説明

高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法、高耐熱性ポリイミド微細繊維及び該ポリイミド微細繊維からなる不織布

【課題】ナノサイズの微細繊維が得られる電界紡糸法において、ポリイミドを有機溶媒に溶解したポリイミド溶液を用い、溶液安定性及び曳糸性よくポリイミド微細繊維を製造することが可能であり、且つ従来公知のものに較べてより高い耐熱性を有する高耐熱性ポリイミド微細繊維及び該ポリイミド微細繊維からなる不織布を製造できる方法を提供すること。
【解決手段】2,3,3’,4’,−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’,−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、または3,3’,4,4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物などの酸成分と、トルエンジイソシアネートまたはジアミノトルエンを含有するジアミン成分とからなる特定の化学構造を有するポリイミドを有機溶媒に溶解してなるポリイミド溶液を用い、電界紡糸法によって、高耐熱性ポリイミド微細繊維を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維径が微細で且つ耐熱性に優れるポリイミド微細繊維、その製造方法及び該ポリイミド微細繊維からなる不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られているポリイミド繊維の製造方法は大別して二つに分けることができる。即ち、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液のドープ液を紡糸して繊維状とした後、これをポリイミド化してポリイミド繊維とする方法と、ポリイミド溶液のドープ液を紡糸してポリイミド繊維とする方法である。
【0003】
ポリアミック酸溶液のドープ液を用いる製造方法は、例えば特許文献1などに記載されている。この方法は、前述のようにポリアミック酸溶液を繊維状に紡糸したものをイミド化する追加の工程が必要となるが、このイミド化工程において水が発生するために繊維に気孔ができやすく、安定した品質を持つポリイミド繊維を再現性よく製造することが難しいという問題があった。
【0004】
これに対して、ポリイミド溶液のドープ液を用いる製造方法が、例えば特許文献2に開示されている。ここでは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、s−BPDAと略記することがある。)または2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、a−BPDAと略記することがある。)を、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのような2つのベンゼン環を有するジアミン類やジアミノピリジン類などの芳香族ジアミンと反応させることによりフェノール系溶媒に溶解可能なポリイミドとし、このポリイミドをフェノール系溶媒に溶解したポリイミド溶液からなるドープ液を用いて湿式紡糸法によって繊維化している。しかし、この方法は、ポリイミドを溶解する溶媒に特殊なフェノール系溶媒を用いており、臭気や環境負荷を考慮すると実用上の製造方法として改良の余地があった。さらに、この方法で得られるポリイミド繊維は、高弾性率を達成しているが、耐熱性においては改良の余地があった。
【0005】
さらに、ポリイミド溶液のドープ液を用いる製造方法が、特許文献3に開示されている。ここでは、ポリイミドが、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物と、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)及び2,4−及び/または2,6−トルエンジイソシアネートとを反応させることで得られている。このポリイミドは非プロトン性有機溶媒に溶解するので、繊維は、ポリイミドを非プロトン性有機溶媒に溶解したポリイミド溶液のドープ液を用いて湿式紡糸によって製造されている。また、前記と同じ化学組成のポリイミド溶液のドープ液を用いた乾式紡糸法によるポリイミド繊維の製造方法が、特許文献4や特許文献5に開示されている。
【0006】
また、静電気力により高分子樹脂溶液を紡糸する電界紡糸法が知られている。この電界紡糸法によれば、ナノサイズの微細繊維が得られる。不織布を構成する繊維径が小さいと、分離性能、液体保持性能、払拭性能、隠蔽性能、絶縁性能、柔軟性などの性能が優れることから、ナノサイズの微細繊維を安定して製造できる電界紡糸法が注目されている。例えば、特許文献6には、溶媒可溶型ポリイミドを有機溶媒に溶解したポリイミド溶液を用い、電界紡糸法によって、繊維径1μm以下のポリイミド微細繊維からなるリチウム二次電池用セパレータを製造したことが記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1〜5のポリイミド繊維は、いずれもガラス転移温度(Tg)がせいぜい315℃程度であり、特許文献6の電界紡糸法によるポリイミド微細繊維は、ガラス転移温度(Tg)がせいぜい300℃程度であり、いずれも耐熱性が十分に高いものではなく、更に耐熱性が改良されたポリイミド繊維特にポリイミド微細繊維が求められていた。
【0008】
一般に、ポリイミドの耐熱性を向上させるためには、複数の芳香環が直接結合した化学構造をポリイミド分子により多く導入することが有効と考えられる。しかし、多くの場合、複数の芳香環が直接結合した化学構造の、ポリイミドへの導入は、得られるポリイミド分子に剛直性を与えて溶媒への溶解性を低下させた。このために、複数の芳香環が直接結合した化学構造が導入されたポリイミドは、通常非プロトン性極性有機溶媒に溶解し難くなり、ポリイミド溶液のドープ液を用いた製造方法によってポリイミド繊維を製造することは困難であった。一方、ポリイミドの溶解性を改善するためには、ポリイミド分子の主鎖へカルボニル基、エーテル基など柔軟な構造を導入することが有効である。しかし、その結果得られるポリイミドの耐熱性(例えばガラス転移温度(Tg))は低下した。
【0009】
さらに、ポリイミド溶液のドープ液を用いてポリイミド繊維を製造する場合には、ポリイミド溶液のドープ液に対して良好な溶液安定性及び曳糸性が求められる。溶液安定性及び曳糸性が十分でない場合には、ゲル化や糸切れなどが生じるために、連続して紡糸することはできない。このため工業的にポリイミド繊維を製造することはできなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭42−2936号公報
【特許文献2】特開昭56−159314号公報
【特許文献3】米国特許第3985934号公報
【特許文献4】米国特許第4801502号公報
【特許文献5】特開平4−257315号公報
【特許文献6】特開2005−19026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ナノサイズの微細繊維が得られる電界紡糸法において、ポリイミドを有機溶媒に溶解したポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)を用い、溶液安定性及び曳糸性よくポリイミド微細繊維を製造することが可能であり、且つ従来公知のものに較べてより高い耐熱性(例えばガラス転移温度(Tg))を有する高耐熱性ポリイミド微細繊維及び該ポリイミド微細繊維からなる不織布を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の化学組成を有するポリイミドの有機溶媒溶液を用いることにより、電界紡糸法によって、繊維径が微細で且つ耐熱性に優れるポリイミド微細繊維が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の各項に関する。
1. 下記化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを有機溶媒に溶解してなるポリイミド溶液を用い、電界紡糸法によって、繊維径が0.01〜2μmの高耐熱性ポリイミド繊維を得ることを特徴とする高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法。
【0014】
【化1】

ただし、化学式(1)において、Aは、下記化学式(2)のいずれかからなり、Bは、下記化学式(3)のいずれかを含む2価の芳香族基からなり、A及びBの合計200モル%中、
(i)Aが下記化学式(4)のいずれかを80モル%以上含む場合には、Bが下記化学式(3)のいずれかを20モル%以上含み、
(ii)Aが下記化学式(4)のいずれかを40モル%以上80モル%未満含む場合には、Bが下記化学式(3)のいずれかを50モル%以上含む。
【0015】
【化2】

〔化学式(2)において、X はCH 、CO、O、S、またはSO のいずれかで表される2価の基である。〕
【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

〔化学式(4)において、X はCH 、CO、O、S、またはSO のいずれかで表される2価の基である。〕
【0018】
2. 前記化学式(1)において、Aが、下記化学式(5)を10〜60モル%含むことを特徴とする前記項1に記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法。
【0019】
【化5】

【0020】
3. 前記化学式(1)において、Bが、下記化学式(6)のいずれかを10〜80モル%含むことを特徴とする前記項1または2に記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法。
【0021】
【化6】

〔化学式(6)において、X はCH 、CO、O、S、SO 、C(CH またはC(CF のいずれかで表される2価の基である。〕
【0022】
4. ガラス転移温度(Tg)が300℃以上の高耐熱性ポリイミド微細繊維を得ることを特徴とする前記項1〜3のいずれかに記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法。
【0023】
5. さらに、得られたポリイミド微細繊維を350℃以上の温度で加熱処理して有機溶媒に不溶化することを特徴とする前記項1〜4のいずれかに記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法。
【0024】
6. 前記項1〜5のいずれかに記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法を含んで構成される、高耐熱性ポリイミド微細繊維からなる不織布の製造方法。
【0025】
7. 下記化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドからなり、繊維径が0.01〜2μmであることを特徴とする高耐熱性ポリイミド微細繊維。
【0026】
【化7】

ただし、化学式(1)において、Aは、下記化学式(2)のいずれかからなり、Bは、下記化学式(3)のいずれかを含む2価の芳香族基からなり、A及びBの合計200モル%中、
(i)Aが下記化学式(4)のいずれかを80モル%以上含む場合には、Bが下記化学式(3)のいずれかを20モル%以上含み、
(ii)Aが下記化学式(4)のいずれかを40モル%以上80モル%未満含む場合には、Bが下記化学式(3)のいずれかを50モル%以上含む。
【0027】
【化8】

〔化学式(2)において、X はCH 、CO、O、S、またはSO のいずれかで表される2価の基である。〕
【0028】
【化9】

【0029】
【化10】

〔化学式(4)において、X はCH 、CO、O、S、またはSO のいずれかで表される2価の基である。〕
【0030】
8. ガラス転移温度(Tg)が300℃以上であることを特徴とする前記項7に記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維。
【0031】
9. 有機溶媒に不溶であることを特徴とする前記項7または8に記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維。
【0032】
10. 前記項7〜9のいずれかに記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維からなることを特徴とする不織布。
【発明の効果】
【0033】
本発明によって、繊維径0.01〜2μmのポリイミド微細繊維を、有機溶媒に溶解したポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)を用いた電界紡糸法によって、溶液安定性及び曳糸性よく製造することが可能であり、且つ従来公知のものに較べてより高い耐熱性(例えばガラス転移温度(Tg))を有する高耐熱性ポリイミド微細繊維及び該ポリイミド微細繊維からなる不織布を製造することができる。
本発明の高耐熱性ポリイミド微細繊維は、より高い温度域でより長時間連続使用が可能(長寿命)である。このため、本発明の高耐熱性ポリイミド微細繊維は、耐熱性、難燃性が要求される分野において、織布、不織布、及びその加工製品、例えば消防用防護服、パッキン材、バグフィルター、航空機用シートカバー、カーテン、寝具、その他のフェルトなどとして好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法に用いられる電界紡糸装置の一例を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明で用いられる前記化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドは、前記化学式(1)中のAが、前記化学式(2)のいずれかからなり、さらに前記化学式(5)を10〜60モル%、特に30〜50モル%含むことが、機械的強度や耐熱性特にガラス転移温度を向上させる点から好ましい。
また、前記化学式(1)中のBは、前記化学式(3)のいずれかを含む2価の芳香族基からなり、A及びBの合計200モル%中、Aが前記化学式(4)のいずれかを80モル%以上含む場合には、溶液安定性および曳糸性の点から、前記化学式(3)のいずれかを20モル%以上含む必要があり、前記化学式(3)のいずれかを50〜100モル%含むことが好ましい。
また、前記化学式(1)中のBは、A及びBの合計200モル%中、Aが前記化学式(4)のいずれかを40モル%以上80モル%未満含む場合には、溶液安定性および曳糸性の点から、前記化学式(3)のいずれかを50モル%以上含む必要があり、前記化学式(3)のいずれかを60〜100モル%含むことが好ましい。
また、前記化学式(1)中のBは、前記化学式(6)のいずれかを10〜80モル%含むことが、溶液安定性および曳糸性の点、及びドープの溶液粘度や繊維の機械的特性(強度や伸度)を好適に制御できる点から好ましい。
【0036】
本発明で用いられる前記化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドは、所定のテトラカルボン酸成分(例えば、テトラカルボン酸二無水物)と所定のジアミン成分(例えば、ジイソシアネートまたはジアミン)とから公知の方法を用いて好適に製造することができる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジイソシアネートまたはジアミンとを略等モルで有機溶媒中で反応させることにより好適に得ることができる。
【0037】
前記テトラカルボン酸成分は、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸もしくはその二無水物(a−BPDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸もしくはその二無水物(s−BPDA)、ピロメリット酸もしくはその二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸もしくはその二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸もしくはその二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸もしくはその二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸もしくはその二無水物、または3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸もしくはその二無水物のいずれか1種以上であり、ピロメリット酸もしくはその二無水物(PMDA)を10〜60モル%、特に30〜50モル%含むことが好ましい。
【0038】
前記ジアミン成分は、2,4−トルエンジイソシアネート(以下、2,4−TDIと略記することがある。)、2,5−トルエンジイソシアネート(以下、2,5−TDIと略記することがある。)、2,6−トルエンジイソシアネート(以下、2,6−TDIと略記することがある。)、2,4−トルエンジアミン(以下、2,4−TDAと略記することがある。)、2,5−トルエンジアミン(以下、2,5−TDAと略記することがある。)または2,6−トルエンジアミン(以下、2,6−TDAと略記することがある。)のいずれか1種以上を含む。
【0039】
前記ジアミン成分は、前記テトラカルボン酸成分が2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸もしくはその二無水物(a−BPDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸もしくはその二無水物(s−BPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸もしくはその二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸もしくはその二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸もしくはその二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸もしくはその二無水物、または3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸もしくはその二無水物のいずれかを80モル%以上含む場合には、2,4−TDI、2,5−TDI、2,6−TDI、2,4−TDA、2,5−TDAまたは2,6−TDAのいずれかを20モル%以上、好ましくは50〜100モル%含む。
【0040】
また、前記ジアミン成分は、前記テトラカルボン酸成分が2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸もしくはその二無水物(a−BPDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸もしくはその二無水物(s−BPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸もしくはその二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸もしくはその二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸もしくはその二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸もしくはその二無水物、または3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸もしくはその二無水物のいずれかを40モル%以上80モル%未満含む場合には、2,4−TDI、2,5−TDI、2,6−TDI、2,4−TDA、2,5−TDAまたは2,6−TDAのいずれかを50モル%以上、好ましくは60〜100モル%含む。
【0041】
前記ジアミン成分は、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、3,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−ジイソシアナトベンゾフェノン、3,4’−ジイソシアナトベンゾフェノン、4,4’−ジイソシアナトジフェニルエーテル、3,4’−ジイソシアナトジフェニルエーテル、3,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナトジフェニルスルフィド、3,4’−ジイソシアナトジフェニルスルフィド、4,4’−ジイソシアナトジフェニルスルホン、3,4’−ジイソシアナトジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−イソシアナトフェニル)プロパン、2−(3−イソシアナトフェニル)−2−(4’−イソシアナトフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−イソシアナトフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(3−イソシアナトフェニル)−2−(4’−イソシアナトフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4’−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、または1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(3−アミノフェニル)−2−(4’−アミノフェニル)トリフルオロプロパンのいずれか1種以上を10〜80モル%含むことが好ましい。
【0042】
これらのジアミンを前記の2,4−TDI、2,5−TDI、2,6−TDI、2,4−TDA、2,5−TDAまたは2,6−TDAと併用することによって、得られるポリイミドの溶液安定性及び曳糸性、耐熱性、分子量、繊維強度、伸度などをより向上させることができる。特に4,4’−ジアミノジフェニルエーテルや3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどを併用すると、溶媒への溶解性や曳糸性を良好に保ちながら、得られるポリイミドの耐熱性、分子量、繊維強度、伸度などをより向上させることができるので好適である。
【0043】
前記ポリイミドの製造に用いられる有機溶媒としては、特に限定するものではないが、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することがある。)、N,N’−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記することがある。)、N,N’−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略記することがある。)、N,N’−ジエチルアセトアミド、N,N’−ジメチルメトキシアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下、DMIと略記することがある。)、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略記することがある。)などの非プロトン性有機溶媒が好適であり、必要に応じてこれらの非プロトン性有機溶媒の混合物を用いることができる。特にNMP、DMIはポリイミドの溶解性が高く有用である。有機溶媒の使用量は、好ましくは、得られるポリイミド溶液のポリイミド含量が5〜50質量%、より好ましくは15〜30質量%となる量である。
【0044】
テトラカルボン酸二無水物とジイソシアネートとの重合反応によって前記ポリイミドを製造する場合には、重合を促進するための触媒として種々の3級アミン、ホスホレン、ホスホランもしくはホスフェタン誘導体などを、ジイソシアネート1モル当たり0.0001〜0.1モルの割合で反応混合液に添加するのが好適である。また、この重合反応の重合度を上げるために、テトラカルボン酸二無水物に対して0.1〜2当量、好ましくは0.5〜1.5当量の水を反応混合液に添加するのが好適である。水の機能の詳細は定かではないが、酸無水物基の一部を加水分解することで反応の活性化エネルギーを低下させているものと考えられる。
【0045】
重合反応に際して、ジイソシアネートは、テトラカルボン酸二無水物(及び場合により触媒や水)の有機溶媒溶液に、20〜150℃、好ましくは60〜130℃の反応温度で逐次添加するのが好適である。また、この温度で1〜3時間程度反応後、反応温度を150〜220℃まで上げてさらに反応させることにより、好適に反応を完結させることができる。水を反応系中に加えた場合、最終的に水を共沸により反応系外に除くために、トルエンなどの共沸溶媒を用いるのがよい。反応の進行の程度は、例えばIR分光分析により、遊離NCO基に相当する吸収が消失することを確認することによって追跡することができる。テトラカルボン酸二無水物に対して略等モル量のジイソシアネートの添加後、CO2 発生の終了によって、この反応が完了したことを確認することができる。また、反応終了後のポリイミド溶液中では、IR分光分析による遊離NCOまたは無水物基が検出できなくなる。
【0046】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを用いて前記ポリイミドを製造する場合には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて直接ポリイミドを製造してもよく、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとからポリアミック酸を製造し、次いで該ポリアミック酸をイミド化してポリイミドを製造してもよい。ジアミンは、テトラカルボン酸二無水物の有機溶媒溶液に、室温から175℃の温度で添加するのが好適である。アミンの酸化を防ぐためには低温、好ましくは室温で添加するのがより好ましい。このテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの混合物を反応して得られたポリアミック酸を含有する反応混合物を150〜220℃に加熱し、生じた水を系外に除去することによりイミド化することができる。ポリアミック酸をイミド化する場合、例えば3級アミンの存在下に無水酢酸を添加することにより化学的にイミド化を行うこともできる。
【0047】
また、これらの方法を組み合わせて前記ポリイミドを重合することも可能である。ジイソシアネートとジアミンの両方を用いる場合、ジイソシアネートとジアミンとが反応することを避けるために、先にジイソシアネートに対して過剰量のテトラカルボン酸二無水物を反応させ、次いで反応液を一度室温に戻してジアミンを加えた後、加熱して反応を完結させることが好ましい。
【0048】
本発明で用いられるポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)は、前記ポリイミドを有機溶媒に溶解したものである。この電界紡糸用ドープとしては、前記の如く有機溶媒中でポリイミドを製造して得られたポリイミド溶液をそのまま用いてもよく、また該ポリイミド溶液から分離・精製したポリイミドを有機溶媒に再溶解して得られるポリイミド溶液を用いてもよい。分離・精製したポリイミドの再溶解に使用する有機溶媒としては、前記ポリイミドの製造に用いられる有機溶媒として例示した前記の非プロトン性有機溶媒を用いるのが好ましい。
なお、電界紡糸用ドープを調製する際には、該ドープの均一性、溶液安定性及び曳糸性などを改良する目的や、得られるポリイミド繊維の耐熱性や熱安定性などの特性を改善したり導電性などの機能を付与する目的のために、種々の有機又は無機化合物を添加してもよい。また、電界紡糸用ドープは、調製後少なくとも数時間は所定温度(通常、20〜80℃程度)に保持し、溶解を均一にするのが好ましい。更に、減圧下で脱泡を行い、気泡を完全除去するのがより好ましい。
【0049】
電界紡糸用ドープの溶液粘度は、30℃で、好ましくは0.1〜50Pa・s、より好ましくは0.5〜30Pa・sである。該粘度が0.1Pa・s未満であると、紡糸の際にドープを繊維形状に保持し難くなって良好な繊維を得にくくなり、また50Pa・s超であると、高い粘度のために捕集電極に対してドープを良好な繊維形状で吐出するのが難しくなり、いずれも曳糸性に問題を生じやすくなる。
また、電界紡糸用ドープのポリイミド濃度は、曳糸性に影響を与えることがあり、さらに紡糸速度などと共にポリイミド微細繊維の径を直接的に決める要因になるので、所望する繊維径などを考慮して選定される。好ましくは5〜25質量%、より好ましくは6〜15質量%である。ポリイミド濃度が前記範囲外になると、ドープの溶液粘度の調整が難しくなったり、曳糸性が低下したりすることがある。
【0050】
電界紡糸法としては、制限されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、一例として、図1に示す電界紡糸装置を用いて電界紡糸を行う場合について以下に説明する。
図1に示す電界紡糸装置において、1は、筒状の溶液保持槽2に保持された電界紡糸用ドープ(ポリイミド溶液)3を吐出する吐出手段(注射器)、4は、注射器のオリフィス、5は、オリフィス4に設置されたノズル、6は繊維状物質捕集電極、7は高電圧発生器である。
【0051】
ノズル5の先端と繊維状物質捕集電極6との間が適切な距離となるように、吐出手段1と繊維状物質捕集電極6とを配置する。高電圧発生器7によりノズル5に電圧をかける。吐出手段1により電界紡糸用ドープ3をノズル5の先端まで導き、電界紡糸用ドープ3を静電場中の適切な位置に置き、電界によって、ノズル5から繊維状物質捕集電極6に向けて曳糸する。電界紡糸用ドープ3は、ノズル5の先端と繊維状物質捕集電極6との間にて有機溶媒が蒸発して繊維化され、ポリイミド繊維・不織布が、繊維状物質捕集電極6上に設置された捕集基板上に捕集される。なお、本装置において、ノズルの個数は1個に限定されるものではなく、複数個のノズルを設けるなどしてポリイミド繊維・不織布の生産速度を上げることも可能である。
【0052】
曳糸する温度が室温程度であれば、通常、ポリイミド繊維・不織布が捕集基板上に捕集されるまでの間に、有機溶媒は蒸発する。有機溶媒の蒸発の程度は、繊維形状が保たれて容易に取り扱うことができる程度であれば特に問題はない。また有機溶媒の蒸発の程度は、後加工での必要に応じて調整される。有機溶媒の蒸発が不十分な場合は、曳糸後に乾燥処理してもよい。
曳糸する温度は、有機溶媒の蒸発挙動や電界紡糸用ドープの粘度に依存するが、通常は0〜50℃、好ましくは20〜50℃である。また、湿度は、有機溶媒を安定かつ効率よく蒸発させるために低いほど好ましく、湿度30%以下が好ましい。
このようにして得られたポリイミド繊維・不織布は、好ましくは350℃以上、より好ましくは350〜400℃で、好ましくは0.1〜60分間、より好ましくは0.1〜 20分間、更に好ましくは0.5〜5分間加熱処理するとよい。このように加熱処理することにより、ポリイミド繊維・不織布を有機溶媒に不溶化することができる。
【0053】
本発明の製造方法により得られるポリイミド繊維は、繊維径が0.01〜2μm、好ましくは0.01〜1μmの微細繊維である。
また、本発明の製造方法により得られるポリイミド繊維は、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは300℃以上、より好ましくは320℃以上、さらに好ましくは335℃以上、特に好ましくは370℃以上であり、耐熱性、高温耐久性などの特性が極めて優れたものである。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の例で記載したポリイミドの物性(ガラス転移温度(Tg)、熱重量分析(Td5及びTd10)、初期弾性率、破断強度、破断伸度)、ポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)の曳糸性及び溶液安定性、ポリイミド繊維の繊維径及び耐NMP溶解性の測定方法及び評価方法は以下のとおりである。
【0055】
ポリイミドの物性(ガラス転移温度(Tg)、熱重量分析(Td5及びTd10)、初期弾性率、破断強度、破断伸度)については、以下のとおり、物性測定用ポリイミドフィルムを作製して物性を測定し評価した。
【0056】
(1)物性測定用ポリイミドフィルムの作製
ポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)を、得られるフィルムの膜厚が30μmになるようにガラス上に流延し、140℃で5分間加熱した。得られたフィルムをガラスから剥離後、ピンテンターに固定し、350℃で30分間加熱して、物性測定用ポリイミドフィルムを作製した。
【0057】
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
フィルムを2cm×2cmの短冊状に切り取って試験片とし、ティー・エイ・インスツルメント社製RSAIIIを用いて、引張モードで固体粘弾性測定を行った。窒素気流下、室温から限界温度まで3℃/stepで昇温しながら、10Hzで測定し、E”曲線の極大をガラス転移温度(Tg)と定義した。
【0058】
(3)熱重量分析
島津製作所製TGA−50を用いて、フィルムを窒素雰囲気中、10℃/minで昇温した。得られた熱重量減少曲線から、5%重量減少温度(Td5)及び10%重量減少温度(Td10)を求めた。
【0059】
(4)初期弾性率、破断強度及び破断伸度
フィルムをIEC450規格のダンベル形状に打ち抜いて試験片とし、ORIENTEC社製TENSILONを用いて、チャック間30mm、引張速度2mm/minで、初期弾性率、破断強度及び破断伸度を測定した。
【0060】
〔ポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)の溶液安定性及び曳糸性の評価〕
紡糸中の目視観察により溶液安定性を評価し、また作製した不織布の曳糸性をキーエンス製VK-8550レーザ顕微鏡又は日立ハイテクノロジーズ製S4800電界放出形走査電子顕微鏡
写真から曳糸性を評価した。
溶液安定性については、連続紡糸中にノズルから押し出したドープの性状の変化例えば吸水によるドープ表面の白濁化や固化による連続紡糸の中断がないものを○、中断したものを×とした。なお、ドープとして室温で10日間放置時にゲル化や析出が生じているものについても×と評価した。
曳糸性については、レーザ顕微鏡写真又は走査型電子顕微鏡写真の観察視野において糸切れなどが観察されなかったものを○、糸切れなどが確認されたものを×と評価した。
【0061】
〔ポリイミド繊維の繊維径〕
ポリイミド繊維の繊維径は、レーザ顕微鏡写真又は走査型電子顕微鏡写真から任意の10箇所の繊維径を測定し、平均繊維径を求めた。
【0062】
〔耐NMP溶解性〕
ポリイミド繊維・不織布を室温のNMP溶媒に5分間浸漬し、溶解の有無を目視検査した。形状に変化がないものを○、形状に変化があったものを×と評価した。
【0063】
〔参考例1〕
攪拌機を備えた反応容器中に8.00g(20モル%)の2,3,3’,4’,−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)及び32.00g(80モル%)の3,3’,4,4’,−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、200gのNMP、2.4gの水、0.25gの1,2−ジメチルイミダゾールを加え、120℃で1時間攪拌した。次いで18.96g(80モル%)のトルエンジイソシアネート(TDI)(2,4−トルエンジイソシアネート:2,6−トルエンジイソシアネート=8:2の混合物)を滴下し、120℃で2時間攪拌した。溶液を室温に戻してから4,4−オキシジアニリン5.45g(20モル%)、トルエン20gを加え、水をトルエンとの共沸により系外に除去しながら180℃で6時間攪拌して、粘調なポリイミド溶液を調製した。
得られたポリイミド溶液を表1に示した濃度及び粘度(測定温度30℃)になるようにNMPで希釈し、脱泡し、気泡を除去して、参考例1−1、1−2、1−3及び1−4のポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)をそれぞれ得た。
【0064】
〔参考例2〕
表1に示したポリイミド組成の酸成分及びジアミン又はジイソシアネート成分を用いた以外は、参考例1と同様の方法でポリイミド溶液を調製し、これを表1に示した濃度及び粘度になるようにNMPで希釈し、脱泡し、気泡を除去して、参考例2−1、2−2及び2−3のポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)をそれぞれ得た。
【0065】
〔参考例3〕
表1に示したポリイミド組成の酸成分及びジアミン又はジイソシアネート成分を用いた以外は、参考例1と同様の方法でポリイミド溶液を調製し、これを表1に示した濃度及び粘度になるようにNMPで希釈し、脱泡し、気泡を除去して、参考例3のポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)を得た。
【0066】
〔参考例4〕
表1に示したポリイミド組成の酸成分及びジアミン又はジイソシアネート成分を用いた以外は、参考例1と同様の方法でポリイミド溶液を調製し、これを脱泡し、気泡を除去して、参考例4のポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)を得た。
【0067】
〔参考例5〕
表1に示したポリイミド組成の酸成分及びジアミン又はジイソシアネート成分を用いた以外は、参考例1と同様の方法でポリイミド溶液を調製し、これを表1に示した濃度及び粘度になるようにNMPで希釈し、脱泡し、気泡を除去して、参考例5−1及び5−2のポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)をそれぞれ得た。
【0068】
参考例1〜5で得られたポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)について、前記(1)〜(4)により、ポリイミドの物性(ガラス転移温度(Tg)、熱重量分析(Td5及びTd10)、初期弾性率、破断強度、破断伸度)を測定した。結果を表1に示した。
【0069】
〔実施例1〕
参考例1−1、1−2、1−3及び1−4のポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)を用いて、図1に示す電界紡糸装置を用いた電界紡糸法により、次のようにして実施例1−1、1−2、1−3及び1−4のポリイミド繊維・不織布をそれぞれ製造した。
電界紡糸用ドープを高電圧23kVが印加された、0.7mmの細孔を有するノズルより空気中に吐出量1cc/Hで吐出し、電気的に接地された厚さ12μmのアルミホイルの捕集電極上に紡糸した。なお、参考例1−2、1−3及び1−4の電界紡糸用ドープを用いた実施例1−2、1−3及び1−4では、印加する高電圧は紡糸状態をみて15〜25kVの範囲で調整した。ノズルから捕集電極までの距離は200mmとした。紡糸時に一箇所に積層した場合、繊維中の残留溶媒によるポリイミド繊維・不織布の再溶解が観察されたため、適時、積層箇所を移動させることで回避した。また、大気中で加熱乾燥する場合も、繊維中の残留溶媒が多い場合には、再溶解が生じた。このため熱をかけない乾燥方法として減圧乾燥を選択し、得られたポリイミド繊維・不織布はまず減圧乾燥を行った。減圧乾燥した後、加熱炉で大気中、各設定温度150℃、200℃、300℃、350℃、380℃で5分間、加熱処理することで、実施例1−1、1−2、1−3及び1−4のポリイミド繊維・不織布をそれぞれ製造した。
実施例1−1、1−2、1−3及び1−4のポリイミド繊維・不織布の断面形状はいずれも円形であった。ポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)の曳糸性及び溶液安定性の評価結果、並びにポリイミド繊維の繊維径の測定結果を表1に示し、耐NMP溶解性の評価結果を表2に示した。
【0070】
〔実施例2〜5〕
参考例2−1〜5−2のポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2−1〜5−2のポリイミド繊維・不織布をそれぞれ製造した。
実施例2−1〜5−2のポリイミド繊維・不織布の断面形状はいずれも円形であった。ポリイミド溶液(電界紡糸用ドープ)の曳糸性及び溶液安定性の評価結果、並びにポリイミド繊維の繊維径の測定結果を表1に示し、耐NMP溶解性の評価結果を表2に示した。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【符号の説明】
【0073】
1 吐出手段(注射器)
2 筒状の溶液保持槽
3 電界紡糸用ドープ(ポリイミド溶液)
4 オリフィス
5 ノズル
6 繊維状物質捕集電極
7 高電圧発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを有機溶媒に溶解してなるポリイミド溶液を用い、電界紡糸法によって、繊維径が0.01〜2μmの高耐熱性ポリイミド繊維を得ることを特徴とする高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法。
【化1】

ただし、化学式(1)において、Aは、下記化学式(2)のいずれかからなり、Bは、下記化学式(3)のいずれかを含む2価の芳香族基からなり、A及びBの合計200モル%中、
(i)Aが下記化学式(4)のいずれかを80モル%以上含む場合には、Bが下記化学式(3)のいずれかを20モル%以上含み、
(ii)Aが下記化学式(4)のいずれかを40モル%以上80モル%未満含む場合には、Bが下記化学式(3)のいずれかを50モル%以上含む。
【化2】

〔化学式(2)において、X はCH 、CO、O、S、またはSO のいずれかで表される2価の基である。〕
【化3】

【化4】

〔化学式(4)において、X はCH 、CO、O、S、またはSO のいずれかで表される2価の基である。〕
【請求項2】
前記化学式(1)において、Aが、下記化学式(5)を10〜60モル%含むことを特徴とする請求項1に記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法。
【化5】

【請求項3】
前記化学式(1)において、Bが、下記化学式(6)のいずれかを10〜80モル%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法。
【化6】

〔化学式(6)において、X はCH 、CO、O、S、SO 、C(CH またはC(CFのいずれかで表される2価の基である。〕
【請求項4】
ガラス転移温度(Tg)が300℃以上の高耐熱性ポリイミド微細繊維を得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法。
【請求項5】
さらに、得られたポリイミド微細繊維を350℃以上の温度で加熱処理して有機溶媒に不溶化することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維の製造方法を含んで構成される、高耐熱性ポリイミド微細繊維からなる不織布の製造方法。
【請求項7】
下記化学式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドからなり、繊維径が0.01〜2μmであることを特徴とする高耐熱性ポリイミド微細繊維。
【化7】

ただし、化学式(1)において、Aは、下記化学式(2)のいずれかからなり、Bは、下記化学式(3)のいずれかを含む2価の芳香族基からなり、A及びBの合計200モル%中、
(i)Aが下記化学式(4)のいずれかを80モル%以上含む場合には、Bが下記化学式(3)のいずれかを20モル%以上含み、
(ii)Aが下記化学式(4)のいずれかを40モル%以上80モル%未満含む場合には、Bが下記化学式(3)のいずれかを50モル%以上含む。
【化8】

〔化学式(2)において、X はCH 、CO、O、S、またはSO のいずれかで表される2価の基である。〕
【化9】

【化10】

〔化学式(4)において、X はCH 、CO、O、S、またはSO のいずれかで表される2価の基である。〕
【請求項8】
ガラス転移温度(Tg)が300℃以上であることを特徴とする請求項7に記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維。
【請求項9】
有機溶媒に不溶であることを特徴とする請求項7または8に記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の高耐熱性ポリイミド微細繊維からなることを特徴とする不織布。

【図1】
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【公開番号】特開2011−132651(P2011−132651A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177546(P2010−177546)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】