説明

高温用超音波探触子及びその製造方法

【課題】圧電素子の密着性を向上させることにより超音波伝達特性を改善し、歩留まりを向上させることができる高温用超音波探触子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】製造工程において、台座12に対する押さえ部材30の軸周りの回転を拘束した状態で、支持手段29を軸周りに回転させ軸方向に移動させることにより耐熱付勢部材20を圧縮することができるので、支持手段29を回転させても押さえ部材18が回転することがない。このため、第2電極14b、圧電素子16、第1電極14a及び台座12の相互間ですべりが生じないので、これらの間の密着性が保持される。また、外部より所定の正確な加重を電極に付加でき、これにより正確な加重を支持手段29によって維持させるので、常に電極に正確な加重が付加され続ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷試験、超音波厚さ計測、アコースティックエミッション(AE)の計測、等に用いる高温用超音波探触子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は物体中において特定の方向に集中して出すことができ、また音響インピーダンンス、すなわち(密度)×(音速)の異なった境界面で反射する。従ってこの性質を利用して、超音波探傷試験、超音波厚さ計測、等に用いることができる。また、亀裂が進展するときなどに超音波が発生するので、超音波センサを取り付けておくことで亀裂進展の有無などを測定するアコースティックエミッション(AE)の計測に用いることができる。以下、これらの試験又は計測用のセンサを「超音波探触子」と総称する。
【0003】
超音波探傷試験用の超音波探触子として、特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1の超音波探触子は、被探傷物に取り付けられる超音波伝達部材に、一対の電極の間に挟まれた振動子を積層してなる超音波探傷装置の探触子であり、上記の振動子をニオブ酸リチウムで形成すると共に、この振動子と上記の超音波伝達部材とを直接アルミ系ろう材で接合して、この接合部を耐熱性電極層としたものである。上記の構成により、特許文献1の超音波探触子は、耐熱許容限界温度を550〜600℃まで高めている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の超音波探触子は、振動子と超音波伝達部材とを直接アルミ系ろう材で接合するため、ろう付け不良による歩留まりが低く、安定した品質が得難く、かつ製造時間が長く、製造コストが高い。また、アルミ系ろう材はアルミニウムにマグネシウム等の合金成分を添加しており、融点が600℃程度であり、融点直下においてはろう付部に経年的劣化が生じるので、製造直後には耐熱許容限界温度は高い(550〜600℃)が、長期に繰り返し使用すると性能低下が激しい。このため、数年間の期間で連続して使用する場合には、使用温度は450℃程度以下に制約される。さらに、センサ取付位置が高温の場合、ろう付部分が軟化し、甚だしい場合には接合部が剥離し、正確な計測ができなくなる。
【0005】
上記の問題を解決するために本出願人は、図6に示す高温用超音波探触子を開発し、出願した。
この高温用超音波探触子は、被計測面1に接する検出外面12aと検出外面12aに任意の角度を持つ平面である検出内面12bとを有する導電性の台座12と、検出内面12bに第1耐熱軟金属(第1電極)14aを介して密着する平板状の圧電素子16と、圧電素子16を第2耐熱軟金属(第2電極)14bを介して検出内面12bに向けて加圧する導電性の加圧部材18と、加圧部材18を検出内面12bに向けて付勢する耐熱付勢部材(積層皿バネ)20と、耐熱付勢部材20に接触し前記付勢力の反力を受ける反力受部材22と、を備えている。さらに、この超音波探触子は、本体10を備えている。この本体10は、台座12に一端が連結され、内部に検出内面12b側から順に第1耐熱軟金属14a、圧電素子16、第2耐熱軟金属14b、加圧部材18、耐熱付勢部材20及び反力受部材22を収容する中空空洞11を有し、他端部に反力受部材22を検出内面12bに向けて移動可能な受部材移動手段21を有する。反力受部材22は絶縁体からなり、これにより台座12と加圧部材18は互いに電気的に絶縁されている。第1耐熱軟金属14a及び第2耐熱軟金属14bの変形により圧電素子16と検出内面12b及び加圧部材18とが密着している。
