54が操作されていない場合には、規制解除部74において、解除スイッチ54からの
入力待ち状態となり、解除スイッチ54から規制解除指令信号(オン信号)の入力がある
までは、ブーム操作レバー51が操作されても規制判断部73によってブーム30の作動
が規制され続ける。
【0046】
作業者によって解除スイッチ54がオン操作されると、規制解除部74において、ブー
ム操作レバー51の操作があったとき、レバー操作状態検出器51aからの検出情報に基
づいて、ブーム操作レバー51が作業台40を対象物Kから離間させる方向に操作された
ものであるか否かが判定される(ステップS110)。ここで、ブーム操作レバー51が
作業台40を対象物Kに接近させる方向に操作されている場合には、このステップS11
0で否定判定がなされて、ブーム30の作動が規制され続ける。一方、ブーム操作レバー
51が作業台40を対象物Kから離間させる方向に操作されている場合には、規制解除部
74において、ブーム30の作動規制が解除され、当該方向へ作業台40を移動させるよ
うなブーム30の作動が許容される(ステップS111)。このように、作業台40が危
険距離TD2よりも対象物Kに接近した場合には、作業台40を対象物Kから離間させる
方向へのブーム30の作動操作のみが許容されるため、作業者は解除スイッチ54をオン
操作しながらブーム操作レバー51を操作することで、自身の搭乗する作業台40を対象
物Kから遠ざけて安全な位置に退避することができる。
【0047】
以上、第1実施形態に係る安全装置によれば、安全帯係止検出器19において作業者の
安全帯90が作業台40に係留されていること(作業者が作業台40に搭乗していること
)が検出されたときに、測距センサ60により検出される作業台40と対象物Kとの間の
離隔距離Dと、予め設定された距離閾値としての警告距離TD1及び危険距離TD2とを相
互に比較して、離隔距離Dが警告距離TD1に達した場合には警報装置56に警報作動を
行わせて作業者に注意を促し、離隔距離Dが危険距離TD2に達した場合にはブーム30
の作動が規制されるように構成されている。従って、作業台40に作業者が搭乗している
場合に、意図しない状態で作業台40及びこれに搭乗する作業者が対象物Kに接近し過ぎ
るのが抑制されるため、高所作業中において作業台40と構造物(対象物K)との間に作
業者が挟み込まれるのを未然に防止して、作業者の安全を確保することができるとともに
、従前のように作業者は対象物Kまでの距離を過度に配慮する必要がなく本来の作業に集
中できるため、作業者の負担が減って作業効率を向上させることが可能である。また、本
実施形態の安全装置では、作業台40に作業者が搭乗したことだけでなく、作業者の安全
帯90の係留状態をも検出できるため、高所作業中の転落事故及び挟み込まれ事故の両方
を防止して、作業の安全性をより高めることができる。
【0048】
なお、上述の実施形態では、測距センサ60から入力される検出値(現時点における作
業台40と対象物Kとの間の離隔距離D)と距離閾値とを比較演算する構成であったが、
これに限定されるものではなく、ブーム30の先端位置(作業台40の位置)を検出する
ための検出手段として、起伏角度検出器、伸縮量検出器、旋回角度検出器を設け、これら
の検出器からの検出値(作業台40の位置)とブーム操作レバー51からの操作信号とに
基づいて作業台40の予測移動軌跡を算出し、この予測移動軌跡と測距センサ60からの
検出値(現時点における作業台40と対象物Kとの間の離隔距離)に基づいて作業台40
が移動したときにおける当該作業台40と対象物Kとの間の予測距離を算出し、この予測
距離と距離閾値との比較演算の結果に基づいて、ブーム30の作動規制などを行うように
構成してもよい。
【0049】
続いて、第2実施形態に係る安全装置の構成について、図9〜図11を追加参照して説
明する。なお、以下において、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付し
てその説明を省略し、ここでは第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0050】
この第2実施形態の安全装置は、図9に示すように、操作装置50、作業台荷重検出器
119、測距センサ160、コントローラ170、警報装置56、解除スイッチ54を有
して構成されている。
【0051】
