説明

高純度の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法および装置

溶液中に固相として存在する2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDA)を精製する方法に関する。前記方法によれば、焼結金属膜ろ過装置を使用して水素化反応および結晶化を行った後に分離された2,6−ナフタレンジカルボン酸を連続工程で効率的に分離精製できる。また、前記方法を実行するための装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中に固相として存在する2,6−ナフタレンジカルボン酸(Naphthalene Dicarboxylic Acid、NDA)を精製する方法および装置に関し、詳細には、焼結金属膜ろ過装置を使用して水素化反応および結晶化を行った後に分離された2,6−ナフタレンジカルボン酸を連続工程で効率的に分離精製できる高純度の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2,6−ナフタレンジカルボン酸(Naphthalene Dicarboxylic Acid、NDA)は、主にポリエチレンナフタレート(PEN)の製造に有用な単量体として使用される。ポリエチレンナフタレートは、エチレングリコールと2,6−ナフタレンジカルボン酸またはそのジアルキルエステルとを反応させることにより製造される。ポリエチレンナフタレートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)に比べてより良好な機械的特性、耐熱性およびガス遮断性を有するため、例えば、磁気テープ用フィルム、パッケージ用フィルム、タイヤコード用フィルムおよび産業用樹脂(液晶高分子)用フィルムなどとして様々な分野で応用されている。
【0003】
一般的に、2,6−ナフタレンジカルボン酸は、重金属触媒下で2,6−ジメチルナフタレン(2,6−Dimethyl Naphthalene、以下「2,6−DMN」という)の酸化反応により製造される。しかし、このような酸化反応により生成された2,6−ナフタレンジカルボン酸には、触媒金属であるコバルトおよびマンガン以外に、酸化反応の中間生成物であるホルミルナフトエ酸(Formyl Naphthoic Acid、以下「FNA」という)、メチルナフトエ酸(Methyl Naphthoic Acid、以下「MNA」という)、分解生成物であるトリメリット酸(Trimelitic Acid、以下「TMLA」という)、ブロム付加生成物であるブロモ−ナフタレンジカルボン酸(Bromo−Naphthalene Dicarboxylic Acid、以下「Br−NDA」という)および原料である2,6−DMNに含まれた不純物から生じたナフトエ酸(Naphthoic Acid、以下「NA」という)などの各種不純物が多量に含まれている。
【0004】
多量の不純物が含まれた2,6−ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと直接重合させると、重合生成物であるPENの耐熱性および軟化点が低下し、着色が発生するなど、深刻な品質悪化をもたらすことになる。したがって、高品質のPENを得るためには、99.9重量%程度の高純度の2,6−ナフタレンジカルボン酸が必要である。
【0005】
このため、2,6−ナフタレンジカルボン酸中の不純物を除去するための様々な精製方法が提示されている。高純度の2,6−NDAを得るためにはNDA中の不純物を除去するための精製が必須であるが、特に、NDAを溶媒に溶解させた後、水素化反応させて不純物を除去する方法が特許文献1および2に開示されている。
【0006】
具体的には、粗NDAを300℃前後で溶媒に溶解し(特許文献1では溶媒として酢酸または酢酸水溶液を、特許文献2では溶媒として水を使用している)、水素化反応させて不純物を除去したり除去可能な形態に転換させる工程を開示している。前記水素化反応後に溶解されたNDAを含む反応生成物は、晶析装置へ移送されて冷却されることで、純粋なNDA結晶が分離されることになる。
【0007】
一方、既存の水素化反応後のろ過および洗浄工程は、一括処理(batch process)で行われるため、手作業をしなければならないという面倒さがあり、処理能力が限定されているため、単位時間当たりの収率が低いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,256,817号明細書
【特許文献2】米国特許第6,255,525号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、焼結金属膜フィルターによる高圧洗浄設備を提供して、水素化反応および結晶化工程に引き続いてろ過および洗浄を効率的に行うことができる2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法および装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、水素化反応および精製工程後に連続工程でろ過および洗浄工程を行うことができるようにする2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の一つの態様では、
結晶化工程後に得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸結晶から第1母液を焼結金属膜ろ過装置を使用して分離して(第1ろ過段階)、
前記分離された結晶を200〜250℃の高温の水で洗浄(rinsing)して(第1洗浄段階)、
前記洗浄された結晶から第2母液を分離して(第2ろ過段階)、
前記分離された結晶を200〜250℃の高温の水で洗浄して(第2洗浄段階)、
前記分離された結晶を遠心分離して2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を得て、および
前記得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を乾燥することを含む2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法が提供される。
【0012】
また、本発明の他の態様では、
結晶化後に得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸結晶を精製する装置において、前記装置は、
晶析装置からスラリー状の2,6−ナフタレンジカルボン酸結晶および母液を受け取り、前記結晶から母液を分離する第1焼結金属膜ろ過装置、
前記焼結金属膜ろ過装置から分離された結晶を高温の水で洗浄し、前記結晶から第2母液を分離する第2焼結金属膜ろ過装置、
前記第1および第2焼結金属膜ろ過装置に高温の水を供給する水貯蔵槽、
前記第2焼結金属膜ろ過装置によりろ過された結晶を遠心分離して2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を提供する遠心分離機、および
前記得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を乾燥する乾燥機を含む2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法および装置によれば、焼結金属フィルターを用いることにより、装置の維持管理面で経済的であり、工業的に99.9重量%以上の高純度および95%以上の高収率で2,6−ナフタレンジカルボン酸を得ることができる。
【0014】
また、本発明の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法および装置によれば、NDAの水素化工程に引き続いてろ過および洗浄工程を行うことができるため、水素化前の工程を含む全工程を連続工程で行うことができる。したがって、加工性の面で非常に有利な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法を説明する工程フロー図である。
【図2】図2は、本発明の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製装置に使用する焼結金属膜ろ過装置の詳細図である。
【図3】図3は、図2の焼結金属膜ろ過装置の母液分離方向およびろ過原理を説明する模式図である。
【図4】図4は、図2の焼結金属膜ろ過装置の様々な構成により形成される結晶ケーキの形状を示した模式図である。
【図5】図5は、本発明の焼結金属膜ろ過装置で使用される焼結金属膜フィルターの詳細図である。
【図6】(a)〜(f)は、本発明の焼結金属膜ろ過装置の処理容量によるろ過膜の間隔および配列を示す断面模式図である。
【図7】図7は、本発明の洗浄工程のろ過膜装置の最適化のために、本発明の精製装置を使用して精製されたNDA結晶の粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を添付図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0017】
本発明の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法では、焼結金属膜フィルターを使用することにより、2,6−ナフタレンジカルボン酸を含むスラリーから2,6−ナフタレンジカルボン酸をろ過および洗浄して高純度の2,6−ナフタレンジカルボン酸を回収することができる。特に、本発明の方法は、水素化による2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製工程後に連続工程で行うことができる。
【0018】