【0006】
上記の如き構成された高温用超音波探触子は、加圧部材18と検出内面12bとの間に第1耐熱軟金属14aと第2耐熱軟金属14bを介して圧電素子16を挟持し、かつ耐熱付勢部材20の付勢力により第1耐熱軟金属14a及び第2耐熱軟金属14bを変形させて圧電素子16と検出内面12b及び加圧部材18とを密着させるので、音響インピーダンンスの大きく異なる境界面を無くし、雑音となる反射を低減することができるという特長を有する。また、真空炉内ろう付のような特殊工程を用いることなく製造することができ、歩留まりを高め、品質を安定化し、製造時間を短縮し、製造コストを低減することができ、長期に繰り返し使用しても性能低下が少なく、取付位置が高温でも正確な計測ができるという特長を有する。
【0007】
【特許文献1】特公平07−46095号公報
【特許文献2】特開2005−304777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の高温用超音波探触子は、以下のような問題がある。この高温用超音波探触子の製造工程において、受部材移動手段21を回転させて台座12側に移動させ、耐熱付勢部材20の弾性力により第1耐熱軟金属14a及び第2耐熱軟金属14bを変形させて圧電素子16と台座12及び加圧部材18とを密着させているが、受部材移動手段21を回転させると、その回転力が、圧力受部材22、耐熱付勢部材20及び加圧部材18を介して第2耐熱軟金属14a、圧電素子16、第1耐熱軟金属14a及び台座12まで伝達され、これらの部材間ですべりを生じる場合がある。この場合、圧電素子16の密着性が低下するため、超音波伝達特性が悪化し、歩留まりが低下するという問題がある。
更に、このときの加圧力はバネの収縮量に依存するので、予めバネの収縮量と加圧力の関係を求めておき、必要な加圧力に対する収縮量に相当する分だけネジの回転数を回転させる必要があった。しかしながら、バネの反力に逆らってネジを締め付けるので、ネジ部が噛み込み、スムースなネジの回転が難しく、またネジ部のあそびや各部材の組み立て精度などのために、正確な加圧力を与えることが難しかった。
【0009】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、圧電素子の密着性を向上させることにより超音波伝達特性を改善し、歩留まりを向上させることができる高温用超音波探触子及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の高温用超音波探触子及びその製造方法は、以下の手段を採用する。
(1)本発明の高温用超音波探触子は、検査対象面に接触させる検出外面と該検出外面に任意の角度を持つ平面である検出内面とを有する導電性の台座と、前記検出内面に密着する耐熱軟金属からなる第1電極と、該第1電極を前記台座との間で挟む形で該第1電極と密着する平板状の圧電素子と、該圧電素子を前記第1電極との間で挟む形で該圧電素子と密着する耐熱軟金属からなる第2電極と、前記圧電素子を、前記第2電極を介して前記検出内面に向けて弾性的に付勢する耐熱付勢部材と、該耐熱付勢部材を前記検出内面に向けて押圧する押さえ部材と、一端が前記台座に連結されており、内部に前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極、前記耐熱付勢部材及び前記押さえ部材を収容する本体と、該本体に螺合し、前記押さえ部材よりも前記本体の他端側で該押さえ部材からの反力を受ける支持手段と、を備え、前記支持手段は、前記検出内面に向けて前記押さえ部材に外部から押圧力を作用させるための第1貫通穴を有し、前記押さえ部材は、前記押圧力を受ける受け部を有する、ことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、押さえ部材に直接外力により所定の加重(押圧力)を付加させるので、正確な加重で耐熱付勢部材に変形を与え、かつ第1電極、圧電素子、第2電極に正確な加重を付加できる。また、これにより、支持手段により回転力を与える場合にも、台座に対する加圧部材の軸周りの回転を容易に拘束することができる。したがって、製造工程において、台座に対する加圧部材の軸周りの回転を拘束した状態で、支持手段を軸周りに回転させ軸方向に移動させて、押さえ部材に密着させることにより耐熱付勢部材を正確な加重で圧縮することができるので、支持手段を回転させても加圧部材が回転することがない。このため、第2電極、圧電素子、第1電極及び台座の相互間ですべりが生じないので、これらの間の密着性が正確に保持される。
