説明

高純度シリコンの製造方法及び製造装置並びに高純度シリコン

【解決手段】不純物を含むシリコンを加熱溶融し、又は不純物を含むシリコンと不純物精製用添加剤を含む固体とをそれぞれが溶融するよう加熱し、溶融状態のシリコン又は上記シリコン及び上記不純物精製用添加剤を含む融液中に不純物精製用気体として窒素を含む気体を吹き込むことにより、シリコン中の不純物を低減することを特徴とする高純度シリコンの製造方法。
【効果】本発明によれば、金属Si中の不純物、特にBとP、さらにAl,Ca,Ti,Ta,V等の金属不純物を1つの工程で同時に低減することができる。また、一般的な大気開放炉を使用するため、高真空雰囲気も必要とせず、さらに、電子ビームやプラズマトーチ等の高価な設備も不要であるため、設備投資額を大幅に低減できる。この結果、極めて安価にB,Pと共に、Al,Ca,Ti,Ta,V等の不純物が低減された金属Siを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属シリコンから不純物を低減する方法に関し、さらに詳述すると、金属シリコンから、特にホウ素(B),リン(P)を除去すると同時に、アルミニウム(Al),カルシウム(Ca),チタン(Ti),タンタル(Ta),バナジウム(V)を簡単な方法で、効果的に低減し、高純度化するシリコンの製造方法及び製造装置、並びにこれらにより得られる高純度シリコンに関する。
【背景技術】
【0002】
石油などの化石燃料の代替エネルギーとして、二酸化炭素の排出量が少なく、再生可能な自然エネルギー源が注目されている。中でも太陽電池は、太陽光から容易に電気エネルギーを得ることができる。現在、実用段階にある商用太陽電池の大部分は、シリコン(Si)を用いたシリコン系太陽電池であり、一般家庭への普及拡大にコストの低減が望まれている。
【0003】
シリコンは、一般的に珪石(SiO2)を炭素で還元して得る。これを一般的に金属グレードシリコン(MG−Si)と呼び、純度は98〜99%程度で、鉄,アルミニウム,チタン等の金属不純物が1〜2%と、半導体のドーパント材料であるB,P等が数質量ppm〜数十質量ppm含まれている。このMG−Siをシーメンス法により精製し、さらにCZ法やFZ法により純度を99.999999999%(11N)程度にまで超高純度化し、各種半導体の製造に使用する。これを半導体用シリコン(SE−Si)と呼ぶ。
【0004】
太陽電池に使用されるシリコンは、99.9999%(6N)程度の純度が必要とされ、各金属不純物は0.1質量ppm以下に、ドーパントとして作用するB,Pも0.3質量ppm以下であることが要求される。これを一般的にソーラーグレードシリコン(SOG−Si)と呼ぶ。SE−SiはSOG−Siの純度の要求値を十分満たしている。
【0005】
しかしながら、SE−Si製造に用いられるシーメンス法は、MG−Siを塩素と反応させて気体化し、さらに水素と混合し、電流で赤熱させた純粋Si上に還元・析出させるという複雑な工程と、大量のエネルギーを要する。したがって、コストが高く、大量にSiを必要とする太陽電池の低コスト化の障害となる。
【0006】
そこで、MG−Siから簡便な手法で、安価なSOG−Siを得る試みが多くなされてきた。例えば、MG−Si中の不純物のうち、Pに対しては、Si融点近傍でのPの蒸気圧が比較的高いことから、高真空下及び局所高温加熱の一方あるいは両方の処理により揮発除去する方法が提案されている。しかし、Fe,Al,Ti等の金属不純物及びBは、Si融点近傍での蒸気圧が低いため揮発除去することが困難である。
【0007】
Fe,Al,Ti等の金属不純物低減については、Siの固液間における分配係数が小さいことを利用して一方向凝固法で低減する方法が提案されている。一方、Bは、分配係数が0.8程度であり、工業的に一方向凝固を利用して低減することは困難である。そこで、B低減については、種々の方法が提案されている。
【0008】
特開平9−202611号公報(特許文献1)には、1400℃以下で分解し、H2O及び/又はCO2を発生する1種又は2種以上の固体をAr、H2、COなどのキャリアガスと共に溶融Si浴中に吹き込むBの低減方法が提案されている。
【0009】
特開2003−12317号公報(特許文献2)には、ホウ素濃度が100質量ppm以下であるSiに塩基性成分を含むフラックスを添加し、これらを溶融させるフラックス添加工程と、溶融Si中にノズルを浸漬し、酸化性気体を吹き込む反応工程と、Siからフラックスを除去するフラックス除去工程とを有するシリコンの精製方法が提案されており、フラックスにはCaO、CaCO3又はNa2Oを含む化合物、特にCaO−CaF2混合フラックスが好ましいBの低減方法が開示されている。
【0010】
特許第3205352号公報(特許文献3)には、溶融Siの溶湯面に、不活性気体又はこれにH2を混入した混合気体に水蒸気を添加した気体をプラズマガスとして用いて発生させたプラズマガスジェット流を噴射して溶融Siを撹拌するBの低減方法が開示されている。
【0011】
特許第3325900号公報(特許文献4)には、金属Siを真空下において電子ビーム等で溶解し、その含有するPを気化脱Pした後、溶湯から不純物成分を除去するための凝固を行い、鋳塊を得る。次いで、鋳塊の不純物濃化部を切断、除去し、切断除去後の残部を再溶解後、酸化性雰囲気下でプラズマトーチ等を用いて加熱し、Bを低減後、さらに不純物を除去するために鋳型に鋳込み、一方向凝固する方法が開示されている。
【0012】
しかし、特許文献1〜3の方法は、いずれもB低減を主眼にしており、Pの低減には触れていない。従って、別途P低減のための工程が必要になる。さらに、特許文献1〜3は、金属不純物の低減に触れていない。従って、別途金属不純物低減のための工程も必要になる。
【0013】
また、特許文献1には不純物精製用添加剤についての記述は無く、効果はキャリアガスと共に吹き込まれた固体が分解して発生したH2O及び/又はCO2によるものに限定される。特許文献2の方法は、酸化性気体によりSiの酸化がBの酸化に優先して進行し、SiがSiO2となるため、Siの収率が低下し、生産性が低く、工業的な利用は制限される。
【0014】
特許文献3にも、不純物精製用添加剤についての記述は無く、効果は吹き付けるプラズマガスジェット流によるものに限定される。さらに、特許文献3によるプラズマ溶解法では、高価なプラズマトーチを設置する必要があるだけでなく、不純物低減の反応領域がプラズマ直下の火点に限定されるため、生産性が低く、特許文献1〜3の方法は、いずれも低コストのSOG−Siの製造には不適である。
【0015】
特許文献4の方法は、B,Pと金属不純物の除去が別の工程で行われており、非常に煩雑である。また、B除去に関して、プラズマトーチを使用するなど高価な設備を必要としている。さらに、特許文献4の方法は、金属不純物除去のための凝固精製を2回行うもので、溶解及び凝固中の投入エネルギーや、不純物濃化部の切断除去による原料Siの損失が大きいなど、やはり低コストのSOG−Siの製造には不適である。そのため、いずれの方法も工業化には至っていない。
【0016】
【特許文献1】特開平9−202611号公報
【特許文献2】特開2003−12317号公報
【特許文献3】特許第3205352号公報
【特許文献4】特許第3325900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、Siの精製における、B,Pのみならず、Al,Ca,Ti,Ta,V等の不純物を同時に、かつ簡便で効果的に低減する高純度シリコンの製造方法及び製造装置、並びにこれらにより得られた高純度シリコンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、不純物を含むシリコンを溶融するように加熱して、又は不純物を含むシリコンと不純物精製用添加剤を含む固体とをそれぞれが溶融するよう加熱して、溶融状態のシリコン又はシリコンと不純物精製用添加剤とを含む融液中に、不純物精製用気体として窒素を含む気体を吹き込むことで、シリコン中の不純物、特にB,Pに加え、Al,Ca,Ti,Ta,V等の金属不純物を同時に、効率よく低減することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0019】
従って、本発明は、
〔1〕 不純物を含むシリコンを加熱溶融し、溶融状態のシリコン融液中に不純物精製用気体として窒素を含む気体を吹き込むことにより、シリコン中の不純物を低減することを特徴とする高純度シリコンの製造方法、
〔2〕 不純物を含むシリコンと、不純物精製用添加剤を含む固体とをそれぞれが溶融するよう加熱し、上記シリコン、及び上記不純物精製用添加剤を含む融液中に不純物精製用気体として窒素を含む気体を吹き込むことにより、シリコン中の不純物を低減することを特徴とする高純度シリコンの製造方法、
〔3〕 前記シリコンが、不純物としてホウ素及びリンのいずれか一方又は両方を含む〔1〕又は〔2〕記載の高純度シリコンの製造方法、
〔4〕 前記シリコンが、さらに不純物としてアルミニウム、カルシウム、タンタル、チタン及びバナジウムの1種又は2種以上を含む〔3〕記載の高純度シリコンの製造方法、
〔5〕 前記窒素を含む気体が、さらにヘリウム、ネオン、アルゴン、水蒸気及び塩素ガスの1種又は2種以上を含む気体である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の高純度シリコンの製造方法、
〔6〕 前記不純物精製用添加剤を含む固体が、二酸化ケイ素を含む固体である〔2〕〜〔5〕のいずれかに記載の高純度シリコンの製造方法、
〔7〕 前記不純物精製用添加剤を含む固体が、さらに酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化クロム及びフッ化カルシウムの1種又は2種以上を含む〔6〕記載の高純度シリコンの製造方法、
