説明

高温安定型水素化ホウ素配合物

【課題】高温で改良された安定性を有する水性水素化ホウ素配合物を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の水素化ホウ素化合物および少なくとも1種の金属水酸化物を含有する、安定化された水性混合物。この混合物は、水素化ホウ素の分解に関して、特に高温で改善された安定性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高温での向上した安定性を有する水性水素化ホウ素ナトリウム混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的優れた安定性を有する水素化ホウ素水溶液は公知である。例えば、水素化ホウ素ナトリウムを約12%含有し、水酸化ナトリウムを約40%含有する溶液が市販されている。使用目的によっては、例えば水素燃料電池においては、水酸化ナトリウムの含有量が低い、安定な水素化ホウ素含有溶液が望ましい。このような溶液は米国特許第6,866,689号に記載されている。この溶液は水素化ホウ素ナトリウムを約44%含有し、水酸化ナトリウムを約0.2%含有する。しかしながら、この溶液は高温で比較的高率の水素化ホウ素分解を示す。
【特許文献1】米国特許第6,866,689号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が取り組む課題は、高温で改良された安定性を有する水性水素化ホウ素配合物を見いだすことである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、(a)少なくとも1種の水素化ホウ素化合物を15%〜65%;(b)少なくとも1種の金属水酸化物を1%〜10%;および(c)少なくとも1種の吸収性ポリマーまたは賦形剤を0.1%〜20%含む水性混合物を提供する。本発明はさらに、少なくとも1種の吸収性ポリマーまたは賦形剤を添加することによる水性水素化ホウ素混合物の安定化方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
他に特記しない限り、百分率は重量パーセントで示し、温度は℃で示してある。「水素化ホウ素化合物」は、水素化ホウ素アニオン(BH)を含有する化合物である。「吸収性ポリマー」は、水を吸収することができるポリマーである。好ましくは、吸収性ポリマーは水溶性ポリマー(少なくとも1%、あるいは少なくとも5%の水溶性を有するポリマー)、セルロースならびにその誘導体および架橋ポリマーの中から選択される。架橋ポリマーは、好ましくは、水中での分散を容易にするためのカルボキシル基、アミド基、ヒドロキシ基、アミノ基、もしくはエーテル基、またはそれらの組み合わせを有する。「賦形剤」は、例えば、A Wade & P.J. Weller著、医薬品賦形剤ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)(1964年)に定義されている医薬品賦形剤である。特に好ましい賦形剤は例えば、ポリアクリル酸、アンゲリカ酸、アルギン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース(例えば、カルシウムまたはナトリウム塩)、キトサン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ドキュセートナトリウム、グアーガム、ポラクリリンカリウム、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、およびデンプンなどの、錠剤崩壊剤として用いられる賦形剤である。本発明の一実施形態において、賦形剤は少なくとも0.5%、あるいは少なくとも1%の水溶性を有する。本発明の一実施形態において、好ましい吸収性ポリマーは、ポリアクリル酸、ポリ(アクリルアミド−コ−アクリル酸)、アクリル酸のこポリマー(例えば、ポリアクリル酸−コ−ポリエチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピリジンN−オキシド、ポリビニルイミダゾール、エトキシル化ポリエチレンイミン、セルロースエステル(例えば、酢酸エステル、酪酸エステル)、ヒドロキシアルキルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースを含む。本発明の水性混合物は、少なくとも40℃の温度で溶液、スラリー、ゲル、または任意の他の流体混合物であることができる。より高い濃度で水素化ホウ素を有する混合物(例えば、少なくとも50%)は、約25℃の周囲温度では一般的に固形物または粘稠なスラリーであるが、より高い温度では流体となる。
【0006】
一実施形態において、水素化ホウ素化合物(単数または複数)の量は少なくとも20%、あるいは少なくとも25%である。一実施形態において、金属水酸化物(単数または複数)の量は8%以下、あるいは6%以下、あるいは4%以下である。本発明の一実施形態において、金属水酸化物の量は少なくとも2%、あるいは少なくとも3%である。一実施形態において、水素化ホウ素化合物の量は55%以下、あるいは50%以下、あるいは45%以下、あるいは40%以下である。好ましくは、水素化ホウ素化合物は周期表の1、2、4、5、7、11、12もしくは13族の金属カチオンまたはそれらの混合物を有する金属塩である。一実施形態において、水素化ホウ素化合物は水素化ホウ素アルカリ金属またはそれらの組み合わせである。あるいは水素化ホウ素化合物は水素化ホウ素ナトリウム(SBH)もしくは水素化ホウ素カリウムまたはそれらの混合物、あるいは水素化ホウ素ナトリウムを含む。好ましくは、金属水酸化物はアルカリ金属水酸化物またはそれらの組み合わせ;あるいは水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムまたはそれらの混合物;あるいは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム;あるいは水酸化ナトリウムである。2以上の水素化ホウ素アルカリ金属および2以上の金属水酸化物が存在していてもよい。
【0007】
本発明の一実施形態において、吸収性ポリマー(単数または複数)および/または賦形剤(単数または複数)の量は少なくとも0.2%、あるいは少なくとも0.4%、あるいは少なくとも1%、あるいは少なくとも2%である。本発明の一実施形態において、吸収性ポリマー(単数または複数)および/または賦形剤(単数または複数)の量は15%以下、あるいは12%以下、あるいは10%以下、あるいは8%以下である。本発明の一実施形態において、極めて少量の吸収性ポリマー(単数または複数)および/または賦形剤(単数または複数)を必要とする(少なくとも0.1%、しかし1%以下、あるいは0.5%以下)。例えば、部分的に中和されたポリアクリル酸、またはアクリル酸モノマー単位を少なくとも20%、あるいは少なくとも30%、あるいは少なくとも50%、あるいは少なくとも75%含有するコポリマーは極めて少量のみの吸収性ポリマー(単数または複数)および/または賦形剤(単数または複数)を必要とし得る。水性混合物は追加の塩基を含有しているため、水素化ホウ素化合物(単数または複数)に添加されるポリアクリル酸の中和度は重要ではなく、この酸は一般的に水性混合物中で完全に中和される。本発明に使用されるポリマーについては、少なくとも1500、あるいは少なくとも3000、あるいは少なくとも5000の重量平均分子量が好ましい。
【0008】
本発明の一実施形態において、水性混合物は、水素化ホウ素の加水分解を触媒する物質(例えば、Co、Ru、Ni、Fe、Rh、Pd、Os、Ir、Ptなどの遷移金属の塩またはそれらの混合物;ならびにCoおよび/またはNiのホウ化物)を実質的に含まない。
【0009】
本発明の水性混合物は、合成および金属回収の分野においても使用できる。
【実施例】
【0010】
【表1】

【0011】
より高い濃度の水素化ホウ素ナトリウム配合物に部分架橋ポリアクリル酸部分ナトリウム塩を添加することによっても、40および50重量%の配合物の加水分解速度が減少する結果が得られる。これらの配合物を長時間加熱するとき、予想外の現象が観察された。最初の誘導期間の後、水素化ホウ素の加水分解速度はほぼゼロに減少する。
【0012】
【表2】

【0013】
【表3】

【0014】
【表4】

【0015】
【表5】

【0016】
【表6】

【0017】
【表7】

【0018】
【表8】

【0019】
【表9】

【0020】
【表10】

【0021】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の水素化ホウ素化合物を15%〜65%;
(b)少なくとも1種の金属水酸化物を1%〜10%;および
(c)少なくとも1種の吸収性ポリマーまたは賦形剤を0.1%〜20%:
含む水性混合物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の水素化ホウ素化合物が水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムまたはそれらの組み合わせであり、および前記少なくとも1種の金属水酸化物が水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、もしくは水酸化カリウム、またはそれらの組み合わせである、請求項1記載の水性混合物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の吸収性ポリマーまたは賦形剤が水溶性ポリマー、セルロースおよびその誘導体、並びに架橋ポリマーの中から選択される、請求項2記載の水性混合物。
【請求項4】
前記水素化ホウ素化合物が水素化ホウ素ナトリウムであり、および前記塩基が水酸化ナトリウムである、請求項3記載の水性混合物。
【請求項5】
水酸化ナトリウムを2%〜8%有し、および水素化ホウ素ナトリウムを20%〜50%有する、請求項4記載の水性混合物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の吸収性ポリマーまたは賦形剤は、ポリアクリル酸または少なくとも50%のアクリル酸モノマー単位を有するアクリル酸のコポリマーである、請求項5記載の水性混合物。
【請求項7】
ポリアクリル酸またはアクリル酸コポリマーを0.1%〜1%有し、かつ前記ポリアクリル酸またはアクリル酸のコポリマーの重量平均分子量が少なくとも1500である、請求項6記載の水性混合物。
【請求項8】
少なくとも1種の水素化ホウ素化合物を15%〜65%、および少なくとも1種の金属水酸化物を1%〜10%含有する水性水素化ホウ素混合物を安定化する方法であって、少なくとも1種の吸収性ポリマーまたは賦形剤を0.1%〜20%添加すること含む方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種の金属水酸化物が水酸化ナトリウムであり、および前記少なくとも1種の水素化ホウ素化合物が水素化ホウ素ナトリウムである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記水性水素化ホウ素混合物は水酸化ナトリウムを2%〜8%および水素化ホウ素ナトリウムを20%〜50%有する、請求項9記載の方法。

【公開番号】特開2008−13431(P2008−13431A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−163520(P2007−163520)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】