説明

高摩擦流体シール及び緩衝器

【課題】高摩擦シール用であって、車両等のサスペンション用の緩衝器に用いることができるダストリップを備えながら、流体リップからの作動流体の洩れ出し問題を解決することができるの高摩擦流体シールを提供する。
【解決手段】流体シールリップ2と、ダストリップ1とを備え、流体シールリップ2によって伸行程で形成される作動流体膜厚より、ダストリップ1によって伸行程で形成される作動流体膜厚が薄くなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体充填側に、この作動流体をシールすべく設けられた流体シールリップと、この流体シールリップの作動流体非充填側(外部側)であって、外部からのダストをシールすべく設けられたダストリップとを備え、高摩擦シール用として用いられる高摩擦流体シールに関する。
【0002】
本発明は、また、作動流体を用いたシリンダー型の緩衝器であって、そのピストンロッドとシリンダ本体との間のシールとして上記高摩擦流体シールを用いた緩衝器に関する。
【背景技術】
【0003】
緩衝器は、通常、シリンダー型のものであって、緩衝器内で作動流体の移動流量を調節することによって、外力を緩衝する役割を持ち、車両のサスペンションや、後部ドアの開閉部分などに用いられている。
【0004】
特許文献1に記載の緩衝器は、そのような緩衝器のうち、車両用サスペンションに用いられるものであり、そのシール構造において、オイルシール(6)(以下、特許文献1で用いられている符号を丸括弧にて示す。)の外周リップ(18)の内面が接触するシリンダー側のロッドガイド(5)のリップ収納用傾斜面(9a)に、変形阻止手段(9b、9c)を設けることで、組立作業に起因したシール不良を回避することができるものである。
【0005】
ここで、この緩衝器に用いられているオイルシール(6)は、本発明の対象である高摩擦流体シールと同様の基本構成である、作動流体(特許文献1では、「作動油」である。)充填側にこの作動流体をシールすべく設けられたオイルリップ(15)と、このオイルリップ(15)の作動油非充填側(外部側)であって、外部からのダストをシールすべく設けられたダストリップ(14)とを備えている。
【0006】
通常、サスペンションに用いられる緩衝器は、この特許文献1のもののように、ロッド(4)先端側が上になるように設けられるもので、そのダストリップ(14)は外部からのダスト(雨水や、場合によっては、雨水溜まりに混入した油等を含む。)の侵入を防ぐ構成となっている。
【0007】
このような構成のダストリップ(14)は、逆に内部からの、オイルリップ(15)の伸行程で形成される油膜の洩れ出しを阻止できないものである。
【0008】
一方、近年、サスペンションとして用いられる緩衝器においては、微低速・微振動に対しては作動流体の緩衝作用では対応することが困難で、十分な減衰力が得られない、という問題があり、流体シールの流体リップとピストンロッドとの間の摩擦力によって、微低速・微振動に対する減衰力を代用する高摩擦シール用の高摩擦流体シールが提案されている。
【0009】
この場合、高摩擦シールの方法としては、作動流体や流体シールの素材の摩擦係数を高くする方法と、流体シールのピストンロッドへの緊迫力(双方の接触面の面圧)を高める方法とがある。
【0010】
しかしながら、いずれの場合も、長時間緩衝器を動かさない状態(駐車時など)で、高摩擦流体シールの流体リップとピストンロッドとの接触面に形成された作動流体膜が押し出され、作動流体膜切れを起こすことがある。
【0011】
また、高摩擦シール用の流体シールにおいては、流体リップとピストンロッドとの間の接触面、つまり、摺動面の滑りが抑えられる程度が高い。
【0012】
従って、これらの理由により、高摩擦流体シールを用いた緩衝器を不作動状態で長時間放置すると、流体リップとピストンロッドが固着し、この状態で、緩衝器を作動させる(車両等を動かす。)と、流体リップとピストンロッドとの接触面の円周上の一部で隙間(口開き)が発生する場合があり、作動流体が洩れ出すことがある。
【0013】
流体リップから洩れ出した作動流体は、ダストリップとの間の空間である流体溜まりに一旦留まるが、上述したように、ダストリップはその内側から外側への作動流体の洩れ出しを防ぐものではないので、この流体リップから洩れ出した作動流体は、ダストリップを通って、徐々に外部側(大気側)に掻き出され、作動流体洩れ(油洩れ)と評価されてしまう。
【0014】
この種の作動流体洩れは、車両を長時間放置後に急に動かした場合にのみ発生し、洩れ出す作動流体も僅かであるので、ピストンロッドの外周に疵が付いて洩れる進行性のある洩れとは異なるが、車両使用者に不安感を与えるので改良が求められていた。
【0015】
図7は、本発明の背景技術であって、この作動流体の洩れ出し防止を可能とするシールを用いたガススプリングを示すもので、(a)はその縦断面図、(b)はそのシールの一部拡大断面図、(c)は(b)の一部拡大断面図である。このガススプリング(緩衝器)は、特許文献2に記載されたものである。
【0016】
