説明

魚バサミ

【課題】閉じられたときに携行や収納に便利なコンパクトな外形状となる魚バサミ1の提供。
【解決手段】前後に延びる一対のハサミ本体2U、2Lを有する魚バサミ1であって、上記ハサミ本体2U、2L同士がその後端近傍において支軸3によって開閉可能に連結されており、このハサミ本体2U、2Lが、対象物を挟むための前方の挟持部4U、4Lと、人の手が握り操作するための後方の握り部5U、5Lとを有しており、各ハサミ本体の挟持部4U、4Lが、左右両側を前後に延びる外壁8U、8Lを有しており、挟持部4U、4L同士が閉じられたときに、他方のハサミ本体2Lの外壁8Lが、一方の本体2Uの外壁8Uの内側に嵌合するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚バサミに関する。詳細には、例えば、魚釣りや鮮魚店等において生の魚を挟んで保持したり搬送したりするための魚バサミに関する。
【背景技術】
【0002】
活きた魚を人の手で掴むのは容易ではない。とくに、ヒレやトゲに毒性を有する魚、体の表面から粘液を多く分泌する魚は、なおさら掴みにくい。このような場合に、魚バサミが用いられる。この魚バサミの基本的な構造は、普通の紙バサミと同様、支軸によって二本のハサミ本体が相互に回転可能に連結されたものである。ハサミ本体の支軸より後方部分(以下、握り操作部という)が使用者によって握られることにより、支軸より前端側部分(以下、挟持部という)によって魚が挟持される。紙バサミとの基本的な相違は、挟持部に、長手方向に沿って刃が形成されていないことである。刃に代えて多数の歯が整列している魚バサミもある。この多数の歯によって魚が滑り落ちることなく把持されうる。
【0003】
例えば、特開2008−211986公報に開示された釣り用バサミは、支軸より前端側の挟持部に刃も歯も形成されていない。挟持部は、魚を挟みやすいように、大きな曲率半径の円弧状の凹部となるように形成されている。一方、特開平6−328367号公報に開示されたはさみ器具も、魚を挟持するためのものである。この公報には、一対の挟持部のうちの一方にのみ歯が形成されたハサミ器具(図1)、及び、両挟持部ともに歯が形成されたハサミ器具(図5及び図6)が開示されている。
【0004】
通常、魚バサミは、閉じられた状態でバッグ等に収納され、使用者等によって携行される。上記いずれの公報に開示された魚バサミも、閉じられたときには少なくとも前端部同士が当接し合う。挟持部同士は、その当接したときの位置以上には相互に接近し得ない。その結果、魚バサミは収納や携行に便利なコンパクトな形状とはなり得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−211986公報
【特許文献2】特開平6−328367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の現状に鑑みてなされたものであり、収納や携行に便利なコンパクトな外形になりうる魚バサミを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る魚バサミは、
開閉可能に連結された一対の前後に延びるハサミ本体を有する魚バサミであって、
上記ハサミ本体が、対象物を挟むための前方の挟持部と、人の手が握り操作するための後方の握り部とを有しており、
一方のハサミ本体の挟持部が、左右両側を前後に延びる外壁を有しており、
上記挟持部同士が閉じられたときに、他方のハサミ本体の挟持部が、上記左右の外壁の内側に嵌合するように構成されている。
【0008】
かかる構成の魚バサミは、ハサミ本体が閉じられると、他方のハサミ本体の挟持部が一方のハサミ本体の左右の外壁の内側に嵌合されるので、携行や収納に便利なコンパクトな外形状となる。
【0009】
上記他方のハサミ本体の挟持部が、左右両側を前後に延びる外壁を有し、この他方の挟持部の左右の外壁が、上記一方の挟持部の左右の外壁の内側に嵌合するように構成されていてもよい。
【0010】
