説明

高湿分空気利用ガスタービン,高湿分空気利用ガスタービンの制御装置及び高湿分空気利用ガスタービンの制御方法

【課題】高湿分空気利用ガスタービンに水分添加を開始する前後で、燃焼器の低NOxと火炎安定性を両立させる。
【解決手段】圧縮機1と、圧縮機からの高圧空気中に湿分を添加して増湿空気を生成する増湿装置4と、燃焼器2と、タービン3と、タービンからの排気ガスと前記増湿空気とを熱交換する再生熱交換器5と、再生熱交換器からの排気ガスと水とを熱交換する給水加熱器22を備え、給水加熱器で加熱された水を増湿装置4に供給する系統を備えた高湿分空気利用ガスタービンであって、給水加熱器から排出される排出ガスの温度を計測する温度計測装置と、温度計測装置からの温度信号に基づき増湿装置4に供給する湿分量を調整する制御装置を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高湿分空気利用ガスタービン,高湿分空気利用ガスタービンの制御装置及び高湿分空気利用ガスタービンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機からの高圧空気中に水分を添加して加湿した加湿空気によって、タービンから排出された排気ガスの持つ熱エネルギーを回収し、出力及び効率の向上を図る高湿分空気利用ガスタービンがある。特許文献1には、高湿分空気利用ガスタービンにおいて、水分添加開始後の負荷変動に対し空気中の湿分量を安定に制御する手段が開示されている。
【0003】
一般に、ガスタービン起動時の回転数上昇時には、圧縮機吸込み空気流量や回転体の振動特性が変化する。そのため、定格回転数到達後に比べて外乱により系が不安定になりやすい。特に、高湿分空気利用ガスタービンでは、回転数上昇途中に水分添加を開始すると、ガスタービンに対して外乱を与えることになる。そのため、ガスタービン起動時の安定性を確保するためには、定格回転数到達後の部分負荷状態で水分添加を開始する方が望ましい。
【0004】
一方、天然ガスや灯油,軽油等の窒素含有量の少ない燃料を用いる場合、燃焼器で発生するNOxは、空気中の窒素が酸化されて発生するサーマルNOxが大部分である。サーマルNOxの量は温度依存性が高く、温度上昇に伴って増加する。そのため、火炎温度の低減が低NOx燃焼法の基本思想である。そして、火炎温度を低減する方策として、燃料と空気を予め混合した後に燃焼させる予混合燃焼が知られている。
【0005】
また、高湿分空気利用ガスタービンのように、再生熱交換器により燃焼用空気が高温化されている場合でも、燃料の自発火を防止しつつ、火炎温度を適度に制御して低NOx化を図る必要がある。そのため、特許文献2に示されているような、燃料と空気を多数の小径の同軸噴流として燃焼室に噴出する方法が有効である。
【0006】
【特許文献1】特開2005−307861号公報
【特許文献2】特開2003−148734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高湿分空気利用ガスタービンで水分添加が開始されると、燃焼器において燃焼空気中の湿分が増加する。そして、燃料の燃焼熱が燃焼空気中の湿分に奪われる分、火炎温度が低下し、NOx発生量は減少する。また、水分の添加によってタービン作動流体が増加するため、タービン回転数を一定に保持するために燃料量を低下させる調整を行う。従って、燃焼器内の火炎温度が低下し、NOx発生量は減少する。さらに火炎温度が低下したことにより、再生熱交換器での回収熱量が減少するため、燃焼空気温度が低下する。このように、火炎温度が低下することによっても、NOx発生量は減少する。
【0008】
以上のように、水分添加が開始されることよって、(1)湿分の増加、(2)燃料量の減少、(3)燃焼空気の温度低下が同時に進行して火炎温度が低下するため、NOx発生量は減少する。但し、火炎の安定性が悪化するという問題がある。
【0009】
そこで、火炎の吹き消えが生じないように、燃焼器頭部の予混合部または同軸噴流部に供給する空気流量を減少させる方法がある。しかし、空気流量を減少させると、水分添加開始前には上記とは逆に火炎温度が高くなる。そのため、火炎の安定性は確保されるものの、NOx発生量は増加する。
