説明

高速度撮影装置

【課題】連続撮影した画像から記憶すべき画像範囲を操作性よく選択することにある。
【解決手段】対象物1を毎秒100フレーム以上で撮影した画像を記憶する高速度カメラ4とこの記憶画像を取込んで記憶・再生する記憶・再生部6とを備え、この記憶・再生部6は、記憶画像のフレーム番号に対応する時間を持った時間軸21及び現在フレーム指標23を有する表示操作部と、第1の画像表示領域部とからなる表示画面20が表示される表示部6gと、表示画面20上の任意位置を指定可能なデバイス6eと、データ処理部6aと、メモリ6bとを有し、データ処理部6aは、デバイス6eの操作指示に従って現在フレーム指標23を時間軸21上の所望の時間に移動させたとき、現在フレーム指標位置に相当する現在フレーム番号付近の複数の画像を高速度カメラ4から表示画面20に並べて表示することを特徴する高速度撮影装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影対象となる被検体を高速で連続撮影して動画像として記憶する高速度撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速度撮影においては、カメラで撮影された画像をフィルムに記録し、あるいは磁気テープに記憶していたが、近年、デジタル技術の進歩に伴い、デジタル画像として記憶するようになっている。
【0003】
高速度撮影とは、毎秒100フレーム程度以上の速度で連続撮影するものであって、この高速度撮影して記憶された画像を毎秒30フレームの速度で再生表示すれば、スローモーション表示により撮影対象物の状態が観察できる。
【0004】
現在、一般に使用されている高速度撮影装置は、高速度カメラにケーブルを介して記憶・再生部が接続され、高速度カメラで連続撮影された画像を撮影速度に同期してデジタル画像に変換し、カメラ内蔵の専用の高速度メモリに一時記憶する。この一時記憶された画像は、次の撮影で上書きされて消えるので、高速度メモリが満杯になったとき、あるいは撮影終了の後、専用の高速度メモリからケーブルを介して記憶・再生部などのメモリに転送記憶し、必要な時期に再生表示する方法がとられている(特許文献1)。
【0005】
このように高速度カメラで連続撮影された画像を、ケーブルを通さずに高速度カメラの専用の高速度メモリに一時記憶することで、通信速度に制限されず、撮影速度を高速化することができる。また、記憶・再生部には特別なメモリが必要なく、通常のPC(パーソナルコンピュータ)を使用し、当該PC内のメモリに永続記憶することが可能である。
【0006】
図5は従来の高速度撮影装置を示す概略構成図である。
この高速度撮影装置は、高速度カメラ110と記憶・再生部120とから成る。高速度カメラ110は高速度で連続撮影した画像をデジタル画像に変換して高速の半導体メモリ110aに記憶する。記憶・再生部120は、通常,CPU120a、主メモリやディスクなどのメモリ120b及び表示部120cを備えたPCが用いられ、半導体メモリ110aに記憶された画像を取込んでメモリ120bに記憶した後、表示部120cに再生表示する。
【0007】
ところで、高速度撮影では、画像枚数が非常に多いため、高速度カメラ110の半導体メモリ110aには大きな記憶容量(例えば10GB)のメモリが使用されている。その結果、記憶・再生部120が高速度カメラ110の半導体メモリ110aに記憶される全画像を取込むには数分の時間(例えば転送速度が50MB/sの場合、3〜4分程度)がかかる。また、記憶・再生部120のメモリ120bにも記憶容量上の制限があり、大容量の画像を長期にわたって保存しておくことができない。
【0008】
そこで、記憶・再生部120としては、高速度カメラ110の半導体メモリ110aに記憶された全画像のうち、必要な一部の画像だけを選択して取込み、メモリ120bに記憶している。
【0009】
図6は記憶・再生部120における画像取り込み操作時の表示部120cの表示画面121の模式図である。
【0010】
この表示画面121上には時間軸122が形成されている。時間軸122は、高速度カメラ110のメモリ110aに記憶された時系列的に並んだ全画像のフレーム番号に相当する時間を表わしている。操作者は、マウスを用いてカーソル123を現在フレーム指標124に当て、ドラッグして時間軸122上の任意の時間に移動させると、記憶・再生部120は、移動停止先の現在フレーム指標124の時間に相当するフレーム番号の画像を、高速度カメラ110のメモリ110aから取込み、表示画面121の所定の領域に上書きして現在画像125として表示する。
【0011】
これにより、操作者は、現在フレーム指標124を移動させつつ現在画像125を確認し、所要とする画像と判断したとき、カーソル123にて開始フレーム設定ボタン126をクリックすることにより、開始フレームを設定する。つまり、時間軸122に存在する開始フレーム指標127が自動的に現在フレーム指標124の位置に移動して開始フレームが設定される。
【0012】
同様に、現在フレーム指標124を移動させつつ現在画像125を確認し、終了フレーム設定ボタン131をクリックすることで終了フレームを設定する。つまり、終了フレーム指標129が現在フレーム指標124の位置に移動して終了フレームが設定される。
【0013】
次に、マウス及びカーソル123を用いて、仮再生ボタン128をクリックすると、設定された開始フレームから時間軸122に存在する終了フレーム指標129までの画像を予め定める間引き数に従って高速度カメラ110のメモリ110aから順次間引いて取込み、現在画像125上に上書き表示される。これにより、概略の動画表示が行なわれる。
【0014】
このように仮再生ボタン128をクリックし、動画表示された画像に基づいて、開始フレームと終了フレームを修正した後、取込みボタン130をクリックすると、開始フレーム指標127及び終了フレーム指標129の間,つまり開始フレームから終了フレームまでの全画像が高速度カメラ110のメモリ110aから取込まれ、メモリ120bに記憶される。
【0015】
さらに、表示画面121上には、開始フレーム番号132、現在フレーム番号133、終了フレーム番号134等を表示するフレーム番号表示系135が設けられている。
【特許文献1】特開平08−079680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、以上のような高速度撮影装置では、高速度カメラ110のメモリ110aに記憶された全画像から画像範囲を選択するとき、現在フレーム指標124をドラッグして移動停止を繰り返しつつ、順次表示画面121上に現在画像125を表示して確認し、画像範囲となる開始フレームと終了フームを選択している。
【0017】
このため、以上のような開始・終了フレームの選択方法では、カーソル123で現在フレーム指標124をドラッグして時間軸122の時間上に移動停止させた後、その現在フレーム指標124の位置(時間)のフレーム番号に相当する現在画像125を取込んで表示するまでに時間遅れがあること、また、フレーム数が多いことから、現在フレーム指標124をドラッグして移動するとき、時間軸の短い範囲で相当多くのフレーム数が存在することから、少ないフレーム数の移動はドラッグが微妙となって難しいという問題がある。
【0018】
さらに、現在画像125を確認した結果、カーソル123による現在フレーム指標124の行き過ぎが度々生じ、その都度、現在フレーム指標124の後退操作を何度も繰り返しつつ細かなフレーム番号に設定しなければならず、著しく能率が悪く、操作による疲労(負担)感が増大する問題がある。
【0019】
また、開始フレームと終了フレームはバランスよく余裕を持って必要部分を含むように決めるのが好ましいが、終了フレームを設定するときには終了フレームの画像(終了画像)が現在画像125として表示されるが、開始フレームの画像(開始画像)が表示されていないので、開始フレームと終了フレームとのバランス(均衡)が把握し難く、例えば終了側にくらべ開始側に無駄な部分が多くなりすぎたりすることが生じ、再度開始フレームに相当する現在画像125を表示し、交互に何度か前述と同様の処理を繰り返しつつ、開始フレームと終了フレームを設定しなければならない。
【0020】
本発明は上記事情にかんがみてなされたもので、連続撮影した多数の画像から所望とする画像範囲を操作性よく選択できる高速度撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明は、撮影対象物を毎秒100フレーム以上の速度で連続撮影しデジタルの画像に変換して記憶する高速度カメラとこの高速度カメラに記憶された画像を取込んで記憶及び再生表示する記憶・再生部とを備えた高速度撮影装置であって、前記記憶・再生部は、前記連続撮影した画像のフレーム番号に対応する時間を持った時間軸及び当該時間軸上の任意の時間の位置に設定可能な現在フレーム指標を有する表示操作部と第1の画像表示領域部とで形成される表示画面が表示される表示部と、この表示部の表示画面上の任意位置を指定可能なポインティングデバイスと、データ処理部と、メモリとを有し、
前記データ処理部は、前記ポインティングデバイスの操作指示に従って前記現在フレーム指標を前記時間軸上の所望の時間の位置に移動させたとき、当該現在フレーム指標の位置に相当する前記フレーム番号付近の複数の画像を前記高速度カメラから取込んで前記第1の画像表示領域部に並べて表示することを特徴する高速度撮影装置である。
【0022】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する発明において、前記記憶・再生部のデータ処理部としては、前記第1の画像表示領域部に表示された複数の画像の中から前記ポインティングデバイスにより1つの画像が指定されたときに開始画像と認識し、また、前記ポインティングデバイスの操作指示に従って前記現在フレーム指標を前記時間軸上の所望の時間の別の位置に移動させたとき、当該現在フレーム指標の位置に相当する前記フレーム番号付近の複数の画像を前記高速度カメラから取込んで前記第1の画像表示領域部に並べて表示し、この表示された前記別位置に相当する前記フレーム番号付近の複数の画像の中から前記ポインティングデバイスにより1つの画像が指定されたときに終了画像と認識し、前記開始画像から前記終了画像までの前記連続撮影した画像を前記高速度カメラから取込んで前記メモリに記憶することを特徴とする高速度撮影装置である。
【0023】
以上のような手段を講じることにより、現在フレーム指標の付近の複数の画像が表示されるので、細かな指標のドラッグを繰り返すこと無く、開始フレームと終了フレームを選択でき、ドラッグと表示待ちを何度も繰り返す必要がなく、必要な画像範囲を操作性よく選択できる。
【0024】
請求項3に対応する発明は、請求項2に対応する発明の構成である表示部に表示された表示画面には、前記表示操作部、前記第1の画像表示領域部の他に、新たに第2の画像表示領域部が設けられ、また、前記データ処理部は、前記ポインティングデバイスにより指定された前記開始画像及び前記ポインティングデバイスにより指定された前記終了画像を前記第2の画像表示領域部に表示する構成である。
【0025】
このような手段を講じることにより、開始画像と終了画像を現在画像とは別個の第2の画像表示領域部に表示するので、開始フレームの設定を終了画像を観ながら行うことができ、あるいは、終了フレームの設定を開始画像を観ながら行うことができる。このことは、開始フレームと終了フレームとのバランスを容易に取ることを可能とする。
【0026】
また、請求項4に対応する発明は、前記記憶・再生部としては、前記連続撮影した画像のフレーム番号に対応する時間を持った時間軸及び当該時間軸上の任意の時間の位置に設定可能な現在フレーム指標を有する表示操作部と第1の画像表示領域部と第2の画像表示領域部とで形成される表示画面が表示される表示部と、この表示部の表示画面上の任意位置を指定可能なポインティングデバイスと、データ処理部と、メモリとを有し、
前記データ処理部としては、前記ポインティングデバイスの操作指示に従って前記現在フレーム指標を前記時間軸上の所望の時間の位置に移動させたとき、当該現在フレーム指標の位置に相当する前記フレーム番号の画像を前記高速度カメラから取込んで前記第1の画像表示領域部に現在画像として表示し、かつ当該現在画像を前記第2の画像表示領域部に開始画像として表示し、また、前記ポインティングデバイスの操作指示に従って前記現在フレーム指標を前記時間軸上の所望の時間の別の位置に移動させたときに当該別位置に相当する前記フレーム番号の画像を前記高速度カメラから取込んで前記第1の画像表示領域部に現在画像として表示し、かつ当該現在画像を前記第2の画像表示領域部に終了画像として表示するとともに、前記開始画像から前記終了画像までの前記連続撮影した画像を前記高速度カメラから取込んで前記メモリに記憶する高速度撮影装置である。
【0027】
このような手段を講じたことにより、請求項3に対応する発明と同様の作用、効果を奏する。
【0028】
さらに、請求項5に対応する発明は、前記記憶・再生部としては、前記連続撮影した画像のフレーム番号に対応する時間を持った時間軸及び当該時間軸上の任意の時間の位置にそれぞれ設定可能な開始フレーム指標及び終了フレーム指標を有する表示操作部と第1の画像表示領域部と第2の画像表示領域部とで形成される表示画面が表示される表示部と、この表示部の表示画面上の任意位置を指定可能なポインティングデバイスと、データ処理部と、メモリとを有し、
前記データ処理部としては、前記ポインティングデバイスの操作指示に従って前記開始フレーム指標を前記時間軸上の所望の時間の位置に移動させたとき、当該開始フレーム指標の位置に相当する前記フレーム番号の画像を前記高速度カメラから取込んで前記第1の画像表示領域部に開始画像として表示し、また、前記ポインティングデバイスの操作指示に従って前記終了フレーム指標を前記時間軸上の所望の時間の別の位置に移動させたとき、当該終了フレーム指標の位置に相当する前記フレーム番号の画像を前記高速度カメラから取込んで前記第2の画像表示領域部に終了画像として表示するとともに、前記開始画像から前記終了画像までの前記連続撮影した画像を前記高速度カメラから取込んで前記メモリに記憶する高速度撮影装置である。
【0029】
このような手段を講じたことにより、請求項3に対応する発明と同様の作用、効果を奏する。
【0030】
請求項6に対応する発明は、請求項1〜5の何れか1つの発明の構成に新たに、撮影対象物に向けてX線を照射するX線発生器と、前記高速度カメラの前面側に取り付けられ、前記撮影対象物を透過してくるX線透過像を可視光の透過像に変換して前記高速度カメラの視野内に導入するX線可視光変換手段とを設け、前記可視光の透過像を前記高速度カメラで連続撮影させる高速度撮影装置である。
【0031】
これにより、撮影対象物のX線の透過像を高速で連続撮影でき、請求項1〜5の発明と同様の作用、効果を奏する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、連続撮影した多数の画像から所望とする画像範囲を操作性よく選択できる高速度撮影装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明に係る高速度撮影装置の第1の実施形態を示す構成図である。
高速度撮影装置は、被検体1の衝突の状態を高速度で撮影する装置であって、被検体1を放出する放出器2、放出器2から放出される被検体1の落下直下に配置される衝突部材3、高速度カメラ4、トリガ信号発生器5及び記憶・再生部6等により構成される。
【0034】
なお、撮影の対象となる被検体1としては、例えば各種の携帯型電子機器が考えられるが、ここでは一例として携帯電話について説明する。
【0035】
放出器2は、常時は被検体1を支えておき、所定のタイミングで支えを外すことで被検体1を落下させるものであって、被検体1の落下方向にガイド板または所要形状のガイド筒体などのガイド部2aが突設されている。ガイド部2aは、表面が摩擦の少ない材料で作られ、被検体1が少ない摩擦抵抗で滑って落下させる性質を有する。被検体1をガイド部2aに沿って滑らす理由は、被検体1の落下中の回転を抑え、被検体1を安定な姿勢で衝突部材3に衝突させる為である。
【0036】
衝突部材3は、衝突の衝撃を変えて試験する必要から、様々な材質(例えばプラスチック材、コンクリート材等)で作られたものに交換できるように複数用意する。
【0037】
放出器2及び衝突部材3は、ガイド部2aに接しながら滑って落下する被検体1の落下の状態及び衝突部材3に衝突した際の衝撃の状態が高速度カメラ4の視野FOV(Field Of View)内に入るように配置される。
【0038】
また、ガイド部2aの下端部と衝突部材3の間は少なくとも被検体1の長さ以上の距離空間を有し、さらに好ましくは被検体1の長さ以上であって、被検体1が衝突部材3に衝突して跳ね返ってガイド部1aの下端部に接触しない程度の距離空間が望ましい。これにより、高速度カメラ4は、被検体1がガイド部2aに衝突しない状態で衝突及び跳ね返りを撮影できる。
【0039】
高速度カメラ4は、レンズ、CCDセンサやCMOSイメージセンサなどの撮像素子、AD変換器、メモリ4a等よりなり、視野FOV内に入る被検体1の像をレンズにより撮像素子上に結像させ、当該撮像素子で電気信号に変換し、この電気信号をAD変換器でデジタルデータ(デジタル画像)に変換して半導体のメモリ4aに記憶する。
【0040】
高速度カメラ4は、100フレーム毎秒以上の速度で連続撮影するものが使用される。通常の動画撮影用カメラは30フレーム毎秒で連続撮影して記憶し、30フレーム毎秒の同じ速度で再生し動画表示するが、高速度カメラ4では100フレーム毎秒以上で連続撮影して記憶し、30フレーム毎秒の速度で再生表示することにより、スローモーション表示を可能とする。すなわち、高速度カメラ4は、100フレーム毎秒以上の速度で連続撮影した一連のデジタル画像を順次メモリ4aに記憶する。メモリ4aは、有効容量が例えば10Gバイトとすると、1Mバイトのデジタル画像を約10,000フレーム分記憶可能である。
【0041】
この衝突部材3にはトリガ信号発生器5が取り付けられている。トリガ信号発生器5は例えば歪センサ(ストレインゲージ)と電気回路とより成り、被検体1が衝突したときの衝突部材3の振動を歪センサの電気抵抗の変化により検出する。電気回路は歪センサ出力を振動信号として取り出し、この振動信号レベルが所定値を超えたときに電気的なトリガ信号を発生し、このトリガ信号を高速度カメラ4に送信する。
【0042】
高速度カメラ4は、被検体1の落下直前あるいは被検体1が衝突する直前から撮影を開始しそのメモリ4aに順次記憶し、有効容量に達すれば前に戻って順次上書きしながら繰り返し記憶していくが、トリガ信号発生器5から送られてくるトリガ信号を受信したときをトリガ点とし、高速度カメラ4に予め任意に設定される比率に従ってデジタル画像のメモリ4aへの記憶制御を実施する。従って、高速度カメラ4のメモリ4aにはトリガ点よりも前のデジタル画像も保存される。
【0043】
例えば高速度カメラ4に設定された比率がトリガ点前10%、トリガ点後90%とすると、図2に示すようにトリガ点から高速度カメラ4で撮影されたデジタル画像をメモリ4aの有効容量の90%に達するまで上書きを繰り返し、トリガ点よりも10%前で撮影を終了する。その結果、トリガ点前10%にトリガ点後90%を足せば、メモリ4aの有効容量を有効に利用し、被検体1の衝突前の状態から衝突後の衝撃の状態を撮影できる。
【0044】
記憶・再生部6は、通常のパーソナルコンピュータと同等の処理を行うものが使用され、構成的には、CPUで構成されるデータ処理部6a、主メモリ及びディスクなどのメモリ6b、インタフェース6c、キーボード6d、トラックボール,マウス等のポインティングデバイス6e及び表示部6gを備えている。
【0045】
記憶・再生部6は、高速度カメラ4と接続されており、メモリ4aに記憶され画像をインタフェース6cを介して読み取り、メモリ6bに時系列的、かつ永続的に記憶し、任意の時期に再生表示する機能を有する。
【0046】
次に、以上のような高速度撮影装置の動作について説明する。
操作者は、まず、放出器2に被検体1を保持させる。
次に、高速度カメラ4を撮影開始させ、高速度カメラ4による撮影とメモリ4aへの上書き保存とを繰り返す状態とする。視野FOV内に入った被検体1の画像は高速度カメラ4で電気信号に変換され、さらにデジタル画像に変換されて、最旧画像を最新画像に置換える上書き処理を繰り返しながらメモリ4aに記憶し続けられる。
【0047】
このとき、放出器2から被検体1を落下させると、当該被検体1はガイド部2aを通って落下し、高速度カメラ4の視野FOV内に入り、衝突部材3に衝突する。
【0048】
被検体1が衝突部材3に衝突すると、トリガ信号発生器5は被検体1が衝突した際にトリガ信号を高速度カメラ4に送信する。高速度カメラ4はトリガ信号発生器5からのトリガ信号を受信したときをトリガ点とし、前述したようにトリガ点からメモリ4aの有効容量の90%の画像を上書きした時点で撮影を終了する。その結果、高速度カメラ4のメモリ4aにはトリガ点(衝突時点)の前10%、トリガ点の後90%の時系列的なデジタル画像が記憶される。
【0049】
次に、記憶・再生部6による画像取込み操作の説明に先立ち、図3に示す表示部6gの表示画面20について説明する。図3は記憶・再生部6における画像取込み操作時の画面を示す模式図である。
【0050】
まず、記憶・再生部6は、キーボード6d,ポインティングデバイス6eなどから入力される画像取込み操作指示に従い、データ処理部6aが表示画面20上に表示操作部、第1の画像表示領域部及び第2の画像表示領域部を有する初期画像を表示する。
【0051】
表示操作部は、表示画面20の図示右側下段に表示され、具体的には、高速度カメラ4のメモリ4aに記憶された時系列に並んだ全画像のフレーム番号に相当する時間を持ったバー状の時間軸21と、ポインティングデバイス6e及びカーソル22を用いて、時間軸21上の任意の時間に移動設定される現在フレーム指標23と、開始フレーム指標24を現在フレーム指標23の位置に自動移動させる開始フレーム設定ボタン25と、終了フレーム指標26を現在フレーム指標23の位置に自動移動させる終了フレーム設定ボタン27とが形成されている。
【0052】
また、表示操作部としては、時間軸21の上部側にステップ下降ボタン28及びステップ上昇ボタン29をもった現在画像の表示ステップ30、前述した仮再生ボタン128、取込みボタン130と同様の機能を持った仮再生ボタン31、取込みボタン32が配置され、さらに時間軸21の下部側には開始フレーム番号表示部33、現在フレーム番号表示部34、終了フレーム番号表示部35、選択フレーム数表示部36及び選択フレーム数に相当する時間を表示する時間表示部37が設けられている。
【0053】
さらに、表示画面20の図示右上段に配置される前記第1の画像表示領域部には、現在フレーム指標23が示す現在フレーム番号付近の複数枚(例えば9枚)の現在画像43(43a〜43i)が表示される。一方、表示画面20の図示左上・下段に配置される前記第2の画像表示領域部には、前記表示操作部の設定操作に基づき、開始画像41及び終了画像42が表示される。
【0054】
記憶・再生部6におけるデータ処理部6aによる一連の画像取込み操作について説明する。
データ処理部6aは、操作者がポインティングデバイス6e及びカーソル22を用いて、現在フレーム指標23をドラッグし、時間軸21の任意の時間に移動させると、この現在フレーム指標23の移動位置に相当する現在フレーム番号付近の複数枚(9枚)の画像を高速度カメラ4のメモリ4aから取込み、予め定める縮小率に基づく処理を行って9枚の現在画像43a〜43iをメモリ6bの所定領域に上書きし、表示画面20の第1の画像表示領域部に縮小表示する。現在画像43eが現在フレーム指標23の位置に相当する中心的な現在フレーム番号の画像であって、その現在フレーム番号が現在フレーム番号表示部34に表示される。
【0055】
このとき、表示ステップ30には、ポインティングデバイス6e及びカーソル22を用いて、ステップ下降ボタン28またはステップ上昇ボタン29のクリックによって設定される現在フレーム番号付近の複数枚(9枚)の画像相互の間引き数,例えば3ステップが表示される。3ステップとは、現在画像43eを中心に、前後3ステップごとに4枚ずつ取込んで合計9枚の現在画像43a〜43iを表示することを意味する。なお、ポインティングデバイス6e及びカーソル22を用いて、ステップ下降ボタン28またはステップ上昇ボタン29をクリックすると、間引き数が増減変更された状態で現在画像43が表示される。
【0056】
以上の状態において、操作者は、表示中の現在画像43を確認し、現在画像の一つである例えば43cをクリックし選択状態(2重枠)を指定した後、開始フレーム設定ボタン25をクリックすると、開始フレーム番号が選択され、開始フレーム番号表示部33に表示される。
【0057】
また、開始フレーム設定ボタン25のクリックに伴い、開始フレーム指標24が自動的に時間軸21上の開始フレーム番号の時間の相当位置に移動すると共に、当該開始フレーム番号の画像が現在画像43とは別個に表示画面20の第2の画像表示領域部の上段に開始画像41として表示される。
【0058】
引き続き、データ処理部6aは、操作者がポインティングデバイス6e及びカーソル22を用いて、現在フレーム指標23をドラッグし、時間軸21の終了フレームに相当する時間に移動させると、当該現在フレーム指標23の移動位置に相当する現在フレーム番号付近の複数枚(9枚)の画像を高速度カメラ4のメモリ4aから取込み、予め定める縮小率に従って9枚の現在画像43a〜43iをメモリ6bの所定領域に上書きし、表示画面20の第1の画像表示領域部に縮小表示する。ここで、データ処理部6aは、操作者が表示中の現在画像43を確認し、現在画像の一つを選択した後、終了フレーム設定ボタン27をクリックすると、その選択された終了フレーム番号を終了フレーム番号表示部35に表示するとともに、終了フレーム指標26を自動的に時間軸21上の終了フレーム番号の時間の相当位置に移動させると共に、当該終了フレーム番号の画像を現在画像43とは別個に表示画面20の第2の画像表示領域部の下段に終了画像42として表示する。
【0059】
なお、表示画面20に並べて表示された開始画像41及び終了画像42を観察し、変更したい場合には前述したように開始フレーム番号、終了フレーム番号の変更を行う。
【0060】
データ処理部6aは、前述したように開始フレーム番号表示部33、現在フレーム番号表示部34、終了フレーム番号表示部35に開始フレーム番号ns、現在フレーム番号n、終了フレーム番号neを表示するが、変更有り次第、その変更フレーム番号ns、n、neを更新表示する。
【0061】
さらに、データ処理部6aは、開始フレーム番号ns及び終了フレーム番号neに基づき、選択フレーム数N(=ne−ns+1)を計算し、選択フレーム数表示部36に表示し、また、フレーム数Nの撮影に要する時間T(フレーム数N×撮影時間間隔)を計算し、時間表示部37に表示する。
【0062】
次に、データ処理部6aは、仮再生ボタン31をクリックすると、高速度カメラ4のメモリ4aから開始フレームから終了フレームまでの画像を予め定める間引き数に従って順次取込み、開始画像41あるいは終了画像42あるいは現在画像43に上書きし、表示画面20に表示する。これにより、表示画面20には概略の動画表示が行なわれる。
【0063】
この仮再生処理によって気に入らない場合には、開始フレームと終了フレームを修正する。そして、適切な開始フレームの画像及び終了フレームの画像であると判断したとき、取込みボタン32をクリックすると、高速度カメラ4のメモリ4aから、開始フレームから終了フレームまでの全画像を取込んでメモリ6bに記憶する。以上の処理により一連の画像取込み操作が終了する。
【0064】
画像の取込みが終わると、メモリ6bに記憶された画像は、記憶・再生部6により何度でも再生表示して観察でき、任意の1フレームを読み出して静止画としても表示できる。また、メモリ6bに記憶された画像から被検体1の衝突に伴う衝撃の影響を解析することも可能である。また、メモリ6bに記憶された画像は、LANを介して他のシステムに送ったり、あるいはDVDを書き込んで他のシステムで利用可能とすることができる。
【0065】
従って、以上のような実施の形態によれば、現在フレーム指標23付近の複数の画像を取込んで現在画像43(43a〜43i)として表示部6fに表示するので、細かな指標のドラッグ、画像表示の切換えの繰り返しがなく、開始フレームと終了フレームを選択できる。このことは、従来のようにドラッグと表示待ちの状態を何度も繰り返すことが無く、撮影された画像の中から操作性よく最適な画像範囲を選択できる。
【0066】
また、現在画像43とは別個に開始画像41及び終了画像42を表示するので、終了画像42を観ながら開始フレームの設定を実行でき、逆に開始画像41を観ながら終了フレームの設定を行うことができる。その結果、開始フレームと終了フレームのバランスを取ることにより、最適な再生用画像を効率的に取込み、メモリ6bに永続的に保存できる。さらに、選択フレーム数Nとその選択フレーム数に対応する時間Tを自動的に選択フレーム数表示部36及び時間表示部37に表示するので、画像の取込み分量、ひいてはメモリ6bの使用状態を把握できる。
【0067】
(第1の実施の形態の変形例)
(1) 第1の実施の形態では、開始フレーム設定を終了フレーム設定の前に行っているが、設定順は任意である。また、どちらの設定も別々に単独で再設定できる。
【0068】
(2) 第1の実施の形態では、開始画像41と終了画像42を別々に並べて表示しているが、1つの表示領域に上書き表示させてもよい。すなわち、開始フレームを設定したとき開始画像41が表示され、次に終了フレームを設定すると、開始画像41の上に終了画像42が上書き表示される。さらに、開始フレームを再設定すると、終了画像42の上に開始画像41が上書き表示される。
【0069】
これにより、開始画像41と現在画像43(終了画像となる画像)を比較しながら終了フレームを設定でき、また逆に、終了画像42と現在画像43(開始画像となる画像)を比較しながら開始フレームを設定でき、開始画像41と終了画像42とのバランスをとることができる。
【0070】
(3) 第1の実施の形態では、カーソル22で現在フレーム指標23をドラッグして時間軸21の任意の時間に位置設定したが、例えば時間軸21上の任意の位置に設定できれば、他の方法であってもよい。例えば、カーソル22でダブルクリックした位置に現在フレーム指標23を自動移動させてもよく、あるいはアップ/ダウンボタンをクリックし、現在フレーム指標23を移動させてもよい。また、フレーム番号を数値入力して移動させてもよい。
【0071】
(4) 第1の実施の形態では、表示画面20上に開始画像41と終了画像42とを表示させないようにしてもよい。この場合には従来の問題となる「開始フレームと終了フレームのバランスをとるのが難しい」とする点が解決できないが、「ドラッグと表示待ちを何度も繰り返して設定しなければならない」とする従来の問題点を容易に解決可能である。
【0072】
(5) また、第1の実施の形態においては、現在画像43が現在フレーム指標23の位置する現在フレーム番号を中心とする9枚の画像を表示したが、画像枚数は9枚に限らず、複数枚であれば何枚であってもよい。また、必ずしも現在フレーム番号が中心でなくても、現在フレーム番号を含む所定範囲内の複数画像を所定表示ステップで表示させればよい。例えば現在フレーム番号を先頭とする9枚でもよいし、あるいは現在フレーム番号を末尾とする9枚であってもよい。
【0073】
(6) 第1の実施の形態においては、表示画面20に現在画像43として9枚の画像を表示したが、現在フレーム番号の画像1枚だけを表示してもよい。この場合には、従来の問題点である「ドラッグと表示待ちを何度も繰り返して設定しなければならない」とする点が解決できないが、表示画面20上に開始フレームの開始画像と終了フレームの終了画像とを並べて表示するので、従来のもう1つの問題点である「開始フレームと終了フレームのバランスをとることが難しい」とする問題点を容易に解決できる。またここで、変形例(2)で述べたように、開始画像41と終了画像42を1つの表示領域に上書き表示させてもよい。このようにした場合であっても、変形例(2)で述べたように開始フレームと終了フレームとのバランスをとることができる。
【0074】
(7) さらに、第1の実施の形態では、現在画像43、現在フレーム指標23及び設定ボタン25,27の表示を無くすことができる。この場合には、開始画像41を設定する際、開始画像41と開始フレーム指標24が現在画像43と現在フレーム指標23の役割を担うためである。すなわち、ポインティングデバイス6e及びカーソル22で開始フレーム指標24をドラッグしながら開始画像41を変化させ、開始画像41を設定する。ここで、ドラッグが終了する毎に開始フレーム(開始画像)が設定される。
【0075】
また、終了画像42を設定する際、終了画像42と終了フレーム指標26が現在画像41と現在フレーム指標23の役割を担う。すなわち、ポインティングデバイス6e及びカーソル22で終了フレーム指標26をドラッグしながら終了画像42を変化させ、終了画像42を設定する。ここで、ドラッグが終了する毎に終了フレーム(終了画像)が設定される。
【0076】
以上のような処理を実施した場合、従来の問題点である「ドラッグと表示待ちを何度も繰り返して設定しなければならない」点について解決できないが、表示画面20に開始フレームの画像と終了フレームの画像とを並べて表示するので、容易に開始フレームと終了フレームとのバランスをとることができ、従来のもう1つの問題点である「開始フレームと終了フレームのバランスをとることが難しい」とする問題点を解決できる。
【0077】
(8) さらに、第1の実施の形態において、時間軸21は高速度カメラ4で撮影した全画像範囲(全フレーム番号)を表しているが、全体でなく部分的なフレーム番号を表すようにしてもよい。すなわち、表示部分を切換えたり、スクロールしたり、スケールを拡大したりすることで、任意のフレーム番号n1ないしn2の範囲を表示できるようにしてもよい。
【0078】
(9) また、第1の実施の形態では、選択フレーム数表示部36及び時間表示部37には、選択フレーム数N(=ne−ns+1)、撮影に要する時間T(選択フレーム数N×撮影時間間隔)を表示したが、さらにデータ量(MB)や動画再生したときの再生時間などを表示する表示要素を追加してもよい。
【0079】
(10) また、第1の実施の形態では、設定した開始フレームと終了フレームの間の全画像を取込んでいるが、予め入力設定される間引き数に従って画像を間引いて取込むようにしてもよい。例えば予め間引き数「3」を設定し、3フレーム毎に1フレームを取込む構成としてもよい。これは、メモリ6bの記憶容量を節約したい場合などに有効である。
【0080】
(11) また、第1の実施の形態では、設定した開始フレームと終了フレームの間の全画像を縮小せずにそのまま取込んでいるが、縮小して取込むようにしてもよい。ここで、縮小とは間引きあるいは補間によりマトリックス数を減らすことである。これは、変形例(10)と同様にメモリ6bの記憶容量を節約したい場合などに有効である。
【0081】
(12) さらに、第1の実施の形態では、設定した開始フレームと終了フレームの間の全画像をトリミングせずにそのまま取込んでいるが、トリミングして取込むようにしてもよい。ここで、トリミングとは必要な長方形ないし正方形の部分だけを切り出すことである。このトリミング処理には、ポインティングデバイス(マウス)6eを用いて、開始画像41上あるいは終了画像42上に四角い枠(感心領域ROI)を描画することで、所望とするトリミング範囲を設定し、全画像から設定されたトリミング範囲の像を取込んで記憶するようにする。これは、前述同様にメモリ6bの記憶容量を節約したい場合などに有効である。
【0082】
(13) さらに、第1の実施の形態では、設定した開始フレームと終了フレームとの間の全画像を圧縮せずに取込んでいるが、高速度カメラ4側で圧縮させた画像を取込むようにしてもよい。
【0083】
(14) さらに、第1の実施の形態で、1回の撮影によるメモリ4aの上の同一の画像について、開始画像と終了画像を変えて複数回に分けて取込むことにより、1回の撮影を複数個に編集して永続記憶することもできる。
【0084】
(15) さらに、第1の実施の形態で、高速度カメラ4側あるいは記憶・再生部6側で画像処理を行うようにしてもよい。画像処理としては、例えば、スムージング、リカーシブフィルタリングなどのノイズの低減処理、感度補正、歪補正、オフセット補正などの補正処理、エッジ強調、諧調変換などの処理である。
【0085】
(16) さらに、第1の実施の形態の他の例としては、新たに第二の高速度カメラ、高速度カメラ4および第二の高速度カメラの同期を取るクロックを発生するクロック発生部を追加し、被検体1の2方向からの画像を各高速度カメラで同時に高速度で連続撮影する構成であってもよい。
【0086】
これにより、2方向の画像を並べて表示画面20上に動画表示したり、ステレオ表示することができる。また、2方向の画像を用いて、被検体1の3次元的な解析を行うことも可能である。
【0087】
(17) 上記の実施の形態では、携帯電話の衝撃試験における高速度撮影を想定したが、これに限定されるものではない。高速で変化するあらゆるものが撮影の対象となる。
【0088】
(第2の実施の形態)
図4は本発明に係る高速度撮影装置の第2の実施の形態を示す構成図である。なお、同図において、図1と同一または等価な構成の部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0089】
この高速度撮影装置は、第1の実施の形態の構成(図1参照)に、X線発生器7、X線制御器8、高速度カメラ4の前面側にX線II9を配置したX線検出器10を新たに追加し、被検体1のX線透過像を撮影する構成である。
【0090】
X線発生器7は、X線管及び高電圧発生部から成り、例えばX線制御器8のパネルから操作設定される管電圧、管電流のもとに所要の強度を持ったX線ビーム11を照射する。
【0091】
X線検出器10は、X線発生器7と対向する位置に配置され、X線発生器7のX線焦点Fから照射されるX線の一部のX線ビーム11を2次元の空間分解能をもって検出するもので、X線可視光変換手段としてのX線II(イメージインテンシファイア)9と高速度カメラ4とを組み合わせた構成より成る。
【0092】
X線II9はX線検出面9aで検出されるX線の強度分布であるX線透過像を可視光の透過像に変換し、出力面9bから出力する。なお、X線II9としては残光の少ないものが使用される。
【0093】
高速度カメラ4は、前述したようにレンズ、CCDセンサまたはCMOSイメージセンサなどの撮像素子、AD変換器、メモリ4a等よりなり、X線II9の出力面9b上の可視光透過像をレンズにより撮像素子の上に結像させ、当該撮像素子で電気信号に変換し、この電気信号をAD変換器にてデジタルデータ(デジタル画像)に変換し、メモリ4aに記憶する。
【0094】
その他の構成については、第1の実施の形態で説明した通りであり、ここでは、第1の実施の形態の説明に譲る。
【0095】
次に、以上のような高速度撮影装置の動作について説明する。
操作者は、まず、X線発生器7から照射されるX線ビーム11の中に入るように被検体1を固定し、仮撮影を実施し、必要な条件を設定する。具体的には、X線制御器8のパネルからX線発生器7の管電圧、管電流を仮設定し、X線発生器7からX線ビーム11を照射する。被検体1を通ったX線の透過像はX線II9、高速度カメラ4で撮像され、メモリ4aに記憶された後、データ処理部6が読み取り、表示部6gに表示する。この表示された透過像を観察しながら、管電圧、管電流、撮影速度、高速度カメラ4のゲインを繰り返し調整し、最適なX線条件及び撮影条件を設定する。
【0096】
以上のような条件設定を終えると、放出器2に被検体1を保持させ、X線発生器7のX線焦点FからX線ビーム11を照射した状態とする。ここで、高速度カメラ4が撮影を開始し、高速度撮影とメモリ4aへの上書きを繰り返しつつ保存する。
【0097】
このとき、放出器2から被検体1を落下させる。この被検体1はガイド部2a及びX線ビーム11を通って落下し、衝突部材3に衝突する。トリガ信号発生器5は被検体1が衝突したトリガ信号を高速度カメラ4に送信する。高速度カメラ4は歪センサ5からのトリガ信号を受信したときをトリガ点とし、前述したようにトリガ点からメモリ有効容量の90%の画像を撮影・記憶した時点で撮影を終了する。その結果、高速度カメラ4のメモリ4aにはトリガ点(衝突時点)の前10%、トリガ点の後90%の時系列的な透過像が記憶された状態となる。
【0098】
撮影が終了すると、記憶・再生部6は、第1の実施の形態と同様に開始フレームと終了フレームを設定し、高速度カメラ4に送信指令を送信し、高速度カメラ4から開始フレームから終了フレームまでの透過像を送信させて取込み記憶する。ここでの一連の画像取込み操作、すなわち開始フレーム(開始画像)と終了フレーム(終了画像)の設定から画像の取込みまでは、第1の実施の形態の操作と全く同じであるので、第1の実施の形態の説明に譲る。
【0099】
次に、記憶・再生部6のデータ処理部6aは、高速度カメラ4のメモリ部4aから取り込んだ透過像の表示及び解析処理を行う。
【0100】
この第2の実施の形態によれば、X線透過像撮影においても、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0101】
(第2の実施の形態の変形例)
(1) 第2の実施の形態の変形例においても、第1の実施の形態の変形例をそのまま適用できる。
(2) 第2の実施の形態では、X線可視光変換手段としてX線II9を用いたが、マイクロチャンネルプレート等を用いてもよい。
【0102】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係る高速度撮影装置の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】図1に示すメモリ4aに高速度で連続撮影した透過像を記憶する例を説明する図。
【図3】記憶・再生部における画像取込み操作時の表示画面を表す模式図。
【図4】本発明に係る高速度撮影装置の第2の実施の形態を示す構成図。
【図5】従来の高速度撮影装置の概略構成図。
【図6】図5に示す記憶・再生部における画像取込み操作時の表示画面を表す模式図。
【符号の説明】
【0104】
1…被検体、2…放出器、3…衝突部材、4…高速度カメラ、4a…メモリ、5…トリガ信号発生器、6…記憶・再生部、6a…データ処理部、6b…メモリ、6d…キーボード、6e…ポインティングデバイス、6g…表示部、20…表示画面、7…X線発生器、9…X線II、10…X線検出器、21…時間軸、22…カーソル、23…現在フレーム指標、24…開始フレーム指標、25…開始フレーム設定ボタン、26…終了フレーム指標、27…終了フレーム設定ボタン、30…表示ステップ、31…仮再生ボタン32…取込みボタン、33…開始フレーム番号表示部、34…現在フレーム番号表示部、35…終了フレーム番号表示部、36…選択フレーム数表示部、37…時間表示部、41…開始画像、42…終了画像、43…現在画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象物を毎秒100フレーム以上の速度で連続撮影しデジタルの画像に変換して記憶する高速度カメラとこの高速度カメラに記憶された画像を取込んで記憶及び再生表示する記憶・再生部とを備えた高速度撮影装置において、
前記記憶・再生部は、前記連続撮影した画像のフレーム番号に対応する時間を持った時間軸及び当該時間軸上の任意の時間の位置に設定可能な現在フレーム指標を有する表示操作部と第1の画像表示領域部とで形成される表示画面が表示される表示部と、この表示部の表示画面上の任意位置を指定可能なポインティングデバイスと、データ処理部と、メモリとを有し、
前記データ処理部は、前記ポインティングデバイスの操作指示に従って前記現在フレーム指標を前記時間軸上の所望の時間の位置に移動させたとき、当該現在フレーム指標の位置に相当する前記フレーム番号付近の複数の画像を前記高速度カメラから取込んで前記第1の画像表示領域部に並べて表示することを特徴する高速度撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高速度撮影装置において、
前記記憶・再生部におけるデータ処理部は、前記第1の画像表示領域部に表示された複数の画像の中から前記ポインティングデバイスにより1つの画像が指定されたときに開始画像と認識し、
また、前記ポインティングデバイスの操作指示に従って前記現在フレーム指標を前記時間軸上の所望の時間の別の位置に移動させたとき、当該現在フレーム指標の位置に相当する前記フレーム番号付近の複数の画像を前記高速度カメラから取込んで前記第1の画像表示領域部に並べて表示し、この表示された前記別位置に相当する前記フレーム番号付近の複数の画像の中から前記ポインティングデバイスにより1つの画像が指定されたときに終了画像と認識し、
前記開始画像から前記終了画像までの前記連続撮影した画像を前記高速度カメラから取込んで前記メモリに記憶することを特徴とする高速度撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の高速度撮影装置において、
前記表示部に表示された表示画面には、前記表示操作部、前記第1の画像表示領域部の他に、新たに第2の画像表示領域部が設けられ、
前記データ処理部は、前記ポインティングデバイスにより指定された前記開始画像及び前記ポインティングデバイスにより指定された前記終了画像を前記第2の画像表示領域部に表示することを特徴とする高速度撮影装置。
【請求項4】
撮影対象物を毎秒100フレーム以上の速度で連続撮影しデジタルの画像に変換して記憶する高速度カメラとこの高速度カメラに記憶された画像を取込んで記憶及び再生表示する記憶・再生部とを備えた高速度撮影装置において、
前記記憶・再生部は、前記連続撮影した画像のフレーム番号に対応する時間を持った時間軸及び当該時間軸上の任意の時間の位置に設定可能な現在フレーム指標を有する表示操作部と第1の画像表示領域部と第2の画像表示領域部とで形成される表示画面が表示される表示部と、この表示部の表示画面上の任意位置を指定可能なポインティングデバイスと、データ処理部と、メモリとを有し、
前記データ処理部は、前記ポインティングデバイスの操作指示に従って前記現在フレーム指標を前記時間軸上の所望の時間の位置に移動させたとき、当該現在フレーム指標の位置に相当する前記フレーム番号の画像を前記高速度カメラから取込んで前記第1の画像表示領域部に現在画像として表示し、かつ当該現在画像を前記第2の画像表示領域部に開始画像として表示し、
また、前記ポインティングデバイスの操作指示に従って前記現在フレーム指標を前記時間軸上の所望の時間の別の位置に移動させたときに当該別位置に相当する前記フレーム番号の画像を前記高速度カメラから取込んで前記第1の画像表示領域部に現在画像として表示し、かつ当該現在画像を前記第2の画像表示領域部に終了画像として表示するとともに、
前記開始画像から前記終了画像までの前記連続撮影した画像を前記高速度カメラから取込んで前記メモリに記憶することを特徴とする高速度撮影装置。
【請求項5】
撮影対象物を毎秒100フレーム以上の速度で連続撮影しデジタルの画像に変換して記憶する高速度カメラとこの高速度カメラに記憶された画像を取込んで記憶および再生表示する記憶・再生部とを備えた高速度撮影装置において、
前記記憶・再生部は、前記連続撮影した画像のフレーム番号に対応する時間を持った時間軸及び当該時間軸上の任意の時間の位置にそれぞれ設定可能な開始フレーム指標及び終了フレーム指標を有する表示操作部と第1の画像表示領域部と第2の画像表示領域部とで形成される表示画面が表示される表示部と、この表示部の表示画面上の任意位置を指定可能なポインティングデバイスと、データ処理部と、メモリとを有し、
前記データ処理部は、前記ポインティングデバイスの操作指示に従って前記開始フレーム指標を前記時間軸上の所望の時間の位置に移動させたとき、当該開始フレーム指標の位置に相当する前記フレーム番号の画像を前記高速度カメラから取込んで前記第1の画像表示領域部に開始画像として表示し、
また、前記ポインティングデバイスの操作指示に従って前記終了フレーム指標を前記時間軸上の所望の時間の別の位置に移動させたとき、当該終了フレーム指標の位置に相当する前記フレーム番号の画像を前記高速度カメラから取込んで前記第2の画像表示領域部に終了画像として表示するとともに、
前記開始画像から前記終了画像までの前記連続撮影した画像を前記高速度カメラから取込んで前記メモリに記憶することを特徴とする高速度撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の高速度撮影装置において、
前記撮影対象物に向けてX線を照射するX線発生器と、前記高速度カメラの前面側に取り付けられ、前記撮影対象物を透過してくるX線透過像を可視光の透過像に変換して前記高速度カメラの視野内に導入するX線可視光変換手段とをさらに設け、
前記可視光の透過像を前記高速度カメラで連続撮影させることを特徴とする高速度撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−278329(P2009−278329A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127037(P2008−127037)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】