説明

高温の排気ガスを提供するための装置

本装置は、タービン(24)を駆動するために高温の排気ガスを提供するために用いられる。この装置はバーナ(17)を備え、このバーナの燃焼ゾーン(23)は、タービン(24)のガスインレット(タービンハウジング29)に直接接しているか、又はガスインレット内に組み込まれて実施されている。このバーナ(17)には少なくとも1つの燃焼可能なガス又は混合気が供給される。本発明に基づき、この燃焼ゾーン(23)は、高い比表面積をもつ開放孔質材料を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンを駆動するために高温の排気ガスを提供するための装置、並びにそのような種類の装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
基本的に、高温の燃焼排気ガスで作動するタービンが知られている。特許文献1は、バーナによって焚きつけられるタービン及び発電機を介して車両用電気エネルギーが提供される構造を示している。この特許文献1の特徴は、バーナがタービンまたはタービンインテークハウジング内に組み込まれていることにある。この場合、バーナ自体は火炎バーナとして形成され、タービンを駆動するためにできるだけ高い温度を提供する。この構造の欠点は、非常に温度が高いことと燃焼が比較的制御しにくいこととによって、そのようなバーナが、例えばNOxの排出など、好ましくない物質の排出を増加させる原因となることである。従って、特許文献1ではオプションで触媒反応体が設けられ、この触媒反応体は、内燃機関後の排気ガス触媒コンバータのように、タービン内で高温の燃焼排気ガスを膨張させた後で残りを燃焼(変換)する。このことにより排気ガス中にはある程度の余熱が生じるため、この余熱を熱交換器によって比較的手間をかけて再度取り戻さなければならない。さらに、バーナに関して最適な小型構造は、追加の排気ガス触媒コンバータによって再び大きくなってしまう。
【0003】
本発明の好ましい適用範囲から、さらに、タービンと組み合わされたバーナが燃料電池システムに使用されることが周知である。
【0004】
例えば、特許文献2は、燃料電池に空気を供給する装置を説明している。この装置は、電動アシストターボチャージャとして形成されている。このために、拡張器又はタービン部分において高温のガスが膨張して、空気供給に必要なエネルギーの少なくとも一部が提供される。高温のガスを発生させるため、細孔バーナ又は触媒バーナの形でバーナが設けられている。このバーナは、燃料電池の排気ガスを燃焼させ、必要に応じて燃料電池に補助的に燃料を供給することができる。日本の特許文献3から、同様の構造が知られている。
【0005】
この構造は、燃料電池システム内の高温のガスを使用可能にしているが、燃料電池の排気ガス中に含まれている不適切な残留物を全て完全に変換すること、例えば、特許文献3ではガス発生システムを使用して残留炭化水素を、又は特許文献2では水素タンクを使用して残留水素を完全に変換することがそれほど確実に行われない。このことは、通常、バーナ内における触媒反応の安全かつ確実な発火がしばしば困難であるか、又は十分な再現性を達成することができないことに起因している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0157881号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10306234号明細書
【特許文献3】特開昭59―075571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、タービンを駆動するための高温の排気ガスを供給する装置を提供することであり、この装置は、タービンの駆動に利用する可燃性ガスの中に存在する化学エネルギーをできる限り利用し、その他の措置を講じることなく、有害な排出を一切伴わない排気ガスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づき、この課題は、請求項1の特徴部分に記載されている特徴をもつ装置によって解決される。本発明に基づく装置の有利な発展形態は、従属請求項に示されている。本発明に基づく装置の特に好ましい使用は請求項8に示されており、これについての有利な発展形態はその従属請求項に示されている。
