説明

高放電容量のリチウム・バッテリ

高い放電容量をもつリチウム/二硫化鉄電気化学バッテリ・セルである。セルは、リチウム負極と、二硫化鉄正極と、非水性電解質とを有する。正極の二硫化鉄は、電気化学セルが低定格用途と高定格用途との両方において所望の特性を呈することを可能にする、制御された平均粒径範囲を有する。種々の実施形態において、二硫化鉄粒子は、正極への取り込みのために二硫化鉄粒子を所望の平均粒径範囲に減少させる、好ましくはメディア・ミルを用いて、又は、ジェット・ミルのような非機械的ミルを用いてウェット・ミルされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学バッテリ・セル、特に、リチウム負極と二硫化鉄正極とを有するセルに関する。一実施形態においては、正極は、電気化学セルが低定格用途と高定格用途の両方にとって望ましい特性を呈することを可能にする特定の小さい平均粒径範囲を有する二硫化鉄粒子を含む。二硫化鉄粒子は、その粒径を所定の寸法範囲に減少させるウェット法又はドライ法によって形成される。本発明の好ましい方法においては、二硫化鉄粒子を含むカソード・スラリーは、二硫化鉄粒子を正極への取り込みにとって望ましい平均粒径範囲に減少させるメディア・ミルを用いてミルされる。さらに好ましい実施形態においては、二硫化鉄粒子は、正極に取り込まれる前にジェット・ミルを用いて処理される。
【背景技術】
【0002】
リチウム・バッテリ(負極活性材料として金属リチウムを含むバッテリ)は、作動にハイパワーを必要とする電子装置のためのポータブル電源として、ますます普及してきている。一般消費者向けのリチウム・バッテリには、リチウム/二酸化マンガン(Li/MnO2)バッテリ、及び、リチウム/二硫化鉄(Li/FeS2)バッテリがあり、それらはそれぞれ、セル当たり3.0ボルト及び1.5ボルトの公称電圧を有する。
バッテリ製造業者らは、より放電容量の大きいバッテリを設計するべく努力し続けている。これは、シールとベントを含むハウジングがセル内で占領する体積を最小にして、活性材料のために利用可能な内部体積を最大にすることによって達成される。しかしながら、最大内部体積に対する実際的な制限が常に存在することになる。
別の手法は、内部セル設計及び材料を、放電容量が増加するように修正することである。これをいかにして上手く達成するかは、少なくともある程度は、バッテリによって動力を供給される装置の放電要求にかかっている。ローパワーを要求する装置については、活性材料の量が非常に重要となる傾向があり、一方、ハイパワーを要求する装置については、放電効率がより重要となる傾向がある。ハイパワー装置には、ハイパワー放電での優れた放電効率が可能であることから、リチウム・バッテリがしばしば用いられる。
【0003】
一般に、バッテリの放電効率は、放電パワーの増加と共に急速に減少する。したがって、ハイパワーを与えるためには、高い放電効率を与えることが優先事項である。これは、より少ない活性材料を含む設計を用いることを意味する場合が多く、そのため、ローパワー及び低定格放電における容量を犠牲にする。例えば、良好なハイパワー放電効率のためには、電極の体積に対して負極(アノード)と正極(カソード)との間の界面表面積が大きいことが望ましい。これは、比較的長く薄い電極ストリップが互いにコイル状に巻かれる、らせん状に巻かれた電極組立体を用いることによって達成される場合が多い。電極組成物が高い電気伝導性を有していない限り、こうした長く薄い電極は、典型的には、電極ストリップの長さ及び幅の大部分に沿って延びる集電体を必要とする。電極の大きい界面表面積はまた、正極及び負極を互いから電気的に絶縁するために、より多くのセパレータ材料を必要とすることを意味する。産業標準、又は、装置のバッテリ区画の寸法及び形状のいずれかによって、セルについての最大外寸がしばしば設定されるため、電極界面表面積の増加はまた、使用される活性電極材料の量を減らさなければならないことを意味する。
【0004】
ハイパワー使用とローパワー使用との両方を対象としたバッテリについては、ハイパワー性能を最大にするためにセルの活性材料の投入量を減らすことは、ハイパワー使用のみを対象としたバッテリの場合よりも望ましさは低い。例えば、AAサイズ1.5ボルトLi/FeS2(FR6サイズ)バッテリは、写真用閃光球及びデジタルカメラのようなハイパワー用途における使用、並びに、ローパワー装置にしばしば用いられるAAサイズ1.5ボルトアルカリZn/MnO2バッテリに対する一般的な置き換えを対象としている。こうした場合には、ハイパワー放電効率とセル投入容量との両方を最大にすることが重要である。あらゆるセルにおいて電極投入容量を最大にすることが一般に望ましいが、そうすることの相対的な重要さは、ローパワー使用のためのセルの方が大きい。
【0005】
セルにおける活性材料の投入量を最大にし、電極界面表面積の増加のそれに対する影響を軽減するために、できるだけセル内で占める内部体積が小さいセパレータ材料を用いることが望ましい。そうすることには実際的な制限がある。セパレータは、損傷することなくセル製造プロセスに耐えて、アノードとカソードとの間の適切な電気絶縁及びイオン輸送を与え、また、セルが、取扱い、輸送、保管及び使用の正常な状態及び予想された異常な状態になったときにアノードとカソードとの間の内部短絡を招く欠陥を生じることなく、そうすることができなければならない。
セパレータの特性は、損傷に対する強度及び抵抗性を改善するべく多くの方法で修正することができる。その例は、米国特許第5,952,120号、第6,368,742号、第5,667,911号、及び第6,602,593号に開示されている。しかしながら、セル化学反応、電極設計及び構造、セル製造プロセス、意図されるセル使用、予想された保管及び使用条件などの因子に部分的に基づく、強度を増すためになされた変化はまた、セパレータ性能に悪影響を及ぼすことがある。
【0006】
特定のセル化学反応については、セル内の活性材料の量を最大にするのはさらに困難である。リチウム・バッテリにおいては、活性カソード材料がリチウムと反応して反応物質よりも大きい総体積を有する反応生成物を生成するときに、電極組立体の膨張によってセル内に付加的な力が生じる。これらの力は、セル・ハウジングの隆起と、セパレータを通る短絡をもたらす。これらの問題に対する可能な解決策は、セル・ハウジングのために強い(厚い場合が多い)材料を用いることと、セル内に不活性成分を用いることを含み、それは、より低体積の反応生成物を有するセルに比べて、こうした活性材料を有するセル内の活性材料のために利用可能な内部体積をさらに制限する。米国特許第4,379,815号に開示された、Li/FeS2セルについての別の可能な解決策は、別の活性材料をFeS2に混合することによって、カソードの膨張とアノードの収縮のバランスをとることである。こうした活性カソード材料には、CuO、Bi23、Pb2Bi25、P34、CoS2及びその混合物がある。しかしながら、カソード混合物に別の活性材料を加えることは、セルの電気特性及び放電特性に影響を及ぼすことがある。
バッテリ製造業者らは、放電容量を改善することを試み続けているのと同時に、安全性や信頼性といった他のバッテリ特性を改善することも試み続けており、セルの内部短絡に対する抵抗性を高めることは両方に寄与する。上記の議論から明らかなように、内部短絡に対する抵抗性を改善するためになされた変化は、放電容量を最大にすることには逆効果となる。
【0007】
電気化学セルのカソードに用いられる黄鉄鉱又は二硫化鉄(FeS2)粒子は、典型的には、粉砕され、熱処理され、20〜30ミクロン(μm)の粒径にまでドライミルされた天然鉱石から誘導される。粉砕の細かさは、粒子と空気及び水分との反応性によって制限される。粒径が減少するのに伴って、その表面積が増加し、風化される。風化は、二酸化鉄が水分及び空気と反応して硫酸鉄を生成する酸化プロセスである。風化プロセスによって、酸性度が増加し、電気化学活性が減少する。小さい黄鉄鉱粒子は、処理作業の間に危険な炎を発生させるのに十分なほどの熱を酸化の間に生じることがある。従来技術で用いられた二硫化鉄粒子は、ドライミル工程の非一貫性のために約80ミクロンの最終カソード・コーティング厚さに達する粒径を有することがある。
二硫化鉄のドライミル工程は、典型的には、大量の材料を製造する鉱業会社又は中間業者によって実行される。処理された二硫化鉄は、輸送されて、通常は、バッテリ産業によって用いられる前に、長期間にわたって保管される。したがって、保管期間の間に、前述の酸化及び風化が起こり、材料が劣化する。さらに、大きなサイズの二硫化鉄粒子は、カレンダ処理のような処理に影響を及ぼして、基板の歪み、基板結合へのコーティングの分断、並びに、セパレータ損傷からの故障を招くことがある。
【発明の開示】
【0008】
上記のことを考慮して、本発明の目的は、増加した放電容量を有するリチウム・バッテリ・セルを提供することである。本発明の別の目的は、高いエネルギー密度(界面電極体積に対する界面放電容量)を有するリチウム・バッテリ・セルを提供することである。本発明の別の目的は、ハイパワー放電における放電効率を犠牲にすることなくローパワー放電における増加した放電容量を有する、好ましくは高定格放電と低定格放電との両方において増加した放電容量を有する、高い界面電極表面積をもつLi/FeS2セルを提供することである。本発明のさらに別の目的は、増加したカソード界面容量を有し、改善されたエネルギー密度と内部短絡に対する良好な抵抗性をもつ、Li/FeS2セルを提供することである。
本発明の付加的な目的は、比較的小さい平均粒径のFeS2粒子を含む正極を有する電気化学セルを提供することである。さらなる目的は、増加した低定格及び高定格製品性能を有する電気化学セルを提供することである。さらに別の目的は、長期間にわたって高い電圧出力を維持する電気化学セルを提供することである。本発明のさらに別の目的は、電気化学セル、特に正極を製造するための方法を提供することであり、その方法は、FeS2粒子と湿潤剤を含むスラリーを形成し、ミル、特にメディア・ミルを用いてFeS2粒子の平均粒径を減少させ、その後、スラリーを用いて正極を形成するステップを含む。本発明の別の目的は、実質的に熱が発生せず、狭い粒径分布が得られるジェット・ミルのようなプロセスを用いて、所望の平均粒径範囲までミルされた二硫化鉄粒子を含む正極を有する電気化学セルを提供することである。
本発明によって、上記の目的が達成され、上記の従来技術の欠点が克服される。
【0009】
したがって、本発明の1つの態様は、ハウジングと、金属リチウムを含む負極ストリップと、活性材料混合物を含む正極ストリップと、ハウジング内に配置された非水性電解質中に溶解された少なくとも1つの塩を含む電解質と、負極と正極との間に配置されたセパレータと、を含む電気化学バッテリ・セルであって、少なくとも710mAh/cm3の電極組立体界面体積に対するカソード界面容量の比を有するセルに向けられている。
【0010】
本発明の別の態様は、ハウジングと、負極と、正極と、ハウジング内に配置された電解質と、負極と正極との間に配置されたセパレータと、を含む電気化学バッテリ・セルに向けられている。ハウジングは、一体になった閉鎖底端部と、最初は開放されている上端部と、底端部と上端部との間を延びる側壁と、セルを閉鎖するために上端部に配置されるカバーとを有する円筒形コンテナからなり、負極は、2つの対向する主要面をもつストリップの形態であり、金属リチウムからなり、正極は、2つの対向する主要面をもつストリップの形態であり、活性材料混合物からなり、活性材料は、50重量%より多い二硫化鉄を含み、電解質は、非水性有機溶媒中に溶解された1つ又はそれ以上の塩を含み、負極、正極及びセパレータが、半径方向の外面がハウジング側壁の内面に隣接して配置された螺旋巻き円筒形電極組立体を形成し、電極組立体は界面体積を有し、正極は界面容量を有し、電極組立体界面体積に対する正極界面容量の比は少なくとも710mAh/cm3であり、セパレータは、機械方向及び横方向、22μmより薄い平均厚さ、並びに、機械方向及び横方向の両方において少なくとも1.0kgf/cmの引張応力をもつポリエチレンからなる微孔性膜である。
【0011】
本発明の別の態様は、ハウジングと、負極と、正極と、ハウジング内に配置された電解質と、負極と正極との間に配置されたセパレータと、を含む電気化学バッテリ・セルに向けられている。セルは、電極組立体界面体積を有する螺旋巻き円筒形電極組立体を備えた円筒形FR6型Li/FeS2セルであり、セルは、少なくとも3500mAhの界面容量を有し、セパレータは、ポリエチレンからなる微孔性膜であり、22μmより薄い平均厚さ、機械方向及び横方向の両方において少なくとも2.0kgf/cmの引張応力、少なくとも2400ボルトの絶縁破壊電圧、0.08μmから0.20μmの最大有効孔径、及び、4.0から15m2/gのBET比表面積を有する。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、ハウジングと、負極と、正極と、ハウジング内に配置された電解質と、負極と正極との間に配置されたセパレータと、を含む電気化学バッテリ・セルに向けられている。セルは、電極組立体界面体積を有する螺旋巻き円筒形電極組立体を備えた円筒形FR6型Li/FeS2セルであり、セパレータは、ポリエチレンからなる微孔性膜であり、22μmより薄い平均厚さ、機械方向及び横方向の両方において少なくとも2.0kgf/cmの引張応力、少なくとも2400ボルトの絶縁破壊電圧、及び0.08μmから0.20μmの最大有効孔径を有し、正極は、少なくとも95重量%の二硫化鉄を含有する活性材料を含み、セルは、200mAで連続的に1.0ボルトまで放電したときに少なくとも2950mAhの放電容量、及び、1000mAで連続的に1.0ボルトまで放電したときに少なくとも2600mAhの放電容量を与えることができる。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、ハウジングと、リチウムを含む負極と、1μmから19μmまでの平均粒径を有する49重量%より多い二硫化鉄を含有する活性材料を含む正極と、ハウジング内に配置された非水性電解質中に溶解された少なくとも1つの塩を含む電解質混合物と、負極と正極との間に配置されたセパレータと、を含む電気化学バッテリ・セルに向けられている。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、ハウジングと、リチウムを含む負極と、49重量%より多い二硫化鉄を含有する活性材料を含む正極と、ハウジング内に配置された非水性電解質中に溶解された少なくとも1つの塩を含む電解質混合物と、負極と正極との間に配置されたセパレータと、を含み、a)電解質が2.5mS/cmより大きい導電率を有し、セパレータが1μmから25μmまでの厚さを有し、又は、b)電解質が2.5mS/cmより大きい導電率を有し、二硫化鉄が1μmから19μmまでの平均粒径を有し、又は、c)セパレータが1μmから25μmまでの厚さを有し、二硫化鉄が1μmから19μmまでの平均粒径を有する、電気化学バッテリ・セルに向けられている。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、カソードを用意する方法であって、湿潤剤と、20μmより大きい平均粒径を有する二硫化鉄粒子とを含有するスラリーを形成し、粉砕メディアを備えるメディア・ミルを用いてスラリーをミルして二硫化鉄粒子の粒径を1μmから19μmまでの平均粒径に減少させ、ミルされたカソード・スラリーをカソード基板に適用してカソードを形成し、カソードを乾燥させるステップを含む方法に向けられている。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、ハウジングと、リチウムを含む負極と、49重量%より多い二硫化鉄を含有する活性材料を含む正極と、ハウジング内に配置された非水性電解質中に溶解された少なくとも1つの塩を含む電解質混合物と、負極と正極との間に配置されたセパレータと、を含む電気化学バッテリ・セルであって、室温で1500/650mW 2/28s×10毎時DSC試験に従って1.05ボルトまで少なくとも320分の放電時間を有するFR6型セルである、セルに向けられている。
本発明のこれらの及び他の特徴、利点及び目的は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲及び添付の図面を参照することによって、当業者にさらに理解され認識されるであろう。
【0017】
他に規定されない限り、ここで用いられる以下に列挙した用語は、以下のように定義される。
・活性材料−セルの放電反応に不可欠なものであって、セルの放電容量に寄与する、不純物及び存在する少量の他の成分を含む、1つ又はそれ以上の化合物。
・活性材料混合物−集電体及び電極リードを除く、電極活性材料を含む、固体電極材料の混合物。
・平均粒径−Large Volume Recirculator(LVR)(体積4L)モデル9320を装備したMicrotrac Honeywell Particle Size Analyzer Model X−100を用いて測定される、組成物(MV)試料の体積分布の平均直径。測定方法は、塊を壊し、再び塊になるのを防止するために、超音波を用いる。約2.0グラムの試料を計量し、50mlのビーカーに入れる。20mlの脱イオン水と2滴の界面活性剤(100mlの脱イオン水中のFisher Scientificから入手可能な10mlの10%Aerosol OTから調製された、1%Aerosol OT溶液であり、この溶液は良く混合されている)。ビーカー試料溶液を、好ましくは攪拌棒で攪拌する。Large Volume Recirculatorに脱イオン水をレベルまで満たし、試料をビーカーからRecirculatorボウルに移す。洗ビンを用いて、あらゆる残留試料粒子をRecirculatorボウルの中にすすぎ出す。測定を開始する前に試料を1分間再循環させる。FeS2粒子についての以下のパラメータが入力される。透明な粒子−No(吸収)、球形の粒子−No、流体屈折率−1.33、ランタイム−60秒。
・容量、放電−放電の間にセルによって発揮された実際の容量であり、通常、アンペア時(Ah)又はミリアンペア時(mAh)で表される。
・容量、入力−電極の各々の活性材料の重量にその活性材料の理論上の比容量をかけたものに等しい理論上の電極容量であり、各々の活性材料の理論上の比容量は以下の計算に従って求められる。
[(96,487アンペア−秒/モル)/(活性材料のグラム数/モル)]×(活性材料の電子数/モル)/(3600秒/時)×(1000ミリアンペア時/アンペア−時)
(例えば、Li=3862.0mAh/g、S=1672.0mAh/g、FeS2=893.6mAh/g、CoS2=871.3mAh/g、CFx=864.3mAh/g、CuO=673.8mAh/g、C2F=623.0mAh/g、FeS=609.8mAh/g、CuS=560.7mAh/g、Bi23=345.1mAh/g、MnO2=308.3mAh/g、Pb2Bi25=293.8mAh/g、及びFeCuS2=292.1mAh/g)
【0018】
・容量、セル界面−より小さい負極容量及び正極容量。
・容量、電極界面−全ての活性材料の完全反応を前提とする、全体のセル放電反応機構と、反対極の活性材料に隣接する活性材料混合物の部分に含まれる活性材料の総量とに基づく、セルの理論放電容量に対する電極の総寄与であり、通常、Ah又はmAhで表される(電極ストリップの2つの主要面の一方のみが反対極の活性材料に隣接し、電極のその側の活性材料のみ、−固体集電体シートのその側の材料か、又は、固体集電体シートなしのときの電極の厚さの半分の材料のいずれか−、が、界面容量の測定に含められる)。
・電極組立体−負極、正極及びセパレータ、並びに、それと共に組み入れられた、しかし活性材料、活性材料混合物又は集電体に取り付けられたいずれかの別個の導線を除く、いずれかの絶縁材料、オーバーラップ、テープなどの組み合わせ。
・電極ギャップ−隣接する負極及び正極間の距離。
・電極負荷−単位電極表面積当たりの活性材料混合物乾燥重量であり、通常、グラム毎平方センチメートルで表される(g/cm2)。
・電極パッキング−単位電極表面積当たりの活性材料混合物乾燥重量を、混合物中の固体材料の真の密度に基づく理論単位電極表面積当たりの活性材料混合物乾燥重量で割ったものであり、通常、百分率で表される。
【0019】
・折り畳み電極−ストリップの長さが互いに平行に又は交差するように折り畳むことによって組立体に合体された電極ストリップ。
・界面高さ、電極組立体−組立体の電極の界面の、セルの縦軸に平行な、平均高さ。
・界面体積、電極組立体−コンテナ側壁の内面におけるセルの縦軸に垂直な断面積と、電極組立体界面高さとによって定められる、セル・ハウジング内の体積。
・公称−その特徴又は特性について何が期待されるかを表す、製造業者によって指定された値。
・放電率−放電の間にセルから取り出された定格容量の割合。
・室温−約20℃から約25℃までの間の温度。
・螺旋巻き電極−それらの長さ又は幅に沿って、例えば、マンドレル又は中心コアの周りに巻くことによって組立体に合体された電極ストリップ。
・気孔体積、電極組立体−電極組立体界面体積から、界面高さに含まれる非多孔性電極組立体成分の体積と多孔性電極組立体成分の固形分の体積との和を引くことによって求められる、単位界面高さ当たりの電極組立体気孔の体積(微孔性セパレータ、絶縁膜、テープなどは非多孔性及び非圧縮性であると想定され、多孔性電極の体積は、成分の真の密度及び総実体積を用いて求められる)であり、通常、cm3/cmで表される。
【0020】
本発明は、本発明の詳細な説明を図面と組み合わせて読むことによって、良く理解され、他の特徴及び利点が明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のバッテリ・セルは、負極活性材料として金属リチウムを含むアノードを有する。アノード及びカソードは共にストリップの形態であり、それらは、活性材料を含有する電極の体積に対して高い界面表面積を与えるように、電極組立体に互いに接合される。界面表面積が高くなると、電流密度が下がり、放電時にハイパワーをもたらすセルの能力が高まる。セルはまた、電極組立体界面体積に対するカソード界面容量の高い比、少なくとも710mAh/cm2を有することができる。これは、電極組立体の中の活性材料の体積が高く、高い放電容量を与えることを意味する。活性材料の高い体積は、総入力容量に対する界面入力容量の比、カソード集電体の体積、カソード混合物中の活性カソード材料の濃度、及び電極組立体の中のセパレータの体積を含む変数の数を制御することによって達成される。
【0022】
本発明は、本発明に係るセルの実施形態を示す図1を参照すると良く理解されるであろう。セル10は、FR6型の円筒形Li/FeS2バッテリ・セルである。セル10は、セル・カバー14とガスケット16によって閉鎖された、閉鎖下端部と開放上端部とをもつカン12を含むハウジングを有する。カン12は、ガスケット16とカバー14を支持するために上端部の近くにビード、又は減少された直径の段差を有する。ガスケット16は、セル10内のアノード18、カソード20及び電解質をシールするために、カン12とカバー14との間で圧縮される。アノード18、カソード20、及びセパレータ26は、電極組立体として互いにらせん状に巻かれる。カソード20は、電極組立体の上端部から延びて接触ばね24によってカバー14の内面に接続された金属集電体22を有する。アノード18は、金属タブ(図示せず)によってカン12の内面に電気接続される。絶縁コーン46が、カソード集電体22がカン12と接触するのを防止するために電極組立体の上部周辺部の周りに配置され、カソード20の底部縁とカン12の底部との間の接触は、内向きに折り曲げられたセパレータ26の拡張と、カン12の底部に位置決めされた電気絶縁底部ディスク44によって防止される。セル10は、カン12の内向きに折れ曲がった上縁部とガスケット16によって所定位置に保持される別個の正端子カバー40を有する。カン12は、負接触端子として働く。端子カバー40の周辺フランジとセル・カバー14との間に配置されるのは、誤用電気条件下での電流の流れを実質的に制限する、正の温度係数(PTC)装置42である。セル10はまた、圧力逃がし通気孔を含む。セル・カバー14は、底部に通気孔30を備えた内向きに突出する中央通気ウェル28を含む開口部を有する。開口部は、通気ボール32と、通気ウェル28の垂直な壁と通気ボール32の周辺部との間で圧縮される薄壁の熱可塑性ブッシュ34とによってシールされる。セルの内圧が所定レベルを超えたときには、通気ボール32、又はボール32とブッシュ34との両方が、セル10から加圧されたガスを逃がすために開口部の外に押し出される。
【0023】
セル・コンテナは、一体の閉鎖底部を備えた金属缶である場合が多いが、缶の代わりに、両方の端部で最初に開かされる金属チューブが用いられてもよい。缶は、通常は、缶の外側を腐食から保護するために少なくとも外側がニッケルでめっきされたスチールである。めっきの種類は、種々の度合いの耐食性を与えるために、又は所望の外観を与えるために変えることができる。スチールの種類は、コンテナが形成される方法に、ある程度依存する。引抜缶においては、スチールは、拡散アニール低炭素アルミニウム・キルドSAE1006か、又は、それと同等の、ASTM9から11の粒度をもち、僅かに細長い粒子形状と等軸にされたスチールとすることができる。特別の必要に合わせてステンレス・スチールのような他のスチールを用いることもできる。例えば、缶がカソードと電気接触するときには、カソードと電解質による腐食に対する抵抗性を改善するために、ステンレス・スチールが用いられてもよい。
【0024】
セル・カバーは典型的には金属である。ニッケルめっきされたスチールを用いてもよいが、特にカバーがカソードと電気接触するときには、ステンレス・スチールが望ましい場合が多い。カバー形状の複雑さもまた、材料選択における1つのファクタとなる。セル・カバーは、厚い平らなディスクのような単純な形状を有してもよいし、又は、図1に示すカバーのような複雑な形状を有してもよい。カバーが図1のような複雑な形状を有するときには、所望の耐食性と金属形成の容易さを与えるために、ASTM8−9の粒度をもつタイプ304ソフト・アニール・ステンレス・スチールが用いられてもよい。形成されたカバーはまた、例えばニッケルでめっきされてもよい。
【0025】
端子カバーは、周囲環境中の水による腐食に対する良好な抵抗性、良好な導電性、及び、消費者に見えるときには魅力的な外観をもつべきである。端子カバーは、ニッケルめっきされ冷間圧延されたスチール、又は、カバーが形成された後でニッケルめっきされたスチールから形成される場合が多い。端子が圧力逃がし通気孔の上に配置される場合には、端子カバーは、通常、セルの通気を容易にするために1つ又はそれ以上の穴を有する。
【0026】
ガスケットは、所望のシール特性を与えるいずれかの適切な熱可塑性材料から形成される。材料の選択は、電解質の組成にある程度基づく。適切な材料の例には、ポリプロピレン、硫化ポリフェニレン、四フッ化−ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、ポリブチレンテレフタレート、及びそれらの組み合わせがある。好ましいガスケット材料には、ポリプロピレン(例えば、米国デラウェア州ウィルミントン所在のBasell Polyolefins社からのPRO−FAX(登録商標)6524)、ポリブチレンテレフタレート(例えば、米国ニュージャージー州サミット所在のTicona−US社からのCELANEX(登録商標)PBT、グレード1600A)、及び硫化ポリフェニレン(米国テキサス州シャイナー所在のBoedeker Plastics,Inc.からのTECHTRON(登録商標)PPSがある。少量の他のポリマー、強化無機フィラー、及び/又は、有機化合物を、ガスケットのベース樹脂に添加してもよい。
ガスケットは、良好なシールを与えるためにシーラントで被覆されてもよい。エチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)が適切なシーラント材料であるが、他の適切な材料を用いることもできる。
【0027】
通気ブッシュは、高温(例えば75℃)でのコールドフローに対して抵抗する熱可塑性材料から形成される。熱可塑性材料は、エチレン−テトラフルオロエチレン、ポリブチレンテレフタレート、硫化ポリフェニレン、ポリフタルアミド、エチレンクロロ−トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、フッ素化ペルフルオロエチレンポリプロピレン、及びポリエーテルエーテルケトンのようなベース樹脂を含む。エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリフタルアミドが好ましい。樹脂は、通気ブッシュに高温での所望のシール特性及び通気特性を与えるために、熱安定化フィラーを添加することによって修飾される。ブッシュは、熱可塑性材料から注入成形される。TEFZEL(登録商標)HT2004(25重量パーセントのチョップドガラス・フィラーを伴うETFE樹脂)が、好ましい熱可塑性材料である。
通気ボールは、セル成分と接触した状態で安定であって、所望のセルシール特性及び通気特性を与えるいずれかの適切な材料から形成される。ステンレス・スチールのようなガラス又は金属を用いることができる。
【0028】
アノードは、リチウム箔と呼ばれることもあるリチウム金属ストリップを含む。リチウムの組成は変えることができるが、バッテリ・グレードのリチウムについては、純度は常に高い。リチウムは、所望のセル電気性能を与えるために、アルミニウムのような他の金属と合金にすることができる。0.5重量パーセントのアルミニウムを含有するバッテリ・グレードのリチウム−アルミニウム箔は、米国ノースカロライナ州キングスマウンテン所在のChemetall Foote Corp.から入手可能である。
アノードは、金属リチウム内に、又はその表面上に、集電体を有してもよい。図1のセルのように、リチウムは高い導電性をもつため、別個の集電体は必要ではないが、集電体は、例えば、リチウムが消費されるときに放電の間のアノード内の電気的連続性を維持するために含められる。アノードが集電体を含むときには、集電体は、その導電性のために銅から形成されてもよいが、それらがセル内部で安定であれば、他の導電性金属を用いることもできる。
【0029】
薄い金属ストリップは、しばしば、アノードを一方のセル端子(図1に示されたFR6セルの場合の缶)に接続する導線、又はタブとして働く。金属ストリップは、しばしば、ニッケル又はニッケルめっきされたスチールから形成され、リチウムに直接取り付けられる。これは、アノードの一部の中に導線の端を埋め込むことによって、又は導線の端をリチウム箔の表面上に押しあてることによって達成される。
【0030】
カソードは、集電体と、普通は微粒子の形態の1つ又はそれ以上の電気化学活性材料を含む混合物とを有する、ストリップの形態である。二硫化鉄(FeS2)が好ましい活性材料である。Li/FeS2セルにおいては、活性材料は、50重量%より多いFeS2を含有する。カソードはまた、所望のセル電気特性及び放電特性に応じて、1つ又はそれ以上の付加的な活性材料を含むことができる。付加的な活性カソード材料は、あらゆる適切な活性カソード材料とすることができる。その例には、Bi23、C2F、CFx、(CF)n、CoS2、CuO、CuS、FeS、FeCuS2、MnO2、Pb2Bi25及びSがある。より好ましくは、Li/FeS2セル・カソードのための活性材料は、少なくとも95重量%のFeS2を含み、さらに好ましくは少なくとも99重量%のFeS2を含み、最も好ましくはFeS2が、ただ1つの活性カソード材料である。少なくとも95重量%の純度レベルを有するバッテリ・グレードのFeS2は、米国ニュージャージー州カムデン所在のAmerican Minerals,Inc.、オーストリア、ウィーン所在のChemetall株式会社、マサチューセッツ州ノースグラフトン所在のWashington Mills社、及び、米国バージニア州Dillwyn所在のKyanite Mining Corp.から入手可能である。
【0031】
活性材料に加えて、カソード混合物は他の材料を含む。バインダは、通常、微粒子材料を互いに保持し、混合物を集電体に付着させるのに用いられる。混合物に改善された導電性を与えるために、金属、グラファイト及びカーボンブラック粉末のような1つ又はそれ以上の導電性材料を添加してもよい。用いられる導電性材料の量は、活性材料とバインダの導電性、集電体上の混合物の厚さ、及び集電体のデザインといった因子に依存する。カソードの製造及びセル性能を強化するために、少量の種々の添加剤が用いられてもよい。以下は、Li/FeS2セル・カソードのための活性材料混合物材料の例である。グラファイト:米国オハイオ州ウエストレーク所在のTimcal AmericaからのKS−6及びTIMREX(登録商標)MX15グレードの合成グラファイト。カーボンブラック:米国テキサス州ヒューストン所在のChevron Phillips Company LPからのグレードC55アセチレンブラック。バインダ:Polymont Plastics Corp.(以前はPolysar,Inc.)によって製造され、米国オハイオ州アクロン所在のHarwick Standard Distribution Corp.から入手可能なエチレン/プロピレンコポリマー(PEPP)。非イオン水溶性ポリエチレンオキシド(PEO):米国ミシガン州ミッドランド所在のDow Chemical CompanyからのPOLYOX(登録商標)、及び、テキサス州ヒューストン所在のKraton PolymersからのG1651グレードのスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)ブロック・コポリマー。添加剤:米国ニュージャージー州タリタウン所在のMicro Powders Inc.によって製造されたFLUO HT(登録商標)微粉化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(米国オハイオ州クリーブランド所在のDar−Tech Inc.から市販されている)、及び、ニュージャージー州リッジフィールド所在のDegussa Corporation Pigment GroupからのAEROSIL(登録商標)200グレードのヒュームド・シリカ。
【0032】
集電体は、カソード表面内に配置されるか、又はその中に埋め込まれてもよく、或いは、カソード混合物は、薄い金属ストリップの一方の側又は両側の上にコーティングされてもよい。アルミニウムが一般的に用いられる材料である。集電体は、カソード混合物を含むカソードの部分を越えて延びてもよい。この集電体の延長部分は、正端子に接続された導線との接触を形成するのに便利な領域を与えることができる。セルの内部体積の多くを活性材料と電解質に利用できるようにするために、集電体の延長部の体積を最小に保つことが望ましい。
FeS2カソードの好ましい製造方法は、高揮発性有機溶媒中の活性材料混合物材料のスラリー(例えばトリクロロエチレン)を、アルミニウム箔のシートの両側にロール・コートし、コーティングを乾燥させて溶剤を除去し、コーティングされた箔をカレンダ加工してコーティングを圧縮し、コーティングされた箔を所望の幅にスリット形成し、スリット形成されたカソード材料のストリップを所望の長さに切断することである。セパレータを絶縁破壊する恐れを最小にするために、小さい粒子サイズを有するカソード材料を用いることが望ましい。例えば、FeS2は、使用の前に230メッシュ(63μm)スクリーンに通してふるいにかけられることが好ましい。
【0033】
さらに別の実施形態においては、それを組み込んだ電気化学セルに有益な特性を与えるカソード又は正極が開示される。カソードは、メディア・ミルのようなウェット・ミル法か、又は、ジェット・ミルのような非機械的ミル装置を用いるドライミル法によって製造された所定の平均粒径を有するFeS2粒子を含む。減少した平均粒径のFeS2粒子を用いて作成された電気化学セルは、セル・サイズに関係なく、あらゆる所与の放電深度において増加したセル電圧を呈する。
本発明の一実施形態においては、カソードは、好ましくはメディア・ミルを用いるウェット・ミル法によって製造された、好ましくは天然の、小粒径のFeS2粒子を含む。メディア・ミルはまた、当該技術分野ではボール・ミル、バスケット・ミル、ビード・ミル、サンド・ミル、ロータリ−タンブリング・ミキサーなどとも呼ばれており、ウェット・ミル法においてはミル・メディアを用いることがある。ウェット・ミル・ステップは、カソード又は正極の構成中にイン・ラインで行われて、風化又は酸化、並びに、危険な乾燥ダスト黄鉄鉱の発火を実質的になくすことが好ましい。本発明のウェット・ミル・プロセスを用いることによって、上記のふるい分け作業をなくすことができる。
【0034】
ウェット・ミル法においては、FeS2及び湿潤剤を含有するカソード電気化学活性材料混合物が形成される。プロセスのこの時点で、FeS2は、20μmより大きい平均粒径を有する。これらに限られるものではないが、バインダ、導電性材料、添加剤などのような上記の活性又は不活性材料のいずれもまた、必要であれば、活性材料混合物に用いることができる。一実施形態においては、カソード活性材料混合物成分は、適切な容器内で組み合わされ、任意に、しかし好ましくは混合される。カソード活性材料混合物は、メディア・ミルの中に計量されて、ミルされる間にFeS2粒子の平均粒径が減少される。メディア・ミル内のカソード活性材料混合物の滞留時間は、所望のFeS2平均粒径範囲をもたらすのに十分なものである。
【0035】
湿潤剤は、スラリーのFeS2又は他の成分がミル・プロセス中に燃焼するのを実質的に防止する、好ましくは低粘度の液体などのいずれかである。好ましい湿潤剤は、湿潤ミル作業の間に用いられる処理条件では通常非引火性の溶剤である。適切な湿潤剤の例には、これらに限られるものではないが、トリクロロエチレン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ブチルグリコールアセテート、ミネラルスピリット、及び水がある。湿潤剤は、カソードの作成に用いられるバインダと少なくとも適合し、好ましくはそれを実質的に溶解することができるように選択される。湿潤剤の量は、変えることができ、通常は、約0.1ccから約5ccの範囲であり、好ましくは、カソード活性材料混合物の固形分1グラム当たり約0.5ccである。
カソード活性材料スラリー混合物は、ミル装置に移され、所望のFeS2平均粒径が達成されるまで適切な流速及び回転rpmでミルされる。好ましい実施形態においてはメディア・ミルが用いられる。メディア・ミルは、典型的には、ミルされる組成物の成分の粒径を減少させるために、回転ディスク及び/又はロータ、並びに、粉砕媒体に取り付けられたシャフトを備える。粉砕メディアは、実質的に球形、円筒形などとすることができ、約0.2mmから約30mmまで、望ましくは約0.5mmから約10mmまで、及び好ましくは約1.2mmから約1.7mmまでの範囲の平均直径をもつ球形が好ましい。円筒形の高さ範囲は、約1mmから約20mmであり、約5mmから約15mmまでが好ましい。これらに限られるものではないが、ソーダライム、ジルコニア−シリカ、酸化アルミナ、イットリア安定化ジルコニアシリカ、クロムスチール、ケイ酸ジルコニウム、セリウム安定化ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、及び炭化タングステンを含む、多くのタイプのメディアを用いることができる。適切な粉砕メディアは、Glass、ER120、Zirstar and ZirmilとしてSaint−Gobain of Worcester,Maと、アルミナ、スチール及びカーバイドとしてGlenn Mill of Cliffton,NJと、Zirconox and ZircosilとしてJyoti Ceramic Industries of Satpur,Nashik,Indiaといった供給業者から入手可能である。適切なメディア・ミルは、カリフォルニア州フラートン所在のMorehouse−COWLESから入手可能である。
【0036】
カソード活性材料スラリー混合物は、粉砕メディアと好ましくはシャフトが取り付けられた回転可能ロータを含むメディア・ミルのミル・チャンバに移される。メディアは、スラリーの中でミル・チャンバ壁の方に比較的高速で加速されて、スラリー混合物粒子に衝突し、剪断し、そのサイズを減少させる。ミルされたスラリー混合物は、その後、FeS2粒子の所望の平均粒径が達成された後で、さらなる処理のためにメディア・ミルからカソードの中に排出される。
本発明のウェット・ミル法を用いる処理の後で、FeS2粒子は、約1μmから約19μmまで、望ましくは約2μmから約17μm又は約18μmまで、及び好ましくは約5μm又は約10μmから約15μmまでの平均粒径を有する。FeS2粒子はまた、それに対して行われたメディア・ミル・プロセスに起因する狭い粒径分布を有する。
ウェット・ミルされた活性カソード材料混合物は、その後、前述のアルミニウム箔のようなシート上にロール・コートされ、湿潤剤を除去するために乾燥される。次に、コーティングを圧縮して滑らかな表面をもたらすために、コートされた箔ラミネートがカレンダ加工され、コートされた箔が、ここで説明されるような電気化学セルの組立体に用いるために、所望の幅及び長さにスリット形成される。
【0037】
本発明のさらなる実施形態においては、カソードは、非機械的ミル装置、好ましくはジェット・ミルによって得られる所定の平均粒径範囲の、好ましくは天然の、FeS2粒子を含む。「非機械的ミル装置」という用語は、破壊、チッピング、分割などによって材料の粒径を減少させるために2つ又はそれ以上のミル面間の圧力又は接触を用いない装置のことをいう。機械的ミル装置には、これらに限られるものではないが、ロール・ミル、造粒ミル、ボール・ミル、メディア・ミル、ビード・ミル、及びハンマー・ミルがある。非機械的ミル装置は、典型的には、移動ミル部品を用いることなく、粒子間の及び/又は粒子とミル装置の単一の面との間の衝突を用いてサイズを減少させるのではなく、FeS2粒子の平均粒径を減少させる。
【0038】
ジェット・ミルは、典型的には中央チャンバを含み、その中に、空気、蒸気又はガスのような流体が、音波に近い、音波又は超音波粉砕ストリームを生じさせるノズル又はジェットを通して導入される。粉砕メディアは用いられない。FeS2粒子を含む供給材料粒子は、ジェット・ミル内の高速粉砕ストリームの中に供給され又は注入される。二硫化鉄粒子又は他の粒子自体間の高速衝突、或いはミル面との衝突の結果として、サイズが減少する。ジェット・ミルは、大き過ぎる粒子を再循環させ、粒子衝突の発生及び効果を増強させるように設計される。FeS2粒子のサイズが減少するので、それらは、排出ポートの方に移動し、そこから、カソードを形成するのに用いられる活性材料混合物に用いるために収集される。好ましい実施形態においては、FeS2のジェット・ミルは、FeS2粒子の発火又は燃焼を防止するために、窒素、アルゴンなどのようなガスを用いる不活性雰囲気内で行われ、窒素が最も好ましい。ミル面上でこすれるFeS2粒子の摩擦によって、及び、少なくともスロットリング時のジュエル−トンプソン効果に起因する、ミル内で起こる衝突から、熱が発生するが、ミルの間の正味の温度増加はないと報告されている。生成物の温度は、ミルに供給される流体の温度に実質的に等しい。ジェット・ミルは、ニュージャージー州モーズタウン所在のJet Pulverizer Company、マサチューセッツ州ハノーバー所在のSturtevant、並びに、ペンシルバニア州テルフォード所在のFluid Energyから入手可能である。
【0039】
本発明の非機械的又はジェット・ミル法を用いる処理の後で、FeS2粒子は、約1μmから約19μmまで、望ましくは約1.5μmから約10μm又は約15μmまで、及び好ましくは約2μmから約6μmまでの平均粒径を有する。ジェット・ミルされたFeS2粒子は、全粒子の80%が約1.0μmから約15μmまでの間、好ましくは約1.0μmから約10μmまでの間である粒径分布を有する。粒径分布は、粒子の凝集を防止するために試験の間に音波が用いられる、前述のMicrotrac Honeywell Particle Size Analyzer X−100を用いて測定された。
【0040】
FeS2粒子の平均粒径をここで定められた範囲内に減少させるために用いられる本発明のミル・プロセスは、例えば、改善された低温バッテリ性能、アルミニウム基板へのカソード活性材料混合物の改善された付着、活性材料混合物の小さい粒径に起因するポリマー・セパレータ・インシュレータ・フィルムへの低い損傷、セル放電時にリチウムイオンを受け入れるための増加した表面積をもつ、より多くの黄鉄鉱粒子によってもたらされる改善されたカソード効率、定電力装置用途においてセルがより低電流で作動できるようにする、減少したアノード分極からの改善されたセル作動電圧、及び、電流分布をその界面表面積にわたってより一様に適用することができる、反対側のリチウム・アノードにおけるより効率の良い一様な放電を含む、幾つかの利点を与えることを示している。
【0041】
ウェット・ミルされたFeS2粒子又はジェット・ミルされたFeS2粒子を用いて作成されたFR6型電気化学セルは、200mAの定格で連続的に1ボルトまで放電したときに少なくとも3,000ミリアンペア−時(mAh)、並びに、室温で1アンペアの定格で連続的に1ボルトまで放電したときに少なくとも2,700mAh又は好ましくは少なくとも2,800mAhの放電容量を与えることができる。したがって、本発明のセルは、低定格用途と高定格用途との両方について優れた結果を与える。
【0042】
本発明において開示されるジェット・ミルされたFeS2粒子を用いるFR6電気化学セルは、1500/650mW 2/28s×10毎時DSC試験によれば、1.05ボルトまで、通常は少なくとも300分、望ましくは少なくとも320分、好ましくは少なくとも325分、最も好ましくは少なくとも330又は340分の放電時間を有することも見出されている。本発明で指定された範囲内の平均粒径を有するジェット・ミルされたFeS2粒子を含むFR6型電気化学セルは、1500/650mW 2/28s×10毎時DSC試験によれば、少なくとも180分、望ましくは少なくとも240分、好ましくは少なくとも270分にわたって、

の電圧を維持する。DSC手順は、1500mWで第1パルスを2秒間、その後650mWで第2パルスを28秒間というように、2つのパルスを用いて電気化学セルをサイクルする。パルス・シーケンスは10回繰り返され、その後55分間の休止期間がある。以後、パルス・シーケンス及び休止期間は、所定の電圧まで繰り返される。さらに、ウェット・ミルされたFeS2粒子を含むFR6型電気化学セルは、1500/650mW 2/28s×10毎時DSC試験によれば、少なくとも180分、望ましくは少なくとも210分、好ましくは少なくとも230分にわたって、

の電圧を維持する。ウェット・ミルされたFeS2粒子を用いるFR6型電気化学セルは、1500/650mW 2/28s×10毎時DSC試験によれば、1.05ボルトまで通常少なくとも300分、好ましくは少なくとも320分の放電時間を有する。測定は室温で行われた。
【0043】
ウェット・ミル又はジェット・ミルのような本発明のミル法から得られる比較的小さい平均粒径のFeS2粒子を用いて作成されたFR6電気化学セルは、図5に示されたように、約22マイクロメートルより大きい又はそれに等しい平均粒径を有するFeS2粒子を含む従来技術のセルと比べたときに、種々の放電深度割合において減少されたアノード電圧値を与える。50%放電深度において、本発明の範囲内の平均粒径のFeS2粒子を有する電気化学セルについてのアノード電圧は、190ミリボルトより低く、望ましくは170ミリボルトより低く、好ましくは100ミリボルトより低く、最も好ましくは約60ミリボルトより低い。25%放電深度において、アノード電圧は、140ミリボルトより低く、望ましくは120ミリボルトより低く、好ましくは75ミリボルトより低い。測定値を得るために、セルは、英国ファーンバラ所在のSolartron Analyticalから入手可能なSolartron 1470を用いて放電された。電流は、電流密度が約5mA/cm2となるように選択された。セルは、1アンペアで2分間、及び、0アンペアで5分間サイクルされた。セルは、セル缶底部を除去し、この場合、1,3−ジオキソラン、1,2−ジエトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾール(63.1:27.6:0.20重量%)の溶媒ブレンド中に溶媒(9.1重量%)リチウムヨウ素が0.75モル/リットルである、電解質の入っているビーカーの中にセルをつるすことによって参照された。バイコール・チップを有するシリンジ・バレル内の純リチウム金属ストリップである参照電極が、セルの横にずらして配置された。システムは、放電前に約30分間にわたって平衡化された。測定は室温で行われた。
【0044】
カソードは、セルの正端子に電気的に接続される。これは、図1に示されるような薄い金属ストリップ又はばねの形態である場合が多い導線を用いて達成される。導線は、ニッケルめっきされたステンレス・スチールから形成される場合が多い。
セパレータは、イオン透過性及び非導電性の薄い微孔性膜である。セパレータの孔の中に少なくとも幾つかの電解質を保持することができる。セパレータは、電極を互いから電気的に絶縁するために、アノードとカソードの隣接する面の間に配置される。セパレータの一部はまた、内部短絡を防止するために、セル端子と電気接触する他の構成要素を絶縁する。セパレータの縁は、アノードとカソードが、それらが互いに完全に位置合わせされない場合であっても電気的に接触しないことを保証するために、少なくとも1つの電極の縁を越えて延びる場合が多い。しかしながら、電極を越えて延びるセパレータの量を最小にすることが望ましい。
【0045】
良好なハイパワー放電性能を与えるために、セパレータは、引用によりここに組み入れられる、1994年3月1日に発行された米国特許第5,290,414号に開示された特徴(少なくとも0.005μmの最小寸法と、5μm四方より大きくない最大寸法と、30から70パーセントの範囲内の多孔性と、2ohm・cm2から15ohm・cm2までの面積抵抗率、及び2.5より小さいねじれをもつ孔)を有することが望ましい。適切なセパレータ材料はまた、内部短絡を招く断裂、分割、穴又は他のギャップが生じることなく、セル製造プロセス、並びに、セル放電中にセパレータにかかる圧力に耐えるのに十分に強いものであるべきである。
セル内の全セパレータ体積を最小にするために、セパレータは、できるだけ薄くなるべきであるが、内部短絡を防止するためにカソードとアノードとの間に物理的障壁が与えられるように、少なくとも約1μm又はそれ以上であるべきである。すなわち、セパレータの厚さ範囲は、約1μmから約50μmまで、望ましくは約5μmから約25μmまで、及び好ましくは約10μmから約16μm又は約20μmまでである。要求される厚さは、セパレータ材料の強度と、電気的絶縁を与えるセパレータにかかる力の大きさ及び位置に、或る程度依存する。
【0046】
厚さの他にも多くの特徴がセパレータ強度に影響を及ぼす。その1つが引張応力である。高い引張応力が望ましく、1立方センチメートル当たり好ましくは少なくとも800、より好ましくは少なくとも1000キログラムの力(kgf/cm2)である。微孔性セパレータを形成するのに典型的に用いられる製造プロセスにより、引張応力は、典型的には、機械方向(MD)の方が横方向(TD)よりも大きい。要求される最小引張応力は、セルの直径に或る程度依存する。例えば、FR6型セルについては、好ましい引張応力は、機械方向に少なくとも1500kgf/cm2であり、横方向に少なくとも1200kgf/cm2であり、FR03型セルについては、好ましい引張応力は、機械方向に少なくとも1300kgf/cm2であり、横方向に少なくとも1000kgf/cm2である。引張応力が低すぎる場合には、製造及び内部セル力によって断裂又は他の穴が生じる。一般に、引張応力が高くなると、強度の観点からは良くなる。しかしながら、引張応力が高すぎると、セパレータの他の望ましい特性に悪影響を及ぼす。
【0047】
引張応力はまた、kgf/cmで表され、これは、kgf/cm2の引張応力にcmのセパレータ厚さを掛けることから計算される。kgf/cmの引張応力はまた、セパレータ強度に関連する望ましい特性を識別するのに有用である。したがって、セパレータは、機械方向及び横方向の両方において、少なくとも1.0kgf/cm、好ましくは少なくとも1.5kgf/cm、より好ましくは少なくとも1.75kgf/cmの引張応力を有することが望ましい。約0.45インチ(11.4mm)より大きい直径をもつセルについては、少なくとも2.0kgf/cmの引張応力が最も好ましい。
セパレータ強度の別の指標は、その絶縁破壊電圧である。平均絶縁破壊電圧は、好ましくは少なくとも2000ボルトであり、より好ましくは少なくとも2200ボルトである。約0.45インチ(11.4mm)より大きい直径をもつ円筒形セルについては、平均絶縁破壊電圧は、最も好ましくは少なくとも2400ボルトである。絶縁破壊電圧が低すぎる場合には、セル製造中の電気試験(例えば、電解質を加える前に電極組立体に印加された高い電圧の保持)によって、欠陥のある又は損傷したセパレータを備えたセルを確実に取り除くことは困難である。絶縁破壊は、他の望ましいセパレータ特性を依然として達成しながら、できるだけ高いことが望ましい。
【0048】
平均有効孔径は、セパレータ強度の別のより重要な指標である。セパレータを通るイオン輸送を最大にするために大きな孔が望ましいが、孔が大き過ぎる場合には、セパレータは、穿孔や電極間の短絡が生じやすくなる。好ましい最大有効孔径は、0.08μmから0.40μmまでであり、より好ましくは0.20μm以下である。
BET比表面積もまた、孔径、並びに、孔の数に関連する。一般に、セル放電性能は、セパレータが高い比表面積をもつときに良好となる傾向があるが、セパレータ強度は低くなる傾向がある。BET比表面積は、40m2/g以下となることが望ましいが、少なくとも15m2/gとなることも望ましく、少なくとも15m2/g、より好ましくは少なくとも25m2/gとなることも望ましい。
良好な高定格及びハイパワーセル放電性能のためには、低い面積抵抗率が望ましい。より薄いセパレータは、より低い抵抗をもつ傾向があるが、セパレータはまた十分に強くすべきであり、それはどれだけセパレータを薄くできるかを制限する。面積抵抗率は、好ましくは4.3ohm・cm2以下であり、より好ましくは4.0ohm・cm2以下であり、最も好ましくは3.5ohm・cm2以下である。
【0049】
リチウム・バッテリに用いられるセパレータ膜は、ポリプロピレン、ポリエチレン、又は、超高分子量ポリエチレンから形成される場合が多く、ポリエチレンが好ましい。セパレータは、二軸配向微孔性膜の単一層とすることができ、或いは、直交する方向に所望の引張強度を与えるように2つ又はそれ以上の層を互いにラミネートすることができる。コストを最小にするには単一層が好ましい。適切な単一層二軸配向ポリエチレン微孔性セパレータは、Tonen Chemical Corp.から入手可能であり、米国ニューヨーク州マケドニア所在のEXXON Mobile Chemical Co.から入手可能である。Setela F20DHIグレード・セパレータは、20μmの公称厚さを有し、Setela 16MMSグレード・セパレータは、16μmの公称厚さを有する。
【0050】
アノード、カソード及びセパレータ・ストリップは、電極組立体において互いに組み合わされる。電極組立体は、巻きつけが完了したときに電極組立体から取り出されるマンドレルの周りに、カソード、セパレータ及びアノードのストリップを交互に巻きつけることによって形成された、図1に示されるような螺旋巻き設計とすることができる。少なくとも1層のセパレータ、及び/又は、少なくとも1層の電気絶縁膜(例えばポリプロピレン)が、通常、電極組立体の外側の周りにラップされる。これは、多くの目的を果たす、すなわち、組立体を互いに保持する一助となり、組立体の幅又は直径を所望の寸法に調節するのに用いられる。セパレータ又は他の外側フィルム層の最外端は、1枚の接着テープで又は熱シールによって止めつけられてもよい。
螺旋巻きされるのではなく、電極組立体は、電極ストリップとセパレータ・ストリップを互いに折り畳むことによって形成されてもよい。ストリップがそれらの長さに沿って位置合わせされ、次いでアコーディオン状に折り畳まれてもよく、或いは、アノードと一方の電極ストリップがカソードと他方の電極ストリップに対して垂直に置かれ、電極が一方が他方を横切るように(直角配向に)交互に折り畳まれてもよく、いずれの場合においても交互のアノード層及びカソード層のスタックを形成する。
【0051】
電極組立体は、ハウジング・コンテナの中に挿入される。螺旋巻き電極組立体の場合には、円筒形コンテナと角柱形コンテナのいずれにおいても、電極の主要面はコンテナの側壁に垂直である(言い換えれば、電極組立体の中央コアは、セルの縦軸に平行である)。折り畳まれた電極組立体は、典型的には角柱形セルに用いられる。アコーディオン折りの電極組立体の場合には、組立体は、電極層のスタックの両端部における平らな電極表面がコンテナの両側に隣接するように配向される。これらの構成においては、アノードの主要面の全面積の大部分は、セパレータを通じて、カソードの主要面の全面積の大部分に隣接し、電極の主要面の最外部は、コンテナの側壁に隣接する。このようにして、アノードとカソードの組み合わされた厚さの増加に起因する電極組立体の膨張が、コンテナ側壁によって制約される。
【0052】
本発明のバッテリ・セルにおいては、汚染物質として非常に少量の(例えば、使用される電解質塩に応じて、約500ppm以下の)水のみを含む非水性電解質が用いられる。リチウム及び活性カソード材料と共に用いるのに適したいずれの非水性電解質が用いられてもよい。電解質は、有機溶媒中に溶解された1つ又はそれ以上の電解質塩を含有する。Li/FeS2セルについては、適切な塩の例には、臭化リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、及びヨウ化リチウムがあり、適切な有機溶媒は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、ギ酸メチル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、3,5−ジメチルイソキサゾール、n,n−ジメチルホルムアミド及びエーテルのうちの1つ又はそれ以上を含む。塩/溶媒の組み合わせは、所望の温度範囲にわたってセル放電要件を満たすのに十分な電解質伝導度及び電気伝導度を与える。エーテルは、それらの一般的に低い粘度、良好な湿潤可能性、良好な低温放電性能、及び良好な高定格放電性能のために望ましい場合が多い。これは、エーテルはMnO2カソードの場合、より安定であり、より高いエーテルレベルを用いることができるため、Li/FeS2セルにおいては特にそうである。適切なエーテルには、これらに限られるものではないが、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジ(メトキシエチル)エーテル、トリグリーム、テトラグリーム、及びジエチルエーテルのような非環式エーテル、並びに、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、及び、3−メチル−2−オキサゾリジノンのような環式エーテルがある。
【0053】
したがって、電解質塩と有機溶媒との種々の組み合わせを用いて電気化学セルのための電解質を形成することができる。電解質塩のモル濃度は、電解質の導電特性を修正するために変えることができる。有機溶媒中に溶解された1つ又はそれ以上の電解質塩を含む適切な非水性電解質の例には、これらに限られるものではないが、2.5mS/cmの導電性をもつ、1,3−ジオキソラン、1,2−ジエトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾール(重量比で24.80:60.40:0.20%)の溶媒ブレンド中に1モル/リットルの溶媒濃度のリチウムトリフルオロメタンスルホネート(重量比で14.60%)、3.46mS/cmの導電性をもつ、1,3−ジオキソラン、1,2−ジエトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾール(重量比で23.10:56.30:0.20%)の溶媒ブレンド中に1.5モル/リットルの溶媒濃度のリチウムトリフルオロメタンスルホネート(重量比で20.40%)、及び、7.02mS/cmの導電性をもつ、1,3−ジオキソラン、1,2−ジエトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾール(重量比で63.10:27.60:0.20%)の溶媒ブレンド中に0.75モル/リットルの溶媒濃度のヨウ化リチウム(重量比で9.10%)がある。本発明の電気化学セルに用いられる電解質は、通常約2.0mS/cmより大きく、望ましくは約2.5mS/cm又は約3.0mS/cmより大きく、好ましくは約4mS/cm、約6mS/cm、又は約7mS/cmより大きい導電率を有する。
指定のアノード、カソード及び電解質の組成及び量は、所望のセル製造特性、性能特性及び保管特性を与えるように調節することができる。
【0054】
セルは、いずれかの適切な方法を用いて閉鎖しシールすることができる。こうした方法は、これらに限られるものではないが、クリンピング、再絞りすること、コレットにはめること、及びこれらの組み合わせを含む。例えば、図1のセルについては、電極と絶縁体コーンが挿入され、ガスケット及びカバー組立体(セル・カバー、接触ばね及び通気ブッシングを含む)が缶の開放端に配置された後で、缶の中にビードが形成される。セルは、ガスケット及びカバー組立体がビードに対して押し下げられた状態で、ビードにおいて支持される。ビードの上の缶の上部の直径は、ガスケット及びカバー組立体をセル内の所定位置に保持するために、セグメント化されたコレットを用いて減少される。電解質が、通気ブッシング及びカバーの孔を通してセルの中に供給された後で、セル・カバーの孔をシールするために、通気ボールがブッシングの中に挿入される。PTC装置及び端子カバーが、セル・カバー上のセルの上に置かれ、ガスケット、カバー組立体、PTC装置及び端子カバーを保持するために缶の上縁部がクリンピング・ダイを用いて内向きに折り曲げられ、ガスケットによって缶の開放端のシールが完成される。
【0055】
上記の説明は、特に、スイス、ジュネーブの国際電気標準会議によって発行された国際標準IEC60086−1及びIEC60086−2において定義されるように、FR6及びFR03型のような円筒形Li/FeS2セルに関連する。しかしながら、本発明はまた、他のセル・サイズ及び形状に、並びに、他の電極組立体、ハウジング、シール及び圧力逃がし弁設計をもつセルに適合させることができる。
本発明の特徴及びその利点は、以下の実施例においてさらに説明され、特に指定のない限り、実験は室温で行われた。
【実施例1】
【0056】
螺旋巻き電極組立体を備えたFR6型円筒形Li/FeS2セルを、約0.373から約0.455cm3/cmの範囲にわたる、種々の界面電極組立体高さセンチメートル当たりの電極組立体気孔体積で作成した。気孔体積は、カソード上にコーティングされた活性材料混合物内の気孔の体積を調節することによって変化させられた。これは、混合物の組成、厚さ及びパッキングの種々の組み合わせを用いてなされた。全てのセルにおいて用いられるセパレータ材料は、結晶性が高く、一軸方向に配向された、25μmの公称厚さをもつ微孔性ポリプロピレン材料であった。
【実施例2】
【0057】
実施例1からのセルのサンプルを試験のために用意した。単位高さ当たり所与の気孔体積をもつ各々のグループについて、幾つかのセルは放電しないままであり、幾つかのセルは50%放電した(50%の定格容量を引き出すのに要求される時間にわたって200mAの定格で放電された)。放電されていないセル及び50%放電したセルは、衝撃試験で試験され、試験されたセルの各々の外面温度は、試験の間、及び試験後6時間にわたって観測した。
衝撃試験においては、サンプル・セルが平らな面上に置かれ、直径15.8mmのバーがサンプルの中央を横切って置かれ、9.1kgのおもりが61±2.5cmの高さからサンプル上に落下される。サンプル・セルは、平らな面に平行な、かつ、セルの中央を横切って位置する直径15.8mmのバーの縦軸に垂直なその縦軸に、衝撃が加えられる。各々のサンプルには1回だけ衝撃が加えられる。
非放電セルのいずれも、170℃を超える外面温度をもたなかった。外面温度が170℃を超えた50%放電セルの割合をプロットした。プロット点の最善の曲線のあてはめが図2に示されており、単位高さ当たりの気孔体積(cm3/cm)がx軸上に、そして、170℃を超える外面温度を有するセルの割合がy軸上に示される。
【0058】
衝撃試験結果は、電極組立体の気孔体積の減少と共に、170℃を超える外面温度をもつセルの割合が増加することを示す。図2のグラフから、界面高さの約0.45cm3/cmの気孔体積をもつセルの0%が170℃を越える外面温度をもつと予想され、約0.37cm3/cmの気孔体積をもつセルの60%以上が170℃を越えると予想される。高い外面温度は、セパレータへの損傷に寄与し、結果として熱を発生する内部短絡を生じる。
異なるレベルの放電後の両方のFR6Li/FeS2セルの後続の試験は、放電が進むのに伴って大きくなるFR6セルの全電極体積の純増加によって、セルが50%放電したときには、電極ストリップの曲がり及び座屈と、電極組立体の中央コアのつぶれが生じる。対照的に、螺旋巻き電極を備えたLi/MnO2セルの同様の試験は、50%放電時に電極組立体の識別できる変化はほとんどないことを示した。活性材料の体積と放電反応生成物の体積との間の差が、螺旋巻き電極組立体のLi/FeS2セル及びLi/MnO2セルにおける放電の影響の違いについての説明を与える。
【実施例3】
【0059】
各々が異なる材料から形成されたセパレータを備える、FR6セルの4つのロットを作成した。セパレータ材料の説明が表1の中で与えられ、後述する方法によって求められた典型的なセパレータ特性が表2においてまとめられる。ロットAのために用いられるセパレータ材料は、実施例1のセルに用いられたものと同じである。各々のセルは、約1.60gの電解質を含み、その電解質は、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾール(63.05:27.63:0.18重量%)の溶媒ブレンド中に9.14重量%のLiI塩からなるものであった。
【0060】