上記他方の挟持部の左右の外壁がいずれも内側に傾斜しているのが、上記嵌合が容易になされうるので好ましい。
【0011】
上記一対の挟持部の外壁が、いずれも握り部の左右両側にまで延びており、他方の握り部の左右の外壁が、一方の握り部の左右の外壁の内側に嵌合するように構成されていてもよい。
【0012】
一対の挟持部の長手方向前端に、互いに対向する挟持部に向けて前端歯が突設されており、挟持部同士が閉じられたときに、上記前端歯同士が、当接し合わずに食い違った状態で重なり合うように配置されているのが好ましい。上記嵌合が容易となるからである。
【0013】
ハサミ本体のうちの少なくとも上記挟持部が、左右の外壁の内側を、長手方向に延びる補強リブを有し、この補強リブ及び上記外壁の各端縁に、前後方向に沿って歯が整列して形成されていてもよい。
【0014】
上記挟持部同士が閉じられたときに、一方の補強リブに形成された歯と、他方の補強リブに形成された歯とが、互いに食い違った状態で重なり合うように配置されているのが好ましい。上記嵌合が容易となるからである。歯が互いに食い違った状態で重なり合うとは、例えば、図3に示されるように、ハサミ本体の前後方向に食い違う構成(図3(a))も、ハサミ本体の幅方向に食い違う構成(図3(b))も含む。
【0015】
上記補強リブに形成された歯と外壁に形成された歯とは、対象物をしっかりと挟持する観点から、互いに前後方向逆向きに傾斜しているのが好ましい。
【0016】
一対のハサミ本体が開閉可能となるように、上記握り部の後端近傍を相互に回転可能に連結する支軸と、
連結された一対の握り部の後端同士の間に挿入されたロック部材とを備えており、
このロック部材が、一対のハサミ本体同士を閉状態に規制するロック位置と、ハサミ本体同士の開閉動作を許容する動作位置とに進退させられるように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る魚バサミは、そのハサミ本体が閉じられると、携行や収納に便利なコンパクトな外形状となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明に係る魚バサミの一実施形態を示す正面図である。
【図2】図2は図1の魚バサミの組み立て前斜視図である。
【図3】図3(a)は図1の魚バサミのIII−III線断面図であり、図3(b)は本発明に係る魚バサミの他の実施形態を示す横断面図であり、図1のIII−III線断面図に相当する図である。
【図4】図4(a)は図1の魚バサミの一方のハサミ本体(上部本体)の正面図であり、図4(b)は底面図である。
【図5】図5(a)は図1の魚バサミの他方のハサミ本体(下部本体)の平面図であり、図5(b)は正面図である。
【図6】図6(a)は、図1の魚バサミに装備されたロック部材が動作位置にあり、且つハサミ本体が開いている状態を示す一部断面図であり、図6(b)は上記ロック部材が動作位置にあり、且つハサミ本体が閉じている状態を示す一部断面図であり、図6(c)は上記ロック部材がそのロック位置にある状態(ハサミ本体は全閉状態)を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0020】
図1から図5に示された魚バサミ1は、一対の前後に延びるハサミ本体2U、2Lを有している。一方のハサミ本体2Uを上部本体2Uとも呼び、他方のハサミ本体2Lを下部本体2Lとも呼ぶこととする。しかし、この魚バサミ1は、いずれのハサミ本体2U、2Lが上に位置した状態で用いられてもよい。ハサミ本体2U、2Lは、PA(ポリアミド)にグラスファイバーを加えたもの、ABS樹脂(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)にグラスファイバーを加えたもの、POM(ポリアセタール)にグラスファイバーを加えたもの、PAにカーボンファイバーを加えたもの等から形成されている。しかし、かかる材質には限定されない。これらハサミ本体2U、2Lは、その後端部近傍において、支軸3によって相互に回転可能に連結されている。ハサミ本体2U、2L同士は、この支軸3を支点として開閉させられる。
【0021】
図1においては、ハサミ本体2U、2L同士の開いた状態が実線で示され、閉じた状態が二点鎖線で示されている。本実施形態の魚バサミ1は、ハサミ本体2U、2L同士の全開角度αが約30°となるように構成されている。しかし、かかる開度には限定されない。各ハサミ本体2U、2Lは、前部に位置する挟持部4U、4Lと、後部に位置する握り部5U、5Lとを有している。挟持部4U、4Lは魚等を挟むための部位であり、握り部5U、5Lは人の手が握り操作するための部位である。
【0022】
図2から図5に示されるように、上下のハサミ本体2U、2Lは、いずれも船型に形成されている。上部本体2Uは、長尺の天板6と、天板6の左右の両側縁に沿って形成された外壁8Uとを有している。下部本体2Lは、長尺の底板7と、底板7の左右の両側縁に沿って形成された外壁8Lとを有している。いずれのハサミ本体2U、2Lも、前後方向の中心線に関して左右対称の形状を有している。
【0023】
上部の各外壁8Uのうち挟持部4Uの範囲には、その下端縁に沿って多数の歯9Uが形成されている。下部の各外壁8Lのうちの挟持部4Lの範囲にも、その上端縁に沿って多数の歯9Lが形成されている。これらの歯9U、9Lは、全て側面視が三角形を呈しており、全て各ハサミ本体2U、2Lの後方に向けて傾斜している。上部の外壁8Uの下端縁、及び、下部の外壁8Lの上端縁は、ともに挟持部4U、4Lの範囲では、大きな曲率半径の円弧状の凹状にされている。魚を挟持しやすくするためである。
【0024】
図2に示されるように、上記支軸3回りにはねじりバネ10が装着されている。このねじりバネ10は、上下のハサミ本体2U、2Lが、支軸3を支点として、互いに開く方向に付勢するように装着されている。連結された上下の握り部5U、5Lの後端(ハサミ本体2U、2Lの後端)同士の間にロック部材11が挿入されている。このロック部材11は、ハサミ本体2U、2L同士を全閉状態に規制するロック位置Lと、開閉動作を許容する動作位置Fとに進退させられうる。このロック部材11の詳細については後述する。
【0025】
図2、図4及び図5に示されるように、上下のハサミ本体2U、2Lにはそれぞれ補強リブ12U、12Lが形成されている。いずれの補強リブ12U、12Lも、外壁8U、8Lで囲まれた内部に、上下のハサミ本体2U、2Lの各長手方向の中心線に沿って形成されている。その結果、ハサミ本体2U、2Lは、その横断面がほぼE字状となる形状を有している(図3参照)。補強リブは、握り部5U、5Lの後端から所定の範囲には形成されていない。これは、握り部5U、5Lの後端から挿入されるロック部材11との干渉を回避するためである。従って、この範囲では、握り部5U、5Lの横断面はほぼコ字状となっている。
【0026】
上部本体2の補強リブ12Uの下端縁、及び、下部本体2Lの補強リブ12Lの上端縁には、それぞれ多数の歯13U、13Lが形成されている。これらの歯13U、13Lは、全て側面視が三角形を呈しており、全て各ハサミ本体2U、2Lの前方に向けて傾斜している。すなわち、補強リブ12U、12Lの歯13U、13Lは、上記外壁8U、8Lの歯9U、9Lとは逆の方向に傾斜している。これにより、この魚バサミ1によって挟持された魚は、前後いずれの方向にも滑りにくく、しっかりと把持されうる。補強リブの歯13U、13Lが後方に傾斜し、外壁の歯9U、9Lが前方に傾斜していてもよい。
【0027】
図3に示されるように、上部本体2Uの幅は下部本体2Lの幅より大きい。上下の外壁8U、8Lは互いにほぼ相似形状に延在している。上下の本体2U、2L同士が閉じたときには、下部本体の左右の外壁8Lが、上部本体の左右の外壁8Uの内側に嵌合する。従って、上下の外壁の歯9U、9L同士は当接しない。上下の外壁8U、8L同士が嵌合することにより、魚バサミ1はコンパンクトな形状となる。この嵌合が容易になされるように、下部本体の左右の外壁8Lが、内側にわずかに傾斜している。この嵌合が容易になされるように、以下のとおり、上下の補強リブの歯13U、13Lは、互いに当接し合わないように、食い違った状態で重なり合うように構成されている。
