説明

高純度マルチトール結晶性粉末を調製するためのプロセス

【課題】高純度のマルチトール結晶性粉末を調製する方法を提供すること。
【解決手段】高純度のマルチトール結晶性粉末を調製するためのプロセスであって、i)強酸性カチオン樹脂で詰められた一連のカラムを用いる疑似移動床式クロマトグラフィーによって、70%〜75%のマルトースを有する粗製マルトース溶液から、96%を超える純粋さのマルトースを有するマルトース溶液を分離し調製する工程;ii)120℃〜130℃の温度、40kg/cm〜50kg/cmの圧力のような反応条件で、ルテニウム触媒の存在下、99%を超える変換率の水素化反応によって、95%を超える純粋さのマルチトールを有するマルチトール溶液を変換し調製する工程;およびiii)98%を超える純度のマルチトール結晶性粉末を調製するために、この得られたマルチトール溶液を濃縮し、乾燥させ、粉砕し、そして結晶化する工程を包含する、プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、98%を超える高純度のマルチトール結晶性粉末およびその調製方法に関する。より具体的には、本発明は、高純度のマルチトール結晶性粉末を調製するためのプロセスに関し、このマルチトール結晶性粉末は、以下の性質:i)微生物によって発酵されない;ii)歯科症例を誘発しない;iii)ヒトの消化酵素によってほとんど消化されない;iv)低カロリー機能性(low calories functionality);ならびにv)非吸湿性および熱安定性の物理的性質、を有する。
【背景技術】
【0002】
(先行技術の説明)
マルチトールは、食物、薬物および化粧品の種々の分野で使用されている。マルチトールを調製するためのプロセスは、多くの先行技術(例えば、特許文献1および特許文献2)で開示されている。
【0003】
特許文献3では、高純度のマルチトール結晶を調製するためのプロセスが開示されている。この調製方法は、i)酵素的グリコシル化法またはクロマトグラフィー法を用いて、81%〜90%の含量の高純度マルトースが、50%〜80%の含量のマルトース原材料から調製され得る工程;ii)110℃〜145℃の温度および40kg/cm〜200kg/cmの圧力のような反応条件で、ニッケル触媒の存在下、水素化によって得られた高純度マルトースから50%〜90%のマルチトール溶液が調製され得る工程;ならびにiii)クロマトグラフィー分離および連続晶析装置を通して得られたマルチトール溶液を精製することによって、95%を超える純度のマルチトール結晶が調製され得る工程、を包含する。
【0004】
しかし、この特許公報で言及される高純度のマルチトール調製方法は、例えば、以下の欠点:i)水素化反応のうちに副生成物の形成が増加すること、ii)副生成物を除去するための分離および精製(これは、クロマトグラフィー分離および再結晶に関する多くの工程を必要とする)が困難であること、ならびにiii)マルチトール生成の収率の低下、を有し、これらはマルチトールの商業的利用に関する問題を引き起こす。
【0005】
上記の問題を解決するために、本発明が開発された。高純度のマルチトール結晶性粉末を調製するために、本発明は以下の調製方法を開発することによって完成された。この方法は、i)カチオン樹脂で詰められたカラムを用いる疑似移動床式クロマトグラフィーによって、70%〜75%のマルトースを有する粗製マルトース溶液から、96%を超える純粋さのマルトースを有するマルトース溶液を調製する工程;ii)ルテニウム触媒の存在下、水素化反応によって、95%を超える純粋さのマルチトールを有するマルチトール溶液を変換し調製する工程;iii)この得られたマルチトール溶液を濃縮し、そしてシード添加せずに60℃〜80℃で一晩静置する工程;ならびにiv)98%を超える純度のマルチトール結晶性粉末を調製するために、この得られたマルチトールを乾燥させ、粉砕し、そして結晶化する工程、を包含する。
【特許文献1】特開昭57−134498号公報
【特許文献2】特開昭61−180797号公報
【特許文献3】特開平9−132587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のマルチトール調製方法に伴う問題点を解決する、高純度のマルチトール結晶性粉末を調製する方法を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下を提供する。
【0008】
(項目1)
高純度のマルチトール結晶性粉末を調製するためのプロセスであって、
i)強酸性カチオン樹脂で詰められた一連のカラムを用いる疑似移動床式クロマトグラフィーによって、70%〜75%のマルトースを有する粗製マルトース溶液から、96%を超える純粋さのマルトースを有するマルトース溶液を分離し調製する工程;
ii)120℃〜130℃の温度、40kg/cm〜50kg/cmの圧力のような反応条件で、ルテニウム触媒の存在下、99%を超える変換率の水素化反応によって、95%を超える純粋さのマルチトールを有するマルチトール溶液を変換し調製する工程;および
iii)98%を超える純度のマルチトール結晶性粉末を調製するために、その得られたマルチトール溶液を濃縮し、乾燥させ、粉砕し、そして結晶化する工程
を包含する、プロセス。
(項目2)
前記カラムが、Amberlite CG6000シリーズ、Diaion UBK 530K、Dowex M4340およびMitsubisi FRK−01からなる群より選択される少なくとも1種の強酸性カチオン樹脂で詰められる、項目1に記載のプロセス。
(項目3)
前記工程ii)から得られたマルチトール溶液を濃縮する工程;および濃縮されたマルチトール溶液をシード添加せずに60℃〜80℃で42時間〜54時間静置する工程、をさらに包含する、項目1に記載のプロセス。
(項目4)
項目1に記載のプロセスによって調製された高度に純粋なマルチトール。
【0009】
(発明の要旨)
本発明の目的は、高純度のマルチトール結晶性粉末を調製するためのプロセスを提供することであり、このプロセスは、i)強酸性カチオン樹脂で詰められた一連のカラムを用いる疑似移動床式クロマトグラフィーによって、70%〜75%のマルトースを有する粗製マルトース溶液から、96%を超える純粋さのマルトースを有するマルトース溶液を分離し調製する工程;ii)120℃〜130℃の温度、40kg/cm〜50kg/cmの圧力のような反応条件で、ルテニウム触媒の存在下、99%を超える変換率の水素化反応によって、95%を超える純粋さのマルチトールを有するマルチトール溶液を変換し調製する工程;およびiii)98%を超える純度のマルチトール結晶性粉末を調製するために、この得られたマルチトール溶液を濃縮し、乾燥させ、粉砕し、そして結晶化する工程、を包含する。
【0010】
さらに、本発明で使用されるカラムは、Amberlite CG6000シリーズ、Diaion UBK 530K、Dowex M4340およびMitsubisi FRK−01からなる群より選択される少なくとも1種の強酸性カチオン樹脂で詰められる。
【0011】
一方では、本発明の高純度のマルチトール結晶性粉末を調製するためのプロセスはさらに、工程ii)から得られたマルチトール溶液を濃縮する工程;および濃縮されたマルチール溶液をシード添加せずに60℃〜80℃で42時間〜54時間静置する工程、を包含する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、高純度のマルチトール結晶性粉末を調製するためのプロセスが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
高純度のマルチトール結晶性粉末を調製するためのプロセスは、以下の調製方法によって開発された。この調製方法は、i)カチオン樹脂で詰められたカラムを用いる疑似移動床式クロマトグラフィーによって、70%〜75%のマルトースを有する粗製マルトース溶液から、96%を超える純粋さのマルトースを有するマルトース溶液を分離し調製する工程;ii)ルテニウム触媒の存在下、水素化反応によって、95%を超える純粋さのマルチトールを有するマルチトール溶液を変換し調製する工程;iii)この得られたマルチトール溶液を濃縮し、そしてシード添加せずに60℃〜80℃で一晩静置する工程;ならびにiv)98%を超える純度のマルチトール結晶性粉末を調製するために、この得られたマルチトール溶液を乾燥させ、粉砕し、そして結晶化する工程、を包含する。
【0014】
マルトース溶液(DE 8〜12)は、デンプン溶液を90℃〜110℃でα−アミラーゼを用いて加水分解し液化させることによって調製される。さらに、得られたマルトース溶液は、β−アミラーゼによって50℃〜60℃で8時間〜48時間グリコシル化される。最後に、60%のマルトース含量を有するマルトース溶液が得られる。しかし、β−アミラーゼは1−6グルコシド結合を切断し得ないので、より高純度のマルトース溶液は得ることができない。
【0015】
β−アミラーゼによるトウモロコシデンプンのマルトースへの加水分解の場合、40%〜55%のマルトース、18%〜23%のマルトトリオースおよび18%〜23%の1−6グルコシド結合を有するDP4を超える分枝のデキストリンが、得られる。最近、マルトース組成物においてマルトース含量を70%〜75%に増加させるための技術が開発された。この技術は、1−6グルコシド結合を切断するために、プルラナーゼおよびβ−アミラーゼの酵素混合物を使用する。70%〜75%のマルトース含量を有するHighmaltose(商品名)は、この技術を使用して売買されている。
【0016】
70%〜75%のマルトース含量を有するマルトース溶液は、以下の調製工程による本発明のマルチトールを調製するための出発物質として使用されている。
【0017】
1)工程1
70%〜75%のマルトース含量を有するマルトース溶液は、以下の液化、グリコシル化、濾過、脱色、イオン交換および濃縮プロセスによって、デンプンから調製される。
【0018】
2)工程2
得られた70%〜75%のマルトース含量を有するマルトース溶液は、53%〜56%の固体含量に濃縮される。濃縮されたマルトース溶液は、カチオン交換樹脂で詰められた疑似移動床式クロマトグラフィーカラムを通して、96%を超える高度に純粋なマルトース溶液に分離され精製される。
【0019】
本発明の連続疑似移動床式系は、クロマトグラフィーの一種であり、吸着剤および供給溶液を一定の流速で逆方向に移動させることによる、分子量の大きさに従う移動度の相違を用いることで特徴付けられる。しかし、実際の適用では、吸着剤はカラム中に固定される一方で、供給溶液および脱着水は、供給溶液および脱着水の供給位置を各々次のカラムに移動することによって、この吸着剤の空隙容量中に循環される。この系の主な特徴は、供給位置および流出位置が移動する一方で、吸着剤が固定されること、ならびに供給、流出および循環が連続的に行われることである。
【0020】
マルトース組成物を分離するための吸着剤として、イオン樹脂の強酸性ゲル形態は、官能基としてNa型、4%〜8%の架橋および40メッシュ〜80メッシュの粒子サイズを有する。好ましい分離樹脂として、Amberlite CG6000シリーズ、Diaion UBK 530K、Dowex M4340およびMitsubisi FRK−01が使用され得る。
【0021】
3)工程3
工程2で得られた高度に純粋なマルトース溶液は、45%〜50%の固体含量に濃縮される。次いで、120℃〜130℃の温度および40kg/cm〜50kg/cmの圧力で3時間〜5時間のような反応条件で、0.03%〜0.1%のルテニウム触媒の存在下での水素化反応。95%を超える純粋さのマルチトール溶液が水素化反応によって得られ得る。次いで、得られたマルチトール溶液は濃縮され、触媒を除去することによって精製される。
【0022】
4)工程4
82%〜85%の濃度の高度に純粋なマルチトール溶液を、硬化させるために60℃〜80℃で48時間静置する。水含有物を除去し乾燥させた後、グラインダーを挿入するために、高度に純粋なマルチトール凝集体は砕かれ切断される。粉砕後、得られたマルチトール結晶性粉末は、98%を超える純度に選択される。
【0023】
工程2における疑似移動床式クロマトグラフィーは、以下のように具体的に説明され得る。
【0024】
本発明の分離機器は、1:2.5〜5の直径:長さの比を有するカラムからなる。分配器は、カラムより上の位置に配置され、収集器は、カラムより下の位置に配置され、その結果、流体の分散および流れが一定速度になる。内部カラムの温度は、供給溶液および脱着水を加熱し維持することによって、58℃〜62℃にする。
【0025】
4個のカラム(または8個、12個のカラム)が、5つの入口および出口で流体を循環させるために、環状の位置に配列される。カラムに配置される入口および出口は、以下のとおりである。i)マルトース供給溶液の入口、ii)脱着水の入口、iii)分枝のデキストリン(成分A)の出口、iv)マルトトリオース(成分B)の出口、およびv)96%の高度に純粋なマルトース(成分C)の出口。
【0026】
マルトース供給溶液および脱着水は、配列されたようにすべてのカラムを循環する。したがって、成分A、成分Bおよび成分Cは、すべてのカラムに分配される。次いで、上記3つの成分を分離するための操作が図1に示されるように行われる。
【0027】
3つの成分を分離するための操作の1サイクルは、4つの操作工程からなる。操作の第1の工程は、i)マルトース供給溶液をカラム番号3に供給すること、ii)脱着水をカラム番号1に供給すること、iii)成分Bをカラム番号2で流出させること、を含む。操作の第2の工程は、i)脱着水をカラム番号2に供給すること、ii)成分Aをカラム番号4で流出させること、iii)成分Cをカラム番号2で流出させること、を含む。操作の第3の工程は、i)脱着水をカラム番号3に供給すること、ii)成分Aをカラム番号1で流出させること、iii)成分Cをカラム番号3で流出させること、を含む。操作の第4の工程は、i)脱着水をカラム番号4に供給すること、ii)成分Aをカラム番号2で流出させること、iii)成分Cをカラム番号4で流出させること、を含む。
【0028】
操作の第2のサイクルは、上記操作の第1のサイクルを繰り返す。マルトース供給溶液は、成分A、成分Bおよび成分Cを含む。その中でも、成分Aは、大きい分子量および速い移動度を有し、成分Bは、中程度の分子量および中程度の移動度を有し、そして成分Cは、小さい分子量および遅い移動度を有する。上で示されるように、成分Aは、1→6結合を有する分枝のデキストリンを含み、成分Bは、1→4結合を有するマルトトリオースを含み。そして成分Cは、グルコースおよびマルトースを含む。
【0029】
マルトース供給溶液の固体含量濃度は、53重量%〜55重量%であり、そしてマルトース供給溶液の量は、1サイクルの操作に対する樹脂の総量に関して、3.57v/w%である。さらに、脱着水の量は、1サイクルの操作に対する樹脂の総量に関して、22.59v/w%である。
【0030】
一方で、脱着水を含む成分Aの流出量は、1サイクルの操作に対する樹脂の総量に関して、5.46v/w%(1.82v/w%の3倍)である。脱着水を含む成分Bの流出量は、1サイクルの操作に対する樹脂の総量に関して、4.74v/w%であり、そして脱着水を含む成分Cの流出量は、1サイクルの操作に対する樹脂の総量に関して、15.96v/w%(5.32v/w%の3倍)である。
【0031】
循環する溶液の線速度は、常に1時間あたり2.5mであり、カラム中の空隙体積は、循環する溶液で満たされる。1サイクルの操作に必要とされる時間は、23分未満である。成分Aおよび成分Cの流出は、同時に開始される。成分Cの流出を終了する際、成分Aおよび成分Cの流出は、溶液の流れ方向へ次のカラムに繰り返される。合計3回の成分Aおよび成分Cの流出を終了した後、マルトース供給溶液は、カラム番号3に供給され、そして脱着水もまた循環のためにカラム番号1に供給される。次いで、成分Bが、カラム番号2において流出される。この3成分疑似移動床式クロマトグラフィーを用いて、成分C(96%を超える高度に純粋なマルトース)が分離される。次いで、得られた高度に純粋なマルトースが45w/v%〜50w/v%に濃縮される。
【0032】
本発明は、以下の実施例によってより具体的に説明される。しかし、これらの実施例が本発明の範囲を例証するがいかなる様式でも限定しないことが意図されることが理解されるべきである。
【実施例】
【0033】
(実施例1)70%〜75%のマルトース含量を含む供給溶液の調製
114kgのトウモロコシデンプンおよび886Lの水を混合し、攪拌機を有する1500Lの可溶化ボウルに分散させる。60mlの耐熱性アミラーゼ(登録商標:Novozyme AA)を添加し、そして攪拌して上記デンプンのスラリー溶液を得る。得られたデンプンスラリー溶液を、モノポンプを用いて2kg/cmの流出圧下で、Z−cooker(Hydroheater)からの120℃の流れで、1分あたり10Lの速度でS字型の保持セルに移す。次いで、移したスラリー溶液を100℃で3分間静置し、そしてこのスラリー溶液を攪拌機を有する500Lのエージングタンクに90℃で移す。
【0034】
エージングタンクから、エージングしたスラリーを500Lのグリコシル化タンクに移す。次いで、スラリーをウォータージャケットを用いて65℃で冷却する。1時間経過後、100mlのβ−アミラーゼ(登録商標:SPEZYME BBA 1500)および100mlのプルラナーゼ(登録商標:PROMOZYME 600L)をこのスラリーに添加して、グリコシル化溶液を得る。
【0035】
72時間経過後、グリコシル化溶液を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析用に回収する。グリコシル化溶液の測定された組成は、0.8%のグルコース、72.4%のマルトース、8.4%のマルトトリオースおよび18.4%のマルトテトラオース、ならびに他のオリゴ糖を含む。得られたグリコシル化溶液を、濾過アジュバントとしてパーライトおよび炭素粉末を用いて、フィルタープレスによって濾過する。次いで、イオン交換精製を、Kカラム、Aカラムおよび/またはMBカラムを用いて行う。最後に、得られた物質を減圧中で55%に濃縮する。
【0036】
(実施例2)疑似移動床式クロマトグラフィーを用いるマルトースの調製
67cmの直径および1mの長さを有する4つのカラムを準備し、そしてAmberlite CG6020 Na型樹脂をそれらのカラムに詰める。したがって、樹脂堆積は1つのカラムあたり352Lになる。図2に示されるように、カラム系が準備され、そして供給溶液および脱着水の温度が60℃に設定され、カラム内部の温度も一緒に同じ温度に設定される。
【0037】
4つのカラム(右から番号1、番号2、番号3および番号4)が存在し、そして流体の流れを番号4から番号1に反時計回りに循環させる。75%の固体含量を有するマルトース供給溶液を60℃に加熱し、脱イオン化精製水である脱着水もまた60℃に加熱する。循環ポンプの体積速度は、1時間あたり882Lである。
【0038】
成分を分離するための操作の1サイクルは、4つの工程の操作からなる。4つの工程の操作(工程1から工程4)を、一連の供給および流出の間に循環し、繰り返す。
【0039】
操作の第1の工程は、i)33.5Lのマルトース供給溶液を、カラム番号3に1時間あたり882Lの流速で2.28分間供給すること、ii)16.5Lの脱着水をカラム番号1に1時間あたり1314Lの流速で45秒間供給すること、iii)50Lの成分Bをカラム番号2で3.4分間流出させること、を含む。したがって、成分Bのマルトトリオースは、10%の固体含量濃度で得られる。
【0040】
操作の第2の工程は、i)100.7Lの脱着水をカラム番号2に1時間あたり1314Lの流速で4.6分間供給すること、ii)25.7Lの成分Aをカラム番号4で1.2分間流出させること、iii)75Lの成分Cをカラム番号2で3.4分間流出させること、を含む。したがって、成分Cのマルトースは、6.1%の濃度で得られ、そして成分Aの分枝のデキストリンは、2.1%の濃度で得られる。
【0041】
操作の第3の工程は、i)100.7Lの脱着水をカラム番号3に1時間あたり1314Lの流速で4.6分間供給すること、ii)25.7Lの成分Aをカラム番号1で1.2分間流出させること、iii)75Lの成分Cをカラム番号3で3.4分間流出させること、を含む。
【0042】
操作の第4の工程は、i)100.7Lの脱着水をカラム番号4に1時間あたり1314Lの流速で4.6分間供給すること、ii)25.7Lの成分Aをカラム番号2で1.2分間流出させること、iii)75Lの成分Cをカラム番号4で3.4分間流出させること、を含む。
【0043】
上記4つの操作工程からなる操作のサイクルは、連続的に繰り返される。23%のDP4を超えるオリゴ糖、22%のマルトトリオース、53%のマルトースおよび2%のグルコースを含むマルトース供給溶液は、この操作工程を用いて分離される。最後に、95.2%の純度を有する成分A(DP4を超えるオリゴ糖);94.5%の純度を有する成分B(マルトトリオース);および96.1%の純度を有する成分C(マルトース)を分離し、得る。
【0044】
次いで、得られた高度に純粋なマルトースを混床式のイオン交換樹脂塔に通し、そして得られた物質を濃縮する。高度に純粋なマルトース溶液を分離し調製するためのカラムおよびデバイスの構造は、図2に示される。
【0045】
(実施例3)ルテニウム触媒の存在下での水素化による高度に純粋なマルチトールの変換
加熱ジャケットを取り付けたステンレス製のボウルを、120℃に加熱する。50gのルテニウム触媒を添加し、実施例2で得られた50kgの高度に純粋なマルトース溶液(Bx 48)もまた、そのボウルに添加する。次いで、水素化反応を50kg/cmの水素化圧下で3時間行う。10% NaOH溶液でpHを調整することによって、pHを6.5〜7.5に維持する。水素化反応を終了する際、この得られた材料は、1.2%のソルビトール、95.5%のマルチトールおよび3.3%のマルトトリイトール、ならびにDP4を超える糖アルコールを含む。次いで、得られたマルチトール溶液を濾過し、精製する。最後に、これをBx 85に濃縮する。
【0046】
(実施例4)高度に純粋なマルチトールの精製、乾燥および結晶化
幅30cm×長さ30cm×高さ45cmを有するステンレス製の容器を準備する。次いで、28Lの濃縮したマルチトール(Bx 85)をシード添加せずに65℃で入れる。これを48時間保管した後、上清を除去する。最後に、得られた固体マルチトールを20cm〜30cmのサイズに切断する。60Torrの真空乾燥機を用いて、これを80℃で5時間乾燥させる。最後に、0.5%の含水量を有するマルチトールを得る。次いで、得られたマルチトールを砕き、そして60メッシュのふるいで粉末にする。得られたマルチトールは、0.2%のソルビトール、98.9%のマルチトールおよび0.9%のマルトトリイトール、ならびにDP4を超えるものを有する糖アルコールを含む。
【0047】
本発明は、高純度のマルチトール結晶性粉末を調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、i)強酸性カチオン樹脂で詰められた一連のカラムを用いる疑似移動床式クロマトグラフィーによって、70%〜75%のマルトースを有する粗製マルトース溶液から、96%を超える純粋さのマルトースを有するマルトース溶液を分離し調製する工程;ii)120℃〜130℃の温度、40kg/cm〜50kg/cmの圧力のような反応条件で、ルテニウム触媒の存在下、99%を超える変換率の水素化反応によって、95%を超える純粋さのマルチトールを有するマルチトール溶液を変換し調製する工程;およびiii)98%を超える純度のマルチトール結晶性粉末を調製するために、この得られたマルチトール溶液を濃縮し、乾燥させ、粉砕し、そして結晶化する工程、を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明における疑似移動床式クロマトグラフィーによって高度に純粋なマルトース溶液を分離し調製する工程の模式的プロセスを示す。
【図2】図2は、本発明における高度に純粋なマルトース溶液を分離し調製するためのカラムおよびデバイスの概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度のマルチトール結晶性粉末を調製するためのプロセスであって、
i)強酸性カチオン樹脂で詰められた一連のカラムを用いる疑似移動床式クロマトグラフィーによって、70%〜75%のマルトースを有する粗製マルトース溶液から、96%を超える純粋さのマルトースを有するマルトース溶液を分離し調製する工程;
ii)120℃〜130℃の温度、40kg/cm〜50kg/cmの圧力のような反応条件で、ルテニウム触媒の存在下、99%を超える変換率の水素化反応によって、95%を超える純粋さのマルチトールを有するマルチトール溶液を変換し調製する工程;および
iii)98%を超える純度のマルチトール結晶性粉末を調製するために、該得られたマルチトール溶液を濃縮し、乾燥させ、粉砕し、そして結晶化する工程
を包含する、プロセス。
【請求項2】
前記カラムが、Amberlite CG6000シリーズ、Diaion UBK 530K、Dowex M4340およびMitsubisi FRK−01からなる群より選択される少なくとも1種の強酸性カチオン樹脂で詰められる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記工程ii)から得られたマルチトール溶液を濃縮する工程;および濃縮されたマルチトール溶液をシード添加せずに60℃〜80℃で42時間〜54時間静置する工程、をさらに包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
請求項1に記載のプロセスによって調製された高度に純粋なマルチトール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−137982(P2008−137982A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350452(P2006−350452)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(506429684)株式會▲社▼ 新東邦CP (1)
【Fターム(参考)】