したがって、本発明によれば、圧電素子の密着性を向上させることにより超音波伝達特性を改善し、歩留まりを向上させることができ、測定精度を改善できる。
【0012】
(2)また、上記の高温用超音波探触子において、
前記支持手段は、前記本体に螺合し前記第1貫通穴を有するネジ部材と、前記ネジ部材に螺合する補助ネジ部品とからなり、前記ネジ部材は、前記押さえ部材に対向する位置で開口する第2貫通穴を有し、前記補助ネジ部品は、前記ネジ部材の第2貫通穴に螺合し前記押さえ部材を接触支持する。すなわち、電極が変形し、耐熱付勢部材の変形量が減少した場合でも、外加重を付加して耐熱付勢部材に所定の変形量を与えて、補助ネジ部品を回して押さえ部材に密着させることで、所定の加圧力を維持できる。
【0013】
上記構成の高温用超音波探触子の製造工程では、外力により正確な加重を押さえ部材に付加することで耐熱付勢部材を圧縮し検出内面に向けて荷重を付与し、台座に対する加圧部材の軸周りの回転を拘束し、加圧部材の回転を拘束した状態で支持手段を軸周りに回転させ軸方向に移動させて押さえ部材に密着させたまま本体とその内部に収容された部材の全体を加熱することにより、第1電極及び第2電極を変形(塑性変形)させて、第1電極及び第2電極とこれらに接触する部材との密着性を高める。
このときに、第1電極及び第2電極の変形が大きい場合、耐熱付勢部材の収縮量が減少して本体内部の圧縮力が低下する。このために、超音波探触子の使用中に衝撃力が加わると、電極の密着性が損なわれる恐れが生じる。
本発明では、このような場合、補助ネジ部品を軸周りに回転させて押さえ部材に当接する位置まで移動させることにより、所定の加重を内部に付加できる。すなわち、加熱中に所定の加重を押さえ部材に付加し続ける。このとき、第1電極及び第2電極の変形による厚さの減少のほか、耐熱付勢部材の塑性変形による収縮等によって、ネジ部材と押さえ部材との間に隙間が生じるが、これを補助ネジ部品により所定の加重になるように調整できる。また、高温加熱中に加重を外部より付加し続けることで、耐熱付勢部材のバネ特性がバネ素材のヤング率の変化や塑性変形で温度変化しても、一定の加重を本体内部に維持したままで、補助ネジにより固定できる。
補助ネジ部品の使用によって、例えば支持部材の外周ネジが焼きつき等が生じても、容易に機能を維持することができる。
【0014】
(3)また、上記の高温用超音波探触子において、前記耐熱付勢部材は耐熱金属よりなる複数の皿バネであり、該複数の皿バネの中心軸を揃えるために該複数の皿バネの中央穴に支柱部材が挿通されており、前記支柱部材の熱膨張係数が前記皿バネの熱膨張係数にほぼ同等であるか、あるいは小さい。この構成により、複数の皿バネの中心軸を合わせることができる。また、加熱時に熱膨張によって皿バネが支柱部材にかみ込むことを防止することができる。
【0015】
(4)また、本発明は、上記(1)の高温用超音波探触子の製造方法であり、(a)前記本体の一端に前記台座が連結され、前記本体の一端から他端に向って順に前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極、前記耐熱付勢部材、前記押さえ部材、前記支持手段が配置された状態を準備する工程、(b)外部から押さえ部材に対して押圧力を付加して、前記耐熱付勢部材を収縮させ、前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極に圧縮応力を付加する工程、(c)前記支持手段を回転させることにより該支持手段を前記押さえ部材に密着させて押さえ部材からの反力の一部又は全部を前記支持手段で受けて、前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極に付加する圧縮応力を固定させる工程、及び(d)上記(b)及び(c)の工程が終了した後、前記本体とその内部に収容された部材の全体を加熱することにより、前記第1電極及び前記第2電極を変形させて、前記第1電極及び前記第2電極とこれらに接触する部材との密着性を高める工程、を含むことを特徴とする。
【0016】
(5)また、本発明は、上記(2)の高温用超音波探触子の製造方法であり、(a)前記本体の一端に前記台座が連結され、前記本体の一端から他端に向って順に前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極、前記耐熱付勢部材、前記押さえ部材、前記支持手段が配置された状態を準備する工程、(b)外部から押さえ部材に対して押圧力を付加して、前記耐熱付勢部材を収縮させ、前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極に圧縮応力を付加する工程、(c)前記支持手段を回転させることにより該支持手段を前記押さえ部材に密着させて押さえ部材からの反力の一部又は全部を前記支持手段で受けて、前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極に付加する圧縮応力を固定させる工程、及び(d)上記(b)及び(c)の工程が終了した後、前記押さえ部材に対して荷重を付与したまま前記本体とその内部に収容された部材の全体を加熱することにより、前記第1電極及び前記第2電極を変形させて、前記第1電極及び前記第2電極とこれらに接触する部材との密着性を高める工程、及び(e)上記(d)の工程の後、前記補助ネジ部品を回転させて軸方向に移動させることにより前記補助ネジ部品で前記押さえ部材を支持する工程、を含むことを特徴とする。
【0017】
上記(4)及び(5)の製造方法によれば、台座に対する押さえ部材の軸周りの回転を拘束した状態で、支持手段を軸周りに回転させ軸方向に移動させることにより耐熱付勢部材を圧縮することができるので、支持手段を回転させても押さえ部材が回転することがない。このため、第2電極、圧電素子、第1電極及び台座の相互間ですべりが生じないので、これらの間の密着性が保持される。また、外部より加重を付加するので、正確な加重が付加される。したがって、圧電素子の密着性を向上させることにより超音波伝達特性を改善し、歩留まりを向上させることができる。
また、上記(5)の製造方法によれば、製造工程においてネジ部材と押さえ部材との間に隙間が生じた場合や耐熱付勢部材の収縮量が減少した場合でも外力を付加した状態で、補助ネジ部品を軸周りに回転させて押さえ部材に当接する位置まで移動させることにより、上記の隙間を埋めることができるので、圧電素子の密着性を維持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、圧電素子の密着性を向上させることにより超音波伝達特性を改善し、歩留まりを向上させることができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態にかかる高温用超音波探触子Aの断面図である。この図に示すように、高温用超音波探触子は、台座12、第1電極14a、圧電素子16、第2電極14b、耐熱付勢部材20、押さえ部材30、本体10、及び支持手段29を備える。なお、以下の説明において、本体10の「一端」とは検査対象面1側の端部のことであり、本体10の「他端」とは一端と反対側の端部のことである。
【0021】
台座12は、導電性部材であり、この例で、本体10にネジ部13aで連結されている。ここで、ネジ部13aは、台座12の外周面に形成された雄ネジ部と本体10の内周面に形成された雌ネジ部とから構成される。台座12は、検査対象面1に接触させる検出外面12aと検出外面12aに任意の角度を持つ平面である検出内面12bとを有する。本実施形態では、検出内面12bは、検出外面12aに平行である。
検出外面12aと検査対象面1との接触面は、図示しない手段(例えば、接触媒体、圧着、溶接、ろう付け、接着)により音響インピーダンンスの大きく異なる境界面が発生しないように接続する。
【0022】
第1電極14aは台座12の検出内面12bに密着する。第2電極14bは圧電素子16を第1電極14aとの間で挟む形で圧電素子16と密着する。第1電極14aと第2電極14bは、ともに所定の温度範囲(例えば100〜600℃)で所定の圧縮荷重を付与した状態で塑性変形する耐熱軟金属からなる平板である。耐熱軟金属は、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、又はこれらの合金からなるものがよい。第2電極14bは、導電性平板31に密着しており、導電性平板31によって第2電極14bは均一に加重が付加される。また導電性平板31には、導線を耐熱絶縁材で被覆したケーブル2が接続されている。
【0023】
圧電素子16は、平板状であり、第1電極14aを台座12との間で挟む形で第1電極14aと密着する。圧電素子16は、好ましくはキューリー点が1200℃近傍にあるニオブ酸リチウム単結晶である。
【0024】
耐熱付勢部材20は、圧電素子16を、第2電極14bを介して検出内面12bに向けて弾性的に付勢する。
耐熱付勢部材20は、所定の温度範囲(例えば100〜600℃)で高い弾性率を有する耐熱金属製の圧縮バネであり、例えば、インコネル又はオーステナイト系ステンレス鋼からなる積層皿バネである。なお、所定の温度範囲で必要となる撓み量とバネ常数を得るために、皿バネは直列に積層し、かつ重ねて用いるのがよい。
【0025】
皿バネの中心軸を合わせるために、支柱部材18が皿バネの中央穴に挿通して置かれている。この皿バネ支持材の熱膨張係数は、皿バネの材質の熱膨張係数と同等あるいはより小さい材料で作成され、加熱時に熱膨張によって皿バネが支柱部材18にかみ込むことのないように設計されている。また、支柱部材18には、上記のケーブル2を通すための貫通穴が設けられている。
【0026】
また支柱部材18と導電性平板31との間には、耐熱絶縁部材17が挟持されており、皿バネ支持部材18と第2電極14bとが互いに電気的に絶縁されている。耐熱絶縁部材17には、上記のケーブル2を通すための貫通穴が設けられている。耐熱絶縁部材17はセラミックスからなるのがよい。
【0027】
本体10は、一端が台座12にネジ部13aで連結されており、内部(中空部11)に第1電極14a、圧電素子16、第2電極14b、導電性平板31、耐熱絶縁部材17、支柱部材18及び耐熱付勢部材20を収容する。本体10は、この例ではネジ部13bで互いに螺合して結合された2つの中空円筒形状の本体部材10a,10bからなり、2つの本体部材10a,10bはこの例では導電性部材からなる。本体部材10a,10b及び台座12は一体成型物であっても良い。
【0028】
支持手段29は、本体10に螺合し、押さえ部材30よりも本体10の他端側で押さえ部材30からの反力を受けるものである。本実施形態において、支持手段29は、本体10にネジ部13bで螺合するネジ部材24である。ネジ部材24は、検出内面12bに向けて押さえ部材30に外部から押圧力を作用させるための第1貫通穴25を有する。押さえ部材30にはケーブル2を通すための貫通穴が設けられている。この穴径はネジ部材24に設けた第1貫通穴25の穴径より充分に小さく、押さえ部材30のうち第1貫通穴25よりも小さい部分に外部からの押圧力を受ける受け部32を有する。
支持手段29は、上記の如き構成されているので、軸心周りに回転させることによって軸方向(図1で上下方向)に移動させ、耐熱付勢部材20を圧縮することができる。
【0029】
上記構成の高温用超音波探触子Aによれば、ネジ部材24の第1貫通穴25を介して、受け部32に対して外部から加重(押圧力)を付加することで、耐熱付勢部材20を収縮させるとともに、導電性平板31と検出内面12bとの間に第1電極14aと第2電極14bを介して圧電素子16を挟持し、第1電極14a及び第2電極14bを変形(塑性変形)させて圧電素子16と検出内面12b及び導電性平板31とを密着させるので、音響インピーダンンスの大きく異なる境界面を無くし、雑音となる反射を低減することができる。
【0030】
また、導電性平板31と支柱部材18が、互いに電気的に絶縁されているので、第1電極14aと第2電極14bとの間に電圧を印加することにより、又は第1電極14aと第2電極14bとの間の電圧を計測することにより、超音波探傷試験、超音波厚さ計測、アコースティックエミッション(AE)の計測、等を行うことができる。
【0031】
次に、図2A、図2B及び図2Cを参照して、本実施形態の高温用超音波探触子Aの製造方法について説明する。
【0032】
図2Aに示すように、本体10の一端に台座12が連結され、本体10の一端から他端に向って順に第1電極14a、圧電素子16、第2電極14b、導電性平板31、耐熱絶縁部材17、支柱持材18、耐熱付勢部材20、押さえ部材30、支持手段29(ネジ部材24)が配置された状態を準備する。
次に、プレス43により、押し棒41を介して、押さえ部材30に対して検出内面12bに向けて荷重を付与する。この押さえ部材30に対する荷重の付与は、押さえ部材30の軸周りの回転を拘束する役割も果たす。なお、本実施形態では、プレス43と押さえ部材30との間に押し棒41を挟み、押し棒41を介してプレス43により押さえ部材30を押圧する。これによって耐熱付勢部材20を収縮させる。この押し棒41はケーブル2を通して側面から出すための穴及び溝が形成されており、ケーブル2にプレス荷重が作用しないよう保護する役割も果たす。
