説明

高温ガス圧処理装置

【課題】高圧容器2と、高圧容器2内に設けられた被処理対象物を収容する収容器24と、高圧容器2内に設けられた加熱手段6A,6Bとを有する高温ガス圧処理装置において、実際の工業生産に使用可能であって且つ作業の容易化、迅速化、低コスト化が図れるようにする。
【解決手段】高圧容器2の下蓋5には容器内外を連通するガス媒体用下部通路15が形成されており、下蓋5の容器内側にガス媒体用下部通路15を複数の枝通路21に分岐させる通路分岐部材16が設けられており、通路分岐部材16に設けられた各枝通路21には容器内側へ開通して収容器24を接続可能にする継ぎ手部23が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理対象物を加圧焼結等する場合に好適に使用可能な高温ガス圧処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高温ガス圧処理法の一つである熱間等方圧プレス法(HIP法)として、板厚の薄い軟鋼板材や管材等で形成された金属製収容器中に粉末材料や粉末成形体等の被処理対象物を真空封入し、高温高圧雰囲気下で処理することにより緻密な焼結体を製造する技術があり、このために用いる高温ガス圧処理装置は公知である。
この種の高温ガス圧処理法において、被処理対象物を収容器中に封入するには大気中での加熱真空封入処理が必要である。なぜなら、被処理対象物の表面に吸着した水分や収容器内の空気が被処理対象物と反応して酸化物を形成することが無いようにするためである。酸化物は焼結体を高純度化したり拡散接合状態を確実化させたりする上での障害となる。
【0003】
従来の高温ガス圧処理装置として、高圧容器の下蓋を貫通させて調整管を設け、この調整管における高圧容器内の端部を更に収容器内まで到達させ、この調整管を介して収容器内の雰囲気ガスの種類や圧力を調整できるようにすることが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。この場合、ガス調整管を複数本化したり、二重管にしたりする提案も漠然となされている。
またこの調整管を備えた同様な装置を用い、収容器中に炭素とタールピッチなどの有機材料からなる成形体を収納し、加圧焼成する提案もあった(例えば、特許文献2等参照)。この場合、高圧容器の下蓋に収容器内へ達するガス導入口やガス排気口を設けるものとされている。
【特許文献1】特公昭57−31550号公報
【特許文献2】特開昭60−191012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
収容器中に被処理対象物を封入する際に行う真空封入処理では、真空排気装置、溶接機、加熱炉などの各設備が必要であるばかりでなく、作業が非常に煩雑となり、製造コストの高コスト化や処理期間の長時間化などの問題を招来している。
この点に加え、従来の各種提案はいずれも実験室レベルのものであって、高圧容器内へは1個の収容器を収納することが前提になっていたため、実際の工業生産(大量生産化)へ向けた具体的な対策(問題点の洗い出しやそれへの対応など)は、示唆すらされていないと言わざるを得ない。
【0005】
また、高圧容器の下蓋に調整管を設ける場合、この調整管を高圧容器外部の各配管と着脱する(実際のHIP処理では頻繁に必要)ための自動化手段等も何ら開示されていない。これらのことがネックとなり、従来の各種提案はいずれも未だ実用化には至っていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、実際の工業生産に使用可能であって且つ作業の容易化、迅速化、低コスト化が図れるようにした高温ガス圧処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る高温ガス圧処理装置は、円筒状筒体及びその上下を密閉可能に閉鎖する上蓋及び下蓋を有する高圧容器と、この高圧容器内に設けられ且つ被処理対象物を収容する収容器又は収容室と、高圧容器内に設けられて収容器又は収容室を加熱可能な加熱手段とを有するものであって、前記高圧容器の下蓋には容器内外を連通するガス媒体用下部通路が形成されており、この下蓋の高圧容器内側に前記ガス媒体用下部通路を複数の枝通路に分岐させる通路分岐部材が設けられており、この通路分岐部材に設けられた枝通路の各々には容器内側へ開通して収容器又は収容室を接続可能にする継ぎ手部が設けられていて、前記枝通路の各々に開閉手段が設けられていることを特徴とする。
