説明

高架橋のアプローチ部の施工方法、及びアプローチ部の施工方法に基づく構造、並びに前記構造を備える構造物

【課題】既設道路の通行を大幅に規制すること無く、規制する場合においても夜間等の短時間のみの規制だけで高架橋のアプローチ部を構築することが可能なアプローチ部の施工方法、及びアプローチ部の施工方法に基づく構造、並びに前記構造を備える構造物を提供する。
【解決手段】アプローチ部5は、所望のアプローチ部5幅よりも狭く構築される第1の部分の先行施工部9と、この先行施工部9の側面に隣接して構築される第2の部分の急速施工部11とにより構成される。急速施工部11は、筒状の急速部用角形ブロック19の軸方向が鉛直方向となるように配列され、この急速部用角形ブロック19の側面が先行施工部9の急速部用角形ブロック19の側面に当接するように設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高架橋のアプローチ部の施工方法、及びアプローチ部の施工方法に基づく構造、並びに前記構造を備える構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、例えば、図19に示すような片側2車線で往復4車線の道路の中央部に高架橋のアプローチ部を構築する場合には、図20に示すように、構築する高架橋の幅及び作業領域の幅(=作業帯)を確保するために、既設道路の片側1車線の往復2車線を通行止めとし、この通行止め区間を利用してアプローチ部を構築していた。しかし、この既設道路の片側1車線ずつを通行止めとする方法では、工事期間中においては、常に片側1車線ずつしか利用できないために、交通渋滞が生じるという問題点があった。
【0003】
そこで、できるだけ車線の通行止め期間を短くする方法として、例えば、特許文献1に、片側2車線で往復4車線の既設道路の中央分離帯部分に高架橋の幅より小なる幅を有する底版を設置し、底版の両側上面に側壁を配置し、この側壁上に高架橋の幅を有するプレキャスト床版を設置する方法が開示されている。この方法は、まず、車線を通行止めにしない状態で、既設道路の中央分離帯部分に高架橋の幅よりも小さく、かつ、中央分離帯程度の幅を有する底版を設置する。次に、車線を通行止めにしない状態のまま、この底版の両側上面に側壁を設置する。そして、最後は、片側1車線の往復2車線を通行止めにし、この広くなった作業領域を利用して、予め工場等にて製作された高架橋の幅を有するプレキャスト床版を側壁に設置する。
【特許文献1】特開2004−285627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されている方法では、プレキャスト床版と側壁との接続には、セメント材等を利用するために、養生のための時間が3〜4日程度かかるという問題点があった。また、養生後に、プレキャスト床版の上面にアスファルト等の舗装を施工するために、さらに、舗装作業に数日間程度かかるという問題点があった。そして、これらの養生期間及び舗装作業期間においては、片側1車線の往復2車線を一日中通行止めにするために、昼間等の交通量の多いときは交通渋滞が生じるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、既設道路の通行を大幅に規制すること無く、規制する場合においても夜間等の短時間のみの規制だけで高架橋のアプローチ部を構築することが可能なアプローチ部の施工方法、及びアプローチ部の施工方法に基づく構造、並びに前記構造を備える構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、高架橋のアプローチ部を構築する方法であって、前記アプローチ部を道路幅員方向に第1の部分と、これに隣接する第2の部分とに分割して、前記第1の部分を先行して構築し、前記第2の部分を、前記第1の部分の施工よりも急速に施工が可能な急速施工法で構築することを特徴とする(第1の発明)。
本発明によるアプローチ部の施工方法によれば、第1の部分を先行して構築した後に、第2の部分を急速に施工するために、最初に構築する第1の部分は、例えば、既設道路の中央分離帯等の交通に影響をおよぼさない場所のみを利用することにより交通を規制する必要が無い。そして、次に構築する第2の部分は、短時間で急速に構築するために、土日、夜間等の交通量の少ない時間に交通を規制するだけでよく、交通渋滞が生じない。また、第2の部分を構築すると同時にアプローチ部が完成する。したがって、第2の部分を構築すると、直ちに高架橋に車を通行させることが可能となる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記第2の部分の構築は、筒状の角形ブロックを、その軸方向が鉛直方向となるように配設し、該角形ブロックの側面が前記第1の部分の側面に当接するように設置する工程と、前記角形ブロックと前記第1の部分とを接合する工程と、前記角形ブロックの上方にスラブを設置する工程とを備えることを特徴とする。
本発明による第2の部分の構築方法によれば、筒状の角形ブロックを第1の部分に隣接するように設置するだけで第2の部分を構築することができるために、第2の部分を短時間で施工することが可能となる。したがって、土日、夜間等の交通量の少ない時間に交通を規制するだけでよく、交通渋滞が生じない。
【0008】
第3の発明は、第2の発明において、前記第2の部分の前記角形ブロックの上方に設置される前記スラブは、プレキャストコンクリートからなることを特徴とする。
本発明によるアプローチ部の施工方法によれば、プレキャスト材を使用することにより、現場でのコンクリート打設、養生等の作業が無くなるために、工期を短縮することが可能となる。
【0009】
第4の発明は、第2又は3の発明において、前記角形ブロックと前記第1の部分とを接合する工程の前又は後に、隣接する前記角形ブロック同士を接合する工程を更に備えることを特徴とする。
本発明による第2の部分の構築方法によれば、角形ブロックと第1の部分とを接合する工程の前に、隣接する角形ブロック同士を予め接合することにより、複数の角形ブロックを一度に設置することができるために、短時間で第2の部分を構築することが可能となる。一方、角形ブロックと第1の部分とを接合する工程の後に、隣接する角形ブロック同士を接合する方法を用いても、接合作業を流れ作業とすることができるために、作業に無駄が生じず短時間で第2の部分を構築することが可能となる。
【0010】
第5の発明は、第1又は2の発明において、前記第1の部分の構築は、前記角形ブロックを、その軸方向が鉛直方向となるように配設し、前記角形ブロックの側面同士が当接するように前記角形ブロックを設置する工程と、隣接する前記角形ブロック同士を接合する工程と、前記角形ブロックの上方にスラブを設置する工程とを備えることを特徴とする。
本発明による第1の部分の構築方法によれば、角形ブロックを、その軸方向が鉛直方向となるように配設し、角形ブロックの側面同士が当接するように角形ブロックを設置するだけで第1の部分を構築することができるために、第1の部分を短時間で構築することが可能となる。したがって、工期を短縮することが可能となる。
【0011】
第6の発明は、第2〜5のいずれかの発明において、前記角形ブロックと前記第1の部分と、及び隣接する前記角形ブロック同士は、ネジ等の螺合手段にて接合されることを特徴とする。
本発明による接合方法によれば、ネジ等の螺合手段を用いることにより、短時間で確実に、角形ブロックと第1の部分と、及び隣接する角形ブロック同士を接合することが可能となる。
【0012】
第7の発明は、第2〜6のいずれかの発明において、前記角形ブロックは、プレキャストコンクリートからなることを特徴とする。
本発明によるアプローチ部の施工方法によれば、プレキャスト材を使用することにより、現場でのコンクリート打設、養生等の作業が無くなるために、工期を短縮することが可能となる。
【0013】
第8の発明のアプローチ部の構造は、高架橋のアプローチ部の構造において、前記アプローチ部を道路幅員方向に第1の部分と、これに隣接する第2の部分とに分割して構成され、前記第2の部分は、前記第1の部分の施工よりも急速に施工されることを特徴とする。