本発明の方法によれば、2,6−ナフタレンジカルボン酸を含むスラリーから高純度の2,6−ナフタレンジカルボン酸を精製する場合、水素化反応を通じて結晶化工程後に生成された2,6−ナフタレンジカルボン酸結晶に溶解されている不純物を除去するためには、まず、焼結金属膜ろ過装置を使用して結晶から母液を分離する(第1ろ過段階)。次いで、前記分離された結晶を200〜250℃の高温の水で洗浄する。この際、高温の水を焼結金属膜ろ過装置へ注入して再びスラリー状にし、分離された結晶をさらに200〜250℃の高温の水で洗浄する。
【0019】
その後、前記洗浄された結晶から第2母液を分離する(第2ろ過段階)。前記第2ろ過段階で分離された結晶を遠心分離して高純度の2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を得る。次いで、得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を乾燥させる。
【0020】
本発明の方法を図1を参照しながらより詳細に説明する。2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製工程は、水素化反応段階、結晶化段階、ろ過および洗浄段階、固液分離および乾燥段階から構成される。このうち、精製(ろ過および洗浄)段階は、高温および固圧の条件下で行われ、不純物および溶媒を含む母液を放出する。
【0021】
水素化工程による2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製は、以下の過程により行われる。まず、粗2,6−ナフタレンジカルボン酸は、水素化工程のためにスラリー製造槽で水素化反応で使用される溶媒と一定比率で混合されて均一なスラリー状になる。この際、溶媒としては水または酢酸などが好ましく、その使用量は、水素化反応の温度および圧力条件で2,6−ナフタレンジカルボン酸が溶媒中に均一液状として存在する量であれば特に制限されない。前記スラリー製造槽内の温度を一定温度以上に維持することにより、均一スラリーの製造時間を短縮させることができ、製造されたスラリーの均一性を顕著に改善させることができる。そのため、前記スラリー製造槽の温度は、40〜50℃、好ましくは60〜100℃に維持する。
【0022】
製造されたスラリーは、予備加熱器により水素化反応温度まで昇温し、この際、大体の2,6−ナフタレンジカルボン酸は溶媒に溶解される。予備加熱器により過熱されたスラリーは、水素化反応器へ流入される前に2次溶解のために熱交換器を通過することになる。前記熱交換器では、溶解されずに残っている微量の2,6−ナフタレンジカルボン酸がさらに溶解され、溶媒中の不溶性不純物、例えば、その他の有機物質および金属成分が除去されて完全な均一状になる。前記熱交換器の温度および圧力は、水素化反応の温度および圧力条件と同一であるか若干高いことが好ましい。
【0023】
前記熱交換器を通過した溶解液は、Pd/CやPt/Cのような水素化反応触媒を含有する水素化反応器へ流入されるとともに290〜350℃で水素ガスにより水素化されて、FNAおよびBr−NDAなどの不純物が除去されるか除去されやすい不純物に転換される。水素化反応工程へ投入される水素の量は、粗2,6−ナフタレンジカルボン酸に含有された不純物の量と反応を考慮して選択的に決定される。
【0024】
水素化反応器を通過した2,6−ナフタレンジカルボン酸は、多段晶析装置、好ましくは4つの晶析装置で段階的に圧力および温度が降下されることにより、精製された2,6−ナフタレンジカルボン酸が結晶化される。この際、晶析装置では、NDAの結晶化のために30℃/min以下の速度で適正なろ過温度まで冷却される。前記適正な温度とは、反応副産物は溶媒に溶解されていながら最大限の量の2,6−ナフタレンジカルボン酸が析出される温度を言い、一般的に、このような温度は150〜250℃である。
【0025】
このような4段階の圧力および温度降下を通った結晶化工程により、2,6−ナフタレンジカルボン酸は高温および高圧(例えば、225℃、25kg/cmG)で溶解度(225℃で0.5%)が低いため、2,6−ナフタレンジカルボン酸結晶がスラリー状に存在することになる。その他の不純物のほとんどは、水に溶解されて存在することになる。
【0026】
未だに、高温および高圧下で結晶および母液を連続的に分離できる設備および装置は多くない。したがって、本発明は、前記NDA含有スラリーをろ過および洗浄して高純度のNDAを回収する方法を提供する。
【0027】
この際、純粋なNDAを回収するために、ろ過工程は晶析装置と同一の温度で行われ、円滑なろ過のために加圧条件を使用する。図1を参照すると、本発明では、結晶化工程後に得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸結晶から第1母液を焼結金属膜ろ過装置を使用して分離する(S1)。前記第1母液は、再び常温に急冷されて結晶化され、母液と固体成分とに分離される。前記分離された母液はろ過後に廃棄され、前記分離された固体の一部分は再びスラリー調製槽へ移送され、その残りの一部は水素化反応器の前段に配置された酸化反応器へ移送される。
【0028】
結晶化後に焼結金属膜ろ過装置によりろ過された固体は、200〜230℃の高温の水を一定量移送して洗浄する。この際、高温の水を焼結金属膜ろ過装置へ注入して再びスラリー状にし、分離された結晶をさらに高温の水で洗浄する。その後、前記洗浄された結晶から第2母液を分離する第2ろ過段階を実行する。
【0029】
前記第2母液は、スラリー水素化反応器の前段に配置されたスラリー調製槽へ循環することができる。また、前記分離された固体は遠心分離機へ移送される。この際、前記固体をさらに洗浄するために移送用高温の水が使用される。
【0030】
遠心分離は2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を生じさせる。前記結晶性粉末は、乾燥機により110〜150℃の温度で乾燥されて99.9重量%以上の高純度の固相の2,6−ナフタレンジカルボン酸を得る。
【0031】
本発明の他の態様は、液状溶液中に固相として存在する2,6−ナフタレンジカルボン酸を精製する装置を提供する。図2は、本発明の一実施例による2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製装置の概略図である。以下、図2を参照して本発明の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製装置を詳細に説明する。
【0032】
図2を参照すると、本発明の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製装置は、晶析装置からスラリー状の結晶および母液を受け取り、前記結晶から母液を分離する第1焼結金属膜ろ過装置;前記焼結金属膜ろ過装置から分離された結晶を高温の水で洗浄し、前記結晶から第2母液を分離する第2ろ過装置;前記第1および第2焼結金属膜ろ過装置に高温の水を供給する水貯蔵槽;前記第2焼結金属膜ろ過装置によりろ過された結晶を遠心分離して2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を提供する遠心分離機;および前記得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を乾燥する乾燥機を含む。
【0033】
また、本発明の装置は、焼結金属膜ろ過装置に連結されて固液分離された母液を貯蔵する第1母液貯蔵槽;前記第2ろ過装置に連結されて第2ろ過装置からの洗浄母液を貯蔵する洗浄母液貯蔵槽;および遠心分離機の前段に配置された貯蔵槽をさらに含むことができる。
【0034】
図5に示すように、前記焼結金属膜ろ過装置は、高温の溶媒が流入する2つの流入口;ろ過された母液が排出されるろ過母液排出口;導入される溶媒および移送されるスラリーの圧力のバランスをとるためのバランスライン;結晶化スラリーが流入する流入口;分離された結晶性粉末が溶媒に混合されて排出される出口;気体および蒸気または圧力排出口;膜の性能および圧力を制御するための圧力計;内部温度を測定するための温度計;および内部圧力を制御するための加圧口を含む。
【0035】
前記2つの溶媒(水)流入口は、前記焼結金属膜ろ過装置の上下にそれぞれ形成され、前記焼結金属膜ろ過装置の下端は、スラリーの移送を容易にするためにテーパ形状を有することができる。スラリー排出口は、このようなテーパの下端に形成され、前記テーパ形状の下端部には、前記装置の内部圧力を制御する加圧口が形成される。前記装置の最上端には、前記装置の内部圧力を制御する加圧口が形成され、気体および蒸気または圧力排出口も形成される。前記バランスラインは、前段階の貯蔵槽(第1ろ過装置は第4晶析装置、第2ろ過装置は第1ろ過洗浄装置)に連結され、流入される溶媒および移送されるスラリーの圧力バランスを調整する役割をする。前記2つの流入口の中、下端流入口の下には、結晶化スラリーの流入口が形成され、下端流入口の上には、内部温度を測定する温度計が配置される。
【0036】
前記焼結金属膜ろ過装置は、フィルターの内部に、前記フィルターの長さと類似する長さの内部チューブを含む。前記焼結金属膜ろ過装置は、前記焼結金属膜ろ過装置は、ステンレス鋼、耐食合金または耐熱合金でできている厚さ0.1〜1cmのろ過膜を含むことができる。前記ろ過膜の孔径は、0.1〜5μmであることができる。
【0037】
以下、本発明の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製装置の動作について説明する。
【0038】
第3晶析装置(圧力45kg/cm、温度225℃)から第4晶析装置(圧力25kg/cm、温度215℃)へ圧力差により移送される(フローA)。第4晶析装置101に45kg/hrの流量で移送されたスラリー状の結晶および母液は、スラリー移送ポンプP1により母液分離用焼結金属膜ろ過装置103,104へ移送される。焼結金属膜ろ過装置103,104への移送は、10〜20分単位で繰り返して連続的に自動制御装置により調節される。前記移送間隔は、洗浄装置の容量およびフィルターの性能に応じて決定される。第1焼結金属膜ろ過装置の内部温度および内部圧力は、200〜250℃および20〜50kg/cmに維持される。
【0039】
ラインBに沿ってスラリーが移送される間、ラインCに沿うスラリーの移送は止まる。すなわち、スラリーが焼結金属膜ろ過装置103へ移送される間、焼結金属膜ろ過装置104ではスラリーがろ過される。結果的に、焼結金属膜ろ過装置104内部には結晶性粉末が存在することになり、洗浄用の水移送ポンプP2により移送された水で焼結金属フィルターの表面に付着されている結晶をスラリー状に再び分散させて第2ろ過装置106へ移送する(フローN)。
【0040】
焼結金属膜ろ過装置103への移送が完了すると、焼結金属膜ろ過装置103は母液ろ過モードに入り、焼結金属膜ろ過装置104は、第2ろ過装置106への移送が完了すると、晶析装置101から再びスラリーを受け取る。
【0041】
焼結金属膜ろ過装置103,104へのスラリー移送は、自動制御装置により10〜20分単位で繰り返して行われる。水は、ラインI、J、GおよびHに沿って焼結金属膜ろ過装置103,104へ移送される。フローGおよびIでの水移送は、焼結金属フィルターに付着されている結晶性粉末を取り除くために自動制御により断続的に行われる。残りの移送用水はラインHおよびJへ移送される。第2ろ過装置(洗浄槽)105,106へ移送されたスラリーは、第1ろ過と同様の方法でろ過される。第2焼結金属膜ろ過装置の内部温度および内部圧力は、200〜250℃および20〜50kg/cmに維持される。
【0042】
第2ろ過装置105,106に付着されている結晶性粉末を取り除くために、ラインFに沿って第2ろ過装置105,106へ水が供給される。ろ過された結晶は、自動制御によりラインTおよびVに沿って遠心分離機210の前段に配置された貯蔵槽107へ移送される。貯蔵槽107に貯蔵された結晶は、遠心分離機210へ移送され、遠心分離されて2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を得る。前記結晶性粉末は乾燥機220で乾燥される。
【0043】
また、第1ろ過装置で分離された母液は、母液貯蔵槽108へ移送され、常温への温度降下および圧力降下を通して再び固液分離される(フローF)。その過程は、前述した工程(図2)と同様である。また、第2ろ過による洗浄母液は、フローSおよびUに従って洗浄母液貯蔵槽109へ移送され、フローXにしたがってスラリー調製槽へ移送される。
【0044】
ろ過段階は、20〜50kg/cmの圧力で行われる。特に母液貯蔵槽の圧力を制御して2〜25kg/cmの圧力差条件でろ過が行われる。圧力差が2kg/cmより小さい場合、金属焼結ろ過膜装置焼結金属膜ろ過装置の特徴上、ろ過速度が遅くなり、長い操作時間がかかる問題がある。一方、圧力差が25kg/cmより大きい場合、金属フィルターに損傷を与える恐れがある。
【0045】
本発明は、高圧洗浄装置としての焼結金属膜ろ過装置を使用してNDAの純度を99.9重量%以上、収率を95%以上で分離することができる。
【0046】
焼結金属膜フィルターは、高温や低温に耐えられるだけでなく熱的衝撃に強いため、温度変化が急激な部分に用いることができる。また、接触している媒質成分を吸収したり、あるいはこれらと反応することがほとんどないため、腐食環境下の反応器における使用に適している。さらに機械的衝撃にも強いため、高圧力や振動の影響を受けやすい部分に用いることができる。
【0047】
本発明で使用される焼結金属フィルターの清浄(cleaning)原理を図3を参照して説明する。図3の矢印で示されるように、母液および水酸化ナトリウム溶液のような清浄液は、焼結金属フィルターのろ過膜を通してろ過されて清浄にされる。洗浄および清浄フィルターの内部は、一定の長さのチューブで構成されていて、フィルターの全体面で母液および清浄液のろ過が行われるように助ける。図4a〜4cに示すように、内部チューブの長さが相対的に短い場合、結晶性粉末のケーキが一定に形成されないため、フィルターの性能を低下させることになる。したがって、内部チューブがフィルターの下部まで一定の長さで伸びているときにのみ十分なフィルターの効率を得ることができる。
【0048】
フィルターの効率を十分発揮するためには、内部チューブとフィルターとの間隔、フィルターの直径、内部チューブの長さおよびフィルターの長さが互いに相関関係にある。本発明のフィルターの長さは、処理容量によって様々な長さに変更可能であるが、一般的に50cm〜2mであることが好ましい。また、このようなフィルターの長さに対して、内部チューブの長さはフィルターの下部まで伸びている長さであって、一般的に、フィルターが50cm〜2mの長さを有する場合、内部チューブは前記フィルターより0.5〜2cm短い長さを有する。フィルターは、好ましくは、直径10〜50cm、厚さ0.1〜1cmおよび孔径0.1〜50μmである。
