説明

高耐熱性樹脂組成物

【課題】熱可塑性樹脂ブレンドを改良して、剛性、耐衝撃性、耐熱性のバランスが優れた材料を提供すること。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂a1〜99質量%と熱可塑性樹脂b99〜1質量%とからなる熱可塑性樹脂ブレンド100質量部と、(B)ブロックコポリマー0.1〜100質量部と、(C)ポリカーボネートジオールと過剰の芳香族ジイソシアネートよりなるポリカルボジイミド0.1〜50質量部と、を含む熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品、電気・電子部品などの各種工業部品の材料として用いられる熱可塑性樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、自動車部品、電気・電子部品などの工業部品の材料として、相異なる二種以上の熱可塑性樹脂を溶融混錬して得られる熱可塑性樹脂ブレンドに関する種々の技術が開発されている。
例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン樹脂よりなる熱可塑性樹脂ブレンドに関する技術が、特許文献1に開示され、この技術による熱可塑性樹脂ブレンドが電気・電子分野等の部品材料として広く用いられている。
また、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂よりなる熱可塑性樹脂ブレンドに関する技術が、特許文献2に開示され、この技術による熱可塑性樹脂ブレンドが自動車分野等の部品材料として広く用いられている。
また、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリフェニレンサルファイド樹脂よりなる熱可塑性樹脂ブレンドに関する技術が、特許文献3に開示され、この技術による熱可塑性樹脂ブレンドが自動車・電気機器分野等の部品材料として広く用いられている。
更に、ポリフェニレンエーテル樹脂と芳香族ポリエステル樹脂よりなる熱可塑性樹脂ブレンドに関する技術が、特許文献4に開示され、この技術による熱可塑性樹脂ブレンドが電気・電子分野等の部品材料として広く用いられている。
しかしながら、これらの熱可塑性樹脂ブレンドは、引張特性、耐衝撃性、剛性が十分ではなく、金属の代替として電気・電子分野、自動車分野等の各種工業部品を製造するための材料に要求される高度な材料物性を兼ね備えるには至っていない。
【0003】
【特許文献1】特開平05−186681号公報
【特許文献2】特開平02−201811号公報
【特許文献3】特開2001−302916号公報
【特許文献4】特開平5−117505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、熱可塑性樹脂ブレンドを改良して、剛性、耐衝撃性、耐熱性のバランスが優れた材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の目的を達成するため、相異なる二種以上の熱可塑性樹脂を溶融混錬して得られる熱可塑性樹脂ブレンドに関して検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂ブレンドに、特定のブロックコポリマーと特定のポリカルボジイミドを配合することにより、
剛性、及び、耐衝撃性、耐熱性のバランスが極めて高い熱可塑性樹脂組成物とすることができることを見い出し、本発明をなすに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(A)熱可塑性樹脂a1〜99質量%と熱可塑性樹脂b99〜1質量%とからなる熱可塑性樹脂ブレンド100質量部と、
(B)ブロックコポリマー0.1〜100質量部と、
(C)式(1)で表されるポリカルボジイミド0.1〜50質量部と、
を含む熱可塑性樹脂組成物。
式(1)
【化2】

(式1中、kは0〜30の整数、mは2〜100の整数、nは0〜30の整数、R1は炭素数2〜10のアルキレン基、R2は芳香族ジイソシアネート残基、R3は芳香族モノイソシアネート残基を意味する。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来の熱可塑性樹脂ブレンの成形性を損なうことなく、引張特性、耐衝撃性、剛性などのバランスが向上した熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本願発明について具体的に説明する。
1.(A)熱可塑性樹脂ブレンド
1−1 熱可塑性樹脂a、b
まず、(A)熱可塑性樹脂ブレンドを構成する熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bについて説明する。
本発明において、(A)熱可塑性樹脂ブレンドを構成する熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bは、互いに異種の熱可塑性樹脂である。
熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとの組合せは、互いに異種の熱可塑性樹脂の組合せであれば、如何なる組合せでも可能である。
本発明において、異種の熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂を構成するポリマーの種類が異なる熱可塑性樹脂;熱可塑性樹脂を構成するポリマーの数平均分子量、粘度平均分子量又は重量平均分子量の何れかが20%以上異なる熱可塑性樹脂;溶融粘度、溶液粘度の何れかの値が100%以上異なる熱可塑性樹脂;熱可塑性樹脂が共重合ポリマーよりなる場合は、共重合比が10%以上異なる熱可塑性樹脂;共重合ポリマー中のモノマーの配列(ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などの配列)が異なる熱可塑性樹脂の何れか一つ以上に該当する熱可塑性樹脂をいう。
【0009】
本発明において使用する熱可塑性樹脂a、bとしては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、熱可塑性エラストマー、フェノール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等が挙げられる。
本発明におい使用する熱可塑性樹脂a、bとしては、融点が140〜340℃であるもの、又は、ガラス転移温度が80〜250℃であるものが好ましい。
【0010】
本発明では、熱可塑性樹脂a、bとして、ポリフェニレンエーテル樹脂を好ましく使用することができる。
本発明で熱可塑性樹脂a、bとして好ましく用いることができるポリフェニレンエーテル樹脂としては、式(3)で表される繰り返し単位を有する単独重合体あるいは共重合体が挙げられる。
【0011】
式(3)
【化3】

【0012】
式(3)中、R1、R4は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、アミノアルキル、炭化水素オキシを表わす。R2、R3は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニルを表わす。
【0013】
ポリフェニレンエーテル樹脂の単独重合体の具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。
この中で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが特に好ましい。
【0014】
