高比表面積をもつ炭素ナノ繊維およびその製造方法
【課題】触媒と反応温度の適正化を図ることにより、高比表面積をもつ炭素ナノ繊維およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明の炭素ナノ繊維5A等は、片面同士を合体させた複合構造をもつ、薄片繊維状の2枚のナノリボン7a,7bを有することを特徴とする。本発明の炭素ナノ繊維の製造方法は、熱処理炉内に、マンガン(Mn)を50質量%以上含有する非担持型Fe−Mn合金触媒を装入し、一酸化炭素を含有する反応ガス中にて450〜620℃で反応させることを特徴とする。
【解決手段】本発明の炭素ナノ繊維5A等は、片面同士を合体させた複合構造をもつ、薄片繊維状の2枚のナノリボン7a,7bを有することを特徴とする。本発明の炭素ナノ繊維の製造方法は、熱処理炉内に、マンガン(Mn)を50質量%以上含有する非担持型Fe−Mn合金触媒を装入し、一酸化炭素を含有する反応ガス中にて450〜620℃で反応させることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高比表面積をもつ炭素ナノ繊維およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素ナノ繊維(繊維状ナノ炭素やカーボンナノファイバーともいう。)は、カーボン材料の特異な形態として知られている。
【0003】
本発明者らは、炭素ナノ繊維の構造について検討し、特許文献1において、図1に示すように、炭素ナノ繊維1が、炭素六角網面2の積層体からなる炭素ナノ繊維素3を単位として、かかる炭素ナノ繊維素3を、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成した炭素ナノ繊維素群4を、さらに、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成され、全体として単一構造からなることを開示した。
【特許文献1】特開2003−342839号公報
【0004】
しかしながら、本発明者らが炭素ナノ繊維の構造についてさらに詳細に検討したところ、触媒と反応温度の適正化を図ることによって、炭素ナノ繊維の構造が、単一構造ではなく、これまでには存在しなかった特異構造になることを見出した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、触媒と反応温度の適正化を図ることにより、高比表面積をもつ特異構造の炭素ナノ繊維およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)片面同士を合体させた複合構造をもつ、薄片繊維状の2枚のナノリボンを有することを特徴とする高比表面積をもつ炭素ナノ繊維。
【0007】
(2)炭素ナノ繊維は、その繊維中心軸線上でかつ炭素ナノ繊維の両端にわたって連続して延びる空洞部を有する上記(1)記載の炭素ナノ繊維。
【0008】
(3)炭素ナノ繊維の両端位置を除く前記空洞部に、ナノリボン間を連結するブリッジ部をさらに有する上記(2)記載の炭素ナノ繊維。
【0009】
(4)炭素ナノ繊維の外面形状は、多角形の断面形状を有する上記(1)、(2)または(3)記載の炭素ナノ繊維。
【0010】
(5)熱処理炉内に、マンガン(Mn)を50質量%以上含有する非担持型Fe−Mn合金触媒を装入し、一酸化炭素を含有する反応ガス中にて450〜620℃で反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の高比表面積をもつ炭素ナノ繊維の製造方法。
【0011】
(6)前記Fe−Mn合金触媒は、FeとMnの硝酸溶液から重炭酸アンモニウムを用いてFeとMnの炭酸塩を析出させる、いわゆる共析法によって生成することを特徴とする上記(5)記載の炭素ナノ繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、触媒と反応温度の適正化を図ることにより、単一構造ではなく、これまでには存在しなかった多角形の断面を持つ薄片繊維状の2枚のナノリボンの各々の片面を合体させてなる複合構造をもつ高比表面積の炭素ナノ繊維の製造が可能になった。
この発明の炭素ナノ繊維は、電気導電性を要する触媒担体として最も適した構造であるため、将来的に、カーボンブラックを代替する高性能触媒調製用担体としての用途が期待できる。その理由として、本発明の炭素ナノ繊維は、繊維中心軸線上に空洞部を有するが、その空洞部は炭素ナノチューブのように炭素ナノ繊維の外壁と隔離されて閉鎖した同心円のトンネルではなく、炭素ナノ繊維の外壁と連通する空間である特異な構造であるので、金属触媒を担持する時、繊維の内壁まで有効に使えて、より高活性の触媒性能が期待できる。さらに、吸着剤としての応用にも、繊維の外壁しか使えない炭素ナノチューブや、通常構造の炭素ナノ繊維に比べて、繊維の内壁まで有効に使えるので、より高い吸着特性が期待できる。また、高い表面積と高黒鉛化特性を求める電気二重層キャパシタ材料にも使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者らは、特許文献1において、炭素ナノ繊維1が、図1に示すように、炭素六角網面2の積層体からなる炭素ナノ繊維素3を単位として、かかる炭素ナノ繊維素3を、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成した炭素ナノ繊維素群4を、さらに、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成され、全体として単一構造からなることを開示した。
【0014】
しかしながら、本発明者らが炭素ナノ繊維の構造についてさらに詳細に検討したところ、触媒と反応温度の適正化を図ることによって、炭素ナノ繊維の構造が、単一構造ではなく、これまでには存在しなかった特異構造、すなわち、これまでには存在しなかった多角形断面をもつ薄片繊維状の2枚のナノリボンを各々の片面を合体させてなる複合構造をもつことを見出し、本発明を完成させるに至った。以下、本発明の完成させるに至った経緯を作用効果とともに説明する。
【0015】
本発明者らは、まず、炭素ナノ繊維を製造するために必要不可欠な触媒について検討を行った。
触媒としては、例えば、Fe、Ni、Co等で代表される炭素ナノ繊維調製用の様々な転移金属触媒または合金触媒があるが、これらの触媒のうち、マンガンの含有量が50質量%以上のFe-Mn合金の非担時触媒だけを用い、反応温度を所定の温度範囲で反応させて炭素ナノ繊維を製造した場合にだけ、片面同士を合体させた複合構造をもつ、好適には多角断面を持つ薄片繊維状の2枚のナノリボンを有する炭素ナノ繊維が製造できることがわかった。
【0016】
また、反応温度は、所定の温度範囲内であっても、炭素ナノ繊維の繊維軸中心軸線位置に空洞部が生じたり、さらに生じた空洞部が一定間隙で2枚のナノリボンの内壁を連結して、空洞部にブリッジを作ったり、炭素ナノ繊維の外径や内径または構造等の形状が変化することもわかった。
【0017】
但し、本発明では、Fe-Mn合金非担持触媒は、Mn:50質量%以上を含有することが必要となる。鉄(Fe)は反応ガスに対して活性があり、一方、マンガン(Mn)は反応ガスに対して活性がないものの、Feを活性化できる温度を低下させることが推定できる。このため、Fe金属触媒を用いた場合、炭素ナノ繊維を製造するには、反応温度を通常700℃以上と高温にする必要があるが、Mnを50質量%以上含有させたFe−Mn合金触媒を用いた場合には、反応温度を450〜620℃と低温にしても、Feを活性化させることができ、しかも、多角形の断面を持つ薄片繊維状の2枚のナノリボンを合体させてなる複合構造をもつ炭素ナノ繊維を製造することができるからである。
【0018】
なお、Mn含有量の上限は、特に限定はしないが、Mn含有量が90質量%を超えると、製造される炭素ナノ繊維の収率(歩留り)が著しく低下する傾向があるので、90質量%とすることが好ましい。
【0019】
また、反応ガスは、一酸化炭素と水素の混合ガスからなることが好ましく、混合ガス中の一酸化炭素の体積割合は、10〜40体積%とすることが好ましい。前記体積割合が、10体積%未満だと、製造される炭素ナノ繊維の収率(歩留り)が著しく低下する傾向があり、50体積%超えだと2枚の繊維状ナノリボンではなく1枚からなる単一構造の炭素ナノ繊維の割合が90%以上になるからである。
【0020】
反応温度は、450〜620℃とすることが必要である。反応温度が450℃未満だと、
製造される炭素ナノ繊維の収率が顕著に低下するからであり、また、620℃を超え
ると、炭素ナノ繊維の構造が複合構造とはならず、単一構造になるからである。
【0021】
以上のことから、本発明は、熱処理炉内に、Mn:50質量%以上を含有するFe−Mn非担持合金触媒を装入し、一酸化炭素を含有する反応ガス中にて450〜620℃で反応させることによって、多角形断面を持つ薄片繊維状の2枚のナノリボンを、繊維中心軸線を挟んで合体させてなる複合構造を有する炭素ナノ繊維を製造することができる。
【0022】
図2は、炭素ナノ繊維の製造装置の概略を示したものである。
図3は、熱処理炉10(水平炉)の石英管11(内径45mm、長さ500mm)内の長手方向中央位置に置かれた石英ボート12上に、30質量%Fe−70質量%Mn合金触媒13を30mg装入し、20体積%一酸化炭素と80体積%水素の混合ガスからなる反応ガスを熱処理炉内に流速200cc/minで導入して、500〜675℃の反応温度で1時間反応させることによって炭素ナノ繊維を製造したときの、走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0023】
図4〜図7は、図3中で代表的な4種類の炭素ナノ繊維の構造を模式的に示したときのものであって、図4は、反応温度が450℃以上500℃以下(具体的には500℃)の場合、図5は、反応温度が500℃超え560℃未満(具体的には540℃)の場合、図6は、反応温度が560℃以上620℃以下(具体的には560℃)の場合、そして、図7は、反応温度が620℃超え675℃以下(具体的には630℃)の場合である。
【0024】
図3〜図7に示した炭素ナノ繊維の写真から、(1)製造温度が低いほど炭素ナノ繊維の繊維系が小さくなることが分かる。また、500℃超えの温度(図5〜図7)の合成までは、2枚の繊維の間に内壁を連結するブリッジが見られないが、500℃以下(図4および図13)で製造した炭素ナノ繊維は2枚の薄片繊維状のナノリボンの内壁を一定間隙で連結するブリッジが生成する場合のあることが確認できる。
【0025】
