説明

魚貝類の成長を促進する方法及び組成物

魚貝類に対する重量増加及び/又は飼料効率を向上するための方法及び組成物を開示する。該方法は薬剤の投与を含み、例えば、魚貝類におけるプロスタグランジンまたはロイコトリエン脂質前駆体の生体利用効率(bioavailability)を低減する抗体を含む。該方法は更に10%以上の重量増加、飼料効率を5%以上、又はそれらの双方を向上する抗体の投与を含む。更に、ここでは該抗体を含む魚貝用の餌組成物も開示した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本出願は、米国特許出願第11/954,113号(出願日:2007年12月11日)、及び米国暫定特許出願第60/886,447号(出願日:2007年1月24日)に対する優先権を主張する。該出願で開示された内容は全て参照により本発明に組み込まれるものとする。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般的に水産養殖、及び魚貝類の成長を促進するか或いは飼料効率を改善する方法及び組成物に関する。特に、魚貝類の成長を強化し、飼料効率を高めるために与えられる、anti-PLA2、anti-CD14、またはanti-TLR4などの抗体を提供する。
【背景技術】
【0003】
水産養殖は、典型的には人間の食用の目的で行われる魚貝類の商業的養殖を包含する。しばしば、魚は、彼らの食事が外部から補給されるか、或いは完全に外部から餌として供給される、タンクや囲いの中に保持される。蛋白質、脂肪、繊維質、及び、ミネラル類、ビタミン類、微量元素など少量の補助薬(adjuvants)を含む固形組成物を魚に供給することは一般的に行われている。餌が魚貝類の体を構成する蛋白質に変換される割合は比較的低く、餌中の蛋白質成分は、魚へのダメージを避けるために比較的高価な蛋白源から選択しなければならない。(Klaus Hoffman著、“養殖における免疫促進:ニュースは何か?”、Aqua Culture Asia Pacific,3(5)(2007)を見よ。)その結果、最小限量の餌を用いて、商業的に育てられた魚貝類が販売可能な大きさまで迅速に生育することは望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
魚貝類の成長を相当程度促進する及び/又は飼料効率を改良するための方法が種々見出された。ある一つの態様において、該方法は、プロスタグランジンまたはロイコトリエン脂質前駆体の生体利用効率(bioavailability)を低減する抗体を魚や貝に投与すること(administering)を含む。投与される抗体の量は、抗体を与えられなかった魚や貝と比較して、飼料効率及び/又は重量増加を上昇するために効果的な量である。適当な抗体としては、例えば、アンチホスホリパーゼA2(anti-PLA2)、anti-CD14、またはanti-Toll4受容体抗体などを含む。抗体が与えられる魚や貝の重量増加は、例えば、約1%〜約30%の範囲であり、約50%又は約100%に到達する場合もある。例えば、ここで説明される様に、抗体を与えられなかった魚や貝と比較して、重量増加は5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、または25%以上となり得る。同様に、抗体を与えられた魚や貝における飼料効率の増加は未処理の魚や貝に比べて、約1%〜約5%の範囲となり得るが、上限は約10%、約15%、または約20%に達する可能性があり、下限は5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、或いは10%以上になり得る。
【0005】
本発明の別な態様において、該方法は魚や貝に対して、未処理の場合と比較して、5%以上の重量増加を助長するか、或いは飼料効率を1%以上改良するか、又はそれらの双方をもたらす抗体を与えることを含む。幾つかの実施態様において、重量増加は10%以上助長され、及び/又は、飼料効率の増加が2%以上、3%以上、4%以上、または5%以上である。適当な抗体はanti-PLA2、anti-TLR4、anti-CD14などを含む。幾つかの実施態様において、用いられた抗体はanti-PLA2抗体である。他の実施態様においては、抗体はTLR4及び/又はCD14であり、貝に付与される。
【0006】
多種多様な魚がここで記載される方法で用いられるのに適しており、マス、テラピア、パーチ(すずき類の淡水魚)、ナマズ、鮭、バス、マンボウ、および魚の餌となる小さな魚を含むが、これらに限定されない。同様に、種々の貝をここで記載される方法に用いてもよい。それらの好例となる貝類としては、小エビ、クルマエビ、ムール貝、ハマグリ、カキ、ロブスター、カニ、およびザリガニを含むが、それらに限定されない。
【0007】
該抗体は当業者に公知の方法で付与されることが可能であり、都合良く餌を通じて魚や貝に付与されてもよい。幾つかの実施態様において、該餌は抗体を含む卵加工品(egg preparation)を含む。
【0008】
別な態様において、本発明は本発明の抗体を含む組成物を提供する。即ち、例えば、魚や貝の餌を含み、しかも有効量のプロスタグランジンまたはロイコトリエン脂質前駆体の生体利用効率を低減する抗体、或いは抗体が与えられない魚又は貝と比較して、魚又は貝による重量増加を10%以上助長するか飼料効率を5%以上改良する抗体、を有効量含む組成物を提供する。典型的には、魚貝用の該餌は蛋白質と脂肪を含む。幾つかの実施態様において、該餌は蛋白質を30質量%〜65質量%と脂肪を5質量%〜25質量%含む。他の実施態様においては、魚の餌は40質量%〜50質量%の蛋白質と10質量%〜20質量%の脂肪を含む。或る実施態様において、魚の餌は抗体を含む卵加工品を含み、例えば、粉末化された卵加工品は、夫々質量基準で、0.01%〜約10%、約0.1%〜約5%、約0.1%〜約3%、約0.1%〜約2%、約0.1〜約1%、約0.15%〜約1%の量で加えられる。餌中に添加される卵加工品の量は卵加工品中の抗体の濃度と特定の用途によって異なってくる。ここで提供されるガイダンスに鑑みれば、特定の用途に応じた適切な量を選択することは当業者であれば可能である。幾つかの実施態様においては、魚の餌組成物には、漏出(leeching)の様な製品分離を低減するためにオイルをスプレーすることがある。例えば、用いられるオイルは植物油であり、魚の餌組成物に対する添加量は夫々質量基準で約0.5%〜約5%の範囲であり、例えば、約0.5%、約1%、約2%、約5%であってよい。幾つかの実施態様において、オイルは最終量に対して約2質量%の割合で適宜添加される。
【発明の効果】
【0009】
本発明組成物と方法の予期しない利点は、魚貝類の餌中の魚油と魚ミール蛋白質の代わりに合成のまたは植物由来の脂質と蛋白質を用いる能力である。キャノーラ油と大豆ミールは商業的に魚の餌中に用いられる最もポピュラーな植物由来の代用品であり、一方、亜麻仁油、麻実油、大豆油、小麦、トウモロコシ、大麦、オート麦、キャノーラ、及びヒマワリから成る餌も用いられる。(K.S.Betts著、“Environmental Science and Technology”、2004年2月12日号) 例えば、大豆を含む魚の餌は、魚の市場価値を損う原因になる食欲減退、弱まった免疫機能、腸の損害、肉体的な変質を多くの種類の魚にもたらすストレスを引き起こすことがある。(Overturf著、“Aquaculture America”,p.220 (2006年))かようにして、魚の餌は一般的に大量の魚肉を主要な蛋白源とし、魚油を栄養上の脂質源として配合される。本発明組成物において、プロスタグランジンまたはロイコトリエン脂質前駆体の生体利用効率を低減する抗体の添加により、魚が植物由来の食料源をより良く取り入れ易くする。しかるに、本発明において提供される組成物は大豆ミールなどの植物由来の蛋白質を含んでもよい。幾つかの実施態様において、植物由来の蛋白質の量は、約1〜約100質量%であり、又は約1〜約75質量%、より好ましくは約1〜約50質量%の範囲内である。ここで提供される組成物は魚油の代替か魚油に加えて、菜種油などのプラント誘導型脂質を含んでもよい。(Bell等、“Aquaculture”, 218:515-528(2003年)を見よ)。幾つかの実施態様においては、プラント誘導型脂質の量は約1〜約100質量%、又は約1〜約75質量%であり、より好ましくは約1〜約50質量%の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の抗体を付与された魚の時間に対する重量増加(g/魚)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
予期せぬことに、ここで記載される方法が、或る一定の抗体が投与された魚貝類において、顕著な重量増加及び/又は飼料効率の向上をもたらすことが発見された。抗体が誘導される消化器系統と免疫系統における魚/貝と哺乳動物との間の大きな違いを考慮すると、その改良された重量増加と飼料効率は驚くべきことである。理論に縛られることは望まないが、重量増加及び/又は飼料効率の向上は抗体に伴う胃炎の低下に起因すると思われており、該抗体は、例えば、魚又は貝の中でプロスタグランジンまたはロイコトリエン脂質前駆体の生体利用効率を低減するか、或いは魚又は貝の消化管において、細胞表面上のコンプレックスの形成を減少させると考えられており、コンプレックスには、TLR4及び/又はCD14である内部毒素(endotoxin)が含まれる。
【0012】
ここで記載される抗体は注射か或いは経口によって投与可能であり、医薬品又は栄養補助剤の投与で通常用いられるタイプの適当なキャリアと組み合わせて投与してもよい。注射による方法は、皮下、腹腔内、筋肉内、又は静脈内の注射を含むが、それらに限定されない。経口投与は錠剤や粉末の形態で行うことができるが、それらに限定されない。最も好ましくは、薬剤を直接餌と混合するか、米国特許第5,725,873号で記載される様に(該引用文献の内容は全部参照により本明細書に組み込まれるものとする)、餌粒子をコーティングすることによって供給される。
【0013】
1つの実施態様において、抗体は魚の餌中から投与されることもある。餌の供給が攻撃的な食行動を有する魚や貝になされる場合、anti-PLA2抗体を含む卵粉は直接魚の餌と混合してもよい。魚は素早く餌を消費するので、抗体は餌から漏出(leech)しそうにない。しかしながら、他の養殖種、例えばイエローパーチ(黄色のすずき類の淡水魚)、小エビなどにおいて、餌がタンク中に供給されてから完全に消費されるまでの時間は通常、最高30分である。餌が消費される前に、抗体が餌から漏出する可能性があるので、これは潜在的な問題となり得る。そこで、或る1つの実施態様においては、植物油を餌組成物にスプレーする。例えば、抗体粉を餌と混合した後に、植物油2質量%の水溶液を餌上にスプレーしてもよい。
【0014】
1つの方法において、抗体は次の通り調製される。即ち、産生動物(producer animal)に対して、PLA2の様な抗体が必要なペプチド又は蛋白質で免疫性を付与する結果、該産生動物は該ペプチド又は蛋白質に対する抗体を産生する。抗体を含有する物質は該産生動物から得られる。もし必要であれば、該抗体はさらに精製することも可能であり、或いはさらに処理することなく魚か貝の餌中に用いることが可能である。
【0015】
Tokoro(米国特許第5,080,895号)の方法は、Cook(米国特許第6,383,485号)により例証されている様に、卵黄抗体の製剤を生成するために使うことができる。例えば、卵を生んでいる雌鶏にPLA2を接種することができる。好ましくは、適当な補助薬を、免疫反応を強化するために雌鶏PLA2接種と連携して与える。この目的に対して有用な補助薬は完全フロインドアジュバントの様な油中水滴エマルジョン補助薬である。PLA2は雌鶏にanti-PLA2抗体を産生させ、それは雌鶏が産んだ卵の卵黄に受動的に移動される。典型的に、鶏卵は約100-150mgのIgY、又は約2〜3mg/mLを含んでおり(Rose等,“Develop.Comp.Immunol.Immunol.5:115-20(1981年))、その5-10%、または最大で15%は、接種された抗原に特異的である。従って、全卵加工品は特異的IgYを10mg含むと予想できる。
【0016】
anti-PLA2抗体を含む卵加工品、例えば卵黄または全卵は、集めて均質化することによりエマルジョンを形成することができる。得られるエマルジョンを乾燥して、anti-PLA2抗体を含む粉末を形成してもよい。この粉末は投与経路において適切に混合され、その後、当業界で公知の方法を用いて所望の魚や貝に投与される。該加工品は、例えば魚や貝の餌の補助食として、好ましくは経口投与される。特定の用途、所望の結果及び本発明で開示されたガイダンスに従い、魚や貝に投与される抗体の量を調整することは当業者にとっては常識である。
【0017】
1以上の追加の魚の補助餌をanti-PLA2抗体と混合して、魚餌組成物を生成してもよい。1つの実施態様において、魚餌組成物は更にプロバイオテックス(例えば桿菌(Bacillus)、乳酸菌(Lactobacillus)、腸球菌(Enterococcus)、カルノバクテリウム(Carnobacteriam)、サッカロミセス(Saccharomyces)、またはカンジダ(Candida))を含んでもよい。又、魚餌組成物はプレバイオテックス(例えばフルクトオリゴサッカライド類、リポサッカライド類、およびグルカン類) を含んでもよい。更に、魚餌組成物は核酸、ヌクレオチド、代謝産物、酵素、抗生物質、または他の卵抗体製品などの補助物質を含んでもよい。
【0018】
他の実施態様において、タウリン、メチオニン、ベータグルカン類、ホルモン類、又は免疫増強薬を魚餌組成物に添加してもよい。タウリン、メチオニン、およびベータグルカン類は、植物性材料中に高度に含んだ餌により、魚の成長を促進するために使われてきている(Gaylord等、“Aquaculture”, 269:514-525(2007年);Sealey等、“Aquaculture America” 要約書(2006年))。又、ホルモン類は魚の成長と筋肉塊(muscle mass)を増大させるために研究されてきているが、恐らくこれは注射によってのみ効果的に投与され得る(Simpson等、“General and Comparative Endocrinology”,135:324-333(2004年))。さらに、種々の免疫増強薬は補助餌として提案されてきており(Galindop Villegas、 J.&H.Hosokawa,2004年。免疫増強薬:海水魚の中の病気の一時的な防止に:“Advances en Nutricion Acuicola VII Memorias del VII Simposium Internacional de Nutricion Acuicola”,11月16-19日,2004年 Hermosillo,Sonora,Mexico)、それは成長促進の補完的利点となり得る。
【0019】
この明細書において引用される各個々の出版物、特許出願、公開特許、または他の文書は、あたかも個々の出版物、特許出願、公開特許、又は他の文書がそのまま全て引用によって組み込まれているかの様に、ここで引用によって含まれる。引用によって組み込まれているテキストの中に含まれる定義は、それらがこの開示における定義を否定する場合には除外される。
【0020】
本発明については、かようにして一般化して説明してきたが、下記の実施例を参照することにより直接的に理解できるであろう、そして該実施例は例として提供されるが、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0021】
[実施例1:マスに対するanti-PLA2の効果]
若いニジマスの生育に対するanti-PLA2(aOvaから入手)の効果をテストするため盲検試験を実施した。該試験は3つの処理グループ:コントロール、並びに米国特許第6,383,485号のとおり作製されたanti-PLA2粉が0.15質量%及び0.30質量%を含む。各処理グループは12匹の魚(〜25gのイニシャル重量)を夫々入れた6つの115Lの槽を含むので、合計18個の槽となった。餌は押し出されたSilver Cup製Steelhead餌(45%の蛋白質、16%の脂肪)を用いた。魚は毎日1回慎重にたっぷりと餌を与えられ、各タンクへの餌の全供給量を記録した。
【0022】
試験結果を表2に示す。2ヶ月後に、0.15%と0.3%の処理グループにおける魚は夫々コントロールより11.1%(P = 0.1)、27.8%(P = 0.03)大きく成長した(表2、図1)。コントロール、0.15%、および0.3%の処理グループにおける餌の転化率は夫々、0.93、0.93、および0.86であった(表2)。これらの結果は、anti-PLA2がマスの成長に対する非常に効果的な促進剤であり、魚における成長改良が、成長改良が5-10%に近い陸上の家畜より相当大きくなる可能性があることを示すものである。それだけで、本発明のanti-PLA2抗体を含む餌は、該組成物を与えられた魚や貝における飼料効率及び/又は重量増加を高める方法において有益である。
【0023】
【表1】

注)1)FCR:餌転化率(=餌消費量/重量増加)。
2)*:コントロールに対して危険率5%未満で優位差あり。
【0024】
[実施例2:商業的に養殖されているマスに対するanti-PLA2の効果]
第2の実験として、商業的なマス養殖におけるマスの成長と飼料効率に対するanti-PLA2の効果を調べた。該実験は、2つの処理群を含む:即ち、コントロールと、米国特許第6,383,458に記載の通り作製された0.3% anti-PLA2粉末である。各処理群は二つの孵化タンクを含み、夫々のタンクには魚3,500匹(イニシャル重量が各〜10g)を貯蔵したので、合計4槽のタンクを使用した。餌混合物としては、Silver Cup Steelhead餌を用い、それは蛋白質45%と脂肪12%を含む。魚には、1日2回餌を供して明確な飽満状態にした。各タンクへの餌の全量を記録した。
【0025】
実験結果を表3に示す。27日後に、anti-PLA2処理グループの魚は174.6%の体重変化を呈した、一方コントロール群は179.9%の体重変化を示した。即ち、anti-PLA2タンク中の魚はコントロールほど、餌を有効利用しなかった。その結果、anti-PLA2餌組成物を与えられた魚は本研究において、餌供給量を16%節約した。マスの餌が1トンあたり約800ドルであるので、本発明組成物を用いることにより相当な原価低減を実現できる。
【0026】
【表2】

【0027】
[実施例3:漏出防止のための植物油コーティング]
魚の餌から抗体の漏出(leeching)を防止する方法を調べるために、ペレットを植物油で処理した。即ち、0.3%のanti-PLA2粉をSilver Cup Steelhead餌と混ぜた。卵抗体粉を餌と充分混ぜた後、餌に対して2質量%の植物油をスプレーして混合物を得た。
これにより、卵抗体粉を魚餌ペレットに対してより強固に付着させ得る。抗体の漏出は、未処置のコントロールに比べて、1時間の露出後で87%減少した。従って、魚又は貝が攻撃的な食行動を示さない水産養殖において、餌/抗体の混合物に植物油をスプレーすることは有用である。
【0028】
[比較例]
本質的に米国特許第6,383,485号で記載された様な方法で、ヒヨコの成長と飼料効率に対するanti-PLA2の効果に関する比較研究を実施した。3週間に亘る研究では、コントロール(anti-PLA2無)と処理グループ(anti-PLA2有り)との間で、10匹のヒヨコ16グループを均等に分割して実施した。anti-PLA2を与えられたヒヨコは、未処置のヒヨコより平均重量増加率として5.3%( P<0.1)多く、未処置のヒヨコと比較して平均3.8%(P< 0.05)の飼料効率の増加を示した。
【0029】
豚の成長と飼料効率に対するanti-PLA2の効果に関する比較研究を上記と同様に実施した。anti-PLA2処理した豚は、未処理の豚より5.5%の平均重量増加と3.6%の平均飼料効率増加を呈した。
【0030】
該比較例は魚に対する本発明の抗体の顕著な効果を示している。鶏と豚の研究において、平均重量増加は約5〜6%であり、飼料効率は約3〜4%上昇する。比較すると、マスへの最も高い量でのanti-PLA2の投与は、未処理の場合と比較して、28%という顕著な重量増加と約8%近くの飼料効率上昇を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚又は貝の餌と抗体を含む組成物であって、該抗体を投与された魚及び貝において、該抗体を与えられなかった魚又は貝と比較して、該抗体が重量増加または飼料効率を上げるために有効な量として存在し、該抗体がプロスタグランジンまたはロイコトリエン脂質前駆体の生体利用効率を低減する前記組成物。
【請求項2】
該抗体がアンチホスホリパーゼA2、anti-CD14、またはanti-Toll4受容体抗体である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
魚の餌が合成もしくは植物由来の蛋白質類を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
魚の餌が合成もしくは植物由来の脂質類を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
魚の餌が脂肪と蛋白質を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
該組成物が30乃至65質量%の蛋白質と5乃至25質量%の脂肪とを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
卵加工品が該抗体を構成する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
該組成物が約0.05乃至約2質量%の卵加工品を含む、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
さらに、植物油コーティング層を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
植物油コーティング層が植物油として約1乃至約5質量%含まれる、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
抗体を魚又は貝に投与することを含む方法であって、該抗体が投与されなかった魚又は貝と比較して、該抗体が重量増加及び/または飼料効率を上げるために有効な量で、プロスタグランジンまたはロイコトリエン脂質前駆体の生体利用効率を低減する抗体を投与する前記方法。
【請求項12】
該抗体が魚の餌を含む組成物として投与される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
該抗体がマス、テラピア、パーチ、ナマズ、鮭、バス、マンボウ及び魚の餌となる小さな魚から選択された魚に投与される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
該抗体が小エビ、クルマエビ、ムール貝、ハマグリ、カキ、ロブスター、カニ、およびザリガニから選択された貝に投与される、請求項11記載の方法。
【請求項15】
該組成物を投与されない魚又は貝と比較して、魚又は貝の重量増加が10%以上である、請求項11記載の方法。
【請求項16】
該抗体がアンチホスホリパーゼA2、anti-CD14、またはanti-Toll4受容体抗体である、請求項11記載の方法。
【請求項17】
該組成物を投与されない魚又は貝と比較して、飼料効率が5%以上上昇する、請求項11記載の方法。
【請求項18】
未処理の魚と比較して、魚又は貝の重量増加を10%以上向上させるか、又は飼料効率を5%以上改良するか、あるいはその両方である、抗体を魚又は貝に投与することを含む方法。
【請求項19】
該抗体がアンチホスホリパーゼA2、anti-CD14、またはanti-Toll4受容体抗体である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
該抗体が魚又は貝に対する餌中に含ませて投与される、請求項18記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−516280(P2010−516280A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547275(P2009−547275)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/000823
【国際公開番号】WO2008/091601
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(509113405)アオヴァテクノロジーズ,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】