説明

高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材及びその製造方法

【課題】水中施工においても、周辺水域の濁り及び硬化不良の発生を防止できると共に、短期間で固結可能な高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】高炉水砕スラグ2と高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉3とを混合した後、2〜60日間養生し、高炉水砕スラグ2の表面に高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉3を固着させるか、又は、高炉水砕スラグ2と製鋼スラグ粉3とを混合した後、2〜60日間養生して、高炉水砕スラグ2の表面に製鋼スラグ粉3を固着させて、水中施工用裏込め・裏埋め材1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岸壁等のように水中施工を伴う工事で使用される水中施工用裏込め・裏埋め材及びその製造方法に関し、特に、高炉水砕スラグを主成分とし、施工後に周囲に存在する水と反応して硬化する、高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、岸壁用裏込め材として使用される地盤材料に関しては、液状化防止のために、浚渫砂及び天然砂等の砂にセメントを混合したものが使用されている。この裏込め材は、水中に投入された後、周囲に存在する水によってセメント水和物が生成し、このセメント水和物を介して砂の粒子同士が固結して全体が硬化する。また、近年、砂の代わりに、鉄鋼スラグを使用した土木材料が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。一般に、鉄鋼スラグを使用した土木材料は、砂とセメントとを混合した土木材料に比べて、硬化が遅いという問題点がある。そこで、特許文献1に記載の埋戻・裏込材では、5mm以下に粉砕した転炉スラグ砕砂と高炉水砕スラグとを混合使用することにより、石灰分が多い転炉スラグをアルカリ刺激剤として作用させて、高炉水砕スラグの潜在水硬性を発現させ、全体の硬化を促進している。
【0003】
また、特許文献2には、サンドコンパクション材料及び路盤材等に使用される土木材料として、0.075mm以下の微粒分を5質量%以上含む粉状製鋼スラグと、粒状高炉水砕スラグ、高炉水砕スラグ粉、各種セメント又はフライアッシュ等からなる結合材とを混合し、0.02N/mm以上の圧力で加圧して製造された土木材料が記載されている。図5は特許文献2に記載の従来の土木材料における製鋼スラグと結合材との反応を示す図である。図5に示すように、特許文献2に記載の土木材料では、0.075mm以下の微粒分(微粒製鋼スラグ)101を含む粉状製鋼スラグと結合材102とを混合したものを、山積みして圧密した後、養生させることによりケイ酸カルシウム水和物(CSHゲル)及びカルシウムアルミネート水和物(CAHゲル)等の水和ゲル103を生成させて粗粒化している。
【0004】
更に、特許文献3に記載の造粒物では、海洋埋め立て材への適用を考慮し、0.075mm以下の微粒分を5質量%以上含む粉状製鋼スラグ、高炉水砕スラグ粉及び水、又はこれらにフライアッシュ等を添加したものをミキサーにより造粒し、施工時の海水の白濁防止を図っている。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−49655号公報
【特許文献2】特開2005−154175号公報
【特許文献3】特開2005−314155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の技術には、以下に示す問題点がある。即ち、浚渫砂及び天然砂等の砂を使用した従来の裏込め・裏埋め材は、水中に投入した際に砂とセメントが分離してしまう。そこで、従来の裏込め・裏埋め材では、水中施工に適用する場合は、水中での材料分離を防止するために、施工前に界面活性剤等の分離防止剤を添加しているが、分離防止剤は他の材料に比べて高価であり、製造コストが増加するという問題点がある。また、このような従来の裏込め・裏埋め材を水中施工に適用すると、水中投入時に周囲の水域のpHが上昇するという問題点もある。
【0007】
また、特許文献1に記載の埋戻・裏込材は、陸上での使用しか想定しておらず、水中施工に適用すると硬化途中で材料が分離して、周辺水域に濁りが発生すると共に、硬化不良が生じるという問題点がある。同様に特許文献2に記載の土木材料も陸上での使用を想定しているため、水中施工において、硬化不良及び周辺水域でのにごりの発生が生じる虞がある。一方、特許文献3に記載の土木材料は、水中施工を想定して海水の白濁防止を図っているが、この土木材料ではセメントに含まれるCa(OH)に起因する白濁しか考慮されておらず、材料分離については何ら検討がなされていない。また、特許文献2及び3に記載の土木材料は、製鋼スラグを主成分としているため、固結品質のばらつきが非常に大きく、固結制御が困難な製鋼スラグの影響が支配的になるため、目的とする固結強度が得られない虞がある。
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、水中施工においても、周辺水域の濁り及び硬化不良の発生を防止できると共に、短期間で固結可能な高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材は、水中施工を伴う工事で使用される水中施工用裏込め・裏埋め材であって、高炉水砕スラグと高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉とを混合した後、養生させることにより、前記高炉水砕スラグの表面に前記高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉を固着させたことを特徴とする。
【0010】
また、この高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材では、前記高炉水砕スラグの含水率が5〜20%であってもよい。
【0011】
更に、前記製鋼スラグ粉は、最大粒径が5mm以下であり、かつ粒径が2.5mm以下の粉末を75質量%以上含有していてもよい。
【0012】
更にまた、前記高炉水砕スラグの質量に対して、前記高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉を2.5〜15%含有することができる。
【0013】
本発明に係る高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材の製造方法は、水中施工を伴う工事で使用される水中施工用裏込め・裏埋め材の製造方法であって、高炉水砕スラグと高炉スラグ微粉末又は粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉とを混合した後、2〜60日間養生し、前記高炉水砕スラグの表面に前記高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉を固着させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る他の高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材の製造方法は、水中施工を伴う工事で使用される水中施工用裏込め・裏埋め材の製造方法であって、高炉水砕スラグと製鋼スラグ粉とを混合した後、2〜60日間養生し、前記高炉水砕スラグの表面に製鋼スラグ粉を固着させることを特徴とする。
【0015】
これらの高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材の製造方法において、前記高炉水砕スラグは、含水率が5〜20%であってもよい。
【0016】
また、前記製鋼スラグ粉は、最大粒径が5mm以下であり、かつ粒径が2.5mm以下の粉末を60質量%以上含有していてもよい。
【0017】
更に、前記高炉水砕スラグの質量に対して、前記高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉を2.5〜15%混合することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高炉水砕スラグの表面に、アルカリ刺激材として作用する高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉を固着しているため、水中投入時の材料分離を抑制することができるため、水中施工においても周辺水域の濁り及び硬化不良の発生を防止でき、更には、施工後に均質な混合状態が得られるため、固結が促進されて短期間での固結が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の裏込め・裏埋め材を模式的に示す図である。図1に示すように、本発明の高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材(以下、単に裏込め・裏埋め材という)1は、岸壁等のように水中施工を伴う工事において裏込め材又は裏埋め材として使用される材料であり、高炉水砕スラグ2と高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉3とを混合した後、養生させることにより、高炉水砕スラグ2の表面に高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉3を固着させたものである。
【0020】
本発明で使用する高炉水砕スラグ2は、高炉スラグの一種であり、高炉から取り出された溶融スラグを、加圧水を噴射する等して急激に冷却することで得られるガラス質(非結晶)の粒状スラグである。また、この高炉水砕スラグ2の含水率は、5〜20質量%であることが好ましい。高炉スラグ2の含水率が5質量%未満の場合、施工後に粒子同士が固着するために必要な反応が生じにくくなる。一方、高炉水砕スラグ2の含水率が20質量%を超えると、高炉水砕スラグ2がそれ以上水分を保水できなくなり、刺激材である高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉3の一部が水分と共に流出してしまうことがある。なお、高炉水砕スラグ2の含水率は、JISA1203に基づき乾燥前の質量をm、110℃の炉の中で18〜24時間乾燥した後の質量をmとして、下記数式(1)により求めることができる。
【0021】
【数1】

【0022】
この高炉水砕スラグ2の表面に固着させる高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉3としては、以下に示すようなものを使用することができ、いずれも高炉水砕スラグ2の固結促進のためのアルカリ刺激材として作用する。高炉スラグ微粉末は、高炉水砕スラグを粉砕したものであり、JISA6206に規定されているコンクリート用高炉スラグ微粉末等が挙げられる。また、粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉としては、例えば、高炉水砕スラグをコンクリート用骨材として処理するための水洗又は研磨工程で生成する微粉末等が挙げられる。なお、高炉スラグ微粉末及び粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉は、夫々単独で使用することができるが、これらを混合して使用してもよい。
【0023】
更に、製鋼スラグ粉は、鋼を製造する過程において発生する鉄鋼副産物であり、転炉スラグ、予備処理スラグ、脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、電気炉還元スラグ、電気炉酸化スラグ、二次精錬スラグ、造塊スラグ等がある。本発明の裏込め・裏埋め材において、高炉水砕スラグ2の表面に固着させる製鋼スラグ粉は、最大粒径が5mm以下であり、かつ粒径が2.5mm以下の粉末を60質量%以上含有しているものであることが望ましい。粒径が5mmより大きい製鋼スラグ粉は、高炉水砕スラグ2から分離しやすく、更に、高炉水砕スラグ2よりも沈降速度が速いため、施工時に高炉水砕スラグ2から分離すると下層に堆積してしまうためである。なお、粒径が1mm以下の製鋼スラグ粉は、高炉水砕スラグと沈降速度が同等であるため、仮に高炉水砕スラグ2から分離したとしても、高炉水砕スラグ2と共に堆積する。よって、製鋼スラグ粉の粒径は1mm以下であることがより好ましい。
【0024】
また、粒径が2.5mmを超える製鋼スラグ粉は、高炉水砕スラグ2よりも沈降速度が速いため、その含有量が多いと、施工時に高炉水砕スラグ2から分離した製鋼スラグ粉が下層に堆積し、製鋼スラグ粉のみの層が形成されてしまう。しかしながら、粒径が2.5mmを超えるものの含有量が40%未満であれば、裏込め層・裏埋め層の下部に製鋼スラグ粉層が形成されていても、地震時の液状化による最大沈下ひずみを5%とした場合に、深さ10mの裏込め層の沈下量を5cm以下に抑制することができる。よって、高炉水砕スラグ2の表面に固着させる製鋼スラグ粉は、粒径が2.5mm以下のものを60質量%以上含有していることが望ましい。
【0025】
更に、本発明の裏込め・裏埋め材1においては、高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉3の質量が、高炉水砕スラグ2の質量に対して、2.5〜15%であることが好ましい。高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉3の量が高炉水砕スラグ2の2.5質量%未満の場合、高炉水砕スラグ2の固結促進効果が十分得られないことがあり、また15%程度で高炉水砕スラグの表面に固着させることができる。
【0026】
次に、本発明の裏込め・裏埋め材を製造する方法について説明する。図2(a)〜(c)は本発明の裏込め・裏埋め材の製造方法をその工程順に示す模式図である。本発明の裏込め・裏埋め材の製造方法においては、先ず、図2(a)に示すように、高炉水砕スラグ2と高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉3とを混合する。その後、図2(b)に示すように、高炉水砕スラグ2と高炉スラグ微粉末又は粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉とを混合した場合は2〜60日間養生し、高炉水砕スラグ2と製鋼スラグ粉とを混合した場合は2〜60日間養生する。これにより、高炉水砕スラグ2の表面に高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉3を固着させる。このとき、養生期間が上記範囲より短い場合、高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉3の高炉水砕スラグ2への固着が十分でなく、施工時にこれらが分離するため、施工後に均質な混合状態が得られず、固結促進効果が得られない。また、水中投入時に、周辺水域に濁りが発生する。また、養生期間が上記範囲より長くても高炉水砕フラグ粉又は製鋼スラグ紛3の高炉水砕フラグへの固着が格別向上することが期待できない。
【0027】
そして、本発明の裏込め・裏埋め材は、上記期間養生し、高炉水砕スラグ2の表面に高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉3は固着しているが、高炉水砕スラグ2同士は固結していない状態で使用される。具体的には、図2(c)に示すように、例えば、海送等により施工場所に輸送され、水中に投入される。このとき、本発明の裏込め・裏埋め材1においては、高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉3は、高炉水砕スラグ2の表面に固着しているため、水中投入時に材料分離に伴う周辺水域の濁りは生じない。
【0028】
次に、本発明の裏込め・裏埋め材の固結のメカニズムについて説明する。図3(a)及び(b)は本発明の裏込め・裏埋め材の固結メカニズムをその工程順に示す模式図である。本発明の裏込め・裏埋め材1は、水中に投入されると、図3(a)に示すように、高炉水砕スラグ2からイオンが溶出し、更にこのイオンが周囲の水(間隙水)5と反応して、高炉水砕スラグ2の表面に溶解度が小さい水和物(C−S−H,C−A−H等のセメント水和物)4が生成する。これにより、図3(b)に示すように、高炉水砕スラグ2が接触している部分において、水和物4を介して高炉水砕スラグ2同士が結合し、更には全体が固結する。なお、高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉3は、高炉水砕スラグ2の表面への水和物4生成を促進する。
【0029】
上述の如く、本発明の裏込め・裏埋め材は、主成分に自硬性がある高炉水砕スラグを使用すると共に、その表面に、アルカリ刺激材として作用する高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉を固着しているため、固結を促進することができると共に、水中投入時の材料分離を抑制することができる。その結果、水中施工においても周辺水域に濁りは発生せず、硬化不良の発生も防止できる。更に、施工後に均質な混合状態が得られるため、固結促進効果が高く、短期間での効果が可能となる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例及び本発明の範囲から外れる比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、高炉水砕スラグに高炉スラグ微粉末を5質量%混合したもの(試料A)と、高炉水砕スラグに製鋼スラグ粉(最大粒径:5mm、粒径2.5mm以下のものの含有量68質量%)を5質量%混合したもの(試料B)とについて、養生期間と濁り発生との関係を調べた。具体的には、養生期間が異なる複数の裏込め・裏埋め材について沈降試験を行い、夫々のSS(浮遊物質量)を測定した。沈降試験は、1リットルの水道水に乾燥した試料を落下させ、30秒後の濁り状況を目視により確認すると共に、落下直後のものについて上澄み液のSSを測定した。そして、海洋汚染防止法の余水吐きから流出する海水の水質についての基準を定める省令(昭和52年8月26日の総理府令第38号)に基づき、SSが60mg/リットルのものを合格とした。
【0031】
図4は横軸に養生期間をとり、縦軸に投入30秒後のSSをとって、養生期間と沈降試験によるSSの変化を示すグラフ図である。図4に示すように、高炉水砕スラグに製鋼スラグ粉を混合した試料Aでは、2日間以上養生したものはいずれもSSは60mg/以下となっており、濁りもほとんど見られなかった。また、高炉水砕スラグに高炉スラグ微粉末を混合した試料Aは、2日間以上養生したものはいずれもSSは60mg/以下となり、濁りもほとんど見られなかった。以上の結果から、本発明の範囲で作製した裏込め・裏埋め材は、水中投入時の材料分離がなく、施工時に周辺水域に濁を発生させないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の裏込め・裏埋め材を模式的に示す図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明の裏込め・裏埋め材の製造方法をその工程順に示す模式図である。
【図3】(a)及び(b)は本発明の裏込め・裏埋め材の固結メカニズムをその工程順に示す模式図である。
【図4】横軸に養生期間をとり、縦軸にSSをとって、養生期間と沈降試験によるSSの変化を示すグラフ図である。
【図5】特許文献2に記載の従来の土木材料における製鋼スラグと結合材との反応を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 裏込め・裏埋め材
2 高炉水砕スラグ
3 高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉
4 水和物
5 間隙水
101 微粒製鋼スラグ
102 結合材
103 水和ゲル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中施工を伴う工事で使用される水中施工用裏込め・裏埋め材であって、
高炉水砕スラグと高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉とを混合した後、養生させることにより、前記高炉水砕スラグの表面に前記高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉を固着させたことを特徴とする高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材。
【請求項2】
前記高炉水砕スラグは、含水率が5〜20%であることを特徴とする請求項1に記載の高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材。
【請求項3】
前記製鋼スラグ粉は、最大粒径が5mm以下であり、かつ粒径が2.5mm以下の粉末を60質量%以上含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材。
【請求項4】
前記高炉水砕スラグの質量に対して、前記高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉を2.5〜15%含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材。
【請求項5】
水中施工を伴う工事で使用される水中施工用裏込め・裏埋め材の製造方法であって、
高炉水砕スラグと高炉スラグ微粉末又は粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉とを混合した後、2〜60日間養生し、前記高炉水砕スラグの表面に前記高炉スラグ微粉末又は粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉を固着させることを特徴とする高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材の製造方法。
【請求項6】
水中施工を伴う工事で使用される水中施工用裏込め・裏埋め材の製造方法であって、
高炉水砕スラグと製鋼スラグ粉とを混合した後、2〜60日間養生し、前記高炉水砕スラグの表面に製鋼スラグ粉を固着させることを特徴とする高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材の製造方法。
【請求項7】
前記高炉水砕スラグは、含水率が5〜20%であることを特徴とする請求項5又は6に記載の高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材の製造方法。
【請求項8】
製鋼スラグ粉は、最大粒径が5mm以下であり、かつ粒径が2.5mm以下の粉末を60質量%以上含有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材。
【請求項9】
前記高炉水砕スラグの質量に対して、前記高炉スラグ微粉末若しくは粒径が0.25mm以下の高炉水砕スラグ粉又は製鋼スラグ粉を2.5〜15%混合することを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の高炉水砕スラグを使用した水中施工用裏込め・裏埋め材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−40661(P2009−40661A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209823(P2007−209823)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(501241911)独立行政法人港湾空港技術研究所 (84)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【Fターム(参考)】