図3〜図7に、本発明の炭素ナノ繊維のSEMとTEMの写真を示したが、上記の写真だけでは炭素ナノ繊維が2枚の薄片状のナノリボンが合体か単一繊維からなる単一構造であるか明確に分かりにくい。そこで本発明者らは、炭素ナノ繊維が炭素ナノチューブのように単一構造であれば、同心円形の断面を持ち、TEM観察で繊維を回転して撮影してもその構造が変化しないことから、本発明の炭素ナノ繊維を高性能のTEMを使用し、繊維軸を30°回転させて撮影を行った。図8および図9にその結果を示す。
【0026】
また、図10(a)および図11(a)、(b)に、600℃で成長させたときの本発明の炭素ナノ繊維のSEM写真と正面および側面のTEM写真を示す。
【0027】
図8(a),(b)および図9(a),(b)に示したように、本発明の炭素ナノ繊維は、TEMで繊維軸を30°ティルティング(回転)することによって繊維の組織が一変し、全く異なる組織を示す。繊維が単一構造の普通の炭素ナノ繊維と炭素ナノチューブが繊維をいくら回転しても同じ組織を示すことから、本発明の炭素ナノ繊維が2枚の薄片状のナノリボンの合体によって構成された複合構造の繊維であることが分かる。さらに、図10には、600℃で合成した炭素ナノ繊維が2枚のナノリボンの合体からなる複合構造であることがよく観察できるし、図11(a),(b)に示す側面と前面のTEM写真から、長方形の2枚の薄片繊維状のナノリボンが内壁の一定空洞を置いて合体していることが分かる。
【0028】
これらの図から、反応温度が450〜620℃の範囲である場合(図4〜図6))には、炭素ナノ繊維のいずれもが、薄片状の2枚のナノリボンを繊維中心軸線CLを挟んで合体させてなる複合構造となり、反応温度が620℃を超える場合(図7)には、一般的な炭素繊維6の構造である単一のチューブラ構造になることがわかる。
【0029】
また、反応温度が450〜620℃の範囲である場合であっても、反応温度が450℃以上560℃未満の範囲である場合(図4及び図5)には、炭素ナノ繊維5A及び5Bは、繊維軸中心軸線CL位置に空洞部8を有し、繊維軸(繊維軸中心軸線CL)に対し炭素ナノ繊維素(炭素ナノ繊維を構成する単位)を平行配列したチューブラ(Tubular)構造となり、一方、反応温度が560℃以上620℃以下の場合(図6)には、空洞部が狭くなって、繊維軸に対し炭素ナノ繊維素を直交配列したプレートレット(Platelet)構造になる。
【0030】
加えて、反応温度が450℃以上500℃以下である場合(図4)と、反応温度が500℃超え560℃未満の範囲である場合(図5)とを比較すると、前者は、後者に対し、外径が小さく内径が大きいチューブラ構造となる。
【0031】
なお、反応温度が450℃以上500℃以下であるときであっても、図4に示すように、空洞部8に、ナノリボン7a、7b間を連結する複数のブリッジ部9を有する複合構造になる場合もあり、ブリッジ部形成の有無のメカニズムは定かではないが、2枚の薄片状のナノリボンを一体化させる各々繊維から働く粒子間力が弱くなって、一体化を維持するために生成したブリッジであると推定される。
【0032】
図12は、SEMとTEMで観察した本発明の炭素ナノ繊維の形状モデルを温度によって示したものである。
ここで、図12に示す炭素ナノ繊維5A、5B、5Cは、いずれも2枚のナノリボン7a及び7bで構成されていることを説明するため、ナノリボン7a、7b同士の間隔を誇張して大きく示してあるが、実際には、2枚のナノリボン7a、7bは分子間力によって結合されている。
【0033】
また、反応温度が620℃よりも高いと、炭素ナノ繊維の外面形状が円形状となるが、本発明のように、反応温度が450〜620℃の範囲である場合には、炭素ナノ繊維の外面形状は6角形等の多角形の断面形状となり、これは合成(反応)時に働く触媒の形状が620℃までは多角形を維持していることを意味する。
【0034】
なお、炭素ナノ繊維の外面形状を多角形の断面形状とする必要がある場合には、Fe−Mn合金触媒として、FeとMnの硝酸溶液から重炭酸アンモニウムを用いてFeとMnの炭酸塩を析出させる、いわゆる共沈析法によって生成した非担持触媒を用いることが好ましい。例えば、Fe−Mn合金触媒として、Fe−Mn合金をカーボンブラック上に担持した後に大気中でカーボンブラックを燃焼させて消失させる、いわゆる空気燃焼法によって生成した担持触媒を用いた場合には、炭素ナノ繊維の外面形状が円形状となるからである。
【0035】
以上のことから、本発明の炭素ナノ繊維は、多角形断面を持つ薄片繊維状の2枚のナノリボンを、繊維中心軸線を挟んで各々繊維の内壁側の面を合体させてなる複合構造を有するので、単一構造の場合と比べると触媒担体または吸着剤として有効的に使える比表面積を大きくすることができる。
【0036】
尚、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0037】
次に、この発明に従う炭素ナノ繊維を製造したので以下で説明する。
熱処理炉(水平炉)の石英管(内径45mm、長さ500mm)内の長手方向中央位置に置かれた石英ボート上に、30質量%Fe−70質量%Mn合金触媒を30mg装入し、20体積%一酸化炭素と80体積%水素の混合ガスからなる反応ガスを熱処理炉内に流速200cc/minで導入して、500℃、540℃、560℃、630℃の反応温度でそれぞれ1時間反応させることによって、各々123mg、187mg、246mg及び112mgの炭素ナノ繊維を製造した。
【0038】
図4〜7は、それぞれ500℃、540℃、560℃、630℃の反応温度で製造した炭素ナノ繊維を走査型および透過型電子顕微鏡で撮像した時のSEM写真およびTEM写真であり、図8(a),(b)および図9(a),(b)は、それぞれ500℃および540℃の反応温度で製造した炭素ナノ繊維を、繊維中心軸線に対してそれぞれ0°と30°で回転させて、透過型電子顕微鏡で撮像した時のTEM写真である。
【0039】
図4〜図9の写真から、500℃、540℃、560℃の反応温度で製造した炭素ナノ繊維は、いずれも2枚のナノリボンを繊維中心軸線を挟んで合体させてなる複合構造を有し、630℃の反応温度で製造した炭素ナノ繊維だけが、単一構造であるのがわかる。
【0040】
また、図4〜図9の写真から、500℃の反応温度では、炭素ナノ繊維に連結部を有し、長手方向に断続的に延びる空洞部が存在するチューブラ構造になり、540℃の反応温度では、長手方向に連続的に伸びる空洞部が存在するチューブラ構造になり、560℃の反応温度では、空洞部が消失したプレートレット構造になり、そして、630℃の反応温度では、空洞部を有するチューブラ構造になっているのがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明の炭素ナノ繊維は、電気導電性を要する触媒担体として最も適した構造で、これからカーボンブラックを代替する高性能触媒調製用担体として用途が期待できる。その理由として、本発明の炭素ナノ繊維は繊維中心軸線上に空洞部を有するが、その空洞部は炭素ナノチューブのように炭素ナノ繊維の外壁と隔離されて閉鎖した同心円のトンネルではなく、炭素ナノ繊維の外壁と連結されて繊維の両端が開口する開空間である特異な構造であるので、金属触媒を担持する時、繊維の内壁まで有効に使えてより高活性の触媒性能が期待できる。さらに、吸着剤としての応用にも、繊維の外壁しか使えない炭素ナノチューブと通常構造の炭素ナノ繊維に比べて、繊維の内壁まで有効に使えるのでより高い吸着特性が期待できる。また、高い表面積と高黒鉛化特性を求める電気二重層キャパシタ材料にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】炭素ナノ繊維の構成を説明するための模式図である。
【図2】炭素ナノ繊維の製造装置の概略図である。
【図3】500〜675℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のSEM写真である。
【図4】500℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のSEMおよびTEM写真である。
【図5】540℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のSEMおよびTEM写真である。
【図6】560℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のSEMおよびTEM写真である。
【図7】630℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のSEMおよびTEM写真である。
【図8】500℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のTEM写真であり、(a)は通常の状態(繊維軸の回転角度:0°)、(b)は繊維軸を30°回転させた状態である。
【図9】540℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のTEM写真であり、(a)は通常の状態(繊維軸の回転角度:0°)、(b)は繊維軸を30°回転させた状態である。
【図10】600℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維を撮影したときのSEM写真である。
【図11】600℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維を、(a)は繊維側面、(b)は繊維正面から撮影したときにTEM写真である。
【図12】反応温度と炭素ナノ繊維の形状モデルを模式的に示した図である。
【図13】図12(a)の他の炭素ナノ繊維の形状モデルを模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0043】
1 炭素ナノ繊維
2 炭素六角網面
3 炭素ナノ繊維素
4 炭素ナノ繊維素群
5A、5B、5C、5D、6 炭素ナノ繊維
7a、7b ナノリボン
8 空洞部
9 ブリッジ部
10 熱処理炉(水平炉)
11 石英管
12 石英ボート
13 Fe-Mn合金触媒
【技術分野】
【0001】
本発明は、高比表面積をもつ炭素ナノ繊維およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素ナノ繊維(繊維状ナノ炭素やカーボンナノファイバーともいう。)は、カーボン材料の特異な形態として知られている。
【0003】
本発明者らは、炭素ナノ繊維の構造について検討し、特許文献1において、図1に示すように、炭素ナノ繊維1が、炭素六角網面2の積層体からなる炭素ナノ繊維素3を単位として、かかる炭素ナノ繊維素3を、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成した炭素ナノ繊維素群4を、さらに、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成され、全体として単一構造からなることを開示した。
【特許文献1】特開2003−342839号公報
【0004】
しかしながら、本発明者らが炭素ナノ繊維の構造についてさらに詳細に検討したところ、触媒と反応温度の適正化を図ることによって、炭素ナノ繊維の構造が、単一構造ではなく、これまでには存在しなかった特異構造になることを見出した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、触媒と反応温度の適正化を図ることにより、高比表面積をもつ特異構造の炭素ナノ繊維およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)片面同士を合体させた複合構造をもつ、薄片繊維状の2枚のナノリボンを有することを特徴とする高比表面積をもつ炭素ナノ繊維。
【0007】
(2)炭素ナノ繊維は、その繊維中心軸線上でかつ炭素ナノ繊維の両端にわたって連続して延びる空洞部を有する上記(1)記載の炭素ナノ繊維。
【0008】
(3)炭素ナノ繊維の両端位置を除く前記空洞部に、ナノリボン間を連結するブリッジ部をさらに有する上記(2)記載の炭素ナノ繊維。
【0009】
(4)炭素ナノ繊維の外面形状は、多角形の断面形状を有する上記(1)、(2)または(3)記載の炭素ナノ繊維。
【0010】
(5)熱処理炉内に、マンガン(Mn)を50質量%以上含有する非担持型Fe−Mn合金触媒を装入し、一酸化炭素を含有する反応ガス中にて450〜620℃で反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の高比表面積をもつ炭素ナノ繊維の製造方法。
【0011】
(6)前記Fe−Mn合金触媒は、FeとMnの硝酸溶液から重炭酸アンモニウムを用いてFeとMnの炭酸塩を析出させる、いわゆる共析法によって生成することを特徴とする上記(5)記載の炭素ナノ繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、触媒と反応温度の適正化を図ることにより、単一構造ではなく、これまでには存在しなかった多角形の断面を持つ薄片繊維状の2枚のナノリボンの各々の片面を合体させてなる複合構造をもつ高比表面積の炭素ナノ繊維の製造が可能になった。
この発明の炭素ナノ繊維は、電気導電性を要する触媒担体として最も適した構造であるため、将来的に、カーボンブラックを代替する高性能触媒調製用担体としての用途が期待できる。その理由として、本発明の炭素ナノ繊維は、繊維中心軸線上に空洞部を有するが、その空洞部は炭素ナノチューブのように炭素ナノ繊維の外壁と隔離されて閉鎖した同心円のトンネルではなく、炭素ナノ繊維の外壁と連通する空間である特異な構造であるので、金属触媒を担持する時、繊維の内壁まで有効に使えて、より高活性の触媒性能が期待できる。さらに、吸着剤としての応用にも、繊維の外壁しか使えない炭素ナノチューブや、通常構造の炭素ナノ繊維に比べて、繊維の内壁まで有効に使えるので、より高い吸着特性が期待できる。また、高い表面積と高黒鉛化特性を求める電気二重層キャパシタ材料にも使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者らは、特許文献1において、炭素ナノ繊維1が、図1に示すように、炭素六角網面2の積層体からなる炭素ナノ繊維素3を単位として、かかる炭素ナノ繊維素3を、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成した炭素ナノ繊維素群4を、さらに、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成され、全体として単一構造からなることを開示した。
【0014】
しかしながら、本発明者らが炭素ナノ繊維の構造についてさらに詳細に検討したところ、触媒と反応温度の適正化を図ることによって、炭素ナノ繊維の構造が、単一構造ではなく、これまでには存在しなかった特異構造、すなわち、これまでには存在しなかった多角形断面をもつ薄片繊維状の2枚のナノリボンを各々の片面を合体させてなる複合構造をもつことを見出し、本発明を完成させるに至った。以下、本発明の完成させるに至った経緯を作用効果とともに説明する。
【0015】
本発明者らは、まず、炭素ナノ繊維を製造するために必要不可欠な触媒について検討を行った。
触媒としては、例えば、Fe、Ni、Co等で代表される炭素ナノ繊維調製用の様々な転移金属触媒または合金触媒があるが、これらの触媒のうち、マンガンの含有量が50質量%以上のFe-Mn合金の非担時触媒だけを用い、反応温度を所定の温度範囲で反応させて炭素ナノ繊維を製造した場合にだけ、片面同士を合体させた複合構造をもつ、好適には多角断面を持つ薄片繊維状の2枚のナノリボンを有する炭素ナノ繊維が製造できることがわかった。
【0016】
また、反応温度は、所定の温度範囲内であっても、炭素ナノ繊維の繊維軸中心軸線位置に空洞部が生じたり、さらに生じた空洞部が一定間隙で2枚のナノリボンの内壁を連結して、空洞部にブリッジを作ったり、炭素ナノ繊維の外径や内径または構造等の形状が変化することもわかった。
【0017】
但し、本発明では、Fe-Mn合金非担持触媒は、Mn:50質量%以上を含有することが必要となる。鉄(Fe)は反応ガスに対して活性があり、一方、マンガン(Mn)は反応ガスに対して活性がないものの、Feを活性化できる温度を低下させることが推定できる。このため、Fe金属触媒を用いた場合、炭素ナノ繊維を製造するには、反応温度を通常700℃以上と高温にする必要があるが、Mnを50質量%以上含有させたFe−Mn合金触媒を用いた場合には、反応温度を450〜620℃と低温にしても、Feを活性化させることができ、しかも、多角形の断面を持つ薄片繊維状の2枚のナノリボンを合体させてなる複合構造をもつ炭素ナノ繊維を製造することができるからである。
【0018】
なお、Mn含有量の上限は、特に限定はしないが、Mn含有量が90質量%を超えると、製造される炭素ナノ繊維の収率(歩留り)が著しく低下する傾向があるので、90質量%とすることが好ましい。
【0019】
また、反応ガスは、一酸化炭素と水素の混合ガスからなることが好ましく、混合ガス中の一酸化炭素の体積割合は、10〜40体積%とすることが好ましい。前記体積割合が、10体積%未満だと、製造される炭素ナノ繊維の収率(歩留り)が著しく低下する傾向があり、50体積%超えだと2枚の繊維状ナノリボンではなく1枚からなる単一構造の炭素ナノ繊維の割合が90%以上になるからである。
【0020】
反応温度は、450〜620℃とすることが必要である。反応温度が450℃未満だと、
製造される炭素ナノ繊維の収率が顕著に低下するからであり、また、620℃を超え
ると、炭素ナノ繊維の構造が複合構造とはならず、単一構造になるからである。
【0021】
以上のことから、本発明は、熱処理炉内に、Mn:50質量%以上を含有するFe−Mn非担持合金触媒を装入し、一酸化炭素を含有する反応ガス中にて450〜620℃で反応させることによって、多角形断面を持つ薄片繊維状の2枚のナノリボンを、繊維中心軸線を挟んで合体させてなる複合構造を有する炭素ナノ繊維を製造することができる。
【0022】
図2は、炭素ナノ繊維の製造装置の概略を示したものである。
図3は、熱処理炉10(水平炉)の石英管11(内径45mm、長さ500mm)内の長手方向中央位置に置かれた石英ボート12上に、30質量%Fe−70質量%Mn合金触媒13を30mg装入し、20体積%一酸化炭素と80体積%水素の混合ガスからなる反応ガスを熱処理炉内に流速200cc/minで導入して、500〜675℃の反応温度で1時間反応させることによって炭素ナノ繊維を製造したときの、走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0023】
図4〜図7は、図3中で代表的な4種類の炭素ナノ繊維の構造を模式的に示したときのものであって、図4は、反応温度が450℃以上500℃以下(具体的には500℃)の場合、図5は、反応温度が500℃超え560℃未満(具体的には540℃)の場合、図6は、反応温度が560℃以上620℃以下(具体的には560℃)の場合、そして、図7は、反応温度が620℃超え675℃以下(具体的には630℃)の場合である。
【0024】
図3〜図7に示した炭素ナノ繊維の写真から、(1)製造温度が低いほど炭素ナノ繊維の繊維系が小さくなることが分かる。また、500℃超えの温度(図5〜図7)の合成までは、2枚の繊維の間に内壁を連結するブリッジが見られないが、500℃以下(図4および図13)で製造した炭素ナノ繊維は2枚の薄片繊維状のナノリボンの内壁を一定間隙で連結するブリッジが生成する場合のあることが確認できる。
【0025】
図3〜図7に、本発明の炭素ナノ繊維のSEMとTEMの写真を示したが、上記の写真だけでは炭素ナノ繊維が2枚の薄片状のナノリボンが合体か単一繊維からなる単一構造であるか明確に分かりにくい。そこで本発明者らは、炭素ナノ繊維が炭素ナノチューブのように単一構造であれば、同心円形の断面を持ち、TEM観察で繊維を回転して撮影してもその構造が変化しないことから、本発明の炭素ナノ繊維を高性能のTEMを使用し、繊維軸を30°回転させて撮影を行った。図8および図9にその結果を示す。
【0026】
また、図10(a)および図11(a)、(b)に、600℃で成長させたときの本発明の炭素ナノ繊維のSEM写真と正面および側面のTEM写真を示す。
【0027】
図8(a),(b)および図9(a),(b)に示したように、本発明の炭素ナノ繊維は、TEMで繊維軸を30°ティルティング(回転)することによって繊維の組織が一変し、全く異なる組織を示す。繊維が単一構造の普通の炭素ナノ繊維と炭素ナノチューブが繊維をいくら回転しても同じ組織を示すことから、本発明の炭素ナノ繊維が2枚の薄片状のナノリボンの合体によって構成された複合構造の繊維であることが分かる。さらに、図10には、600℃で合成した炭素ナノ繊維が2枚のナノリボンの合体からなる複合構造であることがよく観察できるし、図11(a),(b)に示す側面と前面のTEM写真から、長方形の2枚の薄片繊維状のナノリボンが内壁の一定空洞を置いて合体していることが分かる。
【0028】
これらの図から、反応温度が450〜620℃の範囲である場合(図4〜図6))には、炭素ナノ繊維のいずれもが、薄片状の2枚のナノリボンを繊維中心軸線CLを挟んで合体させてなる複合構造となり、反応温度が620℃を超える場合(図7)には、一般的な炭素繊維6の構造である単一のチューブラ構造になることがわかる。
【0029】
また、反応温度が450〜620℃の範囲である場合であっても、反応温度が450℃以上560℃未満の範囲である場合(図4及び図5)には、炭素ナノ繊維5A及び5Bは、繊維軸中心軸線CL位置に空洞部8を有し、繊維軸(繊維軸中心軸線CL)に対し炭素ナノ繊維素(炭素ナノ繊維を構成する単位)を平行配列したチューブラ(Tubular)構造となり、一方、反応温度が560℃以上620℃以下の場合(図6)には、空洞部が狭くなって、繊維軸に対し炭素ナノ繊維素を直交配列したプレートレット(Platelet)構造になる。
【0030】
加えて、反応温度が450℃以上500℃以下である場合(図4)と、反応温度が500℃超え560℃未満の範囲である場合(図5)とを比較すると、前者は、後者に対し、外径が小さく内径が大きいチューブラ構造となる。
【0031】
なお、反応温度が450℃以上500℃以下であるときであっても、図4に示すように、空洞部8に、ナノリボン7a、7b間を連結する複数のブリッジ部9を有する複合構造になる場合もあり、ブリッジ部形成の有無のメカニズムは定かではないが、2枚の薄片状のナノリボンを一体化させる各々繊維から働く粒子間力が弱くなって、一体化を維持するために生成したブリッジであると推定される。
【0032】
図12は、SEMとTEMで観察した本発明の炭素ナノ繊維の形状モデルを温度によって示したものである。
ここで、図12に示す炭素ナノ繊維5A、5B、5Cは、いずれも2枚のナノリボン7a及び7bで構成されていることを説明するため、ナノリボン7a、7b同士の間隔を誇張して大きく示してあるが、実際には、2枚のナノリボン7a、7bは分子間力によって結合されている。
【0033】
また、反応温度が620℃よりも高いと、炭素ナノ繊維の外面形状が円形状となるが、本発明のように、反応温度が450〜620℃の範囲である場合には、炭素ナノ繊維の外面形状は6角形等の多角形の断面形状となり、これは合成(反応)時に働く触媒の形状が620℃までは多角形を維持していることを意味する。
【0034】
なお、炭素ナノ繊維の外面形状を多角形の断面形状とする必要がある場合には、Fe−Mn合金触媒として、FeとMnの硝酸溶液から重炭酸アンモニウムを用いてFeとMnの炭酸塩を析出させる、いわゆる共沈析法によって生成した非担持触媒を用いることが好ましい。例えば、Fe−Mn合金触媒として、Fe−Mn合金をカーボンブラック上に担持した後に大気中でカーボンブラックを燃焼させて消失させる、いわゆる空気燃焼法によって生成した担持触媒を用いた場合には、炭素ナノ繊維の外面形状が円形状となるからである。
【0035】
以上のことから、本発明の炭素ナノ繊維は、多角形断面を持つ薄片繊維状の2枚のナノリボンを、繊維中心軸線を挟んで各々繊維の内壁側の面を合体させてなる複合構造を有するので、単一構造の場合と比べると触媒担体または吸着剤として有効的に使える比表面積を大きくすることができる。
【0036】
尚、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0037】
次に、この発明に従う炭素ナノ繊維を製造したので以下で説明する。
熱処理炉(水平炉)の石英管(内径45mm、長さ500mm)内の長手方向中央位置に置かれた石英ボート上に、30質量%Fe−70質量%Mn合金触媒を30mg装入し、20体積%一酸化炭素と80体積%水素の混合ガスからなる反応ガスを熱処理炉内に流速200cc/minで導入して、500℃、540℃、560℃、630℃の反応温度でそれぞれ1時間反応させることによって、各々123mg、187mg、246mg及び112mgの炭素ナノ繊維を製造した。
【0038】
図4〜7は、それぞれ500℃、540℃、560℃、630℃の反応温度で製造した炭素ナノ繊維を走査型および透過型電子顕微鏡で撮像した時のSEM写真およびTEM写真であり、図8(a),(b)および図9(a),(b)は、それぞれ500℃および540℃の反応温度で製造した炭素ナノ繊維を、繊維中心軸線に対してそれぞれ0°と30°で回転させて、透過型電子顕微鏡で撮像した時のTEM写真である。
【0039】
図4〜図9の写真から、500℃、540℃、560℃の反応温度で製造した炭素ナノ繊維は、いずれも2枚のナノリボンを繊維中心軸線を挟んで合体させてなる複合構造を有し、630℃の反応温度で製造した炭素ナノ繊維だけが、単一構造であるのがわかる。
【0040】
また、図4〜図9の写真から、500℃の反応温度では、炭素ナノ繊維に連結部を有し、長手方向に断続的に延びる空洞部が存在するチューブラ構造になり、540℃の反応温度では、長手方向に連続的に伸びる空洞部が存在するチューブラ構造になり、560℃の反応温度では、空洞部が消失したプレートレット構造になり、そして、630℃の反応温度では、空洞部を有するチューブラ構造になっているのがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明の炭素ナノ繊維は、電気導電性を要する触媒担体として最も適した構造で、これからカーボンブラックを代替する高性能触媒調製用担体として用途が期待できる。その理由として、本発明の炭素ナノ繊維は繊維中心軸線上に空洞部を有するが、その空洞部は炭素ナノチューブのように炭素ナノ繊維の外壁と隔離されて閉鎖した同心円のトンネルではなく、炭素ナノ繊維の外壁と連結されて繊維の両端が開口する開空間である特異な構造であるので、金属触媒を担持する時、繊維の内壁まで有効に使えてより高活性の触媒性能が期待できる。さらに、吸着剤としての応用にも、繊維の外壁しか使えない炭素ナノチューブと通常構造の炭素ナノ繊維に比べて、繊維の内壁まで有効に使えるのでより高い吸着特性が期待できる。また、高い表面積と高黒鉛化特性を求める電気二重層キャパシタ材料にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】炭素ナノ繊維の構成を説明するための模式図である。
【図2】炭素ナノ繊維の製造装置の概略図である。
【図3】500〜675℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のSEM写真である。
【図4】500℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のSEMおよびTEM写真である。
【図5】540℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のSEMおよびTEM写真である。
【図6】560℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のSEMおよびTEM写真である。
【図7】630℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のSEMおよびTEM写真である。
【図8】500℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のTEM写真であり、(a)は通常の状態(繊維軸の回転角度:0°)、(b)は繊維軸を30°回転させた状態である。
【図9】540℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維のTEM写真であり、(a)は通常の状態(繊維軸の回転角度:0°)、(b)は繊維軸を30°回転させた状態である。
【図10】600℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維を撮影したときのSEM写真である。
【図11】600℃で反応(成長)させたときの炭素ナノ繊維を、(a)は繊維側面、(b)は繊維正面から撮影したときにTEM写真である。
【図12】反応温度と炭素ナノ繊維の形状モデルを模式的に示した図である。
【図13】図12(a)の他の炭素ナノ繊維の形状モデルを模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0043】
1 炭素ナノ繊維
2 炭素六角網面
3 炭素ナノ繊維素
4 炭素ナノ繊維素群
5A、5B、5C、5D、6 炭素ナノ繊維
7a、7b ナノリボン
8 空洞部
9 ブリッジ部
10 熱処理炉(水平炉)
11 石英管
12 石英ボート
13 Fe-Mn合金触媒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面同士を合体させた複合構造をもつ、薄片繊維状の2枚のナノリボンを有することを特徴とする高比表面積をもつ炭素ナノ繊維。
【請求項2】
炭素ナノ繊維は、その繊維中心軸線上でかつ炭素ナノ繊維の両端にわたって連続して延びる空洞部を有する請求項1記載の炭素ナノ繊維。
【請求項3】
炭素ナノ繊維の両端位置を除く前記空洞部に、ナノリボン間を連結するブリッジ部をさらに有する請求項2記載の炭素ナノ繊維。
【請求項4】
炭素ナノ繊維の外面形状は、多角形の断面形状を有する請求項1、2または3記載の炭素ナノ繊維。
【請求項5】
熱処理炉内に、マンガン(Mn)を50質量%以上含有する非担持型Fe−Mn合金触媒を装入し、一酸化炭素を含有する反応ガス中にて450〜620℃で反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の高比表面積をもつ炭素ナノ繊維の製造方法。
【請求項6】
前記Fe−Mn合金触媒は、FeとMnの硝酸溶液から重炭酸アンモニウムを用いてFeとMnの炭酸塩を析出させる、いわゆる共析法によって生成することを特徴とする請求項5記載の炭素ナノ繊維の製造方法。
【請求項1】
片面同士を合体させた複合構造をもつ、薄片繊維状の2枚のナノリボンを有することを特徴とする高比表面積をもつ炭素ナノ繊維。
【請求項2】
炭素ナノ繊維は、その繊維中心軸線上でかつ炭素ナノ繊維の両端にわたって連続して延びる空洞部を有する請求項1記載の炭素ナノ繊維。
【請求項3】
炭素ナノ繊維の両端位置を除く前記空洞部に、ナノリボン間を連結するブリッジ部をさらに有する請求項2記載の炭素ナノ繊維。
【請求項4】
炭素ナノ繊維の外面形状は、多角形の断面形状を有する請求項1、2または3記載の炭素ナノ繊維。
【請求項5】
熱処理炉内に、マンガン(Mn)を50質量%以上含有する非担持型Fe−Mn合金触媒を装入し、一酸化炭素を含有する反応ガス中にて450〜620℃で反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の高比表面積をもつ炭素ナノ繊維の製造方法。
【請求項6】
前記Fe−Mn合金触媒は、FeとMnの硝酸溶液から重炭酸アンモニウムを用いてFeとMnの炭酸塩を析出させる、いわゆる共析法によって生成することを特徴とする請求項5記載の炭素ナノ繊維の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−241651(P2006−241651A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62351(P2005−62351)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】
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