説明

高温液体を移送循環中の木材チップに直接接触させるための方法および装置

【課題】 パルプ製造システムにおけるエネルギー所要量を減少させることができる蒸解槽中のチップの加熱方法を提供する。
【解決手段】 含浸槽および化学的蒸解槽を有するパルプ製造システム中でチップ・スラリーを加熱する方法であって、
液体を含む含浸槽においてチップを含浸処理し、
含浸槽から蒸解槽の上部へ前記チップを移送し、
蒸解槽の下部から液体を抽出し、抽出された液体が、含浸槽中のチップの温度よりも実質的に高い温度を有するようにし、
蒸解槽の下部から抽出された液体を、含浸槽から蒸解槽へ移送される、または移送されているチップに加え、移送されているチップを抽出された液体中において熱エネルギーで加熱する
ことを含むことを特徴とするチップ・スラリーの加熱方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、細砕セルロース繊維材料(本明細書では一般的に「チップ」または「木材チップ」と称される)の化学的処理の分野に関する。具体的には、本発明は、含浸槽および化学的蒸解槽を有するパルプ製造装置におけるチップの加熱およびそのシステムにおける黒液の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
化学的パルプ製造工程でパルプを製造するには、セルロース繊維間のリグニン結合が、チップおよび蒸解液を含む蒸解槽内で、木材チップ(または他のセルロース繊維材料)を「蒸解する」ことにより分解される。白液は、一般的に、新規蒸解、またはチップ・スラリーに導入される前の蒸解化学物質を意味する。黒液は、通常、蒸解工程中に製造されるものであり、水を含有するリグニン残渣と、チップを蒸解し、パルプを形成するために使用される化学物質との混合物である。黒液は、蒸解槽からなどのパルプ製造装置から抽出される。黒液は、蒸解工程へ導入され、蒸解工程中に除去される。
【0003】
図1は、木材チップを処理する従来の化学的蒸解装置100を示す。連続的に供給される木材チップが、ライン101を介してチップ供給装置(図示せず)から含浸槽102へ移送される。チップは、含浸槽102内の蒸解液で前処理され、含浸槽102から、チップおよび液体が、スラリーとして、ライン106を経由して化学蒸解槽104の頂部入口103、例えばトップセパレータまで流れる。蒸解槽104の上部内部領域にあるトップセパレータ103は、チップを蒸解槽の内側チャンバに供給する。
【0004】
チップおよび液体が、トップセパレータ103を通って流れるとき、黒液の一部が液体循環ライン108を介して蒸解槽から抽出される。トップセパレータから抽出された液体は、インラインドレイナー110を通って流れ、このドレイナーは、抽出された液体をライン112を介して熱回収ユニット114に、または液体循環ライン116に向けて送る。
【0005】
従来の液体循環ライン116は、インラインドレイナー110を通る液体の一部、例えば90%を、チップ含浸槽102の底部のチップ出口に、またはチップ・スラリー・ライン106に移送する。液体ポンプ118を用いて、液体をライン116経由で、含浸槽から蒸解槽へ流れるチップ・スラリーに移動させることができる。ライン116において抽出された液体は、含浸槽から排出された前処理されたチップに加えられ、ライン106を介して蒸解槽に移送される。
【0006】
抽出された液体は、含浸槽の底部またはその近傍でライン106内のチップ・スラリーに導入されて、スラリーの液体含有量を増加させ、ライン中のチップ移送を促進する。ライン116からの液体は、チップ・スラリーに導入されて、スラリー内のチップ濃度を低下させ、チップ・スラリー・ライン106を通るチップ移送を促進する。スラリーは、含浸槽からライン106を通って蒸解槽104の頂部に流れる。
【0007】
従来法では、抽出された液体の少量、例えば10%が、ライン112を介して熱回収システム114、例えば熱交換器に流れる。インラインドレイナー110および熱交換器を通って流れる抽出された液体の温度は、例えば約110℃(摂氏)である。抽出された液体からの熱エネルギーが、熱交換器中で使用されて、低圧スチーム、例えば1バールの低圧スチームを生成し、パルプ工場内で使用される。
【0008】
含浸槽内の液体濃度L/W(木材チップに対する液体の重量比)は、例えば2.5である。チップ・スラリー・ライン106で、液体濃度(L/W)は、含浸槽底部中のチップまたはチップ・スラリー・ライン106の最初の領域中のチップに液体(ライン116)を加えることにより上昇させられる。液体を加えることにより、L/Wが増加し、チップ・スラリー・ライン106を通るチップ移送を助ける。スラリーが、蒸解槽104に入ったとき、木材チップに対する液体の比率(L/W)は、例えばトップセパレータで液体を抽出することにより減少する。
【0009】
熱が、しばしば蒸解槽内のチップに加えられる。一般的に、蒸解槽は、含浸槽よりも高い温度で運転される。例えば、含浸槽は110℃で運転することができ、蒸解槽は140℃で運転することができる。チップ・スラリーは、蒸解槽中の温度よりも低い温度でトップセパレータに入る。ライン136を介して中圧スチームなどの熱が蒸解槽に加えられて、蒸解槽中のチップの温度を上昇させる。中圧スチーム146は、通常、10〜12バールの圧力であり、180℃〜190℃の温度である。蒸解槽の温度は、槽の頂部入口で最も低くなる傾向があり、槽を通って下方になるに従い次第に上昇する。
【0010】
蒸解槽104は、一般的に、種々の高さに配置した複数のスクリーンを有し、これらは、蒸解槽の上部スクリーン(上部スクリーンとは下部スクリーン122の上方にあるスクリーン120および121である)を含む。蒸解槽の下方位置にあるスクリーン122(一般的に洗浄スクリーンと呼ばれる)は、蒸解槽の底部近傍、例えば蒸解槽の下方の3分の1(1/3)から4分の1(4/1)に存在する。液体は、上部スクリーン120を通って抽出され、液体ライン124を介して熱回収システム114に供給される。蒸解槽に再循環されることになる液体は、上部スクリーン121によって除去され、液体循環ライン126に供給される。
【0011】
蒸解槽における循環用の液体の他の供給源は、洗浄液(W.L.)140および冷却噴射液体システム142を含んでもよい。洗浄液140、冷却噴射液体142、およびスクリーン121から抽出された液体は、ライン126で混合され、ポンプ127によってヒータ144に移送される。再循環用の液体は、加熱エネルギー用のスチーム供給源146を使用するヒータ144で加熱される。通常、循環液は、液体が抽出された高さと異なる位置、例えばより高い位置で蒸解槽にライン126を介して再導入される。
【0012】
下部スクリーン122から抽出された液体は、ライン128を介してより高い位置で蒸解槽に循環されるか、または熱回収システムに排出される。下部スクリーン122からの液体は、トップセパレータ103から(ライン108を介して)抽出された液体および上部スクリーン120から(ライン124および126を介して)抽出された液体よりも高温である傾向があり、例えば140℃である。蒸解槽の下部領域からの高温液体(ライン128)は、ライン132およびポンプ130を介して、液体に熱を加えずに蒸解槽の上部に再循環される。下部スクリーンより下、かつパルプ排出口近傍に冷却噴射液体、例えば、冷却された洗浄液が加えられて、ライン145を通って蒸解槽から排出されるパルプの温度を下げる。冷却噴射液体は、冷却液体の供給源142から提供され、冷却噴射液体冷却器143を通って、冷却噴射液体を蒸解槽の底部に向けて送るようにする。
【0013】
一般的に、下部スクリーン122からライン128を介して抽出された液体の大部分、例えば70%が、熱回収システム114に流れる。例えば、下部スクリーン122からライン128に抽出された液体を、液体の第1の部分、例えば70%〜80%が、ライン128を介して熱回収システム114に流れ、液体の第2の部分、例えば、10%〜18%が、蒸解槽の頂部に再循環するために、ポンプ130でライン126に移送され、液体の第3の部分、例えば8%〜12%が、ポンプ130でライン132を介して再循環ライン126に移送されるように分けることができる。
【0014】
蒸解槽中のスクリーンから抽出され、蒸解槽またはチップ・スラリー・ライン106に再導入されない余分の黒液、例えば排液は、熱回収システム114を通って流れる。余分の液体の全流の一部、例えば、インラインドレイナーならびに上方および下方抽出スクリーンからの液体が、熱回収システムを通って流れ、該熱回収システムでは余分な液体からの熱エネルギーがスチーム、通常は低圧スチームに変換され、パルプ工場内で他の用途のために使用される。低圧スチームは、通常、約100℃、例えば90〜110℃の温度において、1バールまたはそれより少ない。
【0015】
蒸解槽中のチップの温度を増加させるために中圧スチーム146が、スチーム・ライン136およびヒータ144を介して蒸解槽にしばしば加えられる。中圧スチームは、180℃〜190℃の温度で入り、蒸解槽内のチップの温度を上昇させ、蒸解のための化学反応、例えばチップ内のセルロース繊維と結合しているリグニンの破壊を促進する。中圧スチームを生成するためにはエネルギーが必要である。さらに、蒸解槽に注入されるスチームから生じる凝縮物を除去するために、一般的に蒸発装置が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
パルプ製造システム、例えば含浸槽および蒸解槽を有するシステムを含むパルプ製造システムのためのエネルギー所要量を減少させることは、長年求められてきており、特にパルプ製造システムのエネルギー効率を改善し、スチーム供給源146などの外部供給源からのスチームの必要性を低減することができる、蒸解槽中のチップへの加熱技術が永年求められている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
蒸解槽の最下方スクリーンまたは下方スクリーンで抽出された高温黒液が、含浸槽から蒸解槽に移送されているチップ・スラリーに加えられる。高温液体は、スラリーがトップセパレータに入る前に、チップ・スラリーに熱を加える。チップは、高温黒液が加えられない場合に起こるよりも高い温度で蒸解槽に入る。トップセパレータ内の加熱チップ・スラリーは、蒸解槽に加えられる熱エネルギーを減少させる。チップが蒸解槽に入る前に、高温黒液がチップ・スラリーに加えられるので、蒸解槽が必要とするエネルギーは減少する。
【0018】
本発明者は、含浸槽および化学的蒸解槽を有するパルプ製造システム中でチップ・スラリーを加熱する新規な方法を開発したが、この方法は、
液体を含む含浸槽においてチップを含浸処理し、含浸槽から蒸解槽の上部へ前記チップを移送し、
蒸解槽の下部から液体を抽出し、抽出された液体が、含浸槽中のチップの温度よりも実質的に高い温度を有するようにし、蒸解槽の下部から抽出された液体を、含浸槽から蒸解槽に移送される、または移送されているチップに加え、移送されているチップを抽出された液体中において熱エネルギーで加熱することを含む。
【0019】
本発明者は、含浸槽および化学的蒸解槽を有するパルプ製造システム中でチップ・スラリーを加熱する新規な他の方法も開発したが、この方法は、
液体を含む含浸槽においてチップを含浸処理し、
含浸槽から蒸解槽のトップセパレータへチップを移送し、
蒸解槽の下部スクリーンから液体を抽出し、抽出された液体が、含浸槽中のチップの温度よりも少なくとも20℃高い温度を有するようにし、蒸解槽の下部スクリーンから抽出された液体を、含浸槽から蒸解槽に移送される、または移送されているチップに加え、
移送されているチップを抽出された液体からの熱エネルギーで加熱することを含む。
【0020】
本発明者は、含浸槽および化学的蒸解槽を有するパルプ製造システム中でチップ・スラリーを加熱する新規な装置を開発したが、該装置は、
含浸槽から蒸解槽に延在し、チップが含浸槽から蒸解槽へ流れるチップ移送導管と、
蒸解槽内にあって、高温液が抽出される下部スクリーンと、
下部スクリーンからチップ移送導管に延在し、下部スクリーンから抽出された液体が、チップ移送導管に加えられる第1の液体導管とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者は、複数セットの下方蒸解槽スクリーンまたは1セットの最下方槽スクリーン(一般的に洗浄スクリーンと呼ばれる)から抽出された余分の黒液から熱を回復して、蒸解槽の頂部と含浸槽の底部の間のチップ・スラリー循環ライン内の黒液を加熱するための方法および装置を開発した。
【0022】
図2は、含浸槽12および化学的蒸解槽14を有する化学的チップ蒸解パルプ製造装置10の概略図である。含浸槽は、上方入口15にてチップ供給物23を受け入れる。含浸槽12は、チップがパルプ製造システムを通って流れる方向において蒸解槽14の上流にある。含浸槽は、槽内の蒸解液でチップを前処理する。含浸槽は、化学的蒸解槽のための前処理槽である。
【0023】
含浸槽の底部出口16から排出されたチップおよび液体(チップ・スラリー)は、チップ循環ライン18を通って蒸解槽の上方領域にあるトップセパレータ20に流れる。チップ・スラリーが、トップセパレータを流れるとき、液体の一部が、トップセパレータ内のスクリーンを通って抽出され、液体循環ライン21を経由で蒸解槽を流出する。
【0024】
含浸槽12内の液体濃度(L/W)は、蒸解槽内の液体濃度より低くてもよい。移送流(ライン18)の液体濃度は、含浸槽および蒸解槽の各L/W濃度レベルを増加させて、チップを含浸槽からライン18を通って蒸解槽14に移送する。蒸解槽内では、流入チップ供給流(ライン18)からの液体がトップセパレータ20から液体循環ライン21に抽出され、インラインドレイナー22に流れる。トップセパレータから液体を抽出することにより、蒸解槽内のチップ対するL/W比が、ライン18内よりも低いL/Wレベルに減少する。ライン21からインラインドレイナー22を通る液体の一部分、例えば流れの約半分が、液体循環ライン24を通って流れ、含浸槽から蒸解槽に流れるチップ流に戻る。液体循環ライン24における戻り液体は、含浸槽の底部16またはチップ循環ライン18の最初の部分に加えられる。ポンプ17によって、液体をライン24を通ってライン18におけるチップ・スラリーに送ることができる。戻し液体は、含浸槽と蒸解槽の間のライン18を通って流れるチップ・スラリー内の液体の部分を増加させ、例えばL/W比を増加させるために加えられる。
【0025】
インラインドレイナー22を通る液体流の第2の部分は、液体ライン22を通って熱回収システム28、例えば熱交換器に流れる。トップセパレータから抽出された余分な液体の第2の部分の容積は、例えばインラインドレイナー22を通って流れる余分な液体の容積の約2分の1(1/2)である。
【0026】
インラインドレイナーから図1に示す従来の装置の熱交換器に流れる液体の部分と比較して、インラインドレイナー22を通る黒液の比較的大部分(例えばドレイナーを通る液体の半分)が、熱交換器28に向けて送られる。インラインドレイナーを通って流れる黒液の比較的小部分(例えばドレイナーを通る液体の半分)は、ライン24を通って流れ、そこで(ライン42からの)高温黒液と混合され、チップ・スラリー・ライン18に加えられる。チップ移送ライン18に向けインラインドレイナーを通る部分は、チップ移送ライン18で必要とされる液体の量および熱回収システムに送られる液体の量に応じて変化させることができる。
【0027】
トップセパレータ20から蒸解槽に排出されたチップおよび蒸解液は、蒸解槽14を下方に流れる。蒸解槽の種々高さのスクリーン30、31および32が、槽内のチップ・スラリーから黒液を抽出する。スクリーンは、従来通りのものであり、化学的パルプ蒸解の当技術分野で公知のものである。上部スクリーン30および31からの液体の抽出および循環は、従来通りであり、一例として、図1に示すスクリーン120およびスクリーン121による抽出および循環に類似している。蒸解槽の上方位置の抽出スクリーン30から抽出された黒液により、液体ライン34を介して熱回収システム28に流れる黒蒸解液が抽出される。上方位置にある再循環スクリーン31からの液体は、槽の上部領域38、例えば液体循環ライン36を介してトップセパレータに循環させることもできる。また、白液(W.L.)52を、液体循環ライン50に加えて、蒸解槽の頂部に十分な液体を確保することができる。
【0028】
蒸解槽14内の下部スクリーン32、例えば洗浄スクリーンは、抽出された高温黒液の実質的な流量を提供する。下部スクリーンは、例えば蒸解槽の下方3分の1(1/3)または4分の1(1/4)の高さである。例えば、チップ・スラリー・ライン21に対する下部スクリーンから抽出された黒液の比率は、下部スクリーンからトップセパレータに向けて液体ライン21を流れる黒液の比率の3〜4倍である。下部スクリーンからの黒液の一部、例えば25%が、ライン48およびライン50を通って蒸解槽の上部領域に流れる。
【0029】
下部スクリーン32から抽出された高温黒液は、洗浄液ライン40を介して抽出される。抽出された高温液体の一部、例えば70%〜80%が、ライン40からライン42に流れ、ライン42は、高温液体を、チップ循環ライン18を介して含浸槽12から蒸解槽14に流れるチップ・スラリーに移送する。ポンプ41が、高温黒液の圧力をライン24およびライン18の圧力に高めることができる。下部スクリーン32からの高温黒液は、ライン24におけるトップセパレータからのより低温の液体と混合することができる。混合された黒液の流れが、含浸槽近傍のチップ移送ライン(導管)24および/またはチップ移送の開始部分に加えられる。
【0030】
洗浄スクリーン32(ライン40)からの抽出された黒液のうち、約30%〜80%、より好ましくは50%〜70%、最も好ましくは70%〜75%の黒液が、蒸解槽の頂部とインラインドレイナーの下流の含浸の底部との間の循環ラインに循環される。
【0031】
下部スクリーン32から抽出された黒液の温度は、一般的にトップセパレータからライン21およびライン24に抽出された黒液の温度よりも高い。例えば、下部スクリーン32から抽出された黒液の温度は、通常約140℃であり、トップセパレータから抽出された黒液の温度は、約110℃である。
【0032】
下部スクリーンより下およびパルプ排出口近傍に冷却噴射液体、例えば冷却された洗浄液が、蒸解槽からライン145を通って排出されるパルプの温度を下げるように加えられる。冷却噴射液体は、冷却液の供給源142から提供され、冷却噴射液体冷却器143を通って蒸解槽底部に冷却液噴射を向けるようにする。
【0033】
高温黒液を液体ライン24に加えて、混合液体流がチップ移送導管18に加えられる前に、高温黒液がトップセパレータからの液体と混合するようにすることができる。ライン24内の混合液の温度は、含浸槽12内のチップ・スラリーよりも実質的に高く、例えば少なくとも20℃高い。
【0034】
ライン24およびポンプ17からの高温液体は、ライン18内のチップを加熱する。ライン18内のチップの温度が上昇することにより、蒸解槽内のチップを加熱するのに必要なエネルギーが低減する。下部スクリーン32からの高温黒液は、チップの温度を蒸解温度に、または蒸解温度に近づくように、上昇させるのに使用される。熱エネルギーの必要量が低減されることにより、スチーム・ライン46を介して蒸解槽の頂部に導入される中圧スチーム44の量を低減することができる。中圧スチームは、通常10〜12バールで温度が180℃〜190℃のスチームである。
【0035】
任意選択のポンプ41を有する導管42からの高温黒液は、実質的にフラッシングせずに、例えば蒸発させずに、加圧下で導管24内の液体に加えられる。導管24内の黒液の混合物は、加圧下でポンプ17により、好ましくは液体をフラッシングさせずにチップ移送導管18に移送される。
【0036】
チップ移送導管18に加えられた液体は、導管18内の木材チップに対する液体の比率(L/W)を増加させる。含浸槽12および蒸解槽14内のL/W比は、通常導管18内のL/W比よりも低く、その理由は、液体が導管に加えられ、トップセパレータで抽出されるためである。
【0037】
ライン24内のチップ・スラリーを加熱するためにライン40の液体、例えば洗浄液を使用することにより、蒸解槽の頂部に加えられる中圧スチームの量を、実質的に、例えば約40%も低減させることができる。蒸解槽の頂部のチップの加熱に必要な中圧スチームの量を低減させることは、パルプ製造工程におけるエネルギーの必要量を低減させることである。さらに、蒸解槽に注入される中圧スチームの量を減少させることは、蒸解槽に対する凝縮水をも減少させ、それにより蒸発操作の必要性を低減させることである。
【0038】
本発明を、最も実用的且つ好適な実施形態であると現在考えられているものに関連して記述してきたが、本発明は、開示された実施形態に限定されず、添付された請求項の精神および範囲に含まれる様々な修正形態および均等な配置を包含するように意図したものであるということを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】含浸槽および化学的蒸解槽を有する従来の化学的チップ蒸解装置の概略図である。
【図2】蒸解槽の下部領域から抽出された高温黒液が、含浸槽から蒸解槽に流れるチップ・スラリーに加えられる、含浸槽および化学的蒸解槽を有する本発明の化学的チップ蒸解装置の概略図である。
【符号の説明】
【0040】
10…化学的チップ蒸解パルプ製造装置、12…含浸槽、14…化学的蒸解槽、15…上方入口、16…含浸槽の底部出口、17…ポンプ、18…チップ循環ライン、20…トップセパレータ、21…液体循環ライン、22…インラインドレイナー、23…チップ供給物、24…液体循環ライン、28…熱回収システム、30,31,32…スクリーン、34…液体ライン、36…液体循環ライン、38…槽の上部領域、40,42,48…ライン、41…ポンプ、44…中圧スチーム、46…スチーム・ライン、50…液体循環ライン、52…白液(W.L.)、142…冷却液噴射液体システム、143…冷却噴射液体冷却器、145…ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含浸槽および化学的蒸解槽を有するパルプ製造システム中でチップ・スラリーを加熱する方法であって、
液体を含む含浸槽においてチップを含浸処理し、
含浸槽から蒸解槽の上部へ前記チップを移送し、
蒸解槽の下部から液体を抽出し、抽出された液体が、含浸槽中のチップの温度よりも実質的に高い温度を有するようにし、
蒸解槽の下部から抽出された液体を、含浸槽から蒸解槽へ移送される、または移送されているチップに加え、移送されているチップを抽出された液体中において熱エネルギーで加熱する
ことを含むことを特徴とするチップ・スラリーの加熱方法。
【請求項2】
移送中のチップの温度は120℃以下であり、蒸解槽の下部から抽出された液体の温度は少なくとも130℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
蒸解槽は連続的蒸解槽であり、チップの連続的な流れが蒸解槽に移送される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
チップが、蒸解槽の上部のトップセパレータへ移送される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
移送されているチップの液体濃度は、含浸槽中および蒸解槽中のチップの液体濃度よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
抽出された液体の温度は、含浸槽中のチップの温度よりも少なくとも20℃高い、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
蒸解槽のトップセパレータにおいて、移送された液体から液体を抽出することをさらに含み、抽出された液体を前記チップに加える前に、トップセパレータからの液体を前記下部から抽出された液体と混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
蒸解槽の上部スクリーン位置から上部領域に液体を循環させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
蒸解槽中のトップセパレータから抽出された液体の約2分の1が、熱回収システムに流れる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
抽出された液体を前記チップに加える前に、トップセパレータから抽出された液体の約2分の1を前記下部から抽出された液体と混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
含浸槽および化学的蒸解槽を有するパルプ製造システム中でチップ・スラリーを加熱する方法であって、
液体を含む含浸槽においてチップを含浸処理し、
含浸槽から蒸解槽のトップセパレータへチップを移送し、
蒸解槽の下部スクリーンから液体を抽出し、抽出された液体が、含浸槽中のチップの温度よりも少なくとも20℃高い温度を有するようにし、
蒸解槽の下部スクリーンから抽出された液体を、含浸槽から蒸解槽へ移送される、または移送されているチップに加え、
移送されているチップを抽出された液体からの熱エネルギーで加熱する
ことを含むことを特徴とするチップ・スラリーの加熱方法。
【請求項12】
トップセパレータから液体を抽出し、トップセパレータから抽出された液体の一部を含浸槽から蒸解槽に移送されているチップに加えることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
抽出された液体を移送されているチップに加える前に、トップセパレータから抽出された液体の一部を下部スクリーンから抽出された液体と混合することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
移送中のチップの温度は120℃以下であり、蒸解槽の下部から抽出された液体の温度は少なくとも130℃である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
移送されている液体およびチップ混合物の液体濃度は、含浸槽中および蒸解槽中の混合物の液体濃度よりも高い、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
蒸解槽の上部スクリーン位置から上部領域に液体を循環させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
含浸槽および化学的蒸解槽を有するパルプ製造システム中でチップ・スラリーを加熱する装置であって、該装置は、
含浸槽から蒸解槽に延在し、チップが含浸槽から蒸解槽に流れるチップ移送導管と、
蒸解槽内にあって、液体が抽出される下部スクリーンと、
下部スクリーンからチップ移送導管に延在し、下部スクリーンから抽出された液体が、チップ移送導管に加えられる第1の液体導管と
を含むことを特徴とするチップ・スラリーの加熱装置。
【請求項18】
蒸解槽内にあり、チップ移送導管の排出部と連結するトップセパレータをさらに備え、第2の液体導管は、トップセパレータから抽出された液体を受け、チップ移送導管に連結されている、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
第1の液体導管は、下部スクリーンから抽出された液体の一部をチップ移送導管へ導き、かつ下部スクリーンから抽出された液体の第2の部分を蒸解槽の上部領域に延在する循環導管へ導く導管をさらに備える、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
下部スクリーンから抽出された液体が、含浸槽近傍のチップ移送導管の1区域に加えられる、請求項17に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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