説明

魚礁用の部材及びそれを用いた魚礁

【課題】貝殻を配合した餌料培養基質を装着してなる魚礁用の部材であって、強度が大きく、構造的安定性が高い上、立体格子状の魚礁を構築しやすい新規な魚礁の提供。
【解決手段】鉄筋コンクリート製の芯棒1,11の両端部を除く表面に、貝殻及び/又はその破片を骨材とするコンクリート製であって貝殻面の凹凸によって無数の空隙を有する餌料培養基質2を装着してなるポール状の魚礁用の部材。餌料培養基質は性状や大きさが異なる貝殻及び/又はその破片が混在しているものが好ましい。貝殻の表面に付着した有機物は、貝殻どうしを攪拌するか又は貝殻どうしに水を加えて攪拌して除去する事が好ましい。これらの魚礁用の部材を複数個組み合わせて、その端部どうしを接合して立体格子状に構築してなる魚礁。これらの魚礁用の部材と 鉄筋コンクリート製もしくは鉄鋼製の魚礁用の部材又は鉄筋コンクリート 製もしくは鉄鋼製の魚礁とを組み合わせて接合してなる魚礁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚礁用の部材とその部材を用いた魚礁に関する。詳しくは、ポール状の新規な魚礁用の部材とその部材を用いた新規な人工魚礁に関する。
【背景技術】
【0002】
全国各地の海域に設置されている人工魚礁の多くは、コンクリート材や鉄鋼材で構成されており、表面がフラットで均質であるため、微小生物が着生・繁殖するには、ある程度の時間が必要である。
【0003】
そこで、魚類の餌となる微小生物を早期に着生・繁殖させることを目的として、人工魚礁又はその部材に餌料培養基質を装着して設置するケースが増えている。特に、カキやホタテ貝やアコヤ貝などの貝殻を用いた餌料培養基質は、空隙率が大きく、表面粗度も大きいため、適度な空隙が微小生物の付着・生息や海藻類の着生に適しており、通常のコンクリート材や鉄鋼材に比べて、早期に魚類の餌となる生物が繁殖しやすく、増殖効率が高いと言われている。
【0004】
貝殻を用いた餌料培養基質を装着した人工魚礁の発明には、以下のものが見られる。
【特許文献1】特開平11−225612号公報
【特許文献2】特開2004−305091公報
【特許文献3】特開2004−166655号公報
【特許文献4】特開2003−92951号公報
【0005】
すなわち、特許文献1は、底部と外周面に網体を張設した収納籠を設け、この収納籠内に多数の貝殻を充填し、これら貝殻をモルタルにより相互に一体化して内部に多数の空洞部を備えた多孔質状の餌料培養層を設けてなる餌料培養礁について開示している。また、特許文献2は、貝殻を原料の全部又は一部に用いる粗骨材を細骨材と共にセメントで固めて多孔質の塊としてある海藻育成用ブロックについて開示している。特許文献3は、普通コンクリートで形成された外周部とその外周部内に設けられた貝殻ポーラスコンクリート成形体とを具備する人工魚礁ブロックについて開示している。また、特許文献4には、中空状の内筒体を設け、この内筒体の外周縁を貝殻を骨材としたコンクリート又はセラミックからなる外筒体で覆って表面に貝殻による凹凸部を有する中空状の成形体とした漁場施設用成形体について開示している。
【0006】
これら公開公報に開示された魚礁用の部材は、多孔質の天然材料である貝殻の形状や特性を活かしたものとして評価され、また、産業廃棄物である貝殻を有効利用する手段の一つとしても、一定の成果を上げている。
しかし、従来の貝殻を使用した魚礁用の部材は、貝殻自体の強度が小さいため、それをいくつか組み合わせて魚礁を構築しても、構造的安定性が乏しく、また、その形状から、魚類が好む複雑な立体格子状の魚礁を構築することが困難である。さらに、従来の貝殻を利用した魚礁用の部材は、構築する魚礁の目的に応じて適切な性状の餌料培養基質を装着させるという配慮がなされておらず、しかも、餌料培養基質に埋め込んだ貝殻の接着力が弱く、剥離・脱落しやすいので、結局のところ、大量の貝殻を実質的に使いこなすには至っていない。
【0007】
また、貝殻を使用した餌料培養基質を装着してなる従来の魚礁用の部材は、餌料培養基質だけで大きな強度を持たせることができないため、上記特許文献に記載のように、貝殻をポリエチレン系の籠に詰め込んだり、鋼製の枠に固定して使用したり、貝殻を固化した餌料培養基質の周囲を鉄筋コンクリートで固定した上で従来の魚礁に取り付けたり、或いはコンクリート製魚礁の一部に餌料培養基質を直接埋め込むなどの方法を採っている。そのため、これら従来の餌料培養基質を装着してなる魚礁用の部材の製作には、時間と手間がかかり、これを用いて魚礁を構築すると、一般的な魚礁に比べて高価なものとなっている。また、魚礁用の部材に装着される餌料培養基質中の貝殻の使用量が限定されるため、産業廃棄物である貝殻を積極的に有効利用する上では効率の悪い設計になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の状況に鑑み、本発明は、貝殻を配合した餌料培養基質を装着してなる魚礁用の部材であって、従来の同様の魚礁用の部材に比べて強度が大きく、構造的安定性が高い上、立体格子状の魚礁を構築しやすい魚礁用の部材を提供することを第1の課題とする。また、本発明は、貝殻を配合した餌料培養基質を装着してなる魚礁用の部材であって、従来の同様の魚礁用の部材に比べて餌料培養基質の性状(空隙率や表面積など)を構築する魚礁の目的に応じて調整しやすい魚礁用の部材を提供することを第2の課題とする。さらに、本発明は、貝殻を配合した餌料培養基質を装着してなる魚礁用の部材であって、貝殻の剥離・脱落のおそれがない魚礁用の部材を提供することを第3の課題とする。さらに、本発明は、これらの魚礁用の部材を用いた、構造的安定性が高い新規な魚礁を提供することを第4の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の諸課題を解決するための本発明のうち特許請求の範囲・請求項1に記載する発明は、鉄筋コンクリート製の芯棒の両端部を除く表面に、貝殻及び/又はその破片を骨材とするコンクリート製であって貝殻面の凹凸によって無数の空隙を有する餌料培養基質を装着してなるポール状の魚礁用の部材である。
【0010】
同請求項2に記載する発明は、形状や大きさが異なる貝殻及び/又はその破片が混在している餌料培養基質を装着してなる請求項1に記載の魚礁用の部材である。
【0011】
同請求項3に記載する発明は、貝殻どうしを攪拌するか又は貝殻どうしに水を加えて攪拌して表面に付着した有機物を除去してある貝殻及び/又はその破片を骨材とする餌料培養基質を装着してなる請求項1又は2に記載の魚礁用の部材である。
【0012】
同請求項4に記載する発明は、請求項1から3のいずれかに記載の魚礁用の部材を複数個組み合わせて、その端部どうしを接合して立体格子状に構築してなる魚礁である。
【0013】
同請求項5に記載する発明は、請求項1から3のいずれかに記載の魚礁用の部材と鉄筋コンクリート製の魚礁用の部材又は鉄筋コンクリート製の魚礁とを組み合わせて接合してなる魚礁である。
【0014】
同請求項6に記載する発明は、請求項1から3のいずれかに記載の魚礁用の部材と鉄鋼製の魚礁用の部材又は鉄鋼製の魚礁とを組み合わせて接合してなる魚礁である。
【0015】
同請求項7に記載する発明は、請求項1から3のいずれかに記載の魚礁用の部材であって餌料培養基質の空隙率が異なるものを組み合わせて用いてなる請求項4から6のいずれかに記載の魚礁である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る魚礁用の部材は、上記の構成からなり、鉄筋コンクリート製の芯棒を中心部分に軸として貫通させてあるので、従来の餌料培養基質を装着してなる魚礁用の部材、例えば中空状の内筒体の表面に餌料培養基質を装着した魚礁用の部材(特許文献4の漁場施設用成形体のような部材)に比べて、強度が大きく、そのため、本発明に係る魚礁用の部材で構成した魚礁はきわめて構造的安定性がすぐれている。また、本発明に係る魚礁用の部材は、この部材だけで魚礁を構成できる強度を有すると共に鉄筋コンクリート製の芯棒の外周に餌料培養基質を巻き付けるように装着するものであるから、餌料培養基質を後付けで従来の魚礁に装着したものに比べて、効率よく経済的に製作できる。
【0017】
本発明に係る魚礁用の部材は、中心軸にそって部材の連結用の鉄筋や鋼製部品を容易に埋め込むことができるため、部材の芯棒の端部どうしを接合して連結することが容易であり、そのため、どのような形状であれ、任意の立体格子状の魚礁を容易に形成できる。すなわち、本発明に係る魚礁用の部材を用いると、広範囲の形状の魚礁を構築できるため、長短各種の部材や餌料培養基質の空隙率が異なる部材などを適宜に組み合わせて魚礁の大きさや形状を立体的かつ自在に構築できる。
【0018】
本発明に係る魚礁用の部材は、上記の構成からなり、鉄筋コンクリート製のポール状の芯棒の表面に、その両端部を除いて、カキやホタテ貝やアコヤ貝など各種の貝殻及び/又はこれらの破片を骨材として用いた、空隙と表面積に富んだ餌料培養基質を巻き付けるように装着してあるので、必要に応じて餌料培養基質の厚みを薄くしたり厚くしたり、或いは、餌料培養基質の空隙率を大きくしたり小さくしたり、任意に調整できる。そのため、本発明に係る魚礁用の部材を用いて構築した魚礁は、設置海域の条件や利用目的に応じて適切な性状の餌料培養基質を備えた魚礁を安価かつ容易に構築できる。
【0019】
また、本発明に係る魚礁用の部材は、上記の構成からなるので、産業廃棄物であるカキやホタテ貝やアコヤ貝などの各種の貝殻を有効な資材として再活用できる。これらの貝殻の表面には有機物が付着していることが多く、このような不純物が付着したままの貝殻を餌料培養基質の骨材として使用すると、コンクリートの硬化に時間がかかると共に硬化しても剥離しやすくなるが、本発明では、必要に応じて有機物を除去した貝殻を使用するので、貝殻を骨材に用いても餌料培養基質をポール状の芯棒に確実に硬化・固定することができ、魚礁として構築した後で貝殻が脱落するおそれがない。そのため、従来から使用の途がなくて邪魔もの扱いにされていた貝殻を大量に使用することができ、貝殻の有効利用を一段と進めることができる。
【0020】
また、本発明に係る魚礁用の部材は、従来の餌料培養基質を装着してなる魚礁用の部材と同様に、表面がフラットで均一である従来の鉄筋コンクリート製や鉄鋼製の魚礁に比べて、短期間に微小生物が付着・繁殖しやすくなり、魚類の集魚効果と増殖効果を早く発現できるので、魚礁としての機能を早期に発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、本発明に係る魚礁用の部材の「餌料培養基質」について説明する。
本発明で用いる餌料培養基質は、貝殻ポーラスコンクリートとも称され、魚礁用の部材において、魚類の餌料である微小動植物が付着・繁殖しやすいように無数の空隙と豊富な表面積を備えた構造体のことをいう。本発明では、カキやホタテ貝やアコヤ貝など任意の貝殻を骨材としてコンクリート製の餌料培養基質を成形する。すなわち、本発明においては、任意の貝殻及び/又はこれを破砕した貝殻の破片を、セメントや細骨材である砂や適宜の混和剤などを混ぜたものに水を加えて混練し、その混練物を硬化させて作る。本発明では、この混練物を鉄筋コンクリート製のポール状(棒状)の芯棒の表面に、その両端を除いて、塗着ないし固着させて硬化させる。混練物の配合の一例を挙げれば、各種の貝殻74重量%、セメント17重量%、砂3重量%、混和剤1重量%、水5重量%である。しかし、この混練物の配合は、貝殻の形状や大きさ、使用量などに応じて適宜決定すればよく、上記の例に限定されるものではない。
【0022】
本発明では、どのような貝殻でも使用できる。すなわち、本発明で用いる貝殻として、例えば、カキ、ホタテ貝、アコヤ貝、アカ貝、アサリ貝、ホッキ貝、ヒオウギ貝、ハマグリなどを例示することができる。
【0023】
これら貝殻の表面には有機性の不純物が付着していることが多く、この状態では、コンクリートの硬化速度が遅くなると共に、硬化後でも貝殻が脱落しやすくなる。そのため、餌料培養基質を成形する際には、予め貝殻から有機物を除去する工程を採ることが好ましく、例えば、傾胴式ミキサーに貝殻を投入して、貝殻どうしを20〜40分間ほど攪拌した後、5〜30mmの篩で篩い分けて有機物を除去するか、又は、貝殻に水を加えて攪拌し、有機物を水と共に洗い流す方法が好ましい。なお、例えば、ホタテ加工場で加熱処理された貝殻については、有機物除去の工程を採る必要はない。
【0024】
一般に、貝殻を使用した餌料培養基質は、貝殻が大きいほど基質の内部空間が大きくなり、かつ空隙率が高くなる。餌料培養基質の内部空間の大きさ、空隙率及び表面形状は、その基質に付着する生物や内部空間に棲みつく餌料生物にとっても大きな要素である。例えば、魚類の餌料培養基質としては、基質内部の空間が大きく、かつ空隙率も高い方が有効であるが、海藻の着床基質としては、内部空間の大きさよりは表面が微細な凹凸に富む方が有効である。すなわち、貝殻を粉砕して適度な大きさにすることで、目的に応じた最適な構造的特徴を備えた餌料培養基質を経済的に作ることができる。
【0025】
本発明で用いる餌料培養基質には、骨材として、通常の貝殻も使用するが、通常の貝殻と共に又は通常の貝殻に替えて、破砕した貝殻を使用する点にも特色がある。1つの餌料培養基質中に貝殻及び/又はその破片を混在させると、無数の空隙(ポーラス)の状態が複雑となり、微小生物や藻類がその種類や成長段階における体の大きさなどに見合った空隙を利用することができる。また、餌料培養基質ごとに破砕した貝殻の使用量を調整して貝殻の空隙率が異なるように形成し、これら空隙率が異なる餌料培養基質を装着した魚礁用の部材を組み合わせて魚礁を構築することも可能である。
【0026】
以下「破砕した貝殻」を用いた餌料培養基質と「破砕しない貝殻」を用いた餌料培養基質の相違点について説明する。
貝殻を使用して製作された餌料培養基質は、貝殻どうしを接着させるため、接着部が多くなるほど強固な基質が得られる。したがって、貝殻が大きくなれば接着部が少なくなるため、貝殻の大きさに比例してその基質の厚さを大きくしなればならない。餌料培養基質の最小厚さは、貝殻の大きさの2〜3倍は必要である。
そのため、本発明に係る魚礁用の部材を製作する場合、貝殻を小さく破砕すれば、より薄い餌料培養基質で芯棒に接着できるので、部材の軽量化が可能となり、かつ貝殻の使用量を軽減できる。
【0027】
通常、貝殻を破砕機で小さく破砕すると大小様々な貝殻の破片が生ずる。破砕された貝殻の破片を大小に篩い分けし、この破片を用いて餌料培養基質を製作すれば、空隙や表面積の状態が異なる様々な餌料培養基質を作ることができる。このように、様々な性状の餌料培養基質を芯棒に装着すると、様々な特徴を有する魚礁用の部材を作ることができる。また、これら魚礁用の部材を組み合わせて魚礁を構築すると、用途に合わせた、又は多目的な魚礁を作ることができる。また、貝殻をムダなく再利用できる。
【0028】
以上の説明を要約すると、以下のとおりである。
破砕しない大きな貝殻を用いた場合、餌料培養基質の強度が弱くなるので、基質の厚さを厚くする必要が生じる。そのため、製作コストが高くなる。一方、大きな貝殻を用いることによって、餌料培養基質の内部空間を大きくすることができ、空隙率を高くすることが可能となる。そのため、大きな貝殻を用いた餌料培養基質は、主として、魚類用の餌料培養基質に適している。
【0029】
また、小さな貝殻又は破砕した貝殻の破片を用いた場合、餌料培養基質は、強度が強くなるので、基質の厚さを薄くすることができる。そのため、製作コストを下げることができる。一方、小さな貝殻及び/又はその破片を用いることによって、基質の内部空間が小さくなると共に空隙率も低くなる。そのため、小さな貝殻及び/又はその破片をを用いた基質は、主として基質の厚さを必要としない海藻類の着床基質に適している。
【0030】
次に、本発明に係る魚礁用の部材の強度について説明する。
本発明に係る魚礁用の部材は、中空状の内筒体の表面に餌料培養基質を装着した、同じ口径で同じ大きさの魚礁用の部材(例えば特許文献4に記載のもの)に比べて、表1・表2に示すように、部材の強度比を1.73倍程度大きくすることができ、また、部材の重量比を1.33倍程度重くすることができる。そのため、本発明に係る魚礁用の部材は、上記中空状の内筒体からなる魚礁用の部材に比べて、海中での安定性を一段と高くすることができる。
【0031】
部材の重量が大きくなれば、それに比例して部材の強度が必要になる。本発明に係る魚礁用の部材を前記中空状の内筒体の表面に餌料培養基質を装着した魚礁用の部材と比較した場合、本発明に係る魚礁用の部材は重量比以上に中心部分を構成する中心部材(本発明では芯棒、前記中空状の内筒体の表面に餌料培養基質を装着した魚礁用の部材では内筒体:以下これらを「中心部材」という。)の強度比が大きいため、本発明に係る魚礁用の部材の方が結果的に1.3倍(1.73/1.33)程度の強度を有することになり、より効率的な魚礁用の部材であるということができる(表1・表2を参照されたい)。
【0032】
本発明に係る魚礁用の部材の芯棒(表1・表2では「本発明部材」と記す。)とその芯棒と同じ口径で同じ大きさの中空状の内筒体(表1・表2では「中空状部材」と記す。)との強度比を表1に示す。また、これら中心部材を用いて同じ厚みで同じ重量の餌料培養基質を装着した魚礁用の部材の重量比を表2に示す。
【表1】

【表2】

【0033】
複数の魚礁用の部材を組み合わせて魚礁を構築する場合、本発明の魚礁用の部材のように、中心部材が鉄筋コンクリート製の芯棒であれば、その芯棒の中心軸にそって、部材の連結用の鉄筋又は鋼製部品を容易に埋め込むことができるため、立体的な魚礁構造を経済的かつ容易に設計・施工できる。
【実施例】
【0034】
次に本発明に係る魚礁用の部材の実施例を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、いずれも本発明に係る魚礁用の部材の実施例の説明図である。
図1には、本発明に係る魚礁用の部材の実施例を4種類挙げてあり(例1〜例4)、図2には、本発明に係る魚礁用の部材の別の実施例を2種類挙げてある(例5・例6)。図1において、1は鉄筋コンクリート製のポール状の芯棒であり、11はその端部である。2は貝殻を骨材として用いた餌料培養基質である。図1に示すように、本発明に係る魚礁用の部材は、図1の4つの実施例のように、中心に鉄筋コンクリート製の芯棒1を貫通させてあり、その両端部11・11を除いた表面には貝殻を骨材とする餌料培養基質2を装着させた構造のものである。また、図2に示す魚礁用の部材は、鉄筋コンクリート製のポール状の芯棒1の表面に、空隙率と表面積を異にする2種類の餌料培養基質21・22を装着したものである。このように、本発明に係る魚礁用の部材は、鉄筋コンクリート製の芯棒1と餌料培養基質2の性状や組み合わせ方によって、色々なバリエーションのものを作ることができる。
【0035】
次に、本発明に係る魚礁の実施例を図面に基づいて説明する。図3〜図5は、いずれも本発明に係る魚礁の実施例の説明図である。
図3の(イ)は通常のコンクリート製の魚礁(ないし魚礁用部材)であるが、(ロ)はそのコンクリート製の魚礁(ないし魚礁用部材)Aの上部に本発明に係る魚礁用の部材Bを横に4基並べて固着させた魚礁の説明図である。また、図4は通常のコンクリート製の魚礁Aの上縁と中心部からそれぞれ上方に向かって本発明に係る魚礁用の部材Bを5基立ち上げてその先端を固定した魚礁の説明図である。このように、通常のコンクリート製の魚礁又は鉄鋼製の魚礁に対して本発明に係る魚礁用の部材を組み合わせて用いると、魚類の集魚効果及び増殖効果が一段と向上する。
【0036】
図5は、本発明に係る魚礁用の部材であって長さが異なる複数の部材を、その端部どうしを接合して立体格子状に構築した魚礁の説明図である。このように、本発明に係る魚礁は、本発明に係る魚礁用の部材であって長さと形状が異なる部材や餌料培養基質の空隙率と表面積が異なる部材などを適宜に組み合わせて用い、魚礁の大きさや形状を自在に構築できる。しかも、それぞれの部材には鉄筋コンクリート製の芯棒を貫通させてあるので、構造的安定性にすぐれた魚礁を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上、詳しく説明したとおり、本発明に係る魚礁用の部材は、鉄筋コンクリート製のポール状の芯棒の表面に、その両端部を除いて、各種の貝殻及び/又はこれらの破片を骨材として用いた、空隙と表面積に富んだ餌料培養基質を装着してあるので、これを部材として用いて構築した魚礁は、従来の鉄筋コンクリート製や鉄鋼製の魚礁に比べると構造が複雑となるため、短期間に微小生物が付着・繁殖しやすく、魚類の集魚効果及び増殖効果が格段に早く発現するので、魚礁としての機能が大幅に向上する。また、本発明に係る魚礁用の部材は、産業廃棄物である各種の貝殻を有効な資材として再活用でき、環境保全につながる。
【0038】
本発明に係る魚礁用の部材は、鉄筋コンクリート製の芯棒を中心軸として貫通させてあるので、中空状の内筒体の表面に餌料培養基質を装着した魚礁用の部材などに比べて、強度が大きく、しかも、貝殻が脱落するおそれがないなど、構造的安定性がすぐれている。また、本発明に係る魚礁用の部材は、部材の芯棒の端部どうしを接合して連結することが容易であり、そのため、任意の立体格子状の魚礁などを自在に構築できる。すなわち、本発明によれば、設置海域の条件や利用目的に応じて、効果的な魚礁を経済的に設置できるので、産業上の利用可能性はすこぶる大なものがある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る魚礁用の部材の実施例の説明図(例1〜例4)
【図2】本発明に係る魚礁用の部材の実施例の説明図(例5〜例6)
【図3】本発明の魚礁用の部材をコンクリート製の魚礁に接合した実施例の説明図
【図4】本発明の魚礁用の部材をコンクリート製の魚礁に接合した別の実施例の説明図
【図5】本発明の魚礁用の部材を立体格子状に組み合わせて構築した魚礁の説明図
【符号の説明】
【0040】
1は鉄筋コンクリート製のポール状の芯棒、11はその端部、2は餌料培養基質、21・22はそれぞれ異なる性状の餌料培養基質、Aは通常のコンクリート製の魚礁(又は魚礁用の部材)、Bは本発明に係る魚礁用の部材をそれぞれ示す。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製の芯棒の両端部を除く表面に、貝殻及び/又はその破片を骨材とするコンクリート製であって貝殻面の凹凸によって無数の空隙を有する餌料培養基質を装着してなるポール状の魚礁用の部材。
【請求項2】
形状や大きさが異なる貝殻及び/又はその破片が混在している餌料培養基質を装着してなる請求項1に記載の魚礁用の部材。
【請求項3】
貝殻どうしを攪拌するか又は貝殻どうしに水を加えて攪拌して表面に付着した有機物を除去してある貝殻及び/又はその破片を骨材とする餌料培養基質を装着してなる請求項1又は2に記載の魚礁用の部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の魚礁用の部材を複数個組み合わせて、その端部どうしを接合して立体格子状に構築してなる魚礁。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の魚礁用の部材と鉄筋コンクリート製の魚礁用の部材又は鉄筋コンクリート製の魚礁とを組み合わせて接合してなる魚礁。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の魚礁用の部材と鉄鋼製の魚礁用の部材又は鉄鋼製の魚礁とを組み合わせて接合してなる魚礁。
【請求項7】
請求項1から3のいずれかに記載の魚礁用の部材であって餌料培養基質の空隙率が異なるものを組み合わせて用いてなる請求項4から6のいずれかに記載の魚礁。



























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−174969(P2007−174969A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376922(P2005−376922)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(591109119)海洋土木株式会社 (2)
【出願人】(506003037)高村建材工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】