説明

高架橋性ハイソリッドウレタン塗料組成物

【課題】低粘度であり、架橋性に優れ、かつポリイソシアネートの貯蔵時、ジイソシアネートモノマーの発生のないポリイソシアネート組成物を硬化剤としたウレタン塗料組成物の提供にある。
【解決手段】脂肪族・脂環族ジイソシアネートの少なくとも1種から誘導される、溶剤を含まない状態で下記条件をすべて満足する、架橋性と貯蔵安定性が優れたポリイソシアネート組成物を硬化剤とするウレタン塗料組成物。
1)イソシアヌレート3量体濃度;60質量%から95質量%。
2)モノアルコールから誘導されるアロファネート基/イソシアヌレート基の官能基数比率;1から20%。
3)ウレトジオン2量体濃度;2から25質量%。
4)ジイソシアネートモノマー濃度;1質量%以下
5)25℃における粘度;150から800mPa・s。
6)イソシアネート基濃度;22から25質量%。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイソリッドウレタン塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン塗料から形成されるウレタン塗膜は非常に優れたかとう性、耐薬品性、耐汚染性を有している上に、脂肪族、特にヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIと言う)、脂環族、特にイソホロンジイソシアネート(以下IPDIと言う)から誘導された無黄変ポリイソシアネートを硬化剤として用いた塗膜は更に耐候性が優れ、その需要は増加している。
近年、地球環境保護の高まりから、硬化剤として使用されるポリイソシアネートの低粘度化に向けた技術開発が盛んに行われている。ポリイソシアネートを低粘度化することにより、塗料組成物に使用される有機溶剤の使用量を低減できるからである。
低分子量のトリイソシアネートとHDIから誘導されたポリイソシアネートを混合した技術(特許文献1,2)が開示されている。この技術で使用されている低分子量トリイソシアネートは工業的入手が難しく、その使用は制限されている。
【0003】
一方、HDIなどから各種ポリイソシアネートが誘導され、その粘度は異なる。この中で、低粘度であるウレトジオン基を有するポリイソシアネートに関する技術が開示されている(特許文献3、4)。この技術により、低粘度のポリイソシアネートが得られているが、架橋性が低く、また、このポリイソシアネートの貯蔵時にジイソシアネートモノマー濃度が増加する場合があり、その使用が制限されている。ウレトジオン基のみを含むポリイソシアネートは、その分子量に関わらず、ポリイソシアネート1分子が有するイソシアネート基の統計的平均数(以下、イソシアネート基平均数と言う)が2であり、架橋性も劣ることは必然であった。
【0004】
また、ポリイソシアネートの貯蔵時におけるジイソシアネートモノマー濃度増加を抑制するための技術も開示されている(特許文献5)。しかし、得られたポリイソシアネートの架橋性の向上は難しく、その使用は制限されていた。ウレトジオン基を有するポリイソシアネートの製造は、同時にイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートも副製し、ポリイソシアネートの低粘度化と架橋性を同時に満足することは困難であった。架橋性を保ち、かつ低粘度であるポリイソシアネートの技術が開示(特許文献6)されているものの、架橋性を保った、より低粘度のポリイソシアネートが切望されていた。
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO96/17881号パンフレット
【特許文献2】特開平9−216930号公報
【特許文献3】特開昭61−97265号公報
【特許文献4】特開平05−032759号公報
【特許文献5】特開平2002−047333号公報
【特許文献6】特開平64−033115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低粘度であり、架橋性に優れ、かつポリイソシアネートの貯蔵時、ジイソシアネートモノマーの発生のないポリイソシアネート組成物を硬化剤とした塗料組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のポリイソシアネートにより、前記課題を達成し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、
1.脂肪族・脂環族ジイソシアネートの少なくとも1種から誘導される、溶剤を含まない状態で下記条件をすべて満足する、架橋性と貯蔵安定性が優れたポリイソシアネート組成物を硬化剤とするウレタン塗料組成物。
1)イソシアヌレート3量体濃度;60質量%から95質量%。
2)モノアルコールから誘導されるアロファネート基/イソシアヌレート基の官能基数比率;1から20%。
3)ウレトジオン2量体濃度;2から25質量%。
4)ジイソシアネートモノマー濃度;1質量%以下
5)25℃における粘度;150から800mPa・s。
6)イソシアネート基濃度;22から25質量%。
【0008】
2.脂肪族・脂環族ジイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートであるポリイソシアネート組成物を硬化剤とする上記1.記載のウレタン塗料組成物。
3.ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基平均数が2.5以上である、上記1.または2.のウレタン塗料組成物。
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、低粘度であり、架橋性に優れ、かつポリイソシアネートの貯蔵時、ジイソシアネートモノマーの発生のないポリイソシアネート組成物を硬化剤とした塗料組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下詳細に本発明を述べる。