【0028】
図3(a)に示されるように、上下の補強リブ12U、12Lは、幅方向に一致する位置に形成されていてもよい。この場合、上下の補強リブの歯13U、13Lは、歯のピッチが大きくされるとともに、上下の歯13U、13Lが、前後方向に互いに半ピッチずれた位置に形成されているのが好ましい。その結果、ハサミ本体2U、2L同士が閉じたときに、上下の歯13U、13L同士は、互いの歯と歯の間に位置することになる。
【0029】
図3(b)に示されるように、上下の補強リブ12U、12Lが、幅方向に一致しない位置に形成されているのも好ましい。この場合、ハサミ本体2U、2L同士が閉じたときに、上下の歯13U、13L同士が互いに干渉することがない。これらの構成により、上下の外壁8U、8L同士が容易に深く嵌合し、魚バサミ1はコンパンクトな形状となる。
【0030】
図1に示されるように、各挟持部4U、4Lの前端には、互いに対向する挟持部4L、4Uに向けて前端歯14U、14Lが突設されている。この前端歯14U、14Lは、挟持部4U、4L同士が閉じられたときに、当接し合うことなく互いに食い違った状態で重なり合うように形成されている。かかる構成により、ハサミ本体2U、2Lは、閉じたときに互いに一層接近し合い、魚バサミ1がコンパクトな形状となる。
【0031】
上下の外壁8U、8Lは、歯9U、9Lが形成されている挟持部4U、4Lの範囲では背が高くされている。上下の挟持部4U、4Lともに、前端歯14U、14Lの後方に隣接して、外壁8U、8Lが極めて低くされた部分が設けられている。この部分により、挟持部4U、4L同士が閉じられたときに、挟持部4U、4Lの左右の両側面に窓部16が形成される。窓部16の形成により、例えば、以下のような利点が得られる。前端歯14U、14Lによって容易に小さな魚の口を掴むことができる。また、前端歯14U、14Lがバッグや壁等に設けられたぶら下げ用のリングに係合した状態で、挟持部4U、4L同士が閉じられ、且つ、ロック部材16によってロックされることにより、この魚バサミ1が容易に保持されうる。
【0032】
図1、図4及び図5に示されるように、握り部5U、5Lの後端近傍の外壁8U、8Lが高くされている。外壁8U、8Lのこの範囲を拡張壁部15U、15Lと呼ぶ。ハサミ本体2U、2Lが閉じられるときには、この上下の拡張壁部15U、15L同士も嵌合する。拡張壁部15U、15Lは支軸3に隣接している。従って、ハサミ本体2U、2L同士が開閉させられるとき、そのほとんどの動作範囲で、上下の拡張壁部15U、15L同士が重なり合っている。これにより、ハサミ本体2U、2Lは、開閉させられるときに、幅方向に位置ずれしたり、ぐらつくことが防止される。その結果、挟持部の歯9U、9L、13U、13L同士が当接し合うことなく、外壁8U、8L同士及び補強リブ12U、12L同士がスムーズに嵌合する。この拡張壁部15U、15Lは、いわば案内部である。拡張壁部15U、15Lは、ハサミ本体2U、2L同士の全閉から全開までの全範囲において重なり合うように形成されるのが好ましい。本実施形態では、挟持部4U、4Lの先端近傍、及び、握り部5U、5Lの範囲は、他の部位に較べて外壁8U、8Lの高さが低くされている。しかし、ハサミ本体2U、2Lの全長にわたって、外壁8U、8Lの高さが高くされていてもよい。
【0033】
上部本体2Uの天板6の上面、及び、下部本体2Lの底板7の下面には、それぞれ、その前後になだらかな斜面を有する凸部17U、17Lが形成されている。本実施形態では、上部本体の凸部17Uは、下部本体の凸部17Lよりもやや前方に位置している。かかる形状により、握り部5U、5Lに対する使用者の親指の位置及び人差し指の位置が安定する。その結果、使用者は握り部5U、5Lをしっかりと握ることができる。
【0034】
