説明

高枝刈機

【課題】枝葉避けのカバーを備えた菊座調整式の角度調整部であっても、刈刃の角度調節を適正、かつ容易に行うことが可能な高枝刈機を提供する。
【解決手段】ジョイントケース21に対する刈刃支持ケース22の回動位置を示す凹凸状の第1の係合部としての突起部76を刈刃支持ケース22に揺動可能に支持させると共に、突起部76が摺接移動する凹凸状の第2の係合部77をジョイントケース21に形成し、突起部76が第2の係合部77の凹部77aに位置している状態にあっては、第1及び第2の噛み合い面41,42を適正に噛み合わせることが可能であることを示し、突起部76が第2の係合部77の凸部77bに位置している状態にあっては、第1及び第2の噛み合い面41,42を適正に噛み合わせることが不可能であることを示す噛み合い検出部25を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低草木や高枝を刈り取る高枝刈機に関し、さらに詳しくは、刈刃の角度調整を行うことができる高枝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低草木や高枝の水平切りや斜め切り等、樹木を望む形に剪定できるように刈刃の角度調節を行うことができる高枝刈機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図6に示されるように、この種の高枝刈機1にあっては、エンジン駆動力を伝達する駆動力伝達軸が内挿された操作杆2の先端部に、回転駆動力を往復駆動力に変換して刈刃(レシプロ刃)3を往復動させる刈取部本体4が着脱可能に取り付けられるようになっている。そして、刈取部本体4は、操作杆2に連なるジョイントケース5と、刈刃3に連なると共にジョイントケース5に回動可能に連なった刈刃支持ケース6との間に、刈刃支持ケース6をジョイントケース5に固定することによって刈刃3の角度調整を行う角度調整部7が配設されていた。
【0003】
【特許文献1】特許3457399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この角度調整部7は、図7に示されるように、刈刃支持ケース6に固定されたガイド部材8の案内溝9に、ジョイントケース5に設けられた固定部材としてのノブナット10の軸部11が嵌め込まれている。そして、刈刃3が所望角度となるように刈刃支持ケース6を回動させたのちノブナット10を締め込むことによって、刈刃支持ケース6をジョイントケース5に共締め固定して、刈刃3を所望角度で固定するように構成されている。このため、刈刃支持ケース6はジョイントケース5に対してノブナット10による固定、すなわち点による固定(点止め)がなされているので、低草木や高枝を刈り取る作業中にノブナット10が緩んでしまうと、刈刃支持ケース6をジョイントケース5に共締め固定していた圧着力が減少し、刈刃支持ケース6が回動してしまう虞があった。
【0005】
そこで、角度調整部を菊座調整式(ネジ式)とすることが提案されている。この菊座調整式は、放射状に凹凸部が形成された2つの噛み合い面(いわゆる菊座)をノブナットによって噛み合わせたり、噛み合わせの解除を行うことよって、刈刃を回動自在のフリーの状態としたり、所望角度で固定したりするものである。刈刃の固定は、2つの噛み合い面(菊座)に生ずる摩擦力とノブナットによる圧着力とによって行われるので、点止めよりも大きな結合力が得られる。
ところが、このような菊座調整式の角度調整部にあっては、2つの噛み合い面(菊座)は外部に露出しているため、刈り取った枝葉が2つの噛み合い面(菊座)の周りに溜まりやすく、刈り取り作業の途中で刈刃の角度調節を行うと2つの噛み合い面間に枝葉が入り込んでしまう虞があった。
そして、2つの噛み合い面間に枝葉が入り込んだまま刈刃を固定してしまうと、2つの噛み合い面(菊座)に生じる結合力が低下するため、回転駆動力を往復駆動力に変換する噛み合い歯車が適正に噛み合わなくなったり、刈り取り作業中に刈刃が不用意に回動してしまう虞がある。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、2つの噛み合い面(菊座)のほぼ全周を覆う枝葉避けのカバーを設けることが考えられるが、そのようなカバーを設けてしまうと、2つの噛み合い面(菊座)を目視確認しながら刈刃の角度調整を行うことはできなくなってしまう。
【0007】
そこで、この発明は、上記した従来技術が有している問題点を解決するためになされたものであって、枝葉避けのカバーを備えた菊座調整式の角度調整部であっても、刈刃の角度調節を適正、かつ容易に行うことが可能な高枝刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、操作杆と連結するジョイントケースに設けられた第1の噛み合い面と、前記ジョイントケースに縦回動可能、かつ横方向に進退移動可能に連なると共に刈刃を支持する刈刃支持ケースに設けられた第2の噛み合い面と、を適切に噛み合わせることによって前記刈刃の角度調整を行う菊座調整式の角度調整部を備えた高枝刈機において、