【0007】
このような構成であると、高圧容器内に複数の収容器又は収容室を収容すると共に、高圧処理中において収容器又は収容室内内の雰囲気ガスの種類や圧力を調整することが、実際の工業生産として実施可能となる。また、開閉手段を操作するだけで通路分岐部材の各枝通路において使用するか不使用にするかの選択が自在に行えるものとなる。すなわち、各枝通路に対して収容器又は収容室を接続するか否かの選択ができることになり、結果、高圧容器内へ収容させる収容器又は収容室の数を任意に変更することが可能となる。そのため、実際の工業生産に対し、より一層、即したものとなる。
【0008】
好ましくは、前記開閉手段は手動操作弁とすることができる。
このような構成を採用すると、開閉手段の操作が極めて簡単且つ迅速に行える。
前記高圧容器の上蓋には容器内外を連通するガス媒体用上部通路が設けられており、このガス媒体用上部通路には、高圧容器の外部において第1ガス源を経路中に具備する第1ガス供給配管が接続配管されており、前記高圧容器の下蓋に設けられたガス媒体用下部通路には、高圧容器の外部において真空ポンプ及び第2ガス源を経路中に具備する第2ガス供給配管が接続配管されており、前記第1ガス供給配管と第2ガス供給配管とがバイパス開閉手段を介して接続されて第1、第2のガス源と上下の通路との相互連通切替が可能とされた構成を採用することも可能である。
【0009】
このような構成を採用することで、第2ガス供給配管及びガス媒体用下部通路から収容器又は収容室へ向けて第2ガスを供給したり、これら収容器又は収容室を減圧させたりできることは当然であり、加えて、第2ガス供給配管及びガス媒体用下部通路から収容器又は収容室へ向けて第1ガスを供給するということもできるようになる。
また第1ガス供給配管及びガス媒体用上部通路から高圧容器内へ向けて第1ガスを供給できることは当然であり、加えて、第1ガス供給配管及びガス媒体用上部通路から高圧容器内へ向けて第2ガスを供給したり、高圧容器内を減圧させたりするということもできる。このようなことから、種々様々な高圧ガス処理が可能となる。
【0010】
前記下蓋は昇降用アクチュエータで昇降可能とされており、前記下蓋のガス媒体用下部通路と第2ガス供給配管とがプラグイン構造の継ぎ手を介して接続されたものとすることができる。
このような構成を採用すると、高圧容器に対する収容器(被処理対象物)の出し入れに際し、下蓋を昇降させ、また下蓋に対するガス媒体用下部通路の着脱(ガス媒体用下部通路と第2ガス供給配管との接続や切り離し)が簡単且つ迅速に行えるものとなる。すなわち、高圧容器に対する収容器(被処理対象物)の出し入れが簡単且つ迅速に行える。従って、高圧ガス処理に関し、より一層、作業の容易化、迅速化、低コスト化が図れるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る高温ガス圧処理装置では、実際の工業生産に使用可能であって且つ作業の容易化、迅速化、低コスト化が図れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
図1乃至図3は、本発明に係る高温ガス圧処理装置の第1実施形態を示している。この高温ガス圧処理装置1は高圧容器2を核として構成されるもので、高圧容器2は、円筒状筒体3と、この円筒状筒体3の上下を密閉可能に閉鎖する上蓋4及び下蓋5とを有し、更にこれら上下の蓋4,5を対向状に把持固定する窓枠状のフレーム(図示略)を有している。
【0013】
高圧容器2内には筒体3の内周面に沿うような配置で加熱手段6A,6Bが設けられている。好ましくは、この加熱手段6A,6Bのまわり(筒体3の内周面との間)が上端閉塞の円筒形(倒立コップ形)を呈した断熱層7で囲まれるようにされて、その全体として炉体が構成されている。また上下の蓋4,5と筒体3との嵌合部分には、ガス圧を封止するシールリング8が装着されている。
高圧容器2の上蓋4にはガス媒体用上部通路10が設けられている。図3に示すように、このガス媒体用上部通路10は、第1ガス供給配管11を介して加圧処理用の第1ガス源12(アルゴン等の第1ガスを貯留)に接続されており、高圧容器2内へ第1ガスを導入したり排出したりできるようになっている。
【0014】
また高圧容器2の下蓋5には、この高圧容器2の内外を連通させる状態でガス媒体用下部通路15が設けられている。この下蓋5の上部、すなわち高圧容器2の内側を向く面には通路分岐部材16が設けられている。この通路分岐部材16には、上記したガス媒体用下部通路15と連通した状態で、当該ガス媒体用下部通路15を複数の経路に枝分かれさせ、且つその状態で高圧容器2の内側へ向けて開通させた枝通路21が設けられている。
通路分岐部材16において、各枝通路21が高圧容器2の内側へ向けて開通する部分は、開閉手段22の接続が可能な継ぎ手部23として形成されている。図例では、通路分岐部材16から各枝通路21に対応して高圧容器2の内部へと突き出すようにして継ぎ手部23が設けられ、この継ぎ手部23の先に開閉手段22が連結された状態としてある。
【0015】
この開閉手段22には手動操作弁が採用されており、人為的な操作によって枝通路21における継ぎ手部23より先の通路を開閉することができる。
一方、この開閉手段22には、被処理対象物(粉末材料や粉末成形体等)を収容する収容器(図例はカプセル)24を接続したり取り外したりすることが可能になっている。この収容器24は気体不透過性材料により形成されており、一端部に、開閉手段22と連結する通気管25が設けられている。
図3に示すように、下蓋5に設けられたガス媒体用下部通路15は、第2ガス供給配管30を介して第2ガス源31(水素や塩化水素ガス等の第2ガスを貯留)に接続されており、収容器24内へ第2ガスを導入したり排出したりできるようになっている。
【0016】
またガス媒体用下部通路15には、別経路の第2ガス供給配管30を介して大気放流管32や真空ポンプ33が接続されており、収容器24内を減圧乃至真空にできるようになっている。
第1ガス供給配管11と第2ガス供給配管30とは、バイパス開閉手段35を具備するバイパス配管36によって接続されている。そのため、第1ガス源12で貯留される第1ガスと、第2ガス源31で貯留される第2ガスとについて、第1ガス供給配管11からガス媒体用上部通路10を経て高圧容器2内へ供給したり、或いは第2ガス供給配管30からガス媒体用下部通路15を経て各収容器24内へ供給したり、といった相互切替が自在に行えるようになっている。
【0017】
なお、第1ガス源12への回収ライン39にはドレン弁38が設けられている。また第1ガス供給配管11にはガス圧縮機40や第1圧力検出器41、更には経路中の適所を開閉することのできる開閉弁42〜44が設けられている。第2ガス供給配管30についても、第2圧力検出器45や、経路中の適所を開閉することのできる開閉弁46〜49やガス放出弁50が設けられている。
図2に示すように、下蓋5は昇降用アクチュエータ55により昇降可能とされている。これに伴い、下蓋5には、ガス媒体用下部通路15が高圧容器2の外方へ向けて開通する部分(図例では下蓋5の外周)にプラグイン構造の継ぎ手56が接続されている。
【0018】
このような構成の高温ガス圧処理装置1では、以下のように使用することができる。すなわち、まず図2に示すように下蓋5のガス媒体用下部通路15と第2ガス供給配管30とを接続しているプラグイン構造の継ぎ手56を解除させ、昇降用アクチュエータ55を下向きに作動させて下蓋5を下降させる。
下蓋5の下降に伴って通路分岐部材16も下降し、高圧容器2の外部に露出した状態になるので、この通路分岐部材16の各枝通路21に対応して設けられた複数の開閉手段22のうち、所定のもの(数)に通気管25を介して収容器24を連結する。収容器24としては、同じ大きさのものを採用してもよいが、大きさの異なる複数種を選択することも可能である。
【0019】
このとき、収容器24を連結しない開閉手段22では閉方向へ操作して、対応する通路分岐部材16の枝通路21を閉鎖状態にする。
収容器24の連結及び所定の開閉手段22における閉止操作が完了した段階で、昇降用アクチュエータ55を上向きに作動させ、下蓋5を上昇させる。そしてプラグイン構造の継ぎ手56により、下蓋5のガス媒体用下部通路15と第2ガス供給配管30とを接続する。このようにして高圧容器2内に所定数の収容器24を収容する。
収容器24内の被処理対象物(例えば金属粉末)の表面が酸化されている場合には、開閉弁46,47を開き、第2ガス源31の第2ガス(水素や塩化水素ガス等)を収容器24内へ供給して酸化皮膜等を還元除去する処理を行う。この過程で、若しくは次いで、第1ガス源12からガス圧縮機40を介して高圧ガスを高圧容器2内に充填しつつ加熱して高圧処理を行う。
【0020】
処理後は、高圧容器2内を室温のまま又は加熱手段6A,6Bに通電して加熱しながら、開閉弁46,47を閉鎖すると共にガス放出弁50を開き、収容器24内の被処理対象物から発生したガスを大気放流管32から大気中に放出する。なお、ガス放出弁50を開く代わりに開閉弁49を開き、真空ポンプ33を作動させて強制排気するようにしてもよい。
その後は、プラグイン構造の継ぎ手56を解除させ、昇降用アクチュエータ55を下向きに作動させて下蓋5を下降させ、通路分岐部材16上から収容器24を取り出せばよい。
【0021】
以上説明したところから明かなように、従来のHIP処理において収容器24内の被処理対象物を緻密化するには、事前に行う真空封入処理を、大気中で、しかも加熱炉及び真空ポンプを使用しなければ行えなかったが、本発明に係る高温ガス圧処理装置1を使用すれば、HIP処理と同時に複数の収容器24の真空封入処理を一気に済ませることができる。そのため、処理コストの低減や処理時問の飛躍的な低減が可能となる。
殊に、高圧処理中において収容器24内の雰囲気ガスの種類や圧力を調整できることは、実際の工業生産現場で出される多くの要請に対して非常に柔軟に対応できるところとなり、種々様々な高圧ガス処理が可能となって有益である。
【0022】
また、本発明に係る高温ガス圧処理装置1では、開閉手段22の操作だけで通路分岐部材16における枝通路21の選択、即ち、枝通路21に接続する収容器24の数(高圧容器2内へ収容させる収容器24の数)を任意に設定することができるので、実際の工業生産に即したものとなる。
更に、高圧容器2に対する収容器24(被処理対象物)の出し入れに際し、下蓋5を昇降させる(ガス媒体用下部通路15と第2ガス供給配管30との接続や切り離しを含む)作業が簡単且つ迅速に行えるものとなる。すなわち、高圧容器2に対する収容器24(被処理対象物)の出し入れが簡単且つ迅速に行える。
【0023】
従って、高圧ガス処理に関して作業の容易化、迅速化、低コスト化が図れるものであり、従来のHIP処理をさらに洗練した技術として発展させる効果は、高圧処理技術の普及拡大に大きく貢献するところである。
なお、通路分岐部材16には、第2ガス源31に接続されるガス媒体用下部通路15を供給系の配管として独立させ、また大気放流管32や真空ポンプ33に接続されるガス媒体用下部通路15を排気系の配管として独立させるように、それぞれ各別に設けておくことも可能である。
【0024】
この場合、収容器24についても2本の通気管25を設けておき、そのうち1本の通気管25は供給系のガス媒体用下部通路15と接続し、収容器24の他の通気管25は排気系のガス媒体用下部通路15と接続すればよい。
このような構成を採用すると、繰り返して同じ処理(酸化皮膜等の還元除去)を行う場合に好都合となる。
[第2実施形態]
図4及び図5は、本発明に係る高温ガス圧処理装置の第2実施形態を示している。本第2実施形態の高温ガス圧処理装置1が第1実施形態のものと最も異なるところは、高圧容器2の内部(断熱層7及び加熱手段6A,6Bの更に内側)に雰囲気形成用の収容室(図例はチャンバ)60を設置している点にある。
【0025】
収容室60の下部は通路分岐部材16の外周部を外嵌しており、且つこの外嵌部分にシールリング62が設けられるようになっている。これにより、収容室60内は高圧容器2内において気密性(ガス的に遮断された区画状態)が保たれる。
なお、通路分岐部材16は、円盤形に形成された下部基盤部材16Aと、この下部基盤部材16Aの上面に点在配置で複数設けられた径小円盤形の上部基盤部材16Bとを有したものとなっている。そして、シールリング62についても、下部基盤部材16Aの外周面に配置された下部シールリング62Aと、それぞれの上部基盤部材16Bの外周面に配置された上部シールリング62Bとが設けられている。
【0026】
このような通路分岐部材16の構成により、収容室60が大型である場合には下部基盤部材16A及び下部シールリング62Aによる外嵌保持を行い、収容室60が小型である場合には、図6に示すように上部基盤部材16B及び上部シールリング62Bによる外嵌保持を行うように使い分けることが可能である。
図6に示すような小型の収容室60を用いる場合にあって、高圧容器2内へ収容する収容室60の数を少なく減らす必要があるとき(枝通路21として不使用となるものが生じるとき)に、それに相当する開閉手段22を閉鎖すればよいことは、第1実施形態で説明したのと同じである。
【0027】
収容器24には、収容室60の大きさに適合する有底円筒状(コップ形)をしたものが採用され、この収容器24は通路分岐部材16の上に支持台61を介して載置されるようになっている。また、この収容器24内へ収容する被処理対象物は、炭素繊維や炭化ケイ素繊維又は金属やセラミック粉末のポーラスな成形体としてある。
収容室60には、その室内外の圧力差を原因として当該収容室60が圧縮破損するのを防止するために、チェッキ弁63が設けられている。そのため、高圧容器2内であって且つ収容室60の外側へ供給される第1ガスについては、収納室60の内外間で圧力差が生じている間(内圧が低いとき)は自由に収容室60内へ流入するが、収容室60内からの排気は阻止されることで、当該収容室60内の低圧化は起こらない。
【0028】
これらの他、高圧容器2の構成において第1実施形態と大きく異なるところはない。使用状態としては、通路分岐部材16に設けられる各枝通路21のうち、各収納室60内に含まれる全て又は少なくとも一つが、開閉手段22を開状態にさせておけばよい点が第1実施形態とやや異なる(第2実施形態では収容器24と直接的な接続関係にはないが、収容室60内を介して連通しているという意味において第1実施形態と同じである)。
なお、収容室60の室内外における圧力差を均圧化する操作の都合から、図5に示すように、第1ガス供給配管11における開閉弁44の高圧容器側と、第2ガス供給配管30における開閉弁47の反高圧容器側との間をバイパス配管65で接続すると共に、このバイパス配管65に対してバイパス開閉手段66を設けてある。また、第1ガス源12への回収ライン39にはドレン弁38が設けられている。
【0029】
被処理対象物からガスが発生して収容室60の内圧が外圧を超えているか否かは、高圧容器2の内圧を検出可能な第1圧力検出器41と、収容室60の内圧を検知可能な第2圧力検出器45の指示値の差から判断することができる。
もし、収容室60の内圧が高くなった場合には、収容室60内のガスを枝通路21、ガス媒体用下部通路15からガス放出弁50又は真空ポンプ33へと誘導し、大気に放出すれば、収容室60の破損を防止することができる。
実際の処理には、いくつかの運転パターンがある。
【0030】
例えば、被処理対象物として、高圧下での炭化水素系ガスを用いたポーラスな成形体を用い、CVIと呼ばれる化学気相含浸(Chemical Vapour Impregnation)法により、炭素繊維成形体の内部に炭素を蒸着させ、高密度化処理を行って緻密な炭素繊維/炭素複合材(carbon-Fiber/Carbon-Composite)を製造する場合には、次のようにする。
すなわち、第2ガス源31に貯留させる第2ガスは炭化水素系のガス(例えばメタン)とし、第2ガス供給配管30の開閉弁47と第2バイパス配管65のバイパス開閉手段66を開とし、第2ガス供給配管30の開閉弁46は、閉とさせる。
【0031】
この状態で、第1ガス源12から第1ガス供給配管11(第1バイパス配管36の利用も可)、下蓋5のガス媒体用下部通路15、通路分岐部材16の枝通路21を介して収容室60内へ、第2ガス源31の供給圧を超えない内圧となるように第1ガスを供給する。
この供給後、第2バイパス配管65のバイパス開閉手段66を閉とする。そして、加熱手段6A,6Bに通電して高圧容器2内を高温とさせ、そのうえで第2ガス供給配管30の開閉弁46を開とし、第2ガス源31から下蓋5のガス媒体用下部通路15、通路分岐部材16の枝通路21を介して収容室60内へ第2ガスを供給する。
【0032】
また同時に、収容室60内を所定圧力に維持させつつ、ガス放出弁50及び大気放流管32を介して収容室60内のガスを少しずつ大気へ放出する。この間、収容室60内へ供給された第2ガスは被処理対象物の気孔内部に炭素を蓄積させるよう作用して、被処理対象物の高密度化が進行する。
このように、高圧容器2内に圧力の異なる圧力領域、又は雰囲気が異なる領域を容易に形成することが可能であるため、真空封入処理とHIP処理の連続処理や、炭素繊維/炭素複合材料(C/Cコンポジット)の化学気相蒸着法による緻密化などが可能となる。これに伴い、高温ガス圧処理の利用が格段に広がり、種々の高機能材料や部材の製造が可能となる。
[第3実施形態]
図7は、本発明に係る高温ガス圧処理装置の第3実施形態を示している。
【0033】
第3実施形態の高温ガス圧処理装置1は、第1実施形態の高温ガス圧処理装置と略同様の構造を有しており、第2実施形態の通路分岐部材16において、下部基盤部材と上部基盤部材とが同一半径の構成となっているものと見なせる。通路分岐部材16の外周面にはシールリング62が設けられている。
第2実施形態と同様に、高圧容器2の内部には逆さコップ状の収容室60を有しており、この収容室60の下方開口が通路分岐部材16に外嵌するようになっている。この収容室60内には収容器24が配設され、この収容器24には、被処理対象物が載置される。
【0034】
第3実施形態の高温ガス圧処理装置1の使用態様や奏する作用効果は、第2実施形態と略同様であるため、説明を省略する。
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、通路分岐部材16において枝通路21の形成数や配置などは何ら限定されるものではない。
【0035】
開閉手段22は、枝通路21の継ぎ手部23に対して着脱可能なプラグ(フリーズド・プラグ)として実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る高温ガス圧処理装置の第1実施形態を示した側断面図である。
【図2】図1の高圧容器を開いた状況を示した側断面図である。
【図3】第1実施形態の全体配管構成を示した側断面図である。
【図4】本発明に係る高温ガス圧処理装置の第2実施形態を示した側断面図である。
【図5】第2実施形態の全体配管構成を示した側断面図である。
【図6】第2実施形態における別の使用例を示した側断面図である。
【図7】本発明に係る高温ガス圧処理装置の第3実施形態を示した側断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 高温ガス圧処理装置
2 高圧円筒
3 円筒状筒体
4 上蓋
5 下蓋
6A,6B 加熱手段
10 ガス媒体用上部通路
11 第1ガス供給配管
12 第1ガス源
15 ガス媒体用下部通路
16 通路分岐部材
21 枝通路
22 開閉手段
23 継ぎ手部
24 収容器
30 第2ガス供給配管
31 第2ガス源
33 真空ポンプ
35 バイパス開閉手段
55 昇降用アクチュエータ
56 プラグイン構造の継ぎ手
60 収容室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状筒体及びその上下を密閉可能に閉鎖する上蓋及び下蓋を有する高圧容器と、この高圧容器内に設けられ且つ被処理対象物を収容する収容器又は収容室と、高圧容器内に設けられて収容器又は収容室を加熱可能な加熱手段とを有する高温ガス圧処理装置において、
前記高圧容器の下蓋には容器内外を連通するガス媒体用下部通路が形成されており、
この下蓋の高圧容器内側に前記ガス媒体用下部通路を複数の枝通路に分岐させる通路分岐部材が設けられており、
この通路分岐部材に設けられた枝通路の各々には容器内側へ開通して収容器又は収容室を接続可能にする継ぎ手部が設けられていて、
前記枝通路の各々に開閉手段が設けられていることを特徴とする高温ガス圧処理装置。
【請求項2】
前記開閉手段は手動操作弁であることを特徴とする請求項1記載の高温ガス圧処理装置。
【請求項3】
前記高圧容器の上蓋には容器内外を連通するガス媒体用上部通路が設けられており、
このガス媒体用上部通路には、高圧容器の外部において第1ガス源を経路中に具備する第1ガス供給配管が接続配管されており、
前記高圧容器の下蓋に設けられたガス媒体用下部通路には、高圧容器の外部において真空ポンプ及び第2ガス源を経路中に具備する第2ガス供給配管が接続配管されており、
前記第1ガス供給配管と第2ガス供給配管とがバイパス開閉手段を介して接続されて第1、第2のガス源と上下の通路との相互連通切替が可能とされている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の高温ガス圧処理装置。
【請求項4】
前記下蓋は昇降用アクチュエータで昇降可能とされており、
前記下蓋のガス媒体用下部通路と第2ガス供給配管とがプラグイン構造の継ぎ手を介して接続されていることを特徴とする請求項3記載の高温ガス圧処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−293828(P2009−293828A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145698(P2008−145698)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】