説明

魔鏡およびその製造方法

【課題】魔鏡の製造方法には、レーザー加工方法などのさまざまな方法が知られている。しかしながら、従来の方法には材料の厚み、意匠模様、焦点距離等が制限される欠点があった。また、熟練した職人の手による研磨などの工程を必要であった。
【解決手段】金属板の鏡面加工した面の反対面にフォトエッチング法などにより、所定の模様の凹凸を形成させる。その後、プレス加工により鏡面加工した面が凸になるように金属板に曲面を付ける事により、表面に肉眼では可視不可能な微細な凹凸を付けることにより、魔鏡とする。このときの曲面の角度によって投影される意匠模様の焦点距離を変える事が出来る。本体を湾曲させ表面の中に凸面の模様を、曲面を出す事によって作り出し平面の焦点距離の中に凸面の模様を他の部分より暗い影を像として現れるようにする。その事により、細い線での細かい模様から、太い線での模様などさまざまな表現が可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平滑な鏡面でありながら、太陽光線のような平行線を当てると、反射光が明暗の模様として、スクリーン投影される鏡面を有する魔鏡およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魔鏡に関する製造方法には、メッキによる方法やマスキングを施した面にサンドブラスト等で微細な凹凸をつける方法、あるいは鏡面にレーザー光線や電子ビーム等の高エネルギー密度熱源を用いて高エネルギー線を照射する方法、金型を用いてプレス加工より得る方法、研磨による方法など知られている。
いずれも、微細な凹凸を得て魔鏡現象を得る方法として広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−313009号公報
【特許文献2】特開2000−106994号公報
【特許文献3】特許号3274196
【特許文献4】特開2006−23567号公報
【特許文献5】特開平3−123508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の魔鏡は、平面や凸面の中に凹面の模様を作り出し、平面からの反射面中に凹面からの反射模様を他の部分より明るい像として現れるようにした物であり、平面と凹面の焦点距離の関係から細い線の模様しか入れる事ができないという問題点があった。また、投影する模様の焦点距離を長くする事が出来ないという欠点があった。
【0005】
さらに、意匠模様を反射面に加工する際には、反射像は反転した像として写るため表面に入れる場合の意匠模様は、反転したものを入れなければならず、その模様が見えたときに違和感が生じていた。
【0006】
これに加えて、従来の伝統的な製造方法では、研削研磨工程において極めて熟練した職人の技が必要である上、製作に長期間必要であり、短期間での量産や多種多様な意匠文様を安価に造る事が困難である。このように、従来の魔鏡の製造方法には多くの、問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、第1の発明は、
鏡面上に肉眼では凹凸が認められない可視不可能な微細な凹凸からなる模様を有する魔鏡である。
また、第2の発明は、上記の
鏡面上に肉眼では凹凸が認められない可視不可能な微細な凹凸からなる模様を有する焦点距離を有する魔鏡である。
また、第3の発明は、
鏡面上に微細な凸からなる模様を有する魔鏡である。
また、第4の発明は、
鏡面上に微細な凸からなる模様を有する長い焦点距離を有する魔鏡である。
また、第5の発明は、
鏡面上に肉眼では凹凸が認められない可視不可能な微細な凹凸からなる模様を有し、投影像を他の部分より暗い模様として現す魔鏡である。
また、第6の発明は
鏡面上に肉眼では凹凸が認められない可視不可能な微細な凹凸からなる模様を有し、投影像を他の部分より暗い模様として現す長い焦点距離を有する魔鏡である。
また、第7の発明は、
化学的方法や機械的方法により、鏡面の逆側の面に模様を形成させた後、鏡面を凸に湾曲させる魔鏡の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、金属板の鏡面加工した面の反対の面に所定の形状の凹凸を形成させ、その後、プレス加工により鏡面加工した面が凸になるよう金属板に曲面を付ける事により、表面に肉眼では可視不可能な微細な凹凸を付ける。このときの曲面の加工の程度を変化させることにより、投影される意匠模様の焦点距離を変える事ことが出来る。
【0009】
また、従来のものとは逆に、本体を湾曲させ表面の中に凸面の模様を、曲面を出す事によって作り出し平面の焦点距離の中に凸面の模様を他の部分より暗い影を像として現れるようにするため、細い線での細かい模様から、太い線での模様などさまざまな表現が可能である。投影するための模様は裏面に反射像と同じ向きになるように加工してよい。
【0010】
さらに、従来の熟練した職人の手による研磨などの工程を必要とせず、機械化した工程により、従来品に比較して、より複雑な意匠模様を容易に、安価に、かつ短時間で大量生産が可能になる。また、製品の品質にばらつきを少なく、製作が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の魔鏡を製造するための、鏡面の裏面を示した図である。
【図2】図2は本発明の魔鏡を製造するための、加工を行う状態を示した図である。
【図3】図3は本発明の加工を行った後の魔鏡の断面図を示した図である。
【図4】図4は本発明の魔鏡の凸面の状態と焦点距離の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては、図1に示したように金属板の鏡面加工した面の鏡裏面7の面に、所定の形状の凹凸の意匠模様2を形成させ、図2に示したようにプレス金型6をもちいてプレス加工により鏡面加工した面が凸になるよう金属板に曲面を付ける。金型台5にはシリコン樹脂を用いているが、凹型の金型、もしくは、型を用いない方法(鏡面にはなにも当てない方法)により制作することも可能である。この加工により、図3に示したように表面に肉眼では可視不可能な微細な凹凸である、魔鏡像を作る部分3を付ける。このとき、図4に示すように鏡面1の加工の程度を変化させることにより、投影される意匠模様の焦点距離を変える事ことが出来る。なお、鏡面加工した面が凸になるよう金属板に曲面を付けるプレス金型6の半径は5〜20cm程度が好ましい。
【0013】
この加工に使用される金属板の材質は、真鍮、ステンレス、銅、アルミニューム、鉄、銀、金これらの合金など適当なものを選択でき、その寸法も自由であるが10Фから100Ф程度でありその厚さは、0.1mmから2mmである。もちろんこの範囲に限定されない。メッキによる色彩を付けても効果は変わらない。この加工により得られた鏡の表面(表)には見た目には意匠模様をほとんど認めることが出来ないが、太陽光などを反射させたところ鏡面より15cmから1.5m位離しておいた白紙面に鏡面の反射像の中に意匠模様の明確な像を得ることができ、上記の課題を達成できた。
【0014】
なお、鏡裏面7の面に、所定の形状の凹凸の意匠模様2を形成させる方法には、プレス加工により得る方法、マスキングを施しサンドブラストもしくは研磨やエッチングを施して得る方法、古来の手法により、肉厚部と薄い部分とのつける方法(鋳造時につけるなど)を用いてもよい。
【実施例1】
【0015】
以下に本発明の実施例を示すが、もちろん、これに限定されるものではない。
厚さ0.2mmtのステンレス鋼薄板(SUS430BA)を用意し、直径23mmの円盤を切り出した。一面を鏡面研磨を行い鏡になる面とした。鏡面を保護するためのシートを貼り付け、反対面にはフォトレジストを塗布し、乾燥の後マスクを通して、露光、現像して目的とするレジストパターンを形成した後エッチングを行った。レジストはアクリル樹脂系フォトレジストを用い、厚さ10μmで塗布し、露光、現像して、パターンを形成し、比重1.48g/cm 、温度60℃の塩化第二鉄溶液を噴霧してスプレーエッチング加工を行った後にレジスト除去し目的としたパターンを得た。エッチングの深さは0.05mm〜0.10mm(平均0.07〜0.075mm)、線巾は0.15mm程度とした。なお、この深さは、素材の厚さにより異なり、素材の厚さが厚くなると深くなる。
【0016】
得られた薄板を用いて、半径10cmのポンチを用いて凸面加工を行った。なお、加工は図この加工において、エッチングを行った部分には塑性加工が行われ、加工後もその部分に変形が残留した。
【実施例2】
【0017】
実施例1と同様の素材を用いて、レーザー加工により、深さ0.05mm〜0.10mmのパターンを裏面に形成し、同様の方法により加工を行った。レーザー加工を行った部分には塑性加工が行われ、加工後もその部分に変形が残留した。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明においては、従来の熟練した職人の手による研磨などの工程を必要とせず、機械化した工程により、従来品に比較して、より複雑な意匠模様を容易に、安価に、かつ短時間に、また製品の品質にばらつきを少なく大量生産が可能になる。
【符号の説明】
【0019】
1 鏡面
2 意匠模様
3 魔鏡像を作る部分
4 湾曲した本体
5 金型台
6 プレス金型
7 鏡裏面
8 焦点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡面上に肉眼では凹凸が認められない可視不可能な微細な凹凸からなる模様を有することを特徴とした魔鏡
【請求項2】
長い焦点距離を有することを特徴とした請求項1に記載の魔鏡
【請求項3】
鏡面上に微細な凸からなる模様を有することを特徴とした魔鏡
【請求項4】
長い焦点距離を有することを特徴とした請求項3に記載の魔鏡
【請求項5】
鏡面上に肉眼では凹凸が認められない可視不可能な微細な凹凸からなる模様を有し、投影像を他の部分より暗い模様として現すことを特徴とした魔鏡
【請求項6】
長い焦点距離を有することを特徴とした請求項5に記載の魔鏡
【請求項7】
化学的方法や機械的方法により、鏡面の逆側の面に模様を形成させた後、鏡面を凸に湾曲させることを特徴とする魔鏡の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−186100(P2011−186100A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50055(P2010−50055)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(509251626)有限会社コウノ (2)
【Fターム(参考)】