〔8〕 前記不純物精製用添加剤を含む固体が、さらにアルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸塩の水和物、アルカリ土類金属の炭酸塩の水和物、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物の1種又は2種以上を含む〔6〕又は〔7〕記載の高純度シリコンの製造方法、
〔9〕 〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の製造方法によって得られる高純度シリコン、
〔10〕 不純物を含むシリコン及び必要により不純物精製用添加剤を含む固体を収容する耐熱性容器と、上記シリコン及び上記添加剤をそれぞれが溶融するよう加熱する加熱手段と、該融液中に不純物精製用気体として窒素を含む気体を吹き込むための吹き込み手段と、必要により上記シリコン及び上記添加剤を分離する分離手段とを備えることを特徴とする高純度シリコンの製造装置
を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、金属Si中の不純物、特にBとP、さらにAl,Ca,Ti,Ta,V等の金属不純物を1つの工程で同時に低減することができる。また、一般的な大気開放炉を使用するため、高真空雰囲気も必要とせず、さらに、電子ビームやプラズマトーチ等の高価な設備も不要であるため、設備投資額を大幅に低減できる。この結果、極めて安価にB,Pと共に、Al,Ca,Ti,Ta,V等の不純物が低減された金属Siを得ることができる。
【0021】
本発明を用いて得られたシリコンは、一般的な一方向凝固等を施すことで、Al,Ca,Ta,Ti,V以外の金属不純物を低減し、極めて安価に純度6N程度の太陽電池に使用可能なソーラーグレードシリコン(SOG−Si)とすることができる。ここで、本発明を用いて得られたシリコンはドーパントであるB,Pと、金属不純物であるAl,Ca,Ta,Ti,Vが除去されているため、一方向凝固を施す回数が低減できる。従って、シリコンを溶解し凝固させるための投入エネルギーが低減でき、さらに、不純物濃縮部を切断、廃棄する量が低減できる。従って、コストと、廃棄物量を大幅に低減できる。
【0022】
また、本発明の方法により、金属シリコン(MG−Si)に限らず、半導体製造工程でB,P、その他の不純物をドープしたオフグレード品と呼ばれる廃Si材も精製することができる。なお、得られた高純度Siは、太陽電池用のSi原料に限定されることなく、高純度Siを必要とする各種産業分野の原材料、製品に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の製造方法は、不純物を含むシリコンを加熱溶融し、溶融状態のシリコン融液中に不純物精製用気体として窒素を含む気体を吹き込むことで、あるいは不純物を含むシリコンと、不純物精製用添加剤を含む固体とをそれぞれが溶融するよう加熱し、上記シリコン及び上記不純物精製用添加剤を含む融液中に窒素を含む気体を吹き込むことで、シリコン中の不純物、特にB,P及びAl,Ca,Ti,Ta,V等の金属不純物を同時に、かつ効率よく低減するものである。
【0024】
本発明の特徴は、金属シリコンを精製する気体として、窒素を含む気体を用いることである。この不純物精製用気体には、必要に応じてヘリウム、ネオン、アルゴン、水蒸気及び塩素ガスの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
また、本発明は、不純物を低減するために添加剤として、二酸化ケイ素を含む固体を用いることもできる。この不純物精製用添加剤には、必要に応じて酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化クロム及びフッ化カルシウムの1種又は2種以上と、さらに必要に応じてアルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸塩の水和物、アルカリ土類金属の炭酸塩の水和物、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物の1種又は2種以上とを用いることができる。
【0026】
そして、シリコン、あるいはシリコンと上記添加剤とを加熱溶融し、シリコン融液中、あるいはシリコン及び不純物精製用添加剤を含む融液中に、不純物精製用気体として窒素及び必要に応じてヘリウム、ネオン、アルゴン、水蒸気及び塩素ガスの1種又は2種以上を含む気体を吹き込むことで、シリコン中の不純物、特にB,P、さらに金属不純物のAl,Ca,Ti,Ta,V等を同時に低減する点にある。
【0027】
ここで、不純物精製用気体の窒素を含む気体は、溶融Si中の不純物のうち、特にB,P,Al,Ca,Ti,Ta,Vと反応して窒化物を生成する。各元素の主な窒化物生成反応の反応式を以下に示す。
2B+N2→2BN ・・・(1)
2P+N2→2PN ・・・(2)
2Al+N2→2AlN ・・・(3)
3Ca+N2→Ca32 ・・・(4)
2Ti+N2→2TiN ・・・(5)
2Ta+N2→2TaN ・・・(6)
2V+N2→2VN ・・・(7)
【0028】
これらの反応がシリコンと窒素の反応:
3Si+2N2→Si34 ・・・(8)
に優先して進行する。
【0029】
生成した各不純物元素の窒化物の中で、PNは気体として存在しており、溶融状態のシリコンより系外へ排出される。Ca32は融点が1195℃と、シリコンの融点(1410℃)より低いため、溶融状態のシリコン中では液体として混合している。その他の窒化物の融点は、いずれもSiの融点より高い。従って、溶融状態のシリコン中での存在形態は実際の処理温度に依存し、処理温度がそれぞれの不純物の窒化物の融点より低い場合は固体、処理温度がそれぞれの窒化物の融点より高い場合は液体で存在する。
【0030】
この場合、徐々に温度を低下させると、シリコンが固化する際に不純物元素の窒化物は固液界面において液相側へ排斥され濃縮される。その結果、固化初期から固化終了直前におけるシリコン中の不純物濃度が低減される。固化終了部分に濃縮された不純物の窒化物は該当部分のシリコンを切断し不純物低減部分と分離することで、上記不純物を低減したシリコンを得ることができる。
【0031】
不純物精製用添加剤を用いた場合、シリコンと不純物精製用添加剤を含む融液中に於ける不純物元素の窒化物の存在形態も上記と同様の傾向となる。シリコンと不純物精製用添加剤を含む融液中では、不純物元素の窒化物は、溶融不純物精製用添加剤中に取り込まれ、溶融シリコン中から除去されることにより、シリコン中の不純物濃度が低減される。
【0032】
上記作用についてより詳しく説明すると、本発明におけるB,P並びにAl,Ca,Ti,Ta,Vの不純物の低減反応は、次の(i)又は(i)〜(iii)を経る。
(i)不純物元素として含まれるB,P,Al,Ca,Ti,Ta,Vが、溶融シリコン中で、不純物精製用気体として吹き込まれた窒素を含む気体と反応し、窒化物を生成する。
(ii)溶融シリコン中で生成した不純物元素の窒化物が、溶融状態の不純物精製用添加剤へ取り込まれる。
(iii)不純物元素として含まれるB,P,Al,Ca,Ti,Ta,Vが、溶融シリコン中から不純物精製用添加剤へ取り込まれ、不純物精製用添加剤中で不純物精製用気体として吹き込まれた窒素を含む気体と反応し、窒化物を生成する。
【0033】
添加剤を用いず、溶融状態のシリコンに不純物精製用気体を吹き込む場合は(i)が進行する。一方、溶融シリコンと不純物精製用添加剤を含む融液中に不純物精製用気体を吹き込む場合は(i)、(ii)と共に(iii)が進行する。
【0034】
ここで、(i)、(iii)においてB,P,Al,Ca,Ti,Ta,Vと不純物精製用ガスである窒素を含む気体との反応は、反応場が高温であることから不純物元素と不純物精製用ガスの窒素を含む気体が接触した段階で、速やかに完了する。また、この反応は気体と液体の界面において進行する。従って、反応速度は窒素を含む気体の吹き込み方法、撹拌、混合等による気液の接触効率の改善によりに大きく増加する。
【0035】
また、(ii)、(iii)において、B,P,Al,Ca,Ti,Ta,V及びこれらと不純物精製用ガスである窒素を含む気体との反応生成物が、溶融Si中から溶融不純物精製用添加剤中へ移動するのは、これら不純物元素及び反応生成物と、溶融Si及び溶融不純物精製用添加剤との化学親和力の差によるものと考えられている。なお、反応の親和力とは等温等圧変化ではギブズ自由エネルギーの減少により、等温等積変化ではヘルムホルツ自由エネルギーの減少により表される。
【0036】
本発明においては、シリコン又はシリコンと不純物精製用添加剤を加熱して溶融状態とし、溶融状態のシリコン又はシリコンと不純物精製用添加剤の融液に、不純物精製用気体として窒素を含む気体を吹き込んで作用させる。この場合、本発明の製造装置(炉)としては、不純物を含むシリコン及び必要により不純物精製用添加剤を含む固体を収容する耐熱性容器と、上記シリコン及び上記添加剤をそれぞれが溶融するよう加熱する加熱手段と、該融液中に不純物精製用気体として窒素を含む気体を吹き込むための吹き込み手段と、必要により上記シリコン及び上記添加剤を分離する分離手段とを具備した装置を用いることができる。
【0037】
ここで、耐熱性容器は溶融温度あるいは溶融雰囲気を考慮して適宜選択すればよく、好ましくはムライト、黒鉛、アルミナ、マグネシア、石英等の耐熱材を用いることができる。
加熱手段は耐熱性容器の材質あるいは加熱効率を考慮すればよく、カーボン、SiC等を用いた抵抗加熱方式あるいは誘導加熱方式等を用いることができる。
不純物精製用気体の吹込み手段は、不純物精製用気体と、上記シリコン融液あるいは上記シリコン及び上記添加剤を含む融液との接触及び撹拌効率を考慮し、黒鉛、アルミナ等の吹込み管や耐熱容器底に設けられた吹込み孔等を用いることができる。
上記シリコンと上記添加剤の分離手段として、シリコンと添加剤を比重差を利用して2相に分離させた後、耐熱性容器を傾斜させる、あるいは耐熱性部材の管で下部相を吸引する吸引管等を用いることもできる。
【0038】
溶融温度としては、シリコン、あるいはシリコンと不純物精製用添加剤がそれぞれ溶融する温度であれば特に制限されないが、一連の反応を液相で行う点を考慮し、シリコンの融点(1410℃)以上であればよく、局所的な低温部を避けるために1450℃以上が好ましい。工業的な用途としては、2400℃以下、特に2200℃以下が好ましい。これより高温であると、溶融シリコンの蒸発量が多くなり、あるいは溶融シリコンと精製用添加剤が激しく反応するため、シリコンの収率が低下し、炉材の損傷が激しくなる場合がある。
【0039】
また、上記より不純物精製用添加剤を用いる場合、その融点は、2400℃以下、特に2200℃以下が好ましく、より好ましくは2000℃以下である。融点がSiの融点に対し低すぎる場合は、不純物精製用添加剤の組成が変化し、所望の効果が得られなくなるおそれがあるため、800℃以上、特に1200℃以上がよい。
【0040】
本発明においては、溶融シリコン又はシリコン及び不純物精製用添加剤を含む融液中に、不純物精製用気体である窒素を含む気体を吹き込む。この場合、窒素を含む気体に、ヘリウム、ネオン、アルゴン、水蒸気及び塩素の1種又は2種以上を含むこともできる。このとき、ヘリウム、ネオン、アルゴンは不純物との反応には関与せず、不純物精製用気体である窒素を含む気体の濃度を調節、あるいは吹き込みガスの線速を増減し、撹拌状態を変化することで不純物精製用気体である窒素と溶融Si中の不純物との気液接触効率を改善、調節し、反応式(1)〜(7)で表される不純物の反応の進行を促進する効果がある。
【0041】
水蒸気は、不純物精製用気体である窒素と不純物との反応生成物以外に、溶融Si中のBとの反応によりHBO2,H3BO3等の化合物を生成することで、溶融Si中のBを低減すると考えられる。また、塩素は溶融Si中のP,Bとの反応によりPCl3,BCl3等を生成することで、溶融Si中のP,Bを低減すると考えられる。
【0042】
本発明において用いる気体が、窒素と、ヘリウム、ネオン、アルゴン、水蒸気及び塩素の1種又は2種以上とを含む混合気体の場合、その組成は全気体量に対し、ヘリウム、ネオン、アルゴンの1種又は2種以上の割合は0〜99体積%であることが好ましく、より好ましくは50〜80体積%である。また、水蒸気の割合は0〜70体積%であることが好ましく、より好ましくは5〜50体積%であって、塩素の割合は0〜70体積%が好ましく、より好ましくは5〜50体積%である。上記範囲を外れると、B,P,Al,Ca,Ti,Ta,Vとの反応生成物の生成の減少、溶融Si又はSi及び不純物精製用添加剤を含む融液の撹拌効果の減少等に伴い、いずれもB,P,Al,Ca,Ti,Ta,Vの低減率が低下する場合がある。ただし、いずれもその範囲に限定されるものではない。
【0043】
不純物精製用気体を吹き込む方法としては、不純物精製用添加剤を用いる場合、不純物精製用添加剤の密度が溶融Siの密度より小さいときは、反応容器中、溶融Siが下層、溶融不純物精製用添加剤が上層にあるが、上層及び下層のどちらの融液の中に吹き込んでもよいし、上下層の両方に吹き込んでもよいが、上下層の両方に吹き込むことが好ましい。上層及び下層のいずれか一方に吹き込むときは、特に、下層の溶融Si中に吹き込むことが好ましく、この場合、吹き込まれた気体は、溶融Si中で不純物と反応すると共に、溶融Siを経て上層の溶融した不純物精製用添加剤へ到達し、不純物と反応する。
【0044】
不純物精製用添加剤の密度が溶融Siの密度より大きい場合は、反応容器の下層に不純物精製用添加剤が沈み、上層が溶融Siとなる。この場合も上層及び下層のいずれか一方又は両方の層の融液中に吹き込んでもよいが、上下層の両方に吹き込むことが好ましく、上層及び下層のいずれか一方に吹き込む場合、特に、下層の不純物精製用添加剤の融液中に前記気体を吹き込むことが好ましい。吹き込まれた気体は、下層の溶融した不純物精製用添加剤中で不純物と反応すると共に、上層の溶融Siへも到達し、不純物と反応する。
【0045】
不純物精製用気体は、アルミナ、ジルコニア、黒鉛、石英等の耐火性材料からなる中空管等を用いて反応容器中のSi溶融体内、あるいは溶融Si及び/又は溶融添加剤中に吹き込み、吹き込む気体により、溶融状態のSi、もしくは溶融不純物精製用添加剤が反応容器外へ飛散しない程度まで気体流速を増すことが好ましい。気体流速を増すことで溶融状態のSiと溶融不純物精製用添加剤を撹拌する効果が強まり、反応を促進する効果が得られる。吹き込みは1〜180分間、特に20〜120分間継続することが好ましい。
【0046】
不純物精製用添加剤を用いる場合、不純物精製用添加剤の融点や粘度を調節するために、二酸化ケイ素を含む固体を用いることが好ましい。さらに酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化クロム及びフッ化カルシウムの1種又は2種以上を不純物精製用添加剤に含有させることもできる。不純物精製用添加剤にこれらの物質を添加することで、不純物精製用添加剤の融点、粘度を調節し、シリコンとの良好な接触状態を発生、維持する溶媒の役割を担う。さらに、溶融Siと不純物精製用添加剤の分離を良好とし、不純物精製用添加剤が溶融Si中に混入し、Siの純度の低下を抑制する作用もある。
【0047】
また、不純物精製用添加剤にアルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸塩の水和物、アルカリ土類金属の炭酸塩の水和物、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物の1種又は2種以上を含有させることもできる。
【0048】
ここで、具体的にアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属は、上記炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムに含まれるカルシウムを除く、ベリリウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。これらの物質の存在により、B,P,Al,Ca,Zr,Ti,V,Taと、不純物精製用気体である窒素及びヘリウム、ネオン、アルゴン、水蒸気、塩素の1種又は2種以上を含む気体との反応を促進する効果がある。
【0049】
本発明において、不純物精製用添加剤の使用量は、合計使用量として、金属シリコンの10〜100質量%が好ましく、より好ましくは20〜80質量%である。不純物精製用添加剤が上記の範囲より多い場合、使用済みの不純物精製用添加剤が大量に発生するため、これを処理、再利用する費用が増大し、工業的な有効性が低下するおそれがある。上記の範囲より少ない場合、溶融Siから不純物精製用添加剤層へ移動する不純物元素と窒素を含む気体との反応生成物が減少し、不純物の低減率が低下するおそれがある。
【0050】
また、二酸化ケイ素の使用量は、不純物精製用添加剤の20質量%以上、特に40質量%以上が好ましく、100質量%以下、特に90質量%以下、とりわけ80質量%以下が好ましい。二酸化ケイ素の使用量が上記の範囲より少ない場合、溶融Siから不純物精製用添加剤層へ移動する不純物、及び不純物の窒化物が減少し、Si中の不純物の低減率が低下するおそれがある。
【0051】
不純物精製用添加剤に、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化クロム及びフッ化カルシウムの1種又は2種以上を添加する場合、その合計量は、不純物精製用添加剤の合計量の0〜80質量%、特に20〜50質量%が好ましい。
【0052】
これらの化合物は、不純物精製用添加剤の融点、及び反応温度における不純物精製用添加剤の粘度を考慮して適宜増減することが好ましい。これらの化合物の使用量が多すぎる場合、溶融Siにこれらの化合物が不純物として混入するおそれがあり、処理後のSi純度が低下するおそれがある。少なすぎる場合、溶融Siから不純物精製用添加剤層へ移動する不純物及び不純物の窒化物が減少し、Si中の不純物の低減率が低下するおそれがある。
【0053】
不純物精製用添加剤に、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸塩の水和物、アルカリ土類金属の炭酸塩の水和物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物の1種又は2種以上を添加する場合、その合計量は、不純物精製用添加剤の合計量の0〜80質量%、特に20〜50質量%が好ましい。多すぎる場合、溶融Siにこれらの化合物が不純物として混入するおそれがあり、処理後のSi純度が低下するおそれがある。少なすぎる場合、溶融Siから不純物精製用添加剤層へ移動する不純物が減少し、Si中の不純物の低減率が低下するおそれがある。
【0054】
ここで、精製対象となる不純物を含有するシリコンとしては、金属グレード(MG)シリコン、あるいは半導体用単結晶製造工程の端材を用いることができる。一般的な金属グレード(MG)シリコンは、B,Pを3〜100質量ppm程度、金属不純物としてFe,Al,Ca,Zr,Ti,V,Ta等を4〜600質量ppm程度、それぞれ含有する。半導体用単結晶製造工程のBドープを施した端材はより高濃度にBを含むが、いずれのシリコンも本発明の精製方法を適用できる。金属グレード(MG)シリコンは、本発明の精製方法によりAl,Zr,Ti,V,Ta等の不純物を除去できるため、本発明を実施する前、あるいは実施した後にわずかに残存するFeを一方向凝固法等の公知の精製方法を行って、低減することができる。
【0055】
本発明によれば、B,Pをそれぞれ0.3質量ppm以下に低減し、Al,Ca,Cr,Zr,Ta,Ti,V,Mn等の金属不純物をそれぞれ0.3質量ppm以下に低減した高純度シリコンを得ることができる。なお、不純物の濃度は、高周波プラズマ発光分光分析法(ICP−AES法)等により測定することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において使用した不純物を含有するシリコンの各不純物濃度は以下の通りである。
B:15質量ppm、P:20質量ppm、Al:600質量ppm、
Ca:400質量ppm、Ti:500質量ppm、Ta:4質量ppm、
V:4質量ppm
不純物濃度の測定は、ICP−AES法((株)Perkin Elmer製)により行った。
【0057】
[実施例1]
内径100mmφ黒鉛製るつぼにシリコン0.5kgを入れ、500℃/時で昇温し、1590℃に加熱した。シリコンが融解後、アルミナ製内径6mmφ円管を用いて窒素をシリコン融液に吹き込んだ。60分後気体の吹き込みを終了し、100℃/時で降温した。固化後のシリコンから不純物分析用サンプルを採取した。
固化初期部のサンプル中の不純物濃度は、
B:0.17質量ppm、P:0.13質量ppm、Al:0.2質量ppm、
Ca:0.1質量ppm、Ti:0.2質量ppm、Ta:0.1質量ppm、
V:0.1質量ppm
であった。
固化率5%〜固化率97%部分のサンプル中の不純物濃度は、
B:0.17質量ppm、P:0.13質量ppm、Al:0.2質量ppm、
Ca:0.1質量ppm、Ti:0.2質量ppm、Ta:0.1質量ppm、
V:0.1質量ppm
であった。
固化率97%以降部分のサンプル中の不純物濃度は、
B:0.2質量ppm、P:0.16質量ppm、Al:0.3質量ppm、
Ca:0.3質量ppm、Ti:0.2質量ppm、Ta:0.1質量ppm、
V:0.1質量ppm
であった。
なお、固化初期部とは溶融状態のシリコンが冷却され、固化が始まる部位であり、固化率とは溶融シリコンの固化が進行する過程において、全シリコンに対する固化したシリコンの質量の比率である。
【0058】
[実施例2]
内径100mmφ黒鉛製るつぼにシリコン0.5kgと不純物精製用添加剤として二酸化ケイ素0.25kg、酸化カルシウム0.15kgを入れ、500℃/時で昇温し、1590℃に加熱した。シリコン及び不純物精製用添加剤が融解後、アルミナ製内径6mmφ円管を用いて窒素25体積%、アルゴン75体積%の混合気体を、シリコン及び不純物精製用添加剤を含む融液(上層と下層の両方)に吹き込んだ。60分後気体の吹き込みを終了し、溶融シリコンから不純物分析用サンプルを採取した。サンプル中の不純物濃度は、
B:0.14質量ppm、P:0.12質量ppm、Al:0.1質量ppm、
Ca:0.1質量ppm、Ti:0.1質量ppm、Ta:0.1質量ppm、
V:0.1質量ppm
であった。
【0059】
[実施例3]
内径100mmφ黒鉛製るつぼにシリコン0.5kgと不純物精製用添加剤として二酸化ケイ素0.3kg、酸化アルミニウム0.1kgを入れ、500℃/時で昇温し、1700℃に加熱した。シリコン及び不純物精製用添加剤が融解後、アルミナ製内径6mmφ円管を用いて窒素25体積%、アルゴン75体積%の混合気体を、シリコン及び不純物精製用添加剤を含む融液(上層と下層の両方)に吹き込んだ。60分後気体の吹き込みを終了し、溶融シリコンから不純物分析用サンプルを採取した。サンプル中の不純物濃度は、
B:0.14質量ppm、P:0.12質量ppm、Al:0.1質量ppm、
Ca:0.1質量ppm、Ti:0.1質量ppm、Ta:0.1質量ppm、
V:0.1質量ppm
であった。
【0060】
[実施例4]
内径100mmφ黒鉛製るつぼにシリコン0.5kgと不純物精製用添加剤として二酸化ケイ素0.2kg、酸化カルシウム0.1kg、フッ化カルシウム0.1kgを入れ、500℃/時で昇温し、1700℃に加熱した。シリコン及び不純物精製用添加剤が融解後、アルミナ製内径6mmφ円管を用いて、窒素30体積%、アルゴン70体積%の混合気体をシリコン及び不純物精製用添加剤を含む融液(上層と下層の両方)に吹き込んだ。60分後気体の吹き込みを終了し、溶融シリコンから不純物分析用サンプルを採取した。サンプル中の不純物濃度は、
B:0.14質量ppm、P:0.11質量ppm、Al:0.1質量ppm、
Ca:0.1質量ppm、Ti:0.1質量ppm、Ta:0.1質量ppm、
V:0.1質量ppm
であった。
【0061】
[実施例5]
内径100mmφ黒鉛製るつぼにシリコン0.5kgと不純物精製用添加剤として二酸化ケイ素0.25kg、炭酸カルシウム0.15kgを入れ、500℃/時で昇温し、1700℃に加熱した。シリコン及び不純物精製用添加剤が融解後、アルミナ製内径6mmφ円管を用いて窒素50体積%、アルゴン40体積%、塩素10体積%の混合気体をシリコン及び不純物精製用添加剤を含む融液(上層と下層の両方)に吹き込んだ。60分後気体の吹き込みを終了し、溶融シリコンから不純物分析用サンプルを採取した。サンプル中の不純物濃度は、
B:0.12質量ppm、P:0.10質量ppm、Al:0.1質量ppm、
Ca:0.1質量ppm、Ti:0.1質量ppm、Ta:0.1質量ppm、
V:0.1質量ppm
であった。
【0062】
[実施例6]
内径100mmφ黒鉛製るつぼにシリコン0.5kgと不純物精製用添加剤として二酸化ケイ素0.25kg、炭酸カルシウム0.15kgを入れ、500℃/時で昇温し、1700℃に加熱した。シリコン及び不純物精製用添加剤が融解後、アルミナ製内径6mmφ円管を用いて窒素50体積%、アルゴン40体積%、水蒸気10体積%の混合気体をシリコン及び不純物精製用添加剤を含む融液(上層と下層の両方)に吹き込んだ。60分後気体の吹き込みを終了し、溶融シリコンから不純物分析用サンプルを採取した。サンプル中の不純物濃度は、
B:0.13質量ppm、P:0.12質量ppm、Al:0.1質量ppm、
Ca:0.1質量ppm、Ti:0.1質量ppm、Ta:0.1質量ppm、
V:0.1質量ppm
であった。
【0063】
[実施例7]
内径100mmφ黒鉛製るつぼにシリコン0.5kgと不純物精製用添加剤として二酸化ケイ素0.25kg、酸化カルシウム0.15kg、酸化ナトリウム0.15kgを入れ、500℃/時で昇温し、1700℃に加熱した。シリコン及び不純物精製用添加剤が融解後、アルミナ製内径6mmφ円管を用いて窒素50体積%、アルゴン50体積%の混合気体をシリコン及び不純物精製用添加剤を含む融液(上層と下層の両方)に吹き込んだ。60分後気体の吹き込みを終了し、溶融シリコンから不純物分析用サンプルを採取した。サンプル中の不純物濃度は、
B:0.13質量ppm、P:0.11質量ppm、Al:0.1質量ppm、
Ca:0.1質量ppm、Ti:0.1質量ppm、Ta:0.1質量ppm、
V:0.1質量ppm
であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物を含むシリコンを加熱溶融し、溶融状態のシリコン融液中に不純物精製用気体として窒素を含む気体を吹き込むことにより、シリコン中の不純物を低減することを特徴とする高純度シリコンの製造方法。
【請求項2】
不純物を含むシリコンと、不純物精製用添加剤を含む固体とをそれぞれが溶融するよう加熱し、上記シリコン及び上記不純物精製用添加剤を含む融液中に不純物精製用気体として窒素を含む気体を吹き込むことにより、シリコン中の不純物を低減することを特徴とする高純度シリコンの製造方法。
【請求項3】
前記シリコンが、不純物としてホウ素及びリンのいずれか一方又は両方を含む請求項1又は2記載の高純度シリコンの製造方法。
【請求項4】
前記シリコンが、さらに不純物としてアルミニウム、カルシウム、タンタル、チタン及びバナジウムの1種又は2種以上を含む請求項3記載の高純度シリコンの製造方法。
【請求項5】
前記窒素を含む気体が、さらにヘリウム、ネオン、アルゴン、水蒸気及び塩素ガスの1種又は2種以上を含む気体である請求項1〜4のいずれか1項記載の高純度シリコンの製造方法。
【請求項6】
前記不純物精製用添加剤を含む固体が、二酸化ケイ素を含む固体である請求項2〜5のいずれか1項記載の高純度シリコンの製造方法。
【請求項7】
前記不純物精製用添加剤を含む固体が、さらに酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化クロム及びフッ化カルシウムの1種又は2種以上を含む請求項6記載の高純度シリコンの製造方法。
【請求項8】
前記不純物精製用添加剤を含む固体が、さらにアルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸塩の水和物、アルカリ土類金属の炭酸塩の水和物、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の水酸化物の1種又は2種以上を含む請求項6又は7記載の高純度シリコンの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の製造方法によって得られる高純度シリコン。
【請求項10】
不純物を含むシリコン及び必要により不純物精製用添加剤を含む固体を収容する耐熱性容器と、上記シリコン及び上記添加剤をそれぞれが溶融するよう加熱する加熱手段と、該融液中に不純物精製用気体として窒素を含む気体を吹き込むための吹き込み手段と、必要により上記シリコン及び上記添加剤を分離する分離手段とを備えることを特徴とする高純度シリコンの製造装置。

【公開番号】特開2010−52960(P2010−52960A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216877(P2008−216877)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】