【0009】
本発明に基づく解決方法は、直接タービンに接続されているか、又はタービンあるいはタービンハウジングに全部又は部分的に組み込まれているバーナが燃焼ゾーンを有しており、この燃焼ゾーンは、高い比表面積をもつ開放孔質材料を有している。この細孔バーナ又はマトリックスバーナもしくはマトリックス輻射バーナとしての構造により、裸火なしで、非常に均質かつ効果的な燃焼を実現することができる。これにより、最小の取付けスペースで、直接タービンに接続して、又は例えばタービンハウジングに組み込んで、又はタービンハウジングの中に挿入するカートリッジの形で、非常にコンパクトな構造を達成することができる。マトリックスバーナ又は細孔バーナの有利な特性及びバーナによって放射される熱エネルギーにより、燃焼しなければならないガス流のほとんど全ての成分を非常に効果的に燃焼することが可能になる。この場合、この構造は極めてコンパクトかつ効果的に実現することができる。
【0010】
本発明に基づく装置の特に有利な実施形態では、高い比表面積をもつ開放孔質材料が少なくとも1つの触媒作用のある材料を有している。すなわち、このバーナは、純粋な細孔バーナ、マトリックスバーナなどとして実施されているのではなく、同時に、該当する原料を、裸火なしで、安全かつ確実に変換する触媒バーナとして実施されている。
【0011】
本発明に基づく装置の非常に適切かつ有利な発展形態では、さらに、バーナに少なくとも一時的に外気が供給されるように設定されており、このバーナは点火装置を有し、この点火装置によって少なくとも外気及び燃料電池の燃料を燃焼することができる。すなわち、このバーナには、燃料電池の排気ガス及び少なくとも一時的な燃料の供給に加えて外気が供給される。好ましくは燃料と一緒に供給されるこの外気は、次に、バーナの中に配置されている点火装置によって空気及び燃料の燃焼を起こすことが可能になる。例えばフロー方向における実際の燃焼ゾーンの上流での、すなわち細孔バーナなどの多孔質構造前での、この点火により、つまり先行して点火が行われることにより、安全かつ確実にバーナをスタートすることができる。これにより、例えばタービンの駆動に利用できる望ましい高温の排気ガスを、必要な時にいつでも提供することが確実に行われる。さらに、燃料電池の燃料及び排気ガスは常にバーナの部分で完全に変換することができるため、水素、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物(NOx)などが燃料電池システムの周辺に排出されることは一切ない。
【0012】
非常に適切かつ有利な発展形態によれば、さらに、外気及び燃料電池の燃料が、フロー方向に向かって点火装置の下流及び燃焼ゾーンの上流で燃料電池からの排気ガスと1つにまとめられるように設定することができる。この構造により、供給される外気と一緒になった燃料への点火は非常にコントロールしやすく、高い信頼性によって行うことができるようになり、一方、排気ガスは、点火が無事に済んだ後の、燃焼ゾーンへ到達する前又は到達時に、すでに燃焼しているこの混合気と1つにまとめられる。このことは、排気ガスの組成とは無関係に、どのような場合でも混合気に点火することができるという利点があり、それは、点火装置の部分には燃料と外気しかなく、それらの混合比は簡単に制御可能であるからであり、費用の高いセンサによって排気ガス内の残留燃料含有量や残留酸素含有量などを検知する必要はないと思われる。
【0013】
代替の実施形態では、局所的に可燃性混合気が存在するように、外気と燃料電池の燃料とが点火装置の部分に送られるように設定されている。上述のように、該当する分離装置又は分離されたラインエレメントを介して、点火後に初めてガス流が1つにまとめられる代わりに、代替の実施形態では、外気と燃料とが点火装置の部分に向けて供給されることにより、点火装置の部分に局所的に点火可能な混合気があるように設定されている。外気と燃料とが、例えばノズルのようなエレメントを使って、又は高い圧力で方向をつけて点火装置の部分に流れるようにし、この部分では、燃料電池からの排気ガスがより多く存在している周辺部分よりも高い濃度の外気と燃料が存在するようにすることができる。
【0014】
この場合、点火装置は、基本的に様々な種類で形成することができる。例えば、セラミックグロープラグ又はグローコイルなど、発熱体の形の点火装置が考えられる。しかし、混合物をスパークによって点火する点火装置がとくに効率的である。そのようなスパークを用いることにより、比較的少ないエネルギー量で空気と燃料からなる可燃性混合気に安全かつ確実に点火することができ、スパークによって作動する点火装置を用いれば、予熱時間などを必要とせずに非常に素早く点火することが可能となる。
【0015】
特に適切かつ有利な使用では、本発明に基づく装置が燃料電池システム内のタービンの駆動に用いられ、バーナには、少なくとも燃料電池システムの燃料電池からの排気ガスが供給される。
【0016】
冒頭で説明した従来技術から知られているように、燃料電池システムの排気ガスから残留エネルギーを回復するために、バーナとタービンとが燃料電池システム内に取り付けられる。この残留エネルギーは、次にタービン内で圧力と熱の形に変換される。タービンは、例えばコンプレッサ及び/又は電気エネルギーを提供する発電機を動かすことができる。燃料電池システムからのエネルギーの回復は、さらに、燃料電池の排気ガス内の残留物質を完全に変換するという利点があるため、炭化水素や水素が周辺に一切排出されない。最適な方法では、この場合、バーナが触媒バーナとして実施されており、約600℃の比較的低温での無炎燃焼によりNOx排出も防止することができる。
【0017】
本発明に基づく装置の有利なその他の実施形態は、残りの従属請求項に示されており、以下に図を用いて詳しく説明される実施例によって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に基づく装置を備える燃料電池システムの第1の実施形態である。
【図2】本発明に基づく装置を備える燃料電池システムのもう1つの実施形態である。
【図3】第1の実施形態での本発明によるバーナである。
【図4】もう1つの実施形態での本発明によるバーナである。
【図5】もう1つの代替の実施形態での本発明によるバーナである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び2には、燃料電池システム1の2つの異なる構造が記載されており、これらの構造は、高温の排気ガスを提供するための本発明に基づく装置の、好ましい、1つに限定されない使用である。この場合、燃料電池システム1の核を形成しているのは燃料電池2であり、この燃料電池は例えばPEM燃料電池スタックとして形成されている。この場合、燃料電池2のカソード領域3とアノード領域4とは、プロトン導電性膜5によって互いに分離されている。燃料電池2を作動するための酸化剤として、通常は空気中の酸素が用いられ、そのために、空気供給装置6によって空気がカソード領域3に供給される。アノード領域4には、水素又は水素含有ガスが供給される。ここで示されている実施例においては、燃料電池2のアノード領域4には圧縮ガスタンク7から水素が供給されることになっている。この圧縮ガスタンク7の中に高圧下で貯蔵されている水素は、バルブ装置8を介してアノード領域4に供給され、この時、燃料電池2の作動に適した圧力レベルまで緩和される。燃料電池2の燃料として純粋な水素を使用する場合、この水素は、通常、燃料電池2のアノード領域4で変換できる使用可能な流量よりも多い流量がアノード領域4に供給される。このことにより、プロトン導電性膜5の使用可能な全ての作動面に十分な量の水素をできるだけ均等に供給することができる。使用されなかった水素は、次に、アノード領域4から再循環ライン9を介して排出され、例えば水素再循環ブロワ及び/又はガス噴射ポンプなどの再循環供給装置10によって、圧縮ガスタンク7からくる新鮮な水素と一緒に再びアノード領域4に供給される。やがて、再循環ライン9の部分では窒素が増加し、この窒素は、膜5を通り抜けてアノード領域4に達し、同じく少量の生産水も燃料電池2のアノード領域4に発生する。この不活性成分は燃料電池内で変換することができないため、再循環ライン9とアノード領域4の容積内の水素濃度を徐々に低下させる。従って、アノード領域4の酸素濃度を正常に保つため、時々、最循環ライン9の部分にある物質が排出ライン11とその中に配置されているバルブ装置12とを介して排出される。この排出ライン11、いわゆるパージラインによる排出時には、必ずある程度の量の残留水素がシステムから漏れ出すため、排出された物質の流れは、周辺への排出が一切ないように、後で詳しく説明する方法で後処理する必要がある。
【0020】
燃料電池3の膜5は、乾燥に対して比較的弱い。空気供給装置6から供給される空気の体積流は、通常、乾燥しているため、空気の体積流が増加するに従って膜5の乾燥は加速することになる。このことから、燃料電池システム1内に加湿装置13を設けることがあり、これは、例えばガス/ガス加湿装置として形成されている。このような加湿装置13は、主に、水蒸気を通す膜からできている。膜の一方の側では、空気供給装置6から送られる乾燥したガス流が流れている。膜のもう一方の側では、燃料電池2のカソード領域3から排出される排出ガス流が流れている。大部分の生産水が燃料電池2のカソード領域3で生じることから、この排気ガス流には水蒸気及び水滴の形で水分が含まれている。この水蒸気は加湿装置13の膜を通り抜けて、乾燥した供給エアを加湿することができるため、一方では排出エアが除湿され、他方では加湿された供給エアによって燃料電池2の膜5の加湿を確実行うことができる。このような完全な加湿は全ての状況において望ましいわけではないことから、さらに、加湿装置13の回りにバイパス14を配置することができ、この例ではカソード領域3への供給エアラインの部分に取り付けられているが、原則的にはカソード領域3の排出エアラインの部分にも同様に取り付けることができる。このバイパスはバルブ装置15によって制御され、加湿されなければならない体積流が加湿装置13を通って流れ、適切に分配される。これにより、湿度の調整をカソード領域3の部分で達成することができる。
【0021】
さらに、図1の燃料電池システム1の構造ではインタクーラ16が示されており、これを通って、一方で空気供給装置6後の供給エアが流れ、他方ではカソード領域3からの排出エアが流れる。空気供給装置6後では、送られる空気が圧縮の際に加熱されて熱くなっている。これに対して、カソード領域3からの排出エアはさらに冷えている。インタクーラ16によって、これらの両方のガス流との間で熱交換が生じるため、カソード領域3に送られる空気は冷却され、カソード領域3から排出される空気は加熱される。空気供給装置6後に冷却された空気により、燃料電池の膜5の乾燥の危険はさらに減少する。インタクーラ16においてカソード領域3の排出エア内に入力される熱は、後で詳しく説明するように、ここで有効に利用することができる。
【0022】
インタクーラ16から出た加熱された排出エアは、排出エアライン18を介してバーナ17に流れ込み、このバーナ内で排出ライン11からの残留水素と一緒に、及び必要に応じて水素ライン19及びバルブ装置20を介して、圧縮ガスタンク7から供給される水素と一緒に変換することができる。さらに、バーナ17には、バルブ装置22を備える外気ライン21を介して、空気供給装置6後にカソード領域への供給エアフローから取り出される外気が供給される。バーナ17では、燃焼ゾーン23においてこれらの原料が燃焼される。燃焼ゾーン23は、この場合、特に高い比表面積をもつ開放孔質材料を備えることができる。すなわち、バーナ17を例えば細孔バーナ又はマトリックスバーナとして形成することができる。
【0023】
前述の原料から作られる高温の排気ガスは、図1における燃料電池システム1のこの実施例では、次にタービン24の部分に達し、このタービン24の部分で膨張し、冷却される。これにより、タービン24を介して、燃料電池システムの高温の排気ガス流から機械的なエネルギーを取り戻すことができる。ここに示されている実施例では、タービン24を介して、空気供給装置6に機械的エネルギーを直接供給することができる。さらに、電気機械25を設けることができ、この電気機械は、タービン24の部分において余剰エネルギーが発生した場合はジェネレータとして作動し、高温の排気ガス流から追加的に電力を獲得することができる。タービン24によって提供されるよりも多くのエネルギーを空気供給装置6が必要とする場合は、この電気機械25はモータとしても作動することができる。この場合、電気機械は、空気供給装置6が空気流を送り出すために必要な残りのエネルギーを提供するであろう。タービン24、電気機械25及び空気供給装置6(通常、この構造ではフローコンプレッサとして形成されている)からなるこの構造は、一般的に、エレクトリックターボチャージャ26又はETC26とも呼ばれる。
【0024】
もちろん、そのようなETC26以外に、例えば、水蒸気改質、オートサーマル改質などによって炭化水素含有の原料から水素含有ガスを生成するシステムでの使用など、高温の排気ガスのその他の利用も考えられる。もちろんさらに、タービン24をETC内に配置しないで、フローコンプレッサとして、一方ではタービン24を有し、他方では空気供給装置6だけを有するフリーホイールターボチャージャの中に配置することも考えられる。フリーホイールターボチャージャのフローコンプレッサは、例えば空気供給装置6のステージを形成することができるだろう。また、このフローコンプレッサをその他の任意の方法で駆動し、タービン24を電気機械25又は電気ジェネレータ25にのみ接続することも当然考えられる。この場合は、タービン24によって電気エネルギーを提供することができるだろう。同様に、タービン24によって作られる機械的エネルギーを、該当するトランスミッションユニットを介して車両駆動の補助ユニット及び/又は支援装置を直接機械的に駆動するために利用することも考えられる。
【0025】
この場合、バーナ17には、燃料電池2の部分からの全排気ガスが利用される。水素ライン19とバルブ装置20とによる水素の選択的供給により、タービンを適切に加熱することも可能である。このような場合、例えば燃焼電池システム1のブーストモードを実現することができ、この場合、バーナ17に水素を加えることにより、一時的に比較的高いエネルギー量がタービン24から提供され得る。このエネルギーは、次に、ジェネレータとしての電気機械25によって電流に変換され、この電流を例えば車両システム内で利用し、燃料電池2が十分に早く対応できないダイナミックな出力要求を満たすことができると思われる。このことにより、例えばブーストモード又は緊急時において燃料電池2が作動停止した場合の作動も可能になる。
【0026】
図2には、上述した燃料電池システム1の代替として使用することのできる比較可能なシステム構造が示されている。この構造は、主として、燃料電池2のアノード領域4の回りに再循環ライン9がないことによって区別される。すなわち、この構造の場合、アノード領域4には僅かな余剰水素しか供給されず、この水素は、同様に取り付けられている排出ライン11(ここではバルブを有していない)から直接バーナ17に送られ、カソード領域3からくる排出エアと一緒にこのバーナの中で変換される。すなわち、ここでは燃料電池2からくる両方の排気ガス流の継続的な変換が起こり、この場合も追加の空気及び/又は追加の水素は、水素ライン19又は外気ライン21を介して供給することができる。この構造の場合、さらに、加湿装置13ならびにバイパスライン14及びバルブ装置15が省略されている。使用される膜5のモデルに応じて、加湿装置のないそのような作動は、一方でPEM燃料電池においても考えられる。基本的には、インタクーラ16を省略できる構造も確かに考えられる。しかし、このインタクーラは、ここに説明されている構造では、燃料電池2のカソード領域3からくる排出エアが相応に加熱されるため、すでに温まっている排気ガス流をバーナ17に供給可能であることが有利である。その他に、燃料電池2のカソード領域3への、相応に冷却された供給エアフローにより膜5が保護され、特に加湿器13なしで使用する場合、このことは膜5の寿命にとって有利である。従って、バーナ17のエネルギー利用が可能になり、排気ガス温度を上昇させることができるため、ここでは膜5の寿命と使用エネルギーの利用とに関して、インタクーラ16は有利に働く。
【0027】
図2には、バルブ装置22を備える外気ライン21に平行して、バルブ装置28を備えるオプションの冷却エアライン27が示されている。機能については、後で詳しく取り上げる。図2による実施形態における燃料電池システム1の図でも、この構造にはエレクトリックターボチャージャ26が装備されており、このエレクトリックターボチャージャにもすでに説明したことが当てはまるが、この構造は純粋に例として理解しなければならない。
【0028】
図1及び2で説明されている燃料電池システムにおける重要な視点は、バーナ7の構造にある。図3には、高温の排気ガス提供装置であるバーナ17の第1の実施例が示されている。このバーナ17は、図3に示されている最も簡単な実施形態の場合、バーナ17が実質的に燃焼ゾーン23からのみなるように形成されている。この燃焼ゾーン23は、開放孔によって形成された、高い比表面積を有する材料からなる。材料は、例えば金属又はセラミックをベースにした、ランダムに配列された繊維による編物、一方向に配列された繊維の集積、開放孔質体又は開放孔質の焼結材料などであり得る。その他に、後の実施例でさらに説明するように、燃焼ゾーン23が金属又はセラミック材料からなるメッシュ又は織物からなり、いわゆるマトリックスバーナ又はマトリックス輻射バーナとして形成されることも考えられる。
【0029】
図3では、バーナ17が触媒バーナである。すなわち、燃焼ゾーン23の材料は、触媒作用のある材料が取り付けられており、この材料は、例えば開放孔質構造の中に微細に配分されているか、又は開放孔質構造の表面の少なくとも一部をコーティングの形で覆っている。適切な触媒の材料としては、例えばパラジウム、白金などを使用することができる。触媒バーナ17として形成されていることにより、バーナ17の燃焼ゾーン23の部分では、バーナ17に流れる燃料電池2の排気ガスが(ここでは混合気として矢印によって示され、排出ライン11、排出エアライン18、水素ライン19及び外気ライン21から送られてくる、又は送られてくることができる)、燃焼ゾーン23の部分に供給される。ここで、触媒反応又は触媒燃焼が起こるため、炎を発生させることなく、燃焼電池2の排気ガス内の物質の変換が行われ、必要に応じて水素ライン19から供給される追加の水素の変換も行われる。この場合、触媒燃焼は、タービン24を駆動するための約600℃の温度レベルにおける高温の燃焼排気ガスの提供の他に、バーナ17に流れ込むガス流内の可燃物質をほぼ完全に変換することができるため、排出を大幅に防止することができる。
【0030】
図3ではさらに、燃焼ゾーン23がタービン24の渦巻形のタービンハウジング29の入口部分に組み込まれて形成されていることが分かる。この構造により、最小の取付けスペースでタービン24とバーナ17とを提供することができる。さらに、高温の排気ガスの体積流をバーナ17からタービン24に送らなければならない区間が最小化される。これにより、一方では熱損失が回避され、他方では、長さのある導管に用いる高価な高温耐性材料を大幅に省略することができる。タービンハウジングだけは、該当する高温耐性材料から形成する必要があるか、又は少なくとも内壁部分には、例えばセラミックをベースとするそのような種類の材料でコーティングする必要がある。直接タービン24に装着されて又はタービン24のタービンハウジング29内に組み込まれて実施されている、図3に示されたバーナ17を備える構造により、最小の取り付けスペース要求の他にも、効率の高い高温排気ガス利用による非常に効率的な作動も可能になる。この場合、燃焼ゾーン23部分の高い比表面積をもつ開放孔質材料の触媒層により、燃料電池2の排気ガス内に含まれている可燃性の全ての残留物質が完全に変換されるため、燃料電池システム1の周辺への有害な排出は一切ない。
【0031】
触媒バーナ17で場合によっては起こりうる問題は、このバーナが特定の作動状況において点火しにくいことがあるか、又はいわゆるバーナのライトオフ温度に達するのが遅いため、燃焼していない物質が燃焼ゾーン23の部分を通り抜けてしまう可能性があるということである。従って、一方では排出が起こり、他方では、有利な形で熱エネルギーに変換することのできる物質が利用されないで燃料電池システム1から流れ出す可能性がある。これを回避するため、タービンハウジング29内のバーナの構造には、図4で分かるように、点火装置30が装備されている。図4のバーナ17の構造は、同様に、細孔材料を備える燃焼ゾーン23を用いて形成されている。さらに、ラインエレメント31を介して、燃料電池2からくる排気ガス、すなわち特に排出ライン11と排出エアライン18からくる排気ガスが供給されている。もう1つのラインエレメント32を介して、水素ライン19からくる水素と外気ライン21からくる外気とが供給される。この場合、点火装置30は、ラインエレメント32の部分に配置されているため、この部分には常に水素と外気とからなる点火しやすい混合気が存在している。点火装置30部分での点火が確実に行われているかどうかを確認するため、バーナ17にはさらにモニタリング電極33を設けることができ、これにより点火が無事に行われているか確認することができる。
【0032】
その他の点では、図4に示されているバーナ17は、図3で説明されたバーナと同様に形成されている。ここでも、細孔バーナの形で開放孔質材料を有する燃焼ゾーンが、図3におけるよりもさらにタービンハウジング29の中に組み込まれているため、構造が非常にコンパクトになり、この場合、バーナ17の部分からくる高温の排気ガスは非常に短い経路を通って流れることができる。ここでも燃焼ゾーン23には、特に触媒作用のある材料が取り付けられているため、バーナ17は触媒バーナとして形成されている。しかし、同様の構造は、触媒層のないバーナ17においても考えられる。
【0033】
図4には、変換又は燃焼のために流れているガスのフロー方向に向かって、燃焼ゾーン23の上流にさらに火炎防止装置34が配置されている。そのような火炎防止装置は、この場合、一般的な従来技術から知られており、様々なタイプのバーナにおいて一般的である。この装置は、通常、有孔プレートなどからなり、バーナの部分から流れ込むガスの部分に火炎が跳ね返らないように、火炎を拘束する。
【0034】
バーナ17の図示されていない実施形態のバリエーションでは、ラインエレメント31、32両方の代替として、該当するガス流、特に外気ライン21からの外気と水素ライン19からの水素とがノズルエレメントなどによって点火装置30部分に送られるため、すでに外気と水素とが混ぜ合わされている燃料電池2の排気ガスとは無関係に、その部分に、点火可能な混合気が確実に提供されるように設定することもできるだろう。このバリエーションにより、2つの分離したラインエレエント31、32を介する供給は省略されると考えられ、必要に応じてさらにコンパクトに実施することができる。
【0035】
図5には、バーナ17のもう1つの実施形態が示されている。この場合も、バーナ17はタービン24のタービンハウジング29の中にほとんど組み込まれている。燃焼ゾーン23は、マトリックスバーナ又はマトリックス輻射バーナの燃焼ゾーンとして形成されている。このことは、燃焼ゾーン23が、典型的にはアーチ型のエレメントとして、通常は金属又はセラミックをベースにした織物又はメッシュから形成されていることを意味している。例としては、燃焼ゾーン23が、球冠、シリンダ又はテーパーの一部であることができる。ここで燃料ゾーン23を形成しているマトリックスの材料は同様に触媒材料を有しており、例えばその中では、織物又はメッシュを形成するために使用されている繊維の幾つか又は全てが触媒層を有することができる。マトリックスバーナでは一般的なように、燃焼のための点火は、ここで図示されているように、ガスが流れてくる面とは反対側の燃焼ゾーン23の面上で点火装置30により行われる。さらに、安全かつ確実な点火をモニタするために、すでに前で説明したモニタリング電極33も当然ここに取り付けることができる。さらに、燃焼ゾーン23と流れてくるガスとの間の部分には、オプションの火炎防止装置34がある。
【0036】
図5によるバーナ17の構造は、ラインエレメント31を介して、燃料電池2のカソード領域3の排出エアライン18からくる排出エアが、排出ライン11からくる残留水素と一緒に流れ込むようになっている。ここでは上方からラインエレメント31の部分の中に突き出しているもう1つのラインエレメント32を介して、水素ライン19からくる水素と外気ライン21からくる外気とが供給される。このラインエレメント32は、この場合、その端部がノズルの形に形成されているため、外気と水素とが点火装置30の比較的近い部分に送られることから、必要に応じて触媒コーティングされた、燃焼ゾーン23を形成するマトリックスバーナにおける燃焼の安全かつ確実な点火が実現される。これまでの図でもすでに同様に説明したような構造に追加して、図5によるバーナ17の構造ではさらに第3のラインエレメント35があり、このラインエレメントを介して、図2において説明された冷却エアライン27の部分からくる冷却エアを供給することができる。この冷却エアは、特定の作動状況において、適切な過剰空気によって燃焼温度を下げることができるため、例えば、タービン24及び/又は燃焼ゾーン23の許容作動温度を超過することがない。これにより、使用された原料の完全な燃焼は引き続き保証されつつ、例えば過熱による燃焼ゾーン23の触媒層の損傷を防止することができる。
【0037】
全体的に、このバーナ17は非常にコンパクトに作られており、タービンハウジング29内に直接組み込むことも、またこのタービンハウジングに接して接続することもできる。さらに、バーナ17を独立したカートリッジ方式で形成し、組立ての際にまず、タービンハウジング29の入口部分にこのカートリッジを挿入することも考えられる。
【符号の説明】
【0038】
1 燃料電池システム
2 燃料電池
3 カソード領域
4 アノード領域
5 プロトン導電性膜
6 空気供給装置
7 圧縮ガスタンク
8 バルブ装置
9 再循環ライン
10 再循環供給装置
11 排出ライン
12 バルブ装置
13 加湿装置
14 バイパス
15 バルブ装置
16 インタクーラ
17 バーナ
18 排出エアライン
19 水素ライン
20 バルブ装置
21 外気ライン
22 バルブ装置
23 燃焼ゾーン
24 タービン
25 電気機械
26 エレクトリックターボチャージャ
27 冷却エアライン
28 バルブ装置
29 タービンハウジング
30 点火装置
31 ラインエレメント
32 ラインエレメント
33 モニタリング電極
34 火炎防止装置
35 ラインエレメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンを駆動するために高温の排気ガスを提供するための装置であり、バーナを備え、前記バーナの燃焼ゾーンが直接前記タービンのガスインレットに装着されているか、又はガスインレット内に組み込まれており、前記バーナには少なくとも1つの燃焼可能なガス又は混合気が供給されている装置であって、
前記燃焼ゾーン(23)は、高い比表面積をもつ開放孔質材料を有していることを特徴とする装置。
【請求項2】
高い比表面積をもつ前記開放孔質材料が、少なくとも1つの触媒作用のある材料を有していることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記触媒作用のある材料がパラジウムを有していることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記バーナ(17)に少なくとも一時的に外気が供給され、前記バーナ(17)は点火装置(30)を有し、前記点火装置によって少なくとも外気及び燃料電池(2)の燃料を燃焼することができることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記外気及び前記燃料電池(2)の燃料が、フロー方向に向かって前記点火装置(30)の下流及び前記燃焼ゾーン(23)の上流で前記燃料電池(2)からの排気ガスと1つにまとめられていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記両方の物質からなる可燃性混合気が局所的に存在するように、前記外気と前記燃料電池(2)の前記燃料とが前記点火装置(30)の部分に送られることを特徴とする、請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記点火装置(30)が、スパークによって混合物に点火することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
燃料電池システム(1)内のタービン(24)の駆動に用いられ、前記バーナ(17)には、少なくとも前記燃料電池システム(1)の燃料電池(2)からの前記排気ガスが供給される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置の使用。
【請求項9】
前記バーナ(17)には、必要に応じて前記燃料電池(2)に補助的に空気及び燃料が供給されることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記タービン(24)が、前記燃料電池(2)へ流れる処理空気流のためのコンプレッサ(6)及び/又は電気機械(25)に接続されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−521461(P2013−521461A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555302(P2012−555302)
【出願日】平成22年12月4日(2010.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007379
【国際公開番号】WO2011/107132
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland