説明

高純度シリコンの製造装置及び製造方法

【解決課題】安価な冶金級金属シリコンを原料とし、スラグ精錬法によって太陽電池用途に好適な純度6N以上の高純度シリコン、特にボロン含有量が少なくとも0.3質量ppm以下の高純度シリコンを工業的規模で安価に製造するのに適した高純度シリコンの製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】スラグ精錬法による高純度シリコンの製造装置及び製造方法であり、ルツボの外壁面外側にはルツボ内の溶融シリコンを直接に電磁誘導加熱する機能を有する直接電磁誘導加熱手段が配設されていると共に、ルツボは少なくとも直接電磁誘導加熱手段への非通電時に溶融シリコンがルツボ内壁面と接触する領域が耐酸化性材料で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高純度シリコンを製造するための製造装置及びこれを用いた高純度シリコンの製造方法に係り、特に太陽電池等の用途に好適な純度99.9999質量%(6N)以上の高純度シリコンをスラグ精錬法により製造するのに適した高純度シリコンの製造装置及びこれを用いた高純度シリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池に使用されるシリコン(Si)については、一般に6N以上の純度であって各種の金属不純物が0.1質量ppm以下であり、ボロン(B)が少なくとも0.3質量ppm以下であることが必要であるとされている。そして、このような条件を満たすシリコンとしては、半導体用途に用いられる純度11N以上の超高純度シリコンが知られている。
【0003】
しかしながら、この半導体用途に用いられるシリコンは、珪石を還元して得られた純度98質量%程度の冶金級金属シリコンをシリコン塩化物に変換し、次いでこのシリコン塩化物を蒸留した後に熱分解する、いわゆるシーメンス法で製造されており、非常に複雑な製造工程及び極めて厳格な工程管理を必要とし、必然的に製造コストが高くなる。このため、この半導体用途のシリコンは、需要の伸びに伴って低コスト化が求められている太陽電池用途には、過剰品質であって製造コストが高くつきすぎ、適していない。
【0004】
そこで、従来においても、安価な冶金級金属シリコンを原料として用い、これを更に冶金学的な方法、特に溶融シリコンとより低密度の溶融スラグとを接触させて溶融シリコン中の不純物を溶融スラグ中に移動させるスラグ精錬法により精製し、安価に純度6N以上の太陽電池用途に適したシリコンを製造する試みが行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、化学的精製段階と所定の条件下での真空蒸発とを組み合わせて冶金品質ケイ素材料を精製する方法が記載されており、特に実施例3には、誘導加熱黒鉛ルツボ内において、30質量ppmのホウ素を含有するケイ素材料を工業的純度の抽出用溶融物(CaF2+CaO+SiO2)と共に黒鉛ルツボを介して間接的に加熱溶融し、1450〜1500℃で30分間保持し、溶融物抽出を行った後、誘導加熱真空溶融装置を用いて所定の条件下で真空蒸発を行い、ホウ素含有量が8質量ppmの太陽電池用途のシリコンを製造したことが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、電気抵抗炉又は誘導炉のような通常の溶融炉を用い、粉砕された形態の粗製ケイ素をその溶融前にアルカリ土類金属酸化物及び/又はアルカリ金属酸化物からなるスラグ又はスラグ成分と混合し、その後に溶融させて溶融シリコンと溶融スラグとを接触させ、ケイ素を精製する方法が開示されている。
【0007】
更に、特許文献3には、アルミナルツボを用い、ホウ素濃度が100質量ppm以下のシリコンにCaO、CaCO3又はNa2O等の塩基性成分を含むフラックスを添加して溶融させるフラックス添加工程と、フラックス添加工程終了後のシリコン中に酸素、水蒸気、空気又は二酸化炭素等の酸化性ガスを吹き込む反応工程と、反応工程終了後のシリコンからフラックスを除去するフラックス除去工程とを備えたシリコンの精製方法が提案されている。
【0008】
そして、非特許文献1には、石英ルツボを備えた電気抵抗炉を用い、アルカリ土類金属酸化物より更に強塩基性のNaO0.5を添加したSiO2飽和NaO0.5-CaO-SiO2系フラックスを用いて溶融シリコンとの分配実験を行い、ボロンの分配挙動を熱力学的に考察したことが報告されている。
【0009】
また、特許文献4には、黒鉛製のルツボを加熱することによりこのルツボ内の原料シリコン及びスラグ材料を間接的に加熱して溶融する電磁誘導加熱装置を用い、ボロン又は炭素等の不純物元素を含むシリコンを溶融状態に保持し、この溶融シリコンに主としてCaOからなる不純物元素吸収媒体を添加し、回転駆動機構で機械的に攪拌し、また、不純物元素と反応して気体状化合物を形成する水蒸気等の酸化性成分を含む処理ガスを導入し、不純物元素吸収媒体を経由して処理ガスを溶融シリコン外に放出する金属の精製方法が記載されている。
【0010】
更に、特許文献5には、極簡便な大気溶融炉を用い、不純物ホウ素を含有する金属シリコンをその融点以上2200℃以下に加熱して溶融した後、この溶融シリコンに二酸化珪素(SiO2)を主成分とする固体とアルカリ金属の炭酸塩又は炭酸塩水和物の一方又は両方を主成分とする固体とを添加して溶融スラグを形成せしめ、これら溶融シリコンと溶融スラグとを接触させることにより、また、必要により一方向凝固法や真空溶解法を併用することにより、シリコン中のホウ素を0.3質量ppm以下まで、更に0.1質量ppm以下まで除去することが記載されている。
【0011】
ところで、安価な冶金級金属シリコン(以下、「原料シリコン」という。)を原料とし、スラグ精錬法によって太陽電池用途に適した高純度シリコン、特にボロン含有量が少なくとも0.3質量ppm以下の高純度シリコンを工業的規模で安価に製造するためには、先ず第一に、溶融シリコン中のボロンは酸化されなければ溶融スラグへの移動が促進されないことから、ボロン酸化性の強いスラグ材料を用いることが必要であり、また第二に、溶融シリコン中のボロンの質量%濃度A(%B)と溶融スラグ中のボロンの質量%濃度B(%B)との比(B/A)で表される分配比を考慮するとスラグ材料を原料シリコンに対して比較的高い割合で使用する必要があり、更に第三に、工業的規模に見合う大量の溶融シリコン及び溶融スラグ、特に溶融シリコンを均一にかつ効率良く加熱することが必要である。
【0012】
しかるに、これまでに提案された方法及び装置においては、例えばNa2O等のボロン酸化性の強いスラグ材料を用いてスラグ精錬を行う場合でも、ボロン含有量0.3質量ppm以下を達成するためには、原料シリコン100質量部に対してスラグ材料を通常1000質量部以上、好ましくは10000質量部以上の割合で使用する必要があり、しかも、予めスラグ材料の全量を溶融してから溶融シリコンに接触させると、スラグ材料溶融初期の強い酸化力を十分に利用できないという問題があり、工業的規模で大量に製造しようとするとあまりにも大容量のルツボの使用が必要になり、また、溶融シリコンを均一にかつ効率的に加熱することも困難になって、工業的規模で実施するにはあまり現実的でない。
【0013】
【特許文献1】特開昭56-32319号公報
【特許文献2】特開昭58-130114号公報
【特許文献3】特開2003-12317号公報
【特許文献4】特開2003-213345号公報
【特許文献5】特開2005-247623号公報
【非特許文献1】「資源と素材」Vol.118, p.497-505 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明者らは、太陽電池用途に適した高純度シリコンをスラグ精錬法により工業的規模で安価に製造することができるような高純度シリコンの製造装置を開発すべく種々の検討を行った結果、加熱手段としてルツボ内の溶融シリコンを直接に電磁誘導加熱する直接電磁誘導加熱手段を採用し、また、このルツボについては、少なくとも直接電磁誘導加熱手段への非通電時に溶融シリコンがルツボ内壁面と接触する領域を耐酸化性材料で形成することにより、目的を達成できることを見い出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、先ず、本発明者らは、原料シリコンのスラグ精錬に際し、ルツボ内の溶融シリコンの上にスラグ材料を供給するスラグ供給手段と精錬済みスラグを炉外に排出するスラグ排出手段とを用意し、上記スラグ供給手段からルツボ内の溶融シリコンの上にスラグ材料を複数回に分けて供給すると共に、上記スラグ排出手段を用いて各回の精錬済みスラグをその都度炉外に排出し、これによって、使用するルツボの容量を必要最小限の大きさに抑え、また、ルツボ内の溶融シリコンの加熱手段については、ルツボ内の溶融シリコンを直接に電磁誘導加熱する直接電磁誘導加熱手段を採用し、これによって、ルツボ内の溶融シリコンを均一にかつ効率良く加熱できるようにし、原料シリコンのスラグ精錬を試みた。
【0016】
この方法によれば、ルツボ内に固体の原料シリコンを仕込んでこれを直接電磁誘導加熱手段により溶融することができないので、別の加熱手段で固体の原料シリコンを溶融してからルツボ内に導入し、このルツボ内に導入された溶融シリコンを直接電磁誘導加熱手段で直接加熱することが必要になるが、従来の製造装置では不可欠な肉厚の厚いルツボ壁を加熱する必要がないため、ルツボ内の溶融シリコンを速やかに昇温させることができると共に加熱効率もより高く、また、溶融シリコンには電磁誘導攪拌の作用が発現して従来の加熱のみによる自然対流よりもより強く攪拌され、溶融シリコンの温度をより均一化して良好なスラグ精錬を行うことができ、しかも、比較的小さな容量のルツボを使用し、比較的大量の原料シリコンを一度にスラグ精錬して高純度シリコンを製造できることが判明した。
【0017】
しかしながら、予想外のことには、ルツボに対して非侵食性である溶融シリコンが非通電時にルツボと接触する領域が、ルツボに対して侵食性である溶融スラグが非通電時にルツボと接触する領域よりもより強く侵食され、結果としてルツボの寿命が著しく低下するという別の問題が発生した。
【0018】
そこで、本発明者らは、工業的規模での操業におけるこの意外なルツボ侵食現象の原因究明を進めた結果、ルツボ側壁面外周を囲む誘導コイルを備えた直接電磁誘導加熱手段でルツボ内の溶融シリコンを直接に加熱した場合、ルツボ内の溶融シリコンに作用する誘導力(ローレンツ力)により溶融シリコン全体に中心方向への力(いわゆるピンチ力)が働き、このピンチ力によりルツボの内壁面と溶融シリコンとの間にルツボ底部にまで達する深い隙間が発生し、この隙間内に入り込んだ溶融スラグがこの溶融スラグよりも高温の溶融シリコンと断熱性に富むルツボの内壁面との間に挟まれてスラグがさらに高温に加熱され、その結果として溶融スラグの酸化力がより強くなり、ルツボの溶融シリコン接触領域におけるルツボ内壁面を強く侵食することを突き止めた。
【0019】
このようなルツボ侵食現象の問題は、加熱手段として直接電磁誘導加熱手段を採用する製鉄分野での溶融炉においても観察されたことはなく、これまではルツボ内の溶融物の中央部が断面放物線状にせり上がって溶融物の上部周縁が非通電時の位置よりも若干下がることが観察される程度であり、原料シリコンをスラグ精錬する際に溶融シリコンを直接電磁誘導加熱手段で直接加熱する場合に発生する特有の問題である。
【0020】
なお、製鉄分野においてはルツボ内の溶鋼を直接電磁誘導加熱手段で直接加熱することが行われており、この場合にもルツボの内壁面と溶鋼との間にピンチ力による隙間が発生すると考えられるが、この溶鋼の場合にはその比重が溶融シリコンに比べて約3倍も大きく、この溶鋼の重力が隙間を閉じようとする力になり、この力が隙間を維持しようとするピンチ力に勝って隙間が閉じるものと考えられる。これに対して、スラグ精錬の場合には、溶融シリコンの上に溶融スラグが存在し、また、溶融シリコンは溶鋼に比べてその比重が小さいのでピンチ力により隙間が発生し易く、更に、溶融シリコンと溶融スラグの比重の差が20%程度以下と比較的小さく、このために主として溶融シリコンの保温を目的とする比較的小さな誘導磁界(例えば、10mT程度の交番磁界)を作用させた場合でも隙間の発生を防止することができず、また、この隙間への溶融スラグの侵入を防止できないものと考えられる。
【0021】
本発明は、かかる観点に基づいて創案されたものであり、その目的とするところは、安価な冶金級金属シリコンを原料とし、スラグ精錬法によって太陽電池用途に好適な純度6N以上の高純度シリコン、特にボロン含有量が少なくとも0.3質量ppm以下の高純度シリコンを工業的規模で安価に製造するのに適した高純度シリコンの製造装置を提供することにある。
【0022】
また、本発明の他の目的は、安価な冶金級金属シリコンを原料とし、スラグ精錬法によって太陽電池用途に好適な純度6N以上の高純度シリコン、特にボロン含有量が少なくとも0.3質量ppm以下の高純度シリコンを工業的規模で安価に製造するのに適した高純度シリコンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、ルツボ中で溶融シリコンと溶融シリコンよりも低密度の溶融スラグとを接触させ、溶融シリコン中の不純物を溶融スラグ中に移動させて高純度シリコンを製造するための高純度シリコンの製造装置において、上記ルツボの外壁面外側にはルツボ内の溶融シリコンを直接に電磁誘導加熱する機能を有する直接電磁誘導加熱手段が配設されていると共に、上記ルツボは、少なくとも直接電磁誘導加熱手段への非通電時に溶融シリコンがルツボ内壁面と接触する領域が耐酸化性材料で形成されていることを特徴とする高純度シリコンの製造装置である。
【0024】
また、本発明は、ルツボ中で溶融シリコンと溶融シリコンよりも低密度の溶融スラグとを接触させ、溶融シリコン中の不純物を溶融スラグ中に移動させて高純度シリコンを製造する高純度シリコンの製造方法において、上記溶融シリコンの加熱手段として、ルツボの外壁面外側に配設された直接電磁誘導加熱手段を使用し、また、上記ルツボとして、少なくとも直接電磁誘導加熱手段への非通電時に溶融シリコンがルツボ内壁面と接触する領域が耐酸化性材料で形成されているルツボを使用することを特徴とする高純度シリコンの製造方法である。
【0025】
本発明において、ルツボは、耐酸化性材料単独、又は耐酸化性材料と非耐酸化性材料との複合材料により形成されている。そして、非耐酸化壁のルツボを形成する材料については、原料シリコンをスラグ精錬するのに必要な操業下での加熱温度(操業温度)、通常シリコンの溶融温度1415℃以上2200℃以下、好ましくは1450℃以上1750℃以下の加熱温度の下で高温強度に優れており、また、溶融シリコンを汚染することがなく、かつ、外部の直接電磁誘導加熱手段により発生した磁界による溶融シリコンの直接誘導加熱を妨げることのないものであればよく、例えば珪酸煉瓦、ムライト煉瓦、アルミナ煉瓦、アルミナセメント、炭素−SiC複合材等を挙げることができる。外部の電磁誘導加熱手段により発生した磁界による溶融シリコンの直接誘導加熱を妨げることのないルツボとしては、その材質として少なくとも10-4Ωm以上の抵抗を有する非導電性材料を用いたものであるか、あるいは、ルツボの材質として導電性材料が用いられた場合には、例えば導電性のルツボ壁にルツボ軸方向にスリットを設けてこのスリット内に絶縁物を充填する等、誘導回転電流の発生を阻止できるように導電性材料に非導電性材料を組み込んだ複合材料を用いたものであるのがよい。この様に溶融シリコンの直接誘導加熱を妨げることのないルツボを用いてその外部に電磁誘導コイル等を配設したものを直接誘導加熱手段と称す。
【0026】
また、このルツボの内壁面と溶融シリコンが接触する領域については、耐酸化性材料で形成され、操業温度条件下で溶融シリコンを汚染することがなく、かつ、外部の直接電磁誘導加熱手段により発生した磁界による溶融シリコンの直接誘導加熱を妨げることのないものでなければならない。また、耐酸化性材料単独でルツボを形成する際には、耐酸化性のみでなく高温強度も必要になる。更に、耐酸化性材料は、少なくとも直接電磁誘導加熱手段への非通電時に溶融シリコンが接触する溶融シリコン接触領域に存在すればよく、例えば、耐酸化性材料製タイルを耐酸化性接着剤で貼着する方法、耐酸化性材料を所定の厚さに吹き付ける方法、耐酸化性材料と外部のルツボの間に不定形耐火物を配置して耐酸化性材料をルツボ内に保持する方法、接着剤等を用いることなく耐酸化性材料同士をドーム状等の重力を利用した組合せで保持する方法等の方法でルツボ内壁面に設けられた内張り材であってもよく、また、ルツボ壁体自体の少なくとも溶融シリコン接触領域が耐酸化性材料で形成されていてもよく、更には、ルツボ壁体自体の全体が耐酸化性材料で形成されていてもよい。
【0027】
そして、このような耐酸化性材料については、スラグ精錬操業時の加熱温度の下で、ルツボが必要とするスラグ材料(溶融スラグ)に対する耐酸化性を考慮して適宜選択することができるが、好ましくはマグネシア、ムライト、アルミナ、窒化珪素及び炭化珪素からなる群から選ばれた1種又は2種以上の材料、又は、これらの材料にシリカを主成分とする物質(例えば、シリカ、ケイ酸塩ガラス、カオリン等)を含む材料であるのがよい。
【0028】
また、このルツボの耐酸化性材料で形成された内壁については、スラグ精錬の操業時に、酸化性の強い溶融スラグが接触し、また、スラグ材料を複数回に分けて供給し、その度に精錬済みスラグを炉外に排出することから、例えばスラグ排出手段として傾動装置を用いると、この精錬済みスラグの排出の度にルツボ内で溶融シリコンが揺動してルツボ内壁に熱衝撃が作用するので、好ましくはその気孔率を1%以上20%以下にするのがよい。このルツボの耐酸化性材料で形成された壁の気孔率が20%より高くなると、耐侵食性が低下し、反対に、1%より低くなると、耐侵食性は向上するが熱衝撃に弱くなって破損し易くなり、いずれにしてもルツボの寿命が短くなる。ルツボの耐酸化性材料で形成された壁の気孔率を制御する方法については、一般的に窯業で行われている方法を採用することができ、例えば、添加する焼結助材の選定、ルツボ原料の粒度、ルツボ製造時の加熱温度や加熱時間等の製造条件等を適切に設定し、これによってルツボを構成する粒子間の焼結程度を制御し、目標とする気孔率の耐酸化性材料で形成された壁を製造することができる。更に、ルツボの耐酸化性材料で形成された壁の気孔率を測定する方法についても、一般的な方法、例えばルツボの見掛け比重と真比重との比を用いて求めればよい。
【0029】
本発明においては、スラグ精錬の操業において、スラグ材料を複数回に分けて供給し、また、その都度精錬済みスラグを炉外に排出する必要があることから、好ましくは、ルツボ内にスラグ材料を供給するためのホッパー式、気体搬送方式、コンベア式、スクリュー搬送式等のスラグ供給装置からなるスラグ供給手段と、ルツボ内の精錬済み溶融スラグを炉外に排出するための傾動装置、スラグ吸引装置等のスラグ排出手段とを備えていることが望ましい。
【0030】
そして、上記スラグ供給手段については、特に太陽電池用途のボロン濃度0.3質量ppm以下の高純度シリコンをスラグ精錬法で製造する際には、スラグ材料として、溶融シリコンから溶融スラグ中に移動した溶融シリコン中の不純物を捕捉する不純物捕捉体と、溶融シリコン中の不純物を酸化して溶融シリコンから溶融スラグ中に移動し易くさせる不純物酸化剤との混合物を用いる必要があることから、好ましくは、上記不純物捕捉体をルツボ内に供給するための不純物捕捉体用供給装置と上記不純物酸化剤をルツボ内に供給するための不純物酸化剤用供給装置とを備えているものであるのがよく、更に、不純物酸化剤については固体状態でルツボ内の溶融シリコン上に供給する方がその強い酸化力をより効果的に利用できることから、より好ましくは、不純物酸化剤用供給装置、あるいは、この不純物酸化剤用供給装置及び不純物捕捉体用供給装置は、少なくともその一部の不純物酸化剤、あるいは、一部の不純物酸化剤及び不純物捕捉体を、固体状態でルツボ内の溶融シリコン上に供給することができる。
【0031】
また、上記スラグ材料の不純物捕捉体としては、例えば、アルミナ、シリカ、酸化カルシウム、及びハロゲン化カルシウムからなる群から選ばれた1種又は2種以上の混合物を挙げることができ、また、上記スラグ材料の不純物酸化剤が、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸塩水和物及び水酸化物、及び、アルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸塩水和物、水酸化物及び酸化物からなる群から選ばれた1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。そして、不純物酸化剤を形成するアルカリ金属又はアルカリ土類金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等を例示することができ、また、この不純物酸化剤の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム又はこれらの水和物や、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等を例示することができる。
【0032】
本発明の高純度シリコンの製造装置は、特に制限されるものではないが、そのスラグ精錬の操業に際して、先ず、別に用意した溶融装置により原料シリコンを溶融し、得られた溶融シリコンの全量をルツボ内に装入して直接電磁誘導加熱手段で所定の温度に加熱し(あるいは保温し)、次いで、スラグ供給手段から不純物捕捉体と不純物酸化剤とからなるスラグ材料の一回分(複数回に分けて供給されるスラグ材料の一回分)を溶融状態及び/又は固体状態でルツボ内の溶融シリコン上に供給し、溶融シリコン上に溶融スラグが存在する状態を所定時間保持して精錬し、その後に精錬済みスラグをスラグ排出手段により炉外に排出する操作(以下、この複数回に分けて供給されるスラグ材料の一回分を用いて行われる操作を「単位操作」という。)を複数回繰り返して行い、その後にスラグ精錬終了後の溶融シリコンを専用の排湯ルツボに移し、そのまま凝固させて1サイクルのスラグ精製操作で得られた高純度シリコンを回収する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の高純度シリコンの製造装置及び製造方法によれば、ルツボ内の溶融シリコンを直接電磁誘導加熱手段で直接に加熱し、また、この際に発生するルツボ侵食現象の問題を少なくともルツボの溶融シリコン接触領域を耐酸化性材料製の高耐酸化壁で形成することにより解消したので、安価な冶金級金属シリコンを原料とし、スラグ精錬法によって太陽電池用途に好適な純度6N以上の高純度シリコン、特にボロン含有量が少なくとも0.3質量ppm以下の高純度シリコンを、工業的規模で安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付図面に示す実施例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
【0035】
図1に本発明の実施例に係る高純度シリコンの製造装置の概念図が示されている。この高純度シリコンの製造装置は、溶融シリコン(以降F-Siと記載)とこの溶融シリコンF-Siよりも低密度の溶融スラグ(以降F-Sgと記載)とを収容して加熱下にスラグ精錬を行うルツボ本体1と、このルツボ本体1の外壁面外側にルツボ本体1を周回するように配設され、ルツボ内の溶融シリコンF-Siを直接に電磁誘導加熱する誘導コイル(直接電磁誘導加熱手段)2と、この誘導コイル2への非通電時に溶融シリコンF-Siが接触するルツボ本体1の溶融シリコン接触領域1a全域に設けられた耐酸化性材料製の内張り材(高耐酸化壁)3とを備えている。
【0036】
そして、この実施例において、上記ルツボ本体1と誘導コイル2は、ルツボ本体1の上端開口部1bに対応する開口部4aを備えた断熱材料製の炉体4内に収容されており、また、この炉体4には、その上部にこの炉体4の開口部4aを閉塞しまた開放する開閉可能な蓋体5が設けられていると共に、その下部に炉体4の一端側に取り付けられた軸受6aと他端側に取り付けられた伸縮機構6bとからなる傾動装置6が設けられており、更に、その開口部4aの上方にスラグ材料を構成する不純物捕捉体をルツボ本体1内に供給する不純物捕捉体用ホッパー(不純物捕捉体用供給装置)7aとスラグ材料を構成する不純物酸化剤をルツボ本体1内に供給する不純物酸化剤用ホッパー7b(不純物酸化剤用供給装置)とからなるスラグ供給ホッパー(スラグ供給手段)7が配設されている。
【0037】
従って、この実施例の高純度シリコンの製造装置によれば、先ず、図示外の溶融装置により原料シリコンを溶融し、得られた溶融シリコンF-Siの全量をルツボ本体1内に注湯してその蓋体5を閉塞し、次いで誘導コイル2に通電して溶融シリコンF-Siの誘導加熱を開始し、溶融シリコンF-Siをその溶融温度(1415℃)以上2200℃の以下の所定の操業温度まで加熱し、その後はその温度を保持する。
【0038】
次に、ルツボ本体1の蓋体5を開放し、不純物捕捉体用ホッパー7aと不純物酸化剤用ホッパー7bとからそれぞれ所定量(複数回に分けて供給されるスラグ材料の一回分に相当する量)の不純物捕捉体と不純物酸化剤とをルツボ本体1内の溶融シリコンF-Si上に投入し、再度蓋体5を閉塞し、溶融シリコンF-Si上に溶融スラグF-Sgを形成せしめ、所定時間所定の操業温度に保持してスラグ精錬を行う。
【0039】
このスラグ精錬が終了した後、蓋体5を開放して傾動装置6を作動させ、炉体4共々ルツボ本体1を所定の角度まで傾けてルツボ本体1内の溶融スラグF-Sgのみを排湯し、再び傾動装置6を作動させて炉体4共々ルツボ本体1を元の直立状態に復帰させる。
【0040】
以上の操作を単位操作として複数回に分けて供給される所定量のスラグ材料がなくなるまで所定の回数だけ繰り返し、その後に傾動装置6を作動させ炉体4共々ルツボ本体1を完全に傾けてスラグ精錬終了後の溶融シリコンF-Siを図示外の専用の排湯ルツボに移し、この排湯ルツボ内で溶融シリコンF-Siを凝固させて1サイクルのスラグ精錬操作を終了し、製品の高純度シリコンを得る。
【0041】
この1サイクルのスラグ精錬操作の過程で、ルツボ本体1内に収容されている溶融シリコンF-Siと溶融スラグF-Sgとは、図2及び図3に示すように、誘導コイル2への非通電時(図2参照)には、溶融シリコンF-Siは内張り材3が設けられたルツボ本体1の溶融シリコン接触領域1aに接触し、また、誘導コイル2への通電時(図3参照)には、ルツボ本体1内の溶融シリコンF-Siに誘導力(ローレンツ力)が作用し、これによって溶融シリコンF-Siにピンチ力が働いてこの溶融シリコンF-Siと内張り材3との間にルツボ底部に達する深い隙間dが発生し、この隙間d内に溶融スラグF-Sgの一部が入り込み、この隙間d内に入り込んだ溶融スラグF-Sgは溶融スラグF-Sgの温度より高温の溶融シリコンF-Siにより加熱され、ルツボ本体1の溶融シリコン接触領域1aより上方に位置する溶融スラグF-Sgの温度よりもより高温になる。
【0042】
そこで、ルツボ本体1の溶融シリコン接触領域1aに設けられる内張り材3について、隙間d内に入り込んだ溶融スラグF-Sgが溶融シリコンF-Siの操業温度(1415℃以上2200℃以下)に加熱された時に有する内張り材3に対する侵食性を考慮して、その耐酸化性材料を選択することにより、このルツボ本体1に対する侵食の問題を解決することができる。
【0043】
〔実施例1〕
図1に示す炉構成を備えた高純度シリコンの製造装置において、ルツボ本体として外径870mm×内径820mm×高さ900mmの大きさのアルミナセメント製のルツボを用い、また、その溶融シリコン接触領域には、内径780mm×厚さ10mmであって表1に示す気孔率を有し、全体が一体物に形成された表1に示す耐酸化性材料製の内張り材(高耐酸化壁)を、ルツボ本体の内壁面との間に不定形耐火物を注入して固定することにより設け、更に、直接電磁誘導加熱手段としては出力5kHzの誘導コイルを用いた。
【0044】
また、純度99.6質量%の一般的な市販金属シリコンであって、金属不純物含有量が鉄(Fe)3000質量ppm、アルミニウム(Al)500質量ppm、カルシウム(Ca)100質量ppm、及びリン(P)40質量ppmであり、ボロン含有量40質量ppmの塊状金属シリコン500kgを原料シリコンとして使用し、また、スラグ材料については表1に示す不純物捕捉体及び不純物酸化剤をそれぞれ1500kgづつ使用した。
【0045】
更に、操業条件については、固体状態のスラグ材料を30回に分けて装入し、1サイクルのスラグ精錬操作を30回の単位操作で行うことにし、各単位操作での操業温度を1600℃とし、また、スラグ材料装入後の操業温度での保持時間を1時間とした。
【0046】
1サイクルのスラグ精錬終了後に凝固させて得られた製品シリコンから切断機を用いてサンプルを採取し、得られたサンプルについて誘導結合プラズマ質量分析法によりボロン濃度を測定した。
【0047】
また、以上と同様にして、原料シリコンのスラグ精錬操作を100サイクル実施し、この100サイクルのスラグ精錬操作で得られた各サンプルのボロン濃度を求めて平均し、本実施例における製品シリコンのボロン濃度(B濃度)とし、また、100サイクルのスラグ精錬操作後における内張り材の腐食状況をルツボを解体して調べ、ルツボ貫通孔等の致命的な損傷の有無をもって内張り材の耐久性評価を行った。
結果は表1に示す通り耐久性は良好であった。
【0048】
【表1】

【0049】
〔実施例2〕
表2に示す気孔率を有すると共に表2に示す耐酸化性材料製の内張り材(高耐酸化壁)を用い、表2に示すスラグ材料を用いた以外は、上記実施例1と同様にして製品シリコンを製造し、また、上記実施例1と同様にして製品シリコンのボロン濃度(B濃度)と100サイクルのスラグ精錬操作後における内張り材の腐食状況を調べ、その耐久性評価を行った。
結果は表2に示す通り耐久性は良好であった。
【0050】
【表2】

【0051】
〔実施例3〕
図4に示すように、ルツボ本体1の溶融シリコン接触領域1aが表3に示す耐酸化性材料で形成されて表3に示す気孔率を有する壁からなり、それ以外の部分は気孔率30%のアルミナ煉瓦からなる壁とし、表3に示すスラグ材料を用いた以外は、上記実施例1と同様にして製品シリコンを製造し、また、上記実施例1と同様にして製品シリコンのボロン濃度(B濃度)と100サイクルのスラグ精錬操作後におけるルツボ壁の腐食状況を調べ、その耐久性評価を行った。尚、このルツボ本体1は、溶融シリコン接触領域1aの壁とそれ以外の部分の壁との目地部を接着することによって作製した。
結果は表3に示す通り耐久性は良好であった。
【0052】
【表3】

【0053】
〔実施例4〕
図5に示すように、ルツボ本体1の全体が表4に示す耐酸化性材料で形成されて表4に示す気孔率を有する壁からなり、表4に示すスラグ材料を用いた以外は、上記実施例1と同様にして製品シリコンを製造し、また、上記実施例1と同様にして製品シリコンのボロン濃度(B濃度)と100サイクルのスラグ精錬操作後におけるルツボ壁の腐食状況を調べ、その耐久性評価を行った。
結果は表4に示す通り耐久性は良好であった。
【0054】
【表4】

【0055】
〔試験例1〕
ルツボ内壁面を周方向に24の区画に分画し、それぞれの区画には実施例1の場合と同様にして同じ耐酸化性材料で形成され互いに異なる気孔率の内張り材(高耐酸化壁)を配設し、スラグ精錬を実施して製品シリコンを製造した。この際に、内張り材の耐酸化性材料としては窒化珪素、炭化珪素、ムライト、アルミナ、及びマグネシアを用い、また、上記24の区画に配設した内張り材の気孔率については0.3%、0.5%、0.7%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、22%、24%、26%、30%、35%、及び40%とした。
【0056】
また、ルツボの外壁面には上記の各区画に対応させて多数の熱電対を配置し、スラグ精錬操業中の温度を測定し、ルツボに貫通孔が発生して溶融シリコン及び/又は溶融スラグが液漏れするのを監視した。この際に、ある区画での熱電対の検出温度が予め実験により知見している所定値を超えた場合に当該区画で貫通孔が発生したものとみなし、スラグ精錬の1サイクル毎に貫通孔発生区画の内張り材を交換し、併せてルツボの貫通孔発生区画に肉盛り補修を行い、更に次のサイクルのスラグ精錬を継続した。ある区画での内張り材交換までに実施されたスラグ精錬のサイクル数を当該区画に適用された内張り材の気孔率での使用可能サイクル数と定義した。
得られた一連の試験結果を図6に示す。なお、図6中の使用可能サイクル数100回を示す横軸において、ムライト及びアルミナを示す実線、マグネシアを示す破線、及び窒化珪素及び炭化珪素を示す点線は重なり合っている。使用可能サイクル数は、何れの耐酸化性材料の場合においても、気孔率1%以上20%以下の範囲で好適であった。
【0057】
〔比較例1〕
ルツボ本体の溶融シリコン接触領域に、材料として酸化ジルコニウムを用い、気孔率10%の内張り材(高耐酸化壁)を設けた以外は、上記実施例1と同様にして原料シリコンのスラグ精錬操作を行ったが、僅か3サイクルのスラグ精錬操作で酸化ジルコニウム溶損が発生し、内張り材の交換が必要になった。
【0058】
〔比較例2〕
ルツボ本体の溶融シリコン接触領域に、材料としてケイ酸煉瓦を用い、気孔率20%の内張り材(高耐酸化壁)を設けた以外は、上記実施例1と同様にして原料シリコンのスラグ精錬操作を行ったが、僅か1サイクルのスラグ精錬操作でルツボ貫通孔が発生し、操業を中止した。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の高純度シリコンの製造装置及びこれを用いた高純度シリコンの製造方法によれば、安価な冶金級金属シリコンを原料とし、スラグ精錬法によって純度6N以上の高純度シリコン、特にボロン含有量が少なくとも0.3質量ppm以下の高純度シリコンを工業的規模で安価に製造することができるので、特に需要の伸びに伴って低コスト化が求められている太陽電池用途に好適な高純度シリコンを製造する上で工業的価値の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る高純度シリコンの製造装置の概念図を示す説明図である。
【0061】
【図2】図2は、スラグ精錬操作の過程において、誘導コイルへの非通電時におけるルツボ本体内の溶融シリコン及び溶融スラグの状態を説明するための説明図である。
【0062】
【図3】図3は、スラグ精錬操作の過程において、誘導コイルへの通電時におけるルツボ本体内の溶融シリコン及び溶融スラグの状態を説明するための図2と同様の説明図である。
【0063】
【図4】図4は、実施例3のスラグ精錬操作で用いたルツボ本体を説明するための図2と同様の説明図である。
【0064】
【図5】図5は、実施例4のスラグ精錬操作で用いたルツボ本体を説明するための図2と同様の説明図である。
【0065】
【図6】図6は、試験例1で求められた高耐酸化壁の気孔率(%)とスラグ精錬における使用可能サイクル数との関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0066】
1…ルツボ本体、1a…溶融シリコン接触領域、1b…上端開口部、2…誘導コイル(直接電磁誘導加熱手段)、3…内張り材(高耐酸化壁)、4…炉体、4a…開口部、5…蓋体、6…傾動装置、6a…軸受、6b…伸縮機構、7…スラグ供給ホッパー(スラグ供給手段)、7a…不純物捕捉体用ホッパー(不純物捕捉体用供給装置)、7b…不純物酸化剤用ホッパー(不純物酸化剤用供給装置)、F-Si…溶融シリコン、F-Sg…溶融スラグ、d…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルツボ中で溶融シリコンと溶融シリコンよりも低密度の溶融スラグとを接触させ、溶融シリコン中の不純物を溶融スラグ中に移動させて高純度シリコンを製造するための高純度シリコンの製造装置において、上記ルツボの外壁面外側にはルツボ内の溶融シリコンを直接に電磁誘導加熱する機能を有する直接電磁誘導加熱手段が配設されていると共に、上記ルツボは、少なくとも直接電磁誘導加熱手段への非通電時に溶融シリコンがルツボ内壁面と接触する領域が耐酸化性材料で形成されていることを特徴とする高純度シリコンの製造装置。
【請求項2】
耐酸化性材料が、少なくとも溶融シリコンがルツボ内壁面と接触する領域に設けられた内張り材である請求項1に記載の高純度シリコンの製造装置。
【請求項3】
ルツボは、その壁体自体の少なくとも溶融シリコン接触領域が耐酸化性材料で形成されている請求項1に記載の高純度シリコンの製造装置。
【請求項4】
ルツボは、その壁体自体の全体が耐酸化性材料で形成されている請求項3に記載の高純度シリコンの製造装置。
【請求項5】
前記の耐酸化性材料が、マグネシア、ムライト、アルミナ、窒化珪素及び炭化珪素からなる群から選ばれた1種又は2種以上の材料、又は、これらの材料にシリカを主成分とする物質を含む材料である請求項1〜4のいずれかに記載の高純度シリコンの製造装置。
【請求項6】
前記の耐酸化性材料は、その気孔率が1〜20%である請求項1〜5のいずれかに記載の高純度シリコンの製造装置。
【請求項7】
スラグ材料が、溶融シリコンから溶融スラグ中に移動した溶融シリコン中の不純物を捕捉する不純物捕捉体と、溶融シリコン中の不純物を酸化して溶融シリコンから溶融スラグ中に移動し易くさせる不純物酸化剤とで構成されている請求項1〜6のいずれかに記載の高純度シリコンの製造装置。
【請求項8】
不純物捕捉体が、アルミナ、シリカ、酸化カルシウム、及びハロゲン化カルシウムからなる群から選ばれた1種又は2種以上の混合物である請求項7に記載の高純度シリコンの製造装置。
【請求項9】
不純物酸化剤が、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸塩水和物及び水酸化物、及び、アルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸塩水和物、水酸化物及び酸化物からなる群から選ばれた1種又は2種以上の混合物である請求項7に記載の高純度シリコンの製造装置。
【請求項10】
ルツボ内にスラグ材料を供給するためのスラグ供給手段を備えている請求項1〜9のいずれかに記載の高純度シリコンの製造装置。
【請求項11】
スラグ供給手段が、不純物捕捉体をルツボ内に供給するための不純物捕捉体用供給装置と不純物酸化剤をルツボ内に供給するための不純物酸化剤用供給装置とを備えている請求項10に記載の高純度シリコンの製造装置。
【請求項12】
不純物酸化剤用供給装置、あるいは、この不純物酸化剤用供給装置及び不純物捕捉体用供給装置は、少なくともその一部の不純物酸化剤、あるいは、一部の不純物酸化剤及び不純物捕捉体を、固体状態でルツボ内の溶融シリコン上に供給することができるスラグ供給手段である請求項11に記載の高純度シリコンの製造装置。
【請求項13】
ルツボ内の精錬済み溶融スラグを炉外に排出するためのスラグ排出手段を備えている請求項1〜12のいずれかに記載の高純度シリコンの製造装置。
【請求項14】
スラグ排出手段は、ルツボを傾動させてルツボ内の精錬済み溶融スラグを炉外に排出する傾動装置である請求項13に記載の高純度シリコンの製造装置。
【請求項15】
ルツボ中で溶融シリコンと溶融シリコンよりも低密度の溶融スラグとを接触させ、溶融シリコン中の不純物を溶融スラグ中に移動させて高純度シリコンを製造する高純度シリコンの製造方法において、上記溶融シリコンの加熱手段として、ルツボの外壁面外側に配設された直接電磁誘導加熱手段を使用し、また、上記ルツボとして、少なくとも直接電磁誘導加熱手段への非通電時に溶融シリコンがルツボ内壁面と接触する領域が耐酸化性材料で形成されているルツボを使用することを特徴とする高純度シリコンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−153693(P2007−153693A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352672(P2005−352672)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(306032316)新日鉄マテリアルズ株式会社 (196)
【Fターム(参考)】