作業台荷重検出器119は、作業台40に取り付けられたロードセルからなり、作業台
40にかかる積載荷重(作業台40に搭乗する作業者の体重のほか、作業台40に搭載す
る工具等の重量の総重量)を検出する。作業台荷重検出器119とコントローラ170と
は電気的に接続されており、この作業台荷重検出器119において検出された検出値(積
載荷重の検出情報)はコントローラ170に入力される。
【0052】
測距センサ160は、前述の測距センサ60と同様に、レーザ光、赤外線、超音波等を
用いて、検出対象の対象物(例えば、作業現場の上方に設置された構造物)Kとの間の距
離を非接触で検出するためのものであり、本実施形態では、作業現場で作業者が装着する
保安用のヘルメット190に取り付けられている。この測距センサ160は、図10に示
すように、作業者がヘルメット190を装着して頭頂部を上方向へ向けたときに、その検
出方向が上方向を向くようにヘルメット190の外表面(前部、後部、及び左右側部)に
不図示のブラケットを介して取り付けられており(すなわち、本実施形態では4箇所設置
されており)、この測距センサ160により検出されるセンサヘッドと対象物Kとの間の
距離は、実質的に見て作業者と対象物Kとの間の離隔距離Dとみなすことができる。なお
、測距センサ160とコントローラ170との間の通信は、有線式とすることも可能であ
るし、無線式とすることも可能であり、この測距センサ160において検出された検出値
(離隔距離Dの検出情報)は有線通信又は無線通信にてコントローラ170に送信される
。ここで、有線式の場合には応答性・信頼性の面で有利であり、無線式の場合には作業性
の面で有利である。
【0053】
コントローラ170は、バルブ制御部71、記憶部72、規制判断部73、規制解除部
74のほかに、作業者搭乗判定部75を有して構成される。なお、本実施形態において、
作業者搭乗検出手段は、作業台荷重検出器119及びコントローラ170の作業者搭乗判
定部75から構成されている。
【0054】
作業者搭乗判定部75は、作業台荷重検出器119により検出された作業台40の積載
荷重の検出情報を受け、作業台40の積載荷重が予め設定された所定値を超えているか否
かに基づいて、作業台40に作業者が搭乗しているか否かの判定を行う。そして、作業台
40の積載荷重がその所定値を超えていると判定したときには作業台40に作業者が搭乗
しているものとして、作業者搭乗検出信号を規制判断部73に出力する。なお、上記所定
値は、作業台40に作業者が搭乗した状態において作業台荷重検出器119が最低限示す
であろうと推測される荷重値であり、作業者の体重を考慮して任意に設定される。
【0055】
記憶部72には、作業台40に搭乗する作業者の位置が対象物Kに対して接近し過ぎる
関係(危険性のある関係)であるか否かを判定するための離隔距離Dに対する二つの距離
閾値、すなわち、第1の距離閾値として警告距離TD11、第2の距離閾値として危険距離
TD12、が予め設定記憶されている(但し、「危険距離TD12<警告距離TD11」の関係
である)。
【0056】
規制判断部73は、作業者搭乗判定部75から作業者搭乗検出信号が入力された場合に
は、記憶部72に記憶された警告距離TD11及び危険距離TD12と、各測距センサ160
から入力される検出値(現時点における作業者と対象物Kとの間の離隔距離D)とを相互
に比較して(図11を参照)、作業台40に搭乗した作業者(図11中において符号「O
P」で示す)が対象物Kに接近し過ぎる可能性があるか否かを判定する。なお、この規制
判断部73では、4箇所の測距センサ160の各検出値ごとに上記比較演算がパラレルに
実行されるようになっており、いずれかの測距センサ160の検出値(4箇所ある測距セ
ンサ160のうちで最小値を示す離隔距離D)が警告距離TD11又は危険距離TD12以下
であると判断されたときに、以下に例示するブーム30の作動規制及び警報装置56によ
る警報作動が実行される。
【0057】
先ず第1段階として、規制判断部73は、図11(b)に示すように、離隔距離Dが警
告距離TD11以下である場合(TD12<D≦TD11)、すなわち作業者が警告距離TD11
よりも対象物Kに接近している場合には、操作装置50内に備えられた警報装置56に警
報作動信号を出力して作業者に警報を与える。なお、規制判断部73は、離隔距離Dが警
告距離TD11以下となっている間、すなわち、作業者が警告距離TD11よりも対象物Kか
ら離間するまでの間、警報作動信号を自己保持して、警報装置56による警報作動を継続
させる。
【0058】
続いて第2段階として、規制判断部73は、図11(c)に示すように、離隔距離Dが
危険距離TD12以下である場合(D≦TD12)、すなわち、作業者が危険距離TD12より
も対象物Kに接近している場合には、ブーム30の起伏、伸縮及び旋回作動を規制する規
制信号をバルブ制御部71に出力して、ブーム30の作動を規制(すなわち、ブーム30
の作動を強制停止)する。このとき、規制判断部73から規制信号を受信したバルブ制御
部71は、ブーム30の作動操作が行われても、その操作信号を無視(或いは、ブーム3
0の作動が行われないように、各油圧アクチュエータへの圧油供給を遮断)することで、
ブーム30の作動を規制する。また、規制判断部73は、(離隔距離Dが警告距離TD11
以下である状態が続いているため)引き続き警報作動信号を自己保持して、そのまま警報
装置56による警報作動を継続させる。
【0059】
以上、第2実施形態に係る安全装置によれば、作業者搭乗判定部75において作業者が
作業台40に搭乗していることが判定されたときに、測距センサ160により検出される
作業者と対象物Kとの間の離隔距離Dと、予め設定された距離閾値としての警告距離TD
11及び危険距離TD12とを相互に比較して、離隔距離Dが警告距離TD11に達した場合に
は警報装置56に警報作動を行わせて作業者に注意を促し、離隔距離Dが危険距離TD12
に達した場合にはブーム30の作動が規制されるように構成されている。従って、作業台
40に作業者が搭乗している場合に、意図しない状態で作業台40及びこれに搭乗する作
業者が対象物Kに接近し過ぎるのが抑制されるため、高所作業中において作業台40と構
造物(対象物K)との間に作業者が挟み込まれるのを未然に防止して、作業者の安全を確
保することができるとともに、従前のように作業者は対象物Kまでの距離を過度に配慮す
る必要がなく本来の作業に集中できるため、作業者の負担が減って作業効率を向上させる
ことが可能である。また、本実施形態の安全装置では、作業者が装着する保安用のヘルメ
ットに測距センサ160を取り付けることで、作業者の作業姿勢(例えば、起立した状態
、中腰の状態、屈んだ状態)や、作業者の身長に応じた離隔距離Dを検出することができ
るため、作業者の安全性をより向上させることができる。
【0060】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実
施形態に示したものに限定されない。例えば、作業台40に設けられた測距センサ60と
、作業者のヘルメット190に設けられた測距センサ160とを用いて、作業台40と対
象物Kとの間の離隔距離、作業者と対象物Kとの間の離隔距離、の双方を同時に検出して
、これらの離隔距離と距離閾値とを相互に比較演算した結果に応じて、ブーム30の作動
を規制したり、警報装置56に警報作動を行わせたりする構成であってもよい。このよう
な構成によれば、作業台40の位置、作業者の姿勢、対象物Kの状態等、互いに異なる条
件のもとで作業台40及びこれに搭乗する作業者と対象物Kとの間の相互の離隔距離Dを
その状況に応じて夫々検出することが可能であり、作業台40の移動方向に存在する未知
の対象物Kに対しても臆することなく安全に作業を行うことができる。また、前述したよ
うに、作業者が装着するヘルメット190に測距センサ160を取り付けた場合、作業者
の作業姿勢や身長に応じた正確な離隔距離Dを検出することができるという利点があるが
、その反面で作業者の作業姿勢(例えば、俯き加減に頭部を下方に向けた状態)によって
はヘルメット190に設けられた測距センサ160では測定不能となる場合もあるので、
作業台40及びヘルメット190の双方に測距センサ60,160を設けておくことで、
このような不測の事態を回避することができる。
【0061】
また、上述の第1実施形態では、作業台40の上部開口外縁部の四隅に測距センサ60
が設置(すなわち、測距センサ60が四箇所設置)されているが、これに限定されるもの
ではなく、例えば、作業台40の上部開口内縁部の四隅に測距センサ60を設置したり、
上部開口外縁部に沿って4箇所以上の複数箇所に測距センサ60を設置したりしてもよい
。ここで、測距センサ60の取り付け位置は、作業者が作業台40に乗降する際に邪魔に
ならないように、作業台40の乗降エリアから除くことが好ましい。同様に、上述の第2
実施形態では、作業者のヘルメット190の外表面(頂部、前部、後部、及び左右側部)
の4箇所に測距センサ160が設置されているが、これに限定されるものではなく、例え
ば、ヘルメットの頭頂部に測距センサ160を設置したり、ヘルメット190の鍔部に測
距センサ160を設置したり、ヘルメット190の外表面の周方向に沿って4箇所以上の
複数箇所に測距センサ160を設置したりしてもよい。また、複数箇所に設置された測距
センサ60,160の検出方向は必ずしも鉛直上方向のみに限定されず、例えば、鉛直軸
線に対して複数の方向(斜め上方向)に指向させてもよい。なお、測距センサ60,16
0は必ずしも複数箇所設置する必要はなく、1箇所のみ設置するものであってもよい。
【0062】
また、測距センサ60,160の動作不良時の安全対策として、作業台40の上縁部に
金属製のガード部材を設けて、作業台40が構造物に接近し過ぎた場合でも、このガード
部材によって作業者が構造物に接触するのを防止するようにしてもよい。なお、ガード部
材の高さ(作業台上縁部からの突出量)としては、例えば40センチメートル程度が例示
されるが、作業者の身長等に応じて調節可能(伸縮自在)に構成しても構わない。
【0063】
また、上述の実施形態では、作業者搭乗検出手段として、安全帯係止検出器19や作業
台荷重検出器119を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、作
業者が作業台40に搭乗したことを検出するシート状もしくはマット状の感圧スイッチ、
作業台40内の人間(作業者)を検出する赤外線検出器、等を用いることもできる。なお
、作業者が装着する保安用のヘルメットに非接触ICタグを内蔵し、作業台40にこのI
Cタグの格納情報を読み取り可能なICタグ読取装置(リーダ)を取り付けることで、作
業台40に作業者が搭乗しているか否かを検出するだけではなく、この作業者がヘルメッ
トを装着しているか否かも合わせて検出することができるように構成してもよい。
【0064】
また、作業台40と対象物Kとの間の離隔距離Dが警告距離TD1,TD11以下である
場合、フートスイッチ53が踏む込み操作されていることを条件として、上記実施形態で
例示した警報装置56による警報作動が行われるように構成してもよい。離隔距離Dが警
告距離TD1,TD11以下である場合、上述のように、常に警報装置56による警報作動
を続行させると、作業者に対する危険報知の意義が薄らいだり、警報ブザー音により近隣
迷惑になるおそれもあるため、フートスイッチ53が踏み込み操作されていない状態(フ
ートスイッチ53をオフにした状態)では警報作動を停止することで、作業者に対する注
意喚起を確実なものとするとともに、周囲への騒音防止を図ることができる。またこのと
き、フートスイッチ53が踏み込み操作されたときには、ブーム操作レバー51が操作さ
れていなくても警報作動が行われるので、これからブーム30の作動操作を行おうとする
作業者の安全意識を高めて、安全操作の徹底を図ることができる。
【0065】
また、上述の実施形態では、ブーム操作レバー51を操作することにより、ブーム30
を起伏、伸縮、旋回動自在に作動させているが、操作装置50に通常モードと水平垂直作
動制御モード(「HVモード」と称する)とのいずれか一方を選択操作するためのモード
選択スイッチを設けて、ブーム30を二つの作動制御モードのいずれかに従って作動させ
るものでもよい。なお、通常モードとは、ブーム操作レバー51の操作により各油圧アク
チュエータを単独に或いは同時に作動させることができるモードであり、HVモードとは
、ブーム操作レバー51の操作により各油圧アクチュエータを連動作動させてブーム30
の先端部(作業台40を含む)を水平方向もしくは垂直方向に直線的に移動させることが
できるモードである。ここでモード選択スイッチがHVモードの側に選択されている場合
、作業者は操作レバー51を操作することで、作業台40(ブーム30の先端部)を垂直
上方に直線的に移動させて、通常モードの場合に比して作業台40を目標の対象物K(上
方構造物)に効率的に接近させることができるが、その反面、作業台40を短時間のうち
に対象物Kに接近させ過ぎてしまうおそれがある。このような場合においても、上述の実
施形態の安全装置によれば、HVモードに従ってブーム30を作動させたとしても、作業
台40が意図しない状態で対象物Kに接近し過ぎるのが抑制されるため、高所作業中にお
いて作業台40と上方構造物(対象物K)との間に作業者が挟み込まれるのを未然に防止
して、作業者の安全を確保することができるので有効である。
【0066】
なお、上述の実施形態において、本発明が適用される対象は車体がタイヤ車輪式である
作業車であったが、車体は必ずしもタイヤ車輪式に限定されるものではなく、クローラ装
置等により走行するものであってもよい。或いは軌道走行用車輪を備えて軌道上を走行す
る軌道走行用の作業車、さらにはタイヤ車輪と軌道走行用車輪との両方を備えた軌陸両用
の作業車等であってもよい。
【0067】
また、上述の実施形態において、高所作業車の車体上に取り付けられる昇降装置は、起
伏、伸縮及び旋回動可能な伸縮式のブームを例示して説明したが、例えば屈伸式のブーム
等であってもよく、更には、昇降装置は上記ブームのように作業台を三次元的に移動がで
きるものに限られず、シザースリンク式の昇降装置のように作業台の垂直昇降のみができ
るもの等であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 高所作業車
10 車体
17 フック係止金具(安全帯係止手段、作業者搭乗検出手段)
19 安全帯係止検出器(安全帯係止検出手段、作業者搭乗検出手段)
30 ブーム(昇降装置)
40 作業台
50 操作装置(操作手段)
51 ブーム操作レバー(操作手段)
56 警報装置(警報手段)
60 測距センサ(距離検出手段)
71 バルブ制御部(作動制御手段)
72 記憶部
73 規制判断部(規制判断手段)
74 規制解除部
75 作業者搭乗判定部(作業者搭乗検出手段)
90 安全帯
119 作業台荷重検出器(作業者搭乗検出手段)
160 測距センサ(距離検出手段)
190 ヘルメット
K 対象物
D 離隔距離
OP 作業者
TD 距離閾値(TD1,TD11:第1の距離閾値、TD2,TD12:第2の距離閾値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、
前記車体に昇降自在に取り付けられた昇降装置と、
前記昇降装置に取り付けられて作業者が搭乗可能な作業台と、
前記昇降装置の作動操作を行うための操作手段と、
前記操作手段からの操作信号に基づいて前記昇降装置の作動を制御する作動制御手段と

前記作業台に作業者が搭乗しているか否かを検出する作業者搭乗検出手段と、
前記作業台上方の対象物までの離隔距離を検出する距離検出手段と、
所定の警報作動を行う警報手段と、
前記作業者搭乗検出手段において前記作業台に作業者が搭乗していることが検出された
とき、前記距離検出手段において検出された離隔距離と予め設定された距離閾値とを比較
して、前記離隔距離が第1の距離閾値以下である場合に前記警報手段に警報作動を行わせ
、前記離隔距離が前記第1の距離閾値よりも小さな値の第2の距離閾値以下である場合に
前記作業台を前記対象物に接近させる方向への前記昇降装置の作動を規制する規制判断手
段とを備えて構成されることを特徴とする高所作業車の安全装置。
【請求項2】
前記作業者搭乗検出手段は、前記作業台に搭乗した作業者自身に装着される安全帯と、
前記安全帯が前記作業台に設けられた安全帯係止手段に係止されているか否かを検出する
安全帯係止検出手段とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の高所作業車の安
全装置。
【請求項3】
作業者の装着するヘルメットに前記距離検出手段が設けられ、
前記距離検出手段は前記作業台に搭乗した作業者上方の対象物までの離隔距離を検出す
ることを特徴とする請求項1又は2に記載の高所作業車の安全装置。
【請求項4】
前記作業台に作業者が搭乗したときに、前記作業台に設けられた前記距離検出手段と、
作業者の装着するヘルメットに設けられた前記距離検出手段とにより、前記作業台上方の
対象物までの離隔距離を夫々検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の高所作業
車の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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