説明

高耐熱水性SCR触媒及びその製造方法

【課題】
本発明の目的は、NOx還元性、特に水熱耐久処理後での低温におけるNOx還元性能が高いSCR触媒、及びその簡便な製造方法を提供するものである。
【解決手段】
鉄を含有してなるZSM−5型ゼオライトからなり、X線結晶回折(051)面の半値幅(FWHM)が0.33〜0.37°、水和処理後の900℃加熱減量が8.5〜11.5重量%であることを特徴とするSCR触媒では、200℃以下での30%以上の高いNOx還元率が達成される。当該SCR触媒は、ZSM−5型ゼオライトと鉄含有水溶液とを混合した後、乾燥して得られた鉄を含有してなるZSM−5型ゼオライトを水蒸気濃度1容量%以下の乾燥空気雰囲気下、700〜900℃で焼成を行うことによって製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤の存在下で自動車排ガス中の窒素酸化物を浄化するのに利用される、鉄及びMFI型ゼオライトからなるSCR触媒及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、NOx還元触媒、特にアンモニアを還元剤として用いるNOx還元触媒(一般にSCR触媒といわれる選択的接触還元“Selective catalytic reduction”の略)に用いられるゼオライトとして知られている。(特許文献1参照)
ゼオライトを用いたSCR触媒は、高温水蒸気雰囲気下での耐久処理(以下、水熱耐久処理という)後において、NOx還元性能が低下し、特に300℃以下の低温活性での劣化が大きく、排ガス温度が低い条件下で使用することができなかった。このようなゼオライトを用いたSCR触媒の水熱耐久処理後における性能低下は、ゼオライトの耐熱水性が不十分であることが主な原因と考えられるが、特に低温活性が低下してしまう原因はこれまで十分に解明されていなかった。
【0003】
ゼオライトの耐熱水性を向上させる方法としてはSiO/Alモル比を高めること、或いは結晶径を大きくすることが知られている(特許文献2、3参照)。しかし、SiO/Alモル比を大きくした場合には固体酸即ち触媒活性点が少なくなり、また結晶径を大きくした場合には触媒における拡散速度が低下し、温度が時間とともに変化するような過渡的な条件下での触媒特性には不利になり、SCR触媒用途においては十分な解決にはならなかった。
【0004】
これまでZSM−5型ゼオライトを用いたSCR触媒の性能向上についていくつかの提案がなされている。例えば、還元雰囲気、不活性雰囲気で焼成を行ない、ゼオライトに常磁性の鉄(III)イオンを担持させることで、低温域から活性の高い触媒を製造する方法が提案されている(特許文献4)。しかしながら、これは水熱耐久処理後の性能が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2904862号公報
【特許文献2】特開平09−038485号公報
【特許文献3】特開平11−228128号公報
【特許文献4】特開2007−222742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、NOx還元性、特に水熱耐久処理後での低温におけるNOx還元性能が高いSCR触媒、及びその簡便な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、ZSM−5型ゼオライトを用いたSCR触媒、特に水熱耐久処理後におけるSCR触媒の低温でのNOx還元性能について鋭意検討を重ねた結果、ゼオライトに鉄を担持した後に水蒸気濃度1容量%以下の乾燥空気雰囲気下で高温焼成処理を行い、特定の結晶状態及び表面状態とすることにより、ゼオライトと鉄の相互作用を高めることができ、低温、特に200℃以下でのNOx還元性能を極めて高くすることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
以下、本発明のSCR触媒について説明する。
【0009】
本発明のSCR触媒は鉄を含有してなるZSM−5型ゼオライトから構成される。これにより、ZSM−5型ゼオライトと鉄の相互作用が発現して、このSCR触媒は優れた触媒活性を呈する。ゼオライトと鉄の相互作用の詳細は明らかではないが、ゼオライトの構造欠陥(シラノールまたはヒドロキシルネストなどと呼ばれる)への鉄の配位、またはゼオライト表面のシラノールと酸化鉄、および水酸化鉄の縮合反応等により発現するためと考えられる。
【0010】
本発明のSCR触媒はX線結晶回折(051)面の半値幅(FWHM)が0.33〜0.37°であることを必須とする。
【0011】
半値幅(FWHM)は結晶の状態を表す指標であり、この値から結晶の規則性、すなわち構造欠陥の多寡を判断することができる。この値が大きいほど結晶の規則性は低く、結晶中に欠陥が多く生成していることを示しており、この欠陥部位と鉄との相互作用が強く発現し、水熱処理後での触媒活性が向上するものと考えられる。一方、半値幅(FWHM)が著しく大きい場合はゼオライト構造自体の崩壊が進み過ぎており、触媒活性は著しく低下すると考えられる。
【0012】
従って、半値幅(FWHM)が0.33°未満であるものは構造欠陥が少なく、鉄とZSM−5型ゼオライトの相互作用が十分でないため、熱水処理後での触媒活性が低くなり、0.37°を超えるとゼオライト構造自体の崩壊が著しく進み過ぎ、触媒活性が低くなる。
【0013】
本発明のSCR触媒は水和処理後の900℃加熱減量が8.5〜11.5重量%であることを必須とする。
【0014】
ここで、水和処理をしたゼオライトの加熱減量とは、所定温度でSCR触媒を加熱したときのSCR触媒の重量減少率であり、900℃加熱減量とは900℃の加熱処理におけるSCR触媒の重量減少率である。加熱減量は、吸着水分量および結晶構造中のシラノール部位の脱水縮合により生成する水分量を反映する。そのため、加熱減量は水分の吸着サイトでもある表面シラノール量の多少を判断する指標として用いることができる。この値が小さいほどシラノールと鉄の反応が進んでおり、水熱処理後での触媒活性が向上すると考えられる。一方、低すぎる場合はその表面シラノールが十分反応しておらず、鉄との反応が十分進んでいないため、SCR触媒活性は低くなると考えられる。
【0015】
従って、水和処理後の900℃加熱減量が8.5重量%未満であるものはゼオライト構造自体の崩壊が著しく進んでおり、触媒活性が低く、SCR触媒に適さない。一方、11.5重量%を超えるゼオライトでは、その表面シラノールが十分反応しておらず、鉄との反応が十分進んでいないため、熱水処理後の触媒活性が低い。
【0016】
本発明において、SCR触媒のSiO/Alモル比は特に限定されるものではないが、触媒活性、骨格構造安定の面から25〜45であることが好ましい。また、平均SEM粒子径も特に限定されないが、ゼオライトの熱安定性、及び金属の分散担持、製造の容易さから0.5〜1.1μmであることが好ましい。更に、鉄の含有量は2.5〜3.5重量%であることがSCR触媒活性向上の為、好ましい。
【0017】
本発明のSCR触媒は、鉄を含有してなるZSM−5型ゼオライトを含んでなるものであるが、鉄以外に周期律表のVIII族、IB族の元素群の金属(つまり、Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt,Cu,Ag及びAu)、希土類金属、チタニア、ジルコニアを助触媒成分として付加的に加えることもできる。
【0018】
担持方法として、イオン交換法、含浸担持法、蒸発乾固法、沈殿担持法、物理混合法、骨格置換法等の方法を採用することができる。金属担持に用いる原料も硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、錯塩、酸化物、複合酸化物など可溶性、不溶性のものがいずれも使用できる。
【0019】
本発明のSCR触媒は、700℃、20時間、10容量%水素雰囲気下の水熱耐久処理後に、反応温度200℃でのNOx還元率が30%以上であることがより好ましい。
【0020】
水熱耐久処理後のSCR触媒において、反応温度200℃でのNOx還元率はSCR触媒で重要とされる低温活性、水熱耐久性を判断する指標である。
【0021】
本発明でいう水熱耐久処理とは、水蒸気を10容量%含む空気流通下において温度700℃、20時間、ガス流量/ゼオライト容量比100倍/分で処理することをいう。従来からSCR触媒は水熱耐久処理の性能で評価されることが一般的であるが、その水熱耐久処理としては、特に規格化されたものはない。上記の水熱耐久試験条件はSCR触媒の水熱耐久処理条件として一般的に用いられる条件の範疇であり、特に特殊な条件ではない。
【0022】
なお、ZSM−5型ゼオライトに限らず、ゼオライトは600℃以上における熱的なダメージは指数関数的に増大するため、700℃で20時間の水熱耐久処理は、650℃であれば100〜200時間以上、800℃であれば数時間の処理に相当するものである。
【0023】
本発明のSCR触媒は、シリカ、アルミナ及び粘土鉱物等のバインダーと混合し成形して使用することもできる。成形する際に用いられる粘土鉱物として、カオリン、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ベントナイト、アロフェン、セピオライトが例示できる。
【0024】
本発明のSCR触媒は排ガス浄化用触媒として高い性能を有する。
【0025】
本発明のSCR触媒はゼオライトと遷移金属の相互作用を熱処理により高めることで、水熱処理後に特に低温で高いNOx分解性を発揮するものであり、窒素酸化物を含む排ガスと接触させることにより、高度に排ガス浄化することができる。
【0026】
本発明で浄化される窒素酸化物は、例えば一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素、一酸化二窒素、及びそれらの混合物が例示される。好ましくは一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素である。ここで本発明が処理可能な排ガスの窒素酸化物濃度は限定されるものではない。
【0027】
また排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていても良い。具体的には、本発明の方法ではディーゼル自動車、ガソリン自動車、ボイラー、ガスタービン等の多種多様の排ガスから窒素酸化物を浄化することができる。
【0028】
本発明のSCR触媒は還元剤の存在下で窒素酸化物を浄化するものである。
【0029】
還元剤としては該排ガス中に含まれる炭化水素、一酸化炭素、水素等を利用することができ、更には必要に応じて適当な還元剤を排ガスに添加して共存させても良い。排ガスに添加される還元剤は特に限定されないが、アンモニア、尿素、有機アミン類、炭化水素、アルコール類、ケトン類、一酸化炭素、水素等又はそれらの任意の混合物が挙げられ、特に窒素酸化物の浄化効率をより高めるためには、特にアンモニア、尿素、有機アミン類又はそれらの任意の混合物が好ましく用いられる。
【0030】
これらの還元剤により、窒素酸化物は無害な窒素に転化され、排ガスを処理することが可能となる。
【0031】
これらの還元剤の添加方法は特に限定されず、還元成分をガス状で直接添加する方法、水溶液などの液状を噴霧し気化させる方法、噴霧熱分解させる方法等を採用することができる。これらの還元剤の添加量は、十分に窒素酸化物が浄化できるように任意に設定することができる。
【0032】
本発明の窒素酸化物の浄化方法において、SCR触媒と排ガスを接触させる際の空間速度は特に限定されないが、好ましい空間速度は体積基準で500〜50万hr−1であり、より好ましくは2000〜30万hr−1である。
【0033】
次に、本発明のSCR触媒の製造方法について説明する。
【0034】
本発明のSCR触媒は、例えば、ZSM−5型ゼオライトと鉄含有水溶液とを混合した後、乾燥して得られた鉄担持ZSM−5型ゼオライト乾燥物を水蒸気濃度1容量%以下の雰囲気下、700〜900℃で焼成を行うことにより製造することができる。
【0035】
従来、酸点が必要な触媒においては、その骨格構造の保持、固体酸の保持のため、脱アルミニウム(Al)を抑制する必要があり、700〜900℃のような高温での乾燥空気による焼成は行なわれていなかった。担持鉄塩の分解やゼオライト中の水分を脱離する活性化処理は骨格構造、固体酸保持のため、100〜500℃で行なわれることが一般的であった。もしくは、10容量%を超えるような水蒸気雰囲気下で骨格構造を保持しつつ、強すぎる活性を抑えるための固体酸低減を目的とする脱アルミニウム処理や、活性な金属状態にするための還元雰囲気や不活性雰囲気での焼成が通常であった。本発明はこれまで行なわれていなかった乾燥空気雰囲気での高温処理がSCR触媒の耐久処理後の活性の改善に有効であることを見出したものである。
【0036】
本発明の方法では、鉄を含有させた後に焼成を行なう必要があり、先に鉄を含有させる前にZSM−5型ゼオライトの焼成を行なうと本発明における鉄とZSM−5型ゼオライトの相互作用が発揮されず、活性が低下する。
【0037】
従来、水熱処理や熱処理を施してゼオライトを安定化した後に金属を含有させる方法も提案されているが、これらの方法はZSM−5型ゼオライトの骨格構造の耐久性を向上することはできるが、鉄とZSM−5型ゼオライトの相互作用を向上するものではなく、本発明のSCR触媒活性は得られない。鉄の分散性が低下し、活性が低下するためである。
【0038】
本発明のSCR触媒の製造における焼成雰囲気は乾燥空気であることを必須とする。還元雰囲気、不活性雰囲気で焼成をする方法も提案されているが、鉄が還元されるため、酸化鉄とZSM−5型ゼオライトの相互作用が進まず、耐久処理後、触媒活性が低下する。また、理由は明らかでは無いが、空気焼成に比べてゼオライト構造の崩壊が進みやすく、半値幅(FWHM)が大きくなりすぎ、耐久後活性が低下する。
【0039】
また、本発明のSCR触媒の製造における焼成時の水蒸気濃度は、1容量%以下で行なうことを必須とする。1容量%以下で行なうことで、鉄とゼオライトの相互作用を阻害する水蒸気による加水分解反応を抑制できる。1容量%を超える水蒸気濃度では、水蒸気による鉄の凝集が促進され、水熱処理後の触媒活性は低下する。
【0040】
本発明のSCR用触媒の製造における焼成温度は700〜900℃で行なうことを必須と700℃未満では鉄とZSM−5型ゼオライトとの相互作用の促進が十分に進まず、本発明の触媒活性を得ることができず、一方で900℃を超えるとZSM−5型ゼオライトの結晶崩壊が著しく進行し、触媒活性が低下する。特に800〜900℃で焼成を行なうことが好ましい。
【0041】
本発明の方法における焼成時間は特に限定されるものではないが、焼成時間が短すぎると鉄とZSM−5型ゼオライトの相互作用が十分に進行しないため、1時間以上保持することが好ましい。
【発明の効果】
【0042】
本発明の鉄を含有してなるZSM−5型ゼオライトを含んでなるSCR触媒は、水熱蒸気含有雰囲気下の高温での耐久処理後もSCR触媒性能、特に低温でのNOx還元性に優れる。
【実施例】
【0043】
{X線による半値幅(FWHM)の測定}
通常用いられるCu−Kα線源を用いる粉末X線結晶回折により、2θ=23〜24°付近に現れるメインピークを使用して半値幅(FWHM)を求めた。
【0044】
(水和処理)
塩化アンモニウムの飽和水溶液を下部に充填したデシケーター内に処理物を置き、真空ポンプにて内部を15Torr以下まで減圧した後、減圧を止め、内部を閉鎖したまま、12時間以上静置することにより水和処理を行った。
【0045】
(水和処理後の900℃加熱減量の測定)
水和処理を行なった測定物をるつぼに入れ重量を測定した後、マッフル炉にて乾燥空気流通下で室温から900℃まで3時間かけて昇温し、900℃で5時間保持した後、シリカゲルを充填したデシケーター内で室温まで十分冷却を行い、その重量を測定することにより900℃加熱減量を求めた。
【0046】
即ち、加熱減量(重量%)=(加熱前の測定物重量−加熱後の測定物重量)/加熱前の測定物重量×100で求めた。正確な加熱減量を求めるために、放置している間に水分吸着量が変わらないようにするため、水和処理後に速やかに測定物の重量の測定を行った。
【0047】
(水熱耐久処理条件)
SCR触媒を以下の雰囲気下で処理した。
【0048】
温度 :700℃,
時間 :20時間,
ガス中水分濃度 :10容量%,
ガス流量/ゼオライト容量比 :100倍/分。
【0049】
(NOx還元率の測定)
以下の条件のガスを所定の温度で接触させた場合の窒素酸化物の還元率をNOx還元率とした。SCR触媒は一般的に還元分解するNOxガスと還元剤のアンモニアを1:1で含有するガスを用いて評価することが一般的である。本発明で用いたNOx還元条件は、通常SCR触媒のNOx還元性を評価する一般的な条件の範疇に入るものであり、特に特殊な条件ではない。
【0050】
本発明の評価で採用した窒素還元条件:
処理ガス組成 NO 200ppm,
NH 200ppm,
10容量%,
O 3容量%,
残り Nバランス,
処理ガス流量 1.5リットル/分,
処理ガス/触媒容量比 1000/分。
【0051】
(平均SEM粒子径)
平均SEM粒子径は一般的なSEM観測で求めることができる。本願でのSEM粒子径はレーザー回折散乱式粒子径・粒度分布測定装置や、遠心沈降式粒子径粒度分布測定装置で測定される凝集粒子径ではなく、それを構成する一次粒子径のことをさす。倍率10000倍でSEM観測を行い、視野内の粒子50個を無作為に選び、その粒子径をそれぞれ測定し、その個数平均径を算出し、平均SEM粒子径とした。
【0052】
観測倍率:10000倍,
測定個数:50個,
算出方法:個数平均径。
【0053】
実施例1(触媒1)
純水4.61gに硝酸第二鉄九水和物(キシダ化学製)3.48gを溶解させ、硝酸第二鉄水溶液を作製した。乳鉢を用いてZSM−5型ゼオライト(東ソー製:HSZ−830NHA)15g(乾燥重量)と該硝酸鉄水溶液を10分間均一となるよう良く混合した後、熱風式棚段乾燥機を用いて110℃で24時間乾燥し、鉄担持ZSM−5型ゼオライト乾燥物を得た。
【0054】
該乾燥物8g(有姿重量)を磁性皿にいれ電気式マッフル炉にて焼成を行なった。乾燥空気(水蒸気濃度0.1容量%)を2.0L/分で吹き込みながら194℃/時間の昇温速度で室温から800℃まで昇温し、800℃で1時間保持し焼成を行なった。室温まで冷却した後に該鉄担持ZSM−5型ゼオライトを取り出し、触媒1を得た。
【0055】
触媒1のX線結晶回折(051)面の半値幅(FWHM)は0.34°であり、水和処理後の900℃加熱減量が9.8重量%であった。組成をICP分析した結果、鉄の含有量が3.2重量%であり、SiO/Alモル比=28であった。また、平均SEM粒子径は0.8μmであった。
【0056】
又、700℃、20時間、10容量%水蒸気雰囲気下の水熱耐久処理後におけるNOx還元率は反応温度200℃で32%であった。
【0057】
比較例1(比較触媒1)
238℃/時間の昇温速度で室温から500℃まで昇温し、500℃で1時間保持し焼成を行なった以外は実施例1と同様にして比較触媒1を得た。
【0058】
比較触媒1のX線結晶回折(051)面の半値幅(FWHM)は0.32°であり、水和処理後の900℃加熱減量が11.9重量%であった。組成をICP分析した結果、Fe含有量は3.1重量%であり、SiO/Alモル比=28であった。また、平均SEM粒子径は0.8μmであった。
【0059】
又、700℃、20時間、10容量%水蒸気雰囲気下の水熱耐久処理後におけるNOx還元率は反応温度200℃で18%であった。
【0060】
比較例2(比較触媒2)
鉄担持ZSM−5型ゼオライト乾燥物3gを石英反応管と管状炉を用いて窒素雰囲気で焼成を実施した以外は、実施例1と同様にして比較触媒2を得た。
【0061】
比較触媒2のX線結晶回折(051)面の半値幅(FWHM)は0.38°であり、水和処理後の900℃加熱減量が12.6重量%であった。組成をICP分析した結果、Fe含有量は3.1重量%であり、SiO/Alモル比=28であった。また、平均SEM粒子径は0.8μmであった。
【0062】
又、700℃、20時間、10容量%水蒸気雰囲気下の水熱耐久処理後におけるNOx還元率は反応温度200℃で25%であった。
【0063】
触媒1、比較触媒1及び比較触媒2のX線結晶回折(051)面の半値幅(FWHM)、水和処理後の900℃加熱減量、700℃、20時間、10容量%水蒸気雰囲気下の水熱耐久処理後におけるNOx還元率を以下の表1に示す。
【0064】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のSCR触媒は、還元剤の存在下で自動車排ガス中の窒素酸化物を浄化するのに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄を含有してなるZSM−5型ゼオライトからなり、X線結晶回折(051)面の半値幅(FWHM)が0.33〜0.37°、水和処理後の900℃加熱減量が8.5〜11.5重量%であることを特徴とするSCR触媒。
【請求項2】
SiO/Alモル比が25〜45であり、鉄を2.5〜3.5重量%含み、且つ、平均SEM粒子径が0.5〜1.1μmであることを特徴とする請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項3】
ZSM−5型ゼオライトと鉄含有水溶液とを混合した後、乾燥して得られた鉄担持ZSM−5型ゼオライト乾燥物を水蒸気濃度1容量%以下の乾燥空気雰囲気下、700〜900℃で焼成を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のSCR触媒の製造方法。
【請求項4】
水蒸気濃度が1容量%以下、且つ700〜900℃での焼成における保持時間が1時間以上であることを特徴とする、請求項3に記載のSCR触媒の製造方法。
【請求項5】
窒素酸化物及び還元剤を含有する気体を請求項1又は請求項2に記載のSCR触媒に接触させ、窒素酸化物を還元させて窒素ガスにして除去することを特徴とする窒素酸化物の還元除去方法。

【公開番号】特開2012−86197(P2012−86197A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237432(P2010−237432)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】