前記ジョイントケースに対する前記刈刃支持ケースの回動位置を示すように前記刈刃支持ケースに揺動可能に支持された凹凸状の第1の係合部と、
前記第1の係合部が摺接移動するように前記ジョイントケースに設けられた凹凸状の第2の係合部と、を備えて構成され、
前記第1の係合部の凸部が前記第2の係合部の凹部に位置している状態にあっては、前記第1及び第2の噛み合い面を適正に噛み合わせることが可能であることを示し、前記第1の係合部の凸部が前記第2の係合部の凸部に位置している状態にあっては、前記第1及び第2の噛み合い面を適正に噛み合わせることが不可能であることを示す噛み合い検出部を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ジョイントケースに設けられた第2の係合部と刈刃支持ケースに設けられた第1の係合部との係合状態、つまり第1の係合部の凸部が第2の係合部の凹部か凸部かの何れかに位置しているかによって第1及び第2の噛み合い面を適正に噛み合わせることが可能か否かを判断することができる。これにより、枝葉避けのカバーを装着したことによって、第1及び第2の噛み合い面を目視確認することができなくなったとしても、刈刃の角度調整を適正、かつ容易に行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高枝刈機によれば、ジョイントケースに設けられた第2の係合部と刈刃支持ケースに設けられた第1の係合部との係合位置関係によって、第1及び第2の噛み合い面を適正に噛み合わせることが可能か否かを判断する噛み合い検出部を備えた。これにより、枝葉避けのカバーを備えた菊座調整式の角度調整部であっても、刈刃の角度調節を適正、かつ容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の最も好適と思われる実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の高枝刈機における刈取部本体の斜視図、図2は、同刈取部本体の分解斜視図、図3は、ジョイントケースの側面図、図4(a)は、刈刃の角度調整を行う際の手順を説明するための図、(b)は、刈刃の角度調整を行う際のレバー部材の動作を示した図、図5(a)は、刈刃を折り畳む前の状態を示した図、(b)は、刈刃を折り畳む際のレバー部材の動作を示した図、(c)は、刈刃を折り畳んだ状態を示した図である。なお、従来と同様な構成部材(例えば、操作杆、刈刃等)については、同一の符号を用いて説明するものとする。
【0012】
本発明は、エンジン駆動力を伝達する駆動力伝達軸が内挿された操作杆の先端部に、回転駆動力を往復駆動力に変換して刈刃を往復動させる刈取部本体が着脱可能に取り付けられるように構成された高枝刈機に適用されるものである。
図1,2に示されるように、この高枝刈機における刈取部本体20は、刈刃3、ジョイントケース21、刈刃支持ケース22、菊座調整式(ネジ式)の角度調整部23、2つの噛み合い面(菊座)のほぼ全周を覆う枝葉避けカバー24(図2に図示)、2つの噛み合い面(菊座)を適正に噛み合わせることが可能か否かを検出する噛み合い検出部25、を備えて構成されている。
なお、以下にあっては、ジョイントケース21の長手方向を前後方向として説明すると共に、ジョインケース21に対して刈刃支持ケース22が縦回動し、かつ横方向に進退移動するものとして説明する。
【0013】
詳述すると、ジョイントケース21は、操作杆2と刈取部本体20とを接続すると共に、刈刃支持ケース22を回動調節可能に支持することによって刈刃3の角度調節を行うものである。
図2,3に示されるように、ジョイントケース21の後部には、操作杆2の先端部が挿入される筒状の接続部26が一体的に形成されている。また、ジョイントケース21の右側面には、刈刃支持ケース22の摺動部27が挿入される筒状の第1の突出部28が一体的に形成されていると共に、ジョイントケース21の左側面には、第1の突出部28と同一軸心となる断面ハット状の第2の突出部29が一体的に形成されている。
【0014】
接続部26の下部には、接続部26を縮径、或いは拡径可能とするスリット(図示せず)が前後方向に向かって設けられている。また、接続部26の右側面には、接続部26を縮径、或いは拡径させて操作杆2の先端部と接続部26とを固定したり、解放するための固定ネジ30と、接続部26に挿入された操作杆2の先端部の位置決めをなす位置決めネジ31とが配設されている。
【0015】
