説明

高電圧の長距離送電線用の調整可能な支持碍子

本発明は、長手方向(5)に延びる外部ケーシング管(2)と、長手方向(5)と平行にケーシング管(2)の内部で導かれる内部導体(3)と、複数の保持碍子(10)であって、それによって内部導体(3)がケーシング管(2)から長手方向(5)に対し横方向に離間してケーシング管(2)に保持される保持碍子とを有する高電圧用の長距離送電線(1)、および相応して具体化される保持碍子(10)に関する。保持碍子(10)は、内部導体(3)とケーシング管(2)との間の距離を調整する。長距離送電線(1)は特に空気絶縁された設計である。保持碍子(10)は、内部導体(3)の簡単な組立および取付けを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に延びる外部ケーシング管と、ケーシング管の内部で長手方向と平行に案内される内部導体と、複数の保持碍子であって、それによって内部導体が長手方向に対し横方向にケーシング管に、ケーシング管から離間して保持される複数の保持碍子とを有する高電圧用の長距離送電線に関する。本発明はまた、内部導体をケーシング管の内部に離間して取り付けるための、特に、対応して設計された長距離送電線用の保持碍子に関する。
【背景技術】
【0002】
一例として、上記タイプの長距離送電線は、論文 ”Gasisolierter Rohrleiter (GIL) fuer Hochspannungsuebertragungen” (高電圧送電用のカ゛ス絶縁された管状導体), Josef Kindersberger, IEEE Joint IAS/PELS/IES and PES German Chapter Meeting, Goldisthal, October 14, 2005. から知られている。このような長距離送電線は、特に架空電線に対する技術的な代替物として、高電圧を送電するために使用される。この場合、内部導体は高電圧であり、一方、ケーシング管が接地される。保持碍子は、ケーシング管内部で長手方向または送電方向に沿って一定間隔で設けられ、ケーシング管に対し内部導体を支持して、電圧差用の絶縁を行う。
【0003】
このような長距離送電線は架空電線よりも高価であるが、内部導体は外部の汚れおよび気象の影響を受けないので、必要な保守労力は著しく小さくなる。特に、このような管状電線はまた、火災または他の環境災害の影響を比較的受けにくいので、厳しい安全要件も満たす。本開示による長距離送電線は、絶縁目的のために、不活性ガス、特にN−SFガス混合物が内部に充填される。
【0004】
説明してきた管状電線は地下または頭上に敷設することができる。開示した長距離送電線の管状導体の形態である内部導体は、AC電圧を搬送する。内部電線を支持するために、支持碍子、ディスク支持体および隔壁支持体が記載されている。特に、隔壁支持体は、一定間隔で内部領域を仕切るので、損傷の場合に不活性ガスの発生を制限する目的を有する。
【0005】
絶縁能力を増大した不活性ガスを設けることにより、記載した管状電線をより小さな直径で設計することが可能になる。他方、電線全体の封止を維持しなければならず、このことは、特に、長距離送電線の個々の区分または部分の間の接合点において少なからず複雑さをもたらす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】”Gasisolierter Rohrleiter (GIL) fuer Hochspannungsuebertragungen”, Josef Kindersberger, IEEE Joint IAS/PELS/IES and PES German Chapter Meeting, Goldisthal, October 14, 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、長距離送電線の用途、長距離送電線の保守および長距離送電線の敷設の選択に関連して、冒頭に記載した種類の長距離送電線をさらに改良することである。同様に、特定の目的は、このような長距離送電線用に、内部導体をケーシング管内で案内するための当該目的に関して改良された保持碍子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
最初に述べた目的は、本発明によれば、長手方向に延びる外部ケーシング管と、ケーシング管内部で長手方向と平行に案内される内部導体と、複数の保持碍子であって、それによって内部導体が長手方向に対し横方向にケーシング管にそれから離間して保持される複数の保持碍子とを有する高電圧用の長距離送電線であって、保持碍子が、内部導体とケーシング管との間の距離を調整するために設計される長距離送電線によって実現される。
【0009】
この場合、本発明は、大まかにいえば、ケーシング管の内部における内部導体の敷設が重要な問題に関連するという考えに基づいている。この場合、一方で、電線内部の電圧フラッシュオーバーを回避するために、内部導体とケーシング管との間の距離を最小に維持しなければならない。言い換えれば、内部導体は、ケーシング管のほぼ中央に延びるべきであるか、または丸い管の場合、ケーシング管に対し同軸に敷設されるべきであり、このようにして、囲んでいるケーシング管からの一定の離間が保証される。この場合、本発明では、内部導体に対する調整能力により長距離送電線の敷設が著しく簡略化され、安全性の向上に著しく寄与することが確認されたが、この理由は、今や、組立中に製造誤差を補償すること、または曲がった敷設区間を十分に考慮することが可能であるからである。
【0010】
特にコスト上の理由から不活性ガスを省略するときに必要とされるように、ケーシング管のより大きな直径に移行する場合にも、空気中の電圧フラッシュオーバーを防止するために、内部導体用の調整能力が望ましい。不活性ガスと空気との間の移行は、この場合、明らかに、長距離送電線の寸法が全体的に拡大するという欠点を有する。しかし、ある程度、このような空気絶縁された管状電線は、不活性ガスの漏出を防止する必要がまったくないので保守が不要である。この点で、起伏のある地形でも、このような長距離送電線を長距離にわたって敷設することができ、それにもかかわらず、送電信頼性が保証される。この場合、架空電線の鉄塔が不要であり、電圧を送る架空電線に対して、成長する植物を取り除いて安全な経路を定期的に保つことも不要である。特にこのため、コストをさらに低減するために、敷設工程を簡略化することが特に望ましい。
【0011】
内部導体を保持する保持碍子が内部導体とケーシング管との間の距離を調整するために設計されるという点で、内部導体用の調整能力を簡単に提供することによって、本発明はさらに続く。次に、このような能力により、内部導体の取付中に、敷設工程中に、内部導体を適切に位置合わせすることが可能であり、この場合、保持碍子をいずれにしろ使用しなければならない。ある程度、保持碍子は内部導体用のターンバックルの機能を行う。このため、一実施例では、碍子は、可変長の区分(部分)を有する支持碍子の形態であり得る。このため、例えば適切な工具によって可変区分の長さを設定してロックすることが可能である。この場合、線形運動機構またはスピンドル調整機構を意図することができる。同様に、回転可能なねじ付き接続部(ねじ山付き接続部)を保持碍子の一端に設けることができ、保持碍子の他端は内部導体にまたはケーシング管に確実に接続される。
【0012】
長距離送電線の有利な一発展形態では、保持碍子は、本質的にロッドの形態であり、保持碍子の各々はねじ付き接続部を介して内部導体におよびケーシング管にねじ込まれ、ねじ付き接続部は内部導体においてまたケーシング管において互いに反対の回転方向を有する。このことは、内部導体とケーシング管との間の距離について意外にも簡単な調整能力を提供する。保持碍子の長手方向軸線を中心とする保持碍子の回転方向に応じて、この保持碍子が両端で内部導体におけるおよびケーシング管内の取付点にねじ込まれるか、または取付点から外される。この点でロッドの形態である保持碍子の簡単な回転により、ケーシング管に対する内部導体の位置を正確かつ所望に応じて位置合わせすることが可能になる。ねじ付き接続部において、保持碍子は、意図するように、特に適切なマークによって示されるように、規定位置までねじ込まれ、次に、製造誤差、曲率等は、さらにねじ込むかまたはねじ戻すことによって補償される。このことは、ケーシング管内の内部導体の敷設工程を著しく簡略化する。さらに、2つの結合金具の鏡像対称的な構成により、保持碍子の製造コストが低減される。
【0013】
原則として、保持碍子はセラミック碍子の形態であってもよい。しかし、優れた絶縁と堅牢な機械的強度とを同時に実現するために、保持碍子の各々は、本質的にロッドの形態のガラスファイバ軸を有するいわゆる複合碍子の形態であることが好ましく、複合碍子は、ガラスファイバ軸に適用されかつ特にシリコーンゴムからなる絶縁化合物を有する。ガラスファイバ軸は、必要な機械的堅牢性を提供する。特に、このガラスファイバ軸は、上記調整のために必要とされるねじれに対しても影響を受けない。絶縁能力は、軸に適用された絶縁化合物によって強化される。さらに本例では、絶縁化合物の適切な化学組成によって、異種粒子、水分等に関する汚染傾向を改善することができる。
【0014】
使用される複合碍子の表面にわたる沿面距離は、管状電線の寸法、絶縁すべき電圧差または予想される凝縮状態に従って設計することができる。この点で、ガラスファイバ軸に適用される絶縁化合物は、例えばプレート状にまたは螺旋状に軸を囲むシールドでまたはシールドなしに構成することが可能である。この場合、シールドのサイズおよび数は、意図する沿面距離のサイズに依存する。特に、複合碍子の小部分に沿ってシールドを設けることもできる。
【0015】
好便に、保持碍子は、2つの端部の各々にねじ山を有する結合金具を有する。この場合、2つの結合金具のねじ山の回転方向は互いに反対である。この場合、結合金具は、例えば、絶縁体の残部に、接着接合されるか、収縮接続によって接続されるか、または収縮接続との組み合わせで接着結合される。
【0016】
結合金具のねじ山の各々は雌ねじまたは雄ねじの形態であり得る。しかし、雌ねじは内部導体側においておよびケーシング管側においてねじ山ピンの形態の接続点をさらに必要とするので、金具端部はねじ付きロッドまたはねじ付きボルトの形態であることが好ましい。ねじ付きロッドは内部導体におけるおよびケーシング管におけるねじ付き穴に入るので、取付点の突出するエッジおよび角部を回避することができ、このことはコロナ放電の観点から有利である。
【0017】
好ましい一実施形態では、それぞれの保持碍子を回転させるための多角形部分が少なくとも1つの結合金具に形成される。一実施例では、このような多角形部分は、簡単なオープンエンドレンチまたはリングレンチによって把持することができ、このようにして、内部導体を調整するために、保持碍子の全体がその長手方向軸線を中心に回転される。
【0018】
複合碍子の場合、特に密接した接続にもかかわらず容易に製造できるため、結合金具が多角形部分とともに製造され、多角形部分によって軸に取り付けられると好便である。ここで多角形部分は少なくとも部分的に軸端部に押し込まれ、軸端部に対して圧縮されおよび/または接着接合される。言い換えれば、多角形部分は、軸端部の外径にほぼ一致する内径を有する。締まり嵌めを生成するために、多角形部分の内径は軸端部の外径よりも僅かに小さく作製される。結合金具は加熱され、それにより多角形部分の内径が拡張され、この結果、軸端部に(軸端部を超えて)多角形部分を押し込むことができる。冷却中、内径は原寸に縮減し、この結果、結合金具が締まり嵌めによって確実に軸に接続される。締まり嵌めの代わりにまたは追加して、適切な接着剤、特にエポキシ樹脂接着剤により、多角形部分の内径を軸端部に確実に接着接合することができる。特に確実な保持をもたらす接着剤ポケットを生成するために、軸端部または多角形部分の内側に周方向溝または凹みを設けることができる。
【0019】
上記の接続技術に関連して、結合金具は、特に、本質的にねじ付きロッドの形態であり、このロッドはその碍子側端部に適切に構成されたほぼ中空体の外部多角形部分を有する。公知の機械加工製造技術または非機械加工製造技術を用いて、このような結合金具を比較的有利に製造することができる。当然、このことは、ねじ付き接続部を有する結合金具が一方のみの端部に設けられる保持碍子の上記実施形態にも関連する。
【0020】
さらに有利には、ケーシング管は、外側に面する複数の保持ソケットを有し、これらの各々は保持碍子の雄ねじ付き接続部(ねじ山付き外側接続部)を保持する。代わりにまたは追加して、内部導体は、さらに好ましくは、内側に面する複数の保持ソケットを有し、これらの各々は保持碍子の雌ねじ付き接続部(ねじ山付き内側接続部)を保持する。
【0021】
ねじ付き接続部が保持される保持ソケットを設けることにより、電圧放電またはコロナ放電に不利である角部およびエッジを回避することが可能になる。ねじ付き接続部が保持ソケットに入り込む場合、これにより、内部導体およびケーシング管の内壁の間に長距離送電線の内部における比較的スムーズな移行がもたらされ、この長距離送電線は、横方向にねじ込まれる保持碍子に対して長手方向に延びる。
【0022】
内部導体は中実の導体または管状の導体の形態であり得る。中実の内部導体の場合、その保持ソケットは、例えば外側への回転等によって中実の内部導体から形成される。言い換えれば、内部導体の保持ソケットは次に内部導体に組み込まれる。次に、中空の内部導体の場合またはケーシング管の場合、保持ソケットは適切な凹部によって材料から形成される。この場合、形成された保持ソケットはケーシング管の外径を越えて半径方向に延びる。適切な場合、保持ソケットは外部から見えてもよい。
【0023】
さらに、存在するならば保持碍子の多角形部分は特定の範囲で保持ソケットに保持され、多角形部分の各々は、少なくとも、碍子側の多角形部分の端縁が保持ソケットのそれぞれの出口縁部と整列するまで入り込む。したがって、保持碍子の接続点のそれぞれ湾曲した出口ゾーンは、電場制御手段およびそれぞれの結合金具用のコロナ保護と同時に機能する。例えば、適切なレンチ等によって、多角形部分を適切な保持ソケットにねじ込むことができる。この場合、外部多角形部分を保持するために、保持ソケットは、十分に大きな直径を有する盲穴の形態である。ねじ付き穴が盲穴の底部に組み込まれ、このねじ付き穴に結合金具のねじ山をねじ込むことができる。
【0024】
特に、上記の説明は保持碍子の構成に関しても適用され、この保持碍子の一方の側にのみねじ付き金具が備えられる。
【0025】
長距離送電線の特に有利な一改良形態では、内部導体がケーシング管に対し空気絶縁される。これによって、電圧フラッシュオーバーを回避するために、不活性ガスによる絶縁体の場合よりも大きく寸法を設計する必要が生じるが、長距離送電線全体を気密に設計する必要はなく、長距離送電線の個々の区分も気密である必要がない。したがって、このような長距離送電線は、不活性ガス絶縁された管状電線よりも著しく僅かな保守で済む。局所的な圧力低下を検出するための圧力低下センサまたは中央制御コンソールは不要である。さらに、ケーシング管の内部に案内される内部導体を有する空気絶縁された長距離送電線は、凸凹の地形を通る長距離にわたる電圧の送電に適切である。特に、電線は、野外に、地表に、植物が生い茂った地域を通してまたは砂漠地帯を通して敷設することができる。
【0026】
説明してきた長距離送電線は、基本的に、AC電圧およびDC電圧の両方の送電に適切である。長距離送電線は、長距離送電用のDC電圧を送電するように設計されることが好ましい。架空電線と比較して管状電線の動作容量の増大のため、AC電圧が送電されるときに使用できない望ましくない無効成分が生じる。
【0027】
両方がそれぞれの円形断面を有する内部のケーシング管に対し同軸に敷設されることが好ましい内部導体では、内部導体の表面に対する最大電界強度は次式によって与えられることを示すことができる。
【0028】
【数1】

【0029】
この場合、aは内部導体の半径であり、bはケーシング管の半径である。ケーシング管の半径bと内部導体の半径aとの比率がオイラー数e=2.718に一致する場合、内部導体の表面における最大電界強度は次式に低減される。
【0030】
【数2】

【0031】
ケーシング管の直径が3mであり、内部導体の半径が好ましい比率eに一致するa=0.55mになるように選択されると仮定すると、800kVのDC電圧では、これにより、内部導体の表面に対しE=800kV/0.55m=14.54kV/cmの最大電界強度が得られる。
【0032】
このような電界強度は、30kV/cmの空気中の臨界のフラッシュオーバー値未満である。さらに、本例の内部導体とケーシング管との間の距離は0.95mである。言い換えれば、空気絶縁された長距離送電線が適切に設計される場合、空気絶縁された長距離送電線を使用して、最大800kVまでのDC電圧を送電することができる。この場合、内部導体が外的影響から保護されるようにケーシング管内部に保護して敷設されるという事実を考慮する必要もある。
【0033】
さらに、所定の寸法では、1500kmの長さを有し、15kV/cmの最大電界強度を有し、5%の電圧損失を有し、1cmの壁厚を有するアルミニウムからなるケーシング管を有し、約1バールの内部空気圧を有する長距離送電線を使用して、115GWの電力を800kVのDC電圧で送電できることを示すことができる。この場合、想定される電圧損失は、結果として生じるオーム抵抗による同軸の送電システムの送電損失に基づく。
【0034】
言及した第2の目的は、本発明によれば、内部導体をケーシング管の内部に離間して取り付けるための保持碍子により、内部導体とケーシング管との間の距離を調整するための前記保持碍子を設計することによって実現される。
【0035】
別の有利な改良形態は、保持碍子に関係する従属請求項に見出すことができる。この場合、長距離送電線の対応する改良形態に関連して述べてきた利点は、同一の意味で保持碍子に転用することができる。
【0036】
本発明の有利な改良形態について図面で以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ケーシング管の内部に同軸に敷設される内部導体を有する長距離送電線の概略図である。
【図2】保持碍子の位置における図1に示した長距離送電線の断面図である。
【図3】図2の拡大詳細図である。
【図4】それぞれの保持碍子のねじ付き接続部を保持するための保持ソケットの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、円筒状の中実内部導体3が中空円筒状ケーシング管2の内部に敷設される長距離送電線1の概略図を示している。この場合、内部導体3はケーシング管2に対し同軸に敷設される。或いは、内部導体は管状導体の形態である。長距離送電線1は全体的に長手方向5に沿って延びる。本例の図は、単一の部分片7を示しており、多数の部分片7は、長距離送電線1を形成するために、例えばねじ接続または溶接により、互いに隣接して全体的に長手方向5に配置される。
【0039】
ケーシング管2および内部導体3の両方は、アルミニウムまたは電気的に高導電性の他のある軽合金から製造される。長手方向5に沿った一定間隔で、内部導体3がそれぞれ3つの保持碍子10によってケーシング管2に横方向12に保持され、これらの保持碍子10の各々は120°オフセットして円周方向に配置され、このようにして、前記内部導体3は前記ケーシング管2から離間して保持される。保持碍子10の各々は、一端で内部導体3におよび他端でケーシング管2に確実に接続されるいわゆる長幹碍子として製造される。保持碍子10の各々は、図3および図4から理解できるように、内部導体3とケーシング管2との間の距離を調整するために設計される。
【0040】
長距離送電線1の内部は、約1バールの空気、すなわち大気圧で充填される。この場合、内部導体3はDC高電圧である。ケーシング管2が接地される。
【0041】
図2は、保持碍子10の位置における図1に示したような長距離送電線1の断面図を示している。図は、半径aを有する内部導体3を示しており、これらの内部導体3は、半径bを有するケーシング管2の内部の保持碍子10によって同軸に保持される。これにより得られる内部導体3とケーシング管2との間の距離には、文字cが付されている。3つの保持碍子10は、円周方向において内部導体3の周りに対称的に分布される。言い換えれば、隣接する2つの保持碍子10の間の角度はそれぞれ120°である。
【0042】
本発明で設計された長距離送電線1は、約500kV〜800kVのDC電圧の送電用に設計される。ケーシング管2の半径bは1.5mである。本例で中実である内部導体の半径aは0.55mである。したがって、内部導体3とケーシング管2との間の距離cは0.95mになる。比率b/aはオイラー数eに一致する。
【0043】
図2の保持碍子10の細部Xが図3に拡大して示されている。各保持碍子10は、絶縁体14を備えるいわゆる複合碍子の形態であり、この絶縁体14は横方向12に延び、ロッドの形態であり、ガラスファイバ強化プラスチックからなる。絶縁特性を向上させるために、シリコーンゴムからなる絶縁化合物15が絶縁体14に適用される。沿面距離を長くするために、プレートの形態でありかつシリコーンゴムからなるシールド17が保持碍子10の2つの端部の間の所々に形成される。この場合、形成されたシールドを有する絶縁化合物15が絶縁体14上に噴霧される。
【0044】
保持碍子10の2つの端部の各々に結合金具19があり、この結合金具19は、本質的に、内部導体3にまたケーシング管2に取り付けるために使用される。保持碍子10またはその端部を取り付けるために、保持ソケット20がケーシング管2に形成され、本例では内部保持ソケット21が中実である内部導体3に凹設される。この場合、雄ねじ付き接続部(ねじ山付き外側接続部)23および雌ねじ付き接続部(ねじ山付き内側接続部)24は、保持碍子10の結合金具19と連結して保持ソケット20、21の内部にそれぞれ形成される。正確な構成が図4に示されている。
【0045】
雄ねじ付き接続部23および雌ねじ付き接続部24は互いに反対の回転方向を有する。したがって、保持碍子10の回転の結果、保持碍子10は2つの保持ソケット20、21にねじ込まれるかまたは2つの保持ソケット20、21から外されることになる。この点で、保持碍子10は、ケーシング管2の内部の内部導体3を調整するためのターンバックルとして機能する。保持碍子10を回転させるために、2つの結合金具19の各々に多角形部分26が設けられる。この多角形部分はリングレンチによって把持することができ、保持碍子と対応して回転させることができる。多角形部分26を含む結合金具19の各々は、組み合わせた収縮/接着剤結合によって絶縁本体14のそれぞれの軸端部に確実に接続される。ねじ付き接続部23、24の正確な構成が図4に示されている。
【0046】
ケーシング管2の壁部に形成される外部保持ソケット20、および内部導体3に形成される内部保持ソケット21の両方の各々は、ねじ付き穴30、31(ねじ山付き穴)を有する。それぞれねじ付きボルト(ねじ山付きボルト)およびねじ付きロッド(ねじ山付きロッド)の形態である各保持碍子10の結合金具19のそれぞれのねじ山32と33は、回転方向に応じてこれらの穴30、31にねじ込まれるかまたはそれらから外される。結合金具19のねじ付きボルトのそれぞれのねじ山32と33の各々は互いに反対の回転方向を有する。
【0047】
各結合金具19のねじ付きボルトの各々は、保持碍子10を回転させるための多角形部分26の碍子側に終端する。組立状態では、結合金具19は多角形部分26と共にそれぞれの保持ソケット20、21にねじ込まれる。このため、各保持ソケット20、21は円筒状の盲穴を有し、ねじ込まれた状態において、この盲穴にそれぞれの多角形部分26が入り込む。次に、碍子側のそれぞれの多角形部分19の終端部は、対応する保持ソケット20、21の出口縁部とほぼ位置合わせされる。相応して、結合金具19の沈み込み長さが図4に示されている。沈み込み多角形部分26は、それぞれの結合金具19用の放電保護部またはコロナ保護部として機能する。さらに、図4は、ロッドの形態の絶縁体14を形成しかつ絶縁化合物15が適用される軸28を示している。
【符号の説明】
【0048】
1 長距離送電線
2 ケーシング管
3 内部導体
5 長手方向
7 部分片
10 保持碍子
12 横方向
14 絶縁体
15 絶縁化合物
17 シールド
19 結合金具
20 外部保持ソケット
21 内部保持ソケット
23 雄ねじ付き接続部
24 雌ねじ付き接続部
26 多角形部分
28 軸
30 ねじ付き穴
31 ねじ付き穴
32 ねじ山
33 ねじ山
a 内部導体半径
b ケーシング管半径
c 内部導体とケーシング管との間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向(5)に延びる外部ケーシング管(2)と、前記ケーシング管(2)の内部で前記長手方向(5)と平行に案内される内部導体(3)と、複数の保持碍子(10)であって、それによって前記内部導体(3)が長手方向(5)に対し横方向に前記ケーシング管(2)に前記ケーシング管(2)から離間して保持される複数の保持碍子(10)とを有する高電圧用の長距離送電線(1)において、
前記保持碍子(10)が、前記内部導体(3)と前記ケーシング管(2)との間の距離を調整するために設計されることを特徴とする長距離送電線(1)。
【請求項2】
前記保持碍子(10)が、本質的にロッドの形態であり、ねじ付き接続部(23、24)を介して前記内部導体(3)にかつ前記ケーシング管(2)に各々ねじ込まれ、前記ねじ付き接続部(23、24)が、前記内部導体(3)および前記ケーシング管(2)において互いに反対の回転方向を有することを特徴とする、請求項1に記載の長距離送電線(1)。
【請求項3】
前記保持碍子(10)の各々が複合碍子の形態であり、前記複合碍子が、本質的にロッドの形態であるガラスファイバ軸(28)と、前記ガラスファイバ軸(28)に適用されかつ特にシリコーンゴムからなる絶縁化合物(15)とを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の長距離送電線(1)。
【請求項4】
前記保持碍子(10)が、2つの端部の各々にねじ山(32、33)を有する結合金具(19)を有し、2つの前記結合金具(19)の前記ねじ山(32、33)の回転方向が互いに反対であることを特徴とする、請求項2または3に記載の長距離送電線(1)。
【請求項5】
前記それぞれの保持碍子(10)を回転させるための多角形部分(26)が少なくとも1つの結合金具(19)に形成されることを特徴とする、請求項4に記載の長距離送電線(1)。
【請求項6】
多角形部分(26)が設けられるとき、前記多角形部分(26)によって前記結合金具(19)が前記複合碍子の前記軸(28)に取り付けられ、ここで、前記多角形部分(26)が、少なくとも部分的に前記軸端部に押し込まれ、前記軸端部に対して圧縮されおよび/または接着接合されることを特徴とする、請求項3または5に記載の長距離送電線(1)。
【請求項7】
前記ケーシング管(2)が、外側に面する複数の保持ソケット(20)を有し、前記複数の保持ソケットの各々が前記保持碍子(10)の雄ねじ付き接続部(23)を保持することと、前記内部導体(3)が、内側に面する複数の保持ソケット(21)を有し、前記保持ソケットの各々が前記保持碍子(10)の雌ねじ付き接続部(24)を保持することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の長距離送電線(1)。
【請求項8】
前記保持碍子(10)の前記多角形部分(26)がさらに前記保持ソケット(20、21)に保持され、ここで、前記多角形部分(26)の各々が、その碍子側の端縁が少なくとも前記保持ソケット(20、21)のそれぞれの出口縁部と整列するまで入り込むことを特徴とする、請求項7に記載の長距離送電線(1)。
【請求項9】
前記内部導体(3)が前記ケーシング管(2)に対し空気絶縁されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の長距離送電線(1)。
【請求項10】
前記内部導体(3)が前記ケーシング管(2)に対し本質的に同軸に保持されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の長距離送電線(1)。
【請求項11】
前記内部導体(3)および前記ケーシング管(2)の各々が円形断面を有することと、前記ケーシング管(2)の半径と前記内部導体(3)の半径との比率がオイラー数eに一致することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の長距離送電線(1)。
【請求項12】
内部導体(3)をケーシング管(2)の内部に離間して取り付けるための保持碍子(10)であって、前記保持碍子(10)が、前記内部導体(3)と前記ケーシング管(2)との間の距離を調整するために設計されることを特徴とする保持碍子(10)。
【請求項13】
本質的にロッドの形態でありかつ2つの端部の各々にねじ山(32、33)を有する絶縁体(14)であって、前記2つのねじ山(32、33)が互いに反対の回転方向を有する絶縁体(14)を特徴とする、請求項12に記載の保持碍子(10)。
【請求項14】
本質的にロッドの形態であるガラスファイバ軸(28)を有し、かつ前記ガラスファイバ軸(28)に適用され特にシリコーンゴムからなる絶縁化合物(15)を有する複合碍子の形態であることを特徴とする、請求項12または13に記載の保持碍子(10)。
【請求項15】
ねじ山(32、33)を有する結合金具(19)が前記2つの端部の各々におけるねじ接続用に設けられ、前記2つの結合金具(19)における前記ねじ山(32、33)の回転方向が互いに反対であることを特徴とする、請求項13または14に記載の保持碍子(10)。
【請求項16】
前記それぞれの保持碍子(10)を回転させるための多角形部分(26)が少なくとも1つの結合金具(19)に形成されることを特徴とする、請求項15に記載の保持碍子(10)。
【請求項17】
多角形部分(26)が設けられるとき、前記多角形部分(26)によって前記結合金具(19)が前記軸(28)に取り付けられ、ここで、前記多角形部分(26)が、少なくとも部分的に前記軸端部に押し込まれ、前記軸端部に対して圧縮されおよび/または接着接合されることを特徴とする、請求項14または16の保持碍子(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−531883(P2012−531883A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518027(P2012−518027)
【出願日】平成22年5月3日(2010.5.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002677
【国際公開番号】WO2011/000446
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(510121835)ラップ インシュレータース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】