【0010】
従って本発明は、高湿分空気利用ガスタービンに水分添加を開始する前後で、燃焼器の低NOxと火炎安定性を両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記給水加熱器から排出される排出ガスの温度を計測する温度計測装置と、該温度計測装置からの温度信号に基づき前記増湿装置に供給する湿分量を調整する制御装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高湿分空気利用ガスタービンに水分添加を開始する前後で、燃焼器の低NOxと火炎安定性を両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の高湿分空気利用ガスタービンの実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本実施例に係る高湿分空気利用ガスタービンの全体構成を表すシステムフロー図である。
【0015】
高湿分空気利用ガスタービン1000は、空気を圧縮する圧縮機1,増湿空気と燃料が燃焼して燃焼ガスを生成する燃焼器2,燃焼ガスによって駆動するタービン3,圧縮機からの高圧空気中に湿分を添加して増湿空気を生成する増湿装置4,タービンからの排気ガスと増湿空気とを熱交換する再生熱交換器5を備え、タービン3の出力により発電機20を回転させ電力を得る。
【0016】
燃焼器2は、本体ケーシング6,燃焼器ケーシング7、および燃焼器カバー8内に格納されている。燃焼器2の上流端中央には燃料ノズル9があり、その下流側には、未燃の空気と既燃の燃焼ガスを隔てる概略円筒状の燃焼器ライナ10がある。燃焼器ライナ10の外周には、空気流路を形成し、流れを制御するための外周壁(以下、フロースリーブ11)がある。フロースリーブ11は燃焼器ライナ10よりも直径が大きく、ほぼ同心円筒状に配置されている。燃焼器ライナ10の下流には、燃焼ガスをタービン3へ導くための尾筒内筒12があり、その外周には尾筒外筒13がある。
【0017】
また、本実施例の高湿分空気利用ガスタービンでは、圧縮機1入口のガスタービン吸込み空気100に水300を噴霧する吸気噴霧装置27を備えている。水噴霧後の空気101(大気圧)を圧縮機1で圧縮した高圧空気102は、本体ケーシング6内に充満した後、尾筒内筒12と尾筒外筒13の間の空間に流入し、尾筒内筒12を外壁面から対流冷却する。尾筒内筒12を冷却した後の抽気空気103は、尾筒外筒13によって形成された抽気流路14を通って本体ケーシング6外へと抽気される。
【0018】
抽気空気103は、増湿装置4において水分を添加され増湿空気104となる。空気の加湿方法としては、濡壁塔或いは増湿塔による加湿が知られている。
【0019】
増湿装置4で水分を添加された増湿空気104は、再生熱交換器5に導かれ、ガスタービン排気ガス107(タービン出口低圧燃焼ガス)との熱交換により加熱されて、高温空気105となり燃焼器ケーシング7へと注入される。燃焼器ケーシング7内での空気は、フロースリーブ11と燃焼器ライナ10の間の概して環状の空間を通って燃焼器頭部へ向かって流れ、途中燃焼器ライナ10の対流冷却に使用される。また、その一部は燃焼器ライナ10に設けられた冷却孔から燃焼器ライナ内へ流入し、フィルム冷却に使用される。残りの空気は、燃料ノズル9の下流側に設けられた空気孔から燃焼器ライナ内に流入し、燃料ノズルから噴出される燃料(201〜204)とともに燃焼に使用されて燃焼ガス
106となる。高温の燃焼ガス106は、尾筒内筒12を通ってタービン3へと送られる。タービン3を出た低圧の排気ガス107は再生熱交換器5で熱回収された後、給水加熱器22,排ガス再過熱器23,水回収装置24を経て、排気ガス109として排気塔25から排気される。また、排気ガス中の水分は途中の水回収装置24で回収する。本図では、水回収の方式として煙道に水を噴霧し、ガス中の水分を凝集,落下させて回収する方式となっている。
【0020】
タービン3で得られた駆動力はシャフト21を通じて圧縮機1及び発電機20に伝えられる。駆動力の一部は圧縮機1において空気の加圧に用いられる。また、発電機20で駆動力を電力に変換する。