また、接続部26の前方のジョイントケース21の内部には、前部にかさ形の第1の歯車32が形成された第1の回転軸33と、第1の回転軸33の後部と操作杆2の駆動力伝達軸(図示せず)とを連結するジョイント34とが、一体的に連なった状態で前後2つのボールベアリング35,36によって回転可能に軸支されている。ボールベアリング35,36は、ジョイントケース21の内壁に嵌合するスナップリング(止め輪)37と、ジョイントケース21の内壁とによって抜け止め固定されている。また、ジョイントケース21の前部は、ネジ止め固定されるカバー38によって閉塞される。
【0016】
第1の突出部28の内部は、刈刃支持ケース22の摺動部27が縦方向に回動可能、かつ左右方向に進退移動可能に挿入される挿入支持部39となっている。この挿入支持部39の軸心位置には、第1の回転軸33の前方において左右方向に向かって進退移動するスライド軸40が配設されるようになっている。なお、スライド軸40の詳細については後述する。また、挿入支持部39の開口縁部には、第1の噛み合い面41が形成されている。この第1の噛み合い面41には、図3に示されるように、菊座をなすように凹部41aと凸部41bとが放射状に形成されており、刈刃支持ケース22の摺動部27の外周面に設けられた第2の噛み合い面42が噛み合わされるようになっている。
【0017】
また、第1の突出部28の外周面には、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42の周囲に枝葉が溜まるのを防止する合成樹脂製の枝葉避けカバー24(図2に図示)が挿着されるようになっている。この枝葉避けカバー24は、ジョイントケース21に取り付けられた状態にあっては、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42を覆うために、噛み合い状態を目視確認することはできなくなってしまう。
【0018】
第2の突出部29には、左右方向に進退移動するスライド軸40を摺接可能に支持する支持孔44(図3に図示)が穿設されていると共に、この支持孔44周りの外周面側には、刈刃3の角度調節を行うノブナット45が、ボルト46によりスライド軸40に抜け止めされた状態で摺接可能に配置されている。
なお、図中の符号47は、ジョイントケース21内部に潤滑用のグリースを注入するためのグリスニップルを示している。
【0019】
次に、刈刃支持ケース22について説明する。
刈刃支持ケース22は、図1,2に示されるように、ジョイントケース21の右側面に縦方向に回動可能、かつ左右方向に進退移動可能に連なり、ジョイントケース21から伝達された回転駆動力を往復駆動力に変換して刈刃3を往復動させるものである。この刈刃支持ケース22の左側部には、第1の支持部28の挿入支持部39に挿入される筒状の摺動部27が一体的に形成されている。さらに、この摺動部27の外周面には、第2の噛み合い面42が形成されている。この第2の噛み合い面42には、菊座をなすように凹部42aと凸部42bとが放射状に形成されており、第1の噛み合い面41に噛み合い可能とされている。
【0020】
この摺動部27の軸心には、ノブナット45の回動に応じて左右方向に非回動のまま進退移動することによってジョイントケース21に対して刈刃支持ケース22を接離させるスライド軸40が配設されている。このスライド軸40の中央部には、左右方向に2つ並んだニードルベアリング48,49を介して中空状の第2の回転軸50が相対回転可能に配設されていると共に、第2の回転軸50の外周面に沿って設けられたニードルベアリング51を介して摺動部27に回動可能に支持されている。
【0021】
この第2の回転軸50の右端部には、第1の歯車32と噛み合うかさ形の第2の歯車52が一体的に形成されていると共に、第2の回転軸50の左端部には、後述するかさ形の第4の歯車53に噛み合うかさ形の第3の歯車54が一体的に形成されている。また、この第2の回転軸50の左右端部は、スライド軸40に一体形成されたフランジ部55と、スライド軸40の軸周りに嵌着されるスナップリング(止め輪)56とによって抜け止め固定されている。
【0022】
さらに、刈刃支持ケース22の内部には、スライド軸40の下方側において、スライド軸40と直交するように延設された第3の回転軸57がボールベアリング58を介して回転可能に軸支されている。なお、ボールベアリング58は、スナップリング(止め輪)59によって抜け止め固定されている。また、スナップリング60は、コンロッド62の上方への移動を規制する。さらには、スライド軸40に近接した第3の回転軸57の上端部には、第3の歯車54と常時噛み合うかさ形の第4の歯車53がスプライン嵌合された状態でスナップリング(止め輪)61によって抜け止め固定されている。
【0023】
