説明

高熱伝導性材料による表面への模様付け

本発明は、ホストマトリックス(10)、及び特定の模様(12)でホストマトリックス(10)の表面に添加された高熱伝導性材料(12)を含んでなる高熱伝導性紙を提供する。高熱伝導性材料は、ナノ充填剤、ホストマトリックス上に直接的に施されたダイヤモンド様被覆物、及びナノ充填剤上に施されたダイヤモンド様被覆物の一つ又は複数からなる。具体的な実施態様においては、特定の模様には、格子模様、縁模様、縞模様、中心線模様及びそれらの組合せの一つ又は複数が含まれ、高熱伝導性材料が、ホストマトリックスの表面の15〜55%を被覆する。下層も含めて多重の表面に模様付けを持たせてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、ナノ、メソ及びマイクロサイズのHTC材料による、表面、特に絶縁テープ表面、の模様付け(patterning)に関する。
【0002】
本出願は、2005年4月15日に、スミス(Smith)らによって、出願された米国特許出願第11/106,846号「高熱伝導性材料を有する絶縁紙(Insulation Paper with High Thermal Conductivity Materials)」の一部継続出願である(この出願を参考として引用し本明細書に組み入れる)。
【背景技術】
【0003】
どのような形態の電気製品であれ、その使用には、導体を電気的に絶縁することが必要である。絶え間なく小型化が求められ、全ての電気及び電子システムの簡素化が要望されているので、それに対応する、より良好でコンパクトな絶縁材及び絶縁系が必要とされている。
【0004】
良好な電気絶縁材は、それらの本来的な性質から、良好な断熱材ともなる傾向があるが、これは望ましいことではない。断熱挙動は、特に空冷式の電気装置及び構成部品の場合には、その構成部品、更には、その装置全体の効率及び耐久性を低下させる。最大の電気絶縁性と最小の断熱特性とを有する電気絶縁系を製造することができれば望ましい。
【0005】
電気絶縁技術に影響する因子は多いが、絶縁体のその他の望ましい物理的特性を低下させることなく、伝熱能力を上げることができれば、この分野で得られるメリットは一段と大きい。必要とされているのは、従来からの材料よりも高い熱伝導性を有するが、電気絶縁性及び構造的な完全性を含めたその他の性能因子を損なうことがない、改良された電気絶縁材料である。
【0006】
電気絶縁材料はテープの形態で見られることが多いが、それら自体、種々の層を有している。これらのタイプのテープに共通しているのは、繊維層との界面に接着された紙層であり、これら2つの層は、樹脂で含浸されていることが多い。紙層は、マイカ等の高度に電気絶縁性の材料から、構成されている。マイカテープにおける改良としては、米国特許第6,103,882号明細書に開示されているような触媒化マイカテープが挙げられる。テープにおける使用と無関係であっても或いはそれに関連するにしても、紙の熱伝導性を改良することができれば、電気系に顕著な改良がもたらされるであろう。従来技術には、その他の問題点も存在するが、それらのいくつかについては、本明細書を更に読み進めば明らかになるであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述したことを念頭において、本発明の方法及び装置は、高熱伝導性(HTC)材料を絶縁紙のホストマトリックスの上及び/又は中に挿入することによって、なかんずく、絶縁マイカ紙の熱伝導性を促進する。本発明のHTC材料は、ナノ充填剤や表面被覆物のような、種々のタイプのものであることが可能であって、ナノ充填剤及び表面被覆物の両方とも、それぞれが、種々の下部群を含む。HTC材料は、紙が粗原料若しくは基質の状態にある段階、紙が形成されつつある段階、又は紙が形成された後の段階等の、種々の段階で、紙に添加することが可能である。マイカは、その高い電気抵抗性の故に、特別な種類の絶縁紙の基材となる。
【0008】
絶縁マイカ紙は、単独で又は他の材料と組み合わせて、絶縁テープを形成することができる。他の材料としては、典型的には、ガラス、樹脂含浸剤等の、繊維質バッキングが挙げられる。他の材料を、HTC材料に挿入して、複合HTC材料テープ製品を製造することも可能である。種々の段階で紙にHTC材料を添加する場合、それらは、特定の模様(pattern)で添加することができる。それらの特定の模様により、材料を目標とする位置により近く配置することが可能となり、最終的なテープにおける材料の効果を最大限に発揮させることができる。
【0009】
本発明の、これら及びその他の目的、特徴及び利点は、ホストマトリックス及びホストマトリックスの表面に特定の模様で添加した高熱伝導性材料を含んでなる高熱伝導性紙の、特定の実施態様により得られる。高熱伝導性材料は、ナノ充填剤、ホストマトリックス上に直接的に施されたダイヤモンド様被覆物、及びナノ充填剤上に施されたダイヤモンド様被覆物のうち、少なくとも一つからなる。具体的な実施態様においては、ナノ充填剤は、5より大きいアスペクト比を有している。
【0010】
関連する実施態様においては、ホストマトリックスがマイカであり、そして高熱伝導性材料が高熱伝導性紙の1〜25体積%を占める。高熱伝導性紙は、高熱伝導性電気絶縁テープの中に組み込まれている。特定の模様は、格子模様、縁模様、縞模様、中心線模様及びこれらの組合せのうち、少なくとも一つを含む。
【0011】
その他の関連する実施態様においては、高熱伝導性材料を含む溶液を乾燥させることによって、特定の模様が形成される。高熱伝導性材料が、ホストマトリックスの表面の5〜80%を被覆する。その他の具体的な実施態様においては、高熱伝導性材料がホストマトリックスの表面の15〜55%を被覆し、ホストマトリックスの表面が下層面であり、それによって、その下層面が最終的な紙における内層となる。
【0012】
また別な実施態様においては、本発明は、特定の模様でマイカ紙層に添加された高熱伝導性材料を有するマイカ紙層と、ガラス繊維バッキング層とを含んでなる電気絶縁テープを提供する。マイカ紙層とガラス繊維バッキング層との間には界面が存在し、樹脂は、マイカ紙層とガラス繊維バッキング層とを通して含浸される。高熱伝導性材料は、ナノ充填剤、ホストマトリックス上に直接的に施されたダイヤモンド様被覆物及びナノ充填剤上に施されたダイヤモンド様被覆物のうち、少なくとも一つからなり、高熱伝導性材料がマイカ紙の1〜25体積%を占める。樹脂の含浸によって、テープ中の高熱伝導性材料の分布が向上する。
【0013】
関連する特定の実施態様においては、特定の模様をマイカ紙層の表面に添加する。特定の模様を、マイカ紙層に対する下層として添加してもよい。更に、多重の特定の模様をマイカ紙層に添加してもよい。
【0014】
更にまた別な実施態様においては、本発明は、基材を得る工程、及びその基材の上に高熱伝導性材料を添加する工程を含んでなる、高熱伝導性紙を製造するための方法を提供する。次いで、この基材から紙製品を製造する。高熱伝導性材料には、基材に添加すべきナノ充填剤が含まれ、ナノ充填剤を、これを含む溶媒によって基材の上に添加し、次いで、溶媒を蒸発させて、基材の上に高熱伝導性材料の模様を形成させる。いくつかの実施態様においては、ナノ充填剤がDLCを有している。
【0015】
模様付けを用いる本発明の更にまた別な実施態様においては、本発明は、基材を得る工程、及びその基材の表面上に特定の模様で高熱伝導性材料を加える工程を含んでなる、高熱伝導性紙を製造するための方法を提供する。特定の模様が、表面の5〜80%を占める。次いで、その基材から紙製品を製造するが、ここで高熱伝導性材料は、析出法によって基材の上に分散させた表面被覆物を含む。いくつかの実施態様においては、紙製品を製造することにより、特定の模様の配列が乱される。
【0016】
本発明のその他の実施態様も存在するが、それらは、詳細な説明を更に読めば明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、電気絶縁テープにおいて使用されるような、紙絶縁体において使用される基材の中及び上に高熱伝導性(HTC)材料を組み込む方法を提供する。絶縁テープは、マイカのようなホストマトリックスを含むことが多く、ホストマトリックスを成形して紙とし、次いで、多くの場合、樹脂、促進剤又はその両方で含浸する。含浸の前又は後に、テープにおいて使用される紙を、ガラス、ポリマーフィルム等の、高い引張強度を有するバッキング材に付着させる。絶縁テープのホストマトリックスは、極めて良好な電気絶縁体として機能するが、熱をも遮断するので、これは望ましくない副次的作用である。
【0018】
従って、基材の熱伝導性を向上させることが望まれる。本明細書において、「基材」という用語は、絶縁紙がそれから形成されるホスト材料を指しており、それに対して、「マトリックス」という用語は、基材から製造された、より完全な紙要素を指している。本発明を説明する際に、これら二つの用語が、いくぶん互換的に使用されることもある。誘電正接等の電気的性質や、引張強度、凝集性等の基材の物理的性質を顕著に損なうことなく、熱伝導性の向上が達成されなければならない。例えば、表面被覆物を用いるようないくつかの実施態様においては、物理的性質を改良することさえ可能である。更に、いくつかの実施態様においては、HTC材料を添加することによって、ホストマトリックスの電気抵抗が向上することもあり得る。
【0019】
HTC材料は、絶縁紙製造の種々の工程の一つ又は複数において、基材又はマトリックスに添加することができる。絶縁紙の製造においては、明らかに別個の段階が存在する。本発明の目的のためには、それらを三つの段階に分離することができる。即ち、原料段階、スラリー段階及び紙製品段階である。例えば、マイカ紙は、マイカから始まって、フレークに転換し、次いで、マイカフレークレットとし、次いで、これを液体と組み合わせてスラリーとし、次いで、これから機械によりマイカ紙を製造する。
【0020】
電気絶縁のために典型的に使用されている標準的なマイカ(白雲母、金雲母)に加えて、黒雲母、更には、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、クロライト等の、いくつかのその他のマイカ様アルミノシリケート物質もある。モンモリロナイトは、その構造の中に格子を有していて、その格子に、金属カチオン、有機化合物並びにモノマー及びポリマー等の、HTC材料が容易に挿入されて、高い絶縁耐力の複合体を得ることができる。
【0021】
HTC材料の添加は、製造工程のいずれか又は全部において実施することができる。言うまでもないことであるが、それらの工程のそれぞれには、HTC材料を添加することが可能な多重の副工程が含まれている。種々の工程においてHTC材料を適用するプロセスは、それら種々の工程におけるホストマトリックスの物理的特性の違いに適合しなければならない。例えば、HTC材料をばらばらのマイカフレーク又はマイカフレークレットに添加することと、スラリー又は紙製品の中のマイカに添加することとの間には違いがある。HTC材料は、更に、バッキング布等の、仕上がり絶縁テープの、他の構成部品部分又は層間接着樹脂の中に存在させてもよい。
【0022】
絶縁紙を製造するプロセスでは、熱的、化学的及び機械的処理を個々に適用するか又はこれらの処理の組合せを適用するかにより、パルプを製造し、次いでシートに変形させて紙を作る。HTC材料は、乾燥した形態か又は液体その他の媒体中の形態かのいずれかである原料段階で、添加することができる。HTC材料を、乾燥したマイカフレークレットのような基材に添加し、混合して、例えば、基材の中に均質な分布を形成させる。加熱のような手段を使用して、HTC材料を基材へ移送するための液状媒体を除去してもよい。
【0023】
HTC材料は、スラリー段階でマトリックスの中に組み込まれるが、液状キャリヤーの中に集塊する(agglomerated)か又は集塊していない形態で、懸濁液にそれらを添加する。この段階におけるHTC材料の凝集(aggregation)は一般的には好ましくないが、ある場合には、凝集物の構造の性質に合わせて使用してもよい。界面活性剤、化学的な表面調製又はpH調節を使用して、粒子が凝集しないように、或いはそれらが特定のやり方で凝集するようにしてもよい。HTCが、ある程度自己整列性であったり、外部の力で整列できたりする場合には、混合で完全に分散させる必要がないこともあり得る。
【0024】
スラリー段階においては、充填剤は、粉体として又は液相中の懸濁液として、添加される。液体は、当技術分野で使用される種々のものであってよいが、典型的には水である。水そのものは、脱イオンしても脱塩してもよいし、或いはそのpH値を調節するための添加剤を含んでいてもよい。
【0025】
紙製品の中にHTC材料を添加するために、充填剤を適切な溶媒の中に懸濁液として組み入れてもよい。溶媒の例としては、ヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン等の典型的な有機溶媒が挙げられる。同様にして、HTC材料を、凝集されていない懸濁液として液体の中に均一に分布させることが望ましい。粒子の粒径分布を選択して、ホストマトリックス中におけるボイドのサイズ分布に関する所望の目的を達成させてもよい。HTC材料のサイズ及び形状の分布を用いて、熱伝導性及びその他の物理的特性に影響を与えてもよく、また、そのような構成成分の異なる最密充填挙動又はそれらの異なる凝集挙動もしくは自己集合挙動を利用して、これらを達成することもできる。
【0026】
スラリー又は紙製品の段階においては、溶媒には更に、後ほど含浸される樹脂の反応を加速するために使用可能な、ナフテン酸亜鉛、その他の金属塩又は有機金属化合物等の、1種又は複数の促進剤が含まれていてもよい。HTC材料を、一般的な溶媒中の促進剤と共に、又は促進剤と共に、添加することもできる。
【0027】
本発明においては、マイカ、ポリエステル等のホストマトリックス又は基材の中にHTC材料を挿入する。その他の基材構成部品としては、ガラスフレーク及びカプトン(Kapton)(商標)(このものはポリイミドである)、又はマイラー(Mylar)(商標)(このものはポリエステル例えばポリエチレンテレフタレートである)が挙げられる。HTC材料は、外側及び内側表面のいずれか又は全部に適用することができる。フレークが、第一の工程における通常の基材ではあるが、いくつかのタイプの基材物質として、多層化されていても連続であってもよい複合紙を形成することが可能な、種々の物理的組成(physical formation)、更には物理的組成の組合せを使用してもよい。
【0028】
「HTC材料」という用語は、ホストマトリックスの熱伝導性を上昇させる粒子を指している。一つの実施態様においては、それは、約1〜1,000nmの寸法を有するナノ充填剤である。それは球状であっても平板状であってもよく、或いはウィスカー、棒状又はナノチューブのように高いアスペクト比を有していてもよく、及びそれらに関連する集合形態、例えば、凝集体、フィブリル構造のデンドライト、ロープ状、束状、網状及びその他の形態であってもよい。それに加えて、HTC材料は、更に、ダイヤモンド様被覆物(DLC)のような被覆物、及び種々の金属酸化物、窒化物、炭化物、並びにホストマトリックスに適用することが可能な、化学量論的及び非化学量論的結合の混合物を指す。後に説明するが、HTC材料を組み合わせることも可能であって、例えば、ナノ、メソ又はマイクロ球状物と棒状物との組合せ、又はナノ、メソ又はマイクロ粒子の上のDLC又は金属酸化物被覆物とすることも可能である。ダイヤモンド様被覆物と区別される、種々の形態のダイヤモンドナノ充填剤が存在してもよいということを指摘するのも、また、重要である。多くの紙絶縁体が全て結局は樹脂で含浸されるので、含浸後にHTC材料がマトリックスの熱伝導性を向上させることが、それらの実施態様の目的である。含浸後には、粒子が、ホストマトリックス粒子の表面上の若しくは含浸樹脂との又はこれらの組合せの、熱伝導性ネットワークの形成によって、熱伝導性の上昇を起こす可能性がある。含浸樹脂は、また、それ自体のHTC材料をも有していて、それが、絶縁紙に挿入されたHTC材料と共に、又は独立して、機能してもよい。
【0029】
従って、HTC材料には、更に、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛及びダイヤモンドのような、ナノ、メソ及びマイクロ無機HTC−材料、更には高い熱伝導性を与えるその他のものが含まれる。これらの材料は、種々の結晶学的及び形態学的な形状を有していてもよく、また、直接的に又はキャリヤー液体として作用する溶媒を介して、ホストマトリックスと共に加工することができる。HTC材料が、例えば紙製品のような段階でマトリックスに添加される場合には、溶媒が好ましい送達系となりうる。
【0030】
HTC材料は、一つの実施態様においてはデンドリマーであり、また別な実施態様においては、3〜100又はそれ以上、より好ましくは10〜50の範囲の、アスペクト比(平均横寸法と平均縦寸法との比率)を有する、高アスペクト比の粒子を始めとする、所定のサイズと形状とを有するナノ又はマイクロ無機充填剤である。
【0031】
一つの実施態様においては、所望の形状及び粒径分布、並びに選択された表面特性及びバルクフィラー特性を有する、ナノ、メソ及びマイクロ無機充填剤の表面被覆物は、相互に補完的である。このことが、ホストマトリックスのより良好な浸透(percolation)を可能とし、必要なバルク特性を維持しながら、独立した相互関連性が独立して制御される。
【0032】
形状に関しては、本発明では、ホストマトリックスの中への浸透を促進させるために、自然に棒状物及び平板状物となる傾向を有する形状を使用するが、棒状物が最も好ましい実施態様であり、それには、天然に産出されるものに加えて合成的に製造された物質も含まれる。棒状物とは、平均アスペクト比が約5以上、好ましい実施態様では10以上、より好ましい実施態様では100以下、の粒子と定義される。一つの実施態様においては、棒状物の軸の長さは、およそ10nm〜100ミクロンの範囲である。溶媒を使用して仕上げられたホストマトリックスに添加する場合には、より小さな棒状物の方がホストマトリックスにより良好に浸透するであろう。
【0033】
多くのマイクロ粒子は、球状、楕円体状及び円盤状の形態となるが、それらのものは、ある種の条件下では均等に分布する能力が低く、そのために凝集したフィラメント状構造を取りやすく、そのことが、浸透が起きる濃度を低下させる。浸透を向上させることによって、基材の熱的性質を向上させたり、或いはそれとは別に、基材に添加すべきHTC材料の量を減少させたりすることができる。更に、浸透を促進させることによって、避けるべき集塊が起きるのではなく、むしろ、基材の内部におけるHTC材料のより均一な分布が得られることとなり、それによって、望ましくない界面、不完全な粒子の濡れ及びマイクロボイドの形成等を有する可能性がより低い、より均質の製品が得られる。同様にして、凝集したフィラメント状又はデンドリマー状構造は、より高いアスペクト比粒子から形成された球状の(密度の高い)凝集体又は集塊よりも、むしろ、高い熱伝導性を与える。
【0034】
一つの実施態様においては、デンドリマーは、分離した有機−デンドリマー複合体を含んでなるが、そこでは、有機−無機界面は、デンドリマーコア−シェル構造とは分離していない。デンドリマーは、中心のコアの上に形成された、一種の三次元、ナノスケールのコア−シェル構造である。コアは、有機材料のものでも無機材料のものでもよい。中心のコアの上に形成させることによって、同心的なシェルを順次加えていくことにより、デンドリマーが形成される。シェルは、分岐された分子群からなり、それぞれの分岐されたシェルが世代と呼ばれる。典型的には、使用される世代の数は1〜10であり、より外側のシェルの中の分子群の数は、世代が進むにつれて、指数的に増加する。分子群の組成は精密に合成することが可能であって、外側の群は、反応性官能基であってよい。デンドリマーは、ホストマトリックスとも、更には相互の間でも、結合することができる。従って、それらはHTC材料としてホストに添加してもよい。
【0035】
一般的には、デンドリマーが大きい程、フォノン輸送要素として機能する能力も高くなる。しかしながら、それが材料に浸透する能力及びその潜在浸透能力は、そのサイズが大きくなると低下する可能性があり、そのため、構造と要求される性能とのバランスを得るための最適なサイズが探索される。他のHTC材料と同様に、デンドリマーに溶媒を添加して、マイカやガラステープ等の基材への、それらの浸透を助けることができる。多くの実施態様においては、デンドリマーは、種々の異なった分子群を有する種々の世代を有するものが使用されるであろう。
【0036】
市販されている有機デンドリマーポリマーとしては、ポリアミド−アミンデンドリマー(PAMAM)、ポリプロピレン−イミンデンドリマー(PPI)、PAMAMの内部構造と有機−ケイ素の外部構造とを有するデンドリマーであるPAMAM−OS等が挙げられる。前の二つは、アルドリッチ ケミカル(Aldrich Chemical)(商標)から、最後の一つはダウ−コーニング(Dow−Corning)(商標)から入手可能である。
【0037】
同様の要求が、相互に又は基材と反応させることが可能な無機−有機デンドリマーについても存在する。この場合、デンドリマーの表面には、先に特定されたものと同様の反応性基を含み、これらは、デンドリマー−デンドリマー、デンドリマー−有機、デンドリマー−ハイブリッド、及びデンドリマー−HTCマトリックスの反応のいずれかを起こさせることが可能となるであろう。このケースにおいては、デンドリマーは、無機コアと有機シェルとを有するか、又はその逆であって、関心のある有機若しくは無機反応性基又は配位子のいずれかを含む。従って、無機シェルを有する有機コアを有していることもまた可能であって、更に、一般的なゾル−ゲル化学反応に含まれるものと類似の無機反応に関与することが可能な、ヒドロキシル、シラノール、ビニル−シラン、エポキシ−シラン及びその他の基等の反応性基が含まれる。
【0038】
分子群は、分子群相互間又は基材との反応性によって選択することができる。しかしながら、他の実施態様において、デンドリマーのコア構造は、熱伝導性を向上させる能力によって選択されるが、その例としては、以下において説明する金属酸化物が挙げられる。
【0039】
また別な実施態様においては、本発明は、有機−無機複合体に基づく新規な電気絶縁材料を提供する。熱伝導性は、誘電性(誘電率及び誘電損失)等の他の絶縁特性、導電性、絶縁耐力及び電圧耐久性、熱安定性、引張モジュラス、曲げモジュラス、衝撃強度並びに熱耐久性、更にはその他の因子、例えば、粘弾性及び熱膨張率、並びに総括絶縁性に悪影響を与えることなく、最適化される。有機相及び無機相は、特性と性能との適切なバランスが達成されるように、構築され、選択される。
【0040】
マイクロ及びナノHTC粒子は、自己凝集して、棒状物及び平板状物といった所望の形状になれるような能力を基準にして選択すればよい。粒子は、本来的な自己集合能力から選択すればよいが、そのプロセスは、電場、磁場、音波、超音波、pH調節、界面活性剤の使用及びその他の方法等の外力によって増強して、粒子の電荷分布を始めとする、粒子表面電荷状態に変化を与えてもよい。一つの具体的な実施態様においては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド等の、表面被覆物の例示となる粒子を自己集合させて所望の形状とする。この方法においては、所望の棒状の形状物は、最初に高熱伝導性材料から作るか、又はホストマトリックスの中への組み込みの際に集合させることができる。
【0041】
多くの実施態様においては、同一の用途においても、HTC−材料のサイズと形状とが変えられる。同一の製品の中で、広範なサイズと形状とが使用される。各種の長短可変なアスペクト比のHTC−材料を使用することにより、ホストマトリックスの熱伝導性を向上させるとともに、物理的特性及び性能が向上される可能性がある。しかしながら、観察されるべき一つの側面は、設計上そのようにしたのでなければ、粒子の長さが、基材/絶縁体の層の間で橋かけが起きるほど長くてはならないということである。更に、種々の形状と長さとは、より均質な体積充填と充填密度とを与え、その結果、より均質なマトリックスが生じるので、HTC−材料の浸透安定性が改良されるであろう。サイズ及び形状を混合させた場合、一つの実施態様においては、より長い粒子がより棒状の形状であるのに対して、より小さな粒子は、より球状、平板状、又は円板状、更には直方体状である。例えば、HTC材料を含むマトリックスは、体積で、低くて約0.1%から高くて65%、より好ましくは約1から始めて25体積%までの範囲のHTC材料を含むことができる。
【0042】
関連する実施態様においては、HTC材料が定義されたサイズ及び形状の分布を有していてもよい。いずれの場合においても、高い熱伝導性を有する構造的に安定な分離した二相複合体を達成するための体積充填の有無に拘らず、高熱伝導性を与えるバルク結合(bulk connecting)(即ち、いわゆる浸透)構造が達成されるように、充填剤粒子の濃度及び相対濃度を選択する。また、別な関連する実施態様においては、HTC材料を配向させることによって熱伝導性が向上する。更にまた別な実施態様においては、HTC材料を表面被覆することによって、フォノンの輸送が促進される。これらの実施態様は、他の実施態様から独立して実施してもよいし、或いは関連づけられてもよい。例えば、デンドリマーを、熱硬化性、熱可塑性材料等の他のタイプの高度構造化材料と組み合わせる。これらは、ホストマトリックス全体に均一に分散され、HTC材料がフォノンの散乱を抑制し、フォノンのためのマイクロスケールの橋かけを与えて、HTC材料の間での良好な熱伝導性界面が形成されるようにする。高度構造化材料が整列され、それによって、熱伝導性が単一方向に増加し、局部的に又は全体として異方性の電気絶縁材料が得られる。また別な実施態様においては、HTCは、高熱伝導性を有する金属酸化物、炭化物又は窒化物及び混合系で、熱伝導性が低い充填剤を表面被覆することによって達成されるが、これらの高熱伝導性物質は、所定の内部特性を有する充填剤に物理的又は化学的に付着させられ、そのような付着は、化学的蒸着及び物理的蒸着のようなプロセスによるか、更にはプラズマ処理によって達成される。
【0043】
表面官能基の添加には、ホストマトリックスとの化学反応に利用できる、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン又はビニルの各基を使用することができる。これらの官能基は、無機充填剤の表面の上に元々存在していてもよいし、或いは、湿式化学法、プラズマ重合法を始めとする非平衡プラズマ蒸着法、化学的蒸着法及び物理的蒸着法、スパッターイオンプレーティング法、並びに電子及びイオンビーム蒸発法を用いて適用してもよい。
【0044】
選択された粒径及び形状分布と組み合わせたときに、粒子誘電率を系の誘電率を制御するように選択しながら、絶縁系全体の熱伝導性及び導電性を制御した所定の浸透構造を与える、金属−酸化物、−窒化物、−炭化物及び混合系のような、有機表面被覆物及び無機表面被覆物を生成させることができる。
【0045】
反応性表面官能基は、無機被覆物に元々備わっている表面基から形成させてもよいし、或いは更なる有機被覆物を塗布することによって得てもよい。被覆物のいずれも、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン、ビニル及びその他の基を含んでいてよく、それらはホストマトリックスとの化学反応に用いることができる。これらの単一又は多重の表面被覆物及び表面官能基は、湿式化学法、プラズマ重合を始めとする非平衡プラズマ法、化学的蒸着法及び物理的蒸着法、スパッターイオンプレーティング法、並びに電子及びイオンビーム蒸発法を用いて付加することができる。
【0046】
ダイヤモンド様炭素被覆物(DLC)は、高硬度、低摩擦及び化学的不活性を示し、電気絶縁のための高い電気抵抗率(約1013Ohm・cm)と高熱伝導性(>1,000W/mK)とを合わせもつことができる。DLCを製造するには、プラズマアシスト化学的蒸着法(PACVD)、物理的蒸着法(PVD)、イオンビーム蒸着法(IBD)等の、いくつかの方法がある。一般的には、DLCは、厚みが1ミクロン未満であって、非晶質の炭素及び炭化水素からなっていて、そのため混合sp2及びsp3結合を有している。その結合比は、プロセスパラメーター、例えばガス比及びDC電圧、を変化させることによって変えることが可能であり、それによって特性を変化させることができる。結合比は、例えばラマン分光光度法を使用して、直接測定することができる。
【0047】
比較的大きな領域を、極めて速やかに被覆することができる。例えば、PICVD低圧非平衡プロセスを使用すれば、数分の間に、ガラス布表面の面積約1平方フィートに20〜100nmの被覆物を適用することができる。被覆物パラメーターを制御又は最適化して、例えば被覆物の際の応力を、低下させるために、無垢の基材又は他の被覆物を有する基材にDLCを適用することができる。DLCは連続であってもよいし、或いは被覆面に空隙があってもよい。例えば、含浸樹脂をより良好に結合させるためには、空隙がある方が有利である。
【0048】
熱伝導性においては、構造要素の長さを、熱輸送を担っているフォノンの分布よりも短いか又は同程度になるようにすることによって、フォノン輸送が促進され、フォノン散乱が抑制される。HTC粒子状物質が大きい程、それら自体の本質として、フォノン輸送を実際に増大させることができるものの、HTC材料が小さい程、ホストマトリックスの性質を変更させて、それにより、フォノン散乱の変化に影響を与えることができる。このことは、ナノ粒子を使用することによって更に促進させることができる。ナノ粒子のマトリックスは、高熱伝導性を示すこと、及び、その粒径がこの効果を維持するのに十分であって、更には、フォノン散乱を抑制するのに必要とされる長さ要件を満たしていることが知られている。長短両範囲の周期を有する反応デンドリマー格子及びマトリックスから生成させることが可能な梯子構造又は秩序のあるネットワーク構造を始めとする、より高い秩序を有する構造を選択することも考えておく必要がある。
【0049】
ナノ、メソ、マイクロ、及びそれよりも大きい寸法の粒子にDLCを適用することによって、高熱伝導性粒子のサイズ及び形状を設計することが可能となるので、天然由来の又は創り出された浸透効果から、メリットを得ることが可能である。一つの例においては、DLCを適用して、ガラス繊維又は多くの繊維の表面を準連続的に被覆する。被覆により所望の特性が向上されるように、被覆をする前の繊維の表面を選択する。次いで、その繊維を機械的又はその他の手段によって破断し、所望の寸法分布を有する、DLCで被覆された短い棒状物とする。また、別な例においては、DLC被覆を、表面対厚み比が大きいフレーク形状の粒子に適用するが、そのような粒子の例は、マイカフレークレット及びBN粒子である。
【0050】
多結晶及び単結晶ナノ粒子の形態においては、それらの粒子は、担体粒子、例えばシリカ、の表面と会合していてもよい。シリカそのものは、熱伝導性の強い材料ではないが、表面被覆を加えることによって、より高度に熱伝導性となりうる。しかしながら、シリカ及び他のそのような材料は、先にも述べたように、棒形状の粒子に容易に成形できるという有利な性質を有している。このような方法で、種々のHTCの特性を一つの製品の中に組み込むことができる。これらの被覆は更に、後者の樹脂含浸及び絶縁テープのガラス成分に適用してもよい。
【0051】
更に、流体の流れの場、電場及び磁場をHTC材料に印加して、それらを分散させることもできる。交流電場又は静電場を使用することによって、棒及び平板形状の物を、マイクロスケールで整列させることができる。このことによって、異なる方向には異なる熱的性質を有する材料が作り出される。電場を作ることは、絶縁された電気導体を横切って電極を取り付ける方法、材料又は絶縁系の中心に導体を使用する方法等の、当技術分野で公知の種々の方法によって達成できる。
【0052】
また別な実施態様においては、本発明は、有機−無機複合体に基づく新規な電気絶縁系を提供する。種々の無機及び有機構成成分の間の界面を化学的及び物理的に親密にして、異種の相の間に高度に物理的な連続性を確保し、機械的に強く、高電圧及び低電圧用途のいずれで使用したときでも、電気絶縁系の作動中に故障を起こしにくい界面を得る。そのような材料は、高電圧及び低電圧の電気絶縁状況における用途を有しているが、このような用途においては、界面の一体性を高めることが、電力定格の上昇、絶縁系の電圧応力(voltage stressing)の上昇、絶縁厚みの低下といった点で有利であり、高い熱伝達を達成する。
【0053】
具体的な実施態様においては、ナノ、メソ及びマイクロ無機充填剤への種々の表面処理を使用して、無機表面にマトリックスに対する親和性を与えることができる種々の表面官能基を導入したり、ホストマトリックスとの間で化学反応を起こさせたりする。それらの表面官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン又はビニルの各基を含み、これらはホストの有機マトリックスとの化学反応に利用できる。これらの官能基は、湿式化学法、非平衡プラズマ法、化学的蒸着法及び物理的蒸着法、スパッターイオンプレーティング法並びに電子及びイオンビーム蒸発法を使用して適用すればよい。
【0054】
一つの実施態様においては、本発明は、マイカのようなホストマトリックスと、そのホストマトリックス中へ挿入されたHTC材料とを含んでなるHTC紙を提供する。HTC材料は、ナノ充填剤、ホストマトリックス上に直接的に施されたダイヤモンド様被覆物及びナノ充填剤上に施されたダイヤモンド様被覆物のうち、少なくとも一つからなる。
【0055】
一つの具体的な実施態様においては、HTC材料はHTC紙の0.1〜65体積%を占め、更なる一つの具体的な実施態様においては、HTC材料はHTC紙の1〜25体積%を占める。HTC紙の抵抗率は、約1012〜1016Ohm・cmであり、樹脂含浸後のその紙の熱伝導性は、0.5W/mKより大きい。
【0056】
他の具体的な実施態様においては、ナノ充填剤は5より大きいアスペクト比を有し、デンドリマーを含んでいてもよい。ナノ充填剤をHTC電気絶縁テープの中に組み込んでもよいし、また、テープの他の構成成分がHTC材料を含んでいてもよい。
【0057】
また別な実施態様においては、本発明は、挿入されたHTC材料を有するマイカ紙層、ガラス繊維バッキング層、及びマイカ紙層とガラス繊維バッキング層との間の界面を含んでなる電気絶縁テープを提供する。樹脂は、マイカ紙層及びガラス繊維バッキング層を通して含浸させる。HTC材料は、ナノ充填剤、ホストマトリックス上に直接的に施されたダイヤモンド様被覆物及びナノ充填剤上に施されたダイヤモンド様被覆物のうち、少なくとも一つからなり、マイカ紙の1〜25体積%を占める。
【0058】
更にまた別な実施態様においては、本発明は、基材を得る工程、及びその基材の上にHTC材料を挿入する工程を含んでなる、HTC紙を製造するための方法が提供される。この方法においては、HTC材料が、ナノ充填剤を含む溶媒を基材の上に導入し、次いで、溶媒を蒸発させる方法、及び、ナノ充填剤を乾燥粉体(ここで、乾燥粉体はポリマーを含む)として基材に添加し、次いで、乾燥粉体を基材の上で溶融させる方法のうち、少なくとも一つの方法によって、基材の中に挿入された、ナノ充填剤を含んでいる。次いで、その基材から紙製品を製造する。ナノ充填剤は、例えばDLCによって、表面被覆されていてもよく、また、HTC紙を、HTC電気絶縁テープの中に組み入れてもよい。
【0059】
また別な実施態様においては、マイカ等の基材を得る工程、及び、その基材にHTC材料を挿入する工程を含んでなる、HTC紙を製造するための方法を含む。次いで、基材を、析出法によって基材の上に分散された、DLCのような表面被覆物を含んでなる紙製品とする。
【0060】
また別な実施態様では、基材を得る工程、及び、その基材を製紙用スラリーに導入する工程を含んでなるHTC紙を製造するための方法が提供される。HTC材料が基材の中に挿入されるような製紙用スラリーに、HTC材料を添加し、そのスラリーを製紙プロセスに掛ける。しばしば、この時点で、基材をそれ自体によりよく結合させるためのポリマーを存在させる。HTC材料は、スラリーを溶媒として使用することによって基材の中に挿入された、ナノ充填剤を含んでなる。
【0061】
また別な実施態様においては、形成された電気絶縁紙製品であるホストマトリックスを得る工程、及びそのホストマトリックスの上にHTC材料を挿入する工程を含んでなる、HTC紙を製造するための方法が提供される。HTCが紙を構成する材料に結合するように、HTC材料が基材の中に挿入される。HTC材料がナノ充填剤である場合には、ナノ充填剤は、溶媒と混合し、その溶媒をホストマトリックスの上に含浸させ、そして溶媒を蒸発させることによって、HTC材料に添加される。HTC材料がDLCである場合には、析出法によってホストマトリックスに添加する。
【0062】
次いで、この紙をHTC電気絶縁テープの中に組み入れることができる。HTC材料は、テープに組み込まれる前の紙に、その全部又は一部を添加することもできるし、或いは、HTC材料は、紙がテープに組み込まれた後にその全部又は一部を添加することもできる。本発明は更に、マイカ紙層の内部又は上へのHTC材料の模様付け方法も提供する。マイカ層の中へのHTC材料の浸透は、マイカフレークレットのサイズ及び自由空間分布、更にはマイカ紙の厚み等の因子に依存する。本発明の場合、HTC材料を制御された方法でマイカに添加し、マイカ紙の中又は上に、ナノ、メソ又はマイクロのHTC材料を含む模様を作り出す。線で構成された、それらの模様自体は、その幅を数ミクロンから数ミリメートルとすることができる。それらの線は、典型的には、その幅の1倍から10倍の間隔で離して設置するのがよい。模様付けが、特定の領域においてHTC材料の連結性を向上させるので、より特定の効果が生み出される。更に、この模様付けは、ホストマトリックス材料の中への樹脂の含浸等の他の因子に影響を与えることもできる。
【0063】
模様付けには、層内模様付けと表面模様付けの、二つの主たる領域が含まれる。析出させた場合、HTC材料はばらばらであるか、集塊されてはいないが溶液の一部であるか、又は集塊されているか、であってよい。集塊されていない粒子は、相互に集塊されてはいないが、それらを例えば粘着性のある樹脂の中に充填した場合、マクロな感覚では、凝集性である。その材料は、適用される前の樹脂の中に充填してもよく、それによってその樹脂は材料に対してある種の接着剤となる。それらの粒子は、樹脂の中に種々の範囲で充填することができるが、飽和点又はその近くで樹脂を充填すると、当然のことながら、最大材料密度での模様付けとなるであろう。更に、HTC材料は、分離状態のナノ構造化ポリマーに充填することもできる。ナノ構造化ポリマーの例は、スミス(Smith)らによって、2005年6月14日に、出願された米国特許出願「高熱伝導性充填剤を有する構造化樹脂系(Structured Resin Systems with High Thermal Conductivity Fillers)」に見出すことができる(この特許を、参考として引用し本明細書に組み入れる)。
【0064】
HTC材料の模様付けは、多重の目的を達成させるために、種々の異なった形態をとっていてよい。本発明を使用して、制御された方法でHTC材料をホストマトリックスに適用して、それらのHTC材料に所定の分布を与える。ホストマトリックス、例えばマイカ紙、に添加したHTC材料についての先の説明には、それらを添加した工程で、材料の均質分散が含まれていた。本発明のこの態様では、HTC材料を制御して配置することを用いる。
【0065】
ホストマトリックスへ任意のHTC模様が付加されると、その模様は、基本的には二次元となるであろう。模様は、そのホストマトリックスを形成している間に、仕上がったホストマトリックスに、又はそれらの組合せで、ホストマトリックスに添加することができる。例えば、マイカ紙が形成されている間に、HTC材料を、一つの模様でフレークレットの約1/3に添加し、それに続けて、フレークレットの別の1/3を添加し、それに続けてHTC材料のまた別な模様を与え、それに続けて残りのフレークを添加することができる。フレーク層とHTC材料とを紙に形成した後、次いでHTC材料の付加的な模様を片面又は両面に添加することもできる。
【0066】
模様はHTC材料を制御して配置されたものであるので、先に説明したマイカテープの中のマイカフレーク層のような、より完全な製品の下層である表面も含めて、ホストマトリックスの表面全体を覆うようなことはない。模様によって覆われる表面積の大きさは、5〜80%の間、より好ましくは15〜55%の範囲である。HTC材料は高価である傾向があるので、模様を使用することによって、高熱伝導性の製品を製造する全体のコストも下がる。
【0067】
模様は多くの場合、線で構成されていて、それらは格子模様、縁模様、又はその他の形状等である。それらの線の幅は、約10μm〜1cmを超える範囲とすることができるが、より典型的な範囲は、100μm〜5mmであろう。模様の具体例は、格子模様、縞模様、縁模様及び中心線模様である。図1〜4に、複合体テープの表面上の代表的な模様の例を示す。図に示した模様はいずれも、下層の模様付けにも同様に適用できることに注意されたい。
【0068】
図1には、テープ10の表面上の格子模様12を示している。この格子模様の線は、テープに対して直角であるが、任意の角度に回転させることも可能である。格子模様の一つの利点は、それによって、マトリックスの幅方向及び長さ方向の両方に熱が伝達されることである。格子模様は、テープの次の層中の格子模様又はテープの次の層の布メッシュのような、その他の対象物と物理的に整列させることができる。図2には、横線14、16の形のHTC材料の縞模様を示している。縞模様は、より密な14であっても、より疎の16であってもよい。このタイプの模様付けは、幅の方向に熱を伝達する傾向があり、熱を速やかにテープから運び出す。この図では、縞は直線で平行であるが、それらは曲がっていたり、角度を有していたりしてもよい。図3には、密な縁模様18、又は多重の疎の縁20の両方の縁模様を示し、図4には、中心線模様22を示している。このタイプの模様付けは、テープがどのように巻き取られるかに応じて使用される。例えば、テープに密な重なりがある場合には、縁模様を使用して、テープの一つの層から次の層へと熱がうまく伝達されるようにするし、それに対して、中心線模様では、単独で又は縁模様との組合せで、半重ねラッピングを更によく利用できるであろう。これは、HTC粒子の厚み方向の増強を作り出すための模様付けと組み合わせることもできる。内層の上の模様を互い違いに配置して、電気用途のための、マイカの厚み方向のある程度の蛇行を作り出すことができる。
【0069】
種々のタイプの模様は相互に排斥するものではなく、互いに組み合わせてもよい。上に、中心線模様を縁模様と共に使用した一例を挙げた。図5には、格子模様12を縁模様20と共に使用したものを示している。これに加えて、先に述べたようにHTC材料を均等に広げた模様を使用することもできる。例えば、マイカ紙を製造するための溶媒の中にHTC材料を均一に混合させ、次いで更に、縁に沿った特定の模様で添加して、更に一段と局所的に増強することも可能である。
【0070】
乾燥等の物理的性質を利用して、いくつかの模様を作り出すことができる。HTC材料で飽和した溶媒を表面の上で乾燥させると、予想可能な模様を形成させることができる。それは一般的には、HTC材料の濃度がより濃い領域と、より薄い領域とに、なるであろう。図6に、一つの様式化された例を示すが、ここでは、乾燥後に、より高い濃度のHTC材料24が、空隙26の周りに集まっている。ある場合には、マイカフレークのようなホストマトリックスの中の構造によって、それらの空隙を作り出したり、助長したりすることができる。
【0071】
図7を参照すると、テープの横断面に、模様28の分断が示されている。この図においては、ホストマトリックスの形成中に、その中に二つの層のHTC材料を充填させたが、その材料が圧縮を受けたときに、圧縮が不均等であったので、それらの層が破壊され、HTC材料の乱れた分布が形成された。
【0072】
熱伝導の制御性が向上すると共に、それらの模様によって、樹脂含浸及び、その結果としての含浸樹脂中へのHTC材料の充填の制御性を向上させる機会も得られる。図1に示した格子模様を例として取り上げると、含浸樹脂は、格子模様12の空隙を通って流れる傾向がある。HTC材料は、樹脂が通過するに連れて、特に模様の線の縁に沿って引き抜かれるであろう。このことによって、HTC材料の分布に、元の模様の存在していたところが最大の濃度となるような傾斜がつけられる。これは、HTC材料が、充填された含浸樹脂によってホストマトリックスの中へうまく移動させられないような場合に特に有用である。
【0073】
HTC材料をホストマトリックスに模様として実際に配置することは、種々の方法で実施することができる。ばらばらなHTC材料は、散布法、静電塗装法、エアレススプレー法、転写ロール法、更にはその他の方法によって加えることができる。ある場合には、模様が存在しないことが望ましい領域を物理的に閉塞するか又は被覆することによって模様を作り出してもよい。適用するために樹脂の上に充填させるHTC材料は、押出し法、塗布法、噴霧法、及びその他の方法によって適用することができる。
【0074】
樹脂が充填されたマイカ層にHTC材料を適用することは、複合体テープの樹脂含浸による劣化を受けにくい表面模様付けには特に適している。一つの実施態様においては、模様付けに使用されたHTC材料の一部又は全部を、スミス(Smith)らによる、米国特許出願第11/152,985号「樹脂中に配列された高熱伝導性材料(High Thermal Conductivity Materials Aligned Within Resins)」に記載の方法を用いて、配向させることができる。
【0075】
本発明に関連した模様付けを使用した一つの実施態様においては、本発明は、ホストマトリックス及び特定の模様でホストマトリックスの表面に添加した高熱伝導性材料を含んでなる高熱伝導性紙を提供する。高熱伝導性材料は、ナノ充填剤、ホストマトリックス上に直接的に施されたダイヤモンド様被覆物、及びナノ充填剤上に施されたダイヤモンド様被覆物の一つ又は複数からなる。具体的な実施態様においては、その特定の模様には、格子模様、縁模様、縞模様、中心線模様及びそれらの組合せの一つ又は複数からなり、高熱伝導性材料が、ホストマトリックスの表面の15〜55%を被覆する。下層も含めて多重の表面に模様付けを持たせてもよい。
【0076】
他の具体的な実施態様においては、ホストマトリックスがマイカであり、高熱伝導性材料が高熱伝導性紙の1〜25体積%を占める。ある場合には、ナノ充填剤材料は、5よりも大きいアスペクト比を有している。高熱伝導性紙は、高熱伝導性電気絶縁テープの中に組み込むこともできる。
【0077】
本発明に関連する模様付けを使用したまた別な実施態様においては、本発明は、特定の模様でマイカ紙層に付けられた高熱伝導性材料を有するマイカ紙層及びガラス繊維バッキング層からなる、電気絶縁テープを提供する。マイカ紙層とガラス繊維バッキング層との間に界面が存在し、マイカ紙層とガラス繊維バッキング層とを通して樹脂が含浸されると、それが、テープの中でHTC材料を更に分散させることになる。高熱伝導性材料は、ナノ充填剤、ホストマトリックス上に直接的に施されたダイヤモンド様被覆物、及びナノ充填剤上に施されたダイヤモンド様被覆物の一つ又は複数からなり、その高熱伝導性材料がマイカ紙の1〜25体積%を占める。
【0078】
具体的な実施態様においては、特定の模様をマイカ紙層の表面に加えるか、又は特定の模様をマイカ紙層に下層として加える。これらの二つの方法を組み合わせて使用してもよいが、それは、多重の特定の模様を、多重の位置でマイカ紙層に加えてもよいからである。
【0079】
本発明に関連した模様付けを使用した更にまた別な実施態様においては、本発明は、基材を得る工程、及びその基材の上に高熱伝導性材料を添加する工程を含んでなる、高熱伝導性紙を製造する方法を提供する。次いで、その基材から紙製品を製造する。高熱伝導性材料は、(DLCを有していてもよい)ナノ充填剤を含む。ナノ充填剤は、そのナノ充填剤を含む溶媒によって基材に添加され、次いで、溶媒を蒸発させて、高熱伝導性材料がその基材の上に模様を形成するが、これは、紙製品を製造するより前に実施しても、後に実施してもよい。
【0080】
本発明に関連した模様付けを使用した更にまた別な実施態様においては、本発明は、基材を得る工程、及びその基材の表面の上に、その表面の5〜80%を占める特定の模様で高熱伝導性材料を添加する工程を含んでなる、高熱伝導性紙を製造するための方法を提供する。このようにして紙製品が製造されるが、その高熱伝導性材料には、析出法によってその基材の上に分散された表面被覆物が含まれる。紙製品の製造によってその模様が乱れ、それによって、模様の垂直方向の乱れが達成される。
【0081】
ナノ粒子を表面処理して、ホスト有機ポリマー又はネットワークとの反応に関与することができる、種々の表面官能基を導入する。
【0082】
表面官能基の添加には、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン又はビニルの各基が含まれていてよく、これらはホスト有機ポリマー又はネットワーク形成樹脂系との化学反応に役立つ。これらの官能基は、無機充填剤の表面の上に元々存在していてもよいし、或いは、湿式化学法、プラズマ重合法を始めとする非平衡プラズマ蒸着法、化学的蒸着法及び物理的蒸着法、スパッターイオンプレーティング法、並びに電子及びイオンビーム蒸発法を用いて適用してもよい。
【0083】
反応性表面官能基は、無機被覆物に固有の表面基から形成させてもよいし、或いは更なる有機被覆物を塗布することによって得てもよいが、それらはいずれも、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン、ビニル、及びその他の基を含んでいてよく、それらはホスト有機マトリックスとの化学反応に役立つ。単一又は多重の表面被覆物及び表面官能基は、湿式化学法、プラズマ重合を始めとする非平衡プラズマ法及び化学的蒸着法及び物理的蒸着法、スパッターイオンプレーティング法、並びに電子及びイオンビーム蒸発法を用いて適用することができる。
【0084】
模様付けを使用する本発明の一つの実施態様においては、本発明は、ホストマトリックス、及び特定の模様でホストマトリックスの表面に添加された高熱伝導性材料を含んでなる高熱伝導性紙を提供する。高熱伝導性材料は、ナノ充填剤、ホストマトリックス上に直接的に施されたダイヤモンド様被覆物、及びナノ充填剤上に施されたダイヤモンド様被覆物のうち、少なくとも一つからなる。具体的な実施態様においては、そのナノ充填剤は5より大きいアスペクト比を有している。
【0085】
関連する実施態様においては、ホストマトリックスがマイカであり、高熱伝導性材料が高熱伝導性紙の1〜25体積%を占める。高熱伝導性紙は、高熱伝導性電気絶縁テープの中に組み込まれている。特定の模様は、格子模様、縁模様、縞模様、中心線模様、及びそれらの組合せのうち、少なくとも一つを含む。
【0086】
高熱伝導性紙の関連するその他の実施態様においては、特定の模様は、高熱伝導性材料を含む溶液を乾燥させることによって形成される。高熱伝導性材料は、ホストマトリックスの表面の5〜80%を被覆する。その他の具体的な実施態様においては、高熱伝導性材料がホストマトリックスの表面の15〜55%を被覆し、ホストマトリックスの表面が下層面であり、それによって、その内層面が最終的な紙における内層となる。
【0087】
模様付けを使用する本発明のまた別な実施態様においては、本発明は、特定の模様でそれに付けられた高熱伝導性材料を有するマイカ紙層及びガラス繊維バッキング層を含んでなる電気絶縁テープを提供する。マイカ紙層とガラス繊維バッキング層との間には界面が存在し、樹脂は、マイカ紙層とガラス繊維バッキング層を通して含浸される。高熱伝導性材料は、ナノ充填剤、ホストマトリックス上に直接的に施されたダイヤモンド様被覆物、及びナノ充填剤上に施されたダイヤモンド様被覆物のうち、少なくとも一つからなり、その高熱伝導性材料がマイカ紙の1〜25体積%を占める。樹脂を含浸させることによって、そのテープ中の高熱伝導性材料の分布が向上する。
【0088】
関連する特定の実施態様においては、特定の模様がマイカ紙層の表面に加えられる。特定の模様を、マイカ紙層に対する下層として加えてもよく、更に、多重の特定の模様をマイカ紙層に加えてもよい。
【0089】
模様付けを用いる本発明の更にまた別な実施態様においては、本発明は、基材を得る工程及びその基材上に高熱伝導性材料を加える工程が含んでなる、高熱伝導性紙を製造するための方法を提供する。次いで、その基材から紙製品を製造する。高熱伝導性材料は、ナノ充填剤を含み、ナノ充填剤は、それを含む溶媒によって基材に添加され、次いで溶媒が蒸発させられて、基材の上に高熱伝導性材料の模様が形成される。いくつかの実施態様においては、ナノ充填剤がDLCを有している。
【0090】
模様付けを用いる本発明の更にまた別な実施態様においては、本発明は、基材を得る工程及びその基材の表面上に特定の模様で高熱伝導性材料を加える工程を含んでなる、高熱伝導性紙を製造するための方法を提供する。特定の模様は、表面の5〜80%を占める。次いで、基材から紙製品を製造するが、ここで高熱伝導性材料には、析出によって基材の上に分散させた表面被覆物が含まれる。いくつかの実施態様においては、紙製品を製造することによって、特定の模様の配列が乱される。
【0091】
主として熱伝導性を向上させるという観点から模様付けの説明をしてきたが、ナノ充填剤の模様付けによっては更に、その他の性質例えば、絶縁耐力及び機械的強度、並びに絶縁破壊経路の曲がり(electrical breakdown path tortuosity)等も改良することが可能である。
【0092】
主として電気産業における使用について、本発明の説明をしてきたが、本発明はその他の分野においても同様に適用することができる。熱伝達性の向上を必要としている産業でも同様に、本発明から利益を得るであろう。例えば、石油及びガスを含むエネルギー産業がそれに相当する。本発明のその他の対象としては、回路遮断器、高電圧ヒューズ、パワーエレクトロニクス、プリント配線基板、従来からのエレクトロニクス、及び集積回路等が挙げられるが、それらの分野では、構成部品の高密度化の要求が高まることによって、局所的及び大面積での熱の除去を効率的にする必要が生じている。
【0093】
本発明の特定の実施態様について詳細に説明してきたが、本発明の教示全体を考慮すれば、それらの詳細に対して種々の修正又は代替えが開発できるであろうということは、当業者のよく認識するところであろう。従って、開示されている具体的な組合せは、単に説明のためだけのものであって、添付された特許請求項の全体及びそれらの全ての等価物で与えられる本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
以下の図面を参照して、例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【図1】特定のタイプのHTC材料の模様付けの例を示す図である。
【図2】特定のタイプのHTC材料の模様付けの例を示す図である。
【図3】特定のタイプのHTC材料の模様付けの例を示す図である。
【図4】特定のタイプのHTC材料の模様付けの例を示す図である。
【図5】同一のテープの上に使用された、二つのタイプの具体的な模様付けの組合せを示す図である。
【図6】乾燥によって自然にできた模様の一例を示す図である。
【図7】複合体テープの内部の、模様化された層の乱れを示す横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストマトリックス;及び
該ホストマトリックスの表面に特定の模様で添加された高熱伝導性材料;
を含んでなる高熱伝導性紙であって:
高熱伝導性材料が、ナノ充填剤、前記ホストマトリックス上に直接的に施されたダイヤモンド様被覆物及び前記ナノ充填剤上に施されたダイヤモンド様被覆物のうち、少なくとも一つからなる、
高熱伝導性紙。
【請求項2】
ホストマトリックスがマイカである、請求項1に記載の高熱伝導性紙。
【請求項3】
高熱伝導性材料が高熱伝導性紙の1〜25体積%を占める、請求項1に記載の高熱伝導性紙。
【請求項4】
ナノ充填剤が5より大きいアスペクト比を有する、請求項1に記載の高熱伝導性紙。
【請求項5】
高熱伝導性紙が高熱伝導性電気絶縁テープの中に組み込まれている、請求項1に記載の高熱伝導性紙。
【請求項6】
特定の模様が、格子模様、縁模様、縞模様、中心線模様及びこれらの組合せのうち、少なくとも一つを含む、請求項1に記載の高熱伝導性紙。
【請求項7】
特定の模様が高熱伝導性材料を含む溶液の乾燥により形成される、請求項1に記載の高熱伝導性紙。
【請求項8】
高熱伝導性材料がホストマトリックスの表面の5〜80%を被覆する、請求項1に記載の高熱伝導性紙。
【請求項9】
高熱伝導性材料がホストマトリックスの表面の15〜55%を被覆する、請求項8に記載の熱伝導性紙。
【請求項10】
ホストマトリックスの表面が下層面(sub−surface)であり、該下層面が仕上がった紙の内層となる、請求項1に記載の熱伝導性紙。
【請求項11】
特定の模様でマイカ紙層に添加された高熱伝導性材料を含むマイカ紙層;
ガラス繊維バッキング層;
マイカ紙層とガラス繊維バッキング層との間の界面;及び
マイカ紙層及び前記ガラス繊維バッキング層を通して含浸させた樹脂;
を含んでなる電気絶縁テープであって:
高熱伝導性材料が、ナノ充填剤、ホストマトリックス上に直接的に施されたダイヤモンド様被覆物及び前記ナノ充填剤上に施されたダイヤモンド様被覆物のうち、少なくとも一つからなり;
高熱伝導性材料がマイカ紙の1〜25体積%を占め、
樹脂の含浸が、テープ中への高熱伝導性材料の分布を向上させる、
電気絶縁テープ。
【請求項12】
特定の模様がマイカ紙層の表面に加えられる、請求項11に記載の電気絶縁テープ。
【請求項13】
特定の模様がマイカ紙層に下層として添加される、請求項11に記載の電気絶縁テープ。
【請求項14】
多重の特定の模様がマイカ紙層に添加される、請求項11に記載の電気絶縁テープ。
【請求項15】
基材を得る工程;
基材の上に高熱伝導性材料を添加する工程;及び
基材から紙製品を製造する工程;
を含んでなる高熱伝導性紙を製造する方法であって:
高熱伝導性材料がナノ充填剤を含み、ナノ充填剤がそれを含む溶媒によって基材に添加され、次いで溶媒を蒸発させることによって、高熱伝導性材料が基材の上に模様を形成する、
方法。
【請求項16】
ナノ充填剤がDLCを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
基材を得る工程;
高熱伝導性材料を基材の表面の上に特定の模様で添加する工程であって、特定の模様が表面の5〜80%を占める工程;及び
前記基材から紙製品を製造する工程;
を含んでなる高熱伝導性紙を製造する方法であって:
高熱伝導性材料が、析出法によって基材の上に分散された、表面被覆物を含む、
方法。
【請求項18】
紙製品を製造することによって特定の模様の配列が乱される、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−532595(P2009−532595A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504180(P2009−504180)
【出願日】平成19年1月3日(2007.1.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/000086
【国際公開番号】WO2008/013570
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(599078705)シーメンス エナジー インコーポレイテッド (57)
【Fターム(参考)】