説明

高芳香族炭化水素油の製造方法

【課題】流動接触分解残油(CLO)を、軽質で、かつ芳香族分の含有量が高いガソリン留分や灯軽油留分などの炭化水素油に転換する方法を提供する。
【解決手段】直留残油(AR)と流動接触分解残油(CLO)又は重質サイクル油(HCO)とを含む原料油を、重油直接脱硫装置(RH)において水素化脱硫及び水素化分解して得られた脱硫重油(DSAR)を、重油流動接触分解装置(RFCC)または流動接触分解装置(FCC)で接触分解することにより高芳香族炭化水素油を製造する、高芳香族炭化水素油の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高芳香族炭化水素油の製造方法に関し、さらに詳しくは、流動接触分解残油(CLO)等を原料油として用いた高芳香族炭化水素油の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ガソリンを始めとして、高オクタン価ガソリン基材の需要は年々増加しているため、重質軽油留分あるいは常圧残油留分等を分解して、高オクタン価ガソリン基材を増産する技術の開発が望まれている。
一方、中国、インド等におけるパラキシレンの需要増加に対し、ベンゼン、トルエン、キシレン(BTX)等の一環芳香族化合物を多く含有する石油留分は、そのための原料として有用であり、石油化学原料としての芳香族分含有量の多い留分の増産技術の開発も望まれている。
他方、重油は年々需要が激減しており、バンカーC重油などに使用されている流動接触分解残油(CLO)は、特にその利用に関して、早急に有効な方策が望まれている。さらに、流動接触分解残油(CLO)は、重油流動接触分解装置(RFCC)または流動接触分解装置(FCC)からガソリン留分や灯軽油留分を製造する際の連産品であることから、この有効利用方法が見出せないとこれらの装置の稼動に支障をきたしかねないという問題もある。
【0003】
ガソリン留分以外の留分を水素化分解して高オクタン価ガソリン基材を製造する方法として、軽質サイクル油(LCO)やコーカー軽油を原料とし、ZSM−5を触媒として用いて接触分解させる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法は、転化率は高いものの、ガソリン留分の選択率が低く実用的ではない。
また、上記方法と同様の原料をモルデナイト、フォージャサイト等のアルミノシリケートを用いて接触分解する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この方法は、得られるガソリン留分のオクタン価は高いものの、ガソリン留分の収率が低い。
さらに、重質油をチタン含有フォージャサイト、アルミノシリケート等により接触分解させ、ガソリン留分及び灯軽油留分を製造する方法が提案されている(特許文献3、特許文献4参照)。しかしながら、この方法では、ガソリン留分及び灯軽油留分の収率は高いが、得られるガソリン留分のオクタン価についての詳細は不明であり、灯軽油留分の製造が主目的であることから、得られるガソリン留分はリサーチオクタン価が低く、ガソリン基材としては好ましくないものであることが推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−149386号公報
【特許文献2】特開昭61−283687号公報
【特許文献3】特許第3341011号公報
【特許文献4】特開2003−226519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、需要が年々激減している重油、特に用途が限定される流動接触分解残油(CLO)等を、軽質でかつ芳香族分の含有量が高いガソリン留分や灯軽油留分などの炭化水素油に転換する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
〔1〕直留残油(AR)と流動接触分解残油(CLO)及び/又は重質サイクル油(HCO)とを含む原料油を、重油直接脱硫装置(RH)において水素化脱硫及び水素化分解して得られた脱硫重油(DSAR)を、重油流動接触分解装置(RFCC)または流動接触分解装置(FCC)で接触分解することにより高芳香族炭化水素油を製造する、高芳香族炭化水素油の製造方法、
[2]原料油中における前記流動接触分解残油(CLO)及び/又は重質サイクル油(HCO)の割合が1〜30容量%である、上記[1]記載の高芳香族炭化水素油の製造方法、
【0007】
[3]前記流動接触分解残油(CLO)中に含まれる泥水分が100質量ppm以下である、上記[1]又は[2]に記載の高芳香族炭化水素油の製造方法、
[4]前記流動接触分解残油(CLO)及び/又は重質サイクル油(HCO)が、直留残油(AR)のみからなる原料油を重油直接脱硫装置(RH)で水素化処理して得られた脱硫重油(DSAR)を、重油流動接触分解装置(RFCC)または流動接触分解装置(FCC)で接触分解して得られた流動接触分解残油(CLO)及び/又は重質サイクル油(HCO)を含有する、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の高芳香族炭化水素油の製造方法、
[5]前記高芳香族炭化水素油がガソリン留分である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の高芳香族炭化水素油の製造方法、及び
[6]前記直留残油(AR)が減圧残渣油(VR)を含有する、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の高芳香族炭化水素油の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、直留残油(AR)と流動接触分解残油(CLO)及び/又は重質サイクル油(HCO)とを含む原料油を、重油直接脱硫装置(RH)経由で重油流動接触分解装置(RFCC)または流動接触分解装置(FCC)に通油することによって、芳香族分の含有量が高いガソリン留分や灯軽油留分などの炭化水素油に転換することができ、これにより、ガソリン留分においてはそのリサーチオクタン価(RON)が高くなり、また、芳香族分が高いガソリン留分や灯軽油留分はBTXを収率良く得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の高芳香族炭化水素油の製造方法は、直留残油(以下、「AR」と称することがある)と流動接触分解残油(以下、「CLO」と称することがある)及び/又は重質サイクル油(以下、「HCO」と称することがある)とを含む原料油を、重油直接脱硫装置(以下、「RH」と称することがある)において水素化脱硫及び水素化分解して得られた脱硫重油(以下、「DSAR」と称することがある)を、重油流動接触分解装置(以下、「RFCC」と称することがある)または流動接触分解装置(以下、「FCC」と称することがある)で接触分解することにより高芳香族炭化水素油を製造するものである。
【0010】
本発明において、原料油として使用されるARは、原油の常圧蒸留装置から得られる残渣油であるが、重油削減の点から、減圧残渣油(VR)と混合して用いることができ、その含有量は、上記観点から、好ましくは、ARに対して5〜50容量%である。
【0011】
ARと共に用いられるCLOまたはHCOは、RFCCもしくはFCCから得られたエフルエントを蒸留にて分離して得られたものであるが、効率的に分解を行う点から、前記AR単独由来のDSARを、RFCCもしくはFCCの原料油の少なくとも一部として用いて、後述のRFCCもしくはFCCと同様の条件で得られたCLOまたはHCOを用いることが好ましい。
【0012】
本発明において、上記CLOまたはHCOは、沸点330℃以上の流動接触分解処理後の残油であることが好ましく、沸点350℃以上の留分が50容量%以上であるものがより好ましい。
本発明においては、ARと共に用いられるCLOまたはHCO中に含まれる泥水分は、RHの触媒層への堆積による差圧の発生を防止し、偏流によるホットスポットの発生を防止する観点から、100質量ppm以下であることが好ましく、
70質量ppm以下であることがより好ましく、50質量ppm以下であることが更に好ましい。
上記CLOまたはHCOは、その芳香族分含有量が、一般に60〜95質量%であるが、本発明においては、70〜80質量%であることが好ましい。また、硫黄分含有量は、一般に0.3〜1.1質量%である。
【0013】
CLO及び/又はHCOの原料油中における含有割合は、効率的に分解を行う点から、好ましくはARとCLOまたはHCOとの合計量の1〜30容量%、より好ましくは3〜20容量%、更に好ましくは3〜10容量%である。CLO及び/又はHCOの含有量が多すぎると、流動接触分解装置において、コークが多く生成し、流動接触分解触媒の再生塔への負荷が高くなり、触媒循環量が低下し、分解率が低下することがあり、更には、通油量を低下せざるを得なくなりガソリン留分等の得量が低下してしまうことがある。結果的に有用なガソリン、灯軽油留分が十分得ることが出来なくなる場合がある。また、上記含有量が少なすぎると、所望の効果が得られないことがある。
【0014】
原料油中に含まれる硫黄分の量は特に限定されないが、通常は、0.3〜5質量%程度である。
CLO及び/又はHCOのRHへの導入方法については、特に制限はなく、ARと別々に導入してもよく、また、予めARと混合した原料油として導入してもよい。本発明においては、RHにおける水素化脱硫および水素化分解反応の均一性を保つ点から、予めARと混合した原料油として導入することが好ましい。
【0015】
本発明においては、上記ARとCLO及び/又はHCOを含む原料油を、RHにおいて水素化脱硫及び水素化分解してDSARを得る。
水素化脱硫及び水素化分解は、触媒の存在下で行い、反応温度、圧力、液空間速度等の反応条件を最適化することにより必要とされる脱硫率を達成することができる。水素化脱硫及び水素化分解は、通常330〜420℃、好ましくは380〜420℃の温度条件下で通常10〜22MPa、好ましくは13〜20MPaの水素加圧下で行われる。液空間速度(LHSV)は通常0.1〜1.0h-1、水素/油比は1,000〜10,000scfbの範囲で行われる。
【0016】
水素化脱硫及び水素化分解は、第一工程として水素化脱金属処理工程、第二工程として水素化脱硫処理工程の2工程を含むことが好ましい。原料重質油は、初めに第一工程である水素化脱金属処理工程で、水素化脱金属処理され、水素化脱硫触媒の活性低下の原因となるバナジウム、ニッケルなどの重金属が水素化され脱金属される。次いで水素化脱金属処理工程で処理された留出油は、第二工程である水素化脱硫処理工程に送られ水素化脱硫処理される。この時、第一工程と第二工程は同一装置内で行うこともできるが、別装置で行っても良い。
本発明においては、触媒の劣化抑制の点から、前記RHの上流に、別途OCR等の脱金属装置を付帯して有することが好ましい。
【0017】
上記第一工程と第二工程の機能分担を実現させる具体的手段としては、触媒担体の細孔構造と担持金属量とをパラメーターとして、例えば、第一工程においては、担体の細孔径を大きく(又は金属担持量を少なく)する方法により、触媒の細孔容積を大きくして、分子の大きな金属を捕捉して、第二工程では表面積の大きい(細孔の径が小さく、数の多い)担体に、活性金属をより多く担持した触媒を用いて、主として硫黄化合物の水素化脱硫を行なう。これら各工程は、前記のとおりの主たる機能分担を有するが、全体としてはARとCLO及び/又はHCOを含む原料重質油の水素化精製処理が行われる。
【0018】
水素化脱硫及び水素化分解に用いる触媒は、水素化脱金属能、水素化脱硫能を持った公知の触媒をいずれも用いることができ、例えば、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライトあるいはこれらの混合物等の担体に、周期表第V〜VIII族金属、あるいはこれらの硫化物、酸化物を担持した触媒を用いることができる。上記周期表第V〜VIII族の金属の金属としては、水素化脱硫に適した活性金属という点から、好ましくはニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン等が用いられる。本発明においては、重質油に対してより水素化脱硫、水素化分解および水素化能の優れている点から、触媒として、アルミナにニッケルおよびモリブデンを担持したものが好ましく用いられる。
上記水素化脱硫及び水素化分解で用いられる反応器としては従来公知の様式の反応器、例えば固定床、移動床をいずれも使用することができ、ダウンフロー式、
アップフロー式のいずれであってもよい。
【0019】
RHにおける水素化脱硫及び水素化分解で得られた反応生成物は、気液分離装置により気液を分離し、液相は蒸留等の分離操作によりナフサ留分、灯油留分、軽油留分、重油留分等の所望の留分に分留し回収する。このとき得られた重油留分であるDSARをRFCCもしくはFCCの原料油として用いる。
【0020】
上記RHにおける水素化脱硫及び水素化分解により得られるDSARは、その脱硫率(HDS)、脱窒素率(HDN)、脱バナジウム率(HDV)、脱ニッケル率(HDNi)、脱残炭率(HDCCR)、脱アスファルテン率(HDAs)がそれぞれ、80〜90%以上、35〜40%以上、75〜80%以上、65〜75%以上、50〜55%以上、60%以上であることが好ましい。これらは、いずれもRHの原料油と生成油中の各成分量から、各成分の除去割合として算出される。
得られたDSARは、軽油等のいわゆる中間留分となり得る留分は、極力軽油等に活用するという点から、沸点が330℃以上の重質留分であることが好ましく、その芳香族分含有量は、50〜90質量%であることが好ましく、硫黄分含有量は0.2〜0.5質量%であることが好ましい。
【0021】
上記RHで水素化脱硫及び水素化分解されて得られたDSARは、次いで、RFCCもしくはFCCに導入され、流動接触分解される。
本発明の高芳香族炭化水素油の製造方法においては、RFCCもしくはFCC内で、DSARの分解反応と脱硫反応を同時に行わせる。RFCCもしくはFCCの原料油として、DSARとともに、本発明の効果を損なわない範囲で、重質軽油、減圧軽油、脱瀝軽油、その他重質留分に富んだ重質油を用いることもできる。また、重質軽油、減圧軽油等を間接脱硫装置(VH)にて脱硫処理して得られる脱硫重質軽油(VHHGO)、脱硫減圧軽油(VHVGO)、溶剤脱瀝装置(SDA)から得られる脱瀝油(DAO)なども併用することができる。
【0022】
本発明の高芳香族炭化水素油の製造方法におけるRFCCもしくはFCCの処理条件は、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、例えば、反応温度480〜650℃の範囲が好ましく、480〜550℃の範囲がより好ましい。また、反応圧力は0.02〜5MPaの範囲が好ましく、0.2〜2MPaの範囲がより好ましい。反応温度および反応圧力が上記範囲内であると、流動接触分解触媒の分解活性、接触分解ガソリンの脱硫率が高く好ましい。
【0023】
本発明の高芳香族炭化水素油の製造方法においては、得られる高芳香族炭化水素油として、ガソリン留分や灯軽油留分などの炭化水素油が挙げられるが、ガソリン留分としては、炭素数が5〜沸点220℃の留分として得られる。その芳香族分含有量は、BTX等の有用な一環芳香族化合物を多く含有するという点から18〜30容量%であることが好ましく、23〜30容量%であることが更に好ましい。硫黄分含有量としては、低硫黄分のガソリン基材であるという点から20質量ppm以下であることが好ましく、15質量ppm以下であることがより好ましく、10質量ppm以下であることがさらに好ましい。そのリサーチオクタン価(RON)は、高RONのガソリン基材になるという点から90〜95であることが好ましい。その他、オレフィン含有量は40容量%以下、更には、30容量%であることが好ましい。
【0024】
また、軽油留分としては、沸点が190〜380℃の留分が好ましい。その芳香族分含有量は、40〜70容量%であることが好ましく、特に一環芳香族化合物や二環芳香族化合物であればより好ましく、硫黄分含有量としては、0.2〜0.5質量%であることが好ましく、0.2〜0.3質量%であることがより好ましい。
【実施例】
【0025】
次に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
なお、分解ガソリンの性状は次の方法に従って求めた。
[リサーチオクタン価(RON)]
JIS K 2280により測定した。
[パラフィン分含有量]
JIS K 2536−2により測定した。
[オレフィン分含有量]
JIS K 2536−2により測定した。
[ナフテン分含有量]
JIS K 2536−2により測定した。
[芳香族分含有量]
JIS K 2536−2により測定した。
【0026】
また、AR、CLOおよびDSARの性状は次の方法に従って求めた。
[ニッケル含有量]
石油学会規格JPI−5S−59−99に準拠して測定した。
[バナジウム含有量]
石油学会規格JPI−5S−59−99に準拠して測定した。
[残炭素含有量]
JIS K 2270−2により測定した。
[ドライスラッジ分含有量]
SMS 742に準拠して測定した。
[ヘプタン不溶解分含有量]
UOP 614に準拠して測定した。
[硫黄分含有量]
JIS K 2541−4に準拠して測定した。
[泥水分]
JIS K 2601−14により測定した。
[飽和分含有量]
IP469に準拠して測定した。
[芳香族分含有量]
IP469に準拠して測定した。
[レジン分含有量]
IP469に準拠して測定した。
[アスファルテン含有量]
IP143に準拠して測定した。
【0027】
比較例1
RHの触媒層の上段にアルミナ担体にニッケルおよびモリブデンを金属酸化物として触媒重量に対しそれぞれ2.5質量%、10.0質量%担持した脱金属触媒20質量%を充填し、中段に同様にアルミナ担体にニッケルおよびモリブデンを金属酸化物として触媒重量に対しそれぞれ3.0質量%、12.5質量%担持した脱硫触媒Aを40質量%充填し、さらに、下段にアルミナ担体にニッケルおよびモリブデンを金属酸化物として触媒重量に対しそれぞれ3.0質量%、13.3質量%担持した脱硫触媒Bを40質量%充填して、常圧蒸留装置から得られたAR(芳香族分含有量:63.9質量%、硫黄分含有量:3.25質量%)をRHに、液空間速度(LHSV)が0.2hr-1、触媒層平均温度(WAT)が390℃となる条件で通油した。通油して得たDSAR(芳香族分含有量:58.4質量%、硫黄分含有量:0.25質量%)をRFCCの原料油として、これに通油した。触媒は市販のUSY型ゼオライト含有FCC触媒を用いた。また、このときRFCCの反応出口温度(ROT)は、519℃、C(流動接触分解触媒)/O(油)が6.0であった。RFCC装置内の触媒活性は、ASTM基準の固定床マイクロ活性試験(Micro Activity Test)装置を使用して、クウェート原油由来の減圧軽油(KVGO)を原料油として用い、485℃、C/O=4.5の条件で測定した。結果は、60質量%の活性を示すものであった。得られたRFCCの生成油を蒸留設備にて分留し、炭素数5(C5)以上195℃以下の沸点範囲留分である分解ガソリンを得た。この結果、表2に示す性状のガソリンを得た。なお、AR、CLOおよびDSARの各性状を表1に示す。以下の各実施例についても同様。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例1
常圧蒸留装置から得られたAR(芳香族分含有量:63.9質量%、硫黄分含有量:3.25質量%)97容量%と重油流動接触分解装置(RFCC)由来のCLO(芳香族分含有量:72.9質量%、硫黄分含有量:0.94質量%、泥水分量:40質量ppm)3容量%をタンク内で混合し、原料油(芳香族分含有量:64.17質量%、硫黄分含有量:3.18質量%)を調製した。その後、比較例1と同じRHに、LHSVが0.2hr-1、WATが390℃となる条件で通油した。通油して得たDSAR(芳香族分含有量:58.9質量%、硫黄分含有量:0.28質量%)をRFCCの原料油として通油した。触媒は比較例1と同じ市販のUSY型ゼオライト含有FCC触媒を用いた。このとき、RFCCの反応出口温度(ROT)は、519℃、C/Oは6.0に調整した。比較例1と同様にRFCC装置内の触媒活性を、ASTM基準の固定床マイクロ活性試験(Micro Activity Test)装置を使用して、KVGOを原料油として用い、485℃、C/O=4.5の条件で測定した。結果は、60質量%の活性を示した。比較例1と同様にRFCCの生成油を蒸留設備にて分留し、C5以上195℃以下の沸点範囲である分解ガソリンを得た。その結果、表2に示すような性状のガソリンを得た。
【0030】
実施例2
常圧蒸留装置から得られたAR(芳香族分含有量:63.9質量%、硫黄分含有量:3.25質量%)95容量%とRFCC由来のCLO(芳香族分含有量:72.9質量%、硫黄分含有量:0.94質量%、泥水分量:40質量ppm)5容量%をタンク内で混合し、原料油(芳香族分含有量:64.35質量%、硫黄分含有量:3.13質量%)を調製した。その後、比較例1と同じRHに、LHSVが0.2hr-1、WATが390℃となる条件で通油した。通油して得たDSAR(芳香族分含有量:59.5質量%、硫黄分含有量:0.29質量%)をRFCCの原料油として通油した。触媒は比較例1と同じ市販のUSY型ゼオライト含有FCC触媒を用いた。RFCCの反応出口温度(ROT)は、519℃、C/Oが6.0に調整した。また、RFCC装置内の触媒活性は、ASTM基準の固定床マイクロ活性試験(Micro Activity Test)装置を使用して、KVGOを原料油として用い、485℃、C/O=4.5の条件で測定し、結果は、60質量%の活性を示した。得られたRFCCの生成油を蒸留設備にて分留し、C5以上195℃以下の沸点範囲である分解ガソリンを得た。その結果、表2に示す性状のガソリンを得た。
【0031】
実施例3
常圧蒸留装置から得られたAR(芳香族分含有量:63.9質量%、硫黄分含有量:3.25質量%)90容量%とRFCC由来のCLO(芳香族分含有量:72.9重量%、硫黄分含有量:0.94質量%、泥水分量:40質量ppm)10容量%をタンク内で混合し、原料油(芳香族分含有量:64.8質量%、硫黄分含有量:3.02質量%)を調製した。この原料油を比較例1と同じRHに、LHSVが0.2hr-1、WATが390℃となる条件で通油した。通油して得たDSAR(芳香族分含有量:60.4質量%、硫黄分含有量:0.29質量%)をRFCCの原料油として通油した。触媒は比較例1と同じ市販のUSY型ゼオライト含有FCC触媒を用いた。RFCCの反応出口温度(ROT)は、519℃、C/Oが6.0であった。また、RFCC装置内の触媒活性は、ASTM基準の固定床マイクロ活性試験(Micro Activity Test)装置を使用して、KVGOを原料油として用い、485℃、C/O=4.5の条件で測定し、60質量%の活性であることを確認した。比較例1と同様にRFCCの生成油を蒸留設備にて分留し、C5以上195℃以下の沸点範囲である分解ガソリンを得た。その結果、表2に示す性状のガソリンを得た。
【0032】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の製造方法によれば、需要が年々激減している重油、特に用途が限定される流動接触分解残油(CLO)を、軽質で、かつ芳香族分の含有量が高いガソリン留分や灯軽油留分などの炭化水素油に転換し、芳香族分の含有量が高い炭化水素留分(ガソリン留分、灯軽油留分)の製造に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直留残油(AR)と流動接触分解残油(CLO)及び/又は重質サイクル油(HCO)とを含む原料油を、重油直接脱硫装置(RH)において水素化脱硫及び水素化分解して得られた脱硫重油(DSAR)を、重油流動接触分解装置(RFCC)または流動接触分解装置(FCC)で接触分解することにより高芳香族炭化水素油を製造する、高芳香族炭化水素油の製造方法。
【請求項2】
原料油中における前記流動接触分解残油(CLO)及び/又は重質サイクル油(HCO)の割合が1〜30容量%である、請求項1記載の高芳香族炭化水素油の製造方法。
【請求項3】
前記流動接触分解残油(CLO)中に含まれる泥水分が100質量ppm以下である、請求項1又は2に記載の高芳香族炭化水素油の製造方法。
【請求項4】
前記流動接触分解残油(CLO)及び/又は重質サイクル油(HCO)が、直留残油(AR)のみからなる原料油を重油直接脱硫装置(RH)で水素化処理して得られた脱硫重油(DSAR)を、重油流動接触分解装置(RFCC)または流動接触分解装置(FCC)で接触分解して得られた流動接触分解残油(CLO)及び/又は重質サイクル油(HCO)を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の高芳香族炭化水素油の製造方法。
【請求項5】
前記高芳香族炭化水素油がガソリン留分である、請求項1〜4のいずれかに記載の高芳香族炭化水素油の製造方法。
【請求項6】
前記直留残油(AR)が減圧残渣油(VR)を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の高芳香族炭化水素油の製造方法。