説明

高誘電性エラストマー組成物

【課題】
高い比誘電率を示し、実用に耐えるアンテナを得るための高誘電性樹脂組成物が得られていない。
【解決手段】
エラストマーに高誘電性セラミックス粉末を配合してなる高誘電性エラストマー組成物であって、上記高誘電性セラミックス粉末は、−40℃ 〜 100℃の温度範囲において、25℃を基準とする該セラミックス粉末の比誘電率の温度係数α(単位:1/℃)が(−200〜100 )×10-6の範囲にあり、該高誘電性エラストマー組成物の比誘電率が 7 以上、誘電正接が 0.01 以下であり、上記高誘電性セラミックス粉末がチタン酸バリウム・ネオジム系セラミックス粉末である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高誘電性エラストマー組成物に関し、特に高周波通信機のアンテナ等高周波帯で使用される電子電気部品用高誘電性エラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、コードレスフォン、RFID等に用いるパッチアンテナ、電波望遠鏡やミリ波レーダ等のレンズアンテナ等の目覚しい普及、衛星通信機器の著しい発達に伴い、通信信号の周波数の高周波化および通信機器の一層の小型化が望まれている。
通信機器は、通信機器内部に組み込まれたアンテナ材料の比誘電率が高くなると、より一層の高周波化および小型化が図れる。比誘電率は、誘電体内部の分極の程度を示すパラメータである。従って、比誘電率の高いアンテナ材料を使用できれば、高周波化ひいては回路の短縮化および通信機器の小型化が図れる。
【0003】
従来、高誘電性エラストマーとしては、エラストマー中にチタン酸金属塩繊維状物および/または該チタン酸金属塩を非晶質酸化チタンが包み込んだ態様で複合一体化した複合繊維であって金属MとTiとのモル比が 1.005〜1.5 の範囲にある複合繊維を、合計重量を基準として 5〜80 重量%配合して高誘電率化を試みたものが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、過酸化物架橋されたエチレンプロピレンゴムなどのゴム 100 重量部に、室温から 90 ℃における比誘電率が 2000 以上のチタン酸バリウム系粉末 300〜500 重量部を配合し、比誘電率を 10 以上、好ましくは 20 以上とした高誘電率ゴム組成物が知られている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、エラストマーに複合繊維等を配合した例(特許文献1)では、エラストマーおよび複合繊維等の選定が困難で、かつ繊維状充填材の方向性により、成形体に異方性が生じるため、線膨張や誘電特性が不安定となり、高誘電率かつ低誘電正接の材料を得ることが困難であった。
また、高誘電率ゴム組成物(特許文献2)は、電力ケーブルの接続部、終端部等の電界不整部となりやすい箇所に配置されて電界緩和を行なうために用いられる絶縁物であり、チタン酸バリウム系粉末の特性として、誘電正接が大きいため、アンテナ材等の電子部品に適さないという問題がある。
【0006】
さらに、通信機器の使用態様が多様化するにつれ、低温から高温度まで電気的特性の変化の少ない通信機器が求められているが、従来の高誘電性エラストマー組成物を使用温度領域が広い電子部品に使用すると、電気的特性が大きく変化するという問題があった。
【特許文献1】特開平9−31244号公報
【特許文献2】特開2003−138067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、低温から高温度まで広い温度範囲にわたって、高い比誘電率を示し、かつ低誘電正接を有するアンテナを得るための高誘電性エラストマー組成物が得られていない点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高誘電性エラストマー組成物は、エラストマーに高誘電性セラミックス粉末を配合してなる高誘電性エラストマー組成物であって、上記高誘電性セラミックス粉末は、−40℃ 〜 100℃の温度範囲において、25℃を基準とする該セラミックス粉末の比誘電率の温度係数α(単位:1/℃)が(−200〜100 )×10-6の範囲にあることを特徴とする。
本発明において、比誘電率の温度係数α(1/℃)は、α=(εr( t )−εr( 25 ))/[( εr( 25 ))( t−25 )] で定義される値をいう。ここで、εr( t )は、−40℃〜100℃の範囲における任意の温度t℃での比誘電率を、εr( 25 )は 25℃での比誘電率をそれぞれ表す。
【0009】
また、高誘電性エラストマー組成物は、周波数 1 GHzおよび温度 25℃において、該組成物の比誘電率が 7 以上、誘電正接が 0.01 以下であることを特徴とする。
また、上記高誘電性セラミックス粉末がチタン酸バリウム・ネオジム系セラミックス粉末であることを特徴とする。
また、上記エラストマーが構成単位として非極性オレフィン単位を含むことを特徴とする。特に、上記エラストマーがエチレンプロピレンゴムであることを特徴とする。
また、周波数 100 MHz 以上の電気信号を取り扱うための電子部品材料に使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高誘電性エラストマー組成物は、エラストマーに、−40℃〜100℃の温度範囲において、該セラミックス粉末の比誘電率の温度係数α(単位:1/℃)が(−200〜100)×10-6 の範囲にある高誘電性セラミックス粉末を配合することにより、特にチタン酸バリウム・ネオジム系セラミックス粉末を使用することにより、従来の高誘電性エラストマー組成物に比較して、比誘電率の温度依存性の少ないエラストマー組成物が得られる。その結果、高周波通信機のアンテナ等高周波帯で広い温度範囲にわたって使用できる電子電気部品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
高誘電性エラストマー組成物をアンテナ材料として使用する場合、使用温度の変化に伴いエラストマー組成物の比誘電率が変化する。その結果、アンテナの共振周波数にズレが生じる。例えば、温度上昇に伴い、エラストマー組成物の比誘電率が低下した場合、アンテナの共振周波数は高周波側にシフトすることが知られている。このシフト量は、以下に示す式(1)〜(6)を参考にして計算することができる。
【0012】
パッチアンテナの場合、使用する波長をλとすれば、送受信部のパターン長さAは、下記の式(1)で表せる。
A=( 1/2 )×λ ・・・・・(1)
アンテナ材料の比誘電率をεrとすれば、アンテナ材料内を通過する波長λ0 は、波長短縮効果により、下記の式(2)で表せる。
λ0=(εr(-1/2)×λ ・・・・・(2)
従って、上記アンテナ材料を使用した場合、送受信部のパターン長さAは、下記の式(3)で表せる。
A=(εr(-1/2)×(1/2)×λ ・・・・・(3)
一方、周波数fは、Vを 300×106m/s とした場合、下記の式(4)で表せる。
f=V/λ ・・・・・(4)
(1)〜(4)の基本式を参考にパッチアンテナを設計した場合、使用周波数をf1、室温での比誘電率をε1、温度が△T変化した後の比誘電率をε2とした場合、アンテナの共振周波数f2は、下記の式(5)で表せる。
2=(ε12(1/2)×f1 ・・・・・(5)
温度変化を△Tとすれば、共振周波数のズレ△fは、下記の式(6)で表せる。
△f=f2−f1 ・・・・・(6)
【0013】
式(5)および式(6)から温度に対する比誘電率の変化が大きい場合、共振周波数のズレ△fも大きくなるため、実用上好ましくない。共振周波数が使用周波数に対して、±10 %変化した場合、アンテナとしての特性は大きく劣化するため好ましくない。
【0014】
上述したように、アンテナ材料としての高誘電性エラストマー組成物は、その比誘電率の温度係数αの小さいものが好ましい。
比誘電率の温度依存性の少ない高誘電性セラミックス粉末をエラストマーに配合することで、高誘電性エラストマー組成物の比誘電率の温度係数αを小さくすることができる。
本発明は、−200×10-6≦α≦100×10-6の範囲、好ましくは−100×10-6≦α≦30×10-6の範囲、より好ましくは−50×10-6≦α≦30×10-6の範囲にある高誘電性セラミックス粉末を使用することにより、高誘電性エラストマー組成物の比誘電率の温度係数αを、−1500×10-6<α<100×10-6、好ましくは−1200×10-6<α<50×10-6にすることができる。
高誘電性セラミックス粉末のαが−200×10-6より小さいと、アンテナ材料として用いた場合、使用周波数に対して共振周波数のズレが±10%より大きくなるため好ましくない。
【0015】
本発明に使用できる高誘電性セラミックス粉末としては、チタン酸金属塩で、Nd、La等の希土類を少なくとも1種類以上と、Ba、Sr、Ca、Mg、Co、Pd、Zn、Be、Cd、Bi等から選ばれた1種または2種以上の金属元素を配合したセラミックス粉末が好ましい。Nd、La等の希土類は、比誘電率の温度変化を小さくする温度特性の改善に寄与し、Ba、Sr等の金属元素は誘電率を高め、誘電正接を小さくするなど、誘電特性の向上に寄与する。好適な高誘電性セラミックス粉末としては、Ti−Ba−Nd−Bi系のチタン酸バリウム・ネオジム系セラミック粉末である。
【0016】
高誘電率かつ低誘電正接セラミック粉末の平均粒子径は 0.01〜100μm 程度が好ましい。平均粒子径が 0.01μm より小さい場合、粉末の取り扱いが困難であり好ましくない。 100 μm より大きい場合、成形体内での誘電特性のばらつきを引き起こすおそれがあるので好ましくない。より実用的な範囲は 0.1μm〜20μm 程度である。
また、高周波域に使用されるアンテナ等の電子部品材料は高誘電率かつ低誘電正接が求められており、周波数 1 GHzおよび温度 25℃において、比誘電率は 7 以上、誘電正接は 0.01 以下の高誘電性エラストマー組成物が好ましい。高誘電性エラストマー組成物の比誘電率が 7 よりも小さい場合、電子部品材料内を伝播する波長の短縮効果が少ないため、製品の小型化ができないので好ましくない。誘電正接が 0.01 よりも大きい場合、電子部品材料内の損失が大きくなるので好ましくない。この電子部品材料は 100 MHz 以上の高周波帯で使用できる。
【0017】
本発明の高誘電性エラストマー組成物には、天然ゴム系エラストマーおよび合成ゴム系エラストマーを使用できる。
天然ゴム系エラストマーとしては、天然ゴム、塩化ゴム、塩酸ゴム、環化ゴム、マレイン酸化ゴム、水素化ゴム、天然ゴムの二重結合にメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル等のビニルモノマーをグラフトさせてなるグラフト変性ゴム、窒素気流中でモノマー存在下に天然ゴムを粗錬してなるブロックポリマー等を挙げることができる。これらは、天然ゴムを原料とするものの他、合成cis−1,4−ポリイソプレンを原料としたエラストマーを挙げることができる。
【0018】
合成ゴム系エラストマーとしては、イソブチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンターポリマー、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等のポリオレフィン系エラストマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)等のスチレン系エラストマー、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、ナイロン12、ブチルゴム、ブタジエンゴム、ポリノルボルネンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を挙げることができる。
【0019】
これらのエラストマーは、1種類または2種類以上混合して用いることができる。また、エラストマーの持つ弾力性を損なわない範囲内で熱可塑性樹脂の1種または2種を配合して用いることができる。本発明のエラストマーとして天然ゴム系エラストマーおよび/または合成非極性エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上を用いた場合には電気絶縁性に優れた高誘電性エラストマーを得ることができるので、特に絶縁性の要求される用途に好ましく用いることができる。合成非極性のエラストマーとしては、エチレンプロピレンゴム(以下、EPDMと記す)、エチレンプロピレンジエンゴム、イソブチレンゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム等を挙げることができる。とくにEPDM、エチレンプロピレンジエンゴムは誘電正接が極めて低いので、アンテナ等の電子部品やセンサーの用途には好ましく用いることができる。
【0020】
高誘電性セラミックス粉末の配合割合は、高誘電性エラストマー組成物の比誘電率を 7 以上、誘電正接を 0.01 以下に維持でき、かつ高誘電性エラストマー組成物の比誘電率の温度係数αを−1500×10-6<α<100×10-6の範囲にでき、かつ、アンテナなどの電子部品とできる成形性を保持できる量である。
例えば、エラストマー 100 重量部( phr )に対して、高誘電性セラミックス粉末が 300〜1200 重量部( phr )配合される。
【0021】
本発明においては、本発明の効果を妨げない範囲で(1)エラストマーとセラミックス粉末の界面の親和性や接合性を向上させ、機械的強度を改良するために、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、ジルコニアアルミネート系カップリング剤等のカップリング剤を、(2)電極形成のためのメッキ性を改良するために、タルク、ピロリン酸カルシウム等の微粒子性充填剤を、(3)熱安定性を一層改善するために酸化防止剤を、(4)耐光性を改良するために紫外線吸収剤等の光安定剤を、(5)難燃性を一層改善するためにハロゲン系もしくはリン系等の難燃助剤を、(6)耐衝撃性を改良するために耐衝撃性付与剤を、(7)着色するために染料、顔料などの着色剤を、(8)物性を調整するために可塑剤、硫黄やパーオキサイド等の架橋剤を、(9)加硫を進めるための加硫促進剤をそれぞれ配合することができる。
【0022】
また、本発明の高誘電性エラストマー組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内でガラスファイバー、チタン酸カリウムウィスカ等のチタン酸アルカリ金属繊維、酸化チタン繊維、ホウ酸マグネシウムウィスカやホウ酸アルミニウウムウィスカ等のホウ酸金属塩系繊維、ケイ酸亜鉛ウィスカやケイ酸マグネシウムウィスカ等のケイ酸金属系繊維、カーボンファイバ,アルミナ繊維、アラミド繊維等の各種有機または無機の充填剤を併用できる。
【0023】
本発明の高誘電性エラストマー組成物の製造方法としては、とくに制限がなく、各種の混合成形方法を用いることができる。例えば、2軸押し出し機で混錬して製造する方法などが好適に用いられる。直ちに射出成形や押し出し成形等により成形品としてもよいし、ペレットや棒状物、板状物等の成形用材料としてもよい。
【実施例】
【0024】
各実施例および比較例にて得られる高誘電性エラストマー組成物の成形体について、比誘電率、誘電正接および比誘電率の温度係数αの測定を以下の方法にて行なった。
試験法1:25℃での比誘電率および誘電正接の測定
高誘電性エラストマー組成物を、加熱圧縮成形した成形体から、1.5mm×1.5mm×80mm の短冊状試験片に加工し、空洞共振器法(1998年7月、Electronic Monthly誌、16〜19頁)により、1GHz 帯で 25℃での比誘電率および誘電正接を測定した。
試験法2:各温度での比誘電率および比誘電率の温度係数αの測定
高誘電性エラストマー組成物の上記成形体をφ25mm×t1.5mm の試験形状に加工し、容量法により、−40℃、25℃、100℃の温度で比誘電率およびその温度係数αを測定した。容量法に用いた測定装置はRF impedance/material analyzer HP4291B(アジレント・テクノロジー社製)、電極はHP16453A(アジレント・テクノロジー社製)をそれぞれ用いた。
【0025】
実施例1〜実施例3
EPDMと、比誘電率の温度係数αが −100×10-6のチタン酸バリウム・ネオジム系セラミックス粉末(共立マテリアル社製:HF−120、比誘電率: 120 )と、加硫促進剤および加工助剤等とをそれぞれ表1に示す配合割合で混合し、加熱圧縮成形にて、80mm × 80mm × 1.5mm の成形体を得た。なお、加硫条件は、それぞれ 170℃ × 30 分であり、加硫促進剤および加工助剤等の内容は、ステアリン酸(花王社製;ルナックS−30)を 1 重量部( phr )、酸化亜鉛(井上石炭工業社製;META−Z L−40)を 5 重量部( phr )、加工助剤(花王社製;スプレンダーR−100)を 3 重量部( phr )、加硫促進剤(住友化学社製;ソクシノールM)を 2.5 重量部( phr )、硫黄(鶴見化学工業社製;金華印微粉硫黄)を 1.5 重量部( phr )、それぞれ配合した。
得られた成形体の比誘電率および誘電正接を上記試験法1にて測定した。また、各温度での比誘電率および比誘電率の温度係数αを上記試験法2にて測定した。測定結果をそれぞれ表1に示す。
【0026】
実施例4〜実施例6
セラミックス粉末を、比誘電率の温度係数αが −40×10-6のチタン酸バリウム・ネオジム系セラミック粉末(共立マテリアル社製:HF−100、比誘電率: 100 )に代える以外は、実施例1と同一の条件および方法で成形体を得た。
得られた成形体を実施例1と同一の条件で評価した。測定結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

実施例1〜実施例3に示すように、成形体の25℃での比誘電率は 7 以上、誘電正接は 0.01 以下、比誘電率の温度係数が−1200×10-6であった。また、実施例4〜実施例6に示すように、25℃での比誘電率は 7 以上、誘電正接は 0.01 以下、比誘電率の温度係数が−1067×10-6であった。これらの値は、高誘電率かつ低誘電正接であり、かつ成形体の比誘電率の温度係数は−1500×10-6より大きいことから、アンテナ材料として用いた場合の共振周波数のずれが使用周波数の±10%以内に抑えることができ、アンテナ材として優れている。
【0028】
比較例1〜比較例3
EPDMと、比誘電率の温度係数αが−1200×10-6のチタン酸ストロンチウム系セラミック粉末(共立マテリアル社製:ST−NAS、比誘電率:180 )と、加硫促進剤および加工助剤等とをそれぞれ表2に示す配合割合で混合し、加熱圧縮成形にて、80mm × 80mm × 1.5mm の成形体を得た。なお、加硫条件は、それぞれ 170℃ × 30 分であり、加硫促進剤および加工助剤等の内容は実施例1と同じである。
得られた成形体の比誘電率および誘電正接を上記試験法1にて測定した。また、各温度での比誘電率および比誘電率の温度係数αを上記試験法2にて測定した。測定結果をそれぞれ表2に示す。
【0029】
比較例4〜比較例6
セラミックス粉末を、比誘電率の温度係数αが −2000×10-6のチタン酸バリウム系セラミック粉末(富士チタン工業社製:BT−32、比誘電率: 4000 )に代える以外は、比較例1と同一の条件および方法で成形体を得た。
得られた成形体を比較例1と同一の条件で評価した。測定結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

比較例1〜比較例3に示すように、成形体の25℃での比誘電率は 7 以上、誘電正接は 0.01 以下であるが、比誘電率の温度係数が−2667×10-6であり、−1500×10-6より小さいことから、アンテナ材として用いた場合の共振周波数のずれを使用周波数の±10%以内に抑えることができない。
また、比較例4〜比較例6に示すように、25℃での比誘電率は 7 以上であるが、誘電正接は 0.01 より大きく、かつ比誘電率の温度係数が−3333×10-6であり、−1500×10-6より小さいことから、アンテナ材として用いた場合の共振周波数のずれを使用周波数の±10%以内に抑えることができない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
エラストマーに比誘電率の温度依存性が少ない誘電性セラミックス粉末を配合することで、比誘電率の温度依存性の少ない高周波通信機のアンテナ等の電子部品用複合材として、好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーに高誘電性セラミックス粉末を配合してなる高誘電性エラストマー組成物であって、前記高誘電性セラミックス粉末は、−40℃〜100℃の温度範囲において、25℃を基準とする該セラミックス粉末の比誘電率の温度係数α(単位:1/℃)が(−200 〜 100 )×10-6 の範囲にあることを特徴とする高誘電性エラストマー組成物。
【請求項2】
周波数 1 GHzおよび温度 25℃において、前記高誘電性エラストマー組成物の比誘電率が 7 以上、誘電正接が 0.01 以下であることを特徴とする請求項1記載の高誘電性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記高誘電性セラミックス粉末がチタン酸バリウム・ネオジム系セラミックス粉末であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高誘電性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記エラストマーが構成単位として非極性オレフィン単位を含むことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の高誘電性エラストマー組成物。
【請求項5】
前記エラストマーがエチレンプロピレンゴムであることを特徴とする請求項4記載の高誘電性エラストマー組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の組成物であって、該組成物は、周波数 100 MHz 以上の電気信号を取り扱うための電子部品材料に使用されることを特徴とする高誘電性エラストマー組成物。

【公開番号】特開2006−1989(P2006−1989A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177969(P2004−177969)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】