説明

高温耐浸透性のサイジング組成物

脂肪酸無水物を含有するサイズ剤を使用して、高温浸透液に対する板紙の抵抗性を高める方法、および不溶化剤を開示する。さらに、高温耐浸透性を付与するために有用な組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙をサイジングして、高温浸透液(penetrant)に対する抵抗性を付与する方法に関する。この方法は、滅菌包装板紙に、包装を消毒するために使用される高温過酸化水素水と、容器に包装されることになる液体との両方に対する抵抗性を付与するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
長年、液体製品、特にミルクおよびクリームなどの液体乳製品は、被覆された板紙から製造された容器に包装されてきた。この板紙は、当業界では液体包装用板紙として知られ、典型的には、両面がポリエチレンで被覆されている。
【0003】
この用途で機能するためには、板紙は、液体の作用に抵抗性がなければならない。液体乳製品において、液体の最も攻撃的な成分は、通常、乳酸である。板紙の最も脆弱な部分は、通常、切断された端部である。AKD(アルキルケテンダイマー)でサイジングされた板紙は、乳酸を含有する液体による端部浸透に対して良好な抵抗性を有することが知られている。
【0004】
近年、消費可能な液体を滅菌包装する傾向がみられる。無菌容器は、被覆もしくは非被覆の板紙、ポリエチレン、およびアルミ箔からなる複合構造体から形成される。この板紙は、充填する前に、高温で過酸化水素水に通されることによって消毒される。
【0005】
したがって、この板紙は、容器に最終的に包装される液体だけでなく、容器を消毒するために使用される高温の過酸化水素水にも耐えなければならない。乳酸含有液体による端部浸透に対する優れた抵抗性を与えることが知られているAKD系サイズ剤は、高温の過酸化水素水に対してはそれほど有効ではないことが分かった。(例えば、米国特許第4,927,496号、米国特許第5,308,441号、米国特許第5,456,800号、米国特許第5,626,719号を参照)。ロジン系サイズ剤は、高温の過酸化水素水に対して必要な抵抗性を与えるが、しかし、これらの容器中に包装された酸性物質に対してはそれほど有効ではないことが示された。(例えば、米国特許第4,927,496号、米国特許第5,308,441号、米国特許第5,456,800号、米国特許第5,626,719号を参照)。
【0006】
結果として、二重のサイジング系が滅菌包装等級用に使用されている。AKDおよびロジンの両方を用いて、両方のサイズ剤を内部添加することによって(米国特許第4,927,496号)、あるいは一方を内部に用い、他方を表面に添加することによって(米国特許第5,308,441号)、滅菌包装おいてサイジングが付与されている。不幸にも、ロジンのサイジング効率に対する最適pHである約pK5は、AKDのサイジング効率に対する最適pHである約pH7.5より低い。したがって、系は両方のサイズ剤の折衷pHである約6.5で実施され、結果として最高の性能が得られない(米国特許第7,291,246号)。加えて、典型的には、2種のサイズ剤を、在庫管理し、製紙システムへ計量注入しなければならないため、システムが扱いにくい。
【0007】
これらの欠点に取り組む以前の試みには、セルロース反応性および非反応性のサイズ剤と熱硬化性樹脂との組合せの使用(米国特許第5,456,800号、米国特許第5,626,719号)、および、過酸化水素を分解して板紙の浸透を阻止する保護気体層を形成する酸素ガスを生成させる、カタラーゼまたはマンガン鉱の使用(米国特許第7,291,246号)が含まれる。
【0008】
米国特許第4,859,244号および同第3,311,532号には、改善されたサイジングを提供する、脂肪酸無水物およびアルキルケテンダイマーのブレンドで構成される紙サイズ剤が開示されている。しかし、どちらにおいても、高温の過酸化水素による減菌によって引き起こされる問題については論じられておらず、高温の過酸化水素または他の高温浸透液による端部浸透に対する抵抗性に開示されたサイズ剤が何らかの効果を有する可能性についての何らの示唆も示されていない。加えて、米国特許第4,859,244号には、「サイジング品質は、明礬の存在に実質的に影響されない」ことが教示されており、系中の明礬の有無によらず同等の性能を示すデータが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,927,496号
【特許文献2】米国特許第5,308,441号
【特許文献3】米国特許第5,456,800号
【特許文献4】米国特許第5,626,719号
【特許文献5】米国特許第7,291,246号
【特許文献6】米国特許第4,859,244号
【特許文献7】米国特許第3,311,532号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、滅菌包装板紙のサイジング要件である、高温過酸化水素に対する抵抗性および乳酸に対する抵抗性を達成するために、2重サイジング系の使用の欠点に取り組む。反応性サイズ剤である脂肪酸無水物単独、またはどちらも反応性サイズ剤である脂肪酸無水物およびAKDの組合せを、不溶化剤と共に使用すると、乳酸含有液体および高温過酸化水素水の両方に対して、ケテンダイマー単独、またはケテンダイマーおよびロジンの2重サイジング系のどちらをも上回る抵抗性がもたらされることが見出された。反応性サイズ剤は、セルロースと化学的に反応するサイズ剤である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、a)i)反応性サイズ剤を含む水性乳剤と、ii)不溶化剤とを、別々に、あるいは混合した形態で、水性パルプスラリーに添加する工程であって、前記反応性サイズ剤が、少なくとも30重量%の脂肪酸無水物を含む工程、およびb)前記スラリーから厚紙または板紙を形成させる工程を含む、高温浸透液による浸透に対する板紙の抵抗性を高める方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
脂肪酸無水物、または脂肪酸無水物およびケテンダイマーのブレンドを、パルプスラリーに、ほぼ中性のpH(例えばpH6.0から7.5、好ましくは6.5から7.5、または好ましくは6.7から7.3)で、不溶化剤と一緒に添加し、次いで、パルプから板紙を形成させる場合には、板紙が、高温過酸化水素および乳酸溶液の両方による端部浸透に対する良好な抵抗性を有することが見出された。
【0013】
さらに、脂肪酸無水物およびケテンダイマーのブレンドを使用する場合、高温過酸化水素に対する板紙の抵抗性が、単独で使用する場合の両者のサイジング効果を加算することにより予測される抵抗性より、予想外に良好であるということが見出された。
【0014】
本発明において有用な反応性サイズ剤は、別々に乳化させ、別々にパルプスラリーに添加しても、別々に乳化させ、次いで、パルプスラリーへの添加の前に添加時点で一緒に混合しても、あるいは乳化の前にブレンドしてもよい。
【0015】
本発明の方法において、当業界で公知の任意のケテンダイマーを使用することができる。サイズ剤として使用するケテンダイマーは、式:
【0016】
【化1】

【0017】
[式中、R1およびR2は、6から24個の炭素原子、好ましくは10個を超える炭素原子、および最も好ましくは14から16個の炭素原子を有する、飽和または不飽和であってよいアルキル基である]
を有する二量体である。R1およびR2は、同一であっても相異なっていてもよい。これらのケテンダイマーは、例えば、米国特許第2,785,067号から周知であり、その開示を、参照によって本明細書に組み込む。
【0018】
好適なケテンダイマーには、デシル-、ドデシル-、テトラデシル-、ヘキサデシル-、オクタデシル-、エイコシル-、ドコシル-、テトラコシル-ケテンダイマー、ならびに、パルミトレイン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、ミリストレイン酸、およびエレオステアリン酸から調製されるケテンダイマーが含まれる。ケテンダイマーは、単一の化学種であってもよく、または複数の化学種の混合を含有していてもよい。最も好ましいケテンダイマーは、C14〜C22の直鎖状飽和脂肪酸から調製されるアルキルケテンダイマーである。
【0019】
サイズ剤として使用する酸無水物は一般式:
【0020】
【化2】

【0021】
[式中、R3およびR4は、6から24個の炭素原子、好ましくは10個を超える炭素原子、および最も好ましくは14から16個の炭素原子を有する、飽和または不飽和であってよいアルキル基である]