【0021】
水回収装置24及び増湿装置4の底部から回収した水は、水回収装置24への噴霧水あるいは増湿装置4への加湿水として再利用する。その際、回収水は水処理装置26で不純物が取り除かれる。水処理装置26で処理された水は、給水加熱器22において排気ガスで加熱される。加熱後の水が、増湿装置4に供給される。
【0022】
高湿分空気利用ガスタービンの出力である発電量MWは、燃料流量調整弁(211〜
214)の開閉により制御する。発電量MWは、発電機20から制御装置800に入力される。一方、空気への加湿量は増湿装置4への加湿水量を制御弁311で制御する。この制御弁311は、給水加熱器22で加熱された水を増湿装置4に供給する系統に設けられている。
【0023】
また、給水加熱器22の下流側には、排気ガス温度を計測するために、温度計測装置
801が設けられている。温度計測装置801で得られた温度信号は、制御装置800に入力されている。制御装置800は、増湿装置4への加湿水量を制御する制御弁311と、燃料流量を制御する流量制御弁211〜214を開閉するために信号を送信する。なお、図1には、制御装置800から流量制御弁211〜214へ送信する制御信号のうち、流量制御弁214への制御信号を代表して示す。
【0024】
図2は、本実施例で用いる燃料ノズル9の構造を示した図である。
【0025】
燃焼器カバー8の燃料ヘッダ30には、多数の燃料ノズル31が取り付けられている。燃料ノズル31の1本1本に対応し、小径の空気孔32を備えた空気孔プレート33は、サポート34を介して燃焼器カバー8に取り付けられた構造となっている。
【0026】
一対の燃料ノズル31と空気孔32はほぼ同軸状である。この空気孔32からは、中央に燃料噴流35、その周囲に環状の空気流36を形成する同軸噴流が噴出する。この同軸噴流により、空気孔32内では燃料と空気の混合を抑制する。そのため、高湿分空気利用ガスタービンの様に燃焼空気が高温であっても、空気孔内での燃料の自発火を抑制するため、空気孔プレート33を溶損するようなことなく、信頼性の高い燃焼器にすることができる。
【0027】
また、小さな同軸噴流を多数形成することにより、燃料と空気の界面が増加し混合が促進するため、NOxの発生量を抑制することができる。かくして、高湿分空気利用ガスタービンにおいても低NOxと安定燃焼を両立することが可能となる。
【0028】
図3は空気孔プレート33を燃焼器下流側から見た図である。本実施例において、多数の空気孔(および、図示されていないが空気孔と対を成す燃料ノズル)は同心円状に8列配置されている。また、中心から4列(第1列〜第4列)が第1群(F1)、第5列が第2群(F2)、その外側の2列(第6,7列)が第3群(F3)、最外周(第8列)が第4群(F4)と群分けている。そして、図2に示した様に、F1〜F4それぞれの群ごとに、燃料ヘッダ30に設けたフランジ(41〜44)を通じて燃料が供給する。このような燃料系統の群分け構造により、ガスタービンの負荷変化に対し燃料供給する燃料ノズルの本数を段階的に変化させる燃料ステージングが可能となる。また、ガスタービン部分負荷運転時の燃焼安定性が高まるとともに、低NOx化が可能となる。
【0029】
さらに中央の4列(F1)の空気孔はピッチ円接線方向に角度(図3中のα°、本実施例では15°としている)を持った斜め穴にしている。そのため、同軸噴流全体に旋回をかけ、生じる循環流によって火炎を安定化させている。F1の周囲のF2〜F4は、中央のF1バーナの燃焼熱によって火炎が安定化される。
【0030】
図4は、本実施例による高湿分空気利用ガスタービンの負荷および水分添加制御の一例を示したものであり、制御装置800の制御内容を示す。
【0031】
予め定められた発電量増加率に沿って中央指令所900(図1)から送信された負荷指令MWDと、発電機20から送信された実際の発電量MWの差を減算器401で求め、制御器402で燃料流量指令値を演算する。燃料比率設定器403は、制御器402からの燃料流量指令値に基づき、F1〜F4に供給する各燃料流量を配分する役割を有する。そして、燃料比率設定器403においてF1〜F4の各燃料流量およびそれに対応する弁開度が求められ、流量制御弁211〜214が制御される。
【0032】
一方、制御器402で算出された燃料流量指令値に基づき、比較器404が増湿装置4へ水を供給する水分添加開始時期を判断する。そして、水分添加開始時期になると、比較器404が制御器406に対して給水開始の命令を発信する。
【0033】
給水開始後、減算器405は、給水加熱器22から排出される排気ガスの温度設定値と、温度計測装置801から得られる実際の温度との差を算出する。なお、温度設定値は事前に求められており、制御装置800に保持している。そして、制御器406は、前述の温度差信号によって制御弁311の開度を求める。このとき、水分添加量の増加速度が予め定められた値とならしめるために、変化率制限器407の値が決められている。このように、給水加熱器から排出される排出ガスの温度に基づき、増湿装置に供給する湿分量を調整するため、水分添加量が増加するときの燃焼温度をほぼ一定にすることができ、燃焼器の低NOxと火炎安定性を両立できる。
【0034】
図5は、燃焼器の運転方法を示す。図5の横軸は起動開始からの時刻、縦軸は上から回転数,発電量,増湿装置に供給する水の量を表す水分添加量,燃料流量(200),燃焼ガス温度,F1〜F4各系統の個別燃料流量を模式的に表したものである。また、期間aは起動から定格回転数に達するまでの回転数昇速期間、期間bはガスタービン起動中の増負荷期間、期間cは起動終了後の負荷追従運転期間を表す。増負荷期間bは前半の水分無添加期間b1と水分添加量増加期間b2に分かれる。
【0035】
まず、燃料流量が比較的少ない着火および昇速時(期間a)は中央のF1のみで運転
(すなわち燃料系統201のみに燃料を供給)し、定格回転数無負荷条件付近まで昇速させる。このF1単独燃焼を今後の説明では1/4モードと呼ぶことにする。
【0036】
次にそれ以降の負荷上昇過程(期間b1)では、F1の外周のF2に燃料を供給して、F1+F2で運転する。すなわち、燃料系統201および202に燃料を供給し、流量制御弁211および212により各燃料流量を制御する。このときを2/4モードと呼ぶことにする。
【0037】
次に、周囲の燃料系統203に燃料を供給し、F3に着火した状態(b2)を3/4モードと呼ぶ。そして、3/4モードまでの燃料流量増加は、ガスタービンの起動計画に定められた負荷上昇率に従ってガスタービン発電量が増加する様に、流量制御弁211,
212および213によって燃料流量が制御される。また、F1,F2,F3各系統の燃料流量配分は、燃焼が安定しかつ生成するNOxが最小となる様に定められた比率で供給される。
【0038】
なお、期間aとb1の過程では、増湿装置4に水分が添加されていない。本実施例においては、3/4モードで増湿装置4への水分添加を開始する。増湿装置の制御弁311が所定の速度で開き、開度に応じて給水流量が徐々に増加する。このときの燃料流量も、ガスタービンの起動計画に定められた負荷上昇率に従ってガスタービン発電量が増加する様に、燃料流量を制御する。温度計測装置801から得られた温度信号に基づいて、増湿装置4に供給する湿分量を調整しているため、燃焼ガス温度の変化がほとんど無いまま、負荷上昇および増湿が可能となる。その後、増湿装置4の給水量301または制御弁311の開度が所定の量に達し、高湿分空気利用ガスタービンの起動が完了する。例えばこの起動終了後の給水量は、給水加熱器出口排ガス108の温度が所定の温度になる様に制御することができる。
【0039】
その後は、負荷の増減に合わせて燃料流量が増減することで負荷追従する(期間c)。高負荷運転時においては、主として最外周のF4の燃料流量を増減させて対応する。このとき、F4燃料と空気の混合気は、F1〜F3までの燃焼ガスと混合して高温になるため、燃料の酸化反応が進行し、高い燃焼効率を得ることができる。また、燃焼完結後の温度をNOx生成が顕著となる温度(おおよそ1600℃)以下になるよう空気配分が設定されているため、F4からのNOx発生をほとんど零とする燃焼が可能となる。また、供給したF4燃料がごくわずかでも反応が完結するため、連続的な燃料切り替えが可能となり、運用性が向上する。
【0040】
図5は、本発明を用いない場合の課題を説明する比較例である。すなわち、発電量の増加とは無関係に水分添加量を増加させた場合(期間b2)、通常は、設定された発電量増加率よりも水分添加量増加の方が早くなる。そのため、図5中d点において発電量増加率を所定の速度にするため、燃料流量を一時的に減少させる必要がある。そのため、燃焼ガス温度が低下して、燃焼安定性が低下する。このとき、水分添加後の火炎安定性を向上させるため、空気孔32の大きさを小さくして局所的な燃空比を高くすることも可能である。しかし、空気孔32の直径を小さくすると局所的な燃空比が増加するため、水分添加前の燃焼温度が高くなってNOx発生量が増加する。
【0041】
従って、本発明は、図6に示すような、水分添加を開始する前後における燃焼ガス温度の変化を小さくすることができるため、水分添加前の低NOx化を図り、かつ、水分添加後の燃焼安定性を確保することが出来る。また、ガスタービン起動時の増負荷と水分添加を同時並行に行うため、高湿分空気利用ガスタービンの起動時間を短縮することが出来る。
【0042】
なお、本実施例では温度計測装置801を給水加熱器22の下流側に設けたが、燃焼器2から排気塔25までの流路において別の場所に設けても良い。
【実施例2】
【0043】
図7〜図9は実施例2について示した図である。図7は実施例1における図1に対応し、図8は図5に、図9は図4にそれぞれ対応するものである。
【0044】
図7において図1と異なる点は、抽気空気103の流路中に設けた増湿装置4が水噴霧器4aに置き換わった点にある。このとき、増湿装置4の下部から水を排出する循環水系統も不要となる。
【0045】
実施例1において、増湿装置4に供給する水流量301は、増湿装置4の内部で蒸発し増湿空気104に添加される水分量よりも多くなる。また、増湿装置4における蒸発量は、空気および水の温度・圧力と増湿装置4の持つ蒸発面積で決まる。そのため、増湿空気104の湿分量を細かく調整することは困難である。
【0046】
これに対し、本実施例における水噴霧器4aでは、供給した水分が全量蒸発し空気に添加されるため、水量301をコントロールすることで増湿空気104の湿分量を細かく調整することが可能となる。そのため、図8に示すごとく、発電量の増減に対して水分添加量を大きく増減させる制御が可能となる。従って、実施例1の場合に比べて、負荷追従運転期間Cを低発電量側に移行させることが可能となり、高湿分空気利用ガスタービンの運用負荷範囲を広げることができる。この場合、発電量の増減を水分添加量の増減で追従させることにより、燃焼ガス温度の増減が小さくなり、NOx発生量を低レベルに保つことが可能となると共に、燃焼安定性も向上する。
【0047】
図9は、本実施例による高湿分空気利用ガスタービンの負荷および水分添加制御の一例を示したものであり、制御装置800(図1)の内部系統に相当する。
【0048】
予め定められた発電量増加率に従うように与えられた負荷指令MWDと実際の発電量
MWの差を減算器401で求め、制御器402で燃料流量指令値を演算する。燃料流量/水量設定器408でF1〜F4の各燃料流量およびそれに対応する弁開度が求められ、流量制御弁211〜214が制御されるとともに、給水量301およびそれに対応する制御弁311の開度も同時に求められる。そして、水分量の増加/減少に対して燃焼温度をほぼ一定にすることができ、本発明の目的が達せられる。
【0049】
また、給水加熱器22からの排気ガスの温度設定値と実際の温度の差を減算器405で演算し、制御器406によってシステム効率に対し最適な制御弁311の開度を求める。選択器409では、制御器406から得られた弁開度と燃料/水量設定器408から得られた弁開度とを比較することで、燃焼性能とシステム効率の優先度を選択し、最適な給水量とすることができる。
【0050】
以上、特許文献2に示されているような、燃料と空気を多数の小径の同軸噴流として燃焼室に噴出する方法を用いた燃焼器を例に、本発明の実施の形態について説明した。高湿分空気利用ガスタービンのように、再生熱交換器により燃焼用空気が高温化されている場合、燃料の自発火を防止しつつ、火炎温度を適度に制御して低NOx化を図る必要がある。燃料と空気を多数の小径の同軸噴流とする燃焼器では、空気孔への逆火が起こりにくいため、本発明に好適である。また、燃焼器頭部において、燃焼用空気に対して燃料が希薄に供給される燃焼器の場合、高湿分空気利用ガスタービンの水分添加開始前後で生じる条件変化により、燃焼器のNOx生成および火炎安定性に与える影響が大きい。そのため、本発明による低NOx安定燃焼効果がより顕著となる。
【0051】
しかし、例えば特開平7−280267号公報に開示されているように、中央部に拡散燃焼用ノズル、その周囲に複数の予混合燃焼ノズルを備えた燃焼器や、特開2003−
120934号公報に開示されているように、中央に拡散パイロットバーナ、その周囲に複数の予混合管を備えた燃焼器といった低NOx燃焼器を高湿分空気利用ガスタービンに適用する場合も、水分添加開始前後で、燃焼器のNOx生成および火炎安定性に対して大きな条件変化が生ずる。そのため、前述の低NOx燃焼器に対しても本発明の適用が有効である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
高効率ガスタービンとして発電用として利用できるほか、熱と電力を併給可能なコジェネレーションシステム、あるいはポンプ・圧縮機等の機械駆動用エンジンとしても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1に係る高湿分空気利用ガスタービンの構成を表すシステムフロー図である。
【図2】実施例1に係る低NOx燃焼器燃料ノズルの構成を示す図である。
【図3】実施例1に係る低NOx燃焼器燃料ノズルの詳細を示す図である。
【図4】実施例1に係る高湿分空気利用ガスタービンの制御方法の一例を表す図である。
【図5】実施例1に係る高湿分空気利用ガスタービンシステムの運転方法の一例を表す図である。
【図6】比較例の問題点を説明するための運転方法を表す図である。
【図7】実施例2に係る高湿分空気利用ガスタービンの構成を表すシステムフロー図である。
【図8】実施例2に係る高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の一例を表す図である。
【図9】実施例2に係る高湿分空気利用ガスタービンの制御方法の一例を表す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
4 増湿装置
5 再生熱交換器
6 本体ケーシング
7 燃焼器ケーシング
8 燃焼器カバー
9 燃料ノズル
10 燃焼器ライナ
11 フロースリーブ
12 尾筒内筒
13 尾筒外筒
14 抽気流路
20 発電機
21 シャフト
22 給水加熱器
23 排ガス再過熱器
24 水回収装置
25 排気塔
26 水処理装置
27 吸気噴霧装置
30 燃料ヘッダ
31 燃料ノズル
32 空気孔
33 空気孔プレート
34 サポート
100 ガスタービン吸い込み空気(大気圧)
101 水噴霧後の空気(大気圧)
102 高圧空気
103 抽気空気
104 増湿空気
105 高温空気
106 燃焼ガス
107 排気ガス
108 給水加熱器出口排ガス
211,212,213,214 流量制御弁
311 制御弁
401,405 減算器
402,406 制御器
403 燃料比率設定器
404 比較器
407 変化率制限器
408 燃料流量/水量設定器
409 選択器
1000 高湿分空気利用ガスタービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機からの高圧空気中に湿分を添加して増湿空気を生成する増湿装置と、該増湿空気と燃料が混合燃焼して燃焼ガスを生成する燃焼器と、該燃焼ガスによって駆動するタービンと、該タービンからの排気ガスと前記増湿空気とを熱交換する再生熱交換器と、該再生熱交換器からの排気ガスと水とを熱交換する給水加熱器を備え、該給水加熱器で加熱された水を前記増湿装置に供給する系統を備えた高湿分空気利用ガスタービンであって、
前記給水加熱器から排出される排出ガスの温度を計測する温度計測装置と、
該温度計測装置からの温度信号に基づき前記増湿装置に供給する湿分量を調整する制御装置を備えたことを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン。
【請求項2】
空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機からの空気中に湿分を添加して増湿空気を生成する増湿装置と、該増湿空気と燃料が混合燃焼して燃焼ガスを生成する燃焼器と、該燃焼ガスによって駆動するタービンと、該タービンからの排気ガスで前記増湿空気を加熱する再生熱交換器と、該再生熱交換器からの排気ガスで水を加熱する給水加熱器を備え、該給水加熱器で加熱された水を前記増湿装置に供給する高湿分空気利用ガスタービンであって、
前記燃焼器は、燃料ノズルから噴出する燃料噴流とその周囲に環状の空気流から構成される同軸噴流が噴出する空気孔を多数備え、前記多数の同軸噴流を複数の群ごとにまとめて燃料流量を制御し、
前記給水加熱器より下流側の排出ガスの温度を計測する温度計測装置と、
該温度計測装置からの温度信号に基づき前記増湿装置に供給する湿分量を調整する制御装置を備えたことを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の高湿分空気利用ガスタービンにおいて、
前記増湿装置への給水開始時には、予め設定した負荷増加率に対し、前記燃焼器内部の燃焼ガス温度がほぼ一定となるように、前記給水加熱器から前記増湿装置へ供給する水量を調整することを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載の高湿分空気利用ガスタービンにおいて、
予め設定した負荷増加率に対し、前記燃焼器内部の燃焼ガス温度がほぼ一定となるように、前記給水加熱器から前記増湿装置へ供給する水量の増加率を予め算出し、該増加率を調整することを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン。
【請求項5】
空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機からの高圧空気中に湿分を添加して増湿空気を生成する増湿装置と、該増湿空気と燃料が混合燃焼して燃焼ガスを生成する燃焼器と、該燃焼ガスによって駆動するタービンと、該タービンからの排気ガスと前記増湿空気とを熱交換する再生熱交換器と、該再生熱交換器からの排気ガスと水とを熱交換する給水加熱器を備え、該給水加熱器で加熱された水を前記増湿装置に供給する系統を備えた高湿分空気利用ガスタービンの制御装置であって、
前記高湿分空気利用ガスタービンへの負荷指令と発電量に基づき燃料流量を算出する第1の制御器と、
前記給水加熱器より下流側の排気ガスの温度と前記燃料流量に基づき、前記増湿装置に供給する湿分量を調整する第2の制御器を備えたことを特徴とする高湿分空気利用ガスタービンの制御装置。
【請求項6】
空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機からの高圧空気中に湿分を添加して増湿空気を生成する増湿装置と、該増湿空気と燃料が混合燃焼して燃焼ガスを生成する燃焼器と、該燃焼ガスによって駆動するタービンと、該タービンからの排気ガスと前記増湿空気とを熱交換する再生熱交換器と、該再生熱交換器からの排気ガスと水とを熱交換する給水加熱器を備え、該給水加熱器で加熱された水を前記増湿装置に供給する系統を備えた高湿分空気利用ガスタービンの制御方法であって、
前記高湿分空気利用ガスタービンへの負荷指令と発電量に基づき燃料流量を算出する第1の工程と、
前記燃料流量に基づき前記増湿装置に湿分を供給する時期を判断する第2の工程と、
前記給水加熱器より下流側の排気ガスの温度と前記燃料流量に基づき、前記増湿装置に供給する湿分量を調整する第3の工程を備えたことを特徴とする高湿分空気利用ガスタービンの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−231963(P2008−231963A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69745(P2007−69745)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)