説明

魚貝養殖魚床

【課題】車海老の養殖漁床において、限られた養殖面積で従来の何倍も養殖でき、少ない設備で効果的・衛生的な養殖環境を提供し、車海老の良好な成長を促し、歩留まりを良くできる養殖魚床を提供する。
【解決手段】養殖水槽1内に養殖魚床3を複数個間隔を設けて垂設すると共に、養殖魚床3に加振手段6を取り付けたことを特徴とする魚貝養殖装置である。また、その養殖魚床3は基材は砂止め網と魚貝止め網8から構成され、その基材の上に厚さが3cmから8cmの砂層を形成した。また、砂層は多孔質材からなり、その多孔質材に乳酸菌を含浸させた魚貝養殖装置である。加えて、水槽内の水にナノバブル酸素を加給した魚貝養殖装置である。更に、養殖水槽内1の水をその水槽外若しくは内に設置した水浄化機能を有する浄化装置に循環させ魚貝が代謝する有機物質とアンモニアを分解・除去する魚貝養殖装置にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車海老の砂地養殖魚床に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、車海老の養殖は砂の海岸線に大規模な網を張り稚魚を入れ、毎日飼料を与える方法がとられている。しかし1〜2年で砂地は腐敗し汚泥化するために養殖場所を転々と変えざるを得ない状況であり、海岸線の環境破壊は深刻な問題となっており、現状復帰には少なくとも10年以上必要である。また陸上養殖は海岸近くに大規模な水槽を作り、砂を入れ、空気を送り込む方式であり、広大な規模の水槽と大規模な配管設備や機械設備で必要であった。また砂の底に溜った残飼や糞尿は腐敗するために養殖車海老の生息環境は日増しに悪化し、病気や、車海老の稚魚の成長を妨げる要因となり、歩留まりの下がる原因となっている。また収穫後の黒く腐敗した砂の処理は入れ替えるか、2〜3ヶ月放置して自然に浄化されるのを待つしかなかった。その砂は大変な量であり、その腐敗臭は大変なものであった。以上の問題で車海老の陸上養殖は不可能と言われていた。
図6は、従来の養殖池である。海岸線の堤防18に隣接して造られた養殖池は、縦約100m、横約50mとかなり大規 模な水槽17であり、攪拌機19が複数個設置されている、砂底には、堆積した残飼 や糞尿20が堆積し養殖池内の生息環境は日増しに悪化し、病気や、車海老の稚魚の 成長を妨げる要因となり、車海老の歩留まりの下がる原因となっている。一般的な陸 上養殖の形態を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−289903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、車海老を砂地養殖する養殖魚床において、限られた養殖面積で、今までより何倍もの数の車海老を養殖でき、また少ない設備で効果的で衛生的な養殖環境を提供することによって、病気の原因を無くし、車海老の良好な成長を促し、歩留まりを良くできる養殖魚床を提供する。更に、底に溜った残飼や糞尿を簡単に処理でき、また出荷時や、成育観察のための途中捕獲など、砂中から車海老だけを簡単に捕獲できる車海老の養殖魚床を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、養殖水槽内に養殖魚床を複数個間隔を設けて垂設すると共に、養殖魚床に加振手段を取り付けたことを特徴とする魚貝養殖装置である。また、その養殖魚床の基材は砂止め網と魚貝止め網から構成され、その基材の上に厚さが3cmから15cmの砂層を形成した。また、砂は多孔質材からなり、その多孔質材に好気性の乳酸菌を含浸させた魚貝養殖装置である。加えて、水槽内の水にナノバブル酸素を加給する魚貝養殖装置である。更に、養殖水槽内の水をその水槽外若しくは内に設置した水浄化機能を有する好気性の乳酸菌を含浸させた砂の入った浄化装置に循環させ魚貝が代謝する有機物質とアンモニアを分解・除去する魚貝養殖装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車海老を砂地養殖する養殖魚床において、1基の養殖魚床は砂止め網と魚貝止め網、好気性の乳酸菌含浸の多孔質砂層から構成され、水中に浮いた状態に設置することで、何層も重ねることが可能となり、限られた養殖面積で、従来の数倍の車海老養殖が可能になった。また、養殖魚床に加振手段を取り付けたことにより好気性の乳酸菌含浸の多孔質砂層内の残飼や糞尿などは振い落され残留し難くなった、残留した残飼や糞尿は好気性乳酸菌によって分解・除去され養殖車海老の生息環境は非常に良くなった。更に、養殖水槽の底の形状は、振い落された残飼や糞尿や毀れた砂が自然に集まるようにジョウゴ型に造られている、ジョウゴ型槽底の最下端と水槽の最上端はポンプ・開閉バルブ・ナノバブル酸素発生装置・処理槽が組み込まれた配管設備で接合され、残飼や糞尿・毀れた砂だけを処理槽に回収し処理することができる。更に、ジョウゴ型槽底の配管設備から送り込まれる空気やナノバブル酸素が複層に設置された養殖漁床を通過することによって養殖漁床の多孔質砂中の好気性乳酸菌は活性化し残飼や糞尿に含まれる有機物質とアンモニアを分解・除去するため、車海老の生息環境は良好に保たれ、稚車海老の生育は非常に良くなり歩留まりもよくなった。また、養殖漁床は砂止め網と魚貝止め網の2層で構成されているために、砂中から車海老だけを、簡単に捕獲できた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】 本発明に係る1実施例を示す概略図
【図2】 1基の養殖魚床の概略図、
【図3】 4基の魚床を垂設した状態と、魚床を巻き上げた状態を示す概略図
【図4】 ジョウゴ型槽底に残飼や糞尿・毀れた砂が底に溜った状態を示す概略図
【図5】 ジョウゴ型槽底からナノバブル酸素や空気を噴出した状態を示す概略図
【図6】 従来の養殖池を示す一般的な養殖池の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に係る具体的実施例を図1から図5を参照して以下説明する。
【0008】
図1は本発明に係る1実施例を示す概略図である。
養殖水槽1内に養殖魚床3を4基間隔を設けて垂設し、養殖水槽1のジョウゴ型槽底の最下端と水槽の最上端は、ポンプ11、開閉バルブ12、処理槽13、ナノバブル酸素発生装置14を配管設備10によって接続されている。開閉バルブ12の操作と、ポンプ11の運転により水槽内の海水2を循環したり、底に溜まった残飼や糞尿・毀れた砂15の処理槽13への移送が可能である。また、処理槽13には好気性乳酸菌含浸の多孔質砂9が入っている。さらにジョウゴ型槽底から配管設備10を通して空気やナノバブル酸素16を噴出させる事が可能である。
図2は、養殖魚床3の拡大図である。
図2(イ)は平面図を示し、(ロ)は図2(イ)のA−A矢視断面図を示し、(ハ)は 図2(ロ)のC部部分拡大図を図示して いる。
養殖魚床3には、砂止め網7、魚貝止め網8、3cmから15cmの好気性乳酸菌含浸の多孔質砂層9が底から順に配置されている。さらに巻き上げ用ロープ4、垂設用ロープ5、加振手段用ロープ6を設けた。なお、好気性乳酸菌含浸の多孔質砂層9は3cm以下では稚車海老が多孔質砂層9の中に潜ることが出来ず不具合であった。そして車海老の成長に合わせて多孔質砂層9を15cmまで増設することによって車海老は良好に成長した。
図3(イ)は垂設用ロープ5によって養殖魚床3を4基垂設した状態を示す概略図である。図3(ロ)は巻き上げ用ロープ4によって養殖魚床3を巻き上げた状態を示す概略図である。また図3(ロ)の状態で、砂中から魚貝止め網8だけを引き上げることによって、成育観察のための途中捕獲や出荷時の捕獲が簡単にできた。さらに多孔質砂層9を追加することが簡単にできた。
図4は、養殖魚床3から加振手段用ロープ6を介してジョウゴ型槽底に振るい落とされた残飼や糞尿・毀れた砂15がジョウゴ型槽底に溜まった状態を示す拡大図である。養殖魚床3から振るい落とされた残飼や糞尿・毀れた砂15は配管設備10に組み込まれ、図1に図示の開閉バルブ11の操作と、ポンプ12の運転により、処理槽13へ移送することができた。
図5は、ジョウゴ型槽底の配管設備10を通して、図1に図示のナノバブル酸素発生装置14で作られたナノバブル酸素や空気16を噴出させた状態を示す拡大図である。ナノバブル酸素や空気16が垂設した4基の養殖魚床3を通過すると、多孔質砂層9に含浸された乳酸菌は活性化し、残飼や糞尿に含まれる有機物質とアンモニアは分解・除去され、車海老の生息環境は良好に保たれた。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明では、海水中に限らず淡水でも、車海老の養殖が可能であり、海辺に限らず山地や地上など狭い場所でも設置可能である。また温泉地や火力発電所などの廃熱利用による温水養殖は、稚車海老の生育を更に良くすると思われる。また、シャコや稚カニ、アサリやハマグリなど、他の魚貝の養殖にも適用可能である。
【符号の説明】
【0013】
1 養殖水槽
2 海水
3 養殖魚床
4 巻き上げ用ロープ、
5 垂設用ロープ
6 加振手段用ロープ
7 砂止め網
8 魚貝止め網
9 好気性乳酸菌を含浸させた多孔質砂層
10 配管設備
11 ポンプ
12 開閉バルブ
13 処理槽
14 ナノバブル酸素発生装置
15 残飼や糞尿・毀れた砂
16 ナノバブル酸素や空気
17 砂大規模な水槽
18 堤防
19 攪拌機
20 堆積した残飼や糞尿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖水槽内に養殖魚床を複数個間隔を設けて垂設すると共に、前記養殖魚床に加振手段を取り付けたことを特徴とする魚貝養殖装置。
【請求項2】
上記養殖魚床は基材が砂止め網と魚貝止め網から構成され、該基材の上に厚さが3cmから15cmの砂層が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の魚貝養殖装置。
【請求項3】
上記砂層が多孔質材からなり、該多孔質材に乳酸菌を含浸したことを特徴とする請求項1から請求項2に記載の魚貝養殖装置。
【請求項4】
上記水槽内の水にナノバブル酸素を加給する装置を敷設したことを特徴とする請求項1から請求項3に記載の魚貝養殖装置。
【請求項5】
上記養殖水槽内の水を該水槽外若しくは内に設置した水浄化機能を有する浄化装置に循環させ魚貝が代謝する有機物質とアンモニアを分解・除去する装置を取付けたことを特徴とする請求項1から請求項4に記載の魚貝養殖装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−239956(P2010−239956A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110039(P2009−110039)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(509121628)
【Fターム(参考)】