【0049】
焼結フィルターは、粉末冶金の固有の多孔性を活用した高強度の多孔質製品である。要素技術を適切に組み合わせることが前記焼結フィルターを製造するのに重要である。前記焼結フィルターの代わりに一般メッシュフィルター(Mesh Filter)を使用する場合、相対的に収率が低いだけでなくメッシュ気孔を詰める現象が発生して、長期間使用時、ろ過性能が低下しうる。
【0050】
しかしながら、焼結金属フィルターを使用する場合、単位工程で逆流置換(back flushing)工程をともに行うことができるため、ろ過性能の低下はごくわずかである。また、長期間使用してろ過性能が低下しても水酸化ナトリウム水溶液で清浄にすれば、すぐ初期のろ過性能を回復することができる。
【0051】
また、前記焼結金属フィルターは、3次元の複雑な多孔質構造を有するため、2次元のメッシュフィルターよりろ過効率が高い。また、形状の自由度が極めて高く、極限の状態でも比較的寿命が長く、さらに清浄が容易で効率的である。なお、ステンレス系焼結フィルターは、耐食性、耐熱性および剛性に優れていて、高温および高圧条件で有利に使用することができる。
【0052】
焼結金属フィルターは、大きく焼結金属繊維膜フィルターと焼結金属粉末膜フィルターとに分けられる。粉末の大きさまたは直径変化に応じて、フィルター材料の気孔率を10%から95%まで広範囲に調節することができる。しかし、一般的に適用可能な焼結金属繊維膜フィルターの気孔率は60〜90%、焼結金属粉末膜フィルターの気孔率は30〜40%程度に調節される。金属粉末フィルターの材料としては、青銅、ステンレス鋼粉末が主に使用され、ニッケル、チタン、インコネル粉末なども特殊用途のフィルターの製作に使用される。本発明で使用される焼結金属フィルターは、ステンレス鋼(例えば、SUS316L)、耐食性の強い合金(例えば、Hastelloy/Carpenter 20CB3)、耐熱性合金(例えば、INCONEL601/Nickel 200)などでできており、最大適用可能な温度および圧力は、それぞれ500℃および100kg/cmである。
【0053】
本発明の精製装置の焼結金属膜ろ過装置の細部構成を図5に示す。71および72は200〜250℃の溶媒が移送される流入口、73はろ過母液の出口、74は流入される溶媒および移送されるスラリーの圧力バランスをとるためのバランスライン、75は結晶化スラリーが流入する流入口、76は分離された結晶性粉末が溶媒に混合されて排出される出口、77は気体および蒸気または圧力が放出される排出口、78および79は膜の性能および圧力を制御するための圧力計、80は内部温度を測定するための温度計、81および82は圧力制御のためのN加圧口である。
【0054】
また、このような焼結金属膜ろ過装置の処理容量は、フィルターの単位面積あたりの気孔率などに応じて決定される。
【0055】
洗浄装置の容量によるろ過膜の構成を図6に示す。図6に示すように、1つ以上のろ過膜の配列を維持して、ろ過膜とろ過膜間に結晶ケーキが互いに接着する現象を防止することができ、ろ過膜の分離効率を極大化させることができる。本発明の焼結金属膜ろ過装置でのフィルター数による処理容量を下記表1に示す。
【0056】
【表1】

@Slurry濃度=NDA10%、結晶の平均粒度は50μmであった。
【0057】
また、結晶ケーキの厚さに応じてろ過膜とろ過膜との間隔を一定な比率で配列しなければならない。ろ過効率を極大化するためには、直径100mmおよび孔径0.1〜50μm、より好ましくは0.3〜5μmのフィルターを使用することが好ましい。前記ろ過膜の孔径(0.3〜5μm)は、図7に示されたNDA結晶の粒度分布を基に決定され、NDA結晶の収率および清浄を考慮して選定された。すなわち、結晶の大きさおよび粒度分布は、実質的に結晶化工程中で決定されるが、製品用途および特性に応じて制御する必要がある。
【0058】
0.1〜10μmの孔径を有するろ過膜を用いて得た最終NDAの試料を取って、0.1〜1000μmの大きさの試料を測定できる粒度分析器(Particle Size Analyzer)により平均結晶サイズおよび粒度分布を分析した。図7は、結晶化工程の制御後に焼結金属膜ろ過装置により分離されたNDA結晶の粒度分布を示している。図7に示すように、NDA結晶は、1〜350μmの粒度分布および10〜100μmの平均結晶サイズを有していた。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げてより詳しく本発明を説明するが、これら実施例は説明を目的としたものに過ぎず、本発明の保護範囲を制限するものと解釈してはならない。
[実施例1]
25kg/cmおよび215℃の第4晶析装置から2,6−ナフタレンジカルボン酸結晶を含むスラリー状の原料をポンプにより60Lの焼結金属膜ろ過装置へ移送した。濃度10%および60Lの前記スラリーの移送直後に、ろ過を5分間行った。移送が完了した後、3分間さらにろ過することにより、焼結金属膜ろ過装置内のチューブには2,6−ナフタレンジカルボン酸のケーキが形成され、母液は完全に分離された。このような分離過程が行われる間、他の原料は焼結金属膜ろ過装置へ移送した。分離が完了した後、220℃の洗浄用水60Lをろ過装置へ1分間移送し、移送が完了した後、第2ろ過装置へ1分間移送した。全体工程は、10分間隔で2つの焼結金属膜ろ過装置で繰り返して行った。前記焼結金属膜ろ過装置は、孔径0.5μmのろ過膜を含む。第2ろ過装置へ移送されたスラリーは、第2焼結金属膜ろ過装置により分離された。この際、移送およびろ過は5分間つづけた。第2洗浄が完了後、移送用水を受け取り、洗浄された結晶は次の段階(遠心分離工程)へ送った。
【0060】
ろ過装置の分離効率を分析するために、第4晶析装置、第1ろ過後および第2洗浄後の試料を取って、ガスクロマトグラフィー(GC)を通して置換法により分析した。その結果を下記表2に示す。
【0061】
【表2】

[比較例1]
この例では、韓国特許公開第2005−0064022号に開示された装置を用いた。まず、固相分36kgを含むスラリー溶液336kgをスラリー供給装置からろ過器、撹拌器および内部バルブを装着した400Lのメッシュ洗浄装置へ窒素ガスで圧力を維持しながら2時間投入した。前記ろ過液は、ろ過液放出口を通して高圧ろ過液回収装置へ放出され、前記固相分は、ろ過器によりろ過された。放出された第1ろ過液は、低圧ろ過液回収装置へ移送された後、圧力を常圧まで降下させて廃棄された。この際、洗浄装置の内部温度は225℃、ろ過器のメッシュサイズは20μmとした。洗浄装置の圧力は、窒素ガスを用いて26kg/cmに維持する一方、高圧ろ過液回収装置もまた装置の一側を通して供給される窒素ガスにより洗浄装置の圧力より0.5〜2kg/cm低い圧力に一定に維持した。次に、溶媒加熱供給装置から200℃以上に予熱された純粋溶媒300kg以上を洗浄装置へ投入し、80rpmに設定したアンカー型撹拌器で30分間撹拌した後、高圧ろ過液回収装置へ第2ろ過液を放出した。上記の洗浄段階を再度繰り返して行った。溶媒加熱供給装置から200℃以上の純粋溶媒100kgを洗浄装置へ投入し、撹拌してNDA含有スラリーを準備し、これをスラリー放出ラインを通して高圧スラリー回収装置へ送った。高圧スラリー回収装置もまた装置の一側を通して供給される窒素ガスにより洗浄装置の圧力と同圧ないしそれより0.5〜2kg/cm低い圧力に一定に維持した。高圧スラリー回収装置へ移送されたスラリーを再び低圧スラリー回収装置へ移送した後、常圧まで減圧して溶媒を除去して純粋NDAを回収した。この際に生成された固相分の組成を下記表3に示す。
【0062】
【表3】

[実施例2]
本実施例は、焼結金属フィルターの種類による前記フィルターの性能を比較するために行った。実施例1と同様の方法で0.1、0.3、0.5、1および10μmの焼結金属フィルターをそれぞれ使用して分析した。その結果を下記表4に示す。
【0063】
【表4】

前記表4の結果から、本発明の方法によれば簡単にかつ短時間内にNA、MNA、DCTなどの有機不純物を除去することができ、また製品の純度を99.8%以上に向上させられることを確認することができる。
【0064】
以上、好適な実施例を参考として本発明を詳細に説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、添付の特許請求の範囲に開示した発明の範囲および思想から逸脱することなく、各種の変更例に想到し得るであろう。したがって、そのような変更例は本発明の範囲内であると理解されるべきである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)結晶化工程後に得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸結晶から第1母液を焼結金属膜ろ過装置を使用して分離する第1ろ過段階;
(b)前記分離された結晶を200〜250℃の高温の水で洗浄(rinsing)する第1洗浄段階;
(c)前記洗浄された結晶から第2母液を分離する第2ろ過段階;
(d)前記分離された結晶を200〜250℃の高温の水で洗浄する第2洗浄段階;
(e)前記分離された結晶を遠心分離して2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を得る段階;および
(f)前記得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を乾燥する段階を含むことを特徴とする2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法。
【請求項2】
前記第1および第2ろ過段階ならびに第1および第2洗浄段階は、内部温度200〜250℃および圧力20〜50kg/cmで行われることを特徴とする、請求項1に記載の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法。
【請求項3】
前記ろ過段階は、2〜25kg/cmの圧力差を用いて行われることを特徴とする、請求項1に記載の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法。
【請求項4】
前記焼結金属膜ろ過装置は、ステンレス鋼、耐食合金または耐熱合金でできている孔径0.1〜5μmのろ過膜を含むことを特徴とする、請求項1に記載の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法。
【請求項5】
前記最終分離された2,6−ナフタレンジカルボン酸結晶は、10〜100μmの平均結晶サイズを有することを特徴とする、請求項1に記載の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製方法。
【請求項6】
結晶化後に得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸結晶を精製する装置において、前記装置は、
(a)晶析装置からスラリー状の2,6−ナフタレンジカルボン酸結晶および母液を受け取り、前記結晶から母液を分離する第1焼結金属膜ろ過装置;
(b)前記焼結金属膜ろ過装置から分離された結晶を高温の水で洗浄し、前記結晶から第2母液を分離する第2焼結金属膜ろ過装置;
(c)前記第1および第2焼結金属膜ろ過装置に高温の水を供給する水貯蔵槽;
(d)前記第2焼結金属膜ろ過装置によりろ過された結晶を遠心分離して2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を提供する遠心分離機;および
(e)前記得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸の結晶性粉末を乾燥する乾燥機を含むことを特徴とする2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製装置。
【請求項7】
前記装置は、
前記焼結金属膜ろ過装置に連結されて固液分離された母液を貯蔵する第1母液貯蔵槽;
前記第2ろ過装置に連結されて第2ろ過装置からの洗浄母液を貯蔵する洗浄母液貯蔵槽;および
前記遠心分離機の前段に配置された貯蔵槽をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製装置。
【請求項8】
前記焼結金属膜ろ過装置は、200〜250℃の高温の溶媒が流入する2つの流入口;ろ過された母液が排出されるろ過母液排出口;導入される溶媒および移送されるスラリーの圧力のバランスをとるためのバランスライン;結晶化スラリーが流入する流入口;分離された結晶性粉末が溶媒に混合されて排出される出口;気体および蒸気または圧力が放出される排出口;膜の性能および圧力を制御するための圧力計;装置内部温度を測定するための温度計;および内部圧力を制御するための加圧口を含むことを特徴とする、請求項6に記載の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製装置。
【請求項9】
前記焼結金属膜ろ過装置は、長さ50cm〜2m、直径10〜50cmおよび厚さ0.1〜1cmのフィルターと前記フィルターの下部まで実質的に伸びていて前記フィルターより0.5〜2cm短い長さを有する内部チューブとを含むことを特徴とする、請求項6に記載の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製装置。
【請求項10】
前記焼結金属膜ろ過装置は、ステンレス鋼、耐食合金または耐熱合金でできている孔径0.1〜5μmのろ過膜を含むことを特徴とする、請求項6に記載の2,6−ナフタレンジカルボン酸の精製装置。

【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−514757(P2010−514757A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543943(P2009−543943)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006864
【国際公開番号】WO2008/082145
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(501434948)ヒョスン・コーポレーション (18)
【氏名又は名称原語表記】HYOSUNG CORPORATION
【Fターム(参考)】