を特徴とすることができる。R3およびR4は、同一であっても相異なっていてもよい。最も好ましい酸無水物は、C14〜C22の直鎖状飽和脂肪酸から調製される酸無水物である。
【0022】
酸無水物およびケテンダイマーを乳化するために、ケテンダイマーの分散液を調製する任意の既知の方法を用いることができる。しばしば、AKDは、陽イオン性デンプンおよびリグノスルホン酸ナトリウムを含む分散系と組み合わされる。そのような分散液の例は、Edwardsの米国特許第4,861,376号およびSavinaの米国特許第3,223,544号に見出すことができ、それらの開示を、参照によって本明細書に組み込む。あるいは、酸無水物およびケテンダイマーを、任意の既知の方法を用いて、粉砕機内で乳化させることができる。
【0023】
これらの乳剤は、サイズ乳剤に共通の他の添加剤、例えばケテンダイマー用の促進樹脂、殺生物剤、発泡防止剤などを含んでいてもよい。乳剤中の固形分は、約2から約50重量%、好ましくは約4から40%、および最も好ましくは約5から35%の範囲でさまざまであってよい。
【0024】
ケテンダイマーおよび脂肪酸無水物は、別々に乳化し、製紙系に別々に添加してもよく、あるいは、乳剤を添加の前に一緒に混合してもよい。あるいは、酸無水物およびケテンダイマーを、乳化の前にブレンドすることができる。脂肪酸無水物およびケテンダイマーをブレンドとして製造することができ、あるいは、これらを別々に製造することができる。
【0025】
脂肪酸無水物は、セルロースと反応してエステルおよび遊離脂肪酸の分子を形成する。この遊離脂肪酸は不溶化剤と反応して、不溶性塩を形成することができる。この不溶性塩、高温浸透液に対する高められた抵抗性をもたらすと考えられる。
【0026】
不溶化剤は、当業界で公知の任意のものであってよく、製紙用の明礬(硫酸アルミニウム)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、または他のポリアルミニウム化合物など、好ましくは明礬である。使用する明礬の量は、パルプの種類、適用するサイズ剤の量、および当業者に周知の他の因子(例えば、系のアルカリ度、陰イオン性の「ごみ」の濃度、など)に基づいて決定する。通常、不溶化剤の量は約5から15 lb/Tである(繊維の乾燥重量に基づいて0.25から0.75%)。
【0027】
不溶化剤は、サイズ剤と同一の添加時点で添加してもよく、または供給を分割して、一部を、陰イオン性物質を中和するために系に初期に添加し、残りを、サイズ剤と共に添加してもよい。
【0028】
脂肪酸無水物は、単独で、またはアルキルケテンダイマーと組み合わせて使用することができる。アルキルケテンダイマーと組み合わせて使用する場合には、ブレンドは少なくとも30%の脂肪酸無水物を含んでいなければならない。好ましいブレンドでは、反応性サイズ剤の40-70%が脂肪酸無水物である。
【0029】
本発明のサイズ剤は、内添サイズ剤としても、表面サイズ剤としても適用することができる。内添サイジングでは、シート形成の前に紙パルプスラリーにサイズ剤を添加する工程を含むが、表面サイジングでは、サイズ剤含有溶液中に紙を浸漬させ、続いて、公知の乾燥技法によって高温で乾燥する工程を含む。内添サイジングが好ましい。
【0030】
本発明は、例えば滅菌包装板紙などのサイジング紙材料において有用である。使用する量は、、顧客の所望するサイジング要件に基づいて、求められるサイジングの程度、紙の等級、紙を製造するために使用されるパルプ完成紙料の種類、および当業者に周知で、容易に経験的に決定される他の因子に応じて決定する。一般に、最小量のサイズ剤を用いて、所望のサイジング仕様が得られるようにする。典型的には、サイズ剤の量は、4から10 lb/T(繊維の乾燥重量に基づいて0.2から0.5重量%)になる。
【0031】
パルプスラリーは、任意の従来の方式で加工して、例えば、滅菌包装用途のための板紙を形成させることができ、他の従来の添加剤、例えば、歩留向上剤、強度添加剤、顔料、または填料などを添加してもよい。
【0032】
本発明はまた、本発明の方法によって処理されたパルプから製造される、板紙などの製品を含む。
【0033】
高温過酸化水素に対する良好な抵抗性をもたらすことに加えて、本発明の組成物は、産業界において共通して遭遇される他の高温浸透液(すなわち、約40℃を超える浸透液)、例えば熱湯、ホットコーヒー、およびクリームを含むホットコーヒー、カップ紙料(cupstock)(すなわち飲料カップの生産において使用される板紙)を試験するために共通して使用される試験に対する良好な抵抗性を提供する。
【実施例】
【0034】
(実施例)
以下の実施例を、本発明を説明する目的で提供する。特に断らない限り、すべての部および百分率は重量による。
【0035】
以下の実施例において、評価は、紙料の調製、精製、および保管を行う市販長網抄紙機をシミュレートするように設計された、試行規模の抄紙機を使用して行った。紙料を、マシンチェストから一定レベルの紙料タンクに重力によって供給した。そこから、紙料を、ウェットエンド添加剤が添加される一連のインラインミキサーに、次いで、一次ファンポンプにポンプ注入する。紙料を、ファンポンプ地点で白水で固形分約0.2%に希釈した。ファンポンプを出入りする紙料に、さらなる化学物質を添加することができた。紙料を1次ファンポンプから2次ファンポンプにポンプ注入し、そこで流入紙料に化学物質を添加することができ、次いで、流れエキスパンダーロール(flow spreader)にし、薄片にし、そこで、12インチ幅長網抄紙機すき網上に堆積させた。すき網上にそれが堆積した直後に、シートを3台の真空ボックスを介して真空脱水した。クーチコンシステンシーは通常14〜15%であった。
【0036】
含湿シートを、クーチからモーター駆動含湿ピックアップフェルトに移動させた。
この時点で、真空ポンプから運転される真空サクションボックス(uhle box)によって、シートおよびフェルトから水を除去した。シートを、単一フェルトプレス内でさらに脱水して、プレス部を38〜40%の固形分にする。
【0037】
以下の実施例において、評価は、350〜400ccのカナダ標準ろ水度を有するさらし硬材クラフト(70%)およびさらし軟材クラフト(30%)のブレンドを使用して行った。希釈用の水は、50ppmの硬度および120ppmのアルカリ度を含むように調節した。すべての添加剤の添加濃度は、繊維の乾燥重量に基づいたパーセントで与えられる。0.95%の第四級アミン置換陽イオン性デンプン(Sta-Lok(登録商標)400、A.E.Staley、Decatur,Ill)の添加を、紙料ポンプからファンポンプ出口までの間で分割した。明礬およびサイズ剤を、実施例に示した量で、ファンポンプ入口に添加した。PerForm(登録商標)PM9025、無機微粒子歩留向上剤(Hercules Incorporated, Wilmington,DE)を、第2のFPで0.038%添加した。紙料温度を55℃に維持した。特に指定しない限り、ヘッドボックスのpHは、6.8に制御した。
【0038】
244g/平方メートル(150 lb/3000 ft2連)のシートを形成させ、7台の乾燥缶上で5%の水分に乾燥(乾燥缶表面温度を65から110℃に上げた)し、5ニップ6ロールカレンダースタックの単一ニップに28 pliで通した。CT室(50%RH、25℃)内で自然熟成した板紙について、エッジウイック抵抗性を測定した。
【0039】
エッジウイック試験は、液体包装産業における、サイジングの程度を測定するための標準試験である。この試験のために、板紙の試料の両面を、自己接着性テープを使用してラミネートする。所与のサイズの切取試片を、ラミネートされた板紙から切出し、秤量し、次いで、指定の温度で試験液に浸す。規定時間の後、試料を試験液から取り出し、ふき取って乾かすことにより乾燥し、再秤量する。結果は、露出した端部(kg/平方メートル)の平方メートル当たり吸収された溶液のkgとして報告する。低いエッジウイック値は、高い値より良好である。所望のサイジングの量は、製造される板紙の等級に依存する。
【0040】
使用した試験液は次のとおりであった:
高温過酸化水素:70℃の35%過酸化水素;10分浸漬
乳酸:25℃の20%乳酸;30分浸漬
【0041】
(実施例1)高温の過酸化水素に対する優れた抵抗性
陽イオン性デンプンで安定化した、Aquapel(登録商標)364アルキルケテンダイマーの乳剤(Hercules Incorporated,Wilmington,DE)およびステアリン酸無水物(99%、Aldrich)を、公知の方法(例えば、米国特許第3,223,544号、米国特許第4,861,376号を参照)によって調製し、上述した試行抄紙機で評価した。対照は、Hi-pHase(登録商標)35陽イオン性分散ロジンサイズ剤(Hercules Incorporated,Wilmington,DE)およびAquapel(登録商標)364の乳剤で構成された二重サイジング系であった。
【0042】
この評価において、0.375%明礬を不溶化剤として使用した。サイズ剤の目標濃度に達するように、SA/AKDブレンドを、ステアリン酸無水物乳剤およびAKD乳剤を60/40の(有効成分に基づいた) 比率で混合機Tに通して添加することによって製造した(例えば、0.10%のサイズ剤のために、0.06%のステアリン酸無水物および0.04%のAKD乳剤(有効成分に基づいて)を添加した)。
【0043】
【表1】

【0044】
この実施例は、ステアリン酸無水物が、類似した添加濃度における二重サイジング系(対照)より、高温過酸化水素に対する良好な抵抗性を提供することを実証する(SAを含む0.3%の疎水性物質で、わずかに0.65kg/平方メートルの取り込みであるのに対して、二成分系を含む0.33%の疎水性物質で0.9 kg/平方メートルの取り込み)。あるいは、ステアリン酸無水物は、低減された濃度の疎水性物質で、高温過酸化水素に対して、二重サイジング系(対照)と同様の抵抗性を与えた(二重系の抵抗性のレベルを達成するのに必要とされる0.33%の疎水性物質に対して、0.89kg/平方メートルの高温過酸化水素ウイックを達成するために、わずかに0.2%のステアリン酸無水物が必要とされたのみであった。)。
【0045】
驚くべきことに、ステアリン酸無水物およびAKDのブレンドは、同等の疎水性物質濃度で、どちらかのサイズ剤単独の場合より、高温過酸化水素に対するより良好な抵抗性をもたらした。0.2%SA/AKD(すなわち、SA0.12%およびAKD乳剤0.08%)によって、0.74kg/平方メートルの高温過酸化水素ウイックが結果としてもたらされたのに対し、0.2%SAによって0.89がもたらされ、0.2%AKDによって1.47がもたらされた。
【0046】
(実施例2)乳酸に対する優れた抵抗性
実施例1で得られた板紙を、乳酸に対する抵抗性についても評価した。AKDほど有効でないが、ステアリン酸無水物およびAKDのブレンドも、二重制御サイジング系と比較して、乳酸に対する優れた抵抗性をもたらす。
【0047】
【表2】

【0048】
滅菌包装用途の有効な系として働くためには、乳酸抵抗性および高温過酸化水素抵抗性の両方が必要である。
【0049】
(実施例3)pHの効果
ヘッドボックスpHを6.5から7.5に変え、不溶化剤として0.375重量パーセントの明礬を使用して、実施例1で記述したとおりに板紙を調製した。SAとAKDの比率は60:4であった。ほぼ中性の弱酸性のpHが、高温過酸化水素に対する最も良好な抵抗性を与えた。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
(実施例4)他の高温浸透液に対する抵抗性
実施例1で記述したとおりに板紙を調製した。SAとAKDの比率は60:40であった。板紙を、熱湯(沸騰ボート試験:熱湯が板紙のz方向に入り込む時間)、Dixie Cobb(熱水で実施する標準Cobb試験)、ならびに、ホットコーヒーおよびクリーム入りホットコーヒーCobb、に対する抵抗性に関して試験した(Cobb試験の説明として、Tappi試験法T441om-04を参照されたい)。
【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
【表7】

【0056】
上記試料のすべてについて、沸騰ボートの結果は2000+秒であった。
【0057】
これらの結果から、本発明の方法により、他の高温浸透液に対する抵抗性がもたらされることが示された。
【0058】
(実施例5)明礬添加濃度の増加
明礬添加濃度を、0.0から0.75%に変化させ、ヘッドボックスpHを6.5に維持し、実施例1で記述したとおりに板紙を調製した。明らかに、不溶化剤の濃度が高くなるに従って、高温過酸化水素に対する抵抗性が改善された。
【0059】
【表8】

【0060】
参考までに、0.21%ロジン、0.12%AKD、および0.375%明礬を有する対照系は、0.50kg/平方メートルの高温過酸化水素ウイックであった。
【0061】
(実施例6)脂肪酸無水物の、アルキルケテンダイマーに対する比率の変更
ステアリン酸無水物のAguapel364に対する比率を変化させた以外は、実施例1に記述したとおりに板紙を調製した。ブレンド中のステアリン酸無水物濃度が高くなるに従って、高温過酸化水素に対する抵抗性が改善される、一般的傾向が見られた。
【0062】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)i)反応性サイズ剤を含む水性乳剤と、ii)不溶化剤とを、別々に、あるいは混合した形態で、水性パルプスラリーに添加する工程であって、前記反応性サイズ剤が少なくとも30%の脂肪酸無水物を含む工程、および
b)前記スラリーから厚紙または板紙を形成させる工程
を含む、高温浸透液による浸透に対する板紙の抵抗性を高める方法。
【請求項2】
板紙が滅菌包装板紙である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パルプスラリーのpHが約6.5から7.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パルプスラリーのpHが約6.7から7.3である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応性サイズ剤が40から70%の脂肪酸無水物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪酸無水物がC14からC22の直鎖状飽和脂肪酸から調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記不溶化剤が、明礬(硫酸アルミニウム)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、および他のポリアルミニウム化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記不溶化剤が明礬である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記不溶化剤を、乾燥パルプ1トン当たり、約5から約15 lbsの不溶化剤の量で前記パルプスラリーに添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記サイズ剤がアルキルケテンダイマーをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アルキルケテンダイマーがC14からC22直鎖状飽和脂肪酸から調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
a)i)反応性サイズ剤を含む水性乳剤と、ii)不溶化剤とを、別々に、あるいは混合した形態で、pHが6.5から7.5である水性パルプスラリーに添加する工程であって、前記反応性サイズ剤が少なくとも30%脂肪酸無水物を含む工程、および
b)前記スラリーから滅菌包装板紙を形成させる工程
を含む、高温浸透液による浸透に対する板紙の抵抗性を高める方法。
【請求項13】
a)脂肪酸無水物であって、任意選択でアルキルケテンダイマーを、アルキルケテンダイマーと脂肪酸無水物との重量比率が2:1未満である比率で含んでいてもよい、脂肪酸無水物と、
b)不溶化剤と
を含む、高温過酸化水素に対する高められた抵抗性を付与する組成物。
【請求項14】
不溶化剤が、明礬(硫酸アルミニウム)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、および他のポリアルミニウム化合物からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
不溶化剤が明礬である、請求項14に記載の組成物。

【公表番号】特表2013−500404(P2013−500404A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521769(P2012−521769)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/042827
【国際公開番号】WO2011/011563
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(591020249)ハーキュリーズ・インコーポレーテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】HERCULES INCORPORATED
【Fターム(参考)】