説明

高温高圧発生装置

【課題】容器内部の温度が1000℃程度の高温に耐え、同時に圧力も50MPa程度の高圧に耐えうる事が容易かつ安全に実現できる構造を有する装置を、安価に提供する。
【解決手段】包囲体42と、蓋体43と、耐熱性圧力容器35と、密栓36と、加熱手段38と、耐熱セメント39と、耐熱防水手段40と、ガス供給源47と、給水ポンプ57と、アキュムレーター45と、ガス供給管46、44と、給水管61、56と、開閉弁51と、開閉弁62と、より成る高温高圧発生装置。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
【0002】
本発明は、耐熱性の圧力装置に関する。より詳細には、1000℃以上の内部温度に耐えかつ50MPaG以上の内部圧力に耐えることが出来るような耐熱性圧力容器を具備した高温高圧雰囲気を発生することができる高温高圧発生装置に関する。この装置は、アルミニューム、銅、鉄、その他の各種の金属材料を含む、合金、複合金属その他種々の新素材の開発及び改良の際に、また各種の金属焼結等の作業に特に有用に使用できる。
【背景技術】
【0003】
これまで、アルミニューム等の金属を高温で溶かしてこれにセラミック粒子等を付加することにより当該金属の延性、靭性、剛性、耐磨耗性等を強化した複合製品を形成するための鋳造装置等は、図4に示すように、知られている。このような鋳造装置10では、金属を溶かすための行程と、流動体によってモールドの内部と圧力容器の内部を分離するための行程と、を1つの行程で行なえるように、鋼等からなる圧力容器12の中に原材料即ち溶融材料18を溶かすチャンバー16を配置し、チャンバー16と例えばステンレス鋼から構成されているモールド20とを通路24を介して流動体が連通するようにしており、該通路24に例えば多孔性のセラミックフィルター26を配置し、このフィルター26によってチャンバー16内で溶融した原材料が容器の加圧前はモールド20への移動を妨げられており、容器12が加圧されると、溶融材料18がフィルター26を通過し、モールド20内部へ強制送入されるようにして、モールド20内の材料の方向性凝固を図るようにしているものがある。なお、図4において、符号14は脱気用のポート、符号22は予備成形部、符号28はファーネス、符号30は冷却板、符号32はリフターである。
【0004】
【特許文献1】特開平5−309472号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然るに、これまで知られている装置では、アルミニューム等の金属の溶融作業を行なうため容器内部の温度は、最も高くても650〜700℃程度が限度であり、また、容器内部の圧力は、約1MPaG程度であった。しかしながら、より多くの金属の複合製品を創造し、かつ種々の冶金学的方法を綿密かつ迅速に行なうためには、容器内部の温度が例えば1000℃程度の高温に耐えるような構造を有し、同時に圧力も例えば50MPaG程度の非常に高い内部圧力に耐えるような構造を有する装置の発現が当業者に特に熱望されているところであった。
【0006】
しかしながら、現時点においては、高圧ガス保安法の規制により、使用されるガス及び当該ガスを収容する容器が温度及び圧力の面から厳しく制限されている。その結果、例えば、特定金属の冶金特性又は種々の合金の物理化学的特性の解明のために、当該金属を上記所定の温度(例えば1000℃)及び所定の圧力(例えば50MPaG)状況下に置き特定の冶金学的実験を行なおうと思っても、かかる雰囲気を形成する装置は、上記高圧ガス保安法により、現実にそのような要求を満たす装置を製造することは極めて高価な装置となるという課題がある。その結果、今日では多くの研究所における金属に関する物理化学的な装置における温度及び圧力条件については、おのずと制限が付されざるをえないというのが現状である。
【0007】
そこで、本願発明は、例えば、1000℃程度の非常に高い温度を発生し、更に50MPaG程度の極めて高い圧力を、圧縮性を伴わない水を使用することにより、上記高圧ガス保安法の規制に触れることなく、安価にかつ容易にかつ極めて安全に形成することが出来る装置の実現を図ることを目的とするものである。これにより新らしい金属素材の開発及び改良が極めて安価に実行され得ると考えたからである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、一端部が開放の包囲体42と、該包囲体42の開放端部を密封封止する蓋体43と、該包囲体42の内部へ配置されている一端開放の耐熱性圧力容器35と、当該容器35の開放端を密封封止する密栓36と、包囲体42内において容器35の周囲へ配置されている加熱手段38と、包囲体42内において容器35及び加熱手段38を取り囲んで配置されている耐熱セメント39と、包囲体42内において容器35、耐熱セメント39及び加熱手段38を液密状態に包囲している耐熱防水手段40と、容器35内へ処理ガスを供給するガス供給源47と、包囲体42の内部空間41を、防水手段40により包囲された部分を除き、水で満たすための給水ポンプ57と、ガス供給源47の圧力と給水ポンプ57の圧力とを対向する端部へ受入れるアキュムレーター45と、ガス供給源47とアキュムレーター45及びアキュムレーター45と容器35を結ぶガス供給管46、44と、給水ポンプ57とアキュムレーター45及びアキュムレーター45と包囲体42の内部空間41を結ぶ給水管61、56と、ガス供給源47とアキュムレーター45とを結ぶ管内であって、アキュムレーター45から流出するガスを容器35側へは供給するがガス供給源47側へは阻止する位置へ配置されている開閉弁51と、給水ポンプ57とアキュムレーター45とを結ぶ管内であって、アキュムレーター45から流出する給水を包囲体42側へは供給するが給水ポンプ57側へは阻止する位置へ配置されている開閉弁62と、より成る高温高圧発生装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記手段により、1000℃程度の非常に高い温度と、更に50MPaG程度の極めて高い圧力とを、圧縮性を伴わない水を使用することにより、高圧ガス保安法の規制に触れることなく、安価にかつ容易にかつ極めて安全に形成することが出来る装置を提供することが可能となった。これにより新しい金属素材の開発及び改良が極めて安価に実施することが可能となった。さらに、この装置により、1000℃程度の非常に高い温度と、更に50MPaG程度の極めて高い圧力下での特定金属の冶金特性又は種々の合金の物理化学的特性の解明が可能となり、又は、このような高温高圧下での特定の冶金学的実験を行なうことが可能となった。
【実施例】
【0010】
図1は本件装置34の具体例を示す全体図である。図において、符号35は耐熱性圧力容器である。この容器35は好ましくは物理的及び化学的に安定しておりかつ耐薬品性に富む材料、例えば、石英、セラミック等により構成されている。この容器35の上端部は開放されており、この開放上端部から被実験材料としての1種類又は複数種類の固体、粉末、液体等が内部へ供給される。この容器35は、このような要望に十分応えることが出来る程度の容積を有している。
【0011】
容器35の開放上端部は、概ねT字形断面を有する密栓36により密封封止されている。この密栓36は、物理的及び化学的に安定した耐圧縮性のガス不透過性の材料(例えば、セラミックス、石英ガラス)により形成され、また固体、液体は勿論のこと気体の流動をも遮断するように構成されており、これにより容器35の内部は容器35の外部雰囲気から確実に遮断される構造と成っている。なお、この遮断を確実にするために、密栓36には容器35との間には封止のための0リング37が配置されている。また、この容器35の外周囲には、セラミックファイバーヒーター等からなる加熱手段38が配置(図示の例では、螺旋状に配置)され、これにより容器35の内部が加熱される。この加熱手段は導線を介して外部の電源へ接続されている。
【0012】
さらに、この容器35及び加熱手段38の周囲には絶縁用の耐熱セメント39がそこを包囲するように取り囲んで配置されている。このセメント39は容器の首部であって、密栓36が係合する上方部分を除きその殆どを包囲している。これにより、該容器35の中空部分が例えば50MPaGの圧力を外部から直接受けることがないようにしている。また、当該セメント39の周囲を耐熱性の防水ゴム等からなる耐熱防水手段40が液密状態に包囲している。耐熱防水手段40によって包囲された容器35と、該容器35を取り巻く加熱手段38と、該加熱手段38を取り巻く耐熱セメント39と、が包囲体42内へ、図示していない公知の脚部材又は梁部材により浮上状態に固定支持されている。
【0013】
更に、この耐熱防水手段40の周囲を所定の空間41をおいて、剛性を有する例えば鋼材料等からなる一端部が開放の包囲体42が包囲している。また、当該包囲体42の開放端部に設けたフランジ部分には、蓋体43が公知の締付け手段(図示なし)によって密封封止状態にて締付け保持されている。
【0014】
また、図1に示すように、この密栓36にはその長手方向即ち軸線方向に上下に貫通している孔が設けてあり、この孔には、第1ガス供給管44が密封状態にて配置されている。この第1ガス供給管44は、好ましくは容器35と同様に物理的及び化学的に安定しておりかつ耐薬品性に富む材料、例えば、石英、セラミック等の材料により形成されていることが好ましいが、これに限定されるものではない。第1ガス供給管44はその一端部が密栓36をその軸線方向に貫通して容器35の内部へ開放している。また第1ガス供給管44の他端部は該密栓36から蓋体43を貫通して外部へ伸長し、アキュムレーター45の一方の端部へ接続されている。
【0015】
アキュムレーター45の該一方の端部には、更に第2ガス供給管46が接続されている。この第2ガス供給管46からは容器35の内部が例えば50MPaGになるまで容器内部圧力を高めるため、ガス供給源47からガスが段階的に送り込まれる。ここで使用されるガスとしては、容器35内へ収容されるワーク(図示なし)へ対して特定の化学的反応を起こさせないような化学的に安定して特性を有する窒素ガス、ネオンガス、アルゴンガス等の希ガス類が望ましい。しかしながら、金属の酸化特性等を検証するような場合には、酸素ガス又は場合によっては空気を使用することが当然可能である。しかし図示の例では例示として窒素ガスを使用するものとして説明する。なお、この第1ガス供給管44には、図に示すように、それ自体公知の開閉弁48、逆止弁49、圧力計50が、更に第2ガス供給管46にも開閉弁51、逆止弁52、圧力計53等が装着されている。第1ガス供給管44には、更に、開閉弁54が装着されたレリーズ管55が接続されている。ここで、前記開閉弁51は、ガス供給源47とアキュムレーター45とを結ぶ第2ガス供給管46内であって、アキュムレーター45から流出するガスを容器35側へは供給するがガス供給源47側へは阻止する位置へ配置されている。
【0016】
更に、図に示すように、前記包囲体42の内部に形成されている空間41には第1給水管56の一端部が連通している。この管56の他端部には第2給水管61が接続されている。第2給水管61には当該包囲体42の内部空間へ水を圧力供給し、該内部空間41を、防水手段40により包囲された部分を除き、水で満たすため圧力供給するための給水ポンプ57が接続されている。また、この第1給水管56には、同様に公知の開閉弁58、逆止弁59、圧力計60が装着されている。更に、これらの第1給水管56と第2給水管61とが連結される部分からは、前記アキュムレーター45の前記一方の端部に対向する他方の端部へ連結している枝管67が設けてある。このため、アキュムレーター45は、ガス供給源47の圧力と給水ポンプ57の圧力とを対向する両方の端部へ夫々受け入れている。更に第2給水管61にも、それ自体公知の開閉弁62、逆止弁63、圧力計64が装着されている。また、第1給水管56には、開閉弁65が装着されたレリーズ管66が設けてある。ここで、前記開閉弁62は、給水ポンプ57とアキュムレーター45とを結ぶ第2給水管61内であって、アキュムレーター45から流出する給水を包囲体42側へは供給するが給水ポンプ57側へは阻止する位置へ配置されている。
【0017】
即ち、この発明の装置は、一端部が開放の包囲体42と、該包囲体42の開放端部を密封封止する蓋体43と、該包囲体42の内部へ配置されている一端開放の耐熱性圧力容器35と、当該容器35の開放端を密封封止する密栓36と、包囲体42内において容器35の周囲へ配置されている加熱手段38と、包囲体42内において容器35及び加熱手段38を取り囲んで配置されている耐熱セメント39と、包囲体42内において容器35、耐熱セメント39及び加熱手段38を液密状態に包囲している耐熱防水手段40と、容器35内へ処理ガスを供給するガス供給源47と、包囲体42の内部空間41を、防水手段40により包囲された部分を除き、水で満たすための給水ポンプ57と、ガス供給源47の圧力と給水ポンプ57の圧力とを対向する両方の端部へ受入れるアキュムレーター45と、ガス供給源47とアキュムレーター45及びアキュムレーター45と容器35を結ぶ第2及び第1のガス供給管46、44と、給水ポンプ57とアキュムレーター45及びアキュムレーター45と包囲体42の内部空間41を結ぶ第2及び第1の給水管61、56と、ガス供給源47とアキュムレーター45とを結ぶ第2管内であって、アキュムレーター45から流出するガスを容器35側へは供給するがガス供給源47側へは阻止する位置へ配置されている開閉弁51と、給水ポンプ57とアキュムレーター45とを結ぶ第2管内であって、アキュムレーター45から流出する給水を包囲体42側へは供給するが給水ポンプ57側へは阻止する位置へ配置されている開閉弁62と、より成る高温高圧発生装置を開示しているのである。
【0018】
以下、本件装置10において、容器35の内部へ収容したワークへ、例えば1000℃、50PMaG程度の極めて高温高圧の雰囲気を形成するための手順について述べる。
【0019】
初めに、包囲体42から蓋体43を取外す。次いで、容器35から密栓36を取外して、容器35の内部へ所望の1種類又は複数種類のワークを配置する。次いで、容器35の開口部へ密栓36を施し容器を密封し、更に、包囲体42を蓋体43で完全に密封する。これにより初期準備が完了する。
【0020】
次に、レリーズ管55、66の開閉弁54、65が共に完全に閉じてあることを確認した後で、給水ポンプ57を作動する。給水ポンプ57により給水される常圧水は、第2給水管61、開放状態の開閉弁62、第1給水管56、開放状態の開閉弁58を通り、包囲体42の内部の空間41へ供給される。空間41が完全に常圧水で満たされた後、さらにその内部へポンプ57を介して加圧給水する。ポンプにより加圧供給される水の一部は枝管67を介してアキュムレーター45内の給水側へ供給され、アキュムレーター45の給水ポンプ側端部の圧力を上昇する。ポンプ57の作動により、圧力計64、60にて計測されるアキュムレーター45内部のポンプ側圧力が所定値に達したなら、開閉弁62を閉じる。
【0021】
ここで言う所定値とは耐熱性圧力容器35が圧力水によって圧力破壊即ち圧壊を発生することのない程度の最大圧力値即ち容器35の最大耐圧値に近い圧力例えば0.1〜2MPaG程度の圧力をいう。封止状態の包囲体42内へ供給された圧力水は、容器35、ヒーター38、耐熱セメント39及び耐熱防水手段40の周囲を満たした状態となっているが、これらの容器35、ヒーター38及び耐熱セメント39は耐熱防水手段40により完全に包囲されているので、当該圧力水が耐熱セメント39やヒーター38まで浸透することは完全に防止されている。また、容器35は密栓36及びOリング37により完全に封止されているので、同様に、この圧力水が容器35の内部へ浸入することが防止されることは、当業者にとって容易に理解されよう。
【0022】
第2給水管61の開閉弁62を閉じた後、窒素ガスボンベ等のガス供給源47から窒素ガスの送給を開始する。窒素ガス供給源47から送給される窒素ガスは、第2ガス供給管46、開放状態の開閉弁51、アキュムレーター45内の窒素ガス供給側、第1ガス供給管44及び開放状態の開閉弁48を介し、更に密栓36の長手方向に沿って配置した該第1ガス供給管44を介して容器35の内部へ供給される。容器35内へ供給された高圧窒素ガスは容器35が密栓36により封止されていること、空間41の内部圧力が水圧により高圧状態にあり密栓36を容器35内方へ強制的に押圧していることのため当該高圧窒素ガスが容器から放出することはない。また圧力計53、50により計測される窒素ガスの圧力値が前記圧力計64、60により計測された供給水の圧力と同圧になった後に、更に窒素ガスを強制的に供給する。これにより、容器35内部の圧力が更に上昇し、同時にアキュムレーター45の窒素ガス側端部の圧力が上昇する。
【0023】
容器35を封止している密栓36が容器内部の窒素ガス圧力により、非作動状態即ち密栓36が開放するような状態に至る圧力に到達する前に窒素ガスの供給を停止し、開閉弁51を閉じる。この圧力は、圧力計53、50を監視することにより、容易に認識することが出来る。なぜなら、この圧力は、概ね上記圧力(0.1〜2MPaG)に近似しているからである。このとき、アキュムレーター45の窒素ガス側圧力が給水ポンプ側圧力よりも高い状態となっている。このため、アキュムレーター45の給水側端部へ入っている水、枝管67及び第1給水管56内に入っている水はその差圧によって包囲体42内の空間41へ強制的に供給される。なお、第1ガス供給管44、第2ガス供給管46及び第1給水管56、第2給水管61内に配置されている逆止弁49、52、59、63は高圧ガス又は高圧水が逆流することを防止するための安全弁として作用するものである。
【0024】
次に、開閉弁62を開放し、再度、給水ポンプ57を作動して包囲体42の内部空間41へ給水を開始する。給水管61、56に装着されている圧力計64、60の数値がガス供給管46、44に装着されている圧力計53、50の数値に等しくなった後に、さらにその値を超えて水を圧送する。この結果、アキュムレーター45の給水側圧力が再度窒素ガス供給側圧力よりも上述の圧力と同等程度だけ高くする。このため、アキュムレーター45のガス側端部へ入っているガス及び第1ガス供給管44内にある窒素ガスは容器35内へ圧送される。アキュムレーター45内の給水側圧力が窒素ガス供給側圧力よりも上述したと同様の所定の差圧以上に拡大する前に、第2給水管61内の開閉弁62を閉じる。
【0025】
次いで第2ガス供給管46内の開閉弁51を開放し、上述と同様にガス圧送を行ない容器35の内部圧力を上昇する。
【0026】
以下、このような動作を順次繰り返す。本件装置34においては、容器35内外の圧力を順次交互に僅かずつ上昇させるため、容器35の内部と外部との間においては当該容器を圧壊する程度の圧力差を発生することはなく、また、このような動作を繰り返すことにより、安全に容器内へ非常に高い内部圧力を発生することが出来る。出願人の実験によれば、5ml程度の大きさの容器35の内部圧力を僅か5分間で容易に50MPaG程度の極めて高い圧力まで上昇させることが出来た。なお、動作の開始手順として、上記の記載においては、初めに水の供給を開始しその後にガスの供給を行ったが、これに限定されるものではなく、初めにガスの供給を開始しその後に水の供給を行っても良いことは当業者に容易に理解されよう。特に、後述する図2及び図3のような実施例の場合には容器35内部が高圧になっても密栓36の逃げ出しが防止されているので、開始手順に拘泥する必要はない。
【0027】
一方、容器35の内部温度は、約1000℃まで上昇させることが可能であり、必要に応じて、圧力上昇と調時して加温することも出来るし、初めに容器温度を1000℃程度まで上昇しておきその後に圧力上昇を図ることも可能であり、更には、初めに圧力を所定値まで上げた後で、加温を開始することも可能である。更には圧力と温度とを断続的に上昇させることも可能であり、これにより冶金その他の各種新素材の研究領域を拡大することが可能となった。
【0028】
なお、所望の実験、作業等が終了した後に容器35及び空間41内の圧力ガス及び圧力水を開放するときには、レリーズ管55、66の開閉弁54、65を操作することにより容易に圧力降下を達成することが出来る。加熱手段38の降温作業は当該手段の電源を切断することにより達成される。
【0029】
図2に示す実施例は、図1に示す実施例の変形例であるが、その大部分は図1の実施例に近似しているので、特に図1の実施例と異なる点についてのみ、図1と同一部材には同一番号にaを付して記載する。図2の実施例が図1の実施例と異なる点は、容器35aの内部圧力が上昇した際に密栓36aが飛び出ないよう保護するために、当該密栓36aを押圧部材70によって押圧保持していることである。ここで、押圧部材70は蓋体43aに設けた孔を貫通して当該蓋体43aの外部まで伸びており、かつ蓋体43aと押圧部材70との間にはOリング71を配置してその密封性を担保している。更に、当該押圧部材70の押圧力を外部から調整できるように、蓋体43aの上面には中心部にねじ孔を有しているナット部材72が固着してあり、このねじ孔へ対して押圧部材70へ形成したねじ部が螺合している。このため、容器35aの内部圧力が上昇した時には押圧部材70を調整して密栓36aが飛び出ないように制御することが出来る。
【0030】
更に図2の実施例では、第1ガス供給管44aが包囲体42a及び容器35aを貫通して、密栓36aのOリング37a下方部分へ連通している。これにより、ガス供給源47aから供給された窒素ガスはOリング37aの下方部分から密栓36aと容器35aの内面との間の空間を介して容器35aの内部へ供給される。なお、図2においても、図1と同様にレリーズ管が設けてあるが、図2においては図を明瞭化するために図示していないことは当業者においては理解されよう。
【0031】
また、図1に示す実施例では、耐熱防水手段40によって包囲された部材38、39は図示していない脚部材又は梁部材によって包囲体42へ対して固着されているが、図2に示す実施例では、耐熱防水手段40aによって包囲された加熱手段38a及び耐熱セメント39aは包囲体42aの底部まで伸びそこへ直接安定した状態で固定状態に設置されている。これにより、包囲体42a内へ供給する加圧水の量を減らすことが出来、容器内への加圧条件達成時間を短縮することが出来る。更にまた、加熱手段38aの導線取付けが容易となる利点がある。
【0032】
図3に示す実施例は図2の実施例を更に改良した変形例である。この変形例の大部分は図2に示す実施例に近似しているので、特に図2の実施例と異なる点についてのみ、図1に示す実施例と同一部材には同一番号にbを付して記載する。
【0033】
図3の実施例が図2の実施例と異なる点は、容器35bの周囲へ配置した加熱手段38bを容器の一部と共に包囲している耐熱セメント39bが包囲体42bの下方部分全体へ充填してあり、この耐熱セメント39bの上面に耐熱防水手段40bを密封状態にて配置してある点である。耐熱セメント39bの上面に耐熱防水手段40bが密封状態に配置してあるため、包囲体42b内へ供給される圧力水は当該耐熱防水手段40bの上方部分にのみ供給されるので、図2に示す実施例よりも包囲体42b内へ供給する加圧水の量を一層減少することが出来、これにより容器35b内への加圧条件達成時間を更に短縮することが出来る。なお、図3においても図1と同様にレリーズ管が設けてあるが、図3において図示していないことは図2の場合と同様に当業者においては容易に理解されよう。
【0034】
なお、図示の例では、第1ガス供給管44、44a、44bの端部と第2ガス供給管46、46a、46bの端部とがアキュムレーター45、45a、45bの一方の端部へ直接接続されており、一方、第1給水管56、56a、56b及び第2給水管61、61a、61bが枝管67、67a、67bを介してアキュムレーター45、45a、45bの他方の端部へ接続されているが、逆に第1ガス供給管44、44a、44b及び第2ガス供給管46、46a、46bが枝管(図示なし)を介してアキュムレーター45、45a、45bへ接続され、第1給水管56、56a、56b及び第2給水管61、61a、61bの端部が夫々アキュムレーター45、45a、45bへ直接接続されることも可能であり、更には第1ガス供給管44、44a、44b及び第2ガス供給管46、46a、46b、第1給水管56、56a、56b及び第2給水管61、61a、61bが共に、枝管を介してアキュムレーター45、45a、45bへ接続されることも本件発明の範囲に属することは明らかである。
【0035】
図示の例においては、給水動作及びガス供給動作を手動によって行なうように記載しているが、これはそれらの動作手順を容易に理解出来るようにするためであり、実動機においては例えばタイマー、シーケンサー、その他の必要な機材を介して、これら機器の動作を全て自動的に制御する自動制御装置とすることが出来る。更に、上述記載においては、使用された容器の容積を5ml、容器の内部温度の上限を1000℃、内部圧力の上限を50MPaGとして記載しているが、出願人の実験によれば、直径3cm、高さ13cmの円筒状の容器を使って本件装置によって1500℃、100MPaGの雰囲気を形成出来ることが判明している。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、耐熱性の圧力装置であって、1000℃以上の内部温度に耐えかつ50MPaG以上の内部圧力に耐えることが出来るような耐熱性圧力容器を具備した高温高圧雰囲気を発生することができる高温高圧発生装置を提供している。このため本装置は、アルミニューム、銅、鉄、その他の各種の金属材料を含む、合金、複合金属その他種々の新素材の開発及び改良の際に、また各種の金属焼結等の作業に特に有用に使用できる。また、これまでの、アルミニューム等の金属を高温で溶かしてこれにセラミック粒子等を付加することにより当該金属の延性、靭性、剛性、耐磨耗性等を強化した複合製品を形成するための鋳造装置等に完全に代替できる。
【0037】
また、本発明においては、高圧ガス保安法の規制により制限されることのない圧縮性を伴わない水を圧力源として使用しているため、例えば、所定の高温度(例えば1000℃)及び所定の高圧力(例えば50MPaG)の状況下を、容易かつ安価に形成することが出来、これにより、所望の金属をこれまで出来なかったような厳しい状況下に容易かつ安価に置くことが出来るようになり、かかる状況下での特定の冶金学的実験を容易かつ安価に行なうことが可能となり、また、特定金属の冶金特性又は種々の合金の物理化学的特性の解明が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本件発明の第1の実施例を示す図である。
【図2】本件発明の第2の実施例を示す図である。
【図3】本件発明の第3の実施例を示す図である。
【図4】公知の高温高圧装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
34:本件装置 35:耐熱性圧力容器
36:密栓 37:Oリング
38:加熱手段 39:耐熱セメント
40:耐熱防水手段 41:空間
42:包囲体 43:蓋体
44:第1ガス供給管 45:アキュムレーター
46:第2ガス供給管 47:ガス供給源
48:開閉弁 49:逆止弁
50:圧力計 51:開閉弁
52:逆止弁 53:圧力計
54:開閉弁 55:レリーズ管
56:第1給水管 57:給水ポンプ
58:開閉弁 59:逆止弁
60:圧力計 61:第2給水管
62:開閉弁 63:逆止弁
64:圧力計 65:開閉弁
66:レリーズ管 67:枝管
70:押圧部材 71:Oリング
72:ナット部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が開放の包囲体42と、
該包囲体42の開放端部を密封封止する蓋体43と、
該包囲体42の内部へ配置されている一端開放の耐熱性圧力容器35と、
当該容器35の開放端を密封封止する密栓36と、
包囲体42内において容器35の周囲へ配置されている加熱手段38と、
包囲体42内において容器35及び加熱手段38を取り囲んで配置されている耐熱セメント39と、
包囲体42内において容器35、耐熱セメント39及び加熱手段38を液密状態に包囲している耐熱防水手段40と、
容器35内へ処理ガスを供給するガス供給源47と、
包囲体42の内部空間41を、防水手段40により包囲された部分を除き、水で満たすための給水ポンプ57と、
ガス供給源47の圧力と給水ポンプ57の圧力とを対向する端部へ受入れるアキュムレーター45と、
ガス供給源47とアキュムレーター45及びアキュムレーター45と容器35を結ぶガス供給管46、44と、
給水ポンプ57とアキュムレーター45及びアキュムレーター45と包囲体42の内部空間41を結ぶ給水管61、56と、
ガス供給源47とアキュムレーター45とを結ぶ管内であって、アキュムレーター45から流出するガスを容器35側へは供給するがガス供給源47側へは阻止する位置へ配置されている開閉弁51と、
給水ポンプ57とアキュムレーター45とを結ぶ管内であって、アキュムレーター45から流出する給水を包囲体42側へは供給するが給水ポンプ57側へは阻止する位置へ配置されている開閉弁62と、
より成る高温高圧発生装置。
【請求項2】
ガスがガス供給源47から容器35内へ密栓36の長手方向に沿って配置したガス供給管44を介して供給される請求項1に記載の高温高圧装置。
【請求項3】
密栓36a、36bが容器35a、35bの開口部へOリング37a、37bを介して密嵌しており、ガスが容器35a、35b内へOリング37a、37bの下方部分から密栓36a、36bと容器35a、35bの内面との間の空間を介して供給される請求項1に記載の高温高圧装置。
【請求項4】
第1ガス供給管44及び第1給水管56が、それぞれ開閉弁54、65を具備したレリーズ管55、66を備えている上記請求項の何れか1に記載の高温高圧発生装置。
【請求項5】
密栓36a、36bを包囲体42a、42bの外部から容器35a、35b側へ押圧するための押圧部材70を有している上記請求項の何れか1に記載の高温高圧発生装置。
【請求項6】
容器35と、該容器35を取り巻く加熱手段38と、該加熱手段38を取り巻く耐熱セメント39と、を包囲している耐熱防水手段40が、包囲体42内へ浮上支持されている上記請求項1−5の何れか1に記載の高温高圧発生装置。
【請求項7】
容器35aと、該容器35aを取り巻く加熱手段38aと、を取り囲んでいる耐熱セメント39aの底部が、包囲体42aの底部へ取り付けられ、該耐熱セメント39aの側方周辺を耐熱防水手段40aが包囲している上記請求項1−5の何れか1に記載の高温高圧発生装置。
【請求項8】
容器35bと、該容器35bを取り巻く加熱手段38bと、を取り囲んでいる耐熱セメント39bが、包囲体42bの一部を完全に充填しており、該耐熱セメント39bの上端部を耐熱防水手段40bが水封止している上記請求項1−5の何れか1に記載の高温高圧発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−216302(P2009−216302A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60505(P2008−60505)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(593139695)株式会社協真エンジニアリング (14)
【Fターム(参考)】