説明

魚体形状選別装置

【課題】魚の形状を画像処理により自動的に判定しようとする場合、魚の暴れによる魚体形状の変化、魚体鱗からの反射光の影響などのために、正しい魚体形状を撮像し、その形状を判定することが困難である。
【解決手段】魚を水の入った透光性を有する撮像容器内に収納し、魚体位置姿勢規制手段によって魚の位置と姿勢を規制するとともに、撮像容器の一部を魚体撮像カメラの画角と平行にすることにより魚体の撮像容器への反射像の写り込みを防止して、正しい魚体のシルエット画像を撮像し、魚の輪郭形状から良否の判定選別を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚の形状を選別する魚体形状選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
魚の養殖においては、形状に異常が見られる稚魚を選別し除去する必要がある。現在は目視による手作業で行われているが、作業者の形状判定能力の問題、個人差による形状選別結果のバラツキの問題、作業環境の問題など数多くの問題があり、自動化が強く求められている。こういった形状判別作業は、各種の工業製品や青果物においては、既に画像処理装置を使って自動化している事例が数多くある。(たとえば特許文献1、特許文献2参照)
【0003】
図12は、従来技術に係る青果物形状判定設備1の構成図である。青果物形状判定設備1は、照明装置2と、撮像装置3と、画像処理装置4と、形状判定装置5とを備えて構成される。照明装置2は、青果物6の上面を照らし、撮像装置3は、照らされた青果物6を撮像する。画像処理装置4は、撮像装置3が撮像した青果物6の撮像画像から、青果物6の輪郭と重心位置とを抽出する。形状判定装置5は、重心位置を中心として所定角度毎に位置する前記輪郭の点の座標を求め、これらの座標から各輪郭の点と重心位置との距離を演算し、この求めた距離によって青果物6の形状を判定する。形状判定装置による判定結果は、評価判定装置7によって評価される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−267415号公報
【特許文献2】特開平8−159730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の発明はいずれも静止した物体を対象としているが、本発明は生きた魚を対象としその形状を選別することを目的としており、そのために解決すべき独特の課題が存在する。一つは、魚が暴れた状態で撮像すると、撮像された魚体は変形し異常であると判定される可能性がある。また、形状異常の魚の中には、輪郭だけで形状を判定する場合には、上下の区別、すなわち背と腹の区別ができないものが含まれているため、魚の上下の向きを特定して形状判定する必要がある。さらに、魚の鱗に反射した光が画像に悪影響を与え、正しい魚体画像を得ることが難しいという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、魚を水中で安静にさせ、自然体になった状態で、正立した魚体のシルエット画像を撮像し、魚の形状を判定し、良否の選別を行う魚体形状選別装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上部に開口部を有した透光性のある撮像容器と、撮像容器に水を供給する手段と、撮像容器に投入された魚の位置と姿勢を規制する魚体位置姿勢規制手段と、撮像容器に投入された魚のシルエット画像を撮像する手段と、撮像手段によって得られた魚の画像を解析して魚の形状を判定する手段と、形状判定結果に基づき良品と不良品に選別する手段とを備えたことを特徴とする魚体形状選別装置である。
【0008】
また本発明は、撮像容器の側面および底面の一部もしくは全部を魚体撮像カメラの画角と略平行にし、側面および底面に写った魚体の反射像を撮像手段に撮りこまないことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、撮像容器の上部に設けられ外光の入射を防止する上蓋体と、この上蓋体の先端部に設けられた可動魚体規制板と、魚が浮上することを防止する浮上防止部材を有し、上蓋体の閉動作に応じて、可動魚体規制板により魚を浮上防止部材の下方にある撮像領域に追込むことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、可動魚体規制板を可撓性のある部材で構成し、かつ、浮上防止部材を上蓋体の移動方向と同じ方向に移動可能な構造とし、可動魚体規制板を浮上防止部材に当接させることにより、可動魚体規制板と固定魚体規制板の間隔を調整することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、魚投入時は水位を浮上防止部材の下端とほぼ同じ位置に保ち、魚体を撮像する時は水位を浮上防止部材下端より高く保つことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上蓋体の先端部に設けられたピストン板により、上蓋体の閉動作に応じて水位を上昇させることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、撮像容器の下部に水供給口を設け、この水供給口と外部水槽の底部とを連結し、常に外部水槽の水位と同じ水位の水を撮像容器に供給することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、撮像が終わった魚を下方に放出する放出ゲートと、放出ゲートから放出された魚を一時保留する一時保留部と、魚の形状を判定した結果に従って作動する良品ゲートおよび不良品ゲートを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水の入った透光性のある撮像容器に魚を投入し、魚の位置と姿勢を規制して魚のシルエット画像を撮像する。さらに、撮像された画像を解析して魚の形状を判定し、良品と不良品に選別する。これにより、水中に投入され正立状態になった魚の位置と姿勢を規制して、魚のシルエット画像を撮像し、形状判別を行い、良品と不良品に選別することができる。この時、魚の正立シルエット画像で形状判別を行うため、魚の背部と腹部を違えることなく、正しい形状判別を行うことが可能になる。
【0016】
本発明によれば、撮像容器の側部および底部の一部もしくは全部を魚体撮像カメラの画角と略平行にすることにより、撮像容器の側部もしくは底部に写った魚の反射像を、撮像画像として撮りこむことが無く、魚体の正しいシルエット画像を得ることができる。
【0017】
本発明によれば、撮像容器の上部に設けられ上蓋体が閉鎖されることにより外光が魚体に入射することを防止する。また、上蓋体の閉動作に応じて、可動魚体規制板により魚を浮上防止部材の下方にある撮像領域に追込み、魚の位置と姿勢を規制し、魚体側面を魚体撮像カメラの光軸とほぼ垂直に配置させ、魚体の輪郭に対応した正しいシルエット画像を得ることができる。
【0018】
本発明によれば、可動魚体規制板を可撓性のある部材で構成し、かつ、浮上防止部材を上蓋体の移動方向と同じ方向に移動可能な構造とし、可動魚体規制板を浮上防止部材に当接させることにより、可動魚体規制板と固定魚体規制板の間隔を、魚体の体幅に応じて調整することが可能になる。これにより、魚の側面を強く押圧することなくその動きを規制することができ、撮像時に魚が暴れることを防ぐことができる。
【0019】
本発明によれば、魚投入時は水位を浮上防止部材の下端とほぼ同じ位置に保ち、この状態で上蓋体を閉鎖することにより、可動魚体規制板により魚を確実に浮上防止部材の下方にある撮像領域に追い込み、位置と姿勢を規制することができる。その後、魚体を撮像する時は水位を浮上防止部材下端より高くすることにより、水表面に発生する波の影が画像に写り込むことを防止することができる。
【0020】
本発明によれば、上蓋体の先端部に設けられたピストン板により、上蓋体の閉動作によって水位を上昇させることができ、水位を上昇させるための時間が節約できるとともに、バルブなど水位を制御するための特別な部品を使う必要がない。
【0021】
本発明によれば、撮像容器の下部に水供給口を設け、この水供給口と外部水槽の底部とを連結することにより、撮像容器に供給される水の水位を常に外部水槽の水位と同一にすることができ、撮像容器内に供給される水を安定した水位に保つことができる。
【0022】
本発明によれば、撮像が終わった魚を下方に放出する放出ゲートと、放出ゲートより放出された魚を一時保留する一時保留部と、魚の形状を判定した結果に従って作動する良品ゲートおよび不良品ゲートを有する。魚体の撮像が終わった時、ただちに放出ゲートを開放し魚を一時保留部に放出して、一定時間後に放出ゲートを閉じて次のサイクルに入る。一方、撮像が終わると同時に、画像解析と形状判定が行われ、その判定結果に基づき良品ゲート、もしくは、不良品ゲートが開閉され、魚を選別放出する。これにより、次のサイクル動作と、画像解析および形状判定、良品不良品ゲートの開閉動作がパラレルに実施することができ、処理時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例に係わる魚体形状選別装置の全体を表す斜視図
【図2】本発明の実施形態に係る本体部20および水槽部21の上面図
【図3】本発明の実施形態に係る本体部20の主要構造を説明する側方断面図
【図4】本体部20と水槽部21の連結構造を説明する断面図
【図5】撮像容器31の詳細構造を説明する断面図
【図6】撮像容器31の上蓋体38が閉鎖された状態を示す図
【図7】制御部22の内部構成を説明する図
【図8】画像処理装置81の処理フローを説明する図
【図9】画像処理装置81の画像解析の一例を説明する図
【図10】魚の全長値と全高値の測定結果の事例を示すグラフ
【図11】制御部22の制御動作フローを説明する図
【図12】従来技術に係る青果物形状判定設備の構成図
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る本体部20と水槽部21、および制御部22の斜視図である。本体部20の上面に設けられた二つの魚投入口23,24の何れか一つに魚を投入すると、本体部20で魚のシルエット画像が撮像される。シルエット画像データは、制御部22に転送され魚の形状解析が行われ、良品もしくは不良品の判定が行われる。この判定結果に基づき、本体部20の良品ゲート、もしくは不良品ゲートが開閉され、良品放出口26、または、不良品放出口27より、魚が放出される。水槽部21は本体部20とパイプにより連結されており、常に水槽部の水位と同じ水位の水を本体部20に供給する。
【0025】
本発明の実施形態に係る本体部20は、様々な魚種や様々なサイズの魚を対象としたものであるが、ここで具体的な事例として6cm〜13cmに成長した鯛の稚魚の形状を判定選別する場合を例に挙げて説明する。鯛は、形状の良し悪しが特に重要視される魚であるが、稚魚の形状を維持したまま成魚に成長するため、6cm〜13cmに成長した稚魚の段階で形状選別が行われている。形状不良の内容は、魚の背から腹までの全高に対して吻端から尾柄部までの全長が短いもの、尾柄が上方に上がっているもの、背中央部が窪んでいるものなど様々であるが、そのほとんどは魚の輪郭形状で判別できる。しかし、魚が暴れているときは、魚体形状がゆがんでいるため、魚が静止した状態での形状を判定する必要がある。また、不良形状の中には輪郭形状だけを見ると、背と腹の区別ができないものも存在する。このため、本発明の実施形態に係る本体部20は、水中に投入された魚を安静にさせ、自然体で正立状態になった魚の輪郭形状すなわちシルエット画像を撮像し、形状を選別する構造になっている。
【0026】
図2は、本発明の実施形態に係る本体部20および水槽部21の上面図であり、一部断面構造を示している。図3は、本発明の実施形態に係る本体部20の主要構造を説明する側方断面図である。図4は、本体部20と水槽部21の連結構造を説明する断面図である。図2において、本体部20は、二つの魚投入口23、24を備え、それぞれの魚投入口の下方は、ほぼ同じ構造になっている。以下、説明を簡単にするため、魚投入口23に係る機能と構造を説明する。
【0027】
図2および図3において、魚体撮像カメラ28は、回転ミラー29および固定ミラー30を介して、透光性を有する撮像容器31を撮像する。撮像容器31の魚体撮像カメラ28の反対側には、面光源32が配置されている。これにより、面光源32から発せられた光は、撮像容器31を透過し固定ミラー30および回転ミラー29を介して、魚体撮像カメラ28に達する。このとき、撮像容器31内に魚25がいる場合は、そのシルエット画像が、魚体撮像カメラ28により撮像される。
【0028】
撮像容器31の上方には、フォトタランジスター69と発光ダイオード70が対向して、それぞれ側板10、側板11に固定されている。発光ダイオード70から発せられた光は、常時フォトトランジスター69に入射し、これを「入」の状態にしている。魚25が投入されると、発光ダイオード70の光が一瞬遮られ、フォトトランジスター69が「切」状態になる。このフォトトランジスター69の状態が、制御部22に送られ、制御部は魚投入口23に魚が投入されたことを検知し、エアーシリンダー39により上蓋対38を閉鎖し、ロータリーアクチュエーター115により回転ミラー29を回転させ、魚体撮像カメラ28の光軸中心71を、魚投入口23の方向に切り替える。
【0029】
図5は、撮像容器部の構造を説明する断面図である。撮像容器31は、底板33、前板34、後板35、および、図4に示した側板36、37により直方体を形成し、本体部20の天板47に固定されている。撮像容器31を形成する部材、すなわち、底板33、前板34、後板35、および側板36、37は、アクリルなどの透光性材料で構成されている。撮像容器31の上方には、上蓋体38が摺動可能に装着されており、図3に示したエアーシリンダー39によって開閉駆動される。上蓋体38の端部には可撓性を有する可動魚体規制板40とピストン板41が固着されている。魚25が投入され、エアーシリンダー39により上蓋体38が、図の左方向に動かされると、魚25を可動魚体規制板40によってゆっくり図の左方向へ追いやり、上蓋体38の端部突起381がストッパー42に当接したとき停止する。
【0030】
撮像容器の底部には、放出ゲート43が設けられており、エアーシリンダー44により開閉駆動される。この放出ゲート43には固定魚体規制板45が固着されていて、放出ゲート43が閉鎖されているときに、固定魚体規制板45と、図の左方向に移動してきた可動魚体規制板40とにより魚25の位置および姿勢を規制する。放出ゲート43が開放されると、固定魚体規制板45は図の左方向に移動し前板34に当接して停止する。
【0031】
図6は、撮像容器部の上蓋体38が閉鎖された状態を示す図である。ストッパー42の下方には、透光性を有する浮上防止部材46が、上蓋体38の摺動方向と同じ方向に位置調整可能な形で本体部20の天板47に固定されている。上蓋体38が図の左方向に移動し端部突起381がストッパー42に当接すると、可動魚体規制板40は浮上防止部材46に当接し曲げられ、その下部はほぼ垂直の状態になる。このとき、浮上防止部材46の位置が変えられると、可動魚体規制板40と固定魚体規制板45の間隔を変えることができ、その間隔は魚の体幅よりやや広く設定される。
【0032】
投入された魚25は、固定魚体規制板45と可動魚体規制板40とにより、体幅方向の動きを規制され、撮像容器31の底板33と浮上防止部材46とにより体高方向の動きを規制され、撮像容器31の側板36,37により体長方向の動きを規制される。かつ、体幅方向の規制は、固定魚体規制板45と可動魚体規制板40の間隔を調整することにより、魚25に大きなストレスを与えることなく、すなわち、魚の側面を押圧することなく、その位置と姿勢を規制する。魚体撮像カメラ28は6個の透光性のある部材、すなわち、撮像容器31の底板33と、浮上防止部材46、側板36、37、および、固定魚体規制板45と可動魚体規制板40とによって囲まれた撮像領域51を、視野角61内に収め、魚体のシルエット画像を撮像する。
【0033】
図5において、撮像容器31の底板33の一部には切り欠き48が設けられていて、この切り欠きの下に水槽部21と連結した水供給パイプ49が取り付けられている。図4に示した水槽部21の水位62は、撮像容器31内の浮上防止部材46の下部50の位置とほぼ同じになるように設定されている。したがって、放出ゲート43が閉鎖されると、水供給パイプ49から供給される水が撮像容器内31に蓄えられ、水位63が浮上防止部材46の下部50の位置に達したとき、自動的に供給は停止される。
【0034】
撮像容器31内の水位63が浮上防止部材46の下部50の位置にあるとき、魚25は浮上防止部材46の下部50より上に上がることはない。この状態で、上蓋体38が閉鎖され、可動魚体規制板が図の左方向に移動すると、可動魚体規制板は魚25を確実に浮上防止部材46の下にある撮像領域に追い込むことができる。
【0035】
上蓋体38が閉鎖されるとき、その端部に固定されたピストン板41も同時に図の左方向に移動する。ピストン板41の下端が底板33の切り欠き48の終端に達すると、ピストン板の図中左側にある水は封じ込まれた状態となり、さらにピストン板が左に移動したとき、ピストン板の左側では水位が上昇し、浮上防止部材46の下部50より上方に達する。水面には小さな波が発生し、面光源から発射された光がこの小さな波に反射あるいは遮られ、撮像画像に写り込んでしまうが、水位63が浮上防止部材46の下部50よりも上方に移動することにより、波の画像を魚体撮像カメラの視野角61より上に移動させ、魚体撮像カメラ28に写らないようにすることができる。
【0036】
撮像領域51内にいる魚25の反射像が、底板33と、浮上防止部材46、および、側板36,37に写り、魚体撮像カメラは、この反射像も同時に撮像し、魚体のシルエット画像にノイズとなって現れる。この反射像の撮りこみを回避するため、撮像領域51周辺部の側板36,37には、その面方向が図2に示した魚体撮像カメラの画角54、55と略平行になるように画角調整板52、53が貼付されている。また、撮像領域51周辺部の底板33にもその面方向が図5に示した魚体撮像カメラの画角57と略平行になるように画角調整板58が貼付されている。さらに、浮上防止部材の下部50は、その面方向が魚体撮像カメラの画角56と略平行になるようになっている。これにより、反射像が撮像カメラに28に撮りこむことを防止している。
【0037】
図3において、魚体撮像カメラにより撮像が終わると、エアーシリンダー44の動作で放出ゲート43が開放され、魚25は、一時保留部64に移動する。一定時間(例えば0.2秒)後に、放出ゲート43は再び閉鎖され、撮像容器内に水が蓄えられる。同時に、エアーシリンダー39の動作で上蓋体38が開放され、これに伴いピストン板41、可動魚体規制板40も後退する。撮像が終わり、エアーシリンダー39の動作で上蓋体38が開放された時点で、次の魚の投入を受け入れる準備が完了する。
【0038】
ピストン板41が後退するとき、ピストン板41と後板35の間に保留された水は、図5に示したピストン板41の上部開口部65からオーバフローし、ピストン板41の左側に移動し、水補給時間が短縮される。
【0039】
魚体撮像カメラ28により撮像された画像データは、図1に示した制御部22に送られ画像解析され、形状の良否が判定される。判定結果が「良」であった場合、エアーシリンダー67が作動し、良品ゲート59が開放され、魚25は、良品放出口26より放出される。判定結果が「不良」であった場合、エアーシリンダー68が作動し、不良品ゲート60が開放され、魚25は、不良品放出口27より放出される。ここで、良品ゲート59、不良品ゲート60は、それぞれ一定時間(例えば0.2秒)後に閉鎖される。
【0040】
以上の説明は、魚投入口23に投入された場合を例に挙げて行ったが、魚投入口24に投入された場合も同様の構造、同様の順序で選別が行われる。魚投入口23に魚が投入された場合の制御と、魚投入口24に魚が投入された場合の制御とはパラレルに制御されるが、撮像のタイミングが同時にならないようにタイミングが調整される。本発明の実施形態の場合、画像解析と形状判定に要する時間は、約0.5秒間である。一方、魚が魚投入口に投入されてから、放出ゲートが閉鎖されるまでの時間は、2〜3秒間であるため、上記タイミングの調整は充分に可能である。
【0041】
図2および図4において、水槽部21の底部には水補給口72が設けてあり、常に一定量の水が供給されている。また底部を貫通する形で、2本の水排出パイプ73、74が設けてあり、それぞれ傾斜して配置された良品排出トレー76、不良品排出トレー77の上方に水を排出する。この水排出パイプ73、74の上端は、撮像容器内の浮上防止部材46の下部50の高さ近辺に設定されている。水補給口72から供給された水は、水槽部に充満しその水位62が水排出パイプ73、74の上端より高くなると、良品排出トレー76、不良品排出トレー77に水を排出する。
【0042】
さらに水槽部21の底部79には、水供給パイプ49の一端75が貫通している。この水供給パイプ49は、本体部20の撮像容器31の底板33に連結されていて、水槽部21の水を撮像容器31に供給する。水供給パイプの一端75は、水槽部21の底部33より若干上で、水排出パイプ73、74の上端高さよりも充分低い位置に設定されている。これにより、水槽部21の水が撮像容器に供給され、その時に撮像容器の水位63は水槽部の水位62とほぼ同じ高さになる。すなわち、撮像容器の水位63は、浮上防止部材46の下部50の高さ近辺になる。
【0043】
水排出パイプ73、74から、良品排出トレー76、不良品排出トレー77に排出された水は、それぞれ良品排出口26、不良品排出口27より排出される。形状選別を終え良品ゲート59、もしくは、不良品ゲート60から排出された魚は、それぞれ良品排出トレー76上を、もしくは、不良品排出トレー77上を流れる水と一緒に、良品排出口26、不良品排出口27より排出される。
【0044】
図7は、本発明の実施形態に係る制御部22の内部構成を説明する図である。画像処理装置81は、魚体撮像カメラ28が撮像した画像を解析し形状を判定する。制御装置80は、本体部20内のエアーシリンダー39、44、67、68の制御、フォトトランジスター70の制御、ロータリーアクチュエーター115の制御、および、画像処理装置81の制御を行う。照明制御装置83は、面光源32の明るさを制御する。照明電源82は、照明制御装置83に電力を供給する。
【0045】
図8は、画像処理装置81の処理フローを説明する図である。魚体撮像カメラ28により撮像された画像は、前処理部84にて周知の画像処理手法を使って、撮像された魚のシルエット画像から、その輪郭線だけが抽出される。画像解析部85は、前処理部にて得られた魚の輪郭線形状を周知の手法を使って幾何学的に解析する。
【0046】
図9は、画像処理装置81の画像解析の一例を説明する図である。この場合には、魚25のシルエット像90の全長値87、全高値88およびを頭部の角度89を測定している。この他にも、背の丸み等の幾何学形状も測定可能である。画像解析部85により得られた測定結果は、形状判定部86に送られ、良品、不良品の判定が行われる。
【0047】
ここでは、全長値と全高値による形状判別動作について説明する。図10は、魚の全長値と全高値の測定結果の事例を示すグラフである。人が目視により良品と判断した魚の測定結果を点91で示し、不良品と判断した魚の測定結果を点92で示している。この場合、良品と不良品の境界線すなわち良否判定基準線93は、数式1によって表される。形状判定部86は、画像解析部85で測定された全長値と全高値を、数式2に照らして、稚魚形状の良品判定を行う。
(数1)
【0048】
全高=0.37×全長
(数2)
【0049】
全高<0.37×全長
【0050】
図11は、本発明の実施形態に係る制御部22による動作工程を表す図である。工程101でフォトセンサー(フォトトランジスター70)が作動したことが確認されると、工程102で回転ミラー29が当該の方向に切替えられる。続いて、工程103で上蓋体38が閉鎖され、工程104で稚魚姿勢が安定するための一定時間(例えば1秒間)待ったのち、工程105で魚体撮像カメラ28により撮像される。撮像が終わると、工程106により放出ゲート43が開放される。同時に、工程112により画像解析が開始される。放出ゲート43が開放された後、工程107にて放出ゲートが閉鎖され、工程108により上蓋体38が開放され、工程109で画像判定結果が出力されるのも待つ。工程112で解析された結果は、工程113で形状の良否が判定され、工程114にて判定結果が出力される。判定結果が出力されると、工程110にて、良品ゲート59もしくは不良品ゲート60の何れかが開放される。続いて工程111にて、開放された良品ゲート59もしくは不良品ゲート60の何れかが閉鎖される。
【0051】
本実施形態によれば、透光性のある撮像容器31の上部の魚投入口23から魚25を投入し、投入された魚25が正立状態になった後、魚25の位置と姿勢を規制して魚25のシルエット画像を魚体撮像カメラ28により撮像する。さらに、撮像された画像を制御部22の画像解析装置81により解析して魚の形状を判定し、良品と不良品に選別する。これにより、投入された魚の形状を自動で判別し、良品と不良品に選別することができる。またこの時、魚25が正立した状態でその位置と姿勢を規制することにより、魚の正立シルエット画像を得ることができ、魚の背部と腹部を違えることなく、正しい形状判別を行うことが可能になる。
【0052】
また実施形態よれば、撮像容器31の側板36,37および底板33の一部に、それぞれ画角調整板52、53、58を貼付して、魚体撮像カメラの画角54、55、57と略平行にすることにより、撮像容器の側板36,37もしくは底板33に写った魚の反射像を、撮像画像として撮りこむことが無く、魚体の正しいシルエット画像を得ることができる。
【0053】
また実施形態よれば、撮像容器31の上部に設けられ上蓋体38により外光が魚体25に入射することを防止し、また、上蓋体38の先端部に設けられた可動魚体規制板40と魚体が浮上することを防止する浮上防止部材46とにより、上蓋体38の閉動作に応じて、魚を浮上防止部材46の下方にある撮像領域51に追込み、魚の位置と姿勢を規制する。これにより、正立した魚体を魚体撮像カメラ28の視野角61内に収め、魚体側面を魚体撮像カメラの光軸71とほぼ垂直に配置させることができ、魚体の輪郭画像すなわちシルエット画像を正しく取得ることができる。
【0054】
また実施形態によれば、可動魚体規制板40を可撓性のある部材で構成し、かつ、浮上防止部材46を上蓋体38の移動方向と同じ方向に移動可能な構造とし、魚体の体幅に応じて可動魚体規制板40と固定魚体規制板45の間隔を調整することが可能になり、魚の側面を強く押圧することなくその動きを規制することが可能となり、撮像時に魚が暴れることを防ぐことができる。
【0055】
また実施形態よれば、魚投入時は水位63を浮上防止部材46の下部50とほぼ同じ位置に保ち、可動魚体規制板40により魚を確実に浮上防止部材46の下方にある撮像領域に追い込み、位置と姿勢を規制する。魚体を撮像する時は水位を浮上防止部材46の下部50より高くすることにより、水表面に発生する波の影が画像に写り込むことを防止することができる。
【0056】
また実施形態によれば、上蓋体38の先端部に設けられたピストン板41により、上蓋体38の閉動作によって水位を上昇させることができる。これにより、水位を上昇させる時間が短縮できるとともに、バルブなど水位を制御するための特別な部品を使う必要がない。
【0057】
また実施形態によれば、撮像容器31の下部に水供給口89を設け、この液体供給口89と魚体形状選別装置の水槽部21の底部79とを連結することにより、撮像容器31に供給される水の水位63を常に魚体形状選別装置の水槽部21の水位62と同一にすることができ、撮像容器31内に供給される水を安定した水位に保つことができる。
【0058】
また実施形態によれば、撮像が終わった魚を下方に放出する放出ゲート43と、下方に放出された魚を一時保留する一時保留部64と、魚の形状を判定した結果に従って作動する良品ゲート59および不良品ゲート60を有する。魚体の撮像が終わった時、ただちに放出ゲート43を開放し魚を一時保留部64に放出して、一定時間後に放出ゲートを閉じて次のサイクルに入る。一方、撮像が終わると同時に、画像解析と形状判定が行われ、その判定結果に基づき良品ゲート59、もしくは、不良品ゲート60が開閉され、魚25を選別放出する。これにより、次のサイクル動作と、画像解析および形状判定、良品不良品ゲートの開閉動作がパラレルに実施することができ、処理時間を短縮することができる。
【0059】
本実施例において、魚体の撮像が終わった時、ただちに放出ゲート43を開放し魚を一時保留部64に放出して、一定時間後に放出ゲートを閉じて次のサイクルに入るという制御を行っているが、撮像時に魚25が暴れていると誤った形状判定を下す可能性があるため、撮像が終わった後もただちに放出ゲート43を開放せず、画像処理装置による形状判定結果が不良品と判定された場合には、再度撮像して形状判定を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
実施例は、鯛の稚魚の形状を判別する場合を事例に挙げて説明したが、虹鱒、鯉等その形状が重要視される魚の形状判別装置として適用できる。
【符号の説明】
【0061】
20 魚体形状選別装置の本体部
21 魚体形状選別装置の水槽部
22 魚体形状選別装置の制御部
23 魚投入口
24 魚投入口
25 魚
26 良品放出口
27 不良品放出口
28 魚体撮像カメラ
29 回転ミラー
30 固定ミラー
31 撮像容器
32 面光源
33 底板
34 前板
35 後板
36 側板
37 側板
38 上蓋体
39 エアーシリンダー
40 可動魚体規制板
41 ピストン板
42 ストッパー
43 放出ゲート
44 エアーシリンダー
45 固定魚体規制板
46 浮上防止部材
47 天板
48 切り欠き
49 水供給パイプ
50 下部
51 撮像領域
52 画角調整板
53 画角調整板
54 画角
55 画角
56 画角
57 画角
58 画角調整板
59 良品ゲート
60 不良品ゲート
61 魚体撮像カメラの視野角
62 水槽部の水位
63 撮像容器の水位
64 一時保留部
65 上部開口部
67 エアーシリンダー
68 エアーシリンダー
69 フォトトランジスター
70 発光ダイオード
71 魚体撮像カメラの光軸中心
72 水補給口
73 水排出パイプ
74 水排出パイプ
75 水供給パイプの一端
76 良品排出トレー
77 不良品排出トレー
79 底部
80 制御装置
81 画像処理装置
82 照明電源
83 照明制御装置
84 前処理部
85 画像解析部
86 形状判定部
87 全長値
88 全高値
89 水供給口
89 角度
90 シルエット像
93 良否判定基準線
115 ロータリーアクチュエーター
381 端部突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有した透光性のある撮像容器と、撮像容器に水を供給する手段と、撮像容器に投入された魚の位置と姿勢を規制する魚体位置姿勢規制手段と、撮像容器に投入された魚のシルエット画像を撮像する手段と、撮像手段によって得られた魚の画像を解析して魚の形状を判定する手段と、形状判定結果に基づき良品と不良品に選別する手段とを備えたことを特徴とする魚体形状選別装置。
【請求項2】
撮像容器の側面および底面の一部もしくは全部を魚体撮像カメラの画角と略平行にし、側面および底面に写った魚体の反射像を撮像手段に撮りこまないことを特徴とする請求項1記載の魚体形状選別装置。
【請求項3】
撮像容器の上部に設けられ外光の入射を防止する上蓋体と、この上蓋体の先端部に設けられた可動魚体規制板と、魚が浮上することを防止する浮上防止部材を有し、上蓋体の閉動作に応じて、可動魚体規制板により魚を浮上防止部材の下方にある撮像領域に追込むことを特徴とする請求項1記載の魚体形状選別装置。
【請求項4】
可動魚体規制板を可撓性のある部材で構成し、かつ、浮上防止部材を上蓋体の移動方向と同じ方向に移動可能な構造とし、可動魚体規制板を浮上防止部材に当接させることにより、可動魚体規制板と固定魚体規制板の間隔を調整することを特徴とする請求項3記載の魚体形状選別装置。
【請求項5】
魚投入時は水位を浮上防止部材の下端とほぼ同じ位置に保ち、魚体を撮像する時は水位を浮上防止部材下端より高く保つことを特徴とする請求項3記載の魚体形状選別装置。
【請求項6】
上蓋体の先端部に設けられたピストン板により、上蓋体の閉動作に応じて水位を上昇させることを特徴とする請求項5記載の魚体形状選別装置。
【請求項7】
撮像容器の下部に水供給口を設け、この水供給口と外部水槽の底部とを連結し、常に外部水槽の水位と同じ水位の水を撮像容器に供給することを特徴とする請求項1記載の魚体形状選別装置。
【請求項8】
撮像が終わった魚を下方に放出する放出ゲートと、放出ゲートから放出された魚を一時保留する一時保留部と、魚の形状を判定した結果に従って作動する良品ゲートおよび不良品ゲートを有することを特徴とする請求項1記載の魚体形状選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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