図2及び図6を参照しつつ、前述のロック部材11を説明する。各握り部5U、5Lの後端の横断面はほぼコ字状を呈している。連結された握り部5U、5Lの後端には横断面が矩形の開口が形成される。握り部5U、5Lの後端は、支軸3よりわずかに後方に位置している。従って、ハサミ本体2U、2Lが開いたときは上記開口の高さ寸法は小さく(図6(a))、閉じたときは開口の高さ寸法は大きくなる(図6(b)、(c))。閉じたときの開口の高さ寸法は、後述するロック部材11の直方体状の挿入部18の厚さにほぼ等しい。また、閉じたとき、握り部5U、5Lの後端近傍の上下の内面26、27、すなわち、天板6の内面26(図4)と底板7の内面27(図5)とはほぼ平行になる。
【0035】
ロック部材11は、この開口から握り部5U、5Lの内部に挿入される直方体形状の挿入部18と、この挿入部18に連続して形成された摘み部19とを有している。挿入部18には、前述したねじりバネ10を装着するための縦スリット20が形成されている。挿入部18には長孔21が形成されている。前述の支軸3が、この長孔21に貫入したうえハサミ本体2U、2Lに取り付けられている。ロック部材11はこの支軸3によって係止されているため、抜け落ちることはない。長孔21の長径は、ほぼロック部材11の操作時の進退可能距離を規定している。挿入部18の上下の平行面22から連続して、摘み部19に向けて互いに接近する上下の傾斜面(テーパ面)23が形成されている。
【0036】
図6(a)は、ロック部材の挿入部18が握り部5U、5L内に完全に挿入された状態を示している。この状態では、摘み部19が握り部5U、5Lの後端にほぼ当接する位置に至っている。この位置は、ロック部材11の動作位置Fのうちの一つである。この動作位置Fでは、ハサミ本体2U、2Lは、握り部5U、5Lの後端がロック部材11の傾斜面23に規制されるまで開くことができる。ハサミ本体2U、2Lが開くと、後端の開口の高さ寸法は小さくなる。しかし、当接するロック部材11の傾斜面2部分の厚さも小さくなる。動作位置Fでは、もちろん、ハサミ本体2U、2Lは閉じることができる(図6(b))。閉じる方向には、握り部5U、5Lは傾斜面23や平行面22によって規制されないからである。図6(b)は図6(a)と同じ動作位置Fを示している。
【0037】
図6(c)は、挿入部18が握り部5U、5L内からわずかに露出するまで引き出された状態を示している。この状態では、握り部5U、5Lの後端近傍の上下の内面が、挿入部18の上下の平行面22に面接触している。この位置をロック部材11のロック位置Lという。ロック位置Lでは、ハサミ本体2U、2Lは閉じた状態で拘束され、開くことができない。すなわち、握り部5U、5Lの後端が挿入部18の上下の平行面22に規制されるので、ハサミ本体2U、2Lは開くことができない。
【0038】
図示されていないが、ロック部材11は、図6(a)及び図6(b)に示された動作位置Fと、図6(c)に示されたロック位置Lとの間の任意の位置でロック作用を奏しうる。この中間位置も動作位置Fである。すなわち、ロック部材11の位置を調節することにより、全開角度(本実施形態では30°)と全閉角度(本実施形態では0°)との間の任意の角度でロックすることができる。具体的には、挟持部4U、4Lが魚を挟持した状態で、ロック部材11の摘み部19が後方に引かれる。そうすると、ハサミ本体2U、2Lは、挟持部4U、4Lが魚を挟持した状態から開動作が規制される。ロック部材11が後方に引かれることにより、握り部5U、5Lの後端がロック部材11の傾斜面23に当接し、ハサミ本体2U、2Lが開方向には回転し得ないからである。このように、この魚バサミ1は、魚の大きさに対応した開度においてロックされうる。換言すれば、図6(a)が示す位置と図6(c)が示す位置との間のロック部材11の位置に応じて、ハサミ本体2U、2Lの最大開度が連続的に変化する。
【0039】
以上の実施形態では、ハサミ本体2U、2Lが、その後端近傍(握り部5U、5Lの後端近傍)で支軸3によって連結されている。しかし、かかる構成には限定されない。例えば、ハサミ本体同士がその中間部分で交差し、この交差部が支軸によって連結されていてもよい。この場合、ハサミ本体の、連結部の前方が挟持部であり、連結部の後方が握り部となる。この場合でも、一方のハサミ本体の幅より他方のハサミ本体の幅が小さくされることにより、閉じられたときに、一方のハサミ本体の外壁の内方に他方のハサミ本体が嵌合するように構成することができる。かかる構造の場合には、上記ロック部材11は採用されない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る魚バサミは、大小様々な魚を対象にすることができ、しかも、魚釣りはもとより、鮮魚店での使用にも好適である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・魚バサミ
2U、2L・・・ハサミ本体
3・・・支軸
4U、4L・・・挟持部
5U、5L・・・握り部
6・・・天板
7・・・底板
8U、8L・・・外壁
9U、9L・・・(外壁の)歯
10・・・ねじりバネミ
11・・・ロック部材
12U、12L・・・補強リブ
13U、13L・・・(補強リブの)歯
14U、14L・・・前端歯
15U、15L・・・拡張壁部
16・・・窓部
17U、17L・・・凸部
18・・・挿入部
19・・・つまみ部
20・・・縦スリット
21・・・長孔
22・・・平行面
23・・・傾斜面
26・・・(天板の後端部の)内面
27・・・(底板の後端部の)内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能に連結された一対の前後に延びるハサミ本体を有する魚バサミであって、
上記ハサミ本体が、対象物を挟むための前方の挟持部と、人の手が握り操作するための後方の握り部とを有しており、
一方のハサミ本体の挟持部が、左右両側を前後に延びる外壁を有しており、
上記挟持部同士が閉じられたときに、他方のハサミ本体の挟持部が、上記左右の外壁の内側に嵌合するように構成されている魚バサミ。
【請求項2】
上記他方のハサミ本体の挟持部が、左右両側を前後に延びる外壁を有しており、
この他方の挟持部の左右の外壁が、上記一方の挟持部の左右の外壁の内側に嵌合するように構成されている請求項1に記載の魚バサミ。
【請求項3】
上記他方の挟持部の左右の外壁が、いずれも内側に傾斜している請求項2に記載の魚バサミ。
【請求項4】
上記一対の挟持部の外壁が、いずれも握り部の左右両側にまで延びており、
他方の握り部の左右の外壁が、一方の握り部の左右の外壁の内側に嵌合するように構成されている請求項2又は3に記載の魚バサミ。
【請求項5】
一対の挟持部の長手方向前端に、互いに対向する挟持部に向けて前端歯が突設されており、
挟持部同士が閉じられたときに、上記前端歯同士が食い違った状態で重なり合うように配置されている請求項1から4のうちのいずれかに記載の魚バサミ。
【請求項6】
ハサミ本体のうちの少なくとも上記挟持部が、左右の外壁の内側を、長手方向に延びる補強リブを有しており、
この補強リブ及び上記外壁の各端縁に、前後方向に沿って歯が整列して形成されている請求項1から5のうちのいずれかに記載の魚バサミ。
【請求項7】
上記挟持部同士が閉じられたときに、一方の補強リブに形成された歯と、他方の補強リブに形成された歯とが、互いに食い違った状態で重なり合うように配置されている請求項6に記載の魚バサミ。
【請求項8】
上記補強リブに形成された歯と外壁に形成された歯とが、互いに前後方向逆向きに傾斜している請求項6又は7に記載の魚バサミ。
【請求項9】
一対のハサミ本体が開閉可能となるように、上記握り部の後端近傍を相互に回転可能に連結する支軸と、
連結された一対の握り部の後端同士の間に挿入されたロック部材とを備えており、
このロック部材が、一対のハサミ本体同士を閉状態に規制するロック位置と、ハサミ本体同士の開閉動作を許容する動作位置とに進退させられうる請求項1から8のうちのいずれかに記載の魚バサミ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate