説明

高電圧パルス放電コンクリート破砕装置

【課題】 高電圧のパルス放電によりコンクリート表面を所定範囲にわたり、効率よく破砕可能な装置を提供する。
【解決手段】 コンクリート表面1上に載置された無底の筒状容器11内に水等の絶縁流体を満たし、筒状容器11内に放電電極の陽極端子13+と陰極端子13−とを所定間隔をあけて立設する。陽極端子13+、陰極端子13−間に印加される高電圧パルスを、コンクリート表面1から内部に伝播させて、端子間のコンクリート表面1を薄層状に破砕する際、筒状容器11を、隔壁15で連結された同心をなす内筒11Aと外筒11Bとで構成された二重筒構造とし、内筒11Aと外筒11Bの下部と隔壁15とで画成され、下端が開放された二重の収容空間16内に、膨張可能なチューブ21と、チューブ21の膨張状態に応じてコンクリート表面1とチューブ21との間で弾性変形し、筒状容器11とコンクリート表面1との間の隙間を密着させるシール部材22を収容した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高電圧パルス放電コンクリート破砕装置に係り、高電圧のパルス放電によりコンクリート表面を所定範囲にわたり、効率よく破砕することができる高電圧パルス放電コンクリート破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高電圧パルス放電を利用した岩石やコンクリートの破砕工法が提案されている(特許文献1参照)。この種の高電圧パルス放電を利用したコンクリートの破砕作業は、たとえば絶縁流体で覆われたコンクリート表面に、所定の離れをもって配置された陽極端子および陰極端子を接触させ、放電端子側に高電圧パルスを印加させ、陽極端子および陰極端子が接触しているコンクリートの表面を所定範囲にわたり、破砕するものである。この高電圧パルス放電によってコンクリートを破砕する原理は、絶縁流体でコンクリート表面が満たされることにより、放電は微細な空気泡などを含有するコンクリート内部を通り、放電経路内部が高圧プラズマ化し、コンクリートが破砕されるメカニズムからなりたっている。
【0003】
なお、本明細書では、大きな岩石やコンクリートを小割りのブロックに破砕させるような芯抜き破砕作業等に対して、特にコンクリートの表面の所定の範囲を数mm〜十数cmの深さで薄層に割り、剥がすように破砕する作業を「はつり」と呼んでいる。したがって、本明細書では、破砕、はつり、破砕する、はつる等、ほぼ同義に用いられている。
【0004】
上述のように、高電圧パルス作用時に絶縁材料として用いることができる、上述の絶縁水を用いて、高電圧パルス放電でコンクリートの破砕作業を行うためには、絶縁流体の絶縁性能が十分得られるように、コンクリート表面を所定の深さで覆うことが好ましい。特許文献2には、岩石の表面に、内部に陽極端子と陰極端子とが配設されている破砕ヘッドを密着し、その内部にポンプを介して絶縁流体を供給する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−119283号公報。
【特許文献2】特開平11−236793号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、絶縁流体としてディーゼルオイル、水、海水、グリース、作動油等を用いて、立設された電極を破砕対象である岩石等の内部に向かって進行するように構成されている。そしてその破砕された空間内に絶縁流体を貯留させて、連続した破砕作業を行うようにしているが、特許文献2のように、破砕ヘッドを用いて絶縁流体に加圧して破砕対象物内に制御浸透させることは考慮していないので、破砕対象物の破砕の効率が悪いという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2では、破砕ヘッド内の絶縁流体に加圧することにより、破砕対象物内の所定深さまで絶縁流体を制御させながら浸透させるようになっている。このため、破砕対象物の内部の深い位置に放電経路を形成して破砕面を生じさせることができるので、効率の良い破砕作業が実現するとしている。
【0008】
ところが、コンクリート表面の所定の平面範囲を、所定の深さではつるようなコンクリート破砕作業では、はつりによる破砕を行う方向に電極端子を所定距離ずつ移動させていくので、特許文献2に示したような破砕ヘッドの他に流体加圧装置からの供給管を連結させた状態で、移動した位置において破砕ヘッドをコンクリート表面に密着させ、その破砕ヘッド内に絶縁流体を加圧供給する作業を連続して行う手順を繰り返さなければならない。このため、コンクリート表面の破砕作業の進行に連れて、破砕ヘッドの下面がすでにはつられ、欠けたコンクリート表面の部位に重なってしまう場合がある。この状態ではコンクリート表面と破砕ヘッドとの間に隙間が生じてしまい、内部の水等の絶縁流体が流出してしまう。
【0009】
これらの問題を解消するために、出願人は、すでに、コンクリート表面に設置された筒状容器内に収容された絶縁流体としての水(以下、本明細書では、常時は導体であるが、高電圧パルス作用時にあたかも絶縁体として挙動する水の性質に着目し、「絶縁水」と呼ぶ。)が、コンクリート表面の凹凸によって漏水するのを確実に防止できるようにしたコンクリートはつり装置を提案している。この装置は、はつり装置の底面のコンクリート表面に当接する部分に、シリコーン樹脂等のコンクリートの凹凸面に追従可能な材質のリング状のシール部材を取り付け、破砕装置のシール部材をコンクリート表面に押圧することで、シール部材をコンクリート表面の凹凸部に密着させて、凹凸部からの装置内の絶縁水の漏水を防止するようにしたものである(特願2005−347576参照)。
【0010】
しかし、このコンクリートはつり装置の場合には、軟質シール部材が弾性変形してコンクリート表面に均等に当接するため、深い凹部を確実に止水するためには、凸部に相当するシール部材を必要以上に大きく圧縮変形させなければならない場合がある。このため、シール部材は十分な圧縮しろを有することが必要で、さらにシール部材を凹部に確実に押圧させるために、大きな押圧力を発揮できる加圧装置や、その加圧装置の押圧反力を負担する反力架台等の付帯設備も必要となってくる。そのため、装置全体が大がかりなものとなり、ハンディなはつり装置としての可搬性に劣るという問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、全体構造をコンパクトな破砕装置とすることができ、コンクリート表面の凹凸による絶縁水の漏水等を確実に防止できるようにし、安定したパルス放電コンクリート破砕を行えるようにした高電圧パルス放電コンクリート破砕装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明はコンクリート表面上に載置された無底の筒状容器内に絶縁流体を満たし、前記筒状容器内に放電電極の陽極端子と陰極端子とを所定間隔をあけて立設し、前記陽極端子、陰極端子間に印加される高電圧パルスを、前記コンクリート表面から内部に伝播させて、前記端子間のコンクリート表面を薄層状に破砕する高電圧パルス放電コンクリート破砕装置において、前記筒状容器を、隔壁で連結された同心をなす内筒と外筒とで構成された二重筒構造とし、前記内筒下部と前記外筒下部と隔壁とで画成され、下端が開放された二重の収容空間内に、外部からの供給流体により膨張可能なチューブと、該チューブの下側に位置し該チューブの膨張状態に応じて前記コンクリート表面と前記チューブとの間で弾性変形し、前記筒状容器とコンクリート表面との間の隙間を密着させるシール部材を収容したことを特徴とする。
また、前記筒状容器は、前記シール部材が収容された面が、押圧機構により、前記コンクリート表面に押圧され、前記筒状容器とコンクリート表面との間の隙間を密着させることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置に作用させる押圧力が小さくても、破砕装置の容器下端と凹凸状になったコンクリート表面との間に生じる隙間を確実に密着でき、装置のコンパクト化を図ることができ、前記容器内に貯水した絶縁水の漏水を確実に防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の高電圧パルス放電コンクリート破砕装置の実施するための最良の形態として、以下の実施例について添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の高電圧パルス放電コンクリート破砕装置(以下、破砕装置10と記す。)の一実施例を、装置本体内の陽極端子、陰極端子(以下、+,−を問わない場合、放電電極と記す。)の設置状態をわかるように、装置の一部を断面で示した概略全体構成図である。同図に示したように、破砕装置10の本体部は、はつり作業の対象となるコンクリート表面1上に載置され絶縁水12で満たされた、内筒11A、外筒11Bとからなる2重筒構造の筒状容器11と、この筒状容器11内に支持フレーム14で鉛直をなすように保持された2本の放電電極13(13+,13−)とからなり、放電電極13は、コンクリート表面1の高電圧パルス破砕が可能な端子間距離が設定された状態で支持フレーム14に取り付けられている。本実施例では、放電電極13は、端子先端13aを構成するφ5mmの銅線の周囲を高密度ポリエチレン樹脂被覆材13bで絶縁被覆した、自立可能な棒状体から構成されている。なお、本実施例では、高電圧パルス発生源として、約200〜400kVの範囲での適正電圧が設定可能な高電圧電源(図示せず)と、この高圧電源を所定のパルス電圧として対象に印加可能な電荷容量のコンデンサ(図示せず)とを備えた公知の高電圧パルス発生装置5が用いられている。
【0016】
公知の高電圧パルス発生装置5から導出された導線6が接続された2本の放電電極13(陽極端子13+、陰極端子13−)の先端13aを、コンクリート表面1に所定の離れをあけて接触させ、一定の時間間隔をあけて発生させる高電圧パルスを陽極端子13+側からコンクリート表面1に放電させ、このパルス電流を陰極端子13−側までコンクリート内を導通させることで生じる衝撃力をコンクリート内に伝播させることで、2本の放電電極間で、所定の幅、深さまでのコンクリート表面1を薄い塊状に剥離して破砕させることができる。
【0017】
この放電電極13を収容する筒状容器11の内筒11Aの直径(内径)は、はつり範囲を規定する放電電極間距離Lに応じて決定することが好ましいが、容器の高さは、高電圧パルスにとっての絶縁物である絶縁水12でコンクリート表面1が満たされ、放電が確実にコンクリート内部を伝播し、放電経路となったコンクリート部分が破砕されように、十分な水深Dが確保できる程度に設定することが好ましい。具体的には放電電極間距離Lの1/2倍程度以上の水深を確保することができる寸法にすることが好ましい。なお、筒断面形状は破砕時に水中を伝播した衝撃波による破損のおそれを最小限にするため、隅角部等のない円筒形状とすることが好ましい。
【0018】
また、筒状容器11内には水供給管3が配管されており、外部貯水容器内に貯留されている絶縁水12が、破砕作業に先立って外部ポンプPの稼働によって筒状容器11内の所定水深まで供給される。そして、破砕作業後、筒状容器11内のコンクリート破砕片が混ざった絶縁水12は再度、外部貯水容器4に還流される。コンクリート破砕片は環流水の経路中間に設けられたフィルタ(図示せず)で除去することが好ましい。なお、筒状容器11内に供給される絶縁水12として水道水、井戸水、工業用水等の使用が可能であるが、これら水に代えて、絶縁作用のあるディーゼル油、機械作動油を絶縁流体として使用することもできる。
【0019】
ここで、筒状容器11の下端に設けられたシール構造について、図2〜図4を参照して説明する。このシール構造は、図1に示したように、コンクリート表面1に無底の筒状容器11が載置され、その容器内に絶縁水12が貯水され、蓋19で上面が覆われた状態で、容器下端とコンクリート表面1との隙間からの漏水を防止するために設けられている。すなわち、シール構造20は、押圧力により筒状容器11の下端がコンクリート表面1に確実に密着して、この部分での水密性が保持される構造になっている。筒状容器11自体の構造としては、上述した高電圧パルスの衝撃波に耐え得る筒壁厚さを有し、さらに押圧力でシール構造20がコンクリート表面1に確実に密着できるように、各部材の厚さ等が設計されている。
【0020】
図2は、破砕装置10によるコンクリート表面1のはつり作業が進行し、破砕装置10の一部が、凹状に窪んだコンクリート表面1上に位置した状態を示している。破砕装置10の下端に設けられたシール構造20は、このように凹凸形状があるコンクリート面への密着性を向上させる構造を備えたことを特徴としている。なお、放電電極13は、図2に示したように、凹凸を有するコンクリート表面1に電極端子下端13aが常時接触できるように、支持フレーム14に対して上下方向にスムースにスライドできるようになっている。
【0021】
図3は、シール構造20の構成を説明するために、筒状容器の下部の一部を切り欠き、各部材の構成を分解して示した分解斜視図である。同図に示したように、筒状容器11は内筒11Aと外筒11Bとが所定の離れをあけて同心配置され、内筒11Aの外面と外筒11Bの内面とが上下に配置された隔壁15で接合された2重筒構造からなり、本実施例では下部の隔壁15と内筒11Aと外筒11Bとで囲まれたリング状の収容空間16内にシール構造20が組み込まれている。
【0022】
本実施例では、シール構造20は、膨張時の軸線直径が筒状容器11の内筒11A直径と外筒11B直径との平均径にほぼ等しく設定されたリング状のチューブ21と、図3及び図5(a)に示したように、矩形断面形状をなし、膨張時のチューブ21と軸線直径が等しいシール部材22とが上下に配列された構成されている。なお、筒状容器の平断面は、円形に限られず、だ円形、長円形、各頂点が丸味をなす略矩形、矩形等にできることはいうまでもない。
【0023】
チューブ21は、図3に示したように、耐圧性を有するゴム成形品からなるリング状膨張体で、本実施例では、後述するようにシール部材22の収容空間16内に収容した状態で、供給ホース21aを介して流体を供給して空間内で内筒11A、外筒11B、隔壁15、及びシール部材22とに密着する程度の体積まで膨張させて使用される。その内圧状態により、シール部材22をコンクリート表面1に押圧した際のシール部材22の支持力が決定される。また、チューブ21内に供給する流体は、シール部材22からの大きな反力支持性能が求められる場合には、非圧縮性流体としての水、不凍液、作動油等を用いることが好ましい。
【0024】
シール部材22の断面寸法は、本実施例では、図5(a)に示したように、幅が内筒11Aと外筒11Bとの離れ(隔壁幅)に等しく、高さが収容空間16のほぼ1/2程度に設定されている。シール部材22の材質としては、コンクリート表面1の凹凸に追従して変形可能な弾性成形部材として、PVA樹脂等が用いられている。この他、たとえば自己接着性を示す非加硫ブチルゴム等の軟質合成ゴム、各種軟質ゴムエラストマー系、ウレタン系エラストマー、硬質ウレタンゴムの他、スポンジ状の軟質発泡ポリエチレン樹脂等のように、シール部材22底面と凹凸のあるコンクリート表面1との間を閉塞可能な各種弾性材料を用いることができる。
【0025】
図4は、筒状容器11の一部を切り欠き、上述したチューブ21とシール部材22とを収容空間16内に収容した状態を示した斜視図である。同図に示したように、収容空間16に位置するチューブ21を膨張させると、チューブ21の下面に接しているシール部材22は載置されたコンクリート表面1に向けて押圧された状態で筒状容器の下端からわずかに突出し、筒状容器11の自重作用により、コンクリート表面1に押圧され、弾性変形してコンクリート表面1に密着することができる。
【0026】
次に、チューブ21とシール部材22の協働により、筒状容器の下端とコンクリート表面1とを密着させる構成について、図5各図を参照して説明する。各図において、下向き矢印はシール部材22のコンクリート表面1への押圧力の大きさを、矢印の線長で模式的に示したスケールである。チューブ21内に加圧されていないとき(図5(a))は、シール部材22は筒状容器11の収容空間16に完全に収容されており、筒状容器11の内筒11A、外筒11Bの下端がコンクリート表面1に接した状態にある。この状態から図示しない圧源からポンプを介してチューブ21内に流体Fを供給すると、チューブ21内に均等な圧力の流体Fがほぼ充満した状態でシール部材22が筒状容器11の底部からわずかに突出し、シール部材22の底面がコンクリート表面1と接触した状態で筒状容器11がコンクリート表面1上に載置される。このとき、シール部材22に作用する鉛直方向の押圧力は、破砕装置としての筒状容器11と筒状容器11に付帯する各部材の総重量、チューブ21による押圧力および押圧力支持機構によるものであり、押圧力が均等にシール部材22に作用することで、シール部材22がわずかに弾性変形した状態でコンクリート表面1に密着する(図5(b))。
【0027】
この状態で筒状容器11内に絶縁水(図示せず)を満水まで満たした際、シール部材22とコンクリート表面1との間の密着が十分でないと、この隙間から漏水するおそれがある。そのため、筒状容器11に絶縁水を満たす際には、たとえば図2に示したような押圧支持機構の反力により、図5(c)に示したように、シール部材22の底面とコンクリート表面1との密着を図ることが好ましい。押圧支持機構としてはバックホーのブーム先端に取り付けられた押圧アタッチメント25等が考えられる(図2)。
【0028】
さらに、コンクリート表面1のはつり作業が進行した際、筒状容器11の底部の一部が窪んだコンクリート表面1にかかる場合が生じる。その際には、チューブ21内の圧力を高めることでシール部材22自体のコンクリート表面1への押圧力を増加させる。このとき、コンクリート表面1に細かい凹凸があっても、弾性体としてのシール部材22の底面がコンクリート表面1の凹凸に倣って変形して確実に密着するので、この隙間からの絶縁水の漏水を完全に遮断することができる。
【0029】
次に、押圧力の作用について、図2を参照して簡単に説明する。図1に示した装置の載置状態から、ひきつづきコンクリート表面1のはつり作業を行っていくと、筒状容器11の下端の一部がはつられて窪んだコンクリート表面1の一部に位置する場合がある。コンクリート表面1が図1に示した平滑な水平面であれば、筒状容器11及び付帯装置の自重程度の小さな力で、シール構造20はコンクリート表面1に密着して漏水のおそれはない。しかし、図2に示したように、コンクリートが破砕した状態の表面は、モルタルや骨材の破砕面や、骨材が抜け落ちた個所等が現れる。そのため、シール構造20をこのはつり後のコンクリート表面1に確実に密着させることが重要である。その場合には、押圧機構により、筒状容器11の上方からの押圧力を増し、シール部材22の底面を凹凸形状のあるコンクリート表面1に倣って十分変形させて密着させている。押圧機構としては、バックホー等のブーム先端に押圧用アタッチメント25等を取り付け、この押圧アタッチメント25を、ブーム操作により筒状容器11の上面に所定の押圧力が作用させ、筒状容器11とコンクリート表面1との間のシール構造20の密着を図ることが好ましい。
【0030】
図6各図は、コンクリート壁面7のはつり作業に、この破砕装置10を適用した他の実施例を示した説明図である。図6(a)に示したように、筒状容器11は内部に絶縁水12を貯水するために、水密性を有する脱着可能な蓋部18を有している。そして、この蓋部18で覆われた筒状容器11も、コンクリート壁面7に押圧した状態で水密性が保持されるようになっている。このとき、内部に絶縁水12を満たすために、容器上部に水供給管3が接続され、この水供給管3に図1と同様の外部ポンプP、外部貯水容器4が設けられている。このように、破砕装置10をコンクリート壁面に適用した場合には、図6(b)に示したように、筒状容器11のシール構造20がコンクリート壁面7に密着させた状態で支持可能な押圧支持機構を用いることが好ましい。押圧支持機構としては、上述した押圧支持機構としての押圧アタッチメント25と同様の機構として、バックホーのブーム先端等に、筒状容器11を搭載可能な架台アタッチメント26を取り付け、ブームの操作により、架台アタッチメント26上の筒状容器11を、はつり対象のコンクリート壁面7の所定位置に適度な押圧力を作用させた状態で支持することで、破砕装置10の支持と、壁面との間の密着を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の高電圧パルス放電コンクリート破砕装置の全体構成を示した一部断面図。
【図2】図1に示したはつり装置の設置状態例を示した一部断面図。
【図3】筒状容器の収容空間に装着されるシール構造の部材構成を示した分解斜視図。
【図4】図3に示したシール構造が筒状容器内に装着された状態を示した一部切欠斜視図。
【図5】本発明のシール構造のチューブとシール部材の変形状態を示した拡大断面図。
【図6】本発明の破砕装置をコンクリート壁面の破砕作業に適用した例を示した説明図。
【符号の説明】
【0032】
1 コンクリート表面
5 高電圧パルス発生装置
7 コンクリート壁面
10 破砕装置
11 筒状容器
11A 内筒
11B 外筒
12 絶縁水
13 放電電極
15 隔壁
20 シール構造
21 チューブ
22 シール部材
25 押圧アタッチメント
26 架台アタッチメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート表面上に載置された無底の筒状容器内に絶縁流体を満たし、前記筒状容器内に放電電極の陽極端子と陰極端子とを所定間隔をあけて立設し、前記陽極端子、陰極端子間に印加される高電圧パルスを、前記コンクリート表面から内部に伝播させて、前記端子間のコンクリート表面を薄層状に破砕する高電圧パルス放電コンクリート破砕装置において、
前記筒状容器を、隔壁で連結された同心をなす内筒と外筒とで構成された二重筒構造とし、前記内筒下部と前記外筒下部と隔壁とで画成され、下端が開放された二重の収容空間内に、外部からの供給流体により膨張可能なチューブと、該チューブの下側に位置し該チューブの膨張状態に応じて前記コンクリート表面と前記チューブとの間で弾性変形し、前記筒状容器とコンクリート表面との間の隙間を密着させるシール部材を収容したことを特徴とする高電圧パルス放電コンクリート破砕装置。
【請求項2】
前記筒状容器は、前記シール部材が収容された面が、押圧機構により、前記コンクリート表面に押圧され、前記筒状容器とコンクリート表面との間の隙間を密着するようにした請求項1記載の高電圧パルス放電コンクリート破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−55393(P2008−55393A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238750(P2006−238750)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【出願人】(596097349)アイタック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】