説明

高電圧ブレーカのためのスイッチング・チャンバ及び高電圧ブレーカ

【課題】フラッシュ・オーバーに対する保護を改善した高電圧ブレーカのためのスイッチング・チャンバを提供する。
【解決手段】導電性材料からなるスイッチング・チャンバ・ハウジング2を有し、このスイッチング・チャンバ・ハウジング2は、コンタクト・チューブ3とコンタクト・ピン4とから成るエロージョン・コンタクト装置が中に配置されたエロージョン・ボリュームの周囲を取り囲み、且つ、このエロージョン・ボリュームをスイッチング・チャンバ・ハウジング2の外面の出口開口16に接続する少なくとも一つの出口8を有し、少なくとも、前記出口開口16の周囲を直接に取り囲む領域が、絶縁材料により形成されていることを特徴とするスイッチング・チャンバ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前書き部分の中に規定されている高電圧ブレーカのためのスイッチング・チャンバに係る。本発明はまた、このようなスイッチング・チャンバを有する高電圧ブレーカに係る。ここに記載されたタイプの高電圧ブレーカは、電力分配設備の中で使用される。
【背景技術】
【0002】
この一般的なタイプのスイッチング・チャンバは、EP 1 835 520 A1 から知られている。切り離しの際、スイッチング・チャンバの中の絶縁ガスが、エロージョン・コンタクトの間で発生するアークにより大きく加熱され、そのために、増大した圧力が作り出される。高温の絶縁ガスが、出口を通って、スイッチング・チャンバ・ハウジングから、スイッチング・チャンバの周囲を取り囲み且つ高電圧ブレーカのカプセルにより取り囲まれた膨張領域の中へ、送り出される。
【0003】
電場強度が、縁の近くで、及び出口の周囲を取り囲む領域の中で、局部的に増大する。それは、スイッチング・チャンバ・ハウジングの外面のより大きい曲率のためである。そして、それに加えて、この領域の中の絶縁強度が高温の絶縁ガスの流れのために減少する。これらの領域は、それ故に、臨界的な領域となり、その中において、しばしば、スイッチング・チャンバ・ハウジングと、間隔を開けてその周囲を取り囲む接地されたカプセルとの間で、フラッシュ・オーバーの危険が生じ、そのために、これらの領域が本質的にカプセルの寸法を決定することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第 EP 1 835 520 A1号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明は、出口の領域の中でのブレークダウン強度を改善すると言う目的に基づいている。この目的は、請求項1の特徴部分の中の特徴により実現される。
【0006】
本発明に基づくスイッチング・チャンバのデザインは、最も強い電場が出口開口の縁の直ぐ近くにない状態をもたらす。高温の絶縁ガスの流れは、絶縁材料のみと接触する。それとは反対に、最も強い電場は、出口開口の周囲を取り囲む領域内で、スイッチング・チャンバ・ハウジングの導電性の外面から引き離されている。他の場合に、出口の縁に隣接して生ずる強い電場と加熱された絶縁ガスの強い流れとの間臨界的な接続が、回避される。高電圧ブレーカのためのカプセルは、これに対応して、より小さい寸法を有していても良く、そのために、よりコンパクトに抑えられることが可能であり、且つ、より低いコストで製造されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、スイッチング・チャンバを備えた高電圧ブレーカの第一の実施形態の一部を通る軸方向の長手方向の断面を概略的に示している。
【図2】図2は、スイッチング・チャンバを有する高電圧ブレーカの第二の実施形態の一部を通る軸方向の長手方向の断面を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明が、図面を参照しながら、以下のテクストの中でより詳細に説明される。但し、これらの図面は、実施形態の例のみを示している。
【0009】
図1の中に示された高電圧ブレーカは、軸1の回りで本質的に回転対称であって、スイッチング・チャンバの第一の実施形態を有している。このスイッチング・チャンバは、導電性材料(好ましくはアルミニウムまたは鋼などのような金属)からなるほぼ管状のスイッチング・チャンバ・ハウジング2を有していて、このハウジングは、絶縁ガス(例えばSF)で満たされたエロージョン・ボリュームの周囲を取り囲んでいる。スイッチング・チャンバ・ハウジング2は、コンタクト・チューブ3に固く接続され、このチューブは、エロージョン・ボリュームの中のコンタクト・ピン4と共に、スイッチング・チャンバ・ハウジング2と同軸のエロージョン・コンタクト装置を形成している。
【0010】
スイッチング・チャンバ・ハウジング2は、導電性材料からなる円筒状のカプセル5の中に、それが軸方向に動くことが可能であるように配置され、このカプセルもまた、好ましくは、アルミニウムまたは鋼などのような金属で作られ、スイッチング・チャンバ・ハウジングは、このカプセルから電気的に隔離されている。接地され、閉じられたカプセル5は、スイッチング・チャンバ・ハウジング2の周りを間隔を開けて同軸状に取り囲む管状の側壁6、並びにそれを閉じる端部壁7を有している。同様にカプセル5により取り囲まれ且つスイッチング・チャンバ・ハウジング2の周囲を取り囲む膨張領域も、同様に絶縁ガスで満たされている。
【0011】
軸方向に延び且つ軸1の回りで回転対称の出口8が、コンタクト・ピン4と反対方向に向いた端部で、スイッチング・チャンバ・ハウジング2の中に設けられている。そこで、スイッチング・チャンバ・ハウジング2は、本質的に開かれていて、開口9を有し、この開口の縁10−その最も狭いポイント−の上に、その端部部分が張り出している。縁10は、かくして、スイッチング・チャンバ・ハウジング2の外面の周囲を取り囲む部分に対して後退していて、窪み11の中に配置され、この窪みの縁ラインは、凸面の径方向の断面を有している。縁10の中で、開口9が実質的に段差の形態で再び広がり、その結果として、スイッチング・チャンバ・ハウジング2が、そこに外周の段差12を形成する。
【0012】
インサート13が開口9の中に配置され、絶縁材料からなり、例えば、テフロン(登録商標)などのような耐熱性のプラスチックまたはセラミックからなる。このインサート13は、軸方向に向けられた出口チャネル15の周囲を取り囲む接続スタブ14を有していて、この出口チャネルは、エロージョン・ボリュームを出口開口16に接続し、この出口開口は、端部壁7の向かい側にある。このスタブは、開口9の縁10の領域の中で、スイッチング・チャンバ・ハウジング2と接触し、これに対して、このスタブは、更に外側でそれから間隔を隔てて配置されている。その理由は、窪み11がそこで広がるからである。このスタブ、スイッチング・チャンバ・ハウジング2の外面の、窪み11の周囲を取り囲む領域(即ち、端部壁7の向かい側のその端部)を超えて若干突出している。外側に突出する外周のカラー17は、接続スタブ14の内側の端に接続され、段差12の領域の中で、スイッチング・チャンバ・ハウジング2の内面と接触し、インサート13を固定している。
【0013】
スイッチング・チャンバ・ハウジング2の端部領域が、窪み11(開口9の縁10に向かって狭まる)でデザインされている結果として、且つ、開口9の、段差12までの後続する拡大の結果として、これは、凸面の外周ビードを形成し、この外周ビードは、端部で内側に突出している。スイッチング・チャンバ・ハウジング2の外面の曲率は、後者の端部の領域内で、その最大値を取り、それ故に、電場強度がそこで最も高い値に到達する。導電性のスイッチング・チャンバ・ハウジング2と絶縁性のインサート13の間の臨界的なコンタクト・ライン−いわゆる三重点−は、それとは反対に、窪み11の中の相対的に深い所に位置していて、スイッチング・チャンバ・ハウジング2の突出している端部によって電気的に遮蔽され、その結果として、そこでの電場強度が低くなる。
【0014】
エロージョン・ボリュームの中の絶縁ガスは、コンタクト・チューブ3とコンタクト・ピース4が切り離されたときに、それら間で発生するアーク18により加熱され、その結果として、そこに圧力の顕著な増大が生ずる。これは、軸方向のガス流れを引き起し、このガス流れは、部分的にコンタクト・チューブ3の中を通って、且つ出口チャネル15の中を通って、カプセル5により取り囲まれた膨張領域の中へ流れる。このガスの流れは、接続スタブ14の中を通って送られ、この接続スタブは、それが最大の電場強度が発生するスイッチング・チャンバ・ハウジング2の端部から離れているように、スイッチング・チャンバ・ハウジング2の外面を超えて若干、突出している。このガスの流れは、カプセル5の端部壁7に向かって流れ、そこで外側に曲げられ、その端部壁6とスイッチング・チャンバ・ハウジング2の間に配置された環状の領域の中に向かう。
【0015】
図2の中に示された高電圧ブレーカは、スイッチング・チャンバの第二の実施形態を有している、しかしながら、これは、多くの点で第一の実施形態のスイッチング・チャンバに対応している。高電圧ブレーカの他の部分は、図1の中に示されたブレーカの他の部分に完全に対応している。
【0016】
しかしながら、この場合には、スイッチング・チャンバ・ハウジング2は、端部壁19により、端部で閉じられ、複数(例えば4個または6個)の出口8を有している、これらの出口は、その僅かに前方に配置され、周囲に亘って均一に分布され、径方向外側に向けられ、そしてより小さいが、その他については、第一の実施形態の中における出口に類似している。この場合には、同様に、開口9は、窪み11の中に後退してそれぞれ配置され、この窪みの縁ラインは、凸面の径方向の断面を有している。即ち、その最も狭いポイントを示すその縁10が、スイッチング・チャンバ・ハウジング2の外面に対して後退している。
【0017】
開口9の中に配置されたインサート13の接続スタブ14は、次に、スイッチング・チャンバ・ハウジング2の外面を超えて若干突出している。このスタブの直径は、開口9の直径と比べて小さく、その結果として、このスタブは、全周に亘ってその縁10から若干間隔を隔てた位置にある。カラー17のみが、前記カラー17の内側でスイッチング・チャンバ・ハウジング2と接触し、その結果として、三重点は、この場合、開口9の内側の端部に位置し、即ち、再びまた、遮蔽された領域の中に位置している。この遮蔽された領域は、窪み11の縁から間隔を隔てた位置にあり、そこで、電場強度がその最も高くなり、この遮蔽された領域の中の電場強度はかなり低くなる。
【0018】
切り離しの際に発生するガスの流れは、出口チャネル15の中を通って送られる。この出口チャネルは、径方向外側に向けられ、カプセル5の側壁6に向かい合い、開口9の周囲を取り囲む領域(電場強度がより高い)から、信頼性高く引き離されている。
【0019】
複数の径方向の出口を設ける代わりに、環状の間隙の形態の一つの外周上の径方向の出口を設けることも可能である。
【0020】
更にまた、以上において説明したものとは異なるが、本発明に基づくアイディアを使用する更なる実施形態も可能である。特に、スイッチング・チャンバ・ハウジングは、固定コンタクト・ピースに接続されても良く、そして、反対側の端部の領域の中に出口を有していても良い。軸方向及び径方向の出口は、結合されることも可能である。
【符号の説明】
【0021】
1…軸、2…スイッチング・チャンバ・ハウジング、3…コンタクト・チューブ、4…コンタクト・ピン、5…カプセル、6…側壁、7…端部壁、8…出口、9…開口、10…縁、11…窪み、12…段差、13…インサート、14…接続スタブ、15…出口チャネル、16…出口開口、17…カラー、18…アーク、19…端部壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧ブレーカのためのスイッチング・チャンバであって、
導電性材料からなるスイッチング・チャンバ・ハウジング(2)を有し、このスイッチング・チャンバ・ハウジングは、エロージョン・コンタクト装置が中に配置されたエロージョン・ボリュームの周囲を取り囲み、且つ、このエロージョン・ボリュームをスイッチング・チャンバ・ハウジング(2)の外面の出口開口(16)に接続する少なくとも一つの出口(8)を有する、
スイッチング・チャンバにおいて:
少なくとも、前記出口開口(16)の周囲を直接に取り囲む領域が、絶縁材料により形成されていることを特徴とするスイッチング・チャンバ。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載のスイッチング・チャンバ:
前記出口開口(16)の周囲を取り囲む絶縁材料の部分が、スイッチング・チャンバ・ハウジング(2)の外面を超えて突出している。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項1または2に記載のスイッチング・チャンバ:
前記絶縁材料は、それぞれ、インサート(13)の形態であって、このインサートが、スイッチング・チャンバ・ハウジング(9)の中の開口(9)の中に挿入され、且つ前記出口開口(16)に到る出口チャネル(15)の周囲を取り囲んでいる。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項2または3に記載のスイッチング・チャンバ:
前記インサート(13)は、接続スタブ(14)を有し、この接続スタブは、出口チャネル(15)の周囲を取り囲み、且つスイッチング・チャンバ・ハウジング(2)の外面の開口(9)の周囲を取り囲む領域の上に張り出している。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項3または4に記載のスイッチング・チャンバ:
前記開口(9)は、スイッチング・チャンバ・ハウジング(2)の外面の窪み(11)の中に、その縁(10)が、スイッチング・チャンバ・ハウジング(2)の外面の、窪み(11)の周囲を取り囲む領域に対して後退しているように配置されている。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項5に記載のスイッチング・チャンバ:
前記開口(9)の縁(10)は、出口開口(16)に対して後退しているその領域の中で、接続スタブ(14)と接触し、これに対して、更に外側に配置された接続スタブ(14)の部分は、スイッチング・チャンバ・ハウジング(2)から間隔を隔てた位置にある。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項3から6の何れか1項に記載のスイッチング・チャンバ:
前記インサート(13)は、出口チャネル(15)から外側に突出し、スイッチング・チャンバ・ハウジング(2)の内面に接触するカラー(17)を有している。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項4または5及び7に記載のスイッチング・チャンバ:
前記接続スタブ(14)は、その全体が、スイッチング・チャンバ・ハウジング(2)から間隔を開けた位置にある。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項1から8の何れか1項に記載のスイッチング・チャンバ:
前記スイッチング・チャンバ・ハウジング(2)は、軸(1)の回りで本質的に回転対称である。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項9に記載のスイッチング・チャンバ:
前記スイッチング・チャンバ・ハウジング(2)は、一方の端に、軸方向に向けられた出口(8)を有している。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項9または10に記載のスイッチング・チャンバ:
前記スイッチング・チャンバ・ハウジング(2)は、少なくとも一つの、径方向に向けられた出口(8)を有している。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項1から11の何れか1項に記載のスイッチング・チャンバ:
前記絶縁材料は、プラスチックまたはセラミックである。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項1から12の何れか1項に記載のスイッチング・チャンバを有する高電圧ブレーカ:
前記高電圧ブレーカは、絶縁ガスで満たされ且つ導電性材料からなるカプセル(5)を有し、このカプセルは、間隔を開けて、スイッチング・チャンバ・ハウジング(2)の周囲を取り囲み、且つ、それから電気的に切り離されている。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−150912(P2011−150912A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−11729(P2010−11729)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(505063441)アーベーベー・テヒノロギー・アーゲー (96)
【Fターム(参考)】