本発明に用いることのできる脂肪族ジイソシアネート、及び脂環族ジイソシアネート(以下、脂肪族・脂環族ジイソシアネートと表記することがある。)とは、その構造の中にベンゼン環を含まない化合物である。脂肪族ジイソシアネートモノマーとしては、炭素数4〜30のものが、脂環族ジイソシアネートモノマーとしては炭素数8〜30のものが好ましく、例えば、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることが出来る。なかでも、耐候性、工業的入手の容易さから、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIという)、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIという)が好ましく、特にHDIが好ましい。単独で使用しても、併用しても良い。
【0011】
本発明の構成成分の1つである、イソシアヌレート3量体とは、ジイソシアネートモノマー3分子からなる、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートであり、次式で示される。
【化1】

【0012】
イソシアヌレート3量体の濃度は60から95質量%である。60質量%未満であるとポリイソシアネート組成物の粘度が増加または、架橋性が低下し、95質量%を越えると該粘度が増加する。ジイソシアネートモノマーからイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを誘導する場合は通常、イソシアヌレート化触媒を用いて行う。具体的なイソシアヌレート化触媒としては、例えば一般に塩基性を有するものが好ましく、1)例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや例えば酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、2)例えばトリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや例えば酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、3)酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の例えば錫、亜鉛、鉛、ナトリウム、カリウムなどの金属塩、4)例えばナトリウム、カリウム等の金属アルコラート、5)例えばヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物、6)マンニッヒ塩基類、7)第3級アミン類とエポキシ化合物との併用等がある。更に好ましくは前記1)、2)、3)である。アミノシリル基含有化合物はその使用条件により、ウレトジオン生成などの副反応が起きる。
【0013】
これらの触媒を使用して、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを得ることができる。得られるイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートは3量体以外に、5量体、7量体などを含む。本発明のイソシアヌレート3量体濃度範囲を得るためのイソシアヌレート化反応の転化率(イソシアヌレート化反応で生成したポリイソシアネートの質量割合)は20%以下、好ましくは15%以下である。20%を越えると、本発明の構成要件である、イソシアヌレート3量体濃度の達成が困難となる場合があり、ポリイソシアネートのハイソリッド性と架橋性を両立できない場合がある。
【0014】
この時、同時にウレトジオン基含有ポリイソシアネートなどのイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート以外のポリイソシアネートが生成する場合がある。本発明のポリイソシアネートを得る場合のイソシアヌレート化反応によるウレトジオン2量体の生成は好ましくない。イソシアヌレート化反応で生成するウレトジオン2量体濃度はイソシアヌレート化反応により生成したポリイソシアネートに対して2質量%以下、好ましくは1質量%以下が好ましい。2質量%を越えると、ポリイソシアネート組成物を貯蔵した時のジイソシアネートモノマーの発生量が増加し、好ましくない。前記の如く、イソシアヌレート化反応で生成するウレトジオン2量体の抑制がポリイソシアネート組成物貯蔵時のジイソシアネートモノマーの生成を抑制することは驚くべきことであった。
イソシアヌレート化反応に用いる触媒はイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートの選択率の高い上記1)、2)、3)が好ましい。上記5)はビウレット基含有ポリイソシアネートも生成し、また、意外なことにポリイソシアネート貯蔵時にジイソシアネートモ
ノマーが遊離し、好ましくない。
【0015】
本発明の構成要件の1つである、アロファネート基とはモノアルコールの水酸基とイソシアネート基から形成され、次式で示される。
【化2】

【0016】
モノアルコールから誘導されるアロファネート基/イソシアヌレート基の官能基比率は1から20%であり、好ましくは、2から15%、更に好ましくは2から10%である。1%未満では、得られるポリイソシアネートの粘度が増加する場合があり、20%を越えると架橋性が低下する場合がある。
本発明に用いることにできるモノアルコールとは、炭素、水素と酸素のみで形成されるモノアルコールが好ましく。更に好ましくは分子量500以下である。その具体的な化合物は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノールなどの異性体を含む化合物であり、2種以上を併用しても良い。
【0017】
これらアルコールの添加量はイソシアネート基とモノアルコールの水酸基との当量比で1000/1から10/1、好ましくは1000/1から100/1である。10/1を下回ると、モノアルコール2分子とジイソシアネートモノマー1分子からなる化合物が生成する場合があり、粘度の低いポリイソシアネート得るためには好ましくない。アロファネート基を生成するためには、通常、アロファネート化触媒を用いる。この具体的な化合物としては、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、ジルコニルなどのアルキルカルボン酸塩である、2−エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物、2−エチルヘキサン酸鉛などの有機鉛化合物、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの有機亜鉛化合物、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸ジルコニルなどがあり、2種以上を併用することができる。
また、前記のイソシアヌレート化触媒もアロファネート化触媒となり得る。前記のイソシアヌレート化触媒を用いて、アロファネート化反応を行う場合、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートも生成する。
【0018】
本発明の構成成分の1つである、ウレトジオン2量体とは、ジイソシアネートモノマー2分子からなる、ウレトジオン基を有する化合物であり、次式で示される。
【化3】

【0019】
ウレトジオン2量体濃度は2から20質量%である。2質量%未満であると、ポリイソシアネート組成物の粘度が増加し、20質量%を超えると架橋性が低下する場合がある。ウレトジオン2量体はウレトジオン化触媒を用いて得ることができる。この具体的な化合物の例としては、第3ホスフィンである、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン、トリス−(ジメチルアミノ)−ホスフィンなどのトリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン、シクロヘキシル−ジ−n−ヘキシルホスフィンなどのシクロアルキルホスフィンなどがある。これらの化合物はアロファネート化触媒にもなり得る。また、これらの化合物の多くは、同時にイソシアヌレート化反応も促進し、ウレトジオン基含有ポリイソシアネートに加えてイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを生成する。
【0020】
また、前記のような触媒を用いることなく、加熱で得ることもできる。加熱により得ることのできるウレトジオン基含有ポリイソシアネートの収率は低く、ウレトジオン基含有ポリイソシアネートのみを得るための手段としては効率的ではなかった。
しかし、驚くべきことに触媒を使用せず、加熱のみにより得られるウレトジオン基含有ポリイソシアネートの貯蔵時に遊離するジイソシアネートモノマー量が格段に低いことが判明した。ウレトジオン基は加熱により分解しやすく、そのためウレトジオン基含有ポリイソシアネート貯蔵時にジイソシアネートモノマーが遊離すると考えられていた。本発明の構成成分の1つであるウレトジオン基含有ポリイソシアネートは加熱で製造することが好ましい。
【0021】
このような、加熱により生成するウレトジオン基含有ポリイソシアネートは低収率であり、これとイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートとで構成されるポリイソシアネートの低粘度化に限界があった。加えて、イソシアネート基平均数(ポリイソシアネート1分子が有するイソシアネート基の統計的平均数であり、次式で計算される)が2であるウレトジオン2量体の添加は、架橋性の低下を招き、本来持つべきポリイソシアネートの特性を失うと考えられていた。
【0022】
【数1】

【0023】
上記のイソシアネート基平均数が2であるウレトジオン2量体及びモノアルコールから
誘導される、イソシアネート基平均数が2であるアロファネート基含有ポリイソシアネートが特定濃度である本発明のポリイソシアネート組成物は低粘度であり、その架橋性は高く、得られる塗膜の耐候性も良好であったことは驚くべきことであった。
本発明のポリイソシアネート組成物は好ましくはビウレット型ポリイソシアネートを含まない。ビウレット型ポリイソシアネートの存在はポリイソシアネート組成物貯蔵後のジイソシアネートモノマーの増加をもたらし、好ましくない。好ましくは、0.5質量%以下である。
【0024】
前述した、イソシアヌレート化反応、アロファネート化反応、ウレトジオン化反応はそれぞれを逐次行うこともできるし、並行して行うこともできる。好ましくは、イソシアヌレート化反応とアロファネート化反応を先行し、その後、ウレトジオン化反応を行うことが好ましく、イソシアヌレート化反応とアロファネート化反応は共通した触媒を用い、ウレトジオン化反応を熱により行うことで製造工程が簡略化でき好ましい。
これらの反応が終了した後、未反応であるジイソシアネートモノマーを薄膜蒸発缶、抽出などで除去する。
【0025】
本発明に用いるポリイソシアネート組成物中のジイソシアネートモノマー濃度は1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下である。1質量%を越えると、架橋性が低下し、好ましくない。
本発明に用いるポリイソシアネート組成物の25℃における粘度は150から800mPa・sであり、好ましくは、150から700mPa・sである。150mPa・s未満であると、架橋性が低下し、800mPa・sを超えると塗料の固形分濃度が低下し、好ましくない。
本発明に用いるポリイソシアネート組成物のイソシアネート基平均数は2.5以上である。好ましくは2.8以上、3.5以下である。2.5未満であると架橋性が低下する場合がある。
【0026】
得られた本発明のポリイソシアネート組成物を40℃、1ケ月貯蔵した場合のジイソシアネートモノマー濃度の増加は0.5質量%以下である。
また、得られたポリイソシアネート組成物のイソシアネート基をブロック剤で封鎖し、ブロックポリイソシアネートを得ることができる。ここで用いることのできるブロック剤として、下記を挙げることができる。
本発明に用いることができる、ブロック剤としては、活性水素を分子内に1個有する化合物であり、例えば、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、活性メチレン、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ピラゾール系化合物等がある。より具体的なブロック化剤の例を下記に示す。
【0027】
(1)メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどのアルコール類
(2)アルキルフェノール系;炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノおよびジアルキルフェノール類であって、例えばn−プロピルフェノール、i−プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類
【0028】
(3)フェノール系;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等
(4)活性メチレン系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等
(5)メルカプタン系;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等
(6)酸アミド系;アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等
(7)酸イミド系;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等
【0029】
(8)イミダゾール系;イミダゾール、2−メチルイミダゾール等
(9)尿素系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素等
(10)オキシム系;ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等
(11)アミン系;ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジーn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等
(12)イミン系;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等
(13)ピラゾール系;ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等
がある。
【0030】
好ましいブロック剤は、アルコール系、オキシム系、酸アミド系、活性メチレン系、ピラゾール系から選ばれる少なくとも1種である。
上記のポリイソシアネート組成物を硬化剤として、ポリオールと混合することにより、本発明のウレタン塗料組成物を得ることができる。ここで用いることのできるポリオールとしては下記を挙げることができる。例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオールなどが挙げられる。
【0031】
アクリルポリオールとしては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル、またはグリセリンのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステルあるのはメタクリル酸モノエステルの群から選ばれた単独または混合物とアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル、またはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステルの群から選ばれた単独または混合物とを必須成分とし、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド、及びメタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー等のその他の重合性モノマーの群から選ばれた単独または混合物の存在下、あるいは非存在下において重合させて得られるアクリルポリオールが挙げられる。
【0032】
ポリエステルポリオールとしては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマ
ー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸の群から選ばれた二塩基酸の単独または混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの群から選ばれた多価アルコールの単独または混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール及び例えばε−カプロラクトンを多価アルコールに開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。これらのポリエステルポリオールは芳香族ジイソシアネート、脂肪族、脂環族ジイソシアネート及びこれらから得られるポリイソシアネートで変成することができる。この場合、特に脂肪族、脂環族ジイソシアネート及びこれら得られるポリイソシアネートが耐候性、耐黄変性などから好ましい。
【0033】
ポリエーテルポリオール類としては、多価ヒドロキシ化合物の単独または混合物に、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物、アルコラート、アルキルアミンなどの強塩基性触媒を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの単独または混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、更にエチレンジアミン類等の多官能化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類及び、これらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等が含まれる。
【0034】
前記多価ヒドロキシ化合物としては
(1)例えばジクリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなど
(2)例えばエリトリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等糖アルコール系化合物
(3)例えばアラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類、
(4)例えばトレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオースなどの二糖類、
(5)例えばラフィノース、ゲンチアノース、メレチトースなどの三糖類
(6)たとえはスタキオースなどの四糖類
などがある。
好ましいポリオールはアクリルポリオール、ポリエステルポリオールであり、特にアクリルポリオールが好ましい。
【0035】
得られたポリオールの樹脂分濃度は60〜100質量%である。60質量%未満では塗料組成物を希釈するための有機溶剤の低減化が難しい。分子量は5000〜5000である。分子量が5000を越えると、ポリオールの粘度が増加し、高樹脂濃度の達成が困難になり、分子量が5000未満となると、硬化した塗膜の機械物性が低下する場合がある。ポリオールの樹脂分水酸基価は30〜300mgKOH/g、好ましくは30〜200mgKOH/gである。必要に応じて、酸価を持つことができる。ガラス転移点は−20〜100℃であり、アクリルポリオールの場合はFoxの式から算出もできる。
【0036】
本発明のポリイソシアネート組成物とポリオールの混合は、前記のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基とポリオールの水酸基の当量比率で決定される。前記イソシアネート基と水酸基の当量比率は5/1〜1/5、好ましくは5/3〜3/5、更に好ましくは5/4〜4/5である。
また、用途、目的に応じて各種溶剤、添加剤を用いることができる。溶剤としては例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸セロソルブなどのエステル類、ブタノール、イソプロピルアル
コールなどのアルコール類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサなどの炭化水素類などの群から目的及び用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、必要に応じて硬化促進剤例えば錫、亜鉛、鉛等のカルボン酸等の有機金属化合物、酸化防止剤例えばヒンダードフェノール等、紫外線吸収剤例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等、顔料例えば、酸化チタン、カーボンブラック、インジゴ、キナクリドン、パールマイカ等、金属粉顔料例えばアルミ等、レオロジーコントロール剤例えばヒドロキシエチルセルロース、尿素化合物等を添加してもよい。
【0037】
本発明の塗料組成物中のポリオール、ポリイソシアネート混合物の合計質量割合である樹脂分濃度は60重量%以上80重量%以下が好ましく、更に好ましくは70重量%以上80重量%以下である。
この様に調整された塗料組成物は接着剤、注型剤などにも使用できる。その塗装方法としてロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、カチオン、アニオン電着塗装などが挙げられる。被塗物の材質としては金属、プラスチック、セメント、ケイ酸カルシウム、石膏などの無機材料などが挙げられる。これらの素材にプライマーまたは上中塗りとして、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装などに美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性などを付与するために有用である。
特に、本発明の塗料組成物で形成される塗膜はウレタン結合を有し、塗膜硬度が高く、耐薬品性が良好であり、更に有機塗膜への密着性に優れているために顔料含む非水系ベースコート、好ましくは水性ベースコート上に塗装される、自動車塗装におけるトッククリアコートとして有用である。ベースコートとトップクリアコートは同時に硬化させることが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(数平均分子量の測定)
数平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
装置:東ソー(株)HLC−802A
カラム:東ソー(株)G1000HXL×1本
G2000HXL 〃
G3000HXL 〃
キャリアー:テトラハイドロフラン
検出方法:示差屈折率計
【0039】
(粘度測定)
株式会社トキメックのE型粘度計を用いて25℃で測定した。
(イソシアヌレート3量体濃度の測定)
数平均分子量測定と同様なゲルパーミエーションクロマトグラフ測定を行い、ジイソシアネートの3倍の分子量に相当するピーク面積%をイソシアヌレート3量体濃度として示した。
(モノアルコール由来のアロファネート基/イソシアヌレート基数比率)
Bruker社製FT-NMR DPX−400を用いた、プロトン核磁気共鳴スペクトルの測定から、アロファネート基とイソシアヌレート基の数比率を求めた。この比率が1%未満の場合はA,1%以上5%未満の場合はB,5%以上20%以下の場合はC,20%を越える場合はDとして表した。
【0040】
(ウレトジオン2量体濃度の測定)
数平均分子量測定と同様なゲルパーミエーションクロマトグラフ測定を行い、ジイソシアネートの2倍の分子量に相当するピーク面積%をウレトジオン2量体濃度として示した。
(イソシアヌレート転化率の測定)
反応液屈折率の測定により求めた。
(ポリイソシアネート組成物貯蔵前、後のジイソシアネートモノマー質量濃度)
ポリイソシアネート組成物を窒素雰囲気下、40℃、1ヶ月貯蔵後、下記条件のガスクロマトグラフ測定によりジイソシアネートモノマー濃度を測定した。貯蔵後のジイソシアネートモノマー濃度増加が0.5質量%以下を○、0.5質量%を越える場合を×で表した。
ガスクロマトグラフ測定条件
・カラム シリコンOV17 1m
・注入口温度 160℃、 カラム温度 120℃
・キャリア 窒素
・検出器 水素炎イオン化検出器
【0041】
(ハイソリッド性)
アクリルポリオール(アクゾ社の商品名 Setalux1903、樹脂固形分75%、水酸基価 150mgKOH/樹脂g)とポリイソシアネート組成物を水酸基とイソシアネート基の当量比が1.0になるように混合し、更にシンナーとして酢酸エチル/トルエン/酢酸ブチル/キシレン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(質量比30/30/20/15/5)の混合液でフォードカップNo.4で測定した粘度が20秒になるように希釈した。
上記組成で塗料固形分が55%以上の場合を○、55%未満になる場合を×として表した。
【0042】
(ゲル分率)
ポリプロピレン板上に樹脂膜厚50μmになるようにアプリケーター塗装を行い、20℃、湿度65Rh%で24Hr放置した硬化塗膜を、アセトンに20℃で24時間浸漬した時の未溶解部分質量の浸漬前質量に対する値を計算し、80%未満は×、80%以上90%未満は○、90%以上は◎で表した。
(塗膜硬度)
ガラス板に塗装された、90℃、30分で硬化された膜厚50μm塗膜のケーニッヒ硬度をBYK Chemie社の振り子式硬度計により20℃で測定した。塗膜硬度が50未満を×、50以上を○として表した。
【0043】
〔製造例1〕(ポリイソシアネート組成物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI 600部、イソブタノール0.6部を仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃、2Hr保持した。その後、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、イソシアヌレート化反応を行い、転化率が20%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。この反応で増加したウレトジオン2量体質量濃度は1%以下であった。反応液を更に160℃、1Hr保持した。この加熱によりウレトジオン基含有ポリイソシアネートが更に生成した。反応液を冷却後、ろ過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去した。得られたポリイソシアネート組成物の特性を表1に示す。
【0044】
〔製造例2〕
イソシアヌレート化反応による転化率を13%とした以外は製造例1と同様に行った。結果を表1に示す。
〔製造例3〕
イソシアヌレート化反応による転化率を8%とした以外は製造例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0045】
〔比較製造例1〕
イソシアヌレート化反応による転化率を31%とした以外は製造例1と同様に行った。結果を表1に示す。
〔比較製造例2〕
イソブタノール、イソシアヌレート化触媒及び燐酸を用いなかった以外は製造例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0046】
〔比較製造例3〕
製造例1と同様の装置内を窒素雰囲気にし、HDI 600部を仕込み、撹拌下反応器内温度を160℃、1.5Hr保持した。その後、反応器内温度を140℃に下げ、イソシアヌレート化触媒ヘキサメチルジシラザン6部を加え、30分保持した。更に反応器内温度を90℃に下げ、n-ブタノール3.3部添加し、1Hr保持した。反応液を冷却後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去した。結果を表1に示す。
〔比較製造例4〕
製造例1と同様の装置内を窒素雰囲気にし、HDI 600部及びイソブタノール4.8gを仕込み、撹拌下反応器内温度を90℃、1.0Hr保持した。その後、反応器内温度を70℃に下げ、イソシアヌレート化反応触媒テトラメチルアンモニウムカプリンエートを加え、アロファネート化反応及びイソシアヌレート化反応を行い、転化率が25%なった時点で燐酸を加えて反応を停止した。反応液を冷却後、ろ過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去した。得られたポリイソシアネート組成物の特性を表1に示す。
【0047】
〔実施例1〜3、比較例1〜4〕
アクリルポリオール(Akzo社の製品名、Setalux1903,水酸基価150mgKOH/樹脂g)とポリイソシアネート組成物を水酸基とイソシアネート基当量比率が1.0なるように配合後、シンナー(酢酸エチル/トルエン/酢酸ブチル/キシレン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=30/30/20/15/5(質量比))で塗料粘度がフォードカップNo.4で20秒になるように調整した。塗膜硬度、塗膜ゲル分率を評価した。配合、結果を表2に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、低粘度であり、架橋性に優れ、かつポリイソシアネートの貯蔵時、ジイソシアネートモノマーの発生のないポリイソシアネート組成物を硬化剤としたウレタン塗料組成物に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族・脂環族ジイソシアネートの少なくとも1種から誘導される、溶剤を含まない状態で下記条件をすべて満足する、架橋性と貯蔵安定性が優れたポリイソシアネート組成物を硬化剤とするウレタン塗料組成物。
1)イソシアヌレート3量体濃度;60質量%から95質量%。
2)モノアルコールから誘導されるアロファネート基/イソシアヌレート基の官能基数比率;1から20%。
3)ウレトジオン2量体濃度;2から25質量%。
4)ジイソシアネートモノマー濃度;1質量%以下
5)25℃における粘度;150から800mPa・s。
6)イソシアネート基濃度;22から25質量%。
【請求項2】
脂肪族・脂環族ジイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートであるポリイソシアネート組成物を硬化剤とする請求項1記載のウレタン塗料組成物。
【請求項3】
ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基平均数が2.5以上である、請求項1または2記載のウレタン塗料組成物。

【公開番号】特開2007−112936(P2007−112936A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307234(P2005−307234)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】