説明

高純度脂環式ジエポキシ化合物、硬化性エポキシ樹脂組成物、硬化物、透明封止材料及び発光素子

【課題】優れた透明性を有する、発光素子の発光体を封止する封止材料の樹脂成分として有用な、高純度脂環式ジエポキシ化合物、このジエポキシ化合物を含有する硬化性エポキシ樹脂組成物、この硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、前記硬化性エポキシ樹脂組成物を用いた透明封止材料、並びに、この透明封止材料を用いて封止してなる発光素子を提供する。
【解決手段】特定の脂環式ジエポキシ化合物が有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、4つの立体異性体の合計量中80%以上であることを特徴とする高純度脂環式ジエポキシ化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラヒドロインデン骨格を有する脂環式ジエポキシ化合物の立体異性体のうち、特定の立体異性体の含有比率が高い高純度脂環式ジエポキシ化合物、前記高純度脂環式ジエポキシ化合物、並びに、硬化剤及び硬化促進剤を含有する硬化性エポキシ樹脂組成物、前記硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、前記硬化性エポキシ樹脂組成物を用いた透明封止材料、並びに、この透明封止材料を用いて封止してなる発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の屋内、屋外表示板、画像読み取り用光源、交通信号、大型ディスプレイ用ユニット等に実用化されている光半導体等の発光素子は、主に、エポキシ樹脂組成物からなる封止材料によって発光体の周辺が保護されている。
従来、封止材料としては、成形性や得られる硬化物の光透過性などに優れることから、ビスフェノールA等の芳香族系エポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤とを組み合わせた樹脂組成物が広く使用されている。例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂やビスフェノールウレタン変性エポキシ樹脂等の芳香族系エポキシ樹脂を主構成樹脂として使用したものが挙げられる(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、前記した芳香族系エポキシ樹脂を主剤として用いる封止材料は、該樹脂中の芳香環の吸光により硬化物の黄変を招き易いという問題があった。とりわけLEDの分野では、LED素子の高出力化及び短波長化が進んでいるところ、前記芳香族系エポキシ樹脂はこの短波長の光を吸収し、光半導体素子の黄変や光取り出し効率の低下を招いていた。
【0004】
これに対し、硬化物の黄変の少ない光半導体封止材料として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂環式エポキシ化合物を主剤として用いる技術が知られている。例えば特許文献2には、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートとメチルヘキサヒドロフタル酸無水物を有効成分とするダイオード封止用樹脂組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、このような非芳香族系のエポキシ化合物であっても、その硬化物を高温(150℃)で数日間保管すると黄変は避けられず、特に近年需要の高い高出力タイプの高輝度LEDの封止材料に求められる耐黄変性は得られていないのが現状であった。更に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートは分子中にエステル結合を有するため、空気中の水分等の影響でエステル基が加水分解を起こし易く、硬化物の着色の原因となり易いという問題もあった。
【0006】
このような問題を解決する手段として、分子中にエステル基を有さない、ビシクロヘキシル−3,3’−ジエン骨格やシクロオクタジエン骨格、脂環式インデン骨格を有する不飽和化合物をエポキシ化して得られる非エステル型脂環式エポキシ化合物を主剤とする熱硬化性樹脂組成物、及びこの組成物を熱硬化させた透明材料が開示されている(特許文献3)。
【0007】
本発明に関連して、テトラヒドロインデン骨格を有する脂環式ジエポキシ化合物は、脂環式骨格に対するエポキシ基の配置により、4つの立体異性体が存在することが報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−316626号公報
【特許文献2】特開2000−196151号公報
【特許文献3】WO2005/019298号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】S.J.Okobytyy et al, Jornal of Molecular Structure; THEOCHEM,730,125(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは当該脂環式ジエポキシ化合物を用いて封止材料を調製し検討したところ、当該封止材料は高輝度LEDの透明封止材料として用いるのに充分な光透過性や耐黄変性を未だ有していないことが明らかになった。
【0011】
本発明は、かかる検討結果に鑑みてなされたものであり、硬化直後から光透過性に優れ、高温で長時間使用されても黄変が少なく耐黄変性に優れ、発光素子の発光体を封止する封止材料の樹脂成分として有用な、高純度脂環式ジエポキシ化合物、このジエポキシ化合物を含有する硬化性エポキシ樹脂組成物、この硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、前記硬化性エポキシ樹脂組成物を用いた透明封止材料、並びに、この透明封止材料を用いて封止してなる発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、テトラヒドロインデン骨格を有する脂環式ジエポキシ化合物として、下記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物に着目し、この脂環式ジエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物について鋭意検討した。
その結果、前記脂環式ジエポキシ化合物の特定の立体異性体の存在割合が、該脂環式ジエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物の光透過性や耐黄変性に大きく影響することを見出し、この知見を基に本発明を完成するに至った。
【0013】
かくして本発明によれば、下記(1)〜(3)の高純度脂環式ジエポキシ化合物、(4)、(5)の硬化性エポキシ樹脂組成物、(6)の硬化物、(7)の透明封止材料、及び、(8)の発光素子が提供される。
【0014】
(1)ガスクロマトグラフィーにより検出される、下記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物が有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中80%以上であることを特徴とする高純度脂環式ジエポキシ化合物。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R〜R12は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
(2)前記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物が有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中95%以上であることを特徴とする(1)に記載の高純度脂環式ジエポキシ化合物。
(3)脂環式ジエポキシ化合物がテトラヒドロインデンジエポキシドであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の高純度脂環式ジエポキシ化合物。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の高純度脂環式ジエポキシ化合物、ならびに、硬化剤及び硬化促進剤を含有することを特徴とする、硬化性エポキシ樹脂組成物。
【0017】
(5)さらに、前記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物以外のエポキシ基含有化合物を含有することを特徴とする、(4)に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
(6)前記(4)又は(5)に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
(7)前記(4)又は(5)に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物からなる透明封止材料。
(8)前記(7)に記載の透明封止材料を用いて封止してなる発光素子。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、優れた光透過性と耐黄変性を有する硬化物が得られる、発光素子の発光体を封止する透明封止材料の樹脂成分として有用な高純度脂環式ジエポキシ化合物、この高純度脂環式ジエポキシ化合物を含有する硬化性エポキシ樹脂組成物、この硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、前記硬化性エポキシ樹脂組成物を用いた透明封止材料、並びに、この透明封止材料を用いて封止してなる発光素子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、1)高純度脂環式ジエポキシ化合物、2)硬化性エポキシ樹脂組成物、3)硬化物、4)透明封止材料、及び、5)発光素子に項分けして詳細に説明する。
【0020】
1)高純度脂環式ジエポキシ化合物
本発明の高純度脂環式ジエポキシ化合物は、ガスクロマトグラフィーにより検出される、前記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物が有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体(すなわち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体、エキソ−エンドの立体配置を有する立体異性体、エンド−エキソの立体配置を有する立体異性体、エンド−エンドの立体配置を有する立体異性体の4種の立体異性体)のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体(「以下、エキソ−エキソ立体異性体」ということがある。)の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中80%以上であることを特徴とする。
【0021】
エキソ−エキソ立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、4つの立体異性体の合計量中80%以上、好ましくは95%以上である高純度脂環式ジエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物を用いることにより、光透過性と耐黄変性に優れる硬化物を得ることができる。なお、本発明の高純度脂環式ジエポキシ化合物中、エキソ−エキソ立体異性体以外の3つの立体異性体の存在割合は特に限定されるものではない。
【0022】
前記式(I)中、R〜R12は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
前記R〜R12のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
炭素数1〜10の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜10のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜10のアルケニル基;エチリデン基、プロピリデン基等の炭素数2〜10のアルキリデン基;等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、R〜R12としては、光透過性と耐黄変性とにバランスよく優れる硬化物を得ることができることから、互いに独立して、水素原子又はメチル基であるのが好ましく、R〜R12の全てが水素原子であるのが特に好ましい。前記一般式(I)においてR〜R12の全てが水素原子である場合、当該一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物はテトラヒドロインデンジエポキシドである。
【0024】
前記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物(以下、「ジエポキシ化合物A」と略記することがある。)の4つの立体異性体の、ガスクロマトグラフィーによる定量分析は、例えば、下記の測定条件で行うことができる。
【0025】
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−1(ヒューレットパッカード社製)、長さ30m、内径0.25mm、膜厚1.0μm
液相 100%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:1.0ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
昇温パターン(カラム):40℃で3分間保持、10℃/分で300℃まで昇温
スプリット比:200
サンプル:0.4μL
【0026】
また、ガスクロマトグラフィーで検出されるジエポキシ化合物Aの4つの立体異性体の構造は、H-NMRや13C−NMRで帰属することができる。
【0027】
ジエポキシ化合物Aは、従来公知の方法により製造することができる。例えば、下記に示すように、対応する環状ポリオレフィン化合物(下記式(II)で表される化合物)を、酸化剤により酸化(エポキシ化)する方法が挙げられる。
【0028】
【化2】

【0029】
(式中、R〜R12は前記と同じ意味を表す。)
酸化剤としては、過酸化水素、脂肪族過カルボン酸、有機過酸化物等が挙げられる。
酸化剤の使用量は、環状ポリオレフィン化合物に対して等モル以上、好ましくは、1〜2倍モルである。
【0030】
エポキシ化反応は、溶媒中で行うのが好ましい。用いる溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;等が挙げられる。
【0031】
反応温度は、0℃以上用いる溶媒の沸点以下、好ましくは20〜70℃である。
反応時間は、反応規模等にもよるが、通常1〜100時間、好ましくは2〜50時間である。
反応終了後は、例えば、貧溶媒で沈殿させる方法やエポキシ化物を熱水中に攪拌の下で投入し溶媒を蒸留除去する方法、直接脱溶媒法等により、目的とするエポキシ化合物を得ることができる。
【0032】
得られる式(I)で表される化合物は、通常、エンド−エンド立体異性体、エンド−エキソ立体異性体、エキソ−エンド立体異性体及びエキソ−エキソ立体異性体の4つの立体異性体の混合物である。
【0033】
前記4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソ立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、4つの立体異性体の合計量中80%以上である高純度脂環式ジエポキシ化合物は、前記式(I)で表される化合物の4つの立体異性体混合物を、蒸留やカラムクロマトグラフィー等の公知の精製方法に供し、分離・精製することで得ることができる。なかでも、当該混合物を、後述するジエポキシ化合物Aの精製例1、2に記載の方法に従って分離・精製するのが好ましい。
【0034】
本発明の高純度脂環式ジエポキシ化合物は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の樹脂成分として有用である。
【0035】
2)硬化性エポキシ樹脂組成物
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、本発明の高純度脂環式ジエポキシ化合物、並びに、硬化剤及び硬化促進剤を含有することを特徴とする。
【0036】
〔硬化剤〕
用いる硬化剤としては、本発明の高純度脂環式ジエポキシ化合物を、熱や光により硬化させ得るエポキシ樹脂用の硬化剤であれば、特に制約はない。
例えば、酸無水物系硬化剤やフェノール系硬化剤等が挙げられ、高純度脂環式ジエポキシ化合物をより好適に硬化できることから、酸無水物系硬化剤が好ましい。
【0037】
酸無水物系硬化剤としては、分子中に脂肪族環又は芳香族環を1個又は2個有するとともに、酸無水物基を1個又は2個有する、炭素原子数4〜25個、好ましくは8〜20個程度の酸無水物が好適である。
【0038】
酸無水物系硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂用硬化剤として慣用されているものの中から任意に選択して使用することができ、常温で液状のものが好ましい。具体的には、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等を挙げることができる。
【0039】
また、本発明の透明封止材料の含浸性に悪影響を与えない範囲で、常温で固体の酸無水物系硬化剤、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等を使用することができる。常温で固体の酸無水物系硬化剤を使用する場合には、常温で液状の酸無水物系硬化剤に溶解させ、常温で液状の混合物として使用することが好ましい。
以上の硬化剤はそれぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
なかでも、本発明の目的とする効果がより得られやすいことから、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物が好ましい。
【0041】
市販されている酸無水物系硬化剤としては、例えば、商品名「MH−700」、「HNA−100」[以上、新日本理化社製]、「HN−5500E」、「HN−7000」[以上、日立化成工業社製]、グルタル酸無水物(ジャパンエポキシレジン社製)、コハク酸無水物等が挙げられる。
【0042】
硬化剤の使用割合は、硬化剤としての効果を発揮しうる有効量であれば特に制限はないが、通常エポキシ当量1当量に対して、酸無水物当量として0.5〜1.5当量の範囲であり、さらに好ましくは0.8〜1.2当量の範囲である。
【0043】
〔硬化促進剤〕
本発明において用いられる硬化促進剤としては、高純度脂環式ジエポキシ化合物の硬化反応を促進する機能を有する化合物であれば、特に制約されない。
【0044】
硬化促進剤の具体例としては、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン類;1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール系硬化促進剤;トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン系硬化促進剤;テトラブチルホスホニウムジエチルホスホロジチオエート、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫やアルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物類;テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類;三フッ化ホウ素、トリフェニルボレート等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化物;が挙げられる。更には、高融点イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、アミンをエポキシ樹脂等に付加したアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性促進剤;イミダゾール系、リン系、ホスフィン系促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性促進剤;アミン塩型潜在性硬化促進剤;ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型の潜在性硬化促進剤;紫外線や放射線等の活性エネルギー線によりプロトンを発生する光解離型の光カチオン重合型の潜在性硬化促進剤等に代表される潜在性硬化促進剤も使用することができる。
【0045】
これらの中でも、より本発明の目的とする効果が得られやすいことから、4級ホスホニウム塩類及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩が好ましく、テトラブチルホスホニウムジエチルホスホロジチオエート(日本化学社製 PX−4ET)やメチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート(日本化学社製 PX−4MP)が特に好ましい。
【0046】
以上の硬化促進剤はそれぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。硬化促進剤の使用割合は、硬化促進効果が得られる量であれば特に制限はないが、高純度脂環式ジエポキシ化合物 100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0047】
〔反応調整剤〕
さらに、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には、所望により水酸基を有する化合物を反応調整剤として添加することが可能である。水酸基を有する化合物を添加することで硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化反応を緩やかに進行させることができる。水酸基を有する化合物の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
反応調整剤の添加割合は、高純度脂環式ジエポキシ化合物 100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0048】
〔他のエポキシ化合物〕
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、透明封止材料としての特性を損なわない範囲で、ジエポキシ化合物Aの他に、他のエポキシ基含有化合物(以下、「他のエポキシ化合物」と略記する。)を含有していてもよい。
【0049】
他のエポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等の、ビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、リモネンジエポキシド、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス3−シクロヘキセニルメチルエステル及びそのε−カプロラクトン付加物、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−3−シクロヘキセニルメチルエステル及びそのε−カプロラクトン付加物等の脂環式エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂;水添フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水添クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の水添ノボラック型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂等の含複素環エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
これらの他のエポキシ化合物はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、より本発明の目的とする効果が得られ易いことから、脂環式エポキシ樹脂や水添ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
また、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における他のエポキシ化合物の配合量は、用いるエポキシ化合物の全量中、通常50重量%以下である。他のエポキシ化合物の配合量が、用いるエポキシ化合物の全量中50重量%を超えると本発明の目的とする効果が得られにくくなる。
【0051】
〔他の添加剤〕
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には、得られる硬化物の光透過性や耐黄変性に悪影響を与えない範囲で慣用の各種添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、充填剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、蛍光体、イオン吸着体、染料、顔料、低応力化剤、可撓性付与剤、離型剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤、レベリング剤、濡れ改良剤等が挙げられる。
【0052】
〔硬化性エポキシ樹脂組成物の調製〕
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、本発明の高純度脂環式ジエポキシ化合物と上記各成分を、公知の方法に従って撹拌、混合することにより調製することができる。
撹拌、混合の際の温度は、配合する硬化剤や硬化促進剤の種類等によっても異なるが、通常、10〜60℃程度に設定されるのが好ましい。調製時の設定温度が10℃未満では、粘度が高すぎて均一な撹拌、混合作業が困難になる場合があり、逆に、調製時の温度が高すぎると、硬化反応が起き、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなってしまう場合があるので、好ましくない。
【0053】
撹拌、混合するには、例えば、三本ロール、ニーダー、万能攪拌機、ボールミル、プラネタリミキサー、ホモジナイザー、ホモディスパーザー等を用いればよく、撹拌、混合は、前記高純度脂環式ジエポキシ化合物と前記各成分とが均一になるまで行えばよい。
【0054】
3)硬化物
本発明の硬化物は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなるものである。
硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化方法としては、特に限定されず、用いる硬化剤や硬化促進剤に応じて適宜選択すればよいが、加熱による硬化方法(熱硬化)や光等の活性エネルギー線照射による硬化方法(光硬化)等、従来公知の方法を用いることができる。なかでも本発明の目的とする効果が得られ易いことから、熱硬化法を用いることが好ましい。
例えば、熱硬化の場合には、硬化温度は、好ましくは100〜200℃、より好ましくは100〜180℃、さらに好ましくは100〜150℃である。また、急激な硬化反応の進行は内部応力によるクラックの発生を誘引するため、ステップキュアで硬化を行うことが好ましい。具体的には、1次硬化を100〜130℃で1〜3時間程度、2次硬化を130〜180℃の範囲で2〜6時間程度行うことで、クラックの発生が無い硬化物を得ることが可能である。
【0055】
本発明の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、高温下での酸化劣化による黄変を防ぐ観点から、150℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましい。
【0056】
本発明の硬化物は、後述の実施例に示すように、特に、硬化後初期の光透過性に優れ、耐熱・耐光試験後の黄変が少なく耐黄変性にも優れており、高Tgで線膨張係数が小さいため、発光素子の発光体を封止する透明封止材料として好適である。
本発明の硬化物が光透過性に優れることは、例えば、硬化物の光線透過率を紫外可視分光光度計により測定することによってわかる。
【0057】
4)透明封止材料
本発明の透明封止材料は、上述した本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物からなる。当該材料は液状であり、封止材としての取扱い性に優れる。
本発明の透明封止材料は、硬化することにより、特に、硬化後初期の光透過性や耐黄変性に優れた硬化物を形成することができる。硬化方法は、本発明の硬化物について記載したのと同様である。本発明の透明封止材料は、例えば、LED、フォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトカプラー、CCD、EPROM、フォトセンサー等の様々な光半導体素子の透明封止材料として好適に用いることができ、特に発光時の発熱が著しい高輝度LED素子用透明封止材料として有用である。
【0058】
5)発光素子
本発明の発光素子は、光半導体及びこれに接合された電極部材を本発明の透明封止材料を用いて封止してなるものである。かかる発光素子の製造方法としては特に限定されないが、例えば、充分に脱泡した本発明の透明封止材料により、リード線などの電極部材を取り付けた光半導体を、トランスファー成形や注型などのモールド方法によって封止し、硬化する方法や、予め光半導体を回路基板に実装し、それを本発明の透明封止材料で封止し、硬化する方法等が挙げられる。硬化方法は、本発明の硬化物について記載したのと同様である。
本発明の透明封止材料の硬化物(透明封止物)は、硬化後初期の光透過性、ガラス転移温度、線膨張率、及び耐黄変性等の各物性をバランスよく備えているため、特に発光時の発熱が著しい高輝度LED素子用透明封止物として有用であり、LED素子の長寿命化に貢献することができる。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0060】
<ジエポキシ化合物Aの合成例>
温度計を備えた3つ口反応器において、窒素気流中、3a,4,7,7a−テトラヒドロインデン40.0g(0.333mol)をアセトン400mlに溶解させ、炭酸水素ナトリウム201.3g(2.396mol)と蒸留水400mlを加えた。その混合液を水浴で10℃に冷却した後、オキソン(登録商標)−過硫酸塩化合物327.4g(0.532mol)を加え、反応液の内温が20〜30℃の間になるように水浴温度を調整しながら2時間攪拌した。その後、反応液を0℃に冷却し、10%水酸化ナトリウム水溶液300ml、蒸留水300ml、および飽和食塩水300mlを加え、n−ヘキサン500mlで2回抽出した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、濃縮物を真空乾燥させることで、ジエポキシ化合物A(粗生成物)を41.5g得た(収率82%)。
【0061】
得られたジエポキシ化合物Aをガスクロマトグラフィーにより分析した結果、ジエポキシ化合物Aが有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体(すなわち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体、エキソ−エンドの立体配置を有する立体異性体、エンド−エキソの立体配置を有する立体異性体、エンド−エンドの立体配置を有する立体異性体の4種の立体異性体)の重量比は、エキソ−エキソ体:エキソ−エンド体:エンド−エキソ体:エンド−エンド体=53.5:22.9:21.6:2.0であった(エキソ−エキソ立体異性体の含有量:53.5%)。
【0062】
尚、本合成例及び後述の精製例におけるガスクロマトグラフィーの測定条件等は、以下に記載の通りである。
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−1(ヒューレットパッカード社製)、長さ30m、内径0.25mm、膜厚1.0μm
液相:100%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:1.0ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
昇温パターン(カラム):40℃で3分間保持、10℃/分で300℃まで昇温
スプリット比:200
サンプル:0.4μL
【0063】
<ジエポキシ化合物Aの精製例1>
上記合成例で得られたジエポキシ化合物Aの粗生成物41.5gを薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1(容積比))により分析した結果、Rf値=0.54とRf値=0.44に2つのスポットを確認した。そこで、粗生成物41.5gをシリカゲル1200g(球状、中性、粒径:63−210μm、関東化学社製)と溶離液(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:4(容積比))とを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。そして、前記薄層クロマトグラフィーによる分析でRf値=0.44であった化合物を単離することで、ジエポキシ化合物Aの精製物を17.0g、収率41%で得た。
得られたジエポキシ化合物Aの精製物をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量は99.2%であった。
以上より、ジエポキシ化合物Aの4つの立体異性体のうちエキソ−エキソ立体異性体の含有量が99.2%である高純度脂環式ジエポキシ化合物が得られた。
なお、立体異性体の構造はNMRで同定した。同定結果を下記表1に示す。
【0064】
<ジエポキシ化合物Aの精製例2>
上記合成例で得られたジエポキシ化合物Aの粗生成物40.1gを、小型高速回転バンド式精密蒸留装置(東科精機社製、型式;HSB−605FF)を用いて減圧蒸留(真空度;0.3kPa)により精製した。
ジエポキシ化合物Aが有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体(すなわち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体、エキソ−エンドの立体配置を有する立体異性体、エンド−エキソの立体配置を有する立体異性体、エンド−エンドの立体配置を有する立体異性体の4種の立体異性体)の沸点は、(エキソ−エンド体の沸点)<(エンド−エキソ体の沸点)<(エキソ−エキソ体の沸点)<(エンド−エンド体の沸点)である。つまり、蒸留した留分の後半(高沸点側)部分に、エキソ−エキソ体が多く含まれると考えられる。
減圧蒸留により、エキソーエキソ体を80%以上含有する留分を分取することで、ジエポキシ化合物Aの精製物を26.1g、収率52%で得た。得られたジエポキシ化合物Aの精製物をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量は83.5%であった。
以上より、ジエポキシ化合物Aの4つの立体異性体のうちエキソ−エキソ立体異性体の含有量が83.5%である高純度脂環式ジエポキシ化合物が得られた。
【0065】
【表1】

【0066】
[実施例1]
前記精製例1で得た高純度脂環式ジエポキシ化合物(エキソ−エキソ立体異性体の含有量が99.2%)100部、硬化剤として、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸およびヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物〔リカシッド(登録商標)MH−700G、新日本理化社製〕170部、硬化促進剤として、テトラブチルホスホニウムジエチルホスホロジチオエート〔ヒシコーリン(登録商標)PX−4ET、日本化学社製〕1部、並びに、反応調整剤として、エチレングリコール1部を加え、得られた混合物をプラネタリーミキサーにて10分間攪拌し、硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。硬化剤の酸無水物とエポキシ樹脂の当量比は酸無水物当量/エポキシ当量として0.9であった。
得られた硬化性エポキシ樹脂組成物(透明封止材料)を、あらかじめ離型フィルムで被覆した1対のガラス基板の間(1mmのスペーサーで間隔が調整されている)に注入し、1次硬化を120℃のオーブン中で2時間、さらに2次硬化を150℃のオーブン中で4時間実施して、厚さ3mmの硬化物を得た。
得られた硬化物につき、下記に示す方法により、ガラス転移温度(Tg)、平均線膨張率を算出し、初期光線透過率・黄色度、耐熱試験後の光線透過率・黄色度、及び紫外光照射後の光線透過率・黄色度を測定した。
評価結果を下記表2に示す。
【0067】
<ガラス転移温度(Tg)・平均線膨張率>
実施例1で得た硬化物を、切断装置(マルトー社製、ラボカッターMC−120)にて5mm角に切断し、熱機械分析(TMA)測定装置(エスアイアイナノテクノロジー社製、EXSTER TMA/SS7100)を用いて、膨張・圧縮法によりTMA測定を行った。得られたデータから、ガラス転移温度(Tg)と30℃〜150℃の範囲の平均線膨張率を算出した。
【0068】
<初期光線透過率・黄色度>
実施例1で得た硬化物の透過スペクトルを、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、V−570)にて測定し、波長400nmにおける光線透過率を求めた。また、同様に硬化物の黄色度を、分光色差計(日本電色工業社製、SE−2000)にて測定した。
【0069】
<耐熱試験後の光線透過率・黄色度>
実施例1で得た硬化物を、150℃に温度設定した恒温槽中に100時間静置した後、前記<初期光線透過率・黄色度>と同様の方法により光線透過率・黄色度を測定した。
【0070】
<紫外光照射後の光線透過率・黄色度>
実施例1で得られた硬化物に、常温下、高圧水銀灯にて、波長カットフィルターを用いて得られる365nm光を8時間照射した。365nmにおける光量は40mW/cmであった。照射後の硬化物の光線透過率と黄色度を、前記<初期光線透過率・黄色度>と同様にして測定した。
【0071】
[実施例2]
前記精製例1で得られた高純度脂環式ジエポキシ化合物(エキソ−エキソ立体異性体の含有量が99.2%)50部、他のエポキシ化合物として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔セロキサイド(登録商標)2021P、ダイセル化学工業社製〕50部、並びに、硬化剤として、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸およびヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物〔リカシッド(登録商標)MH−700G、新日本理化社製〕142部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性エポキシ樹脂組成物及び硬化物を得た。
得られた硬化物につき、前記と同様にして、Tg、平均線膨張率を算出し、初期、耐熱試験後、及び紫外光照射後の光線透過率・黄色度を測定した。
評価結果を下記表2に示す。
【0072】
[実施例3]
実施例1において、高純度脂環式ジエポキシ化合物として、前記精製例1で得られた高純度脂環式ジエポキシ化合物(エキソ−エキソ立体異性体の含有量が99.2%)100部の代わりに、前記精製例2で得られた高純度脂環式ジエポキシ化合物(エキソ−エキソ立体異性体の含有量が83.5%)100部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性エポキシ樹脂組成物及び硬化物を得た。
得られた硬化物につき、前記と同様にして、Tg、平均線膨張率を算出し、初期、耐熱試験後、及び紫外光照射後の光線透過率・黄色度を測定した。
評価結果を下記表2に示す。
【0073】
[実施例4]
実施例2において、高純度脂環式ジエポキシ化合物として、前記精製例1で得られた高純度脂環式ジエポキシ化合物(エキソ−エキソ立体異性体の含有量が99.2%)50部の代わりに、前記精製例2で得られた高純度脂環式ジエポキシ化合物(エキソ−エキソ立体異性体の含有量が83.5%)50部を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、硬化性エポキシ樹脂組成物及び硬化物を得た。
得られた硬化物につき、前記と同様にして、Tg、平均線膨張率を算出し、初期、耐熱試験
後、及び紫外光照射後の光線透過率・黄色度を測定した。
評価結果を下記表2に示す。
【0074】
[比較例1]
実施例1において、エポキシ樹脂として、前記ジエポキシ化合物A(粗生成物)100部、硬化剤として、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸およびヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物〔リカシッド(登録商標)MH−700G 新日本理化社製〕170部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性エポキシ樹脂組成物及び硬化物を得た。
得られた硬化物につき、前記と同様に、Tg、平均線膨張率を算出し、初期、耐熱試験後、及び紫外光照射後の光線透過率・黄色度を測定した。
評価結果を下記表2に示す。
【0075】
[比較例2]
実施例1において、エポキシ樹脂として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔セロキサイド(登録商標)2021P ダイセル化学工業社製)100部、硬化剤として、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸およびヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物〔リカシッド(登録商標)MH−700G 新日本理化社製〕113部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性エポキシ樹脂組成物及び硬化物を得た。
得られた硬化物につき、前記と同様にして、Tg、平均線膨張率を算出し、初期、耐熱試験後、及び紫外光照射後の光線透過率・黄色度を測定した。
評価結果を下記表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
表2から、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させて得た硬化物(透明封止物)は、初期光透過性と耐黄変性に優れていることがわかる。本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を封止材料として用いることで、LED素子をはじめとする発光素子の効率化や長寿命化に貢献することができる。
また、本発明の硬化物はTgが高く、線膨張率が小さいことから、ヒートサイクル試験における樹脂クラックや接続部の断線防止効果があり、発光素子の信頼性の向上が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスクロマトグラフィーにより検出される、下記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物が有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中80%以上であることを特徴とする高純度脂環式ジエポキシ化合物。
【化1】

(式中、R〜R12は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物が有する2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体のうち、エキソ−エキソの立体配置を有する立体異性体の含有量が、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合で、前記4つの立体異性体の合計量中95%以上であることを特徴とする請求項1に記載の高純度脂環式ジエポキシ化合物。
【請求項3】
前記脂環式ジエポキシ化合物がテトラヒドロインデンジエポキシドであることを特徴とする請求項1または2に記載の高純度脂環式ジエポキシ化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の高純度脂環式ジエポキシ化合物、ならびに、硬化剤および硬化促進剤を含有することを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、前記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物以外のエポキシ基含有化合物を含有することを特徴とする、請求項4に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4または5に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項7】
請求項4または5に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物からなる透明封止材料。
【請求項8】
請求項7に記載の透明封止材料を用いて封止してなる発光素子。

【公開番号】特開2013−28790(P2013−28790A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−112757(P2012−112757)
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】