説明

高純度シリコン材料の製造方法

【課題】高純度シリコン材料の製造方法を提供する。
【解決手段】特純石英鉱石を原料として選択するステップと、前記石英鉱石を洗浄し粉砕するステップと、光学分析装置で粒度が20mm〜80mmの石英鉱石を正確に選択するステップと、石英鉱石を浄化するステップと、石英鉱石を溶鉱炉に入れ、高温で石英鉱石を溶融するステップと、溶融した石英鉱石と純炭素還元剤とに炭素熱還元法および反応純化を行い、液体シリコンを得るステップと、前記溶鉱炉のバルブを介して前記液体シリコンを収容タンクに流し込むステップと、前記収容タンクにおいて、エアブロー除湿法およびスラグ処理法を行い、液体シリコンの不純物を除去するステップと、液体シリコンを結晶成長炉の鋳造品領域に注入するステップと、前記鋳造品領域において方向性凝固法で液体シリコンを固化し、固体シリコン材料を得るステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン材料の製造方法を開示し、特に高純度シリコン材料製造用の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子産業で最も重要な半導体材料は、ケイ素(Si)である。現在、ケイ素製素子の販売量は、世界の半導体素子販売量の約95%を占める。ケイ素は、地殼中の含有量が約28%であり、酸素に次ぐ元素であるが、自然界において、ケイ素が元素で存在することは絶対にない。ケイ素は非常に優れた機械的特性を有し、天性の誘電体−二酸化ケイ素(SiO2)がある。天然のケイ素は、シリカ(silica,不純なSiO2)およびケイ酸塩(silicate)の形態で存在する。ケイ素のバンドギャップ(energy gap)は、1.1 eVであり、大きさがちょうどよく、ケイ素素子は150℃以内で動作可能である。二酸化ケイ素は、水に溶けず、平面工程技術により、トランジスタまたは集積回路を製造することができる。近代の人類の文明史は、正にシリコン時代(Silicon age)ということができる。
【0003】
金属級シリコン(Metallurgical−Grade Si,MG−Si)は、太陽電池の材料であり、主に単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンの3種類に大きく分けることができる。多結晶シリコンまたは単結晶シリコンを製造する製錬原料は、二酸化ケイ素(SiO2)の結晶体である高純度(>97%)のケイ砂を主とする。このケイ砂からケイ素を還元することが、高純度多結晶シリコン製造の最初のステップである。生産プロセスは、ケイ砂、コークス(Coke)、石炭(Coal)および木屑(wood)などの原料を混合し、黒鉛アークの加熱還元炉の中に置き、1,500〜2,000℃の高温で加熱し、酸化ケイ素をケイ素に還元するものである。主な化学反応は次のとおりである。
SiO2+C→Si+CO2
SiO2+2C→Si+2CO
【0004】
このとき、冶金製錬シリコンの純度は約98%前後であり、すなわち金属級シリコンである。この純度のシリコンが太陽電池または半導体産業規格の要求に達するには、さらに純化が必要である。
【0005】
前記金属級シリコンの従来の工程においては、製錬プロセスで二酸化炭素(CO2)ガスが生成される。二酸化炭素ガスは、高温下で毒性が生まれ、脳神経を破壊する虞があり、二酸化炭素ガスが空気中に排出されると、環境の破壊がもたらされる。そのため、新しい技術を開発し、化学的な方法で金属級シリコンを製錬することを減らし、二酸化炭素ガスの生成を製錬させる必要がある。
【0006】
次に、金属級シリコンを精錬し、電子級シリコンを製造する。この電子級シリコンは、多結晶シリコンの構造に属し、純度は99.9999%である。すなわち、6N以上であり、不純物は1ppm未満でなければならない。多結晶シリコンの生産技術は、従来のシーメンス法が最も有名であり、全部で3つのステップに分かれる。
【0007】
ステップ1:Si+3HCl→HSiCl3+H2
塩化反応(Chlorination)でトリクロロシラン(Trichlorosilane,TCS,化学式はHSiCl3)を合成する。操作方法は、流動床(fluidized bed)炉内で、金属級シリコンと塩化水素(HCl)とを塩化銅(CuCl)觸媒作用の下で完成させるものである、反応生成物は、トリクロロシラン以外に、その他の塩化ケイ素(SiH2Cl2またはSiCl4)がある。
【0008】
ステップ2:HSiCl3(純度>98%)→HSiCl3(純度>6N)
蒸留方式で高純度のトリクロロシランを抽出し、少なくとも2つの蒸留塔を必要とする。
【0009】
ステップ3:HSiCl3+H2→Si+3HCl
分解反応(Decomposition)は、トリクロロシランを高温分解炉に入れ、水素の作用の下で、トリクロロシランが分解されケイ素となり、高温分解炉内のU型シリコンインゴットに堆積させるものである。トリクロロシランの分解温度は1,100℃であるため、U型シリコンインゴットを電極で加熱すると、インゴット内の温度は1,500℃に達する。トリクロロシランが分解炉壁に堆積することを防止し、操作しにくくなることを防止するため、分解炉壁の外を大量の冷却水で降温する必要がある。
【0010】
前記塩化反応方式で多結晶シリコンの精錬を行う従来のシーメンス法は、以下の長所を有する。(1)技術が成熟しており、操作の信頼性が高く、製品がすでに半導体級の要求に達している。(2)ケイ素をトリクロロシランに転化する効率が高い。(3)塩化反応の温度、圧力が高くない。現在、世界の多結晶シリコンの生産は、ほとんどが従来のシーメンス法を採用している(75%を超える)。但し、下記の欠点も有する。(1)消費電力が高く、かつ塩化水素(HCl)の取得と使用処理能力を必要とする。(2)塩化反応の副生成物である塩化ケイ素(SiCl4)は、高汚染毒性を有する物質であり、処理が難しく、近隣地域を汚染しているという話がよく聞かれる。(3)工程の操作プロセスにおける危険性が高い。(4)工程のフローの操作が容易でない。(5)この工程を使用するには、純化プロセスに高いライセンス料を支払う必要がある。
【0011】
塩化反応方式の従来のシーメンス法に対し、改良シーメンス法など、国際的にすでに多くの改良技術がある。この工程の最初のステップは、塩化反応の代わりに塩化水素反応(Hydrochlorination)を行うことである。すなわち、先ず塩化ケイ素を取得し(または購入し)、金属級シリコンと塩化ケイ素とを、水素の作用の下で、塩化水素反応を経てトリクロロシランを生成する。化学反応式は、
Si+SiCl4→2HSiCl3
である。その後のステップは、塩化反応方式の従来のシーメンス法と同じく、蒸留と分解である。この塩化水素反応方式の改良シーメンス法は、下記の長所を有する。(1)投資コストが比較的低い。(2)塩化水素反応の消費電力が比較的低い。欠点は、塩化水素の反応温度および圧力が比較的高く、爆発しやすく、1回目のケイ素からトリクロロシランへの転化良率が比較的低いなどである。
【0012】
電子級シリコンの精錬プロセスにおいて、従来のシーメンス法を例とする。第3ステップは、トリクロロシランを高温でケイ素に分解すると同時に、シリコンインゴットを製造するものであり、このステップは、通常、結晶成長または結晶引上と呼ばれる。弛まぬ研究と開発の下で、各種の結晶成長法およびその結晶成長炉が開発されている。なかでも、チョクラルスキー結晶成長法およびチョクラルスキー結晶成長炉が、広範に使用されている結晶成長方法の1種である。チョクラルスキー結晶成長法は、ケイ素原料を坩堝内に入れ、加熱してケイ素を溶融させ、種結晶(seed)に導かれ、引上装置でインゴット(ingot)をゆっくりと引き上げ、固相−液相の界面をもたらす。インゴットの直径が大きいほど、引き上げ速度が遅くなり、8インチのウェハのインゴットには、約1〜2日が必要である。インゴット成長時に、不純物の原子が液相に向かう傾向があるため、大多数の不純物が液相に追いやられ、インゴットの末端に残り、最後に切除して廃棄することができる。この技巧はゾーン精製と呼ばれ、シリコンインゴットの純度も同時に高まる。こうしたチョクラルスキー結晶成長法の欠点は、結晶成長に費やす時間が長すぎると同時に、多くの電力も消費するため、効率が充分によくなく、改良の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このため、比較的少ない化学方法を利用して低汚染の製造プロセスを行い、新しい結晶成長方法を利用して結晶成長の所要時間を短縮すると同時に、電力の使用を節減し、公知技術の課題を解決する新しい多結晶シリコン工程技術を提供する必要がある。
【0014】
前記の課題と欠点に鑑み、発明者は長年の経験を積み重ね、想像力と創造力を発揮し、試作と修正を行った後、本発明の高純度シリコン材料の製造方法を生み出した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の目的は、二酸化ケイ素をケイ素に還元する工程が、炭素熱還元法を利用したものである高純度シリコン材料の製造方法を提供することである。この炭素熱還元法は、従来の高重金属含有量のタール炭または粘結炭の代わりに、特殊な成分の純炭素還元剤を使用し、従来の木屑の代わりに特殊な成分のセルロースおよびその他の有機炭素材料を使用するものである。こうした炭素熱還元法の工程の下で、従来の工程の汚染、エネルギー消費および危険が高いなどの欠点を防止することができる。
【0016】
本発明の第2の目的は、革新的な製造プロセスおよび原料設備を利用した高純度シリコン材料の製造方法を提供することである。二酸化ケイ素からシリコンを還元し、インゴット結晶成長の完了までの全工程に36時間もかからず、従来の46時間以上に比べ、本発明は、多くの電力を節減することができ、多結晶シリコンの生産効率も高めることができる。
【0017】
本発明の第3の目的は、二酸化ケイ素原料は直接採掘粒度が比較的小さく、かつ純度が比較的高いケイ砂であり、さらに粉砕方法を利用してケイ砂の粒度をナノレベルに向かわせる高純度シリコン材料の製造方法を提供することである。粒度が比較的大きいケイ石は、比較的多くの不純物を含有するため、その後の純化が比較的困難である。本発明で提供する方法によって、二酸化ケイ素純化の難度を下げると同時に、二酸化ケイ素原料の純度を高めることができる。
【0018】
本発明の第4の目的は、還元の前にケイ砂原料を先に浄化するステップを行う高純度シリコン材料の製造方法を提供することである。このステップは、特別な酸洗プロセスを利用して、不純物の含有量を大幅に減らし、二酸化ケイ素純化の難度を下げると同時に、二酸化ケイ素原料の純度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好ましい実施例の高純度シリコン材料製造方法のフローチャートである。
【図2】本発明の前記好ましい実施例の石英鉱石浄化のフローチャートである。
【図3】石英鉱石の裂け目の概略図である。
【図4】本発明の好ましい実施例の溶鉱炉構造の概略図である。
【図5】二酸化ケイ素と炭素の反応の自由エネルギー変化の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の特徴、製造方法およびその長所をさらに理解することができるようにするため、好ましい具体的な実施例で下記のとおり詳細に説明する。
【0021】
前記の目的と効果を達成するため、発明者は、ケイ素原料の選択、還元、純化および精錬などのステップについて、公知技術とは異なる改良を行った。常に修正と調整を行い、本発明の高純度シリコン材料の製造方法が生み出された。本発明の好ましい実施例の高純度シリコン材料の製造方法について、本発明の技術的特徴および製造方法を詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の前記好ましい実施例の高純度シリコン材料製造方法のフローチャートであり、下記のステップを含む。
(1) 二酸化ケイ素の純度が99.99%〜99.999%の特純石英鉱石を原料として選択する(ステップ101)。前記石英鉱石はケイ砂であり、この原料の純度は、従来の石英鉱石原料の100倍である。
(2) 石英鉱石を洗浄(Cleaning)する(ステップ102)。
(3) 石英鉱石の裂け目に沿って無汚染の粉砕(Comminution)を行う(ステップ103)。図3は、石英鉱石300の裂け目301の概略図である。
(4) 光学分析装置で粒度が20mm〜80mmの石英鉱石を正確に選択する(ステップ104)。石英鉱石は、白色または乳白色の外観を呈する必要がある。
(5) 石英鉱石を浄化(Purification)し、二酸化ケイ素の純度を99.999%〜99.99999%にする。ホウ素とリンの含有量は1ppm未満とする(ステップ105)。図2に示すとおり、前記浄化方法は、さらに下記のステップを含む。
(5.1) 前記石英鉱石を脱イオン水でより分け、不純物の初歩的なろ過を行う(ステップ201)。
(5.2) 石英鉱石を研磨する(ステップ202)。
(5.3) 石英鉱石をろ過し、不純物をろ過する(ステップ203)。
(5.4) 酸性溶液を用いて、石英鉱石を酸洗する(ステップ204)。前記酸性溶液は、硫酸と、水酸化アンモニウムと、エチレンジアミン四酢酸との混合液、酸性過酸化物混合液およびジメチル酸から1つを選んで使用する。
(5.5) 酸洗後の石英鉱石を、再び脱イオン水で洗浄し、酸性溶液の成分を除去する(ステップ205)。
(5.6) 洗浄後の石英鉱石を乾燥する(ステップ206)。
(5.7) 乾燥後の石英鉱石をさらに乾燥し、結晶状を形成する(ステップ207)。
(6) 浄化後の石英鉱石を溶鉱炉の中に入れる(図4参照)。前記溶鉱炉400は、アーク炉(Submerged Arc Furnace,SAF)410およびろ過設備420により構成される。アーク炉410は、坩堝430と、電極棒440と、バルブ450とにより構成される。高電流が電極棒440を通過すると、アークが電極棒440と坩堝430表面との間に形成され、1500℃〜1800℃の高温で、石英鉱石が溶融を開始する(ステップ106)。溶鉱炉は、下記の特性を含む。(a)高周波で温度を制御する。(b)前記バルブは溶鉱炉の底部に設けられ、反応の生成物はこのバルブから出される。(c)各種金属の溶錬に用いることができる。(d)最高操作温度は1800℃とする。
(7) 純炭素還元剤と、セルロース材料と、有機炭素材料とを加え、炭素熱還元法(Carbothermal Reduction)および反応純化(Post−refining)を行う。溶融した石英鉱石と純炭素還元剤とを反応させ、液体シリコンを得る(ステップ107)。前記純炭素還元剤は、気体のガスブラック(Gas black)により構成される。気体の純炭素還元剤は、固体の純炭素還元剤よりもさらに高純度の炭素を含有し、高純度の炭素は、ケイ素の還元反応をさらに完全なものとし、ケイ素生成物の純度もさらに高いものとする。このステップにおいて、詳細な反応プロセスは下記を含む。
(7.1) 溶融したケイ石と炭素を反応させ、一酸化ケイ素を形成する。
(7.2) 一酸化ケイ素をさらに炭素と反応させ、固体の炭化ケイ素を形成する。
(7.3) 炭化ケイ素を溶融したケイ石と反応させ、液体のケイ素および一酸化ケイ素を形成し、一酸化ケイ素をさらにステップ(7.2)の反応で使用し、循環反応を続ける。
この3つのステップの化学総反応式は、
SiO2+2C→Si+2CO+SiO
である。このステップで生成される一酸化炭素は、前記セルロース材料および前記有機炭素材料により順調に排出される。一部の一酸化ケイ素が脱離し、炭素と循環反応を続ける。さらに酸素と反応し、高純度の二酸化ケイ素(99.99999%以上)を形成し、ろ過設備においてろ過した後、副生成品として収集される。この化学反応式は、
2SiO+O2→2SiO2
である。
(8) 溶鉱炉底部のバルブを介して液体シリコンを外部の収容タンクに流し込む(ステップ108)。
(9) 前記収容タンクにおいて、酸素でエアブロー除湿法(Moist Reduction Gas Blowing)を行い、液体シリコンの不純物を除去する(ステップ109)。
(10) 収容タンクにおいて、スラグ処理法(Slag Treating)で液体シリコンの不純物をさらに除去し、ケイ素の純度を99.999%以上にする(ステップ110)。この純度のケイ素は、XMG−Siと呼ぶことができる。
(11) 液体シリコンを結晶成長炉の鋳造品領域に注入し、前記鋳造品領域において、方向性凝固法(Directional Solidification)で液体シリコンを固化させ、ケイ素純度が99.9999%以上の固体多結晶シリコンを得る(ステップ111)。この純度のケイ素は、SoG−Siと呼ぶことができる。前記結晶成長炉は、下記の特性を含む。(a)効率が高く、迅速な溶錬周期。(b)結晶成長炉底部から材料の注入および排出を行うため、操作および保守が容易である。(c)自動温度制御し、ゾーンごとに鉛直勾配で加熱冷却する。(d)異なるプログラムを設定し、異なる材料の加熱溶錬を満たすことができる。
【0023】
前記の本発明の高純度シリコン材料の製造方法において、各ステップの操作条件とパラメータを最適化して調整した後、下記のステップを含む最も好ましい実施例の高純度シリコン材料の製造方法を得ることができた。
(1) 二酸化ケイ素の純度が99.999%の特純石英鉱石を原料として選択した。前記石英鉱石はケイ砂とした。
(2) 石英鉱石を洗浄(Cleaning)した。
(3) 石英鉱石の裂け目に沿って無汚染の粉砕(Comminution)を行った。
(4) 光学分析装置で粒度が50mmの石英鉱石を正確に選択した。石英鉱石は、白色または乳白色の外観を呈する必要がある。
(5) 石英鉱石を浄化(Purification)し、二酸化ケイ素の純度を99.99999%にした。ホウ酸とリンの含有量は0.5ppmとした。前記浄化方法は、さらに下記のステップを含む。
(5.1) 前記石英鉱石を脱イオン水でより分け、不純物の初歩的なろ過を行った。
(5.2) 石英鉱石を研磨した。
(5.3) 石英鉱石をろ過し、不純物をろ過した。
(5.4) 酸性溶液を用いて、石英鉱石を酸洗した。前記酸性溶液は、硫酸とした。
(5.5) 酸洗後の石英鉱石を、再び脱イオン水で洗浄し、酸性溶液の成分を除去した。
(5.6) 洗浄後の石英鉱石を乾燥した。
(5.7) 乾燥後の石英鉱石をさらに乾燥し、結晶状を形成した。
(6) 浄化後の石英鉱石を溶鉱炉の中に入れ、1650℃の高温で石英鉱石の溶融を開始した。
(7) 純炭素還元剤と、セルロース材料と、有機炭素材料とを加え、炭素熱還元法(Carbothermal Reduction)および反応純化(Post−refining)を行った。溶融した石英鉱石と純炭素還元剤とを反応させ、液体シリコンを得た。このステップにおいて、詳細な反応プロセスは下記を含む。
(7.1) 溶融したケイ石と炭素を反応させ、一酸化ケイ素を形成した。
(7.2) 一酸化ケイ素をさらに炭素と反応させ、固体の炭化ケイ素を形成した。
(7.3) 炭化ケイ素を溶融したケイ石と反応させ、液体のケイ素および一酸化ケイ素を形成し、一酸化ケイ素をさらにステップ(7.2)の反応で使用し、循環反応を続けた。
この3つのステップの化学総反応式は、
SiO2+2C→Si+2CO+SiO
である。このステップで生成される一酸化炭素は、前記セルロース材料および前記有機炭素材料により順調に排出された。一部の一酸化ケイ素が脱離し、炭素と循環反応を続けた。さらに酸素と反応し、高純度の二酸化ケイ素(99.99999%以上)を形成し、ろ過設備においてろ過した後、副生成品として収集した。この化学反応式は、
2SiO+O2→2SiO2
である。
(1) 溶鉱炉底部のバルブを介して液体シリコンを外部の収容タンクに流し込んだ。
(2) 前記収容タンクにおいて、酸素でエアブロー除湿法(Moist Reduction Gas Blowing)を行い、液体シリコンの不純物を除去した。
(3) 収容タンクにおいて、スラグ処理法(Slag Treating)で液体シリコンの不純物をさらに除去し、ケイ素の純度を99.999%にした。この純度のケイ素は、XMG−Siと呼ぶことができる。
(4) 液体シリコンを結晶成長炉の鋳造品領域に注入し、前記鋳造品領域において、方向性凝固法(Directional Solidification)で液体シリコンを固化させ、ケイ素純度が99.9999%の固体多結晶シリコンを得た。この純度のケイ素は、SoG−Siと呼ぶことができる。
【0024】
次に、図5は、二酸化ケイ素と炭素の反応の自由エネルギー変化の概略図である。化学反応の自由エネルギー変化ΔGは、非常に重要な指標であり、化学反応でΔG<0である場合、この反応が放出するエネルギー量は周囲の抵抗を克服するのに充分であり、反応は順調に生成物の方向に行われ、自発的な反応であることを示す。化学反応でΔG>0である場合、反応で生成されるエネルギー量は抵抗を克服するのに不充分であり、反応は自然に発生することができない。しかも、このとき逆反応でΔG<0であり、反応は逆方向に行われる。化学反応でΔG=0である場合、反応が平衡状態にあることを示し、正方向と逆方向の反応の推進力が等しい。図5に示すように、ケイ素の融点は1683℃であり、二酸化ケイ素と炭素の反応でΔG=0である温度は、1683℃から2000℃の間であるため、本発明の好ましい実施例の製造方法において、ステップ(6)で1500℃〜1800℃の高温で石英鉱石を溶融し還元反応を行うとしている。これは、自由エネルギー変化ΔGにより設定された反応温度である。
【0025】
前記の一連の製造プロセスにより、高純度の多結晶シリコンを製造することができる。高純度の多結晶シリコンは、半導体産業および太陽エネルギーオプトエレクトロニクス産業に応用することができ、非常に潜在性を有する材料である。本発明の工程は、従来のシーメンス法およびチョクラルスキー結晶成長法に比べ、工程が比較的簡単であるため、コストが比較的低く、確実に発展の潜在性を有する。本発明の工程は、下記の長所を有する。
(1) 本発明の工程における炭素熱還元法は、従来の高重金属含有量のタール炭または粘結炭の代わりに特殊な成分の純炭素還元剤を使用し、従来の木屑の代わりに特殊な成分のセルロースおよびその他の有機炭素材料を使用し、従来の工程の汚染、エネルギー消費および危険が高いなどの欠点を防止することができる。
(2) 本発明の工程は、36時間もかからずに高純度シリコンインゴットの製造を完了することができ、従来の46時間以上に比べ、本発明は、多くの電力を節減することができ、多結晶シリコンの生産効率も高めることができる。
(3) 本発明の二酸化ケイ素原料は直接採掘粒度が比較的小さく、かつ純度が比較的高いケイ砂であるため、二酸化ケイ素純化の難度を下げると同時に、二酸化ケイ素原料の純度を高めることができる。
(4) 本発明は、石英鉱石原料の浄化を行うステップで、酸洗方式を利用して不純物を除去する。こうした酸洗方式は、わずかな化学原料のみを使用して処理を行うため、環境に対する影響が非常に小さいと同時に、原料の汚染を減少させることができる。
【0026】
以上の実施例は、本発明の技術的な考え形と特徴を説明したのみであり、その目的は、当業者が本発明の内容を理解し、これに基づき実施できるようにすることであり、本発明の特許範囲を限定するものではない。本発明で開示した主旨に基づく同等の変更または修正も、本発明の特許範囲内に含まれるものとする。
【0027】
発明者は常に構想し修正することにより、最終的に本発明の設計を得た。前記の多くの長所を有し、実に優れた発明であり、特許出願の要件に適合する。
【符号の説明】
【0028】
101〜111 本発明の好ましい実施例の製作方法のプロセス番号
201〜207 本発明の前記好ましい実施例の石英鉱石浄化プロセスの番号
300 石英鉱石
301 裂け目
400 溶鉱炉
410 アーク炉
420 ろ過設備
430 坩堝
440 電極棒
450 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 第1特定純度の二酸化ケイ素を含有する特純石英鉱石を原料として選択するステップと、
(2) 石英鉱石を洗浄(Cleaning)するステップと、
(3) 石英鉱石を粉砕(Comminution)するステップと、
(4) 光学分析装置で特定の粒度の石英鉱石を正確に選択するステップと、
(5) 石英鉱石を浄化(Purification)し、第2特定純度の二酸化ケイ素を含有させ、かつ特定含有量のホウ素およびリンを含有させるステップと、
(6) 石英鉱石を溶鉱炉に入れ、特定温度の高温で石英鉱石を溶融させるステップと、
(7) 純炭素還元剤を加え、炭素熱還元法(Carbothermal Reduction)および反応純化(Post−refining)を行い、溶融した石英鉱石と該純炭素還元剤とを反応させて液体シリコンを得るステップと、
(8) 該溶鉱炉底部のバルブを介して該液体シリコンを収容タンクに流し込むステップと、
(9) 該収容タンクにおいて、酸素でエアブロー除湿法(Moist Reduction Gas Blowing)を行い、液体シリコンの不純物を除去するステップと、
(10) 収容タンクにおいて、スラグ処理法(Slag Treating)で液体シリコンの不純物をさらに除去し、液体シリコンに第3特定純度のケイ素を含有させるステップと、
(11) 液体シリコンを結晶成長炉の鋳造品領域に注入し、該鋳造品領域において、方向性凝固法(Directional Solidification)で液体シリコンを固化させ、第4特定純度のケイ素を含有する固体ケイ素を得るステップと、
を含む高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項2】
ステップ(1)に記載の該第1特定純度が99.99%〜99.999%である請求項1に記載の高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項3】
ステップ(1)に記載の該石英鉱石がケイ砂である請求項1に記載の高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項4】
ステップ(4)に記載の該特定粒度が20mm〜80mmである請求項1に記載の高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項5】
ステップ(4)に記載の該特定粒度の石英鉱石は、白色または乳白色の外観を呈する必要がある請求項1に記載の高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項6】
ステップ(5)に記載の該浄化(Purification)方法が、
(5.1) 該石英鉱石を脱イオン水でより分けるステップと、
(5.2) 石英鉱石を研磨するステップと、
(5.3) 石英鉱石をろ過し、不純物をろ過するステップと、
(5.4) 酸性溶液を用いて、石英鉱石を酸洗するステップと、
(5.5) 酸洗後の石英鉱石を、再び脱イオン水で洗浄し、酸性溶液の成分を除去するステップと、
(5.6) 洗浄後の石英鉱石を乾燥するステップと、
(5.7) 乾燥後の石英鉱石をさらに乾燥し、結晶状を形成するステップと、
をさらに含む請求項1に記載の高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項7】
ステップ(5.4)に記載の該酸性溶液は、硫酸と、水酸化アンモニウムと、エチレンジアミン四酢酸との混合液、酸性過酸化物混合液およびジメチル酸から1つを選んで使用する請求項6に記載の高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項8】
ステップ(5)に記載の該第2特定純度が99.999%〜99.99999%である請求項1に記載の高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項9】
ステップ(5)に記載の該特定含有量が1ppm未満である請求項1に記載の高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項10】
ステップ(6)に記載の該溶鉱炉がアーク炉(Submerged Arc Furnace,SAF)およびろ過設備により構成され、該アーク炉は、少なくともさらに坩堝と、少なくとも1つの電極棒と、バルブとにより構成される請求項1に記載の高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項11】
ステップ(6)に記載の該特定温度の高温が1500℃〜1800℃である請求項1に記載の高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項12】
ステップ(7)に記載の純炭素還元剤が、気体のガスブラック(Gas black)により構成される請求項1に記載の高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項13】
ステップ(7)において、セルロース材料と、有機炭素材料とをさらに加え、炭素熱還元法および反応純化の反応を行うことができる請求項1に記載の高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項14】
ステップ(10)に記載の該第3特定純度が99.999%以上である請求項1に記載の高純度シリコン材料の製造方法。
【請求項15】
ステップ(11)に記載の該第4特定純度が99.9999%以上である請求項1に記載の高純度シリコン材料の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate