高開口比化用非対称実装パターンを有するマイクロチャンネルプレート
【課題】本発明は、より高い開口比(OAR)をもたらす非対称実装パターンを有するマイクロチャンネルプレートを製造する装置及び方法を提供する。
【解決手段】マイクロチャンネルプレートを作製するブールは、(a)各セットが六角形状境界ファイバーを形成するように配置された少なくとも2セットのファイバー列と、(b)2セットの六角形状境界ファイバーの間に配設される追加ファイバー列とを有する。追加ファイバー列は、水平方向に方向付けされた境界ファイバーの上に実装される水平方向に方向付けされたファイバー列を有する。水平方向に方向付けされた境界ファイバー列におけるファイバーは、追加ファイバー列における2つの連続するファイバーに隣接して実装され、ファイバーの三角形態配列を形成する。ファイバーの三角形態配列は、少なくとも90%の最大開口比(OAR)を形成する。
【解決手段】マイクロチャンネルプレートを作製するブールは、(a)各セットが六角形状境界ファイバーを形成するように配置された少なくとも2セットのファイバー列と、(b)2セットの六角形状境界ファイバーの間に配設される追加ファイバー列とを有する。追加ファイバー列は、水平方向に方向付けされた境界ファイバーの上に実装される水平方向に方向付けされたファイバー列を有する。水平方向に方向付けされた境界ファイバー列におけるファイバーは、追加ファイバー列における2つの連続するファイバーに隣接して実装され、ファイバーの三角形態配列を形成する。ファイバーの三角形態配列は、少なくとも90%の最大開口比(OAR)を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像増強装置に使用されるマイクロチャンネルプレート(MCPs)に関する。具体的には、本発明は、より高い開口比(OAR)をもたらす非対称実装パターンを有するマイクロチャンネルプレートを製造する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロチャンネルプレートは、画像増強装置における電子倍増管として使用される。マイクロチャンネルプレートは、整列されたチャンネルが延在する薄寸ガラスプレートであって、光電陰極と蛍光面との間に配置される薄寸ガラスプレートである。光電陰極からの入射電子は、マイクロチャンネルプレートの入力側に入り、チャンネル壁に衝突する。マイクロチャンネルプレートに電圧が印加されているときには、これらの入射電子すなわち一次電子は増幅され二次電子をもたらす。二次電子は、マイクロチャンネルプレートの後端にてチャンネルから出て、蛍光面に画像をもたらす。
【0003】
一般的にマイクロチャンネルプレートの製造は、1990年3月27日付けのRonald Sinkの米国特許第4,912,314号(特許文献1)に開示されているように、ファイバー引き抜き工程から開始される。該特許文献1は、その全体が本参照により組み込まれるものとする。便宜上のために、特許文献1に開示されている図1から図4が本願図面に含まれ、以下に説明される。
【0004】
図1は、マイクロチャンネルプレート用の、製造を着手する際のファイバー10を示す。ファイバー10は、ガラスのコア12と該コアを取り囲むガラス被覆14とを有する。コア12は、適切なエッチング溶液内にてエッチング可能なガラス材料から作られる。ガラス被覆14は、ガラスのコアと実質的に同一の軟化温度を有するガラス材料から作られる。しかしながら、被覆14のガラス材料は、コア12のものとは異なり鉛含有量が高く、コアの材料をエッチングするために使用される同一の条件下においてはエッチング不能な被覆を呈する。すなわち、被覆14は、ガラスのコアのエッチング後に残存する。適切な被覆ガラスは、コーニングガラス8161(Corning Glass 8161)のような鉛タイプのガラスである。
【0005】
光ファイバーは、以下の様式にて形成される。エッチング可能なガラスロッドと該ロッドを同軸的に取り囲む被覆チューブとが、加熱炉区画が組み込まれた延伸機内にて鉛直に吊り下げられる。加熱炉の温度は、ガラスの軟化温度まで昇温される。ロッドとチューブとは融合され、単一のファイバー10になるように延伸される。ファイバー10は牽引機構に送給され、該牽引機構においては所望の径のファイバーが得られるまで速度が調整される。ファイバー10は、約457.2mm(約18インチ)という短寸に切断される。
【0006】
数千の切断長の単一ファイバー10が、グラファイト(石墨)モールド内に積み重ねられ、ガラスの軟化温度にて加熱され、図2に示されるような6角形状アレイ(整列体)16が形成される。図示されるように、切断長のファイバー10の各々は6角形態を有する。6角形態は、良好な積み重ね整列を提供する。
【0007】
マルチアセンブリすなわち束としても知られている6角形状アレイは、数千の単一ファイバー10を含み、該ファイバーの各々はコア12及び被覆14を有する。束16は、延伸機内にて鉛直に吊り下げられ、個々のファイバーの6角形状形態を維持しつつ、ファイバーの径を低減するように延伸される。次に束16は、約152.4mm(約6インチ)の更なる短寸に切断される。
【0008】
図3に示されるように、数百の切断された束16が、高精度の内径を有するガラスチューブ22内に実装される。ガラスチューブは、ガラス被覆14と同様のガラス材料であって、ガラスのコア12をエッチングするのに使用されるエッチング工程にてはエッチング不能であるガラス材料から作られる。外側ガラスチューブ22は最終的に、マイクロチャンネルプレートの堅固な境界縁を形成する。
【0009】
各束16のファイバー10を保護するために、マイクロチャンネルプレートを形成する工程において、ガラスチューブ22内において複数のサポート構造体が、アセンブリの外側層を形成する束16と置き換えられて配置される。サポート構造体は、必要な強度を有し且つガラスファイバーと融合されうる任意の材料からなる6角形状ロッドの形態がとられうる。各サポート構造体は、6角形状を有する単一の光ガラスファイバー24であって、1つの束16の断面積とほぼ同一の断面積を有する光ファイバーとされうる。しかしながら、該単一の光ガラスファイバーはコアと被覆とを有するが、これらのコアと被覆とは両方ともにエッチング不能なものとされる。図3に示されるように光ファイバー24すなわちサポートロッド24は、多数の束16を取り囲むアセンブリ30の周縁部に配設される。
【0010】
サポートロッドは、1つの光ファイバーから形成されてもよく、あるいは、数百に至る任意の数のファイバーから形成されてもよい。1つのサポートロッド24の最終的な幾何学形態及び外径は、1つの束16と実質的に同一である。マルチファイバーサポートロッド(複数のファイバーからなるサポートロッド)は、束16を形成する方法と同様の方法で形成されうる。
【0011】
チューブ22内におけるファイバーの最外層を形成する各束16は、サポートロッド24により置き換えられる。このことは好適には、束16の一端部に対してサポートロッド24の一端部を配置し、束16がチューブ22から抜け出るまで束16に対してサポートロッド24を押圧することによりなされる。全ての外側の束16がサポートロッド24により置き換えられて形成されたアセンブリは、ブール(boule)と呼ばれ、概して図3における参照番号30により指し示される。
【0012】
ブール30は、ガラス縁の光ファイバーの堅固なブールをもたらすように、加熱処理において融合される。融合されたブールは、薄切りあるいはダイシングされ、薄寸の輪切りにされたプレートすなわちウェハーとされる。ウェハーは接地され研磨される。
【0013】
マイクロチャンネルを形成するために、光ファイバー10のコア12は、希塩酸によるエッチングにより除去される。図4に示されるように、ブールのエッチング後は、鉛の含有率が高いガラス被覆14が、マイクロチャンネル32を形成すべく残存する。サポートロッド24もまた固形体として残存し、チューブ22の堅固な縁からマイクロチャンネル32への良好な遷移を提供する。
【0014】
更なる工程においては、ガラスブールの面取り及び研磨が含まれる。コアロッドを除去すべくプレートがエッチングされた後は、ブール内のチャンネルは金属化されて活性化される。
【0015】
マイクロチャンネルプレートの製造においては、図2に関して上述したように、また、図5Aの上面図に示されるように、コア/被覆ロッドは概して、対称な6角形状をなるように積み重ねられる。ブール16の内部においては、各コア/被覆ロッド10は、参照番号10にて指し示されるような円形状体で示される。該円形状体は、6角形状体を形成するように緊密に実装される。
【0016】
図5Aにおける各円形状体がコア/被覆の対を示すものとするならば、被覆壁がエッチングされてしまうと破砕チャンネル壁が出現して円形状体が相互に接触する可能性がある。この破砕の直前の最大可能開口比(OAR)は、図5Bに示されるような幾何学図形を使用して、以下のように算出される。ここで、rは、円形状体10の半径である。
【0017】
【数1】
【0018】
束16が積み重ねられて例えばブール30のようなブールが形成されるとき、複数の6角形状束16(図5A)は、図6に示されるように、相互に積み重ねられ押圧され、複数の境界領域を形成する。これらの複数の境界領域は、参照番号60により指し示される。
【0019】
図6Aを注意深く検証すると、複数の境界領域60が、6角形状の各マルチファイバーの内部、あるいは束16と容易に差別化されることは明らかである。各束間のインターフェイスにては、ファイバー10は4角形態実装配置にて実装される。4角形態実装配置の最大開口比は、図6Bに示される幾何学的関係を使用して以下のように算出されうる。ここで、rは、円形状体10の半径を示す。
【0020】
【数2】
【0021】
6角形状アレイ16における実装列(図5A)と、複数の境界領域60における4角形態実装アレイ列(図6A)との間においては、達成可能な最大開口比に大きな差異があることが理解されうる。前者の達成しうる最大開口比が90.7%であるのに対して、後者の達成しうる最大開口比は78.5%のみである。
【0022】
達成されうる開口比(各ファイバー間のインターフェイスにて必要とされる材料)には安全マージンを有しなければならず、現状のブールにおいては、63%の開口比を達成するように形成される。さらに、破砕チャンネル壁の出現がありうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第4,912,314号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、以下に説明されるように、ブールの複数の境界領域にての4角形態実装列を最小化あるいは排除する、束の積み重ね方法を提供する。このことは、ブールの製造の間における開口比を増大させる。本発明は、複数の境界領域にわたり6角形状近接実装列が連続するブールを提供する。さらに有利には、本束は、1つの束を該束に隣接する束に対して、チャンネルの半分量シフトする必要がない。本発明が以下に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的および他の必要性を満足させるべく、本発明は、その目的を考慮したマイクロチャンネルプレート(MPC)用の構造体を提供する。該構造体には複数のマルチファイバーが含まれ、各マルチファイバーは、対称な6角形状形態に配列されたファイバー列を有し、各6角形状形態は境界を有する。複数のマルチファイバーに加えて、単一列ファイバーが、マルチファイバーのそれぞれの境界に沿って付加される。
【0026】
マルチファイバーと各マルチファイバーに沿って配置される単一列ファイバーとは、ファイバーの非対称な六角形状配置を形成する。各マルチファイバーは、第2列のファイバーに沿って実装される第1列のファイバーを有し、第1列におけるファイバーは、第2列における2つのファイバーと隣接して実装され、よって、ファイバーの三角形態配列を形成する。各マルチファイバーは、それぞれの境界を形成する境界ファイバーの列を含み、単一列ファイバーにおけるファイバーが、境界ファイバーにおける2つのファイバーと隣接して実装され、ファイバーの三角形態配列を形成する。ファイバーの三角形態配列は、少なくとも90%の最大開口比(OAR)を形成する。
【0027】
各列のファイバーはコアファイバーと被覆ファイバーとを有し、被覆ファイバーはコアファイバーを取り囲む。単一列ファイバーとマルチファイバーとは、ブールを形成するように構成され、該ブールは、マイクロチャンネルプレートの製造においてダイシングされるように形成される。
【0028】
本発明の他の実施形態は、マイクロチャンネルプレートを作製するためのブールを含む。該ブールは、少なくも2セットのファイバー列を含み、ファイバー列の各セットは、ファイバーの六角形状境界を形成するように構成され、2セットのファイバーの六角形状境界の間に追加ファイバー列が配設される。ファイバー列の各セットは、ファイバーの六角形状境界の一部分を形成する水平方向ファイバー列を含む。追加ファイバー列は、水平方向ファイバー列を有し、追加ファイバー列は、ファイバーの水平方向境界の上に実装される。ファイバー境界の水平方向ファイバー列におけるファイバーは、ファイバーの三角形態配列を形成すべく、追加ファイバー列における2つの連続するファイバーに隣接して実装される。ファイバーの三角形態配列は、少なくとも90%の最大開口比(OAR)を形成する。
【0029】
本発明の更なる他の実施形態は、マイクロチャンネルプレート(MPC)用ブールの製造方法である。該方法は、(a)マルチファイバーの第1及び第2の積み重ね体であって各積み重ね体が対称な六角形状にて配設された水平ファイバー列を有するという少なくとも第1及び第2の積み重ね体を形成するステップと、(b)第1積み重ね体の上に単一列ファイバーを形成するステップと、(c)該単一列ファイバーの上に第2の積み重ね体を配置するステップとを有する。
【0030】
単一列ファイバーを形成するステップには、第1の積み重ね体の最上部における2つの隣接するファイバーの間に単一列ファイバーにおけるファイバーを積み重ねるステップが含まれる。第2の積み重ね体を配置するステップには、単一列ファイバーにおける隣接する2つファイバーの間に第2の積み重ね体におけるファイバーが配設されるように第2の積み重ね体を調整するステップが含まれる。
【0031】
少なくとも第1及び第2の積み重ね体を形成するステップには、水平ファイバー列が対称な六角形状形態に配設されるように、コアと被覆を有するファイバーを実装するステップが含まれる。ファイバーを実装するステップには、ファイバーの三角形態配列を形成すべく、ファイバー列におけるファイバーを該ファイバー列に隣接する下側列における2つのファイバーの間に配置することにより、一方のファイバー列を他方のファイバー列の上に積み重ねるステップが含まれる。
【0032】
本方法にはさらに、各積み重ね体が対称な六角形状に配設された水平方向ファイバー列を有するというマルチファイバーの複数の積み重ね体を形成するステップと、星状パターンに積み重ね体を配設するステップと、星状パターンにおける積み重ね体の上に他の積み重ね体を配置する前に、星状パターンにおけるそれぞれの積み重ね体の上に単一列水平ファイバーを形成するステップとを有する。
【0033】
本方法はまた、複数のマイクロチャンネルプレートを形成すべく、ブールを薄切りするステップを有する。
【0034】
上述の概要記載及び以下の詳細記載は本発明の例証であり、本発明を制限するものではないことは理解されるべきである。
【0035】
以下の図面に関連してなされる以下の詳細な記載によれば、本発明の最善の理解がもたらされうる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】マイクロチャンネルプレートの製造において使用されるファイバーの部分図である。
【図2】マイクロチャンネルプレートの製造において使用される、図1に示されたファイバーの束の部分図である。
【図3】実装されたブールの断面図である。
【図4】マイクロチャンネルプレートの部分断面図である。
【図5A】積み重ねられたファイバーの三角形態配列を形成する、対称な六角形状のマルチファイバー(すなわち、束)を示す図である。
【図5B】積み重ねられたファイバーの三角形態配列を形成する、対称な六角形状のマルチファイバー(すなわち、束)を示す図である。
【図6A】隣接するマルチファイバー(すなわち、束)の間の境界領域にて積み重ねられたファイバーの4角形態配列を形成する、複数の六角形状マルチファイバー(すなわち、束)を示す図である。
【図6B】隣接するマルチファイバー(すなわち、束)の間の境界領域にて積み重ねられたファイバーの4角形態配列を形成する、マルチ六角形状マルチファイバー(すなわち、束)を示す図である。
【図7A】本発明の実施形態に係る、積み重ねられたファイバーの配列を示す図である。
【図7B】本発明の実施形態に係る、積み重ねられたファイバーの配列を示す図である。
【図8】本発明に係る、積み重ねられたファイバーの配置における高さと、従来方法における積み重ねられたファイバーの配置における高さとの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、(a)対称な六角形状パターンを有する束(すなわち、マルチファイバー)と、(b)各束の境界領域にて追加された単一列ファイバーとを有して積み重ねられたブールを使用することにより向上された開口比を有するという、マイクロチャンネルプレートの形成に関するものである。以下に説明されるように、(a)六角形状に配置された束と、(b)各束に対する単一列追加ファイバーとの組合わせにより、マイクロチャンネルプレートにおける複数の水平ファイバー列が、(図5Bに示されるように)ファイバーの三角形態配列を形成する。図6Bに示されるファイバーの四角形態配列は最小限にされ、あるいは、排除される。
【0038】
図7A及び図7Bを参照すると、本発明の例証的な実施形態が示されている。図示されるように、各束16は、製造着手する際のマイクロチャンネルプレート用の複数の着手ファイバー10を有する。該着手ファイバー10は、ガラスのコア12と該コアを取り囲むガラス被覆14とを有する(図1参照)。各束16は、対称な六角形状に配置されたファイバー10を含む。束16の六角形状の周囲を形成する(符号が付けされていない)ファイバーの外側線は、本文においては、ファイバーの境界と称される。ファイバーの境界の各最上列には、参照番号70で指し示される単一列追加水平ファイバーが配設される。束16は対称な六角形状パターンであるが、束16の最上列の上に列70が追加されると、ファイバーの実装配置は非対称となる。ファイバーの非対称なパターンは概して、図7Aにおける参照番号73として示されている。
【0039】
次に図7Bを参照すると、複数の束16の配置が示されており、各束16は、ファイバー10の単一列追加ファイバー70を有し、該単一列追加ファイバーは、各束16の最上列のファイバーの上に実装される。非対称なファイバーのパターンが概して、図7Bにおける参照番号75として示されている。
【0040】
ファイバーのパターン75は、図3及び図4を参照して先に説明したように、マイクロチャンネルプレート用のブールの形成において必要とされる複数の単一列70及び複数の束16の積み重ねにおける初期のものであることは理解されうる。
【0041】
図3を参照して説明されたように、束16はガラスチューブ22内に配設される。数百の束16が、ガラスチューブ22の内径穴内に実装される。しかしながら図3に示された構成とは異なり、図7Bに示される構成においては、各束16のファイバーの水平境界の上に追加的な単一水平列のファイバー70が実装される。
【0042】
図3及び図4を参照して説明したように、チューブ22内におけるファイバーの最外層を形成する各束16は、サポートロッド24により置き換えられる。このことは、束16の一端部に対してサポートロッド24の一端部を配置し、束16がチューブ22から抜け出るまで束16に対してサポートロッド24を押圧することによりなされうる。全ての外側の束16がサポートロッド24により置き換えられたときに形成されたアセンブリは、ブール(boule)と呼ばれる。
【0043】
ブール30は、ガラス縁の光ファイバーの堅固なブールをもたらすように、加熱処理において融合される。融合されたブールは、薄切りあるいはダイシングされ、輪切りにされたプレートとされる。ウェハーとして称されうる、薄切りにされ融合されたブールの平面端面は接地され研磨される。
【0044】
マイクロチャンネルを形成するために、光ファイバー10のコア12は、希塩酸によるエッチングにより除去される。図4に示されるように、ブールのエッチング後は、鉛の含有率が高いガラス被覆14が、マイクロチャンネル32を形成すべく残存する。サポートロッド24もまた固形体として残存し、チューブ22の堅固な縁からマイクロチャンネル32への良好な遷移を提供する。
【0045】
図7A及び図7Bを注意深く検証すると、水平列70が各束16の最上部水平境界列の上に実装されることが見られうる。列70におけるファイバー10は、束16の最上部水平境界列における2つの隣接するファイバー10の間の静止して配置される。かくして、形態73及び形態75に示されるように、全てのファイバー10が、図5Bに示されているようなファイバーの三角形態配列を形成するように実装される。この形態は、90.7%の達成可能な最大開口比をもたらす。
【0046】
図解のみを目的として列70に灰色の影を付けていることは理解されるであろう。束と追加列とが積み重ねられると、六角形状近接実装が維持されつつ、全てのファイバー10の列が、隣接するファイバーと所望の三角形態配列で配置される。もし、暗くする影が取り除かれるならば、インターフェイス(すなわち、複数の境界領域)を区別することは困難である。他方、図6Aの従来様式にて実装された束16に示されるような複数の境界領域60は、該複数の境界領域60にてファイバーの四角形態配列がもたらされるものであるため、容易に認識することが可能である。
【0047】
最後に図8を参照すると、本発明の形態80と、従来の実装方法により形成される形態82との間における高さの差分ΔYが示されている。ファイバー10の配置は、各束の最上部水平境界列と追加的な単一水平列とがガラスチューブ22内に実装されるように調整されることは理解されうる。
【0048】
各列70が、ガラスチューブ22内に挿入される前に、各束16の境界列に付け加えられるならば、マルチファイバーの非対称面を単純にマーキングすることによりファイバーの配置が調整されうる。
【0049】
本発明は、達成されうる開口比を増加させることにより、雑音指数の低減および信号対雑音比の増加をもたらしうるマイクロチャンネルプレートを有用に提供する。本発明はまた、達成されうる開口比の増加によるハロー(halo)強度の低減(約2倍)も実現する。
【0050】
各束と該各束における追加的な単一列との積み重ねが、ガラスチューブ22を使用する円形状マイクロチャンネルプレートの形態(図3)に対して記載されてきたが、本発明は円形状マイクロチャンネルプレートに制限されるものではない。ファイバーが所望のパターンにて積み重ねられるようにファイバーを保持すべく、異なる大きさで異なる形状のガラス容器を使用して、異なる大きさで異なる形状のマイクロチャンネルプレートが形成されてもよい。
【0051】
本発明が特定の実施形態を参照して図示され説明されたが、本発明は示された詳細に制限されるものではない。むしろ、本発明の範囲を逸脱することなく、各請求項のものと等価の範囲内において、細部における多様な変形物がもたらされうる。
【符号の説明】
【0052】
10 ファイバー
12 コア
14 被覆
30 ブール
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像増強装置に使用されるマイクロチャンネルプレート(MCPs)に関する。具体的には、本発明は、より高い開口比(OAR)をもたらす非対称実装パターンを有するマイクロチャンネルプレートを製造する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロチャンネルプレートは、画像増強装置における電子倍増管として使用される。マイクロチャンネルプレートは、整列されたチャンネルが延在する薄寸ガラスプレートであって、光電陰極と蛍光面との間に配置される薄寸ガラスプレートである。光電陰極からの入射電子は、マイクロチャンネルプレートの入力側に入り、チャンネル壁に衝突する。マイクロチャンネルプレートに電圧が印加されているときには、これらの入射電子すなわち一次電子は増幅され二次電子をもたらす。二次電子は、マイクロチャンネルプレートの後端にてチャンネルから出て、蛍光面に画像をもたらす。
【0003】
一般的にマイクロチャンネルプレートの製造は、1990年3月27日付けのRonald Sinkの米国特許第4,912,314号(特許文献1)に開示されているように、ファイバー引き抜き工程から開始される。該特許文献1は、その全体が本参照により組み込まれるものとする。便宜上のために、特許文献1に開示されている図1から図4が本願図面に含まれ、以下に説明される。
【0004】
図1は、マイクロチャンネルプレート用の、製造を着手する際のファイバー10を示す。ファイバー10は、ガラスのコア12と該コアを取り囲むガラス被覆14とを有する。コア12は、適切なエッチング溶液内にてエッチング可能なガラス材料から作られる。ガラス被覆14は、ガラスのコアと実質的に同一の軟化温度を有するガラス材料から作られる。しかしながら、被覆14のガラス材料は、コア12のものとは異なり鉛含有量が高く、コアの材料をエッチングするために使用される同一の条件下においてはエッチング不能な被覆を呈する。すなわち、被覆14は、ガラスのコアのエッチング後に残存する。適切な被覆ガラスは、コーニングガラス8161(Corning Glass 8161)のような鉛タイプのガラスである。
【0005】
光ファイバーは、以下の様式にて形成される。エッチング可能なガラスロッドと該ロッドを同軸的に取り囲む被覆チューブとが、加熱炉区画が組み込まれた延伸機内にて鉛直に吊り下げられる。加熱炉の温度は、ガラスの軟化温度まで昇温される。ロッドとチューブとは融合され、単一のファイバー10になるように延伸される。ファイバー10は牽引機構に送給され、該牽引機構においては所望の径のファイバーが得られるまで速度が調整される。ファイバー10は、約457.2mm(約18インチ)という短寸に切断される。
【0006】
数千の切断長の単一ファイバー10が、グラファイト(石墨)モールド内に積み重ねられ、ガラスの軟化温度にて加熱され、図2に示されるような6角形状アレイ(整列体)16が形成される。図示されるように、切断長のファイバー10の各々は6角形態を有する。6角形態は、良好な積み重ね整列を提供する。
【0007】
マルチアセンブリすなわち束としても知られている6角形状アレイは、数千の単一ファイバー10を含み、該ファイバーの各々はコア12及び被覆14を有する。束16は、延伸機内にて鉛直に吊り下げられ、個々のファイバーの6角形状形態を維持しつつ、ファイバーの径を低減するように延伸される。次に束16は、約152.4mm(約6インチ)の更なる短寸に切断される。
【0008】
図3に示されるように、数百の切断された束16が、高精度の内径を有するガラスチューブ22内に実装される。ガラスチューブは、ガラス被覆14と同様のガラス材料であって、ガラスのコア12をエッチングするのに使用されるエッチング工程にてはエッチング不能であるガラス材料から作られる。外側ガラスチューブ22は最終的に、マイクロチャンネルプレートの堅固な境界縁を形成する。
【0009】
各束16のファイバー10を保護するために、マイクロチャンネルプレートを形成する工程において、ガラスチューブ22内において複数のサポート構造体が、アセンブリの外側層を形成する束16と置き換えられて配置される。サポート構造体は、必要な強度を有し且つガラスファイバーと融合されうる任意の材料からなる6角形状ロッドの形態がとられうる。各サポート構造体は、6角形状を有する単一の光ガラスファイバー24であって、1つの束16の断面積とほぼ同一の断面積を有する光ファイバーとされうる。しかしながら、該単一の光ガラスファイバーはコアと被覆とを有するが、これらのコアと被覆とは両方ともにエッチング不能なものとされる。図3に示されるように光ファイバー24すなわちサポートロッド24は、多数の束16を取り囲むアセンブリ30の周縁部に配設される。
【0010】
サポートロッドは、1つの光ファイバーから形成されてもよく、あるいは、数百に至る任意の数のファイバーから形成されてもよい。1つのサポートロッド24の最終的な幾何学形態及び外径は、1つの束16と実質的に同一である。マルチファイバーサポートロッド(複数のファイバーからなるサポートロッド)は、束16を形成する方法と同様の方法で形成されうる。
【0011】
チューブ22内におけるファイバーの最外層を形成する各束16は、サポートロッド24により置き換えられる。このことは好適には、束16の一端部に対してサポートロッド24の一端部を配置し、束16がチューブ22から抜け出るまで束16に対してサポートロッド24を押圧することによりなされる。全ての外側の束16がサポートロッド24により置き換えられて形成されたアセンブリは、ブール(boule)と呼ばれ、概して図3における参照番号30により指し示される。
【0012】
ブール30は、ガラス縁の光ファイバーの堅固なブールをもたらすように、加熱処理において融合される。融合されたブールは、薄切りあるいはダイシングされ、薄寸の輪切りにされたプレートすなわちウェハーとされる。ウェハーは接地され研磨される。
【0013】
マイクロチャンネルを形成するために、光ファイバー10のコア12は、希塩酸によるエッチングにより除去される。図4に示されるように、ブールのエッチング後は、鉛の含有率が高いガラス被覆14が、マイクロチャンネル32を形成すべく残存する。サポートロッド24もまた固形体として残存し、チューブ22の堅固な縁からマイクロチャンネル32への良好な遷移を提供する。
【0014】
更なる工程においては、ガラスブールの面取り及び研磨が含まれる。コアロッドを除去すべくプレートがエッチングされた後は、ブール内のチャンネルは金属化されて活性化される。
【0015】
マイクロチャンネルプレートの製造においては、図2に関して上述したように、また、図5Aの上面図に示されるように、コア/被覆ロッドは概して、対称な6角形状をなるように積み重ねられる。ブール16の内部においては、各コア/被覆ロッド10は、参照番号10にて指し示されるような円形状体で示される。該円形状体は、6角形状体を形成するように緊密に実装される。
【0016】
図5Aにおける各円形状体がコア/被覆の対を示すものとするならば、被覆壁がエッチングされてしまうと破砕チャンネル壁が出現して円形状体が相互に接触する可能性がある。この破砕の直前の最大可能開口比(OAR)は、図5Bに示されるような幾何学図形を使用して、以下のように算出される。ここで、rは、円形状体10の半径である。
【0017】
【数1】
【0018】
束16が積み重ねられて例えばブール30のようなブールが形成されるとき、複数の6角形状束16(図5A)は、図6に示されるように、相互に積み重ねられ押圧され、複数の境界領域を形成する。これらの複数の境界領域は、参照番号60により指し示される。
【0019】
図6Aを注意深く検証すると、複数の境界領域60が、6角形状の各マルチファイバーの内部、あるいは束16と容易に差別化されることは明らかである。各束間のインターフェイスにては、ファイバー10は4角形態実装配置にて実装される。4角形態実装配置の最大開口比は、図6Bに示される幾何学的関係を使用して以下のように算出されうる。ここで、rは、円形状体10の半径を示す。
【0020】
【数2】
【0021】
6角形状アレイ16における実装列(図5A)と、複数の境界領域60における4角形態実装アレイ列(図6A)との間においては、達成可能な最大開口比に大きな差異があることが理解されうる。前者の達成しうる最大開口比が90.7%であるのに対して、後者の達成しうる最大開口比は78.5%のみである。
【0022】
達成されうる開口比(各ファイバー間のインターフェイスにて必要とされる材料)には安全マージンを有しなければならず、現状のブールにおいては、63%の開口比を達成するように形成される。さらに、破砕チャンネル壁の出現がありうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第4,912,314号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、以下に説明されるように、ブールの複数の境界領域にての4角形態実装列を最小化あるいは排除する、束の積み重ね方法を提供する。このことは、ブールの製造の間における開口比を増大させる。本発明は、複数の境界領域にわたり6角形状近接実装列が連続するブールを提供する。さらに有利には、本束は、1つの束を該束に隣接する束に対して、チャンネルの半分量シフトする必要がない。本発明が以下に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的および他の必要性を満足させるべく、本発明は、その目的を考慮したマイクロチャンネルプレート(MPC)用の構造体を提供する。該構造体には複数のマルチファイバーが含まれ、各マルチファイバーは、対称な6角形状形態に配列されたファイバー列を有し、各6角形状形態は境界を有する。複数のマルチファイバーに加えて、単一列ファイバーが、マルチファイバーのそれぞれの境界に沿って付加される。
【0026】
マルチファイバーと各マルチファイバーに沿って配置される単一列ファイバーとは、ファイバーの非対称な六角形状配置を形成する。各マルチファイバーは、第2列のファイバーに沿って実装される第1列のファイバーを有し、第1列におけるファイバーは、第2列における2つのファイバーと隣接して実装され、よって、ファイバーの三角形態配列を形成する。各マルチファイバーは、それぞれの境界を形成する境界ファイバーの列を含み、単一列ファイバーにおけるファイバーが、境界ファイバーにおける2つのファイバーと隣接して実装され、ファイバーの三角形態配列を形成する。ファイバーの三角形態配列は、少なくとも90%の最大開口比(OAR)を形成する。
【0027】
各列のファイバーはコアファイバーと被覆ファイバーとを有し、被覆ファイバーはコアファイバーを取り囲む。単一列ファイバーとマルチファイバーとは、ブールを形成するように構成され、該ブールは、マイクロチャンネルプレートの製造においてダイシングされるように形成される。
【0028】
本発明の他の実施形態は、マイクロチャンネルプレートを作製するためのブールを含む。該ブールは、少なくも2セットのファイバー列を含み、ファイバー列の各セットは、ファイバーの六角形状境界を形成するように構成され、2セットのファイバーの六角形状境界の間に追加ファイバー列が配設される。ファイバー列の各セットは、ファイバーの六角形状境界の一部分を形成する水平方向ファイバー列を含む。追加ファイバー列は、水平方向ファイバー列を有し、追加ファイバー列は、ファイバーの水平方向境界の上に実装される。ファイバー境界の水平方向ファイバー列におけるファイバーは、ファイバーの三角形態配列を形成すべく、追加ファイバー列における2つの連続するファイバーに隣接して実装される。ファイバーの三角形態配列は、少なくとも90%の最大開口比(OAR)を形成する。
【0029】
本発明の更なる他の実施形態は、マイクロチャンネルプレート(MPC)用ブールの製造方法である。該方法は、(a)マルチファイバーの第1及び第2の積み重ね体であって各積み重ね体が対称な六角形状にて配設された水平ファイバー列を有するという少なくとも第1及び第2の積み重ね体を形成するステップと、(b)第1積み重ね体の上に単一列ファイバーを形成するステップと、(c)該単一列ファイバーの上に第2の積み重ね体を配置するステップとを有する。
【0030】
単一列ファイバーを形成するステップには、第1の積み重ね体の最上部における2つの隣接するファイバーの間に単一列ファイバーにおけるファイバーを積み重ねるステップが含まれる。第2の積み重ね体を配置するステップには、単一列ファイバーにおける隣接する2つファイバーの間に第2の積み重ね体におけるファイバーが配設されるように第2の積み重ね体を調整するステップが含まれる。
【0031】
少なくとも第1及び第2の積み重ね体を形成するステップには、水平ファイバー列が対称な六角形状形態に配設されるように、コアと被覆を有するファイバーを実装するステップが含まれる。ファイバーを実装するステップには、ファイバーの三角形態配列を形成すべく、ファイバー列におけるファイバーを該ファイバー列に隣接する下側列における2つのファイバーの間に配置することにより、一方のファイバー列を他方のファイバー列の上に積み重ねるステップが含まれる。
【0032】
本方法にはさらに、各積み重ね体が対称な六角形状に配設された水平方向ファイバー列を有するというマルチファイバーの複数の積み重ね体を形成するステップと、星状パターンに積み重ね体を配設するステップと、星状パターンにおける積み重ね体の上に他の積み重ね体を配置する前に、星状パターンにおけるそれぞれの積み重ね体の上に単一列水平ファイバーを形成するステップとを有する。
【0033】
本方法はまた、複数のマイクロチャンネルプレートを形成すべく、ブールを薄切りするステップを有する。
【0034】
上述の概要記載及び以下の詳細記載は本発明の例証であり、本発明を制限するものではないことは理解されるべきである。
【0035】
以下の図面に関連してなされる以下の詳細な記載によれば、本発明の最善の理解がもたらされうる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】マイクロチャンネルプレートの製造において使用されるファイバーの部分図である。
【図2】マイクロチャンネルプレートの製造において使用される、図1に示されたファイバーの束の部分図である。
【図3】実装されたブールの断面図である。
【図4】マイクロチャンネルプレートの部分断面図である。
【図5A】積み重ねられたファイバーの三角形態配列を形成する、対称な六角形状のマルチファイバー(すなわち、束)を示す図である。
【図5B】積み重ねられたファイバーの三角形態配列を形成する、対称な六角形状のマルチファイバー(すなわち、束)を示す図である。
【図6A】隣接するマルチファイバー(すなわち、束)の間の境界領域にて積み重ねられたファイバーの4角形態配列を形成する、複数の六角形状マルチファイバー(すなわち、束)を示す図である。
【図6B】隣接するマルチファイバー(すなわち、束)の間の境界領域にて積み重ねられたファイバーの4角形態配列を形成する、マルチ六角形状マルチファイバー(すなわち、束)を示す図である。
【図7A】本発明の実施形態に係る、積み重ねられたファイバーの配列を示す図である。
【図7B】本発明の実施形態に係る、積み重ねられたファイバーの配列を示す図である。
【図8】本発明に係る、積み重ねられたファイバーの配置における高さと、従来方法における積み重ねられたファイバーの配置における高さとの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、(a)対称な六角形状パターンを有する束(すなわち、マルチファイバー)と、(b)各束の境界領域にて追加された単一列ファイバーとを有して積み重ねられたブールを使用することにより向上された開口比を有するという、マイクロチャンネルプレートの形成に関するものである。以下に説明されるように、(a)六角形状に配置された束と、(b)各束に対する単一列追加ファイバーとの組合わせにより、マイクロチャンネルプレートにおける複数の水平ファイバー列が、(図5Bに示されるように)ファイバーの三角形態配列を形成する。図6Bに示されるファイバーの四角形態配列は最小限にされ、あるいは、排除される。
【0038】
図7A及び図7Bを参照すると、本発明の例証的な実施形態が示されている。図示されるように、各束16は、製造着手する際のマイクロチャンネルプレート用の複数の着手ファイバー10を有する。該着手ファイバー10は、ガラスのコア12と該コアを取り囲むガラス被覆14とを有する(図1参照)。各束16は、対称な六角形状に配置されたファイバー10を含む。束16の六角形状の周囲を形成する(符号が付けされていない)ファイバーの外側線は、本文においては、ファイバーの境界と称される。ファイバーの境界の各最上列には、参照番号70で指し示される単一列追加水平ファイバーが配設される。束16は対称な六角形状パターンであるが、束16の最上列の上に列70が追加されると、ファイバーの実装配置は非対称となる。ファイバーの非対称なパターンは概して、図7Aにおける参照番号73として示されている。
【0039】
次に図7Bを参照すると、複数の束16の配置が示されており、各束16は、ファイバー10の単一列追加ファイバー70を有し、該単一列追加ファイバーは、各束16の最上列のファイバーの上に実装される。非対称なファイバーのパターンが概して、図7Bにおける参照番号75として示されている。
【0040】
ファイバーのパターン75は、図3及び図4を参照して先に説明したように、マイクロチャンネルプレート用のブールの形成において必要とされる複数の単一列70及び複数の束16の積み重ねにおける初期のものであることは理解されうる。
【0041】
図3を参照して説明されたように、束16はガラスチューブ22内に配設される。数百の束16が、ガラスチューブ22の内径穴内に実装される。しかしながら図3に示された構成とは異なり、図7Bに示される構成においては、各束16のファイバーの水平境界の上に追加的な単一水平列のファイバー70が実装される。
【0042】
図3及び図4を参照して説明したように、チューブ22内におけるファイバーの最外層を形成する各束16は、サポートロッド24により置き換えられる。このことは、束16の一端部に対してサポートロッド24の一端部を配置し、束16がチューブ22から抜け出るまで束16に対してサポートロッド24を押圧することによりなされうる。全ての外側の束16がサポートロッド24により置き換えられたときに形成されたアセンブリは、ブール(boule)と呼ばれる。
【0043】
ブール30は、ガラス縁の光ファイバーの堅固なブールをもたらすように、加熱処理において融合される。融合されたブールは、薄切りあるいはダイシングされ、輪切りにされたプレートとされる。ウェハーとして称されうる、薄切りにされ融合されたブールの平面端面は接地され研磨される。
【0044】
マイクロチャンネルを形成するために、光ファイバー10のコア12は、希塩酸によるエッチングにより除去される。図4に示されるように、ブールのエッチング後は、鉛の含有率が高いガラス被覆14が、マイクロチャンネル32を形成すべく残存する。サポートロッド24もまた固形体として残存し、チューブ22の堅固な縁からマイクロチャンネル32への良好な遷移を提供する。
【0045】
図7A及び図7Bを注意深く検証すると、水平列70が各束16の最上部水平境界列の上に実装されることが見られうる。列70におけるファイバー10は、束16の最上部水平境界列における2つの隣接するファイバー10の間の静止して配置される。かくして、形態73及び形態75に示されるように、全てのファイバー10が、図5Bに示されているようなファイバーの三角形態配列を形成するように実装される。この形態は、90.7%の達成可能な最大開口比をもたらす。
【0046】
図解のみを目的として列70に灰色の影を付けていることは理解されるであろう。束と追加列とが積み重ねられると、六角形状近接実装が維持されつつ、全てのファイバー10の列が、隣接するファイバーと所望の三角形態配列で配置される。もし、暗くする影が取り除かれるならば、インターフェイス(すなわち、複数の境界領域)を区別することは困難である。他方、図6Aの従来様式にて実装された束16に示されるような複数の境界領域60は、該複数の境界領域60にてファイバーの四角形態配列がもたらされるものであるため、容易に認識することが可能である。
【0047】
最後に図8を参照すると、本発明の形態80と、従来の実装方法により形成される形態82との間における高さの差分ΔYが示されている。ファイバー10の配置は、各束の最上部水平境界列と追加的な単一水平列とがガラスチューブ22内に実装されるように調整されることは理解されうる。
【0048】
各列70が、ガラスチューブ22内に挿入される前に、各束16の境界列に付け加えられるならば、マルチファイバーの非対称面を単純にマーキングすることによりファイバーの配置が調整されうる。
【0049】
本発明は、達成されうる開口比を増加させることにより、雑音指数の低減および信号対雑音比の増加をもたらしうるマイクロチャンネルプレートを有用に提供する。本発明はまた、達成されうる開口比の増加によるハロー(halo)強度の低減(約2倍)も実現する。
【0050】
各束と該各束における追加的な単一列との積み重ねが、ガラスチューブ22を使用する円形状マイクロチャンネルプレートの形態(図3)に対して記載されてきたが、本発明は円形状マイクロチャンネルプレートに制限されるものではない。ファイバーが所望のパターンにて積み重ねられるようにファイバーを保持すべく、異なる大きさで異なる形状のガラス容器を使用して、異なる大きさで異なる形状のマイクロチャンネルプレートが形成されてもよい。
【0051】
本発明が特定の実施形態を参照して図示され説明されたが、本発明は示された詳細に制限されるものではない。むしろ、本発明の範囲を逸脱することなく、各請求項のものと等価の範囲内において、細部における多様な変形物がもたらされうる。
【符号の説明】
【0052】
10 ファイバー
12 コア
14 被覆
30 ブール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチャンネルプレート(MPC)用構造体において、
複数のマルチファイバーであって、各マルチファイバーが、境界を有する対称な六角形状形態にて配設されるファイバー列を有するという複数のマルチファイバーと、
前記複数のマルチファイバーに加えられる複数の単一列ファイバーとを具備し、
各単一列ファイバーは、前記マルチファイバーのそれぞれの境界に沿って配設される、マイクロチャンネルプレート用構造体。
【請求項2】
各マルチファイバーと、該各マルチファイバーのそれぞれに沿って配設される単一列ファイバーとは、非対称な六角形状のファイバー配置を形成する、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
各マルチファイバーは、第2のファイバー列に沿って実装される第1のファイバー列を有し、
前記第1のファイバー列におけるファイバーは、前記第2のファイバー列における2つのファイバーに隣接して実装され、ファイバーの三角形態配列を形成する、請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
各マルチファイバーは、それぞれの境界を形成する境界ファイバー列を有し、
前記単一列ファイバーにおけるファイバーは、前記境界ファイバー列における2つのファイバーに隣接して実装され、ファーバーの三角形態配列を形成する、請求項1に記載の構造体。
【請求項5】
前記ファイバーの三角形態配列は、少なくとも90%の最大開口比(OAR)を形成する、請求項4に記載の構造体。
【請求項6】
前記ファイバー列は、コアファイバーと、該コアファイバーを取り囲む被覆ファイバーとを有する、請求項1に記載の構造体。
【請求項7】
前記複数の単一列ファイバーと前記複数のマルチファイバーとは、ブールを形成するように構成され、
前記ブールは、前記マイクロチャンネルプレートの製造工程においてダイシングされるように形成される、請求項1に記載の構造体。
【請求項8】
前記単一列ファイバーは、前記マルチファイバーの2つの隣接する境界列の間に配設され、
前記単一列ファイバーにおけるファイバーは、前記マルチファイバーの2つの隣接する境界列の一方の境界列における2つのファイバーの間に、且つ、前記マルチファイバーの2つの隣接する境界列の他方の境界列における2つのファイバーの間に実装され、ファイバーの三角形態配列を形成する、請求項1に記載の構造体。
【請求項9】
マイクロチャンネルプレート(MPC)を作製するためのブールであって、
少なくとも2セットのファイバー列であって、各セットが六角形状境界ファイバーを形成するように配置されるという少なくとも2セットのファイバー列と、
2セットの前記六角形状境界ファイバーの間に配設される追加ファイバー列とを具備する、ブール。
【請求項10】
前記2セットのファイバー列の各セットは、前記六角形状境界ファイバーの一部分を構成する水平方向に方向付けられたファイバー列を有し、
前記追加ファイバー列は、水平方向に方向付けられたファイバー列を有し、
前記追加ファイバー列は、水平方向に方向付けられた境界ファイバーの上に実装される、請求項9に記載のブール。
【請求項11】
前記境界ファイバーの水平方向に方向付けられたファイバー列におけるファイバーは、前記追加ファイバー列における2つの連続するファイバーに隣接して実装され、ファイバーの三角形態配列を形成する、請求項10に記載のブール。
【請求項12】
前記ファイバーの三角形態配列は、少なくとも90%の最大開口比(OAR)を形成する、請求項11に記載のブール。
【請求項13】
前記少なくとも2つのセットのファイバー列の他方のセットの水平方向に方向付けられた他方のファイバー列は、前記追加ファイバー列の上に実装され、ファイバーの別の三角形態配列を形成する、請求項10に記載のブール。
【請求項14】
複数セットのファイバーであって、各セットが水平方向に方向付けられた境界ファイバー列を有するという複数セットのファイバーと、
複数の追加ファイバー列であって、各追加ファイバー列が前記水平方向に方向付けられた各境界ファイバー列の上に実装されるという複数の追加ファイバー列とを具備する、請求項9に記載のブール。
【請求項15】
マイクロチャンネルプレート(MPC)用のブールを製造する方法であって、
マルチファイバーの少なくとも第1及び第2の積み重ね体であって、該各積み重ね体が対称な六角形状形態に配設された水平ファイバー列を有するという少なくとも第1及び第2の積み重ね体を形成するステップと、
前記第1の積み重ね体の上に単一列ファイバーを形成するステップと、
前記単一列ファイバーの上に前記第2の積み重ね体を配置するステップとを有する、
方法。
【請求項16】
前記単一列ファイバーを形成するステップは、前記第1の積み重ね体の最上部における2つの隣接するファイバーの間に前記単一列ファイバーにおける各ファイバーを積み重ねるステップを有し、
前記第2の積み重ね体を配置するステップは、前記単一列ファイバーにおける2つの隣接するファイバーの間に前記第2の積み重ね体のファイバーが配設されるように、前記第2の積み重ね体を調整するステップを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも第1及び第2の積み重ね体を形成するステップは、前記水平ファイバー列が対称な六角形状形態に配置されるように、コアと被覆とを有するファイバーを実装するステップを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ファイバーを実装するステップは、一方のファイバー列を他方のファイバー列の上に積み重ねるステップであって、隣接する下側の他方の列における2つのファイバーの間に一方のファイバー列におけるファイバーを配置することにより一方のファイバー列を他方のファイバー列の上に積み重ねて、ファイバーの三角形態配列を形成するステップを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
さらに、複数のマイクロチャンネルプレートを形成するように前記ブールを薄切りにするステップを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項1】
マイクロチャンネルプレート(MPC)用構造体において、
複数のマルチファイバーであって、各マルチファイバーが、境界を有する対称な六角形状形態にて配設されるファイバー列を有するという複数のマルチファイバーと、
前記複数のマルチファイバーに加えられる複数の単一列ファイバーとを具備し、
各単一列ファイバーは、前記マルチファイバーのそれぞれの境界に沿って配設される、マイクロチャンネルプレート用構造体。
【請求項2】
各マルチファイバーと、該各マルチファイバーのそれぞれに沿って配設される単一列ファイバーとは、非対称な六角形状のファイバー配置を形成する、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
各マルチファイバーは、第2のファイバー列に沿って実装される第1のファイバー列を有し、
前記第1のファイバー列におけるファイバーは、前記第2のファイバー列における2つのファイバーに隣接して実装され、ファイバーの三角形態配列を形成する、請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
各マルチファイバーは、それぞれの境界を形成する境界ファイバー列を有し、
前記単一列ファイバーにおけるファイバーは、前記境界ファイバー列における2つのファイバーに隣接して実装され、ファーバーの三角形態配列を形成する、請求項1に記載の構造体。
【請求項5】
前記ファイバーの三角形態配列は、少なくとも90%の最大開口比(OAR)を形成する、請求項4に記載の構造体。
【請求項6】
前記ファイバー列は、コアファイバーと、該コアファイバーを取り囲む被覆ファイバーとを有する、請求項1に記載の構造体。
【請求項7】
前記複数の単一列ファイバーと前記複数のマルチファイバーとは、ブールを形成するように構成され、
前記ブールは、前記マイクロチャンネルプレートの製造工程においてダイシングされるように形成される、請求項1に記載の構造体。
【請求項8】
前記単一列ファイバーは、前記マルチファイバーの2つの隣接する境界列の間に配設され、
前記単一列ファイバーにおけるファイバーは、前記マルチファイバーの2つの隣接する境界列の一方の境界列における2つのファイバーの間に、且つ、前記マルチファイバーの2つの隣接する境界列の他方の境界列における2つのファイバーの間に実装され、ファイバーの三角形態配列を形成する、請求項1に記載の構造体。
【請求項9】
マイクロチャンネルプレート(MPC)を作製するためのブールであって、
少なくとも2セットのファイバー列であって、各セットが六角形状境界ファイバーを形成するように配置されるという少なくとも2セットのファイバー列と、
2セットの前記六角形状境界ファイバーの間に配設される追加ファイバー列とを具備する、ブール。
【請求項10】
前記2セットのファイバー列の各セットは、前記六角形状境界ファイバーの一部分を構成する水平方向に方向付けられたファイバー列を有し、
前記追加ファイバー列は、水平方向に方向付けられたファイバー列を有し、
前記追加ファイバー列は、水平方向に方向付けられた境界ファイバーの上に実装される、請求項9に記載のブール。
【請求項11】
前記境界ファイバーの水平方向に方向付けられたファイバー列におけるファイバーは、前記追加ファイバー列における2つの連続するファイバーに隣接して実装され、ファイバーの三角形態配列を形成する、請求項10に記載のブール。
【請求項12】
前記ファイバーの三角形態配列は、少なくとも90%の最大開口比(OAR)を形成する、請求項11に記載のブール。
【請求項13】
前記少なくとも2つのセットのファイバー列の他方のセットの水平方向に方向付けられた他方のファイバー列は、前記追加ファイバー列の上に実装され、ファイバーの別の三角形態配列を形成する、請求項10に記載のブール。
【請求項14】
複数セットのファイバーであって、各セットが水平方向に方向付けられた境界ファイバー列を有するという複数セットのファイバーと、
複数の追加ファイバー列であって、各追加ファイバー列が前記水平方向に方向付けられた各境界ファイバー列の上に実装されるという複数の追加ファイバー列とを具備する、請求項9に記載のブール。
【請求項15】
マイクロチャンネルプレート(MPC)用のブールを製造する方法であって、
マルチファイバーの少なくとも第1及び第2の積み重ね体であって、該各積み重ね体が対称な六角形状形態に配設された水平ファイバー列を有するという少なくとも第1及び第2の積み重ね体を形成するステップと、
前記第1の積み重ね体の上に単一列ファイバーを形成するステップと、
前記単一列ファイバーの上に前記第2の積み重ね体を配置するステップとを有する、
方法。
【請求項16】
前記単一列ファイバーを形成するステップは、前記第1の積み重ね体の最上部における2つの隣接するファイバーの間に前記単一列ファイバーにおける各ファイバーを積み重ねるステップを有し、
前記第2の積み重ね体を配置するステップは、前記単一列ファイバーにおける2つの隣接するファイバーの間に前記第2の積み重ね体のファイバーが配設されるように、前記第2の積み重ね体を調整するステップを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも第1及び第2の積み重ね体を形成するステップは、前記水平ファイバー列が対称な六角形状形態に配置されるように、コアと被覆とを有するファイバーを実装するステップを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ファイバーを実装するステップは、一方のファイバー列を他方のファイバー列の上に積み重ねるステップであって、隣接する下側の他方の列における2つのファイバーの間に一方のファイバー列におけるファイバーを配置することにより一方のファイバー列を他方のファイバー列の上に積み重ねて、ファイバーの三角形態配列を形成するステップを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
さらに、複数のマイクロチャンネルプレートを形成するように前記ブールを薄切りにするステップを有する、請求項15に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【公開番号】特開2010−171015(P2010−171015A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−11820(P2010−11820)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(505194077)アイティーティー マニュファクチャリング エンタープライジーズ, インコーポレイテッド (114)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11820(P2010−11820)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(505194077)アイティーティー マニュファクチャリング エンタープライジーズ, インコーポレイテッド (114)
【Fターム(参考)】
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