【0033】
次に、図2Bに示すように、押さえ部材30の軸周りの回転を拘束した状態で、支持手段29を軸周りに回転させ軸方向に移動させることにより、ネジ部材24を押さえ部材30に密着させる。密着の度合は、プレス加重の変化で読み取ることも可能である。
次に、加熱炉42を用いて、本体10とその内部に収容された部材の全体を加熱することにより、第1電極14a及び第2電極14bを変形(塑性変形)させて、第1電極14a及び第2電極14bとこれらに接触する部材との密着性を高める。上記の加熱の温度は、例えば600℃である。
加熱を停止した後、高温用超音波探触子Aが常温程度まで冷却されたら、加熱炉42から取り出す。
図2Cは、ネジ部材24の第1貫通穴25にコネクター44を取り付け、最終製品とした図を示している。
【0034】
本実施形態では、プレス43で加圧した後に加圧したまま加熱した例を示したが、プレスで加圧し、押さえ部材30とネジ部材24を密着させた後に加圧をやめて加熱しても良い。また、加熱後に冷却し、電極の塑性変形で緩和された加重を再度調整するために再度プレス43で加重を加えて、更にネジ部材24を回転させて加重を補っても良い。また、プレスで加重を加え、加熱後の常温でネジ部材24を回転させて、押さえ部材30と密着させても良い。
また、押さえ部材30は、本実施形態では平板状で構成したが、押し棒41と一体化して、直接あるいはジグを介してプレス43で加重を付加するようにしてもよい。
【0035】
上記の本実施形態によれば、製造工程において、圧電素子16、第1電極14a及び第2電極14bを加圧したまま支持手段29を軸周りに回転させ軸方向に移動させることにより耐熱付勢部材20を圧縮することができるため、支持手段29を回転させても第2電極14b、圧電素子16、第1電極14a及び台座12の相互間ですべりが生じないので、これらの間の密着性が保持される。また、外部より正確に所定の加圧力を付加できる。
したがって、本発明によれば、圧電素子16の密着性を向上させることにより超音波伝達特性を改善し、歩留まりを向上させることができる。
【0036】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態にかかる高温用超音波探触子Bの断面図である。本実施形態では、支持手段29の構成が、上記の第1実施形態と異なる。
本実施形態において支持手段29は、本体10に螺合するネジ部材24と、ネジ部材24に螺合する補助ネジ部品28とからなる。ネジ部材24は、さらに、押さえ部材30に対向する位置で開口する第2貫通穴26を有する。補助ネジ部品28は、ネジ部材24の貫通穴26に螺合し押さえ部材30を接触支持する。その他の構成は、上記の第1実施形態と同様である。
【0037】
次に、図4A〜図4Cを参照して、本実施形態の高温用超音波探触子Bの製造方法について説明する。
【0038】
、台座12、第1電極14a、圧電素子16、第2電極14b、耐熱付勢部材20、押さえ部材30、本体10、及び支持手段29を備える。
図4Aに示すように、本体10の一端に台座12が連結され、本体10の一端から他端に向って順に第1電極14a、圧電素子16、第2電極14b、耐熱付勢部材20、押さえ部材30、支持手段29(ネジ部材24及び補助ネジ部品28)が配置された状態を準備する。このとき、補助ネジ部品28が、ネジ部材24の押さえ部材22側の端面から突出しない状態としておく。
次に、プレス43により、押し棒41を介して、押さえ部材30に対して検出内面12bに向けて所定の荷重を付与する。この押さえ部材30に対する荷重の付与は、押さえ部材30の軸周りの回転を拘束する役割も果たす。
【0039】
次に、図4Bに示すように、押さえ部材30の軸周りの回転を拘束した状態で、ネジ部材24を軸周りに回転させ軸方向に移動させることにより耐熱付勢部材20を圧縮する。
次に、押さえ部材30に対して荷重を付与したまま本体10とその内部に収容された部材の全体を加熱することにより、第1電極14a及び第2電極14bを変形(塑性変形)させて、第1電極14a及び第2電極14bとこれらに接触する部材との密着性を高める。上記の加熱の温度は、例えば600℃である。加熱が終了したら、高温用超音波探触子Bを加熱炉32から取り出す。
【0040】
上記の工程において、第1電極14a及び第2電極14bの変形が大きい場合、耐熱付勢部材20の収縮量が減少して本体内部の圧縮力が低下する。このために、超音波探触子の使用中に衝撃力が加わると、電極の密着性が損なわれる恐れが生じる。またこのとき、第1電極及14aび第2電極14bの変形による厚さの減少のほか、耐熱付勢部材20の塑性変形による収縮等によって、ネジ部材24と押さえ部材30との間に隙間が生じるが、図4Cに示すように、これを補助ネジ部品28により所定の加重になるように調整できる。すなわち、第1電極14a及び第2電極14bが変形し、耐熱付勢部材20の変形量が減少した場合でも、外加重を付加して耐熱付勢部材20に所定の変形量を与えて、補助ネジ部品28を回して押さえ部材24に密着させることで、所定の加圧力を維持できる。
【0041】
また、高温加熱中に加重を外部より付加し続けることで、耐熱付勢部材20のバネ特性がバネ素材のヤング率の変化や塑性変形で温度変化しても、あるいは本体10と電極14、圧電素子16、耐熱付勢部材20や押さえ部材30などとの熱膨張率の違いによる加熱時の熱膨張の差異が生じた場合でも、一定の加重を本体内部に維持したままで、補助ネジ部品28により固定できる。この場合、本体10とその内部に収容された部材を常温程度まで冷却してから、補助ネジ部品28を移動させるのがよい。
補助ネジ部品28の使用によって、例えばネジ部材24の外周ネジが焼きつき等が生じても、容易に機能を維持することができる。
【0042】
図5は、本発明(A)と従来技術(B−1)及び(B−2)の性能試験結果を示す図である。従来技術(図6の高温用超音波探触子)では、第2電極14b、圧電素子16、第1電極14a及び台座12の相互間ですべりが生じ、これらの間の密着性が悪化する結果、歩留まりが20%程度であり、失敗例(B−1)では、底面(台座12の検出外面12a)から反射エコーを識別することができない。また、成功例(B−2)では、エコー高さ感度が28dB(45%)であった。
これに対し、本発明(A)では、歩留まりが100%程度になり、しかも、従来技術の成功例(B−2)と比べても、エコー高さ感度が8dB向上した。
よって、この性能試験結果から、本発明により、圧電素子の密着性を向上させることにより超音波伝達特性を改善し、歩留まりを向上させることができることが実証された。
【0043】
なお、上記において、本発明の実施形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる高温用超音波探触子の断面図である。
【図2A】本発明の第1実施形態にかかる高温用超音波探触子の製造方法を説明するための図である。
【図2B】本発明の第1実施形態にかかる高温用超音波探触子の製造方法を説明するための別の図である。
【図2C】本発明の第1実施形態にかかる高温用超音波探触子の製造方法を説明するためのさらに別の図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる高温用超音波探触子の断面図である。
【図4A】本発明の第2実施形態にかかる高温用超音波探触子の製造方法を説明するための図である。
【図4B】本発明の第2実施形態にかかる高温用超音波探触子の製造方法を説明するための別の図である。
【図4C】本発明の第2実施形態にかかる高温用超音波探触子の製造方法を説明するためのさらに別の図である。
【図5】本発明(A)と従来技術(B−1)及び(B−2)の性能試験結果を示す図である。
【図6】特許文献2に開示された高温用超音波探触子の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
A,B 高温用超音波探触子
1 検査対象面
2 ケーブル
10 本体
10a,10b 本体部材
11 中空部
12 台座
12a 検出外面
12b 検出内面
13a,13b,13c ネジ部
14a 第1電極
14b 第2電極
16 圧電素子
17 耐熱絶縁部材
18 支柱部材
20 耐熱付勢部材
25 第1貫通穴
24 ネジ部材
26 第2貫通穴
28 補助ネジ部品
29 支持手段
30 押さえ部材
31 導電性平板
32 受け部
41 押し棒
42 加熱炉
43 プレス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象面に接触させる検出外面と該検出外面に任意の角度を持つ平面である検出内面とを有する導電性の台座と、
前記検出内面に密着する耐熱軟金属からなる第1電極と、
該第1電極を前記台座との間で挟む形で該第1電極と密着する平板状の圧電素子と、
該圧電素子を前記第1電極との間で挟む形で該圧電素子と密着する耐熱軟金属からなる第2電極と、
前記圧電素子を、前記第2電極を介して前記検出内面に向けて弾性的に付勢する耐熱付勢部材と、
該耐熱付勢部材を前記検出内面に向けて押圧する押さえ部材と、
一端が前記台座に連結されており、内部に前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極、前記耐熱付勢部材及び前記押さえ部材を収容する本体と、
該本体に螺合し、前記押さえ部材よりも前記本体の他端側で該押さえ部材からの反力を受ける支持手段と、を備え、
前記支持手段は、前記検出内面に向けて前記押さえ部材に外部から押圧力を作用させるための第1貫通穴を有し、
前記押さえ部材は、前記押圧力を受ける受け部を有する、ことを特徴とする高温用超音波探触子。
【請求項2】
前記支持手段は、前記本体に螺合し前記第1貫通穴を有するネジ部材と、前記ネジ部材に螺合する補助ネジ部品とからなり、
前記ネジ部材は、前記押さえ部材に対向する位置で開口する第2貫通穴を有し、
前記補助ネジ部品は、前記ネジ部材の第2貫通穴に螺合し前記押さえ部材を接触支持する、請求項1記載の高温用超音波探触子。
【請求項3】
前記耐熱付勢部材は耐熱金属よりなる複数の皿バネであり、
該複数の皿バネの中心軸を揃えるために該複数の皿バネの中央穴に支柱部材が挿通されており、
前記支柱部材の熱膨張係数が前記皿バネの熱膨張係数にほぼ同等であるか、あるいは小さい、請求項1又は2記載の高温用超音波探触子。
【請求項4】
請求項1記載の高温用超音波探触子の製造方法であって、
(a)前記本体の一端に前記台座が連結され、前記本体の一端から他端に向って順に前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極、前記耐熱付勢部材、前記押さえ部材、前記支持手段が配置された状態を準備する工程、
(b)外部から押さえ部材に対して押圧力を付加して、前記耐熱付勢部材を収縮させ、前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極に圧縮応力を付加する工程、
(c)前記支持手段を回転させることにより該支持手段を前記押さえ部材に密着させて押さえ部材からの反力の一部又は全部を前記支持手段で受けて、前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極に付加する圧縮応力を固定させる工程、及び
(d)上記(b)及び(c)の工程が終了した後、前記本体とその内部に収容された部材の全体を加熱することにより、前記第1電極及び前記第2電極を変形させて、前記第1電極及び前記第2電極とこれらに接触する部材との密着性を高める工程、を含むことを特徴とする高温用超音波探触子の製造方法。
【請求項5】
請求項2記載の高温用超音波探触子の製造方法であって、
(a)前記本体の一端に前記台座が連結され、前記本体の一端から他端に向って順に前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極、前記耐熱付勢部材、前記押さえ部材、前記支持手段が配置された状態を準備する工程、
(b)外部から押さえ部材に対して押圧力を付加して、前記耐熱付勢部材を収縮させ、前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極に圧縮応力を付加する工程、
(c)前記支持手段を回転させることにより該支持手段を前記押さえ部材に密着させて押さえ部材からの反力の一部又は全部を前記支持手段で受けて、前記第1電極、前記圧電素子、前記第2電極に付加する圧縮応力を固定させる工程、及び
(d)上記(b)及び(c)の工程が終了した後、前記押さえ部材に対して荷重を付与したまま前記本体とその内部に収容された部材の全体を加熱することにより、前記第1電極及び前記第2電極を変形させて、前記第1電極及び前記第2電極とこれらに接触する部材との密着性を高める工程、及び
(e)上記(d)の工程の後、前記補助ネジ部品を回転させて軸方向に移動させることにより前記補助ネジ部品で前記押さえ部材を支持する工程、を含むことを特徴とする高温用超音波探触子の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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