このガススプリング50は、上記特徴を備えたシール40を備え、緩衝器の基本構成として、シリンダ本体41、本体側接続部41a、ピストン42、ピストンロッド43、ロッド側接続部43a、ベアリング44及びリテーナ45を備えている。
【0017】
シリンダ本体41内は、ピストン42によって、ガス室Aと流体室Lとに分けられ、このピストン42には、ポート42aが設けられ、ガス室Aの高圧ガスが、ガス室Aと流体室Lとの間で流通可能となっている。
【0018】
このような構成で、このガススプリング50は、図のような姿勢、つまり、本体側接続部41aが上側(後部ドア側)に接続され、ロッド側接続部43aが下側(車体側)に接続されて、ガス室Aの高圧ガスの圧力で、常に、後部ドアが開く方向に付勢し、また、この後部ドアの開閉移動に適度な減衰力を与えている。
【0019】
その特徴とするシール40は、図7(b)に示すように、サブリップ31、メインリップ32、インサートメタル33及び外周リップ34を備え、そのサブリップ31とメインリップ32との間の空間である流体溜まりS′を、インサートメタル33の内側(流体室L側)にメインリップ32を、外側にサブリップ31を設ける事で、従来に比べ、大きな空間としている。
【0020】
また、図7(c)に示すように、サブリップ31のリップ先端は略々台形状に成形され、上面aと側面bと底面cとを有し、上面aとピストンロッド43との間の角度θ1は側面bとピストンロッド43との間の角度θ2より大きく成形し、これによりリップ先端が常に流体溜まりS′内の作動流体を流体溜まりS′方向に掻き戻すようにして作動流体の洩れを防止している(特許文献2の段落[0030])。
【0021】
このような構成により、このガススプリング50によれば、サブリップ31からの作動流体の洩れを防止することができ、また、このサブリップ31側が下方となる姿勢で用いる場合には、外部からのダストや水等の侵入の問題も生じ難いものであった。
【0022】
しかしながら、このようなガススプリング50を、特許文献1に記載の車両用のサスペンション用の緩衝器として逆の姿勢、つまり、サブリップ31が上方となる姿勢で用いる場合には、このサブリップ31は、ダストリップとしての機能、つまり、外部上方からのダストや水の侵入を防止することができず、このようなガススプリング50のシール40は、サスペンション用の緩衝器には、使うことができなかった。
【特許文献1】特開2006−17161号公報(図1、図3の変形阻止手段としての粗面9b、図4の変形阻止手段としての突条9c)
【特許文献2】特開2002−286067号公報(図1〜図3のシール19、及び、そのサブリップ23)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、上記問題を改善しようとするもので、高摩擦シール用であって、車両等のサスペンション用の緩衝器に用いることができるダストリップを備えながら、流体リップからの作動流体の洩れ出し問題を解決することができるの高摩擦流体シール、及び、この高摩擦流体シールを備えた緩衝器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の高摩擦流体シールは、作動流体充填側に、この作動流体をシールすべく設けられた流体シールリップと、この流体シールリップの作動流体非充填側(外部側)であって、外部からのダストをシールすべく設けられたダストリップとを備え、高摩擦シール用として用いられる高摩擦流体シールであって、
前記流体シールリップによって伸行程で形成される作動流体膜厚より、前記ダストリップによって伸行程で形成される作動流体膜厚が薄くなるようにしたことを特徴とする。
【0025】
本発明の緩衝器は、上記高摩擦流体シールを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の高摩擦流体シールによれば、流体シールリップによって伸行程で形成される作動流体膜厚より、前記ダストリップによって伸行程で形成される作動流体膜厚が薄くなるようにしたので、高摩擦シール用であって、車両等のサスペンション用の緩衝器に用いることができるダストリップを備えながら、流体リップからの作動流体の洩れ出し問題を解決することができる。
【0027】
本発明の緩衝器は、上記高摩擦流体シールを備えたので、その効果を緩衝器として発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の基本思想と実施の形態とについて、図面を用いて説明する。
<流体シールの基本原理と本発明の基本思想>
図1(a)は、本発明の高摩擦流体シールの基礎となる基本的構成の流体シールの一例の上半分を示す断面図、(b)は(a)の基本原理の説明に用いる式1を示す図、(c)は(a)の使用状態における流体リップの勾配面と、面圧分布と最大面圧勾配との間の関係を示す説明図、(d)は(a)のダストリップの拡大断面図、(e)は(c)の使用状態におけるダストリップの勾配面と、面圧分布と最大面圧勾配との間の関係を示す説明図である。
【0029】
まず、この図1により、本発明の高摩擦流体シールの発明思想の基礎となる流体シールの基本原理を説明する。
