説明

高速炉の反射体システム

【課題】反射体のキャビティ部の破損の有無を確実に検知することができる高速炉の反射体システムを提供する。
【解決手段】本発明による高速炉の反射体システムは、上下方向に移動自在に設けられ、炉心4から放射される中性子を反射する中性子反射部31と、この中性子反射部31の上方に設けられ、一次冷却材2よりも中性子反射能力が低いキャビティ部32とを有する反射体30と、この反射体30に連結され、反射体30を上下方向に移動させる反射体駆動装置35とを備えている。この反射体駆動装置35は、反射体30に駆動軸34を介して連結され、反射体30を上下駆動する駆動手段37と、この駆動手段37と駆動軸34との間に設けられ、反射体30の荷重を検出する荷重検出手段45とを有している。この荷重検出手段45に、荷重検出手段45から荷重信号を受信して反射体30のキャビティ部32の破損を検知する検知手段50が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却材が満たされている高速炉の原子炉容器内に収納された炉心の反応度を制御する高速炉の反射体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷却材が満たされている高速炉の原子炉容器内に収納された炉心の反応度を制御する高速炉の反射体システムが知られている。この高速炉の反射体システムは、炉心の周縁外方に配置されるとともに上下方向に移動自在に設けられ、炉心から放出される中性子を反射する中性子反射部と、この中性子反射部の上方に設けられ、冷却材よりも中性子反射能力が低いキャビティ部とを有する反射体と、この反射体に連結され、反射体を上下方向に移動する反射体駆動装置とを備えている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
このうち、反射体のキャビティ部は複数の箱型の密閉容器を有し、この密閉容器の内部に冷却材よりも中性子反射能力が劣る気体が封入されている。あるいは、密閉容器内に気体を封入することなく真空にしている。このことにより、炉心に対向してキャビティ部を配置させた場合、炉心の外周が冷却材により覆われている場合に比べて炉心の反応度を低く抑えることができ、核燃料の濃縮度を高め、炉心の反応度寿命の長期化を図っている。
【0004】
しかしながら、このような反射体のキャビティ部の密閉容器に、不測の事態により微小なき裂が生じる等によって密閉容器が破損した場合、密閉容器内に徐々に冷却材が侵入していく。このことにより、キャビティ部の中性子反射能力が増加し、炉心の反応度を制御することが困難になり、炉心の反応度が高まって炉心寿命の低下を招く。
【0005】
この反射体のキャビティ部の破損を検出するために、原子炉容器の内外に中性子計測器を取り付け、この中性子計測器により原子炉容器の内外における中性子量を計測し、この計測されたデータから中性子量の変動を算出して、反射体のキャビティ部の破損の有無を検知する方法が行われている。また、中性子計測器とは別に原子炉容器の内外に温度計測器を取り付け、この温度計測器により原子炉容器の内外における温度を計測し、この計測されたデータから温度変化を算出して、反射体のキャビティ部の破損の有無を検知する方法も行われている。
【特許文献1】特開2003−35790号公報
【特許文献2】特開2005−233751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、原子炉容器の内外における中性子量の変動は微小である。このことにより、この中性子量の変動を検出して、反射体のキャビティ部の破損の有無を検知することは困難である。同様に、原子炉容器の内外における温度の変動も微小であるため、この温度の変動を検出して、反射体のキャビティ部の破損の有無を検知することも困難である。さらに、このように中性子量または温度を検出する方法は、高速炉の運転中に行うことはできるが、高速炉の停止中には行うことができない。このため、高速炉が停止している間に反射体のキャビティ部が破損した場合には、高速炉が運転を開始するまでキャビティ部が破損していることを検知することができない。
【0007】
また、反射体のキャビティ部の密閉容器内にタグガスを封入して、密閉容器が破損した場合に密閉容器から漏れ出るタグガスを検出する検出手段を設け、キャビティ部の破損の有無を検知する方法が考えられる。この方法は、高速炉が停止している間においてもキャビティ部の破損の有無を検知することができるという利点を有しているが、キャビティ部の複数の密閉容器から破損した密閉容器を特定することは困難である。さらに、このようにタグガスを用いてキャビティ部の破損の有無を検知する場合、高速炉の設備が大幅に増加するとともに費用がかかるという問題もある。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、反射体のキャビティ部の破損の有無を確実に検知することができる高速炉の反射体システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、高速炉の構造体に保持され、冷却材が満たされている高速炉の原子炉容器内に収納された炉心の反応度を制御する高速炉の反射体システムにおいて、炉心の周縁外方に配置されるとともに上下方向に移動自在に設けられ、炉心から放射される中性子を反射する中性子反射部と、この中性子反射部の上方に設けられ、冷却材よりも中性子反射能力が低いキャビティ部とを有する反射体と、この反射体に連結され、反射体を上下方向に移動させる反射体駆動装置と、を備え、この反射体駆動装置は、高速炉の構造体に支持されるとともに反射体に駆動軸を介して連結され、反射体を上下駆動する駆動手段と、この駆動手段と駆動軸との間に設けられ、反射体の荷重を検出する荷重検出手段とを有し、反射体駆動装置の荷重検出手段に、荷重検出手段から荷重信号を受信する検知手段が接続され、この検知手段は、荷重検出手段から送られた荷重信号による荷重と予め求めていた反射体の正常時の荷重との間の変化量を求め、この変化量が増加した場合、反射体のキャビティ部が破損したと判断することを特徴とする高速炉の反射体システムである。
【0010】
本発明は、荷重検出手段は、リング状に形成された荷重検出器を有していることを特徴とする高速炉の反射体システムである。
【0011】
本発明は、荷重検出手段は、リング状に配置された複数の荷重検出器を有していることを特徴とする高速炉の反射体システムである。
【0012】
本発明は、荷重検出器は、引張荷重を検出する引張型荷重検出器、およびせん断荷重を検出するせん断型荷重検出器のうちのいずれか一つからなることを特徴とする高速炉の反射体システムである。
【0013】
本発明は、高速炉の構造体に保持され、冷却材が満たされている高速炉の原子炉容器内に収納された炉心の反応度を制御する高速炉の反射体システムにおいて、炉心の周縁外方に配置されるとともに上下方向に移動自在に設けられ、炉心から放射される中性子を反射する中性子反射部と、この中性子反射部の上方に設けられ、冷却材よりも中性子反射能力が低いキャビティ部とを有する反射体と、この反射体に連結され、反射体を上下方向に移動させる反射体駆動装置と、を備え、この反射体駆動装置は、高速炉の構造体に支持されるとともに反射体に伝達機構を介して連結され、反射体を上下駆動する駆動シリンダと、伝達機構と駆動シリンダとの間に連結され、反射体の荷重を検出する荷重検出手段とを有し、反射体駆動装置の荷重検出手段に、荷重検出手段から荷重信号を受信する検知手段が接続され、この検知手段は、荷重検出手段から送られた荷重信号による荷重と予め求めていた反射体の正常時の荷重との間の変化量を求め、この変化量が増加した場合、反射体のキャビティ部が破損したと判断することを特徴とする高速炉の反射体システムである。
【0014】
本発明は、荷重検出手段は、圧縮荷重を検出する圧縮型荷重検出器、およびせん断荷重を検出するせん断荷重検出器のうちのいずれか一つからなることを特徴とする高速炉の反射体システムである。
【0015】
本発明は、高速炉の構造体に保持され、冷却材が満たされている高速炉の原子炉容器内に収納された炉心の反応度を制御する高速炉の反射体システムにおいて、炉心の周縁外方に配置されるとともに上下方向に移動自在に設けられ、炉心から放射される中性子を反射する中性子反射部と、この中性子反射部の上方に設けられ、冷却材よりも中性子反射能力が低いキャビティ部とを有する反射体と、この反射体に連結され、反射体を上下方向に移動させる反射体駆動装置と、を備え、この反射体駆動装置は、高速炉の構造体に支持されるとともに反射体に駆動軸を介して連結され、反射体を上下駆動する駆動手段を有し、駆動軸、または駆動手段と駆動軸との間に連結された連結部材に、ひずみを検出するひずみゲージが貼り付けられ、このひずみゲージに、ひずみゲージからひずみ信号を受信する検知手段が接続され、この検知手段は、ひずみゲージから送られたひずみ信号に基づいて反射体の荷重を算出し、この算出された荷重と予め求めていた反射体の正常時の荷重との間の変化量を求め、この変化量が増加した場合、反射体のキャビティ部が破損したと判断することを特徴とする高速炉の反射体システムである。
【0016】
本発明は、高速炉の構造体に保持され、冷却材が満たされている高速炉の原子炉容器内に収納された炉心の反応度を制御する高速炉の反射体システムにおいて、炉心の周縁外方に配置されるとともに上下方向に移動自在に設けられ、炉心から放射される中性子を反射する中性子反射部と、この中性子反射部の上方に設けられ、冷却材よりも中性子反射能力が低いキャビティ部とを有する反射体と、この反射体に連結され、反射体を上下方向に移動させる反射体駆動装置と、を備え、この反射体駆動装置は、高速炉の構造体に支持されるとともに反射体に伝達機構を介して連結されるとともに出力軸を含み、反射体を上下駆動する駆動シリンダを有し、この駆動シリンダの出力軸に、ひずみを検出するひずみゲージが貼り付けられ、このひずみゲージに、ひずみゲージから送られたひずみ信号を受信する検知手段が接続され、この検知手段は、ひずみゲージから送られたひずみ信号に基づいて反射体の荷重を算出し、この算出された荷重と予め求めていた反射体の正常時の荷重との間の変化量を求め、この変化量が増加した場合、反射体のキャビティ部が破損したと判断することを特徴とする高速炉の反射体システムである。
【0017】
本発明は、高速炉の構造体に保持され、冷却材が満たされている高速炉の原子炉容器内に収納された炉心の反応度を制御する高速炉の反射体システムにおいて、炉心の周縁外方に配置されるとともに上下方向に移動自在に設けられ、炉心から放射される中性子を反射する中性子反射部と、この中性子反射部の上方に設けられ、冷却材よりも中性子反射能力が低いキャビティ部とを有する反射体と、この反射体に連結され、反射体を上下方向に移動させる反射体駆動装置と、を備え、この反射体駆動装置は、高速炉の構造体に支持されるとともに反射体に駆動軸を介して連結され、反射体を上下駆動する駆動手段と、この駆動手段と駆動軸との間に設けられ、駆動手段のトルクを検出するトルク検出手段とを有し、反射体駆動装置のトルク検出手段に、トルク検出手段からトルク信号を受信する検知手段が接続され、この検知手段は、トルク検出手段から送られたトルク信号に基づいて反射体の荷重を算出し、この算出された荷重と予め求めていた反射体の正常時の荷重との間の変化量を求め、この変化量が増加した場合、反射体のキャビティ部が破損したと判断することを特徴とする高速炉の反射体システムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高速炉の運転状態または停止状態にかかわらず、荷重検出手段により反射体の荷重を検出して、検知手段により反射体のキャビティ部の破損の有無を確実に検知することができる。このため、高速炉の信頼性をより一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1乃至図9は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システム示す図である。このうち図1は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムを含む高速炉の全体構成を示す図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムにおいて、燃料集合体心に反射体のキャビティ部を対向させた状態を示す図であり、図3は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムにおいて、図2の状態に対して反射体を引き上げた状態を示す図である。また、図4は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムの反射体駆動装置の詳細を示す図であり、図5は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムの第1荷重検出器を示す図である。また、図6は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムの第1荷重検出器を示す図であり、図7は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムの第2荷重検出器を示す図であり、図8は、本発明の第1の実施の形態における第3荷重検出器を示す図であり、図9は、本発明の第1の実施の形態における複数の荷重検出器がリング状に配置された状態を示す図である。
【0020】
まず、図1により高速炉の全体構成について説明する。図1に示すように高速炉1は、高速炉の構造体5(とりわけ後述する台座6)に保持されるとともに液体ナトリウムからなる一次冷却材2が満たされ、有底円筒状に形成された原子炉容器3と、この原子炉容器3内に収納され、一次冷却材2に浸された炉心4とを備えている。このうち炉心4は、内部に装荷される複数の核燃料の燃料集合体4aを有し、全体として円柱状に形成されている。
【0021】
ここで、高速炉1は、核燃料の交換をすることなく10数年から数十年、例えば30年程度連続して運転することができる原子炉であり、その出力は30MW〜百数十MW(電気出力で1万KW〜10数万KW)になる。また、原子炉全体の高さは、25m〜35m、例えば30m程度になり、このうち炉心の高さは、例えば2.5m程度になる。冷却材の温度は、液体ナトリウムが凝固することがない温度以上であればよく、余裕をもたせて200℃以上、好ましくは300℃〜550℃で運転される。具体的には、原子炉容器3内の冷却材流路において300℃〜400℃、一例として350℃となっており、炉心側で500℃〜550℃、一例として500℃となっている。
【0022】
また、図1に示すように、原子炉容器3の外側に、台座6に支持されたガードベッセル7が設けられ、このガードベッセル7により原子炉容器3の外周が覆われている。また、原子炉容器3の頂部に、原子炉容器3を閉塞する遮蔽プラグ8が設けられ、この遮蔽プラグ8は、上部プラグ8aにより構成され、台座6に遮蔽プラグ支持台9を介して支持されている。これら遮蔽プラグ8、遮蔽プラグ支持台9、および台座6により高速炉の構造体5が構成されている。
【0023】
また、図1に示すように、炉心4の周縁外方に配置されて上下方向に移動自在に反射体30が設けられ、この反射体30を上下方向へ移動することによって炉心4から放出される中性子の漏洩を調整し、炉心4の反応度を制御するように構成されている。
【0024】
また、図1に示すように、炉心4と反射体30との間に、炉心4を覆う炉心槽11が設けられている。また、反射体30の周縁外方に、反射体30を取り囲む隔壁12が設けられ、この隔壁12と原子炉容器3の内壁との間に一次冷却材2の冷却材流路が形成されている。また、隔壁12と原子炉容器3の内壁との間に、炉心4から放出される中性子を遮蔽する中性子遮蔽体13が設けられ、炉心4から反射体30を透過または迂回して放出される中性子を遮蔽している。また、原子炉容器3内の下部に、原子炉容器3に固定された炉心支持台14を介して炉心支持板15が設けられ、この炉心支持板15上に、炉心4、炉心槽11、隔壁12、および中性子遮蔽体13が支持されている。さらに、炉心支持板15上であって炉心4の下方に、炉心4へ流入する一次冷却材2が通過するエントランスモジュール10が設けられている。
【0025】
また、図1に示すように、炉心4の上方には、炉心4を支持する上部支持板19が設けられている。この上部支持板19の上方であって、原子炉容器3内における中性子遮蔽体13の上方に、円環状に形成された電磁ポンプ20が設けられ、この電磁ポンプ20により、一次冷却材2を図1に示す矢印のように一次冷却材2が循環される。
【0026】
また、電磁ポンプ20の上方に、一次冷却材2と二次冷却材(図示せず)との熱交換を行う中間熱交換器21が設けられている。この中間熱交換器21のチューブ(図示せず)側に一次冷却材2が流入され、シェル(図示せず)側に二次冷却材が流入され、一次冷却材2と二次冷却材が熱交換可能に構成されている。なお、これら電磁ポンプ20と中間熱交換器21は、例えば一体あるいは一体的に構成させることができる。さらに、中間熱交換器21の上方に、二次冷却材を原子炉容器3内へと導く入口ノズル22が設けられるとともに、一次冷却材2を原子炉容器3外へと導く出口ノズル23が設けられ、この出口ノズル23は、図示しない蒸気発生器に連結されている。なお、二次冷却材に用いる材料としては、一次冷却材2と同様に液体ナトリウムを用いることができる。
【0027】
また、図1に示すように、炉心4内に出し入れ自在であって原子炉を停止させる炉停止棒16が設けられ、この炉停止棒16に、炉停止棒16を上下方向に移動させる炉停止棒駆動装置17が連結されている。この炉停止棒駆動装置17は、後述する反射体駆動装置35とともに、遮蔽プラグ8を構成する上部プラグ8a上に設置され、台座6上に固定された格納ドーム18によって覆われている。
【0028】
また、図2および図3に示すように、反射体30は、一次冷却材よりも中性子反射能力が高く、炉心4から放射される中性子を反射する中性子反射部31と、この中性子反射部31の上方に設けられ、一次冷却材2よりも中性子反射能力が低いキャビティ部32とを有している。これら反射体30の中性子反射部31およびキャビティ部32は、周方向に整列して複数配置され、全体として略円筒状(スリーブ状)あるいは円環状に構成され、周方向に数分割あるいは10数分割可能な独立したセグメント構造に構成されている。
【0029】
また、反射体30の中性子反射部31は積層された複数の金属板(図示せず)からなり、この金属板は、一次冷却材2が流れる複数の冷却材流路(図示せず)を有している。
【0030】
また、反射体30のキャビティ部32は複数の密閉容器33からなり、各密閉容器33内に冷却材よりも中性子反射能力が劣るヘリウム(He)、またはアルゴン(Ar)などの不活性ガスが封入されている。あるいは、各密閉容器33内に不活性ガスを封入することなく真空に保ってもよい。なお、キャビティ部32の密閉容器33は、円筒形状または箱形状など、任意の形状とすることができる。
【0031】
また、図1乃至図3に示すように、遮蔽プラグ8を構成する上部プラグ8a上に反射体駆動装置35が設置され、この反射体駆動装置35は、反射体30のキャビティ部12に駆動軸34を介して連結され、反射体30を上下方向に移動させるように構成されている。また、駆動軸34は、図4に示すように、駆動軸34の上部に形成された挿入孔34aを有し、反射体30が上方に引き上げられた場合に、後述するボールナット43を挿入可能に構成している。さらに、駆動軸34は、その上端にフランジ状に形成された端部34bを有している。
【0032】
また、図2乃至図4に示すように、原子炉容器3を閉塞する遮蔽プラグ8に、駆動軸34を案内する駆動軸ガイド24が固定され、この駆動軸ガイド24と、遮蔽プラグ8および後述する反射体駆動装置35の装置本体36との間に、シール部25が設けられている。また、駆動軸ガイド24の下端に伸縮継手26の一端が連結され、この伸縮継手26の他端は駆動軸34の外周面に連結され、駆動軸34の上下方向移動に追従しながら伸縮継手26の上方側と下方側との間をシールしている。
【0033】
図2および図3に示すように、反射体駆動装置35は、高速炉の構造体5(とりわけ遮蔽プラグ8)上に固定された装置本体36と、この装置本体36に支持されるとともに反射体30に駆動軸34を介して連結され、反射体30を上下駆動する電動機(駆動手段)37とを有している。具体的には、装置本体36に対して上下方向に摺動自在に取付台38が設けられ、この取付台38上に電動機37が固定されている。また、装置本体36に、出力軸39aを含み、電動機37とは独立して反射体30を上下駆動する駆動シリンダ39が固定され、駆動シリンダ39の出力軸39aに取付台38が連結される。この駆動シリンダ39により、駆動軸34、電動機37、および取付台38から構成される伝達機構57を介して、反射体30が上下駆動されるようになっている。
【0034】
また、図4および図7に示すように、反射体駆動装置35の電動機37に連結軸40(図12参照)を介して減速機41が連結され、この減速機41はその下部に後述するボールねじ43の支持部43aを回転自在に支持する軸受け部41aを有し、この軸受け部41aと取付台38との間に減速機側減速機側受台52が介在され、減速機41はこの減速機側減速機側受台52を介して取付台38上に固定されるように構成されている。
【0035】
また、図4に示すように、反射体駆動装置35の電動機37は、その下部に連結軸40を回転自在に支持する軸受け部37a(図11および図12参照)を有し、この軸受け部37aと減速機41との間に電動機側受台53(図12参照)が介在され、電動機37はこの電動機側受台53を介して減速機41上に固定されるように構成されている。
【0036】
また、図2乃至図4に示すように、取付台38の下方に円筒形状のナットガイド42が固定され、このナットガイド42に対して同心状に配置されるように、減速機41にボールねじ43が連結されている。このボールねじ43は、その上部に、ねじ溝を形成することなく、減速機41の軸受け部41aにより支持可能に形成された支持部43a(図7参照)を有している。また、ナットガイド42内に、ボールねじ43に螺合するボールナット44が設けられ、このボールナット44は、ナットガイド42に対して回り止めがなされてナットガイド42内面に対して摺動自在に構成されている。
【0037】
また、図2乃至図4に示すように、電動機37と駆動軸34との間に、反射体30の荷重を検出する第1荷重検出手段45が設けられている。すなわち、図5および図6に示すように、この第1荷重検出手段45は、ボールナット44と駆動軸34の端部34bとの間に設けられ、リング状に形成された第1荷重検出器46を有している。このように第1荷重検出器46はリング状に形成されているため、反射体駆動装置35の電動機37により反射体30を上方に引き上げた場合、ボールナット43が第1荷重検出器46内を貫通可能となるように構成されている。
【0038】
また、図4および図7に示すように、第1加重検出手段45は、減速機41の軸受け部41aと減速機側受台52との間に設けられ、リング状に形成された第2荷重検出器47を有している。このように第2荷重検出器47は、図7に示すように、リング状に形成されているため、ボールねじ43の支持部43aを貫通させるように取り付けられている。
【0039】
また、図4および図8に示すように、反射体駆動装置35の取付台38と駆動シリンダ39の出力軸39aとの間に、反射体30の荷重を検出する第2荷重検出手段48が設けられている。この駆動シリンダ39の出力軸39aに、反射体30による圧縮荷重が負荷されるため、この第2荷重検出手段48は、圧縮荷重を検出する圧縮型荷重検出器である第3荷重検出器49からなっていることが好ましい。なお、駆動シリンダ39の出力軸39aに、反射体30によるせん断荷重も負荷されるため、第3荷重検出器49として圧縮型荷重検出器の代わりに、せん断荷重を検出するせん断型荷重検出器を用いても良い。
【0040】
さらに、反射体駆動装置35の第1荷重検出手段45の第1荷重検出器46および第2荷重検出器47、並びに第2荷重検出手段48の第3荷重検出器49に、第1荷重検出器46、第2荷重検出器47、および第3荷重検出器49から荷重信号を受信する検知手段50が接続されている。この検知手段50は、第1荷重検出器46、第2荷重検出器47、および第3荷重検出器49から送られた荷重信号による荷重と予め求めていた反射体30の正常時の荷重との間の変化量をそれぞれ求め、各変化量のうち少なくとも一つが増加した場合、反射体30のキャビティ部32が破損したと判断するようになっている。
【0041】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。まず、図1に示す高速炉1における冷却材の流れについて述べる。
【0042】
まず、図1中の矢印に示すように、一次冷却材2が、電磁ポンプ20の駆動力によって原子炉容器3内のうち、原子炉容器3の内壁と隔壁12との間を下方に移動する。次に、一次冷却材2は炉心支持板15の下方に達し、原子炉容器3の下方から炉心支持板15を通って炉心4下部のエントランスモジュール10を通って炉心4内に流入する。そして、このように炉心4内に流入した一次冷却材2は、炉心4内の燃料集合体4aの核分裂によって発生した熱を吸収し、加熱される。
【0043】
次に、炉心4内で加熱された一次冷却材2は、炉心槽11の内側を上昇し、中間熱交換器21に達する。この間、図1に示すように、二次冷却材(図示せず)が、入口ノズル22を介して原子炉容器3内に流入され、中間熱交換器21に達する。
【0044】
次に、中間熱交換器21内において、一次冷却材2と二次冷却材が熱交換する。この場合、加熱された一次冷却材2の熱が二次冷却材に移動し、一次冷却材2が冷却されるとともに二次冷却材が加熱される。その後、この加熱された二次冷却材は、出口ノズル23を介して原子炉容器3外へ排出され、図示しない蒸気発生器に送られる。
【0045】
次に、冷却された一次冷却材5は、中間熱交換器21の下方に設けられた電磁ポンプ20へ流れ、この電磁ポンプ20により原子炉容器3内を循環する。
【0046】
次に、本実施の形態における高速炉の反射体システムの作用について述べる。
【0047】
まず、図2乃至図4により、反射体駆動装置35の電動機37により反射体30を上下方向に移動させる場合について述べる。この場合、電動機37によって減速機41を介してボールねじ43を所望の方向に回転させる。このことにより、このボールねじ43に螺合するボールナット44がナットガイド42に対して上下方向に摺動し、このボールナット44の摺動に伴い駆動軸34を介して反射体30を上下方向に移動させることができる。
【0048】
次に、反射体駆動装置35の駆動シリンダ39により反射体30を上下方向に移動させる場合について述べる。このうち駆動シリンダ39により反射体30を上方に移動させる場合、反射体駆動装置35の駆動シリンダ39により取付台38を上方に移動させる。このことにより、この取付台38上に固定された電動機37および減速機41が、取付台38とともに上方に移動し、減速機41にボールねじ43、ボールナット44、および駆動軸34を介して連結された反射体30を上方に移動させることができる(図3参照)。
【0049】
一方、反射体30を下方に移動させる場合、まず、駆動シリンダ39により取付台38を下方に移動させる。このことにより、この取付台38上に固定された電動機37および減速機41が、取付台38とともに下方に移動し、減速機41にボールねじ43、ボールナット44、および駆動軸34を介して連結された反射体30を下方に移動させることができる。
【0050】
このようにして電動機37または駆動シリンダ39により反射体30を上下方向にそれぞれ移動させて、反射体30を炉心4に対して所望の位置に保持することができる。なお、駆動シリンダ39により反射体30を移動させる場合、電動機37により反射体30を移動させる場合よりも反射体30の移動速度を大きくすることができる。このため、炉心4の反応度を制御するときには、駆動シリンダ39を用いて反射体30を駆動し、反射体30を比較的迅速に上下方向に移動させる。一方、電動機37による反射体30の駆動は、炉心4の燃料集合体4aの核燃料を長期間かけて完全に燃焼させるために、反射体30を長期間かけて極めて低速で連続上昇させる場合に用いられる。
【0051】
ここで、高速炉1における炉心4の反応度を高める場合、上述のように反射体駆動装置35の駆動シリンダ39により反射体30を上下方向に移動させ、反射体30の中性子反射部31を炉心4の燃料集合体4aに対向させる。この場合、中性子反射部31は、一次冷却材2の中性子反射能力よりも高い中性子反射能力をもつため、炉心4から放出される中性子が炉心4へ反射されて、炉心4の反応度を高めることができる。
【0052】
一方、炉心4の反応度を低くする場合、反射体駆動装置35の駆動シリンダ39により反射体30を上下方向に移動させ、反射体のキャビティ部32を炉心4の燃料集合体4aに対向させる(図2参照)。この場合、キャビティ部32は、一次冷却材2よりも中性反射能力よりも低い中性子反射能力をもつため、炉心4から放出される中性子が透過されて、炉心4の反応度を低くすることができる。
【0053】
このようにして、反射体駆動装置35の駆動シリンダ39によって反射体30を上下方向に移動して、炉心4に対する反射体30の位置を調整することにより、炉心4の反応度を制御することができる。
【0054】
この間、図4に示すように、ボールナット44と駆動軸34の端部34bとの間に設けられた第1荷重検出手段45の第1荷重検出器46において荷重が検出され、この検出された荷重による荷重信号が検知手段50に送られる。同様にして、減速機41の軸受け部41aと減速機側受台52との間に設けられた第2荷重検出器47において荷重が検出され、この検出された荷重による荷重信号が検知手段50に送られる。さらに、伝達機構57の取付台38と駆動シリンダ39の出力軸39aとの間に設けられた第2荷重検出手段48の第3荷重検出器49において荷重が検出され、この検出された荷重による荷重信号が検知手段50に送られる。
【0055】
次に、検知手段50において、第1荷重検出器46、第2荷重検出器47、および第3荷重検出器49からそれぞれ送られた荷重信号による荷重が正常時の荷重として記憶される。
【0056】
その後、所定時間経過後に、第1荷重検出器46、第2荷重検出器47、および第3荷重検出器49において反射体30の荷重を検出し、検知手段50に荷重信号として送られ、検知手段50において、第1荷重検出器46、第2荷重検出器47、および第3荷重検出器49からそれぞれ送られた荷重信号による荷重と、上述した予め求めて記憶していた反射体30の荷重との間の変化量がそれぞれ求められる。各変化量が増加していない場合、反射体30のキャビティ部32は破損することなく正常であると判断される。
【0057】
ところで、反射体30のキャビティ部32の密閉容器33に、不測の事態により微小なき裂が生じる等によって密閉容器33が破損した場合、密閉容器33内に徐々に一次冷却材2が侵入する。この場合、密閉容器33内に気体が封入されていた場合には、この一次冷却材2の侵入に伴って封入されていた気体が排出されていく。このことにより、キャビティ部32の浮力が次第に低下し、反射体30の荷重が増大する。
【0058】
この状態において、第1荷重検出器46、第2荷重検出器47、および第3荷重検出器49により検出された各荷重は、検知手段50により予め求めて記憶されていた反射体30の正常時の各荷重よりも増大する。このことにより、上述の各荷重と正常時の各荷重との変化量が増加し、検知手段50により、反射体30のキャビティ部32が破損したと判断される。具体的には、この変化量が所定量よりも大きい場合にキャビティ部32が破損したと判断される。同様にして、第2荷重検出器47から送られた荷重信号による荷重と、上述した予め求めて記憶されていた反射体30の正常時の荷重との間の変化量が増加した場合、反射体30のキャビティ部32が破損したと判断され、第3荷重検出器49から送られた荷重信号による荷重と、上述した予め求めて記憶されていた反射体30の正常時の荷重との間の変化量が増加した場合、反射体30のキャビティ部32が破損したと判断される。すなわち、第1荷重検出器46、第2荷重検出器47、および第3荷重検出器49のうちの少なくとも一つの荷重検出器における反射体30の荷重の変化量が増加した場合、検知手段50により反射体30が破損したと判断される。
【0059】
このように本実施の形態によれば、高速炉1の運転状態または停止状態にかかわらず、第1荷重検出器46、第2荷重検出器47、および第3荷重検出器49により反射体30の荷重を検出して、検知手段50により反射体30のキャビティ部32の破損の有無を確実に検知することができる。このため、高速炉1の信頼性をより一層向上させることができる。
【0060】
なお、本実施の形態においては、ボールナット44と駆動軸34の端部34bとの間に設けられた第1荷重検出器46、減速機41の軸受け部41aと減速機側受台52との間に設けられた第2荷重検出器47、および、駆動シリンダ39の出力軸39aと取付台38との間に設けられた第3荷重検出器49により反射体30の荷重をそれぞれ検出する例について述べたが、このことに限られることはなく、これら各荷重検出器のうち少なくとも一つの荷重検出器を設けて、反射体30の荷重を検出するように構成しても良い。
【0061】
また本実施の形態においては、第1荷重検出手段45は、リング状に形成された第1荷重検出器46を有している例について述べたが、このことに限られることはなく、リング状に形成された第1荷重検出器46に代えて、図9に示すように、ボールナット44と駆動軸34の端部34bとの間に、2つの荷重検出器51をリング状(駆動軸34の中心に対して点対称となるよう)に配置して検知手段50にそれぞれ接続してもよい。この場合、駆動軸34に反射体30による引張荷重が負荷されるため、各荷重検出器51は、引張荷重を検出する引張型荷重検出器からなっていることが好ましい。なお、駆動軸34に反射体30によるせん断荷重も負荷されるため、各荷重検出器51として引張型荷重検出器の代わりに、せん断荷重を検出するせん断型荷重検出器を用いても良い。
【0062】
また本実施の形態において、第2荷重検出器47は、減速機41の軸受け部41aと減速機側受台52との間に設けられている例について述べたが、このことに限られることはなく、電動機37の軸受け部37a(図11および図12参照)と電動機側受台53との間に設けても良い。
【0063】
さらに本実施の形態において、反射体駆動装置35は、反射体30を上下駆動する電動機37と、この電動機37とは独立して反射体30を上下駆動する駆動シリンダ39とを有している例について述べた。しかしながらこのことに限られることはなく、反射体駆動装置35は、電動機37および駆動シリンダ39のうちのいずれか一つのみを有して反射体30を上下駆動するように構成しても良い。すなわち、反射体30を上下駆動する手段が電動機37のみである場合、反射体駆動装置35は、第2荷重検出手段48を有することなく第1荷重検出手段45のみを有する。一方、反射体30を上下駆動する手段が駆動シリンダ39のみである場合、反射体駆動装置35は、第1荷重検出手段45を有することなく第2荷重検出手段48のみを有する。なお、この場合、伝達機構57は、取付台38と、この取付台38を駆動軸34に連結して駆動シリンダ39の駆動力を伝達する伝達部材(図示せず)により構成され、駆動シリンダ39によって反射体30が上下駆動するように構成される。
【0064】
第2の実施の形態
次に、図10により、本発明の第2の実施の形態における高速炉の反射体システムについて説明する。ここで図10は、本発明の第2の実施の形態における高速炉の反射体システムの反射体駆動装置の詳細を示す図である。
【0065】
図10に示す第2の実施の形態において、高速炉の反射体システムは、ひずみゲージを用いて反射体の荷重を検出する点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図9に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図10において、図1乃至図9に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0066】
図10に示すように、電動機37と駆動軸34との間、すなわちボールねじ43と駆動軸34との間にボールナット44(連結部材)が連結され、このボールナット44に、ボールナット44のひずみを検出する第1ひずみゲージ54が貼り付けられている。
【0067】
また、図10に示すように、反射体駆動装置35の駆動シリンダ39の出力軸39aに、この出力軸39aのひずみを検出する第2ひずみゲージ55が貼り付けられている。
【0068】
この第1ひずみゲージ54および第2ひずみゲージ55に、第1ひずみゲージ54および第2ひずみゲージ55からそれぞれ送られるひずみ信号を受信する検知手段50が接続されている。この検知手段50は、第1ひずみゲージ54および第2ひずみゲージ55から送られたひずみ信号に基づいて反射体30の荷重をそれぞれ算出し、この算出された各荷重と予め求めていた反射体30の正常時の各荷重との間の変化量を求め、各変化量のうち少なくとも一つが増加した場合、反射体30のキャビティ部32が破損したと判断するようになっている。
【0069】
このように本実施の形態によれば、高速炉1の運転状態または停止状態にかかわらず、第1ひずみゲージ54および第2ひずみゲージ55からのひずみ信号に基づいて検知手段50により反射体30の荷重を算出して、検知手段50により反射体30のキャビティ部32の破損の有無を確実に検知することができる。このため、高速炉1の信頼性をより一層向上させることができる。
【0070】
なお本実施の形態においては、ボールナット44に貼り付けられた第1ひずみゲージ54および駆動シリンダ39の出力軸39aに貼り付けられた第2ひずみゲージ55からのひずみ信号に基づいて検知手段50により反射体30の荷重をそれぞれ算出する例について述べたが、このことに限られることはなく、これらひずみゲージのうちいずれか一方のひずみゲージのみを用いて検知手段50により反射体30の荷重を算出するように構成しても良い。
【0071】
また本実施の形態においては、第1ひずみゲージ54はボールナット44に貼り付けられている例について述べたが、このことに限られることはなく、第1ひずみゲージ54を駆動軸34に貼り付けても良い。
【0072】
第3の実施の形態
次に、図11および図12により、本発明の第3の実施の形態における高速炉の反射体システムについて説明する。ここで図11は、本発明の第3の実施の形態における高速炉の反射体システムの反射体駆動装置の詳細を示す図であり、図12は、本発明の第3の実施の形態における高速炉の反射体システムのひずみトルク測定器を示す図である。
【0073】
図11および図12に示す第3の実施の形態において、高速炉の反射体システムは、トルク検出手段を用いて反射体の荷重を検出する点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図9に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図11および図12において、図1乃至図9に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0074】
図11および図12に示すように、電動機37と駆動軸34との間、すなわち電動機37の軸受け部37aと減速機41側の電動機側受台53との間に、減速機41に連結されている連結軸40のトルクを検出するひずみトルク測定器(トルク検出手段)56が設けられている。
【0075】
このひずみトルク測定器56に、ひずみトルク測定器56から送られるトルク信号を受信する検知手段50が接続されている。この検知手段50は、ひずみトルク測定器56から送られたトルク信号に基づいて反射体30の荷重を算出し、この算出された荷重と予め求めていた反射体30の正常時の荷重との間の変化量を求め、この変化量が増加した場合、反射体30のキャビティ部32が破損したと判断するようになっている。
【0076】
このように本実施の形態によれば、高速炉1の運転状態または停止状態にかかわらず、ひずみトルク測定器56からのトルク信号に基づいて検知手段50により反射体30の荷重を算出して、検知手段50により反射体30のキャビティ部32の破損の有無を確実に検知することができる。このため、高速炉1の信頼性をより一層向上させることができる。
【0077】
なお本実施の形態においては、ひずみトルク測定器56は、電動機37の軸受け部37aと減速機41側の電動機側受台53との間に設けられている例について述べたが、このことに限られることはなく、減速機41の軸受け部41a(図4および図7参照)と取付台38側の減速機側受台52との間に設けて、減速機41に連結されているボールねじ43のトルクを検出し、検知手段50により反射体50の荷重を算出しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムを含む高速炉の全体構成を示す図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムにおいて、燃料集合体心に反射体のキャビティ部を対向させた状態を示す図。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムにおいて、図2の状態に対して反射体を引き上げた状態を示す図。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムの反射体駆動装置の詳細を示す図。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムの第1荷重検出器を示す図。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムの第1荷重検出器を示す図。
【図7】図7は、本発明の第1の実施の形態における高速炉の反射体システムの第2荷重検出器を示す図。
【図8】図8は、本発明の第1の実施の形態における第3荷重検出器を示す図。
【図9】図9は、本発明の第1の実施の形態における複数の荷重検出器がリング状に配置された状態を示す図。
【図10】図10は、本発明の第2の実施の形態における高速炉の反射体システムの反射体駆動装置の詳細を示す図。
【図11】図11は、本発明の第3の実施の形態における高速炉の反射体システムの反射体駆動装置の詳細を示す図。
【図12】図12は、本発明の第3の実施の形態における高速炉の反射体システムのひずみトルク測定器を示す図。
【符号の説明】
【0079】
1 高速炉
2 一次冷却材
3 原子炉容器
4 炉心
4a 燃料集合体
5 高速炉の構造体
6 台座
7 ガードベッセル
8 遮蔽プラグ
8a 上部プラグ
9 遮蔽プラグ支持台
10 エントランスモジュール
11 炉心槽
12 隔壁
13 中性子遮蔽体
14 炉心支持台
15 炉心支持板
16 炉停止棒
17 炉停止棒駆動装置
18 格納ドーム
19 上部支持板
20 電磁ポンプ
21 中間熱交換器
22 入口ノズル
23 出口ノズル
24 駆動軸ガイド
25 シール部
26 伸縮継手
27 二次冷却材
30 反射体
31 中性子反射部
32 キャビティ部
33 密閉容器
34 駆動軸
34a 挿入孔
34b 端部
35 反射体駆動装置
36 装置本体
37 電動機
37a 軸受け部
38 取付台
39 駆動シリンダ
39a 出力軸
40 連結軸
41 減速機
41a 軸受け部
42 ナットガイド
43 ボールねじ
43a 支持部
44 ボールナット
45 第1荷重検出手段
46 第1荷重検出器
47 第2荷重検出器
48 第2荷重検出手段
49 第3荷重検出器
50 検知手段
51 荷重検出器
52 減速機側受台
53 電動機側受台
54 第1ひずみゲージ
55 第2ひずみゲージ
56 ひずみトルク測定器
57 伝達機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速炉の構造体に保持され、冷却材が満たされている高速炉の原子炉容器内に収納された炉心の反応度を制御する高速炉の反射体システムにおいて、
炉心の周縁外方に配置されるとともに上下方向に移動自在に設けられ、炉心から放射される中性子を反射する中性子反射部と、この中性子反射部の上方に設けられ、冷却材よりも中性子反射能力が低いキャビティ部とを有する反射体と、
この反射体に連結され、反射体を上下方向に移動させる反射体駆動装置と、を備え、
この反射体駆動装置は、高速炉の構造体に支持されるとともに反射体に駆動軸を介して連結され、反射体を上下駆動する駆動手段と、この駆動手段と駆動軸との間に設けられ、反射体の荷重を検出する荷重検出手段とを有し、
反射体駆動装置の荷重検出手段に、荷重検出手段から荷重信号を受信する検知手段が接続され、
この検知手段は、荷重検出手段から送られた荷重信号による荷重と予め求めていた反射体の正常時の荷重との間の変化量を求め、この変化量が増加した場合、反射体のキャビティ部が破損したと判断することを特徴とする高速炉の反射体システム。
【請求項2】
荷重検出手段は、リング状に形成された荷重検出器を有していることを特徴とする請求項1に記載の高速炉の反射体システム。
【請求項3】
荷重検出手段は、リング状に配置された複数の荷重検出器を有していることを特徴とする請求項1に記載の高速炉の反射体システム。
【請求項4】
荷重検出器は、引張荷重を検出する引張型荷重検出器、およびせん断荷重を検出するせん断型荷重検出器のうちのいずれか一つからなることを特徴とする請求項3に記載の高速炉の反射体システム。
【請求項5】
高速炉の構造体に保持され、冷却材が満たされている高速炉の原子炉容器内に収納された炉心の反応度を制御する高速炉の反射体システムにおいて、
炉心の周縁外方に配置されるとともに上下方向に移動自在に設けられ、炉心から放射される中性子を反射する中性子反射部と、この中性子反射部の上方に設けられ、冷却材よりも中性子反射能力が低いキャビティ部とを有する反射体と、
この反射体に連結され、反射体を上下方向に移動させる反射体駆動装置と、を備え、
この反射体駆動装置は、高速炉の構造体に支持されるとともに反射体に伝達機構を介して連結され、反射体を上下駆動する駆動シリンダと、伝達機構と駆動シリンダとの間に連結され、反射体の荷重を検出する荷重検出手段とを有し、
反射体駆動装置の荷重検出手段に、荷重検出手段から荷重信号を受信する検知手段が接続され、
この検知手段は、荷重検出手段から送られた荷重信号による荷重と予め求めていた反射体の正常時の荷重との間の変化量を求め、この変化量が増加した場合、反射体のキャビティ部が破損したと判断することを特徴とする高速炉の反射体システム。
【請求項6】
荷重検出手段は、圧縮荷重を検出する圧縮型荷重検出器、およびせん断荷重を検出するせん断荷重検出器のうちのいずれか一つからなることを特徴とする請求項5に記載の高速炉の反射体システム。
【請求項7】
高速炉の構造体に保持され、冷却材が満たされている高速炉の原子炉容器内に収納された炉心の反応度を制御する高速炉の反射体システムにおいて、
炉心の周縁外方に配置されるとともに上下方向に移動自在に設けられ、炉心から放射される中性子を反射する中性子反射部と、この中性子反射部の上方に設けられ、冷却材よりも中性子反射能力が低いキャビティ部とを有する反射体と、
この反射体に連結され、反射体を上下方向に移動させる反射体駆動装置と、を備え、
この反射体駆動装置は、高速炉の構造体に支持されるとともに反射体に駆動軸を介して連結され、反射体を上下駆動する駆動手段を有し、
駆動軸、または駆動手段と駆動軸との間に連結された連結部材に、ひずみを検出するひずみゲージが貼り付けられ、
このひずみゲージに、ひずみゲージからひずみ信号を受信する検知手段が接続され、
この検知手段は、ひずみゲージから送られたひずみ信号に基づいて反射体の荷重を算出し、この算出された荷重と予め求めていた反射体の正常時の荷重との間の変化量を求め、この変化量が増加した場合、反射体のキャビティ部が破損したと判断することを特徴とする高速炉の反射体システム。
【請求項8】
高速炉の構造体に保持され、冷却材が満たされている高速炉の原子炉容器内に収納された炉心の反応度を制御する高速炉の反射体システムにおいて、
炉心の周縁外方に配置されるとともに上下方向に移動自在に設けられ、炉心から放射される中性子を反射する中性子反射部と、この中性子反射部の上方に設けられ、冷却材よりも中性子反射能力が低いキャビティ部とを有する反射体と、
この反射体に連結され、反射体を上下方向に移動させる反射体駆動装置と、を備え、
この反射体駆動装置は、高速炉の構造体に支持されるとともに反射体に伝達機構を介して連結されるとともに出力軸を含み、反射体を上下駆動する駆動シリンダを有し、
この駆動シリンダの出力軸に、ひずみを検出するひずみゲージが貼り付けられ、
このひずみゲージに、ひずみゲージから送られたひずみ信号を受信する検知手段が接続され、
この検知手段は、ひずみゲージから送られたひずみ信号に基づいて反射体の荷重を算出し、この算出された荷重と予め求めていた反射体の正常時の荷重との間の変化量を求め、この変化量が増加した場合、反射体のキャビティ部が破損したと判断することを特徴とする高速炉の反射体システム。
【請求項9】
高速炉の構造体に保持され、冷却材が満たされている高速炉の原子炉容器内に収納された炉心の反応度を制御する高速炉の反射体システムにおいて、
炉心の周縁外方に配置されるとともに上下方向に移動自在に設けられ、炉心から放射される中性子を反射する中性子反射部と、この中性子反射部の上方に設けられ、冷却材よりも中性子反射能力が低いキャビティ部とを有する反射体と、
この反射体に連結され、反射体を上下方向に移動させる反射体駆動装置と、を備え、
この反射体駆動装置は、高速炉の構造体に支持されるとともに反射体に駆動軸を介して連結され、反射体を上下駆動する駆動手段と、この駆動手段と駆動軸との間に設けられ、駆動手段のトルクを検出するトルク検出手段とを有し、
反射体駆動装置のトルク検出手段に、トルク検出手段からトルク信号を受信する検知手段が接続され、
この検知手段は、トルク検出手段から送られたトルク信号に基づいて反射体の荷重を算出し、この算出された荷重と予め求めていた反射体の正常時の荷重との間の変化量を求め、この変化量が増加した場合、反射体のキャビティ部が破損したと判断することを特徴とする高速炉の反射体システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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