【0061】

【0062】
ロットA−Dの全てについて同じセル設計が用いられた。セル設計は、界面高さに対する電極組立体気孔体積の比が約0.452である実施例1からのセルに比べて、より多い量の活性材料、カソード混合物中のより高濃度のFeS2、及び、増加した電極界面表面積、並びに、より低いアノード:カソード全入力容量比を有し、結果としてセル界面容量が22%増加した。
【実施例4】
【0063】
実施例3の各々のロットからのセルを50%放電し、次いで衝撃試験で試験した。試験で170℃を超えるセルの割合は、ロットAについては20%、ロットBについては80%、ロットC及びDについては0%であった。
界面高さに対する電極組立体気孔体積の比が約0.452である実施例1からのセルに比べて界面容量が22%増加することによって、衝撃試験で170℃を超えるセルの割合は、0%から20%まで増加した。ロットAからのセルは、未反応の活性材料の体積に比べて、放電反応生成物の体積の純増加に適応するための減少した量の気孔スペースを有し、実施例2において観測されたLi/FeS2電極組立体に対する放電の悪影響を増加させる。
ロットAに比べて減少したロットBのセパレータ材料厚さは、衝撃試験で170℃を超えるセルの割合の20%から80%へのさらなる増加に寄与した。
ロットC及びロットDのセパレータ材料の厚さは、ロットBのセパレータの厚さと同じであったが、ロットC又はロットDのいずれにおいてもセルは存在しなかった。ロットC及びロットDにおいてカソード内の気孔体積及びセパレータ材料厚さが両方とも減少するにもかかわらず、ロットC及びロットDについての結果は、界面高さに対する電極組立体気孔体積の比が約0.452である実施例1からのセルについての結果に匹敵するものであった。
【実施例5】
【0064】
比較的低定格及び高定格の放電試験でFR6セルの実性能を比較するために、FR6セルの3つのロットを用いた。第1ロットは実施例3からのロットDであった。ロットDの特徴は図3にまとめられている。列挙された値は公称値であり、典型的な製造許容誤差内で変化することがある。
ロットE及びFのセルは、従来技術に従って作成した。ロットFのセルは、界面高さに対する電極組立体気孔体積の比が約0.452である実施例1と同様のものであった。ロットE及びFの特徴は表3に示されている。ロットEにおいては、ロットFと同じセパレータ材料が用いられたが、ロットEにおいては、カソード混合物の組成が変更され、セル界面容量がロットFに比べて18%増加した。ロットDにおけるより薄い(厚さ20μm)セパレータの使用は、ロットFに比べてセル界面容量を22%増加させた。
【0065】



【実施例6】
【0066】
各々のロットD、E及びFからのセルを、200mAで連続的に1.0ボルトまで、及び、1000mAで連続的に1.0ボルトまで放電させた。表4は結果を比較するものである。
【0067】

【0068】
以下のセパレータ材料特性は、対応する方法に従って求められる。特に指定のない限り、全ての開示された特性は、室温(20−25℃)で求められる。
・引張応力は、ASTM D882−02に従ってInstron Model 1123 Universal Testerを用いて求められた。サンプルは、0.50インチ(1.27cm)×1.75インチ(4.45cm)に切断された。最初のジョー分離は1インチ(2.54cm)であり、歪み速度は2インチ(5.08cm)毎分であった。引張応力は、かけられた力を最初の断面積(かけられた力に垂直なサンプルの幅にサンプルの厚さをかけたもの)で割ったものとして計算された。
・最大有効孔径は、Scanning Electron Microscopeを用いて倍率30,000倍で作成され4μm×3μmの面積をカバーするイメージ上で測定された。各々のセパレータ・サンプルについて、イメージは両方の主要面からなるものであった。各々のイメージ上で、孔壁内に適合する最大円直径(個々の孔の最大有効直径)を求めるために最大孔が測定された。サンプルの最大有効孔径は、各側における2つの最大孔の最大有効孔径を平均することによって計算された(すなわち、4つの個別の孔の平均)。
・多孔率は、(1)セパレータ・サンプルを切断し、(2)サンプルを計量し、(3)サンプルの長さ、幅及び厚さを測定し、(4)質量と測定値から密度を計算し、(5)計算された密度を、セパレータの製造業者によって提供されるセパレータのポリマー樹脂の理論密度で割り、(6)割られたものに100を掛け、(7)100からこの値を引くことによって求められた。
【0069】
・絶縁破壊電圧は、セパレータ・サンプルを、それぞれ直径2cmであって平らな円形先端部を有する2つのステンレス・スチール・ピンの間に配置し、Quadtech Model Sentry 20ハイポット・テスターを用いてピンの両端に増加する電圧を印加し、表示された電圧(電流がサンプルを通ってアーク放電するときの電圧)を記録することによって求められた。
・引張伸び(破壊までの伸び)は、ASTM D882−02に従ってInstron Model 1123 Universal Testerを用いて求められた。サンプルは、0.50インチ(1.27cm)×1.75インチ(4.45cm)に切断された。最初のジョー分離は1インチ(2.54cm)であり、歪み速度は2インチ(5.08cm)毎分であった。引張伸びは、破壊時のサンプル長さから最初のサンプル長さを引き、残りを最初のサンプル長さで割り、割られたものに100%を掛けることによって計算された。
【0070】
・面積抵抗率(ASR)は、抵抗測定を行うために、米国オハイオ州イエロースプリングス所在のYellow Springs InstrumentからのModel 34 Conductance−Resistance Meterを用いて、2つのプラチナ電極間の電解質中に吊り下げられたセパレータ・サンプルについて求められた。使用された電解質溶液は、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾール(63.05:27.63:0.18重量%)の溶媒ブレンド中に9.14重量%のLiI塩であった。全ての試験は、水が1ppmより少なく、酸素が100ppmより少ない雰囲気内で行われた。セパレータの1.77cm2の面積が露出された状態でセパレータ・サンプルを保持するように設計された非導電性のサンプル・ホルダを、サンプルを保持するためのホルダの部分が、0.259cm離れた2つのプラチナ電極間の中間に位置するように、電解質溶液の中に浸した。電極間の抵抗を測定した。ホルダを電解質から取り出し、セパレータ・サンプルをホルダの中に挿入し、サンプルが完全に電解質で溢れてサンプル内に気泡が閉じ込められないように、同じ設定レベルまで、ホルダを電解質溶液の中にゆっくりと下ろした。抵抗を測定した。ASRは、次式を用いて計算した。
ASR=A(R2−R1+ρL/A)
式中、Aは、セパレータ・サンプルの露出面積であり、R2は、膜が存在するときの抵抗値であり、R1は、膜が存在しないときの抵抗値であり、Lは、セパレータ・サンプルの厚さであり、ρは、使用された電解質の導電率である。
【0071】
・比表面積は、米国ジョージア州ノークロス所在のMicromeritics Instrument CorporationからのTriStarガス吸着分析器を用いて、BET法によって求められた。0.1gから0.2gのセパレータ・サンプルを1cm2より小さい小片に切断してサンプル・ホルダに嵌め、窒素ストリームの下で70℃で1時間脱気し、吸着ガスとして窒素を用いて孔径分布分析を行い、フル吸着/脱着等温線を収集した。
【実施例7】
【0072】
螺旋巻き電極組立体を有する円筒形FR6型リチウム/FeS2セルは、22μmのFeS2粒子(対照)、75μmの粗いサイズのFeS2、5μmから10μmの間のメディア・ミルされたFeS2(計算された推定値)、及び、4.9μmのジェット・ミルされたFeS2といった種々の平均粒径のFeS2粒子を用いて構成された。セルは、FeS2平均粒径と、典型的な及び予想されるプロセスの変化以外は、表3のロットDのセルと同一であった。図3a及び図3bは、それぞれ、従来の(ミルされていない)及びメディア・ミルされたカソード・スラリー混合物を用いて作成されコーティングされたカソードの断面のSEM写真である。
【0073】
各々のセルの放電時間は、前述の1500/650mW 2/28s×10毎時 DSC試験を用いて試験された。結果を表5a及び5bに示す。メディア・ミルされたFeS2含有セルを用いて2組の試験が行われた。
【0074】

【0075】

【0076】
表5a及び表5bから明らかなように、メディア・ミルされたFeS2粒子及びジェット・ミルされたFeS2粒子を用いて用意されたセルは、従来技術の平均粒径22μmの対照FeS2粒子及び平均粒径75μmの粗サイズFeS2粒子と比べたときに、1.05ボルトまでの実質的に長い放電時間を与えることが示されている。メディア・ミルされたFeS2含有セルはまた、

ボルトの供給時間の平均69.6%にわたって

のカット電圧を維持し、一方、対照は、こうした電圧を供給時間の平均58.9%にわたってのみ維持した。同様に、ジェット・ミルされたFeS2含有セルは、

ボルトの放電時間の85.7%にわたって

のカット電圧を維持した。
【実施例8】
【0077】
螺旋巻き電極組立体を有する円筒形FR6型リチウム/FeS2セルを作成した。FeS2平均粒径、電解質組成、及びセパレータ厚さを、表6に記載されたように変化させた。セルの残りの特徴は、典型的な及び予想されるプロセスの変化以外は、表3のロットDについて説明されたのと同一であった。セル1−4は従来技術のセルを表す。
【0078】

【0079】
各々のセルは、1500/650mW 2/28s×10毎時DSC試験を用いて試験された。電解質−セパレータ抵抗とFeS2粒子サイズの影響が図4に示されている。セル群のプロットは、セパレータ厚さの減少、比較的小さい平均粒径のFeS2粒子の使用、並びに、電解質の種類が、カソード効率に個々に影響を及ぼすことを示している。図4においては、最も低いラインは、セル1−4の実験結果の最良適合ラインのプロットを表す。同様に、残りのラインは、上昇順に、それぞれセル5−8、9−12及び13−16の結果を表す。
【実施例9】
【0080】
螺旋巻き電極組立体を有する円筒形FR6型リチウム/FeS2セルのアノード電圧を、セルの寿命にわたって測定した。セルは、第1セルが平均粒径22μmのFeS2から構成され、第2セルが5から10μmの間の平均粒径(計算された推定値)のメディア・ミルされたFeS2粒子を使用し、第3セルが平均粒径4.9μmのジェット・ミルされたFeS2粒子を使用したことと、典型的な及び予想されるプロセスの変化以外は、表3のロットDについて説明されたのと実質的に同一の構成であった。各々のセルのアノード電圧を、図5に示すように放電深度の関数としてプロットした。放電深度の関数としてのフル・セル電圧は、図6にプロットされる。試験手順は上記に記載されている。
【0081】
50%放電深度において、アノード電圧は40ミリボルト減少し、平均粒径は22から5.2μmに減少する。平均FeS2粒径を22μmから4.9μmに減少させることにより、アノード電圧が150ミリボルト減少した。L92サイズの電気化学セルを同様の方法で作成し試験した。ここで開示された平均粒径範囲のFeS2を用いることにより、セルのサイズに関係なく、あらゆる所定の放電深度において全てのセル電圧が増加することが分かった。
【実施例10】
【0082】
FeS2平均粒径は、標準雰囲気条件において高いセル性能に強く影響するが、低温ではさらに大きな影響を有する。以下の表7は、5から10μmの間の平均粒径(計算された推定値)のメディア・ミルされたカソードと平均粒径22μmの対照FeS2との2つの異なる研究と、温度の関数としてのセル性能を比較するものである。セルは、典型的な及び予想されるプロセス変化以外は、表3のロットDについて説明されたのと実質的に同じく構成された。試験は、1.05ボルトに予め定められた(1500mW/650mW)、提案された標準模擬DSC−ANSIアプリケーションである。粒径の減少によって、周囲条件において性能が5%又はそれ以上向上するが、−20℃において600%を上回る向上が観測される。
【0083】

【0084】
当業者であれば、開示された概念の精神から逸脱することなく、本発明に種々の修正及び改善を加えることができることが分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の電気化学バッテリ・セルの実施形態を示す図である。
【図2】界面高さ内の電極組立体の単位高さ当たりの気孔の体積の関数としての部分的に放電されたFR6セルについての衝撃試験結果を示すグラフである。
【図3a】従来技術のFeS2粒子を含む正極の一部の、倍率1,000倍のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図3b】本発明のメディア・ミル・プロセスを用いて製造されたFeS2粒子を含む正極の一部の、倍率1,000倍のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【図4】種々のセパレータ厚さ、FeS2の平均粒径、及び電解質組成物を有する、構成されたFR6タイプのセルのセットについての、セパレータ厚さの関数としてのDSCアプリケーションにおけるカソード効率のプロットである。
【図5】従来技術のFeS2含有電気化学セル、メディア・ミルされたFeS2粒子を含有するセル、及びジェット・ミルされたFeS2粒子を含有するセルについての、放電深度割合の関数としてのアノード電圧のグラフである。
【図6】従来技術のFeS2含有電気化学セル、メディア・ミルされたFeS2粒子を含有するセル、及びジェット・ミルされたFeS2粒子を含有するセルについての、放電深度割合の関数としてのセル電圧のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学バッテリ・セルであって、
ハウジングと、
リチウムを含む負極と、
1μmから19μmまでの平均粒径を有する49重量%より多い二硫化鉄を含有する活性材料を含む正極と、
前記ハウジング内に配置された非水性電解質中に溶解された少なくとも1つの塩を含む電解質混合物と、
前記負極と前記正極との間に配置されたセパレータと、
を含むことを特徴とするセル。
【請求項2】
前記二硫化鉄の平均粒径範囲が1μmから17μmまでであることを特徴とする請求項1に記載のセル。
【請求項3】
前記二硫化鉄の平均粒径範囲が1.5μmから15μmまでであることを特徴とする請求項2に記載のセル。
【請求項4】
前記二硫化鉄の平均粒径範囲が2μmから6μmまでであり、前記二硫化鉄が天然のものであることを特徴とする請求項3に記載のセル。
【請求項5】
前記セルがFR6型セルであり、室温で連続的に1.0ボルトまで200mAの定格で放電したときに、少なくとも3000mAhの放電容量を与えることができることを特徴とする請求項1に記載のセル。
【請求項6】
前記セルが、FR6型セルであり、5mA/cm2の電流密度を用いて前記セルを1アンペアで2分間、0アンペアで5分間サイクルする室温での50%放電深度において、1.25ボルトより高い電圧を有することを特徴とする請求項1に記載のセル。
【請求項7】
前記セパレータが1μmから50μmまでの厚さを有することを特徴とする請求項3に記載のセル。
【請求項8】
前記セパレータの厚さが5μmから25μmまでであることを特徴とする請求項7に記載のセル。
【請求項9】
前記二硫化鉄が正極活性材料の80%より多くを構成し、前記二硫化鉄が天然のものであることを特徴とする請求項1に記載のセル。
【請求項10】
前記セルがFR6型セルであり、室温で連続的に1.05ボルトまで1アンペアの定格で放電したときに、少なくとも2700mAhの放電容量を与えることができることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載のセル。
【請求項11】
前記セルが、室温で1500/650mW 2/28s×10毎時DSC試験に従って1.05ボルトまで少なくとも320分の放電時間を有するFR6型セルであることを特徴とする請求項4に記載のセル。
【請求項12】
前記二硫化鉄が正極活性材料の95%より多くを構成し、前記二硫化鉄粒子の平均粒径が2μmから6μmまでであり、隣接する負極及び正極間の電極ギャップが15μmから49μmまでであることを特徴とする請求項9に記載のセル。
【請求項13】
前記セパレータが約16μmより薄い厚さを有し、前記セルが、FR6型セルであり、5mA/cm2の電流密度を用いて前記セルを1アンペアで2分間、0アンペアで5分間サイクルする室温での50%放電深度において、約1.3ボルトより高い電圧を有することを特徴とする請求項12に記載のセル。
【請求項14】
前記二硫化鉄粒子が、全粒子の80%が1μmから10μmまでの間である粒径分布を有し、前記二硫化鉄が天然のものであることを特徴とする請求項1に記載のセル。
【請求項15】
前記負極、前記正極、及び前記セパレータが、半径方向の外面がハウジング側壁の内面に隣接して配置された螺旋巻き円筒形電極組立体を形成することを特徴とする請求項1に記載のセル。
【請求項16】
前記負極、前記正極、及び前記セパレータが、半径方向の外面がハウジング側壁の内面に隣接して配置された螺旋巻き円筒形電極組立体を形成することを特徴とする請求項12に記載のセル。
【請求項17】
前記正極が、集電体基板と、前記基板の各側におけるコーティングとを含み、前記コーティングが前記活性材料を含有し、前記各々のコーティングが、0.0010cmから0.010cmまでの厚さを有し、前記二硫化鉄が前記正極活性材料の95%より多くを構成することを特徴とする請求項16に記載のセル。
【請求項18】
全放電時間の少なくとも50%が1.2ボルト以上で得られることを特徴とする請求項11に記載のセル。
【請求項19】
電気化学バッテリ・セルであって、
ハウジングと、
リチウムを含む負極と、
49重量%より多い二硫化鉄を含有する活性材料を含む正極と、
前記ハウジング内に配置された非水性電解質中に溶解された少なくとも1つの塩を含む電解質混合物と、
前記負極と前記正極との間に配置されたセパレータと、
を含み、
a)前記電解質が2.5mS/cmより大きい導電率を有し、前記セパレータが1μmから25μmまでの厚さを有し、又は、
b)前記電解質が2.5mS/cmより大きい導電率を有し、前記二硫化鉄が1μmから19μmまでの平均粒径を有し、又は、
c)前記セパレータが1μmから25μmまでの厚さを有し、前記二硫化鉄が1μmから19μmまでの平均粒径を有する、
ことを特徴とするセル。
【請求項20】
前記電解質混合物の導電率が4mS/cmより高いことを特徴とする請求項19に記載のセル。
【請求項21】
前記電解質混合物の導電率が6mS/cmより高いことを特徴とする請求項20に記載のセル。
【請求項22】
前記セパレータの厚さが5μmから20μmまでであることを特徴とする請求項20に記載のセル。
【請求項23】
前記セパレータの厚さが10μmから20μmまでであることを特徴とする請求項20に記載のセル。
【請求項24】
前記セパレータの厚さが10μmから16μmまでであり、前記電解質混合物の導電率が6mS/cmより高いことを特徴とする請求項19に記載のセル。
【請求項25】
前記電解質塩がリチウムトリフルオロメタンスルホン酸塩又はヨウ化リチウムを含み、前記非水性電解質が1,3−ジオキソラン、1,2−ジエトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾールを含むことを特徴とする請求項19に記載のセル。
【請求項26】
前記電解質塩がヨウ化リチウムを含み、前記非水性電解質が1,3−ジオキソラン、1,2−ジエトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾールを含むことを特徴とする請求項21に記載のセル。
【請求項27】
前記電解質塩がヨウ化リチウムを含み、前記非水性電解質が1,3−ジオキソラン、1,2−ジエトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾールを含むことを特徴とする請求項24に記載のセル。
【請求項28】
前記二硫化鉄が2μmから15μmまでの平均粒径を有することを特徴とする請求項20に記載のセル。
【請求項29】
前記二硫化鉄が2μmから15μmまでの平均粒径を有することを特徴とする請求項24に記載のセル。
【請求項30】
前記二硫化鉄が2μmから6μmまでの平均粒径を有することを特徴とする請求項27に記載のセル。
【請求項31】
前記二硫化鉄が2μmから6μmまでの平均粒径を有することを特徴とする請求項29に記載のセル。
【請求項32】
前記セパレータの厚さが5μmから20μmまでであることを特徴とする請求項29に記載のセル。
【請求項33】
前記セパレータの厚さが5μmから20μmまでであることを特徴とする請求項30に記載のセル。
【請求項34】
前記セパレータの厚さが10μmから16μmまでであることを特徴とする請求項30に記載のセル。
【請求項35】
前記セルのアノード電圧が、5mA/cm2の電流密度を用いて前記セルを1アンペアで2分間、0アンペアで5分間サイクルする室温での50%放電深度において、190mVボルトより低いことを特徴とする請求項19に記載のセル。
【請求項36】
前記セルのアノード電圧が、5mA/cm2の電流密度を用いて前記セルを1アンペアで2分間、0アンペアで5分間サイクルする室温での50%放電深度において、約170mVボルトより低いことを特徴とする請求項35に記載のセル。
【請求項37】
前記セルのアノード電圧が、5mA/cm2の電流密度を用いて前記セルを1アンペアで2分間、0アンペアで5分間サイクルする室温での50%放電深度において、約100mVボルトより低いことを特徴とする請求項36に記載のセル。
【請求項38】
前記セルのアノード電圧が、5mA/cm2の電流密度を用いて前記セルを1アンペアで2分間、0アンペアで5分間サイクルする室温での50%放電深度において、190mVボルトより低いことを特徴とする請求項24に記載のセル。
【請求項39】
前記セルのアノード電圧が、5mA/cm2の電流密度を用いて前記セルを1アンペアで2分間、0アンペアで5分間サイクルする室温での50%放電深度において、100mVボルトより低いことを特徴とする請求項29に記載のセル。
【請求項40】
カソードを用意する方法であって、
湿潤剤と、20μmより大きい平均粒径を有する二硫化鉄粒子とを含有するスラリーを形成し、
粉砕メディアを備えるメディア・ミルを用いて前記スラリーをミルして、前記二硫化鉄粒子の粒径を1μmから19μmまでの平均粒径に減少させ、
前記ミルされたカソード・スラリーをカソード基板に適用してカソードを形成し、
前記カソードを乾燥させる、
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項41】
前記湿潤剤が前記スラリーの固形分1グラムあたり0.1ccから5.0ccまでの量で存在し、前記ミルされた二硫化鉄粒子が2μmから15μmまでの平均粒径を有することを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記湿潤剤が、トリクロロエチレン、N−メチル−2−ピロリドン、ブチルグリコールアセテート、ミネラルスピリット、又は水、或いはその組み合わせであり、前記ミルされた二硫化鉄粒子が2μmから6μmまでの平均粒径を有することを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
電気化学バッテリ・セルであって、
ハウジングと、
リチウムを含む負極と、
49重量%より多い二硫化鉄を含有する活性材料を含む正極と、
前記ハウジング内に配置された非水性電解質中に溶解された少なくとも1つの塩を含む電解質混合物と、
前記負極と前記正極との間に配置されたセパレータと、
を含み、前記セルが、室温で1500/650mW 2/28s×10毎時DSC試験に従って1.05ボルトまで少なくとも320分の放電時間を有するFR6型セルであることを特徴とするセル。
【請求項44】
前記放電時間が少なくとも330分であることを特徴とする請求項43に記載のセル。
【請求項45】
前記放電時間が少なくとも340分であることを特徴とする請求項44に記載のセル。
【請求項46】
前記二硫化鉄が約1μmから約15μmまでの平均粒径を有し、前記電解質混合物が約4mS/cmより高い導電率を有することを特徴とする請求項44に記載のセル。
【請求項47】
前記電解質塩がリチウムトリフルオロメタンスルホン酸塩又はヨウ化リチウムを含み、前記非水性電解質が1,3−ジオキソラン、1,2−ジエトキシエタン、及び3,5−ジメチルイソキサゾールを含むことを特徴とする請求項46に記載のセル。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−525960(P2008−525960A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548176(P2007−548176)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/011367
【国際公開番号】WO2006/071249
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(397043422)エバレデイ バツテリ カンパニー インコーポレーテツド (123)
【Fターム(参考)】