ポリフェニレンエーテル樹脂共重合体とは、フェニレンエーテル単位を単量単位として含む共重合体である。その具体例としては、例えば、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、あるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等が挙げられる。
【0015】
本発明で使用するポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法の例としては、例えば、米国特許第3306874号記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法が挙げられる。
米国特許第3306875号、米国特許第3257357号、米国特許第3257358号、特公昭52−17880号、特開昭50−51197号、特開昭63−152628号等に記載された方法もポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法として好ましい。
【0016】
また、本発明で使用するポリフェニレンエーテル樹脂は、本発明の主旨に反しない限り、式(3)で表される繰り返し単位の他に、従来ポリフェニレンエーテル樹脂中に存在させてもよいことが提案されている他の種々のフェニレンエーテル単位を部分構造として含んでいても構わない。
少量共存させることが提案されているフェニレンエーテル単位の例としては、特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位や、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位等が挙げられる。
【0017】
また、本発明で使用するポリフェニレンエーテル樹脂は、主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものであってもよい。
【0018】
本発明では、熱可塑性樹脂a、bとして、ポリスチレン樹脂を好ましく使用することができる。
本発明で熱可塑性樹脂a、bとして好ましく使用することができるポリスチレン樹脂としては、芳香族ビニル系単量体の単独重合体、又は、芳香族ビニル系単量体単位50質量%以上とこれと共重合可能な他のビニル系単量体又はゴム質重合体との共重合体が挙げられる。
【0019】
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。
また、芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体又はゴム質重合体としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられる。
【0020】
本発明では、熱可塑性樹脂a、bとして、ポリアミド樹脂を好ましく使用することができる。
本発明で熱可塑性樹脂a、bとして好ましく使用することのできるポリアミド樹脂としては、ポリマー主鎖中にアミド結合{−NH−C(=O)−}を有するものが挙げられる。一般に、ポリアミド樹脂は、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合などによって得られるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
ポリアミド樹脂の原料として用いることのできる上記ジアミンとしては、大別して脂肪族、脂環式及び芳香族ジアミンが挙げられ、具体例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルナノメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0022】
ジカルボン酸としては、大別して脂肪族、脂環式及び芳香族ジカルボン酸が挙げられ、具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸等が挙げられる。
ラクタム類としては、具体的には、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。
また、アミノカルボン酸としては、具体的には、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノナノン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、13−アミノトリデカン酸等などが挙げられる。
【0023】
本発明においては、ラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノカルボン酸を、単独あるいは二種以上の混合物にして重縮合を行って得られる共重合ポリアミド類をいずれも使用することができる。
また、ラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノカルボン酸を、重合反応機内で低分子量のオリゴマーの段階まで重合し、押出機等で高分子量化したものも好適に使用することができる。
本発明に用いるポリアミド樹脂の重合方法は特に限定されず、溶融重合、界面重合、溶液重合、塊状重合、固相重合、及び、これらを組み合わせた方法のいずれでもよい。これらの中では、溶融重合がより好ましく用いられる。
【0024】
本発明で好ましく用いることのできるポリアミド樹脂の具体例としては、例えば、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,12、ポリアミドMXD(m−キシリレンジアミン),6、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド6/6,T、ポリアミド6/6,I、ポリアミド6,6/6,T、ポリアミド6,6/6,I、ポリアミド6/6,T/6,I、ポリアミド6,6/6,T/6,I、ポリアミド6/12/6,T、ポリアミド6,6/12/6,T、ポリアミド6/12/6,I、ポリアミド6,6/12/6,I、ポリアミド9,T等のポリアミドが挙げられ、複数のポリアミドを押出機等でアミド交換反応を行い共重合化したポリアミドも使用することができる。
本発明において、特に好ましいポリアミド樹脂は、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド6/6,6、ポリアミド9,T、及び、それらの混合物であり、最も好ましいポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド9,T、又はそれらの混合物である。
【0025】
本発明で使用できるポリアミド樹脂の好ましい粘度範囲は、ISO307に従い96%硫酸中で測定した粘度数で、50〜300ml/gの範囲である。より好ましくは80〜180ml/gの範囲である。
本発明においては、ポリアミド樹脂が、上記した範囲外の粘度数を持つポリアミド樹脂の混合物であっても、その混合物の粘度数が上記した範囲内に入っていれば好ましく使用できる。このような例として、例えば、粘度数150ml/gのポリアミド樹脂と粘度数80ml/gのポリアミド樹脂の混合物、粘度数120ml/gのポリアミド樹脂と粘度数115ml/gのポリアミド樹脂の混合物等が挙げられる。こポリアミド樹脂の混合物の粘度数が上記範囲内に有るか否かは、混合比率と同じ比率でポリアミド樹脂を96%硫酸に溶解して、ISO307に従い粘度数を測定することで容易に確認することができる。
ポリアミド樹脂の中で特に好ましい混合形態は、各々のポリアミド樹脂が粘度数90〜150ml/gの範囲内にあり、かつ粘度数の異なるポリアミド樹脂の混合物である。
【0026】
本発明においては、ポリアミド樹脂のアミノ基末端とカルボキシル基末端のモル比率、即ち末端アミノ基/末端カルボキシル基比率は、0.10〜10であることが好ましく、より好ましくは0.12〜5.0、更に好ましくは0.15〜1.0、特に好ましくは0.17〜0.80である。
ポリアミド樹脂の末端基の調整方法は、当業者には明らかであるような公知の方法を用いることができる。例えば、ポリアミド樹脂の重合時に、所定の末端基濃度となるようにジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物などから選ばれる1種以上を添加する方法が挙げられる。
本発明では、ポリアミド樹脂のアミノ基末端、及び、カルボキシル基末端の定量方法として、J.E.Waltz、Guy B.Taylor,”Detemination of the molecular Weight of Nylon”, Ind. Eng. Chem. Anal. Ed., 19, 448 (1947年)に記載の方法を用いる。
なお、熱可塑性樹脂a、bとして、複数のポリアミド樹脂を使用する場合、ポリアミド樹脂全体の末端アミノ基/末端カルボキシル基比率は、次の式で与えられる。
ポリアミド樹脂全体の末端アミノ基/末端カルボキシル基比率
=Σ((ポリアミドiの添加量)×(ポリアミドiのアミノ基末端))/Σ((ポリアミドiの添加量)×(ポリアミドiのカルボキシル基末端))
【0027】
本発明においては、ポリアミド樹脂の耐熱安定性を向上させる目的で、特開平1−163262号公報に記載される金属系安定剤も、問題なく使用することができる。
これら金属系安定剤の中で、特に好ましく使用することのできるものとしては、CuI、CuCl2、酢酸銅、ステアリン酸セリウム等が挙げられる。また、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等に代表されるアルキル金属のハロゲン化塩も好適に使用することができる。これらは、もちろん併用添加しても構わない。
金属系安定剤及び/又はアルキル金属のハロゲン化塩の好ましい配合量は、ポリアミド樹脂の総量100質量部に対して、0.001〜1質量部である。
【0028】
また、本発明においては、上述した金属系安定剤の他に、公知の有機安定剤も問題なく使用することができる。有機安定剤の具体例としては、例えば、イルガノックス1098等に代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤、イルガフォス168等に代表されるリン系加工熱安定剤、HP−136に代表されるラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
これら有機安定剤の中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、もしくはその併用が好ましい。
これら有機安定剤の好ましい配合量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.001〜1質量部である。
【0029】
さらに、上記の他に、ポリアミド樹脂に添加することが可能な公知の添加剤等をポリアミド樹脂に添加することができる。このような添加剤の添加量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して10質量部未満の量であることが好ましい。
【0030】
本発明では、熱可塑性樹脂a、bとして、ポリカーボネート樹脂を好ましく使用することができる。
本発明で熱可塑性樹脂a、bとして好ましく用いることができるポリカーボネート樹脂としては、下記式(4)で表される繰り返し単位を有する重合体が挙げられる。
【0031】
式(4)
【化4】

【0032】
式(4)中、Zは、単なる結合を示すかあるいは炭素数1〜8のアルキレン、炭素数2〜8のアルキリデン、炭素数5〜15のシクロアルキレン、SO2、SO、O、CO、又は、式(5)で表される基を意味する。また、Xは、水素、又は炭素数1〜8の飽和アルキル基を示し、a及びbは0〜4の整数を示す。
【0033】
式(5)
【化5】

【0034】
このポリカーボネート樹脂は、例えば、溶剤法、すなわち塩化メチレン等の溶剤中で公知の酸受容体、分子量調整剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応又は二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応によって製造することができる。
ここで用いることのできる二価フェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称ビスフェノールA〕、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等を挙げることができる。特に、ビスフェノールAを単独、あるいは他の二価フェノールと混合して用いることが好ましい。また、これら二価フェノールは二価フェノールのホモポリマー又は2種以上のコポリマーもしくはブレンド物であってもよい。さらに、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は多官能性芳香族化合物を二価フェノール及び、又はカーボネート前駆体と反応させた熱可塑性ランダムポリカーボネートであってもよい。
【0035】
本発明では、熱可塑性樹脂a、bとして、ポリフェニレンサルファイド樹脂を好ましく使用することができる。
本発明で熱可塑性樹脂a、bとして好ましく使用できるポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)としては、下記の式(6)で示される構成単位を70モル%以上含むものが挙げられる。式(6)で示される構成単位が70モル%未満では、優れた特性をもつ熱可塑性樹脂組成物が得難い傾向にある。
【0036】
式(6)
【化6】

【0037】
PPS樹脂の重合方法としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンを反応させる方法が好ましい例として挙げられる。この際、重合度を調節するためにカルボン酸やスルホン酸のアルカリ金属塩を添加したり、水酸化アルカリ、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属酸化物を添加することができる。共重合成分として、メタ結合、オルト結合、エーテル結合、スルホン結合、ビフェニル結合、置換フェニレンスルフィド結合(置換基としては、アルキル基、ニトロ基、フェニル基、アルコキシ基、カルボン酸基、カルボン酸の金属塩基等が挙げられる)、3官能結合などを含有していてもポリマーの結晶性に大きく影響しない範囲でかまわないが、好ましくは共重合成分は30モル%未満であり、より好ましくは10モル%以下である。PPS樹脂は、通常、酸素の存在下200〜250℃の温度で熱架橋し溶融粘度を調整した後使用される。
【0038】
本発明では、熱可塑性樹脂a、bとして、芳香族ポリエステル樹脂を好ましく使用することができる。
本発明で熱可塑性樹脂a、bとして好ましく使用できる芳香族ポリエステル樹脂としては、異方性溶融相を形成するポリエステル樹脂が挙げられる。異方性溶融相を形成するポリエステルとは、当業者にサーモトロピック液晶ポリエステル樹脂と呼ばれ、示差走査熱量計により測定される融点が180〜360℃を示すものである。 異方性溶融相の性質は、直交偏向子を利用した通常の偏向検査法、すなわちホットステージにのせた試料を窒素雰囲気下で観察することにより確認できる。
【0039】
本発明においては、芳香族ポリエステル樹脂として、分子鎖中に脂肪族基を有する半芳香族ポリエステル、分子鎖が全て芳香族基より構成される全芳香族ポリエステルの何れを用いてもよい。これらの芳香族ポリエステル樹脂の中では、難燃性や機械的物性が良好であることから全芳香族ポリエステルが好ましい。
本発明において用いる芳香族ポリエステル樹脂を構成する繰返し単位としては、例えば、芳香族オキシカルボニル繰返し単位、芳香族ジカルボニル繰返し単位、芳香族ジオキシ繰返し単位、芳香族オキシジカルボニル繰返し単位、及び脂肪族ジオキシ繰返し単位等が挙げられる。
【0040】
芳香族オキシカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、パラヒドロキシ安息香酸、メタヒドロキシ安息香酸、オルトヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸、これらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体等が挙げられ、これらの中ではパラヒドロキシ安息香酸及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が好ましい。
【0041】
芳香族ジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル、ビス(4−カルボキシフェニル)エ−テル、ビス(3−カルボキシフェニル)エーテル等の芳香族ジカルボン酸、これらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体、ならびにそれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体等が挙げられ、これらの中ではテレフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0042】
芳香族ジオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエ−テル等の芳香族ジオール、これらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体等が挙げられ、これらの中ではハイドロキノン及び4,4’−ジヒドロキシビフェニルが好ましい。
【0043】
芳香族オキシジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、3−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジカルボン酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、及び5−ヒドロキシイソフタル酸等のヒドロキシ芳香族ジカルボン酸、これらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0044】
脂肪族ジオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール、ならびにそれらのアシル化物等が挙げられる。
また、ポリエチレンテレフタレートや、ポリブチレンテレフタレートなどの脂肪族ジオキシ繰返し単位を有するポリエステルを、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール及びそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などと反応させることによっても、脂肪族ジオキシ繰返し単位を含む芳香族ポリエステル樹脂を得ることができる。
【0045】
これらの繰返し単位の組み合わせのうち、低融点を示すと共に良好な機械物性を有する好適な組み合わせの例として以下に示すものが挙げられる。なお、繰返し単位の数字は、芳香族ポリエステル樹脂中の各繰返し単位のモル%を表す。
【0046】
【化7】

【0047】
これらの中でも、特に以下に示す繰返し単位の組み合わせが好ましい。
【0048】
【化8】

【0049】
本発明で用いる芳香族ポリエステル樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で、アミド結合やチオエステル結合を含むものであってもよい。このような結合を与える単量体としては、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸、メルカプト芳香族カルボン酸、及び芳香族ジチオール及びメルカプト芳香族フェノール等が挙げられる。これらの単量体の使用量は、全単量体の合計量に対して10モル%以下であることが好ましい。
また、本発明に用いる芳香族ポリエステル樹脂は、二種以上の芳香族ポリエステル樹脂をブレンドしたものでもよい。
【0050】
1−2 熱可塑性樹脂ブレンド
続いて、熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとからなる(A)熱可塑性樹脂ブレンドについて説明する。
本発明における(A)熱可塑性樹脂ブレンドは、互いに異種の熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとを溶融混練して混合することにより製造できる。
熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bの組合せは、互いに異種の熱可塑性樹脂の組合せであれば、如何なる組合せでも可能である。
【0051】
本発明において、(A)熱可塑性樹脂ブレンドは、熱可塑性樹脂a1〜99質量%と、熱可塑性樹脂b99〜1質量%とからなる。
本発明で、好ましい(A)熱可塑性樹脂ブレンドは、熱可塑性樹脂a10〜90質量%と、熱可塑性樹脂b90〜10質量%とからなる。
本発明で、更に好ましい(A)熱可塑性樹脂ブレンドは、熱可塑性樹脂a30〜70質量%と、熱可塑性樹脂b70〜30質量%とからなる。
本発明で、特に好ましい(A)熱可塑性樹脂ブレンドは、熱可塑性樹脂a40〜60質量%と、熱可塑性樹脂b60〜40質量%とからなる。
【0052】
熱可塑性樹脂aと、熱可塑性樹脂bの組合せは、互いに異種の熱可塑性樹脂の組合せであれば、如何なる組合せでも可能である。
本発明において、(A)熱可塑性樹脂ブレンドの好ましい組合せは、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン樹脂の組合せ、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂の組合せ、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリフェニレンサルファイド樹脂の組合せ、ポリフェニレンエーテル樹脂と芳香族ポリエステルの組合せである。
この中でも、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂の組合せ、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリフェニレンサルファイド樹脂の組合せが好ましく、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂の組合せが特に好ましい。このうち、ポリアミド樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド9,T、又はそれらの混合物である場合が、最も好ましい。
【0053】
熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとは、相溶することが好ましい。
熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとを相溶させる方法としては、元来、相溶する熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとを選択し、これらを溶融混練する方法が好ましい。
このような方法の具体例としては、ポリスチレン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂を溶融混練する方法が挙げられる。
【0054】
また、熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとを相溶させる方法として、元来は相溶しない熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとを、相溶化剤を使用して相溶化する方法も好ましく適用できる。
このような方法の具体例としては、ポリアミド樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂を、無水マレイン酸、イタコン酸、クエン酸、液体ジエンポリマー、エポキシ化合物、酸化ポリオレフィンワックス、キノン、オルガノシラン化合物等の相溶化剤を添加して溶融混練する方法が挙げられる。
また、このような方法の別の具体例として、ポリフェニレンエーテル樹脂に、無水マレイン酸、イタコン酸、クエン酸、液体ジエンポリマー、エポキシ化合物、酸化ポリオレフィンワックス、キノン、オルガノシラン化合物等の相溶化剤を添加して溶融混練し、変性ポリフェニレンエーテル樹脂を得た後に、ポリアミド樹脂と変性ポリフェニレンエーテル樹脂を溶融混練する方法も挙げられる。
【0055】
更に、熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとを相溶させる方法として、元来は相溶しない熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとを、ブロック共重合体、又は、グラフト共重合体を使用して相溶化させる方法も好ましく適用できる。
このような方法の具体例としては、ポリオレフィン樹脂とポリスチレン樹脂を、SEBS(スチレン−エチレン−ブテン−スチレン)ブロック共重合体を添加して溶融混練する方法が挙げられる。
熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとを相溶させる方法としては、既知の熱可塑性樹脂を相溶する方法を広く適用でき、上記方法に限定されることはない。
【0056】
熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとが相溶した(A)熱可塑性樹脂ブレンドを用いた熱可塑性樹脂組成物は、特に、衝撃強さ、引張伸度などの機械物性が向上する。
【0057】
相溶化剤は、(A)熱可塑性樹脂ブレンド100質量に対して、0.1質量部〜10質量部添加することが好ましい。
更に好ましい相溶化剤の添加量は、(A)熱可塑性樹脂ブレンド100質量に対して、0.2質量部〜5質量部である。
特に好ましい相溶化剤の添加量は、(A)熱可塑性樹脂ブレンド100質量に対して、0.3質量部〜3質量部である。
【0058】
2.(B)ブロックコポリマー
本発明において、(B)ブロックコポリマーに限定はない。
本発明において、好ましい(B)ブロックコポリマーは、共役ジエンと芳香族ビニル化合物のブロック共重合体、水添した共役ジエンと芳香族ビニル化合物のブロック共重合体、又は、エチレン−プロピレンブロック共重合体である。
【0059】
(B)ブロックコポリマーとして特に好ましいものは、スチレン系化合物含有ブロック共重合体である。ここで、スチレン系化合物含有ブロック共重合体とは、スチレン系化合物を主体とする少なくとも1つの重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1つの重合体ブロックを含むブロック共重合体、もしくは、このようなブロック共重合体中の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック中の不飽和結合に対して水素添加した水素添加スチレン系化合物含有ブロック共重合体である。なお、スチレン系化合物とは、スチレン、若しくは、スチレンの水素原子が、アルキル基、アシル基、又は、ハロゲン元素で置換された化合物をいう。
【0060】
上記スチレン系化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、少なくとも50質量%以上がスチレン系化合物に由来するブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物に由来するブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
この場合、例えばスチレン系化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物もしくは他の化合物が結合されているブロックの場合であっても、該ブロックの50質量%がスチレン系化合物より形成されていれば、スチレン系化合物を主体とするブロック共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
【0061】
スチレン系化合物の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物を用いることができるが、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物を用いることができるが、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
【0062】
スチレン系化合物含有ブロック共重合体の共役ジエン化合物ブロック部分のミクロ構造は、1,2−ビニル含量、又は1,2−ビニル含量と3,4−ビニル含量の合計量が、5〜80質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましく、15〜40質量%であることが最も好ましい。
【0063】
本発明で使用するスチレン系化合物含有ブロック共重合体は、スチレン系化合物を主体とする重合体ブロック(a)と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(b)が、a−b型、a−b−a型、a−b−a−b型から選ばれるいずれかの結合形式で結合するブロック共重合体であることが好ましい。これらの中でもa−b−a型がより好ましい。これらはもちろん混合物であっても構わない。
【0064】
また、本発明で使用するスチレン系化合物含有ブロック共重合体は、水素添加されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体であることが好ましい。
水素添加されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体とは、水素添加処理により、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合の一部又は全部を水素添加したものをいい、脂肪族二重結合の少なくとも50%以上を水素添加したものであることが好ましい。より好ましくは80%以上、最も好ましくは98%以上水素添加したものである。
【0065】
また、本発明で使用する水素添加されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体の数平均分子量は、200,000以上300,000以下であることが好ましい。この分子量範囲以外の水素添加ブロック共重合体の使用も可能であるが、少量の添加で高い衝撃性を発現するためには、この範囲の水素添加ブロック共重合体を、たとえ少量でも用いることが好ましい。
【0066】
本発明において、数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置[GPC SYSTEM21:昭和電工(株)製]を用いて、紫外分光検出器[UV−41:昭和電工(株)製]で測定し、標準ポリスチレンで換算した数平均分子量のことを指す。測定条件は、例えば、次のようにすることができる。[溶媒:クロロホルム、温度:40℃、カラム:サンプル側(K−G,K−800RL,K−800R)、リファレンス側(K−805L×2本)、流量10ml/分、測定波長:254nm,圧力15〜17kg/cm2]。数平均分子量の測定の際に、重合時の触媒失活による低分子量成分が検出されることがあるが、このような低分子量成分は分子量計算に含めない。通常、計算された正しい分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.0〜1.2の範囲内である。
スチレン系化合物含有ブロック共重合体は、例えば、リビングアニオン重合法により製造することができ、この場合、極めて分子量分布の狭い(Mw/Mn=1.0〜1.2程度)共重合体が得られる。
【0067】
また、本発明において、スチレン系化合物含有ブロック共重合体として、結合形式の異なるもの、スチレン系化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、1,2−結合ビニル含有量もしくは1,2−結合ビニル含有量と3,4−結合ビニル含有量の異なるもの、スチレン系化合物成分含有量の異なるもの、水素添加率の異なるもの等の複数種類を混合して用いても構わない。もちろん、スチレン系化合物含有ブロック共重合体以外のブロック共重合体を併用することに何ら問題はない。
【0068】
また、本発明で使用するスチレン系化合物含有ブロック共重合体は、全部又は一部が変性されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体であっても構わない。ここでいう変性されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体とは、(F)相溶化剤で変性されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体をいう。
変性されたスチレン系化合物含有ブロック共重合体の製法としては、
(1)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下で、スチレン系化合物含有ブロック共重合体の軟化点以上かつ、250℃以下の範囲の温度で、スチレン系化合物含有ブロック共重合体と(F)相溶化剤とを溶融混練して反応させる方法、
(2)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下で、スチレン系化合物含有ブロック共重合体の軟化点以下の温度で、スチレン系化合物含有ブロック共重合体と(F)相溶化剤を溶液中で反応させる方法、
(3)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下で、スチレン系化合物含有ブロック共重合体の軟化点以下の温度で、スチレン系化合物含有ブロック共重合体と(F)相溶化剤を溶融させることなく反応させる方法等が挙げられる。
これらいずれの方法でも構わないが、(1)の方法が好ましく、更には(1)の中でもラジカル開始剤存在下で行う方法が最も好ましい。
【0069】
また、本発明においては、スチレン系化合物含有ブロック共重合体として、パラフィンを主成分とするオイルをあらかじめ混合したものを用いても構わない。パラフィンを主成分とするオイルをあらかじめ混合することにより、熱可塑性樹脂組成物の加工性を向上させることができる。
【0070】
本発明では、(B)ブロックコポリマーの添加量は、熱可塑性樹脂a1〜99重量%と熱可塑性樹脂b99〜1重量%よりなる(A)熱可塑性樹脂ブレンド100質量部に対して、0.1〜100質量部である。
本発明で、好ましい(B)ブロックコポリマーの添加量は、(A)熱可塑性樹脂ブレンド100質量部に対して、1〜50質量部である。
本発明で、更に好ましい(B)ブロックコポリマーの添加量は、(A)熱可塑性樹脂ブレンド100質量部に対して、2〜25質量部である。
本発明で、特に好ましい(B)ブロックコポリマーの添加量は、(A)熱可塑性樹脂ブレンド100質量部に対して、5〜15質量部である。
【0071】
3.(C)式(1)で表されるポリカルボジイミド
本発明において、(C)ポリカルボジイミドは、式(1)で表されるポリカルボジイミド共重合体である。
【0072】
式(1)
【0073】
【化9】

【0074】
式(1)中、kは0〜30の整数、mは2〜100の整数、nは0〜30の整数、R1は炭素数2〜10のアルキレン基、R2は芳香族ジイソシアネート残基、R3は芳香族モノイソシアネート残基を意味する。
【0075】
1の具体例としては、例えば、エチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン基等が挙げられる。
なお、これらのアルキレン基は、単独で用いても2種以上を混合して使用してもよい。
【0076】
芳香族ジイソシアネート残基であるR2の具体例としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネ−ト、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルエ−テルジイソシアネート、2,2−ビス[4−(4−イソシアネ−トフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−イソシアネ−トフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジイソシアネート残基が挙げられ、特に、トリレンジイソシアネート残基が好適に使用できる。
なお、これらの芳香族ジイソシアネート残基は、単独で用いても2種以上を混合して使用してもよい。
【0077】
芳香族モノイソシアネート残基であるR3の具体例としては、フェニルイソシアネート、p−ニトロフェニルイソシアネート、p−及びm−トリルイソシアネート、p−ホルミルフェニルイソシアネート、p−イソプロピルフェニルイソシアネート等の芳香族モノイソシアネート残基が挙げられ、特にp−イソプロピルフェニルイソシアネート残基が好ましい。
なお、これらの芳香族モノイソシアネート残基は、単独で用いても2種以上を混合して使用してもよい。
【0078】
kは、好ましくは2〜20であり、mは、好ましくは5〜80であり、nは、好ましくは2〜20である。
【0079】
本発明において、(C)式(1)で表されるポリカルボジイミドとして好ましく使用できるポリカルボジイミドとしては、ポリカーボネートジオールと芳香族ジイソシアネートとを反応させて得たポリウレタンを、カルボジイミド化触媒の存在下で、末端のイソシアネート基と芳香族ジイソシアネートを反応させてカルボジイミド化し、芳香族モノイソシアネートにより末端封鎖して得たポリカルボジイミド共重合体が挙げられる。
【0080】
また、本発明では、(C)式(1)で表されるポリカルボジイミドとして、ポリカーボネートジオールと、過剰の芳香族ジイソシアネートとをカルボジイミド化触媒の存在下で反応させて得たものも好ましく使用できる。
【0081】
本発明において、(C)式(1)で表されるポリカルボジイミド中のカルボジイミド基の存在は、IR測定によるカルボジイミド基由来の吸収(2140cm-1)により確認できる。
【0082】
ここで、ポリカーボネートジオールは、カーボネート基を含むポリカーボネートジオールであればよく、具体例としては、ポリエチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカ−ボネートジオ−ル、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリオクタメチレンカ−ボネートジオ−ル、ポリドデカメチレンカーボネートジオール等が挙げられ、特にポリヘキサメチレンカーボネートジオ−ルが好ましい。
なお、これらのポリカーボネートジオールは単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0083】
ポリカーボネートジオールとしては、特に、以下の式(7)で表されるポリカーボネートジオールを好ましく用いることができる。
【0084】
式(7)
【0085】
【化10】

【0086】
式(7)中、mは2〜100の整数、R1は炭素数2〜10のアルキレン基を意味する。
【0087】
カルボジイミド化触媒として、リン系触媒が好適に用いられる。
リン系カルボジイミド化触媒の具体例としては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、あるいはこれらの3−ホスホレン異性体などのホスホレンオキシド等が挙げられる。
【0088】
本発明においては、(C)式(1)で表されるポリカルボジイミドの添加量は、(A)熱可塑性樹脂ブレンド100質量部に対して、0.1〜50質量部である。
本発明において、好ましい(C)式(1)で表されるポリカルボジイミドの添加量は、(A)熱可塑性樹脂ブレンド100質量部に対して、1〜30質量部であり、更に好ましくは2〜25質量部、特に好ましくは5〜15質量部である。
【0089】
4.熱可塑性樹脂組成物
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の特徴及び効果を損なわない範囲で、他の付加的成分、例えば、耐衝撃性付与剤、可塑剤、安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、離型剤、酸化防止剤、ポレオレフィン用造核剤、スリップ剤、無機又は有機の充填剤や補強剤(例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、ウィスカー、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ワラスナイト等)、各種着色剤、帯電防止剤、カーボンブラックなどの導電性改良剤等を添加してもかまわない。
これらの付加的成分の含有量の合計は、(A)、(B)、(C)の合計100質量部に対して100質量部以下であることが好ましい。
【0090】
本発明において、熱可塑性樹脂組成物の好ましい製法は、(A)熱可塑性樹脂ブレンド、(B)ブロックコポリマー、(C)式(1)で表されるポリカルボジイミド、及び、必要に応じ、前述の付加的成分を、単軸押出機、二軸押出機、コニーダー、ブラベンダーなどの溶融混練機を用い溶融混練する方法である。
本発明において、特に好ましい、熱可塑性樹脂組成物の製法は、二軸押出機、又は、コニーダーを用いて溶融混練する方法である。
【0091】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際の好ましい溶融混練温度は180〜400℃である。更に好ましくは200〜350℃であり、特に好ましくは250〜330℃であり、最も好ましくは280〜320℃である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際には、熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を一括して溶融混練することができる。また、溶融混練方法としては、公知の溶融混練方法を採用することができる。
【0092】
本発明において、熱可塑性樹脂組成物を構成する成分を溶融混練する順序は限定されない。例えば、熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとを溶融混練して(A)熱可塑性樹脂ブレンドを調製した後、(B)ブロックコポリマーと(C)式(1)で表されるポリカルボジイミドと添加して、さらに溶融混練し熱可塑性樹脂組成物を製造してもよいし、又は、熱可塑性樹脂a、熱可塑性樹脂b、(B)ブロックコポリマー、(C)式(1)で表されるポリカルボジイミドとを同時に溶融混練して、(A)熱可塑性樹脂ブレンドの調製と熱可塑性樹脂組成物の製造を同時に行ってもよい。
【0093】
本発明においては、熱可塑性樹脂組成物の好ましい製造方法として、熱可塑性樹脂a及び/又は熱可塑性樹脂bの少なくとも一部と、(C)式(1)で表されるポリカルボジイミドを予め溶融混練した後に、残りの成分を添加して溶融混練する方法が挙げられる。
また、本発明においては、別の熱可塑性樹脂組成物の好ましい製造方法として、熱可塑性樹脂aの少なくとも一部と熱可塑性樹脂bの少なくとも一部を予め相溶化した後に、他の成分と溶融混練する方法が挙げられる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0095】
I.原料の準備
実施例、比較例では、熱可塑性樹脂a、熱可塑性樹脂b、ブロックコポリマー、ポリカルボイミド、相溶剤として、以下のものを用いた。
<熱可塑性樹脂a>
熱可塑性樹脂aとして、以下の方法で測定した還元粘度が、0.42dl/g(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃にてウベローデ型粘度計を用いて測定)であるポリ(2,6−ジメチル−フェニレンオキシド)(以下、「PPE−a」という。)を用いた。
(還元粘度の測定方法)
0.5(g/dl)のクロロフォルム溶液を用意し、ウベローデ型粘度計を用いて30℃で熱可塑性樹脂の粘度を測定し、この結果から次式に従って還元粘度を求めた。
還元粘度(ηsp/C)=(ηr−1)/C
=(t/t0−1)/C
但し、ηr(=t/t0):比粘度
C :溶液濃度(g/dl)
t :クロロフォルム溶液の流下時間
0 :クロロフォルムの流下時間
【0096】
<熱可塑性樹脂b>
熱可塑性樹脂bとして、粘度数:129(ml/g)、アミノ基末端:30.9(μmol/g)、カルボキシル基末端:93.1(μmol/g)、アミノ基末端/カルボキシル基末端比率:0.30であるポリアミド−6,6(以下、「PA−b1」という。)を用いた。
熱可塑性樹脂bとして、粘度数:129(ml/g)、アミノ基末端:24(μmol/g)、カルボキシル基末端:100(μmol/g)、アミノ基末端/カルボキシル基末端比率:0.24であるポリアミド−9,T(以下、「PA−b2」という。)を用いた。
【0097】
<相溶化剤>
相溶化剤として、無水マレイン酸を用いた。
<ブロックコポリマー>
ブロックコポリマーとして、ポリスチレン−ポリエチレンブチレン−ポリスチレンブロック共重合体(クレイトンポリマージャパン社製、KratonG1651(商品名)(数平均分子量:約250,000))(以下、「SEBS」という。)を用いた。
【0098】
<ポリカルボジイミド>
式(1)で表されるポリカルボジイミドとして、芳香族系ポリカルボジイミド(Bayer社製Stabaxol P)(以下、「ポリカルボジイミド1」という。)を用いた。
【0099】
II.熱可塑性樹脂組成物の製造
以下のようにして、実施例、比較例の熱可塑性樹脂組成物を製造した。
なお、原料の溶融混練には、コペリオン社製(ドイツ国)のL/D=44のZSK−25型同方向回転二軸押出機を用いた。シリンダー温度を全て300℃に設定し、ダイの温度を280℃に設定した。二軸押出機の主供給口に定量フィーダを設置した。また、スクリューの全長を1.0とした時に、上流側より見て約0.35の位置にベントポート1、約0.80の位置にベントポート2を設置し、各々のベントポートに定量式のサイドフィーダを設置した。
【0100】
また、ポリカルボジイミドのマスターペレットを以下のようにして製造した。
二軸押出機の主供給口より、PA−b1を18質量部/時間、ポリカルボジイミド1を2質量部/時間で定量供給し、溶融混練してマスターペレット1を製造した。
二軸押出機の主供給口より、PA−b2を18質量部/時間、ポリカルボジイミド1を2質量部/時間で定量供給し、溶融混練してマスターペレット2を製造した。
【0101】
[実施例1]
二軸押出機の主供給口より、PPE−aを35質量部/時間、SEBSを12質量部/時間、無水マレイン酸を0.5質量部/時間で定量供給し、同時に、サイドフィーダ1より、PA−b1を35質量部/時間で定量供給し、また、同時に、サイドフィーダ2より、PA−b1を18質量部/時間、ポリカルボジイミド1を2質量部/時間で定量供給し、溶融混練して熱可塑性樹脂組成物1を製造した。
【0102】
[実施例2]
二軸押出機の主供給口より、PPE−aを35質量部/時間、SEBSを12質量部/時間、無水マレイン酸を0.5質量部/時間で定量供給し、同時に、サイドフィーダ1より、PA−b1を35質量部/時間で定量供給し、また、同時に、サイドフィーダ2より、マスターペレット1を20質量部/時間で定量供給し、溶融混練して熱可塑性樹脂組成物2を製造した。
[実施例3]
二軸押出機の主供給口より、PPE−aを35質量部/時間、SEBSを12質量部/時間、無水マレイン酸を0.5質量部/時間で定量供給し、同時に、サイドフィーダ1より、PA−b1を35質量部/時間、マスターペレット1を20質量部/時間で定量供給し、溶融混練して熱可塑性樹脂組成物3を製造した。
[実施例4]
二軸押出機の主供給口より、PPE−aを35質量部/時間、SEBSを12質量部/時間、無水マレイン酸を0.5質量部/時間で定量供給し、同時に、サイドフィーダ1より、PA−b2を35質量部/時間で定量供給し、また、同時に、サイドフィーダ2より、PA−b2を18質量部/時間、ポリカルボジイミド1を2質量部/時間で定量供給し、溶融混練して熱可塑性樹脂組成物4を製造した。
[実施例5]
二軸押出機の主供給口より、PPE−aを35質量部/時間、SEBSを12質量部/時間、無水マレイン酸を0.5質量部/時間で定量供給し、同時に、サイドフィーダ1より、PA−b2を35質量部/時間、マスターペレット2を20質量部/時間で定量供給し、溶融混練して熱可塑性樹脂組成物5を製造した。
【0103】
[比較例1]
サイドフィーダ2よりポリカルボンジイミド1を供給しなかった以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物6を製造した。
[比較例2]
サイドフィーダ2よりポリカルボンジイミド1を供給しなかった以外は実施例4と同様にして、熱可塑性樹脂組成物7を製造した。
【0104】
III.熱可塑性樹脂組成物の評価
<成形性の評価>
実施例1〜5、比較例1、2で得た本発明の熱可塑性樹脂組成物について、東芝機械(株)製射出成形機 IS80EPNを用い、シリンダー温度を280℃、金型温度を80℃として、徐々に射出圧力を上げながら射出成形を行い、組成物が金型に概ね充填する圧力(SSP)(kg/cm2)を測定し、成形性を評価した。
<引張伸度の測定>
実施例1〜5、比較例1、2で得た本発明の熱可塑性樹脂組成物について、東芝機械(株)製射出成形機 IS80EPNを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、通常の射出スピードの条件下でISO294の記載に従い、ISO3167に定める多目的試験片を作成した。そして、この多目的試験片を用いて、ISO527−1、ISO527−2の記載に従って引張伸度を測定した。
<Izod衝撃強度の測定>
上記多目的試験片を用いて、ISO180/1Aの記載に従って測定した。
<曲げ弾性率の測定>
上記多目的試験片を用いて、ISO178の記載に従って測定した。
【0105】
実施例1〜5、比較例1、2の熱可塑性樹脂組成物1〜7の物性測定結果を表1に示した。
表1より、本発明に該当する実施例1〜5の熱可塑性樹脂組成物1〜5は、従来の組成物にあたる比較例1、2の熱可塑性樹脂組成物6、7と、同等の成形性を示し、かつ、引張伸度、Izod衝撃強度、曲げ弾性率に優れるものであった。
【0106】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形性、引張特性、耐衝撃性、剛性のバランスを極めて高いレベルにとれたものであるので、電気・電子分野、自動車分野等の各種工業部品を製造するための材料として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂a1〜99質量%と熱可塑性樹脂b99〜1質量%とからなる熱可塑性樹脂ブレンド100質量部と、
(B)ブロックコポリマー0.1〜100質量部と、
(C)式(1)で表されるポリカルボジイミド0.1〜50質量部と、
を含む熱可塑性樹脂組成物。
式(1)
【化1】

(式1中、kは0〜30の整数、mは2〜100の整数、nは0〜30の整数、R1は炭素数2〜10のアルキレン基、R2は芳香族ジイソシアネート残基、R3は芳香族モノイソシアネート残基を意味する。)
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂aが、ポリフェニレンエーテル樹脂であり、かつ、前記熱可塑性樹脂bが、ポリスチレン樹脂である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂aが、ポリフェニレンエーテル樹脂であり、かつ、前記熱可塑性樹脂bが、ポリアミド樹脂である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂aが、ポリフェニレンエーテル樹脂であり、かつ、前記熱可塑性樹脂bが、ポリフェニレンサルファイド樹脂である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂aが、ポリフェニレンエーテル樹脂であり、かつ、前記熱可塑性樹脂bが、芳香族ポリエステルである請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂bが、ポリアミド9Tである請求項3記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
以下の工程ア、イをこの順で含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法:
(工程ア) 熱可塑性樹脂a及び/又は熱可塑性樹脂bの少なくとも一部と、(C)式(1)で表されるポリカルボジイミドとを溶融混練する工程;
(工程イ) 工程アで得られた溶融混練物に残りの成分を添加して溶融混練する工程。
【請求項8】
以下の工程ウ、エをこの順で含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法:
(工程ウ) 熱可塑性樹脂aの少なくとも一部と、熱可塑性樹脂bの少なくとも一部とを相溶化し、熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとが相溶した熱可塑性樹脂ブレンドを得る工程;
(工程エ) 工程ウで得られた熱可塑性樹脂ブレンドに、残りの成分を添加して溶融混練する工程。

【公開番号】特開2008−297329(P2008−297329A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141571(P2007−141571)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】