説明

高耐熱性を有する軟質ポリオレフィン

本発明は、高い耐熱性と柔軟性の良好な組合せを示すクローズドセル軟質ポリオレフィンフォーム、さらには積層品とその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンおよび第2の軟質ポリオレフィン材料の配合物を含むクローズドセル軟質架橋フォームに関する。前記フォームの特性は、とりわけ低い圧縮強さおよび耐熱性である。この特性の組合せはポリオレフィンベースのフォームに特有である。
【背景技術】
【0002】
近年高い柔軟性および/または柔らかな感触および高い熱安定性の組合せを示す材料に対する需要がある。このような材料は、たとえば具体的には自動車産業において自動車の内装品、具体的には同乗者が接触するような部品のために必要とされる。このような材料の柔軟性は安全性に寄与することができるが、接触したときにより快適な感触も提供する。耐熱性も火災の場合の安全性および/または発火しやすさに寄与する。
【0003】
米国特許出願公開第2003207953号明細書は、比重が0.05から0.2でありかつ発泡倍率が8から15である架橋オレフィンエラストマーフォームを記載する。架橋フォームは特定のエチレン/αオレフィンコポリマー、有機過酸化物、架橋補助剤および発泡剤を含むエラストマー組成物を加熱することにより得られる。架橋フォームは、高い発泡倍率を有すると明記され、消泡による肌荒れがなく、柔らかな感触を実現し、低い圧縮永久ひずみを示しかつ機械的強度(具体的には引き裂き強度)および耐熱性に優れている。オレフィンエラストマー組成物は、エチレン/[α]−オレフィンコポリマーとポリプロピレンの和を重量で100とすると、重量で70から98のエチレン/[α]−オレフィンコポリマーおよび重量で2から30のポリプロピレンからなることもある。しかし、これらのフォームの柔らかさおよび熱安定性は多くの用途において未だに不満足である。
【0004】
特開昭56−112942号公報は、ポリエチレンとポリオレフィン熱可塑性エラストマーの樹脂混合物に結晶低分子ポリプロピレンを添加することにより得られる、断熱性が優れかつ高温における寸法安定性が改善された高発泡倍率軟質架橋フォームを記載する。
【0005】
特開昭56−112940号公報は、エチレン−プロピレン(非共役ジエン)コポリマーとPPの混合物である、具体的には互いに架橋しているポリオレフィン熱可塑性エラストマーとPEの樹脂混合物に低分子PEを添加することにより調製される、断熱性が優れかつ高温における寸法安定性が改善された高発泡倍率軟質フォームを記載する。
【0006】
特開昭56−104947号公報は、PPと混合されたエチレン−プロピレン(非共役化ジエン)コポリマーゴムであり、かつ生成した混合物が部分的に架橋した、熱可塑性ポリオレフィンエラストマーおよびPEを含む、冷却機用の低温遮熱材料、セントラルヒーティングの高温熱伝導管の遮熱材料にとって有用な、高温耐熱性および優れた遮熱性を有する軟質フォームを記載する。90〜40重量%のPE(i)を10〜60重量%の前記熱可塑性エラストマー(ii)と混合し、生成した混合物を熱分解性発泡剤(例:アゾジカルボンアミド)(iii)および架橋剤(例:ジクミルペルオキシド)とさらに混合する。成型品を高温環境に移して架橋剤と発泡剤を分解することによりフォームが得られる。
【0007】
特開2004−204154号公報は、高耐熱性および優れた耐屈曲性を有する架橋ポリオレフィン樹脂フォームを記載しかつその製造法を提供する。この発明は、LLDPEおよび≧30重量%のPP樹脂を含むポリオレフィン樹脂の架橋と発泡によって得られ、≧1mmの厚さを有し、同時に全体的な架橋度が≦65%である架橋ポリオレフィン樹脂フォームである。
【0008】
特開平8−157623号公報は、特定の積層フォームのフォーム露出面にコロナ放電処理を施し、処理面を下塗剤で被覆して乾燥することにより、一次層に粘着することなく心材に対して優れた接着性を有する、自動車のドアおよび天井の室内装飾に有用な内装材料を記載する。PPベース樹脂[例:(線形低密度)PEまたはエチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのエチレン系樹脂60〜0重量%とランダムPP40〜100重量%の混合物]を含むフォーム(例:15〜30倍の発泡倍率を有しかつ1〜4mmの厚さを有するもの)の片側に塩化ビニル樹脂シート(例:厚さが0.4〜0.7mmのもの)を積層することにより得られる積層フォームのフォーム露出面。
【0009】
特開2003−334880号公報は高い耐熱性および耐屈曲性を有する架橋ポリオレフィン樹脂フォームを記載する。架橋ポリオレフィン樹脂フォームは、30重量%またはそれ以上のランダムPP型樹脂を含有するポリオレフィン樹脂を架橋および発泡することで得られ、また厚さが1mm以下でありかつ総架橋度が65%以上であるという点で特徴付けられる。
【0010】
特開2000−351865号公報は熱および圧力に対する耐性に優れたフォームをもたらし、かつポリオレフィン樹脂と規定量のジプロペニル化合物および熱分解性化学発泡剤を配合することにより製造プロセスにおける安全性および取り扱いやすさの向上を示すポリオレフィン樹脂組成物を記載する。100重量%の量のポリオレフィン樹脂には式のジプロペニル化合物1〜10重量%および熱分解性化学発泡剤1〜15重量%が配合される。好ましくは、ポリオレフィン樹脂はMFR0.5〜5g/10分を有しかつ好ましくは融点125〜155℃を有するPP樹脂30〜90重量%およびMFR1〜20g/10分を有しかつ好ましくは密度0.890〜0.940g/cmを有するPE樹脂10〜70重量%を含む。
【0011】
特開平5−009325号公報は、架橋フォーム用の特定の組成を成形した後、成型品を架橋し、さらに続いて架橋成型品を発泡させることによる、引張強さおよび伸びに優れかつオートクレーブ内部装備品材料などとして有用な、内部ピンホールのほとんどない均一に分散した発泡剤を含有するフォームを記載する。PP10〜50重量%およびエチレン−プロピレン−ジエンコポリマーゴム50〜90重量%より構成される100重量%の樹脂と、アゾジカルボンアミドなどの発泡剤10〜20重量%を、前述の発泡剤の分解温度を下回る温度で混練する。これにより、発泡剤を含むマスターバッチが製造される。PP10〜80重量%と、エチレン−プロピレン−ジエンコポリマーゴム20〜90重量%および前述のマスターバッチ5〜70重量%を、前述の発泡剤の分解温度を下回る温度で混練する。その結果、架橋フォームを目的とした組成物が生成されかつ成形される。続いて得られた成型品を架橋し、次に発泡して目標のフォームを得る。
【0012】
特開平3−192133号公報は、発泡剤を含む熱可塑性オレフィンエラストマーを成形し、成型物を架橋し、加圧下で加熱し、圧力を取り除くことにより、均一かつ微細なセルおよび改善された耐屈曲性および機械的特性を有するエラストマーフォームを記載する。発泡剤を含む熱可塑性オレフィンエラストマーは、エチレン/プロピレン/(ジエン)コポリマーと、酢酸ビニル含有量が3重量%またはそれ以上でありかつPP10〜70重量%、ブチルゴム3〜30重量%、および鉱油柔軟剤3〜40重量%を含んでもよいエチレン/酢酸ビニルコポリマーから選択される熱可塑性オレフィンエラストマー混合物100重量%を、さらに発泡剤3〜30重量%(混合物100重量%毎)と混合することにより得られる。このエラストマーは発泡剤の分解温度よりも低い温度で成形され、さらに電離放射線を線量0.1〜0.5Mradで照射することにより架橋される。生成品を圧力50〜100kg/cmの下で発泡剤の分解温度よりも高い温度で2〜20分加熱し、圧力を開放することにより発泡する。
【0013】
特開平2−194037号公報は、架橋PE樹脂およびPP樹脂を含み、かつ指定のオープンセル率をもたらすようPE樹脂を架橋することにより調製される、高いオープンセル率および優れた圧縮特性を有する樹脂フォームを記載する。架橋ポリエチレン樹脂(a)および架橋ポリエチレン樹脂より少なくとも20℃高くかつ190℃よりも低い融点を有するポリプロピレン樹脂(b)を(a)/[(a)+(b)]=40〜90重量%および(b)/[(a)+(b)]=10〜60%の範囲で含み、かつこれにオープンセル率60〜90%をもたらすよう架橋ポリエチレン樹脂を架橋することにより調製する樹脂フォーム。使用する架橋ポリエチレン樹脂として、低密度ポリエチレンまたはエチレン/酢酸ビニルコポリマーが具体的に望ましい。ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの結晶ホモポリマーが具体的に望ましい。
【0014】
国際公開番号第01/70860号パンフレットは、PPおよびEVA、および高耐熱性を有する発泡剤としてたとえばイソブテンなどの揮発性有機化合物を含む1段階直接押出非架橋フォームを記載する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
多くの明細書について、現行の既存のクローズドセルポリオレフィンフォームは十分に低い圧縮強さおよび/または柔軟性および高い熱安定性の満足できる組合せを有していない。したがって、本発明の目的はこのようなフォームを提供することである。
【0016】
本発明者は、現時点で、高い柔軟性と高い熱安定性が1つのフォームに組み合わされた、特定のパラメータを有するポリプロピレン(PP)と特定の性質を有するエチレン−ポリマーの混合物より得ることのできる架橋ポリオレフィンフォームを発見している。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は高い熱安定性(温度安定性)を有するクローズドセル軟質架橋ポリオレフィンフォームに関する。
【0018】
具体的には、本発明は以下のプロセスによって得ることのできる高耐熱性を有するクローズドセル軟質ポリオレフィンフォームに関する:
a.(i)230℃かつ2.16kgで0.1から15g/10分のMFIおよび少なくとも155℃の融点を有する重量で10〜50のポリオレフィンおよび(ii)エチレン−ポリマーが190℃および2.16kgで0.1から15g/10分のMFIを有し、EVA、EMA、EEA、EAA、EBA、VLDPE、VLLDPEおよび/またはメタロセンポリエチレンから選択される重量で90〜50の割合のエチレン−ポリマーを含む組成物を化学発泡剤と混合し;
b.形成の前および/または同時に組成物と化学発泡剤との混合が実施される、シート状材料を形成し;
c.手順b.において得られたシート状材料を架橋度20から60%まで架橋し、さらに
d.架橋されたシート状材料を連続プロセスにおいて高温で発泡させて密度20から400kg/mの密度を有するフォームを得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明によるフォームの性質および利点は、以下により詳細に説明される。
【0020】
本発明によるフォームはクローズドセルポリオレフィンフォームである。「オープンセル」と対比される用語「クローズドセル」は、当業者に既知であり、フォームのセルの壁がほとんど全て無傷であることを意味する。好ましくは、セルのうち少なくとも90%が、より好ましくは少なくとも95%が、より好ましくは98%超が無傷のセル壁を有する。本請求項1のプロセスおよび原料品パラメータを適用する場合、一般に無傷のセルを約98%またはそれ以上有するクローズドセルフォームが得られる。
【0021】
本発明のフォームを得る第1の手順は、(i)ポリプロピレンおよび(ii)エチレン−ポリマーを含む組成物を化学発泡剤と混合することである。組成物はさらにLDPE、HPDE、および/またはLLDPEから選択される成分(iii)をさらに含んでもよい。
【0022】
上述の組成物は、組成物の重量に基づき、重量で10〜50、より好ましくは重量で約20〜50、より好ましくは重量で約25〜40、最も好ましくは重量で約30の割合のポリプロピレン(i)を含有する。重量で約10の割合よりも少ないポリプロピレンが用いられる場合、フォームの温度安定性が不十分となることがある。重量で約50の割合よりも多く用いられる場合、フォームの柔軟性が不十分となることがある。
【0023】
ポリプロピレンの溶融温度は少なくとも約155℃、または好ましくは155℃超である。155℃未満の溶融温度を有するPPを用いる場合、高耐熱性が得られないことがある。好ましくは、溶融温度は約160〜170℃である。
【0024】
ポリプロピレンは、好ましくは結晶性ポリプロピレンであり、より好ましくはホモポリプロピレン(hPP)である。
【0025】
発泡剤と混合する組成物に用いるエチレン−ポリマー(ii)は、組成物の重量に基づき、重量で約90〜50、好ましくは約80〜50、より好ましくは重量で約75〜60の割合の量で含有される。
【0026】
エチレン−ポリマーはエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレンアクリル酸メチル(EMA)、エチレンアクリル酸エチル(EEA)、エチレンアクリル酸、(EAA)、エチレンアクリル酸ブチル(EBA)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、超線形低密度ポリエチレン(VLLDPE)、メタロセンポリエチレンおよびその組合せより選択される。
【0027】
本発明のEVAは一般に3から70重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10から20重量%の酢酸ビニル含有量を有する。
【0028】
本発明の1つの好ましい実施態様においては、化学発泡剤(または発泡剤)と混合するための組成物はポリプロピレン(i)およびエチレン−ポリマー(ii)以外のポリマーを含有しない。
【0029】
本発明の他の好ましい実施態様においては、化学発泡剤と混合するための組成物は、フォームの性質を調製するために、LDPE、LLDPEおよび/またはHDPE、好ましくはLLDPEなどのもう1つのポリマー(iii)を含有する。この他のポリマーは、ポリプロピレン(i)、エチレン−ポリマー(ii)および他のポリマー(iii)の組成に基づき、好ましくは重量で約0.5から10の割合の量で存在する。
【0030】
エチレン−ポリマーは、好ましくはEVAのみであるか、またはほぼこれのみである。他の好ましい実施形態では、エチレン−ポリマーは、好ましくはVLDPEまたはVLLDPEのみであるか、またはほぼこれらのみである。
【0031】
化学発泡剤と混合する前の組成物は、好ましくはPP/EVA/LLDPEまたはPP/VLDPE/LLDPEの組合せである。化学発泡剤と混合される組成のために特に好ましいポリマーの組合せは、hPP/EVA、hPP/EVA/LLDPE、hPP/VLDPEおよびhPP/VLDPE/LLDPEの組合せである。好ましくは、ポリマー組成物はこれらのポリマーの組合せのいずれかよりなる。これらの組合せにおいては、VLDPEは好ましくはVLLDPEである。
【0032】
ポリプロピレン(i)、エチレンコポリマー(ii)および任意に他のポリマー(iii)を含む組成物は、本発明の効果が損なわれない限りさらに他のポリマーを含んでも良いが、好ましくは他のポリマーまたはゴム成分を含まない。しかし、架橋促進剤、酸化防止剤、核剤および/または化学的架橋の場合は架橋剤などの一般的添加剤が存在しても良い。
【0033】
ポリプロピレンおよびエチレン−ポリマーが、BS EN ISO1133:2000により測定するとき230℃かつ2.16kgで0.1から15g/分という特定のメルトフローインデックス(MFI)を有することが重要である。好ましくは、ポリプロピレンのMFIは2〜11または2〜10g/10分である。エチレン−ポリマーのMFIは、好ましくはBS EN ISO1133:2000で測定するとき190℃かつ2.16kgで0.1から15.0g/分である。エチレン−ポリマー、好ましくはエチレン酢酸ビニルのMFIは、好ましくは0.5〜8.0g/分である。
【0034】
任意の他のポリマー(iii)のMFI値は190℃かつ2.16kgで一般に0.1〜15.0g/分であり、好ましくは2.0〜8.0g/分である。
【0035】
当業者にとって、MFIはポリマーの流動特性の測定値、およびポリマー材料の分子量および加工性の大まかな指標をもたらす。MFI値が高すぎる場合、これは低い粘度に相当し、本発明による押出成形は成功裏に実施されない。この場合の問題は溶融プロセス中の低い圧力、カレンダ加工およびシート厚プロフィール設定の問題、溶融粘度が低いことによる不均一な冷却プロフィール、低い溶融強度および/または機械の問題であることがある。MFI値が低すぎると溶融プロセス時の圧力が高くなり、カレンダ加工が困難となり、シートの品質とプロフィールに問題が生じることがあり、また加工のために高温が必要となるためにここでも発泡剤の分解と活性化のリスクが生じる。
【0036】
上記のMFI範囲は材料の粘度を反映し、また粘度は発泡に影響するので、これらは本発明の発泡プロセスにとっても重要である。本発明のために特定の範囲のMFI値を選択しなければならない理由は以下の説明中で確認されるかもしれないが、本発明はそれに限定されない。MFI値の低い材料は分子鎖長が長く、ストレスを適用するとき分子鎖が流動するのに必要とされるより多くのエネルギーを作り出すので、物理的特性の一部が改善される可能性がある。また、分子鎖長(Mw)が長ければ長いほど分子鎖はより多くの結晶体を結晶化することができ、分子内結合を通じてより大きな強度をもたらす。しかし、低すぎるMFIでは粘度が高くなりすぎる。その一方で、MFI値がより高い材料は分子鎖長が短い。したがって、所与の体積においては多くの分子鎖末端があり、顕微鏡レベルでそれらが回転し、また回転するためにより多くの空間を必要とすることによって自由体積を作りだす(上述のポリマーのTg)。これにより自由体積が増加して流動を促進しかつストレス下で容易な流動を可能とし、かつ物理学的特性の一部を低下させる。本発明の目的のためには、MFIはこれらの特性の間で妥協した上述の範囲内になければならない。
【0037】
化学発泡剤と混合される組成物は、架橋度を通じてフォームの特性を適合化および改善するために好ましくは架橋促進剤と混合することができる。本発明における架橋度は、非架橋成分を溶解する溶媒としてキシレンを用いたASTM−2765によって測定される。原則として、非架橋材料はキシレンに溶解し、架橋度は架橋材料の重量百分率として表示される。このような架橋促進剤は当業者にとって既知である。広範囲な機能的単量体添加剤が本発明に用いられてポリマーの架橋を促進する。本発明においては、好ましくはトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)を用いる。架橋促進剤は一般に重量で約0.1〜6.5,好ましくは1.0〜4.5といった割合の通常量で発泡剤と混合する組成物に添加する。
【0038】
本発明によると組成物は化学発泡剤(または発泡剤)と混合される。本発明においては、全般的に化学発泡剤の種類に関する制限はない。化学発泡剤はたとえばアゾジカルボンアミドなどのアゾ化合物、ヒドラジン化合物、カルバジド類、テトラゾール類、ニトロソ化合物または炭酸塩などである。本発明においては、好ましくはアゾジカルボンアミドを用いる。
【0039】
化学発泡剤の量により生成されるフォームの密度を調整することができる。当業者は意図するフォーム密度に対する正しい発泡剤の量を決定することができる。一般に化学発泡剤は、これと混合する組成物に対し、必要とされる発泡に応じて重量で2.0〜25.0、または重量で2.0から20.0、また好ましくはフォーム密度67kg/mとするために重量で5〜9の割合の量で使用される。
【0040】
上述の組成物と化学発泡剤を混合した後または混合と同時に、たとえばシート、フィルムまたはウェブなどのシート状材料を、好ましくは押出成形により形成する。好ましくは、押出成形はツインスクリュー式押出成型機で実施する。他の可能なシート状材料の形成はカレンダ加工および/または混練である。
【0041】
好ましい1つの実施形態においては、シートが事前に発泡するのを防ぎ、かつ規則的なセル構造および平坦なフォーム面を得るために、ポリマーを形成または押出成形、混練および/またはカレンダ加工してシートとする温度は190℃またはそれ以下である。下限はプロセスにおいて用いられるポリプロピレンの融点である。
【0042】
好ましくは押出成形による形成の後、形成によって得られたシート状材料はあらゆる一般的な技術、すなわち化学的または物理的架橋によって架橋する。たとえば電子ビーム、またはたとえばコバルト60線源を用いたγ線照射などによる物理的架橋が好ましい。電子線は特に好ましい。キシレンを溶媒として用いるASTM−2765による測定で20から60%、好ましくは30〜40%の架橋度が得られるように架橋を実施する。上述のように、好ましくは架橋促進剤を用いる。
【0043】
発泡は高温、好ましくは200〜260℃、より好ましくは220〜260℃で、連続的プロセスで実施する。発泡はバッチプロセスとして実施しない。
【0044】
発泡は、好ましくは垂直および/または水平オーブン系で実施する。発泡は、オートクレーブ内でたとえば窒素などを用いた含浸プロセスによって実施した後、オーブン系内でフリー発泡することにより実施することもできる。
【0045】
本発明のプロセスは、ISO 845により測定して20から400kg/m、好ましくは20kg/m〜300kg/mの密度が得られるよう実施される。密度は発泡剤の量によって調節することができる。
【0046】
セルのサイズは、好ましくは約0.05から約2.0mm、好ましくは約0.1mmから約0.6mmである。セルのサイズは走査電子顕微鏡によって測定する。
【0047】
本発明の1つの具体的な実施形態においては、架橋軟質フォームの製造は:
1)ポリマーマトリクスシートを混合/押出成形または混合/混練または混合/カレンダ加工;
2)電子ビームまたはγ線(コバルト60)のような線源による架橋;および
3)発泡プロセスであって
a)フリー発泡オーブン系における
b)オートクレーブにおける窒素を用いた含浸プロセスの後、オーブン系内でフリー発泡するプロセス
を含む多段階プロセスによって行うことができる。
【0048】
ロールフォームを製造するプロセスは、好ましくは以下の段階を含む:
1)押出成形/混練:
シートの切断を伴うこともあるフィルムまたはシートとしての混合/押出成形および/または混合/混練/カレンダ加工;
2)架橋:
物理的架橋:電子ビームまたはγ線照射による;
3)発泡:
混合相において添加された、アゾジカルボンアミドである有機発泡剤の分解による;
4)膨張プロセス:フリー発泡オートクレーブプロセスによる。
【0049】
本発明のフォームは高い熱安定性および柔軟性の有益な組合せを有する。
【0050】
本発明のフォームは軟質フォームである。柔軟性はたとえば圧縮強さおよびショア硬度によって表すことができる。本発明においては、圧縮強さ値はISO 844による方法によって測定される。本発明によると、フォームは低い圧縮強さを有する。圧縮強さ値は、好ましくはたわみ率25%時に70kg/mの密度のフォームで測定するとき(ISO 844)30から100kPa、より好ましくは30から60kPaの範囲内にある。ショア硬度は、3本バネ圧子による圧入に対する材料の抵抗性の測定値である。数値が高いほど抵抗が大きい。ショア硬度(O)および(OO)はASTM D 2240によって測定される。
【0051】
温度安定性は、ISO 7214−1998(E)に従い、あらかじめ慎重に切断したサンプルを、特定の温度で温度調節オーブン内に24時間入れることにより試験する。サンプル上に10cm×10cmの指示マーカーを押印することにより、試験前のサイズがわかる。24時間後にサンプルをオーブンより取り出し、機械方向および横方向の収縮を測定する。本発明のフォームは、ISO 7214−1998(E)にしたがって測定するとき130℃よりも高い、好ましくは135℃よりも高い、より好ましくは140℃よりも高い温度の温度安定性を有することができる。
【0052】
本発明は、本発明によるフォームを少なくとも1つの層として含む積層品にも関する。フォームは、技術上既知である標準的な技術を用いてたとえばフィルム、ホイル(例:ポリ塩化ビニル(PVC)または熱可塑性ポリオレフィン)、織物(ポリエステル、ポリプロピレンなど)、皮革および/または不織布と組み合わせることも可能である。本発明によるフォームはこれらの材料の片側または両側に積層することができる。
【0053】
フォームまたは積層品は、好ましくはドア、ドアインサート、ドアロール、パネル、ドアパネル、アームレスト、センターコンソール、シートバックパネルまたはヘッドライナーなどの自動車内装部品においてまたはこれらのために用いることができる。
【0054】
積層品を調製するために、真空発泡技術をたとえばホイル、フィルムまたは織物を有する積層品を調製するために適用してもよい。その他の技術は、たとえば基質による発泡(例:NF/PP、GE/PP、Woodstockなど)、低圧成形または溶融ストランド成形(例:PPを用いる(LPN、LPEなど))などである。
【実施例】
【0055】
温度安定性(ISO 7214−1998(E))、圧縮強さ(ISO 844)およびショア硬度(O)および(OO)、いずれもacc.ASTM D 2240は、上述のように標準化法を用いて測定する。
【0056】
(実施例1)
市販のMFI4g/10分(190℃、2.16kg)のEVAをMFI3.0または10.5g/10分(230℃、2.16kg)かつ溶融温度165℃のホモポリプロピレン20、30、40および50%およびMFI4.6g/10分(190℃、2.16kg)のLLDPE5%と混合する。さらに、少量(重量で2の割合)のTMPTMAを添加して処理を改善し、架橋度を高めた。ポリマーはツインスクリュー式押出成型機を用いた成型により処理温度185℃で混合および配合する。押出成形後、シートを照射によって架橋し240℃付近で連続発泡する。アゾジカルボンアミドの含有量は68kg/mのフォームが得られるようにした。
【0057】
30%hPP(MFI3.0g/10分)を含むEVAのフォームは、68kg/mのフォームで測定するときショア硬度O値26およびショア硬度OO値67を有した。圧縮強さは50kPaと測定された(たわみ率25%の68kg/mフォームで測定)。
【0058】
温度安定性は最高140℃であった。
【0059】
(実施例2)
市販のMFI2.6g/10分(190℃、2.16kg)のvLLDPEをMFI3.0または10.5g/10分(230℃、2.16kg)かつ溶融温度164℃のホモポリプロピレン20、30、40および50%およびMFI4.6g/10分のLLDPE5%(190℃、2.16kg)と混合する。ポリマーはツインスクリュー式押出成型機を用いた成型により処理温度185℃で混合および配合する。押出成形後にシートを照射によって架橋し240℃付近で連続発泡する。アゾジカルボンアミドの含有量は67kg/mのフォームが得られるようにした。
【0060】
30%hPP(MFI3.0g/10分)を含むvLLDEPのフォームは、60kg/mのフォームで測定するときショア硬度O値26およびショア硬度OO値65を有した。圧縮強さは45kPaと測定された(たわみ率25%の60kg/mフォームで測定)。
【0061】
温度安定性は最高140℃であった。
【0062】
(実施例3)
市販のMFI4g/10分(190℃、2.16kg)のvLLDPEをMFI3.0または10.5g/10分(230℃、2.16kg)かつ溶融温度165℃のホモポリプロピレン20、30、40および50%と混合する。さらに、少量(重量で2の割合)のTMPTMAを添加して処理を改善し、ゲルレベルを高めた。ポリマーはツインスクリュー式押出成型機を用いた成型により処理温度185℃で混合および配合する。押出成形後にシートを照射によって架橋し240℃付近で連続発泡する。アゾジカルボンアミドの含有量は68kg/mのフォームが得られるようにした。
【0063】
30%hPP(MFI3.0g/10分)を含むEVAのフォームは、64kg/mのフォームで測定するときショア硬度O値28およびショア硬度OO値66を有した。圧縮強さは48kPaと測定された(たわみ率25%の60kg/mフォーム)acc.ISO 844。
【0064】
温度安定性は最高140℃であった。
【0065】
(実施例4)
市販のMFI4g/10分(190℃、2.16kg)のEVAをMFI3.0または10.5g/10分(230℃、2.16kg)かつ溶融温度165℃のホモポリプロピレン20、30、40および50%と混合する。ポリマーはツインスクリュー式押出成型機を用いた成型により処理温度185℃で混合および配合する。押出成形後にシートを照射によって架橋し240℃付近で連続発泡する。アゾジカルボンアミドの含有量を用いてフォームの密度を測定することができる。
【0066】
30%hPP(MFI3.0g/10分)を含むEVAのフォームは、63kg/mのフォームで測定するときショア硬度O値24およびショア硬度OO値63を有した。圧縮強さは44kPaと測定された(たわみ率25%の60kg/mフォームで測定)acc.ISO 844。
【0067】
温度安定性は最高140℃であった。
【0068】
(比較例1)
ツインスクリュー式押出成形機で、市販のMFI4g/10分(190℃、2.16kg)のEVAをMFI8g/10分(190℃、2.16kg)かつ融点140℃の市販のポリプロピレンコポリマー10、20、および30%と160℃の温度で混合する。押出成形後にシートを照射によって架橋し240℃で連続発泡する。アゾジカルボンアミドの含有量は65kg/mのフォームが得られるようにした。
【0069】
30%co−PPを含有するEVAフォームは圧縮強さ56kPaを有していた(たわみ率25%、65kg/mのフォームで測定、ISO−844に準拠した測定法)。
【0070】
温度安定性は100℃であった。
【表1】

【0071】
これらの実施例は、155℃を下回る融点を有するポリプロピレンを含有する以外は本発明に準拠したフォームは、本発明に準拠した実施例と比較して、優れた耐熱性と柔軟性の組み合わせを示さないことを明示する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明による組成物(EVA/hPP)および既知のフォームの圧縮強さが図示される。本発明では圧縮強度が相当低いことが明らかである。
【図2】本発明による組成物(実施例3−EVA/hPP)および既知のフォームのショア硬度(O)および(OO)が熱温度安定性に対して図示される。本発明ではショア硬度が相当低下することが明らかである(従来技術の場合ショア硬度値が高いサンプルは柔軟性が低いことを意味する)。同時に、熱安定性は改善するかまたは少なくとも従来技術に匹敵する。
【図3】本発明による組成物(実施例3−EVA/hPP)および既知のフォームのショア硬度(O)および(OO)が熱安定性に対して図示される。本発明ではショア硬度が相当低下することが明らかである(従来技術の場合ショア硬度値が高いサンプルは柔軟性が低いことを意味する)。同時に、熱安定性は改善するかまたは少なくとも従来技術に匹敵する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高耐熱性を有するクローズドセル軟質ポリオレフィンフォームであって、以下の:
a.(i)230℃かつ2.16kgで0.1から15g/10分のMFIおよび少なくとも155℃の溶融温度を有する重量で10〜50の割合のポリオレフィンおよび(ii)エチレン−ポリマーが190℃かつ2.16kgで0.1から15g/10分のMFIを有し、EVA、EMA、EEA、EAA、EBA、VLDPE、VLLDPEおよび/またはメタロセンポリエチレンから選択される重量で90〜50の割合のエチレン−ポリマーを含む組成物を化学発泡剤と混合し;
b.形成の前および/または同時に組成物と化学発泡剤との混合が実施される、シート状材料を形成し;
c.手順b.において得られたシート状材料を架橋度20から60%まで架橋し、さらに
d.架橋されたシート状材料を連続プロセスにおいて高温で発泡させて20から400kg/mの密度を有するフォームを得るプロセスによって得ることのできるクローズドセル軟質ポリオレフィンフォーム。
【請求項2】
前記ポリプロピレンがホモポリプロピレンである、請求項1に記載のフォーム。
【請求項3】
230℃かつ2.16kgで測定するとき、前記ポリプロピレンが2〜11または2〜10g/10分のMIFを有する、請求項1または2に記載のフォーム。
【請求項4】
前記エチレン−ポリマー(i)がEVAを含有する、前述の請求項のいずれか1つに記載のフォーム。
【請求項5】
前記エチレン−ポリマー(i)がVLDPEまたはVLLDPEを含有する、前述の請求項のいずれか1つに記載のフォーム。
【請求項6】
EVAが3〜70重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%の酢酸ビニル含有量を有する、前述の請求項のいずれか1つに記載のフォーム。
【請求項7】
前記架橋度が30〜40%である、前述の請求項のいずれか1つに記載のフォーム。
【請求項8】
好ましくはツインスクリュー式押出成型機を用いて、段階b.における前記形成が押出成型によって実施される、前述の請求項のいずれか1つに記載のフォーム。
【請求項9】
好ましくは電子線による、物理的架橋により前記架橋が実施される、前述の請求項のいずれか1つに記載のフォーム。
【請求項10】
前記架橋が架橋促進剤を用いて実施される、前述の請求項のいずれか1つに記載のフォーム。
【請求項11】
ポリプロピレンおよびエチレン−ポリマーを含む前記組成物がさらに重量で約0.5から10の割合のLLDPE、LDPEおよび/またはHDPEを含む、前記の請求項のいずれか1つに記載のフォーム。
【請求項12】
前記フォームの前記密度が20〜300kg/mである、前述の請求項のいずれか1つに記載のフォーム。
【請求項13】
前記セルのサイズが0.05から2.0mm、好ましくは0.1から6.0mmである、前述の請求項のいずれか1つに記載のフォーム。
【請求項14】
前記発泡が200〜260℃、好ましくは220〜260℃で実施される、前述の請求項のいずれか1つに記載のフォーム。
【請求項15】
前述の請求項のいずれか1つに記載のフォームを少なくとも1つの層として含む積層品。
【請求項16】
自動車内装部品の製造を目的とした前述の請求項のいずれか1つに記載のフォームまたは積層品の使用。
【請求項17】
前記自動車内装品がドアパネル、ドアロール、ドアインサート、アームレスト、センターコンソール、シートバックパネルまたはヘッドライナーである、請求項16に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−523848(P2009−523848A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525469(P2008−525469)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007843
【国際公開番号】WO2007/017250
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(508040359)セキスイ アルヴェオ アーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】Sekisui Alveo AG
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】