【0030】
図1(a)の流体シール30は、車両等のサスペンション用の緩衝器に用いられるもので、外部からのダスト(雨水や、場合によっては、雨水溜まりに混入した油等を含む。)をシールするダストリップ21と、ダストリップ21の作動流体側に設けられ内部の作動流体をシールする流体シールリップ22と、これらのリップ21、22を支持するインサートメタル23と、インサートメタル23の外周側の外周リップ24とを備えている。
【0031】
流体シールリップ22の外周側には、この流体シールリップ22のピストンロッド13(図中、二点鎖線の想像線で示す。図6参照。)に対する緊迫力を調整するためのガータスプリング25が設置されている。また、インサートメタル23の作動流体充填側面の外周リップ24と流体シールリップ22との半径方向の中間位置には、緩衝器側の連結部15c(図6参照。)の上面に接触、屈曲する補助リップ26が設けられている。
【0032】
ここで、図1(a)に示したように、流体シールリップ22の作動流体側の勾配面を流体シールリップ流体側勾配面22a、同ダストリップ21側の勾配面を流体シールリップダスト側勾配面22b、ダストリップ21の流体シールリップ22(作動流体)側の勾配面をダストリップ流体側勾配面21a、同作動流体非充填側の勾配面をダストリップ外部側勾配面21bと称する。
【0033】
なお、ダストリップ21のダスト側勾配面21bに続く傾斜部分を上傾斜部21d、この上傾斜部21dがインサートメタル23の外部側面に固着される部分を固着部21eと称する。なお、符号Mは、高摩擦流体シール10の軸中心線である。
【0034】
また、流体シールリップ流体側勾配面22a、流体シールリップダスト側勾配面22b、ダストリップ流体側勾配面21a及びダストリップ外部側勾配面21bと、これらのリップ22、21がシールすべきピストンロッド13の当接面(ロッド軸芯)との間の角度を、それぞれ、流体シールリップ流体側勾配角α1、流体シールリップダスト側勾配角α2、ダストリップ流体側勾配角α3及びダストリップ外部側勾配角α4と称する。
【0035】
また、流体シールリップ22とダストリップ21との間に、装着すべきピストンロッド13に対して形成される空間を流体溜まりSとする。
【0036】
ここで、上記の各勾配角α1〜α4の間には、次の関係が成立するようになっている。
【0037】
関係1:流体シールリップ流体側勾配角α1が流体シールリップダスト側勾配角α2より大きいという関係
関係2:ダストリップ外部側勾配角α4がダストリップ流体側勾配角α3より大きいという関係
このような関係1、関係2があることの理由を説明する。
【0038】
図1(c)に流体シールリップ22の使用状態、つまり、緩衝器のピストンロッド13に装着された状態の拡大図と、その接触面での面圧分布MB1とを示す。
【0039】
図に示す様に、面圧分布MB1は山状であり、最大面圧勾配は山のピークの両側に有る。作動流体膜厚hは、常に、作動流体を引き込む側の面圧勾配で決まる。従って、シール30を固定して考え、ピストンロッド13が右方向(作動流体非充填方向)に移動する場合を伸行程とすれば。伸行程の流体側伸行程流体膜厚h1は面圧のピークの左側の流体シールリップ流体側最大面圧勾配θ1で決まり、圧行程の流体側圧行程流体膜厚h2は面圧のピークの右側の流体シールリップ流体側勾配面角度θ2で決まる。
【0040】
流体シールリップ22の作動流体洩れのメカニズムは以下の様に説明できる。
【0041】
(1)洩れとは、伸行程で発生する流体側伸行程流体膜厚h1が圧行程で発生する流体側圧行程流体膜厚h2より厚い場合に、作動の繰り返しに依って、掻き出された流体膜が堆積した状態のことである。
【0042】
ここで、伸び行程で発生する作動流体の流体側伸行程流体膜厚h1は、リップ22がピストンロッド13を通過した後に、ピストンロッド13の外周表面に形成される作動流体の膜厚であるので、形成膜厚h1とも称される。
【0043】
また、圧行程で発生する作動流体の流体側圧行程流体膜厚h2は、ピストンロッド13の外周表面に形成されている作動流体膜を作動流体充填側に取り込むことのできる膜厚を意味するので、取込膜厚h2とも称される。
【0044】
(2)従って、作動流体の洩れを防止するには、伸行程で発生する流体側伸行程流体膜厚(形成膜厚)h1を圧行程で発生する流体膜厚h2(取込膜厚)より薄くするか、少なくともほぼ同等にする必要がある。
【0045】
(3)流体膜厚は図1(b)の式1で求められる。ここで、h:流体膜厚、μ:作動流体粘度、V:リップの当接面(この例では、ピストンロッド)の速度である。
【0046】
流体洩れが発生しない条件は、上述したように伸行程の形成膜厚h1を圧行程の取込膜厚h2以下にすることであり、面圧勾配で言えば伸行程の最大面圧勾配θ1を、圧行程の最大面圧勾配θ2より大きく設定することである。
【0047】
その簡単な設定方法は図1(c)に示す通りである。流体シールリップ22は非使用状態で、三角形状の断面をしており、左側が作動流体充填側であり、右側が作動流体非充填側(外部側)であり、左側から右側への作動流体の洩れを防止するものとする。
【0048】
ロッドの軸線つまりリップ22の当接面とリップ22の左側の勾配面22aとの成す角度を流体シールリップ流体側勾配面角度α1、右側の勾配面22bと成す角度を流体シールリップダスト側勾配面角度α2とし、α1>α2とすると、使用状態の勾配面は勾配面22a′、22b′(以下、非使用状態の勾配面に対して使用状態の勾配面に対しては、その符号に「′」を付加する。)となり、発生する面圧分布MB1は図1(c)の様になり、面圧のピークが左側(作動流体充填側)に偏った非対称の形状になる。
【0049】
そして、左側の最大面圧勾配θ1が右側の最大面圧勾配θ2に比べて大きくなり、これにより、洩れが防止できる。これが、一般に流体シール30の流体シールリップ2において、関係1が成立するようにしている理由である。
【0050】
この原理をダストリップ21に適用したのが、図1(d)、(e)であり、このダストリップでは、ダストリップ外部側勾配面角度α4が同ダストリップ流体側勾配面角度α3より大きくなっており、その結果、図1(e)に示すように、面圧分布MB2が右側(外部側)へ偏った山形形状となり、ダストリップ外部側最大面圧勾配θ4が、ダストリップ流体側最大面圧勾配θ3より大きくなっている。
【0051】
この結果、ダストリップ21においては、ダスト側伸行程流体膜厚(形成膜厚)h3より、ダスト側圧行程流体膜厚(取込膜厚)h4が小さくなっており、それにより、外部からのダストの侵入を防いでいるのである。これが、一般に流体シール30の流体ダストリップ1において、関係2が成立するようにしている理由である。
【0052】
しかしながら、このようなダストリップ1を備えた高摩擦流体シール10を車両等のサスペンションの高摩擦シール用のオイルシールとして用いた場合に、この基本構成の流体シール30が示すように形成膜厚h3と流体シールリップ22の形成膜厚h1との関係に留意がされず、形成膜厚h3が形成膜厚h1より大きくなっている場合(通常、ダストリップ21の効果をより高めるためにそのようになっている。)、長時間放置後に流体シールリップ22側から洩れ出した作動流体膜を通過させることとなる。
【0053】
このようなダストリップ21の勾配面21a、21bの形状は、外部からのダスト(雨水や、場合によっては、雨水溜まりに混入した油等を含む。)の侵入を防ぐという目的には適したものであるが、高摩擦シール用として用いた場合には、上記のような不都合を生じることとなっていた。
【0054】
そこで、本出願人は、従来、注目されていなかった流体側伸行程流体膜厚h1とダスト側伸行程流体膜厚h3との関係に着目し、流体シールリップ、ダストリップの基本的な特性、つまり、流体シールについては流体側伸行程流体膜厚h1より流体側圧行程流体膜厚h2を大きくし、ダストリップについてはダスト側圧行程流体膜厚h4よりダスト側伸行程流体膜厚h3を大きくするという条件を維持しながら、まず、流体側伸行程流体膜厚h1よりダスト側伸行程流体膜厚h3を小さくするということを着想したものである。
【0055】
このようにすると、それぞれのリップの基本的特性を保持しながら、伸行程において流体シールリップで流体側伸行程流体膜厚h1の流体膜が形成されたとしても、その流体膜のうち、ダストリップではダスト側伸行程流体膜厚h3の流体膜だけが許可形成され、このダスト側伸行程流体膜厚h3を十分薄いものとしておけば、ダストリップより外部側のピストンロッドに形成される流体膜h3は堆積する前に蒸発あるいは散逸して使用者の認識できるものではないようにすることができる。
【0056】
つまり、流体側伸行程流体膜厚h1よりダスト側伸行程流体膜厚h3を小さくした高摩擦流体シール(第1発明)によれば、高摩擦シール用であって、車両等のサスペンション用の緩衝器に用いることができるダストリップを備えながら、流体リップからの作動流体の洩れ出し問題を解決することができる。
【0057】
また、この第1発明は、流体をシールする目的の流体シールリップと、ダストをシールする目的のダストリップを備えた流体シールに関して、それぞれの目的だけを達成するように個別に関心が払われていたのを、ダストリップにも、新たに、作動流体のシールに参加させることを着想して、双方のリップの協働で高摩擦シールとして機能する、つまり、双方のリップを組み合わせたシールシステムとして、この高摩擦流体シールに到達したものである。
【0058】
そして、このことは、他の諸条件、例えば、流体シールリップとダストリップとが接触する当接面を構成するピストンロッドへの締め代を妥当なものとすると、上記膜厚原理を双方のリップに共通して適用することができ、結果、流体シールリップ流体側最大面圧勾配よりダストリップ流体側最大面圧勾配を大きくすること(第2発明)に帰着し、その効果も上記と同様である。
【0059】
更に、このことは、同様の諸条件が満足されるとして、使用状態において、流体シールリップ流体側勾配面角度よりダストリップ流体側勾配面角度を大きくすること(第3発明)に帰着し、その効果も上記と同様である。
<実施形態1>
図2は、本発明の高摩擦流体シールの一例を示す図である。
【0060】
この高摩擦流体シール10は、上記本発明の基本思想の第3発明を具現化したものであり、図1の高摩擦流体シール10と同様に、車両等のサスペンションとして用いられる緩衝器30に用いられるものである。
【0061】
高摩擦流体シール10は、図1の流体シール30と同様の産業上の利用分野における高摩擦シール用として用いられ、基本構成として、流体シール30のダストリップ21、流体シールリップ22、インサートメタル23、外周リップ24、ガータスプリング25及び補助リップ26に対応するダストリップ1、流体シールリップ2、インサートメタル3、外周リップ4、ガータスプリング5及び補助リップ6を備えている。
【0062】
なお、高摩擦流体シール10は、図1の流体シール30の上傾斜部21d、固着部21eに相当する上傾斜部1d、固着部1eを備えている。なお、符号Mは、高摩擦流体シール10の軸中心線Mであり、緩衝器30への装着後は、そのピストンロッド13の軸中心線と一致するものである。
【0063】
それぞれのリップ1、2の勾配面を同様に、ダストリップ流体側勾配面1a、ダストリップ外部側勾配面1b、流体シールリップ流体側勾配面2a及び流体シールリップダスト側勾配面2bと称する。
【0064】
また、各勾配面の角度を同様に、流体シールリップ流体側勾配角β1、流体シールリップダスト側勾配角β2、ダストリップ流体側勾配角β3及びダストリップ外部側勾配角β4と称する。
【0065】
この高摩擦流体シール10が、図1の流体シール30に比べて異なるのは、流体シールリップ流体側勾配面角度β1よりダストリップ流体側勾配面角度β3を大きくした点にある。
【0066】
また、これに対応して、ダストリップ1は、インサートメタル3の外部側から、ピストンロッド13へ向けて、ほぼ直下に伸びた、流体シールリップ2の形状と同様の三角形状となっており、ダストリップ1の剛性・撓み性に影響を与える長さが短いものとなっている。
【0067】
このようにすると、使用状態における流体シールリップ流体側勾配面角度よりダストリップ流体側勾配面角度が大きくなり、基本思想の第3発明の効果をより具体的に発揮することができる。また、このことは、第2発明、第1発明の効果も発揮することができるということである。
【0068】
なお、このダストリップ1は、その長さが短いので、緩衝器のピストンロッドの半径方向の振動、つまり、横振動の少ない場合に適用可能である。また、ダストリップ外部側勾配角β4をあまり大きく取ることができないので、通常に比べダストシール効果があまり要請されない産業分野に適用可能である。
<実施形態2>
図3(a)は、本発明の高摩擦流体シールの他例の上半分を示す断面図、(b)は(a)のダストリップの拡大断面図、(c)は(b)の使用状態図、(d)は(b)のダストリップの勾配面と、面圧分布と面圧勾配との間の関係を示す説明図である。これよりすでに説明した部分と同じ部分には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0069】
この高摩擦流体シール10Aは、図2の高摩擦流体シール10に比べ、ダストリップ1Aの全体形状が、図1の流体シール1のダストリップ21と共通している点が異なっている。
【0070】
加えて、ダストリップ1Aは、その先端内側に高勾配面1cを設け、図3(a)に示すように、高勾配面1cと当接面(ピストンロッド13)との間の高勾配面角度β7が、ダストリップ1Aの内側の全体的な勾配面1fと前記当接面と間の角β5より大きく、かつ、これにより、流体シールリップ2の流体側勾配面角度β1より大きくなるようにして、流体シールリップ2によって伸行程で形成される作動流体膜厚h1より、ダストリップ1Aの伸行程で形成される作動流体膜厚h3が薄くなるようにしたものである。
【0071】
高摩擦流体シール10Aは、上記特徴点を除いては、図2の高摩擦流体シール10と共通し、ダストリップ1Aについては、その基本的形状が、上記高勾配面1cを設けるために、関連するダストリップ1Aの先端部分の形状が異なっている。
【0072】
つまり、高摩擦流体シール10Aのダストリップ1Aは、図1の流体シール1のダストリップ21が備えるダストリップ流体側勾配面21a、ダストリップ外部側勾配面21b、上傾斜部21d及び固着部21eと同様の、ダストリップ流体側勾配面1a、ダストリップ外部側勾配面1g、上傾斜部1h及び固着部1eを備えている。
【0073】
ダストリップ流体側勾配面1aの先端部分が、変曲点を介して高勾配面1cに連続している。高勾配面1cは、ダストリップ1Aの先端部分に断面R状の突部分1tを形成しながら、ダストリップ外部側勾配面1gに連続している。
【0074】
なお、この勾配面1cとダストリップ外部側勾配面1gとを連結する断面R状の突部分1tは、図1の流体シール30のダストリップ1のダストリップ流体側勾配面21aとダストリップ外部側勾配面21bとを連結する部分に対応する部分であるが、このダストリップ1Aにおいては、ダストリップ流体側勾配面1fの先端部分に高勾配面1cを設けるために、結果的に形成された突部分である。
【0075】
ダストリップ流体側勾配面1a、ダストリップ外部側勾配面1g及び高勾配面1cと、シールすべきピストンロッド13の当接面(ロッド軸芯)との間の角度を、それぞれ、ダストシールリップ流体側勾配角β5、ダストシールリップダスト側勾配角度β6及び高勾配面角度β7と称する。
【0076】
この高摩擦流体シール10Aの非使用状態の各勾配角度の関係は、図3(a)から解るように、ダストリップ流体側勾配面角度β5は流体シールリップ流体側勾配面角度β1より小さいが、高勾配面角度β7は流体シールリップ流体側勾配面角度β1より大きくなっているという関係である。
【0077】
また、それぞれの流体シールリップ2、ダストリップ1Aの基本的機能を果たすように、流体シールリップ流体側勾配面角度β1>流体シールリップダスト側勾配面角度β2、高勾配面角度β7<ダストリップ外部側勾配面角度β6となっている。
【0078】
このような構成の高摩擦流体シール10Aを、緩衝器20に装着すると、図3(c)のようにダストリップ1Aが変形し、その状態のダストリップ1Aとピストンロッド13との接触部分の拡大断面図と面圧分布とが図3(d)に示すものである。
【0079】
また、図1の流体シール30のダストリップ21に比べ、よりピストンロッド13の軸方向に短い突部分1tだけが使用状態でロッド13に接触して変形し、この突部分1tを形成する高勾配面1cに連続するダストリップ流体側勾配面1fはロッド13に接触しないので、ダストリップ1Aとピストンロッド13とはより軸方向に短い接触部分で接触し、これによりダストリップ1Aの突部分1tだけが面圧分布に関与し、図3(d)に示すような面圧分布MB3を発生させる。
【0080】
この結果、ダストリップ流体側最大面圧勾配θ7は、流体シールリップ流体側最大面圧勾配θ1より格段に大きくなり、これにより、流体側伸行程流体膜厚h1よりダスト側伸行程流体膜厚h3が一桁オーダーで小さくなるという結果が得られる。
【0081】
また、面圧分布MB3が、わずかではあるが、全体に図1右側(外部側)に偏った山形となり、ダストリップ外部側最大面圧勾配θ6がダストリップ流体側最大面圧勾配θ7より大きく、ダストリップとしての機能も果たしていることが解る。
【0082】
したがって、この高摩擦流体シール10Aによれば、上述した第1発明、第2発明及び第3発明の効果を発揮することができる。
【0083】
また、ダストリップ1Aの形状は、高勾配面1c部分を除けば、ほとんど、図1の流体シール30のダストリップ21と同じ形状であるので、同様な、横振幅への強度を発揮することができる。
【0084】
ダストリップの素材のゴム材料は粘弾性材料である為に、長期的にはヘタリ現象が本質的に発生するが、ダストリップ先端部でヘタリが発生すると、一般に面圧も面圧勾配も初期値に対して低下し、流体膜厚も厚くなる。
【0085】
しかし、本発明の場合は、突部分1tだけでピストンロッド13と接触するので、元々の面圧分布の値を高く設定でき、材料のヘタリが発生しても、流体膜堰き止め機能を安定して発生させることができる。
【0086】
つまり、この高摩擦流体シール10Aによれば、ダストリップ1Aに高勾配面1cを設けたことで、上述した第1発明、第2発明及び第3発明の効果を発揮することができることに加え、基本構成の流体シールのダストリップの機能を維持しながら、かつ、材料のヘタリにより強くなるという効果を発揮することができる。
<実施形態3>
図4(a)、(b)、(c)は本発明の高摩擦流体シールの他例のダストリップ部分を示す断面図、図5(a)、(b)は本発明の高摩擦流体シールの他例のダストリップの先端部分を示す拡大断面図である。
【0087】
図4(a)の高摩擦流体シール10Bは、図3の高摩擦流体シール10Aに比べ、ダストリップ1Bの外周部分にガータスプリング7が設置され、これに対応して、ダストリップ外部側勾配面1nのピストンロッド13への接触側に先端部分へ向けた小傾斜面1iが設けられ、上傾斜部1jが、前記図ガータスプリング7を嵌め受ける形状となっている点が異なっている。
【0088】
これらの小傾斜面1iとシールすべきピストンロッド13の当接面(ロッド軸芯)との間の角度を、それぞれ、小傾斜面角度β8と称する。
【0089】
このような、ダストリップ1Bにガータスプリング7を設けた高摩擦流体シール10Bによれば、図3の高摩擦流体シール10Aの効果に加え、ダストリップ1Bの締め付け力を追加し、ヘタリに依るリップ1Bの締め付け力低下を補償することができる。
【0090】
図4(b)の高摩擦流体シール10Cは、図3の高摩擦流体シール10Aに比べ、ダストリップ1Cが、その内側に段凹面1kを備えた流体側勾配面2段構成となっており、これに対応して、より内側の奥勾配面1pが図3のダストリップ流体側勾配面1fに比べ、少し、大きくなっている点が異なっている。
【0091】
これらの段凹面1k及び奥勾配面1pとシールすべきピストンロッド13の当接面(ロッド軸芯)との間の角度を、それぞれ、段凹面勾配角度β10及び奥勾配面角度β9と称する。
【0092】
このような、ダストリップ1Cを流体側勾配面内側2段構成とした高摩擦流体シール10Cによれば、リップ1Cの先端の撓みやすさが増し、ダストリップ1Cの横振動追従性を向上させることができる。
【0093】
図4(c)の高摩擦流体シール10Dは、図4(a)の高摩擦流体シール10Bと図4(b)の高摩擦流体シール10Cとの構成を兼ね備えたものであり、双方の効果を相乗的に発揮することができる。
【0094】
図5(a)の高摩擦流体シール10Eは、図3の高摩擦流体シール10Aに比べ、そのダストリップ1Eの先端部分を全面的な断面R状の突部分とせず、内側に直線面1nを備えた突部分1qとした点が異なっている。
【0095】
また、図5(b)の高摩擦流体シール10Fは、図4(a)の高摩擦流体シール10Bに比べ、そのダストリップ1Fの先端部分を、図5(a)と同様の直線面1nを備えた突部分1rとした点が異なっている。
【0096】
また、このダストリップ1Fでは、図4(a)のダストリップ1Bと同様に、先端部分の形状としては、外部側にもR状面の代わりに直線状面の小傾斜面1iとなっている。
【0097】
つまり、上記、高摩擦流体シール10E、10Fは、いずれも、ダストリップ1E、1Fの高勾配面が直線面1nとなっていて、リップ先端部分が全面的な断面R状ではないものであり、このような構成であっても、これらの高摩擦流体シール10E、10Fは、いずれも対応する高摩擦流体シール10A、10Bと同様の効果を発揮することができる。
【0098】
なお、いずれのダストリップ1E、1Fの場合も、図上では、先端部分に微小R部分があるが、これは、ゴム材料で一体成形される流体シールの成形加工上、不可避的に設けざるを得ないものであり、また、リップの当接面への軸方向接触位置が全円周に渡って同じようにして、シール性を向上させるためのものである。
<実施形態4>
図6は、図3(a)の高摩擦流体シールを用いた緩衝器の一例を示す縦断面図である。
【0099】
この緩衝器20は、シリンダ本体11と、不図示のピストンを備えたピストンロッド14と、シリンダ本体11の開口側に設けられ、ピストンロッド14を摺動自在に案内するロッドガイド15とを備え、高摩擦流体シール10Aはこのロッドガイド15の上端とシリンダ本体11の上部との間に締付固定されている。
【0100】
シリンダ本体11は、同芯に配設さたアウターチューブ11bとインナーチューブ11aとを備え、インナーチューブ11aの開口端部と、アウターチューブ11bの開口端部内周との間にロッドガイド15が設けられている。
【0101】
このロッドガイド15の上面にオイルシール10Aが載置され、アウターチューブ11bの上端部を内側に折り曲げることによってアウターチューブ11b、オイルシール10a及びロッドガイド15が一体的にかしめ固定されている。
【0102】
このアウターチューブ11b内周とインナーチューブ11a外周との間に形成されたガス室A内には高圧ガスが封入されている。インナーチューブ11aの内周とピストンロッド14との間は、作動流体が封入されている流体室Lとなっている。
【0103】
ロッドガイド15は、一枚の金属板をプレス成形することによって形成され、外周面がインナーチューブ11aの内周面に圧入される内側支持部15aと、同じく外周面がアウターチューブ11b内周面に圧入される外側支持部15bと、これら両支持部15a、15bを連結すると共に下面でインナーチューブ11aの開口端部と当接してロッドガイド15の位置決めを行う連結部15cとを備えている。
【0104】
内側支持部15aは、その内周面がピストンロッド14を案内する案内部分となっており、この案内部分に圧入固定された耐磨耗性を有する環状のブッシュ16を介してピストンロッド14が摺動自在に案内されるようになっている。
【0105】
連結部15cは、その上面外周部に環状の突状15dが設けられており、この突状15dの上面にオイルシール10Aのインサートメタル3を載置することで、オイルシール10Aがロッドガイド15に対して正規の位置に位置決めされるようになっている。
【0106】
この緩衝器20は、上記の基本構成を備え、不図示の流量調整手段により充填された作動流体の流量を調整することでピストンの移動を調整して緩衝機能を発揮する。加えて、この緩衝器20は、上記の特徴を有する高摩擦流体シール10Aを備えているので、この高摩擦流体シール10Aの効果を緩衝器20として発揮することができる。
【0107】
また、本発明の高摩擦流体シール及び緩衝器は、上記の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。
【0108】
また、作動流体とは、作動油、緩衝器の作動流体としての適性を備えた水を含む液体、高分子液体や、ガスと液体の混合物などを含むものである。
【0109】
本発明の高摩擦流体シールは、ここに例示した緩衝器に限られず、同様の解決課題を有する他の流体圧機器に使用することができるものであり、また、緩衝器も、車両等のサスペンションに限られず、同様の解決課題のある部分に使用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の高摩擦流体シールは、高摩擦シール用であって、車両等のサスペンション用の緩衝器に用いることができるダストリップを備えながら、流体リップからの作動流体の洩れ出し問題を解決することが要請される産業分野に用いることができる。
【0111】
本発明の緩衝器は、その高摩擦流体シールが上記要請を受ける場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】(a)は、本発明の高摩擦流体シールの基礎となる基本的構成の流体シールの一例の上半分を示す断面図、(b)は(a)の基本原理の説明に用いる式1を示す図、(c)は(a)の使用状態における流体リップの勾配面と、面圧分布と最大面圧勾配との間の関係を示す説明図、(d)は(a)のダストリップの拡大断面図、(e)は(c)の使用状態におけるダストリップの勾配面と、面圧分布と最大面圧勾配との間の関係を示す説明図
【図2】本発明の高摩擦流体シールの一例を示す図
【図3】(a)は、本発明の高摩擦流体シールの他例の上半分を示す断面図、(b)は(a)のダストリップの拡大断面図、(c)は(b)の使用状態図、(d)は(b)のダストリップの勾配面と、面圧分布と面圧勾配との間の関係を示す説明図
【図4】(a)、(b)、(c)は本発明の高摩擦流体シールの他例のダストリップ部分を示す断面図
【図5】(a)、(b)は本発明の高摩擦流体シールの他例のダストリップの先端部分を示す拡大断面図
【図6】図3(a)の高摩擦流体シールを用いた緩衝器の一例を示す縦断面図
【図7】本発明の背景技術であるシールを用いたガススプリングを示すもので、(a)はその縦断面図、(b)はそのシールの一部拡大断面図、(c)は(b)の一部拡大断面図
【符号の説明】
【0113】
1〜1F ダストリップ
1a、1f、1p ダストリップ流体側勾配面
1b、1g、1i ダストリップ外部側勾配面
1c 高勾配面
1q、1r、1t 突部分
1k 段凹面
2 流体シールリップ
2a 流体シールリップ流体側勾配面
2b 流体シールリップダスト側勾配面
10〜10F 高摩擦流体シール
11 シリンダ本体
13 ピストンロッド
20 緩衝器
h1 流体側伸行程流体膜厚
h2 流体側圧行程流体膜厚
h3 ダスト側伸行程流体膜厚
h4 ダスト側圧行程流体膜厚
θ1 流体シールリップ流体側最大面圧勾配
θ2 流体シールリップダスト側最大面圧勾配
θ3 ダストリップ流体側最大面圧勾配
θ4 ダストリップ外部側最大面圧勾配
θ6 ダストリップ外部側最大面圧勾配
θ7 ダストリップ流体側最大面圧勾配
β1 流体シールリップ流体側勾配面角度
β2 流体シールリップダスト側勾配面角度
β3 ダストリップ流体側勾配面角度
β4 ダストリップ外部側勾配面角度
β5 ダストリップ流体側勾配面角度
β6 ダストリップ外部側勾配面角度
β7 高勾配面角度
β8 小傾斜面角度
β9 奥勾配面角度
β10 段凹面勾配角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体充填側に、この作動流体をシールすべく設けられた流体シールリップと、この流体シールリップの作動流体非充填側(外部側)であって、外部からのダストをシールすべく設けられたダストリップとを備え、高摩擦シール用として用いられる高摩擦流体シールであって、
前記流体シールリップによって伸行程で形成される作動流体膜厚より、前記ダストリップによって伸行程で形成される作動流体膜厚が薄くなるようにしたことを特徴とする高摩擦流体シール。
【請求項2】
流体シールリップの作動流体充填側の最大面圧勾配より、ダストリップの前記流体シールリップ側の最大面圧勾配を大きくすることによって、前記流体シールリップによって伸行程で形成される作動流体膜厚より、前記ダストリップによって伸行程で形成される作動流体膜厚が薄くなるようにしたことを特徴とする請求項1記載の高摩擦流体シール。
【請求項3】
流体シールリップの作動流体充填側の勾配面と前記流体シールリップが当接する当接面との間の角度より、ダストリップの前記流体シールリップ側の勾配面と前記当接面との間の角度を大きくすることによって、前記流体シールリップによって伸行程で形成される作動流体膜厚より、前記ダストリップによって伸行程で形成される作動流体膜厚が薄くなるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の高摩擦流体シール。
【請求項4】
ダストリップの先端内側に高勾配面を設け、前記高勾配面と当接面との間の角度が、前記ダストリップの内側の全体的な勾配面と前記当接面と間の角度より大きくなるようにして、流体シールリップによって伸行程で形成される作動流体膜厚より、前記ダストリップの伸行程で形成される作動流体膜厚が薄くなるようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の高摩擦オイルシール。
【請求項5】
作動流体を用いたシリンダー型の緩衝器であって、
そのピストンロッドとシリンダ本体との間のシールとして、請求項1から4のいずれか記載の高摩擦流体シールを用いたことを特徴とする緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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