本発明によるアプローチ部の構造によれば、アプローチ部は第1の部分と第2の部分とから構成されるために、まず、第1の部分を構築し、次に、第2の部分を構築することが可能となる。したがって、最初に構築する第1の部分は、例えば、既設道路の中央分離帯のみ等の交通に影響をおよぼさない場所を利用することにより交通を規制する必要が無い。次に構築する第2の部分は、この第2の部分のみを構築するために、短時間で施工することが可能となり、土日、夜間等の交通量の少ない時間に交通を規制するだけでよく、交通渋滞が生じない。また、第2の部分を構築することにより、アプローチ部を容易に所望の幅に拡幅することが可能となる。
【0014】
第9の発明は、第8の発明において、前記第2の部分は、筒状の角形ブロックの軸方向が鉛直方向となるように配設され、該角形ブロックの側面が前記第1の部分の側面に当接するように設置され、前記角形ブロックと前記第1の部分とが接合され、隣接する前記角形ブロック同士が接合され、前記角形ブロックの上方にスラブが設置されてなることを特徴とする。
本発明による第2の部分の構造によれば、角形ブロックの軸方向が鉛直方向となるように配設され、角形ブロッククの中空部を覆うようにスラブが設置される。したがって、このスラブは、筒状の角形ブロックの側壁部で支持される二方向スラブとなるために、一般的な高架橋の一方向スラブに比べて力学的に有利となり、スラブ厚の低減、鉄筋の削減、RC構造の採用などが可能となり、設計の幅が拡がる。
【0015】
第10の発明は、第8又は9の発明において、前記第1の部分は、前記角形ブロックの軸方向が鉛直方向となるように配設され、前記角形ブロックの側面同士が当接するように設置され、隣接する前記角形ブロック同士が接合され、前記角形ブロックの上方にスラブが設置されてなることを特徴とする。
本発明による第1の部分の構造によれば、角形ブロックの軸方向が鉛直方向となるように配設され、角形ブロックの中空部を覆うようにスラブが設置される。したがって、このスラブは、筒状の角形ブロックの側壁部で支持される二方向スラブとなるために、一般的な高架橋の一方向スラブに比べて力学的に有利となり、スラブ厚の低減、鉄筋の削減、RC構造の採用などが可能となり、設計の幅が拡がる。
【0016】
第11の発明のアプローチ部の構造物は、高架橋のアプローチ部の構造物において、前記アプローチ部を道路幅員方向に第1の部分と、これに隣接する第2の部分とに分割して構成され、前記第2の部分は、前記第1の部分の施工よりも急速に施工されることを特徴とする。
【0017】
第12の発明は、第11の発明において、前記第2の部分は、筒状の角形ブロックの軸方向が鉛直方向となるように配設され、該角形ブロックの側面が前記第1の部分の側面に当接するように設置され、前記角形ブロックと前記第1の部分とが接合され、隣接する前記角形ブロック同士が接合され、前記角形ブロックの上方にスラブが設置されてなることを特徴とする。
【0018】
第13の発明は、第11又は12の発明において、前記第1の部分は、前記角形ブロックの軸方向が鉛直方向となるように配設され、前記角形ブロックの側面同士が当接するように設置され、隣接する前記角形ブロック同士が接合され、前記角形ブロックの上方にスラブが設置されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のアプローチ部の施工方法、及びアプローチ部の施工方法に基づく構造、並びに前記構造を備える構造物を用いることにより、既設道路の通行を大幅に規制すること無く、規制する場合においても夜間等の短時間のみの規制だけで高架橋のアプローチ部を構築することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るアプローチ部の施工方法の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の第一実施形態に係る高架橋1の側面図である。図1に示すように、高架橋1は、図中の紙面左右方向に伸びる既設道路3aと、紙面表裏方向に伸びる他の既設道路3bとの交差点を跨るように形成される立体交差である。
この高架橋1は、既設道路3aの路面から所定高さまで傾斜した路面5aを有する一対のアプローチ部5と、この一対のアプローチ部5の路面間を連結する橋梁部7とが設けられる。
【0022】
図2は、本実施形態に係るアプローチ部5を示す図である。
図2に示すように、アプローチ部5は、所望のアプローチ部5の幅よりも狭く構築される第1の部分の先行施工部9と、この先行施工部9の側面に隣接して構築される第2の部分の急速施工部11とにより構成され、先行施工部9と急速施工部11とで所望のアプローチ部5の幅を形成する。
【0023】
図3は、図2のAの拡大図であり、図4は、図3のB−B’断面図であり、図5は、図3のC−C’正面図である。
【0024】
図3〜5に示すように、先行施工部9は、筒状の先行部用角形ブロック13の軸方向が鉛直方向となるように配列され、この先行部用角形ブロック13の側面同士が当接するように設置されている。これらの隣接する先行部用角形ブロック13同士はネジ等の螺合手段15により接合されている。また、先行部用角形ブロック13の中空部を覆うように先行部用角形ブロック13の上側にスラブ17aが設置され、傾斜した路面が形成されている。本実施形態においては、先行部用角形ブロック13は、例えば、縦が5000mm、横が2500mm、厚さ200mmのプレキャストコンクリートからなる4角形のブロックを用いる。なお、先行部用角形ブロック13の上端部はアプローチ部5と同一の傾斜角を有しているために、先行部用角形ブロック13の高さは設置される位置により適宜異なる。
【0025】
そして、急速施工部11は、筒状の急速部用角形ブロック19の軸方向が鉛直方向となるように配列され、この急速部用角形ブロック19の側面が先行施工部9の先行部用角形ブロック13の側面に当接するように設置され、ネジ等の螺合手段21により接合されている。また、急速施工部11の急速部用角形ブロック19の側面同士が当接するように設置され、ネジ等の螺合手段15により接合されている。そして、急速部用角形ブロック19の中空部を覆うように急速部用角形ブロック19の上側にスラブ17bが設置されて傾斜した路面が形成されている。本実施形態においては、急速部用角形ブロック19は、例えば、縦が5000mm、横が1750mm、厚さ200mmのプレキャストコンクリートからなる4角柱状のブロックを用い、急速部用角形ブロック19の長手方向がアプローチ部5の車線方向となるように設置されている。なお、急速部用角形ブロック19の上端部はアプローチ部5と同一の傾斜角を有するために、急速部用角形ブロック19の高さは設置される位置により適宜異なる。
【0026】
なお、本実施形態において、先行部用角形ブロック13と急速部用角形ブロック19との材質、性能等は全く共通である。また、先行部用角形ブロック13及び急速部用角形ブロック19の単位重量、変形係数、許容圧縮応力度等は、現場条件に応じて適宜決定する。
【0027】
図6は、本実施形態に係る螺合手段15を示す図である。
図6に示すように、先行部用角形ブロック13同士、及び急速部用角形ブロック19同士の接続は、螺合手段15であるボルト15a、ナット15bにて接合される。先行部用角形ブロック13、急速部用角形ブロック19の側面にそれぞれ貫通孔15cが設けられ、それぞれの角形ブロック13、19内からボルト15aをこの貫通孔15c内に挿通し、ナット15bにて螺合することにより接合される。
【0028】
図7は、本実施形態に係る螺合手段21を示す図である。
図7に示すように、先行部用角形ブロック13と急速部用角形ブロック19との接続は、螺合手段21であるボルト21aにて接合される。先行部用角形ブロック13の側面にネジ穴21bが設けられ、急速部用角形ブロック19内からボルト21aをネジ穴21bに螺合することにより接合される。
【0029】
次に、アプローチ部5の構築方法について施工手順にしたがって説明する。
図8〜図18は、本実施形態に係るアプローチ部5の構築方法を示す図である。
【0030】
図8に示すように、本実施形態においては、説明の便宜上、例えば、中央分離帯23を有する片側2車線で往復4車線の既設道路3の中央部にアプローチ部5を構築する方法について説明する。なお、本実施形態においては、片側2車線で往復4車線の既設道路3について説明するが、これに限定されるものではなく、片側に複数の車線を有する道路であればよい。
【0031】
まず、図9に示すように、既設道路3の中央分離帯23程度の幅となるようにネットフェンス25を設置し、すべての車線を通行可能な状態として、このネットフェンス25内を昼間作業帯とする。この昼間作業帯内で、昼間に先行施工部9を構築する。
先行施工部9は、まず、土留め壁27aを打設し、この土留め壁27aの内側をアプローチ部5の車線方向の長さに対応する距離だけ舗装を切り下げる。そして、先行施工部9程度の幅となるように基礎コンクリート29aを打設して既設道路3の路面よりやや低い位置の平坦なヤードを形成する。
【0032】
そして、図10に示すように、基礎コンクリート29aを打設した区間において、アプローチ部5程度の幅でネットフェンス25を既設道路3上に拡げて設置し、既設道路3の中央側の片側一車線ずつを通行止めとして、このネットフェンス25内を夜間作業帯とする。この夜間作業帯内で、夜間の交通量が少ないときに急速施工部11の基礎部分を構築する。本実施形態において、夜間は急速施工部11の基礎部分を構築し、昼間は先行施工部9を構築する。
急速施工部11の基礎部分の構築にあたっては、まず、アプローチ部5の幅よりやや広い幅となるように土留め壁27bをアプローチ部5の車線方向の長さに対応する距離だけ打設する。
【0033】
次に、図11に示すように、土留め壁27aを抜いて、土留め壁27bの内側をアプローチ部5の車線方向の長さに対応する距離だけ舗装を切り下げる。また、切り下げた部分の上方を覆工板31にて路面覆工し、この覆工板31の上部を昼間に車が通行可能な状態となるように既設道路3を復旧する。
【0034】
そして、図12に示すように、基礎コンクリート29aの両側に基礎コンクリート29bを打設するとともに、基礎コンクリート29aと接合し、アプローチ部5の幅となる基礎29を製作する。基礎コンクリート29bを打設した後は、図13に示すように、再び、覆工板31にて路面覆工し、この覆工板31の上部を昼間に車が通行可能な状態とする。
【0035】
なお、上述した土留め壁27bの打設作業、舗装の切り下げ作業、及び基礎コンクリート29bを打設して基礎コンクリート29aと接合する作業は、夜間の交通量が少ないときに夜間作業帯内で行い、それぞれの作業が、アプローチ部5の車線方向の長さに対応する距離を一晩で終了しない場合は、朝に作業を一旦中断し、ネットフェンス25を昼間作業帯の幅に変更してすべての車線を通行可能な状態とし、再び、夜に夜間作業帯の幅に変更して作業を再開する。
【0036】
図14及び図15に示すように、昼間は先行部用角形ブロック13を、その軸方向が鉛直方向となるように配列し、先行部用角形ブロック13の側面同士が当接するように基礎29上に設置し、順次、アプローチ部5の車線方向へ向かって施工する。設置された先行部用角形ブロック13の上面は、交差点側へ向けて高くなるように傾斜した形状を有する。また、先行部用角形ブロック13同士をボルト15a、ナット15bにより接合し、上面にプレキャストコンクリートからなるスラブ17aを先行部用角形ブロック13の上面にボルト等で接合して路盤を形成する。なお、本実施形態においては、プレキャストコンクリートからなるスラブ17aについて説明したが、スラブ17aはこれに限定されるものではなく、例えば、RCを用いてもよい。さらに、中空部内に発泡スチロールを充填して上面を舗装してなるものでもよい。
【0037】
以上のように、昼間に先行施工部9の基礎コンクリート29aを打設し、既に基礎コンクリート29aが打設された位置には先行部用角形ブロック13を設置し、また、夜間に急速施工部11の基礎コンクリート29bを打設する作業を繰り返すことにより、先行施工部9を構築するとともに急速施工部11の基礎部分を構築する。
【0038】
また、構築された先行施工部9は橋梁部7を施工するための作業用道路として利用することが可能である。そして、この構築された先行施工部9を利用することにより、高架橋1の全体工程を短縮することが可能となる。
【0039】
そして、図16及び図17に示すように、先行施工部9の先行部用角形ブロック13、及び急速施工部11の基礎コンクリート29bをすべて構築した後に、ネットフェンス25を拡げて作業領域を夜間作業帯とし、基礎コンクリート29bの上方の路面覆工を取り外す。次に、急速部用角形ブロック19を、その軸方向が鉛直方向となるように配列し、急速部用角形ブロック19の側面が先行部用角形ブロック13の側面に当接するとともに、急速部用角形ブロック19の側面同士が当接するように基礎29上に設置し、順次、アプローチ部5の車線方向へ向かって施工する。設置された急速部用角形ブロック19の上面は、先行施工部9と同様に交差点側へ向けて高くなるように傾斜した形状を有する。また、急速部用角形ブロック19同士をボルト15a、ナット15bにより接合するとともに、急速部用角形ブロック19と先行部用角形ブロック13とを押し込みボルト21aにより接合する。さらに、急速部用角形ブロック19の上面にプレキャストコンクリートからなるスラブ17bを急速部用角形ブロック19の上面にボルト等で接合するとともに、既設のスラブ17aとボルト等にて接合する。スラブ17bには予め高欄35が一体化して形成されているために、高欄35を施工する手間が省略でき、急速施工部11の急速施工が可能となる。そして、路盤の上面にアスファルト37等の舗装を行い、アプローチ部5の路面5aを形成する。
【0040】
本実施形態において、例えば、片側のアプローチ部5の長さが50mで、両側のアプローチ部5(=100m)に急速施工部11を設置する場合は、急速部用角形ブロック19を設置し始めてからアプローチ部5の路面を形成するまでの作業は、交通量の少ない夜間及び土日の昼夜間、例えば、金曜の夜10時から月曜日の朝6時までの間の56時間以内に施工する事が可能である。
【0041】
なお、本実施形態においては、急速部用角形ブロック19を基礎29上に設置してから急速部用角形ブロック19同士を接合する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、予め、複数の急速部用角形ブロック19を接合し、この接合した状態で複数の急速部用角形ブロック19を同時に基礎29上に設置する方法を用いてもよい。
【0042】
図18に示すように、急速施工部11の構築終了後、直ちにアプローチ部5と橋梁部7とを接続し、路面状を片側1車線の往復2車線となるように区画し、車両が通行可能な状態となる。
【0043】
したがって、本実施形態のアプローチ部5の施工方法によれば、先行施工部9を先行して構築した後に、急速施工部11を急速に施工するために、最初に構築する先行施工部9は、例えば、中央分離帯23等の交通に影響をおよぼさない場所のみを利用することにより交通を規制する必要が無い。また、本発明による急速施工部11の構築方法によれば、筒状の角形ブロックを先行施工部9に隣接するように設置するだけで急速施工部11を構築することができるために、急速施工部11を短時間で施工することが可能となる。したがって、土日、夜間等の交通量の少ない時間に交通を規制するだけでよく、交通渋滞が生じない。そして、急速施工部11を構築すると同時にアプローチ部5が完成する。したがって、急速施工部11を構築すると、直ちに高架橋1に車を通行させることが可能となる。
【0044】
また、本発明による急速施工部11の構築方法によれば、急速部用角形ブロック19と先行施工部9とを接合する工程の後に、隣接する急速部用角形ブロック19同士を接合することにより、急速部用角形ブロック19の接合作業を流れ作業とすることができるために、作業に無駄が生じず短時間で急速施工部11を構築することが可能となる。一方、急速部用角形ブロック19と先行施工部9とを接合する工程の前に、隣接する急速用角形ブロック19同士を予め接合する方法を用いると、複数の急速用角形ブロック19を一度に設置することができるために、短時間で急速施工部11を構築することが可能となる。
【0045】
そして、本発明による先行施工部9の構築方法によれば、角形ブロックを、その軸方向が鉛直方向となるように配設し、角形ブロックの側面同士が当接するように角形ブロックを設置するだけで先行施工部9を構築することができるために、先行施工部9を短時間で構築することが可能となる。したがって、工期を短縮することが可能となる。
【0046】
さらに、本発明による角形ブロックの接合方法によれば、ネジ等の螺合手段15を用いることにより、短時間で確実に、角形ブロックと先行施工部9と、及び隣接する角形ブロック同士を接合することが可能となる。
【0047】
また、本発明によるアプローチ部5の施工方法によれば、プレキャストコンクリートからなる角形ブロック13、19を使用することにより、現場でのコンクリート打設、養生等の作業が無くなるために、工期を短縮することが可能となる。
【0048】
さらに、本発明によるアプローチ部5の施工方法によれば、プレキャストコンクリートからなるスラブ17を使用することにより、現場でのコンクリート打設、養生等の作業が無くなるために、工期を短縮することが可能となる。
【0049】
そして、本発明による急速施工部11及び先行施工部9の構造によれば、角形ブロックの軸方向が鉛直方向となるように配設され、角形ブロックの中空部を覆うようにスラブ17が設置される。したがって、このスラブ17は、筒状の角形ブロックの側壁部で支持される二方向スラブ17となるために、一般的な高架橋の一方向スラブに比べて力学的に有利となり、スラブ厚の低減、鉄筋の削減、RC構造の採用などが可能となり、設計の幅が拡がる。
【0050】
なお、本実施形態においては、車用高架橋のアプローチ部5の施工方法について説明したが、これに限定されるものではなく、歩道用、鉄道用の高架橋のアプローチ部についても適用が可能である。
【0051】
なお、本実施形態においては、急速施工部11に角形ブロックを1列のみ配置する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、角形ブロックを複数列配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第一実施形態に係る高架橋の側面図である。
【図2】本実施形態に係るアプローチ部を示す図である。
【図3】図2のAの拡大図である。
【図4】図3のB−B’断面図である。
【図5】図3のC−C’正面図である。
【図6】本実施形態に係る螺合手段を示す図である。
【図7】本実施形態に係る螺合手段を示す図である。
【図8】本実施形態に係るアプローチ部の構築方法を示す図である。
【図9】本実施形態に係るアプローチ部の構築方法を示す図である。
【図10】本実施形態に係るアプローチ部の構築方法を示す図である。
【図11】本実施形態に係るアプローチ部の構築方法を示す図である。
【図12】本実施形態に係るアプローチ部の構築方法を示す図である。
【図13】本実施形態に係るアプローチ部の構築方法を示す図である。
【図14】本実施形態に係るアプローチ部の構築方法を示す図である。
【図15】本実施形態に係るアプローチ部の構築方法を示す図である。
【図16】本実施形態に係るアプローチ部の構築方法を示す図である。
【図17】本実施形態に係るアプローチ部の構築方法を示す図である。
【図18】本実施形態に係るアプローチ部の構築方法を示す図である。
【図19】従来のアプローチ部の施工方法を示す断面図である。
【図20】従来のアプローチ部の施工方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 高架橋
3 既設道路
5 アプローチ部
5a 路面
7 橋梁部
9 先行施工部
11 急速施工部
13 先行部用角形ブロック
15 螺合手段
15a ボルト
15b ナット
15c 貫通孔
17 スラブ
19 急速部用角形ブロック
21 螺合手段
21a ボルト
21b ネジ穴
23 中央分離帯
25 ネットフェンス
27 土留め壁
29 基礎
29a 先行施工部にて施工した基礎コンクリート
29b 急速施工部にて施工した基礎コンクリート
31 覆工板
35 高欄
37 アスファルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高架橋のアプローチ部を構築する方法であって、
前記アプローチ部を道路幅員方向に第1の部分と、これに隣接する第2の部分とに分割して、前記第1の部分を先行して構築し、
前記第2の部分を、前記第1の部分の施工よりも急速に施工が可能な急速施工法で構築することを特徴とするアプローチ部の施工方法。
【請求項2】
前記第2の部分の構築は、
筒状の角形ブロックを、その軸方向が鉛直方向となるように配設し、該角形ブロックの側面が前記第1の部分の側面に当接するように設置する工程と、
前記角形ブロックと前記第1の部分とを接合する工程と、
前記角形ブロックの上方にスラブを設置する工程とを備えることを特徴とする請求項1に記載のアプローチ部の施工方法。
【請求項3】
前記第2の部分において前記角形ブロックの上方に設置される前記スラブは、プレキャストコンクリートからなることを特徴とする請求項2に記載のアプローチ部の施工方法。
【請求項4】
前記角形ブロックと前記第1の部分とを接合する工程の前又は後に、隣接する前記角形ブロック同士を接合する工程を更に備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のアプローチ部の施工方法。
【請求項5】
前記第1の部分の構築は、
前記角形ブロックを、その軸方向が鉛直方向となるように配設し、前記角形ブロックの側面同士が当接するように前記角形ブロックを設置する工程と、
隣接する前記角形ブロック同士を接合する工程と、
前記角形ブロックの上方にスラブを設置する工程とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のアプローチ部の施工方法。
【請求項6】
前記角形ブロックと前記第1の部分と、及び隣接する前記角形ブロック同士は、ネジ等の螺合手段にて接合されることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のアプローチ部の施工方法。
【請求項7】
前記角形ブロックは、プレキャストコンクリートからなることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のアプローチ部の施工方法。
【請求項8】
高架橋のアプローチ部の構造において、
前記アプローチ部を道路幅員方向に第1の部分と、これに隣接する第2の部分とに分割して構成され、
前記第2の部分は、前記第1の部分の施工よりも急速に施工されることを特徴とするアプローチ部の構造。
【請求項9】
前記第2の部分は、
筒状の角形ブロックの軸方向が鉛直方向となるように配設され、該角形ブロックの側面が前記第1の部分の側面に当接するように設置され、
前記角形ブロックと前記第1の部分とが接合され、
隣接する前記角形ブロック同士が接合され、
前記角形ブロックの上方にスラブが設置されてなることを特徴とする請求項8に記載のアプローチ部の構造。
【請求項10】
前記第1の部分は、
前記角形ブロックの軸方向が鉛直方向となるように配設され、前記角形ブロックの側面同士が当接するように設置され、
隣接する前記角形ブロック同士が接合され、
前記角形ブロックの上方にスラブが設置されてなることを特徴とする請求項8又は9に記載のアプローチ部の構造。
【請求項11】
高架橋のアプローチ部の構造物において、
前記アプローチ部を道路幅員方向に第1の部分と、これに隣接する第2の部分とに分割して構成され、
前記第2の部分は、前記第1の部分の施工よりも急速に施工されることを特徴とするアプローチ部の構造物。
【請求項12】
前記第2の部分は、
筒状の角形ブロックの軸方向が鉛直方向となるように配設され、該角形ブロックの側面が前記第1の部分の側面に当接するように設置され、
前記角形ブロックと前記第1の部分とが接合され、
隣接する前記角形ブロック同士が接合され、
前記角形ブロックの上方にスラブが設置されてなることを特徴とする請求項11に記載のアプローチ部の構造物。
【請求項13】
前記第1の部分は、
前記角形ブロックの軸方向が鉛直方向となるように配設され、前記角形ブロックの側面同士が当接するように設置され、
隣接する前記角形ブロック同士が接合され、
前記角形ブロックの上方にスラブが設置されてなることを特徴とする請求項11又は12に記載のアプローチ部の構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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