また、この第3の回転軸57の下端部には、刈刃3の基端部に連なった上下一対のコンロッド62,63を相対往復動させるための偏心カムシャフト64,65が一体的に連なっている。なお、図2中の符号66,67は、刈刃支持ケース22の内部に潤滑用のグリースを注入するためのグリスニップル、符号68は、不使用時に刈刃に被せる刈刃カバー、符号69は、刈刃3を摺動可能に支持する押さえ板(ブレードガイド)、符号70は、刈刃支持ケース22の底部を塞ぐケースカバーをそれぞれ示している。
【0024】
これにより、エンジン駆動力を伝達する操作杆2内の駆動力伝達軸の回転駆動力は、第1の回転軸33に伝達されたのち、第1及び第2の歯車32,52により右方向に約90度曲げられて第2の回転軸50に伝達され、第2の回転軸50に伝達された回転駆動力は、第3及び第4の歯車54,53により下方向に約90度曲げられて第3の回転軸57に伝達される。そして、この第3の回転軸57に連なった偏心カムシャフト64,65がコンロッド62,63を相対往復動させることによって刈刃3を往復動させるようになっている。
【0025】
次に、角度調整部23について説明する。
角度調整部23は、図2に示されるように、スライド軸40、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42、ノブナット45を備えて構成されている。なお、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42については、上述したのでここでの説明は省略する。
スライド軸40は、第1の回転軸33の前方において、第1の回転軸33と直交する左右方向に延設されていると共に、第1及び第2の突出部28、29、及び摺動部27の軸心に配置されている。このスライド軸40の右端部は、刈刃支持ケース22の内壁に設けられた回転防止用平面部(図示せず)にネジ止め固定されており、スライド軸40は、回転が阻止された状態で刈刃支持ケース22に一体的に連なっている。
【0026】
また、スライド軸40の左端部は、ジョイントケース21の第2の突出部29の支持孔44から外部に突出した状態でジョイントケース21に摺接可能に支持されていると共に、このスライド軸の40外周面にはノブナット45が噛み合うネジ部71が所定距離だけ形成されている。そして、このネジ部71に噛み合わされたノブナット45は、ボルト46により抜け止めされている。
また、スライド軸40のフランジ部55よりも左側の軸部と第2の突出部29との間には、付勢バネ72が配設されており、この付勢バネ72によって刈刃支持ケース22はジョイントケース21から離脱する方向に常時付勢されている。なお、この付勢バネ72と突出部との間にはワッシャ73が介装されている。
さらには、刈刃支持ケース22の後部には、フランジ部74が一体形成されており、このフランジ部74に刈刃支持ケース22の回動を容易化するための把持部75が刈刃3と異なる方向に延びるように取り付けられている。
【0027】
これにより、ノブナット45を所定方向(例えば、反時計回り方向)に回動すると、スライド軸40は、外側に突出している左端部がジョイントケース21内に引き込まれるようにスライド移動して、ジョイントケース21から刈刃支持ケース22を離脱させる。その際、作業者が不用意にノブナット45を最大限に緩めても、ボルト46によってジョイントケース21から刈刃支持ケース22が脱落することがないようになっている。
また、ノブナット45を逆方向(例えば、時計回り方向)に回動すると、スライド軸40は、左端部がさらにジョイントケース21から引き出されるようにスライド移動して、刈刃支持ケース22をジョイントケース21に向かって移動させる。その際、2つの噛み合い面(菊座)41,42が適正、つまり互いに対向する凸部41b(42b)と凹部42a(41a)とがきちんと噛み合うように位置決めがなされていれば、ジョイントケース21と刈刃支持ケース22とがしっかりと固定される。
【0028】
このように、ノブナット45によって刈刃3の角度調節が行われるようになっているが、ジョイントケース21に枝葉避けカバー24が取り付けられた状態にあっては、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42の噛み合い状態を目視確認しながら刈刃3の角度調整を行うことはできない。
【0029】
そこで、この刈取部本体20は、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42の噛み合い状態を検出する噛み合い検出部25を備えている。
【0030】
噛み合い検出部25について説明する。
噛み合い検出部25は、図2,3に示されるように、ジョイントケース21に対する刈刃支持ケース22の回動位置を示すように刈刃支持ケース22に揺動可能に支持された凹凸状の第1の係合部としての突起部76と、突起部76が摺接移動するようにジョイントケース21に設けられた凹凸状の第2の係合部77とを備えて構成されている。
これら突起部76と第2の係合部77とは、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42が適正に噛み合っている状態にあっては、突起部76が第2の係合部77の凹部77a(図3に図示)に位置し、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42が適正に噛み合っていない状態にあっては、突起部76が第2の係合部77の凸部77b(図3に図示)に位置するように予め設定されている。
すなわち、突起部76が第2の係合部77の凹部77aに位置している状態にあっては、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42を適正に噛み合わせることが可能であることを示し、また、突起部76が第2の係合部77の凸部77bに位置している状態にあっては、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42を適正に噛み合わせることが不可能であることを示すようになっている。
【0031】
なお、噛み合い検出部25は、上述した構成にのみ限定されるものではなく、ジョイントケース21側に突起部76を設けると共に、刈刃支持ケース22側に第2の係合部77を設けるようにしてもよい。
【0032】
突起部76は、図2に示されるように、丸棒体であって、把持部75の基端部と共に刈刃支持ケース22に揺動可能に取り付けられたY字状のレバー部材78の前側の自由端部78aに横向きに取り付けられている。そして、この突起部76は、ジョイントケース21から刈刃支持ケース22が脱落しない状態、つまり、第1及び第2の刈り取り面(菊座)41,42が最大限離間した状態であっても第2の係合部77から離れないように、その長手距離が設定されている。また、レバー部材78の後側の自由端部78bは、作業者が第2の係合部77や後述するフランジ部80に対して突起部76を接離操作するための操作部である。
また、このレバー部材78の揺動基部78cには付勢バネ79が配設されており、突起部76をフランジ部80の外周縁部に向かって常時付勢するようになっていると共に、作業者によるレバー操作が行われた場合は、フランジ部80の外周面から突起部76を容易に離脱させることができるようになっている。
なお、突起部76をフランジ部80の外周縁から離脱させた状態にあっては、ジョイントケース21に対して刈刃支持ケースを360度回動させることが可能となっている。
【0033】
第2の係合部77は、図3に示されるように、ジョイントケース21の第1の突出部28の外周面に一体形成されたフランジ部80の周縁部に、刈り取り作業に好適な刈刃3の回動範囲を示すように形成されている。この第2の係合部77の両端には、刈刃3による刈り取り作業を行ううえでの限界角度を示す、凹み具合がよりきつくなった角度規制部が77c,77dが設けられている。角度規制部77cに突起部76が位置している状態にあっては、刈刃3は最大限下向きとなり、また、一方の角度規制部77dに突起部76が位置している状態にあっては、刈刃3は最大限上向きとなる。
【0034】
また、第2の係合部77の凸部77bの頂部形状はほぼ緩やかな曲面とされており、突起部76が第2の係合部77に沿って摺接移動しやすいようになっている。さらに、このフランジ部80の外周縁部には、収納時、梱包時用に、刈刃3を操作杆2に重ね合わせるように折り畳んだ状態で固定するための切り欠き部81が形成されている。
【0035】
次に、刈刃3の角度調整について図4,5を用いて説明する。
図4(a)に示されるように、操作杆2と刈刃3との長手方向がほぼ一致する状態、つまり突起部76が既に第2の係合部77に位置している状態にあっては、作業者は、ノブナット45を緩めて、ジョイントケース21から刈刃支持ケース22が離脱する方向(右方向)に移動させる。やがて、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42が非噛み合い状態になると、刈刃支持ケース22が回動可能になるので、刈刃3が所望角度(上向き、或いは下向き)となるように、把持部75を握りながら刈刃支持ケース22を回動させる。そして、図4(b)に示されるように、刈刃支持ケース22の回動に応じて突起部76が第2の係合部77に沿って摺接移動し、突起部76が第2の係合部77の凹部77aに位置している状態(図中にあっては実線で示す)、つまり、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42が適正に噛み合うように配置された状態でノブナット45を締め込んでいけば、刈刃支持ケース22はジョイントケース21にしっかり固定され、刈刃3を所望角度で固定することができる。
【0036】
また、図5(a)に示されるように、操作杆2と刈刃3との長手方向がほぼ一致する状態から、例えば、収納時や梱包時等、機体全長を短縮したい場合は、図5(b)に示されるように、作業者は、フランジ部80から突起部76を離脱させるようにレバー部材78の操作部78bを操作する。そして、その状態において操作杆2に刈刃支持ケース22を重ねるように図中時計回りに方向に刈刃支持ケース22を回動させてから、フランジ部80の切り欠き部81に突起部76を係合させるようにレバー部材78の操作部78bを操作すると、図5(c)に示されるように、刈刃3を折り畳んだ状態で固定することができる。
【0037】
このようにして刈刃3の角度調整を行うことによって、作業者は、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42の噛み合い状態を目視確認しなくても、突起部76が第2の係合部77の凹部77aに係合していれば、ノブナット45を締め込むことによって刈刃支持ケース22をジョイントケース21に確実に固定することができる。すなわち、枝葉避けカバー24を備えた菊座調整式の角度調整部23であっても、刈刃3の角度調整を容易、かつ適切に行うことができるようになる。
【0038】
以上述べたように、本実施形態の高枝刈機にあっては、ジョイントケース21に設けられた第2の係合部77と刈刃支持ケース22に設けられた突起部76との係合状態、つまり突起部76が第2の係合部77の凹部77aか凸部77bかの何れかに位置しているかによって、第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42を適正に噛み合わせることが可能か否かを判断する噛み合い検出部25を備えた。これにより、枝葉避けカバー24によって第1及び第2の噛み合い面(菊座)41,42を目視確認することができなくても、刈刃3の角度調整を適正、かつ容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の高枝刈機における刈取部本体の斜視図である。
【図2】同刈取部本体の分解斜視図である。
【図3】ジョイントケースの側面図である。
【図4】(a)は、刈刃の角度調整を行う際の手順を説明するための図、(b)は、刈刃の角度調整を行う際のレバー部材の動作を示した図である。
【図5】(a)は、刈刃を折り畳む前の状態を示した図、(b)は、刈刃を折り畳む際のレバー部材の動作を示した図、(c)は、刈刃を折り畳んだ状態を示した図である。
【図6】従来の高枝刈機の斜視図である。
【図7】従来の高枝刈機における刈取部本体の側面図である。
【符号の説明】
【0040】
2…操作杆
3…刈刃
20…刈取部本体
21…ジョイントケース
22…刈刃支持ケース
23…角度調整部
24…枝葉避けカバー
25…噛み合い検出部
41…第1の噛み合い面
42…第2の噛み合い面
76…突起部(第1の係合部)
77…第2の係合部
77a…凹部
77b…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作杆と連結するジョイントケースに設けられた第1の噛み合い面と、前記ジョイントケースに縦回動可能、かつ横方向に進退移動可能に連なると共に刈刃を支持する刈刃支持ケースに設けられた第2の噛み合い面と、を適切に噛み合わせることによって前記刈刃の角度調整を行う菊座調整式の角度調整部を備えた高枝刈機において、
前記ジョイントケースに対する前記刈刃支持ケースの回動位置を示すように前記刈刃支持ケースに揺動可能に支持された凹凸状の第1の係合部と、
前記第1の係合部が摺接移動するように前記ジョイントケースに設けられた凹凸状の第2の係合部と、を備えて構成され、
前記第1の係合部の凸部が前記第2の係合部の凹部に位置している状態にあっては、前記第1及び第2の噛み合い面を適正に噛み合わせることが可能であることを示し、前記第1の係合部の凸部が前記第2の係合部の凸部に位置している状態にあっては、前記第1及び第2の噛み合い面を適正に噛み合わせることが不可能であることを示す噛み合い検出部を備えたことを特徴とする高枝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−220175(P2008−220175A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58279(P2007−58279)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000250270)落合刃物工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】