魚釣用電動リール
【課題】手持ち状態で、釣竿とリール本体とを片手で把持しながら、サミング操作からモータ出力操作へと至る一連の操作をスムーズに行なえる操作フィーリングに優れた魚釣用電動リールを提供する。
【解決手段】本発明の魚釣用電動リールにおいて、駆動モータの出力を調整する操作部25は、スプール7のフランジ7bの外縁から径方向外方の所定の範囲内でスプール7の回転方向に沿って円弧状に移動可能に支持されている。
【解決手段】本発明の魚釣用電動リールにおいて、駆動モータの出力を調整する操作部25は、スプール7のフランジ7bの外縁から径方向外方の所定の範囲内でスプール7の回転方向に沿って円弧状に移動可能に支持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚釣用電動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用電動リールは、主に深場の釣りに適用させるべく、仕掛けの放出から巻き取りに至るまで、釣竿を船縁に装着された竿掛けに置いたままの状態で行えるように構成されたものが多いが、最近では、手持ち状態で操作が行えるように、よりコンパクト化された構成も製品化されている。
【0003】
一方、魚釣用電動リールは、スプールを巻き取り操作するための操作部材を、様々な位置に配置することが知られている。例えば、特許文献1に開示されているように、リール本体の後方に、モータ出力を調整できるように回動レバー式に構成した操作部材、あるいは、スライドタイプに構成した操作部材を配置することが知られている。また、特許文献2には、制御ケースの上面から円板状の回転摘み(操作部材)の一部を露出させ、上方から親指を押し付けながら回転操作することで、モータ出力を連続的に可変させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−169700号
【特許文献2】特開2003−92959号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、最近の魚釣用電動リールでは、ルアーフィッシングに用いられる魚釣用(ベイトキャスティング)リールと同様、手持ち状態で操作することが可能なタイプも望まれているが、従来の小型化された魚釣用電動リールでは、操作性の面で更に改良すべき余地がある。具体的には、釣竿とともにリール本体を把持した状態で、アタリを感知しながらのサミング操作やシャクリ操作、フッキング、釣糸巻き取り操作などの一連の操作を、釣竿とともにリール本体を把持している側の手で違和感なく行えるようにすることが望ましい。
【0006】
しかしながら、上記した従来のタイプの魚釣用電動リールでは、これら一連の操作を手持ち状態で行なうことが難しい。すなわち、特許文献1に開示されている構成では、スプールの巻き取り操作を行なう操作部材を、リール本体を把持している手のみで操作するのは、操作部材の位置や把持状態、リールの重心バランスとの関係から困難である。
【0007】
一方、特許文献2に開示されている構成では、リールの高さ寸法が大きくなってしまい、竿を持つ片手でリールも把持しながら操作部材を操作するのが困難となる。また、サミング操作とモータ出力操作の際の指の移動方向(力を受けたり、力を入れる方向)に差があり、サミング操作から巻き取り操作へと至る一連の操作を良好に行なうことが難しい。
【0008】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、手持ち状態で、釣竿とリール本体とを片手で把持しながら、サミング操作からモータ出力操作へと至る一連の操作をスムーズに行なえる操作フィーリングに優れた魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、リール本体の左右側板間に回転可能に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、前記リール本体に設けられ、前記スプールを回転駆動する駆動モータと、前記駆動モータの出力を調整する操作部とを有する魚釣用電動リールであって、前記操作部は、前記スプールのフランジの外縁から径方向外方の所定の範囲内で前記スプールの回転方向に沿って円弧状に移動可能に支持されることを特徴とする。
【0010】
この請求項1に記載の発明によれば、操作部がスプールのフランジの外縁から径方向外方の所定の範囲内でスプールの回転方向に沿って円弧状に移動可能に支持されるため、スプールに対するサミンング操作に関与するスプール糸巻き面の曲率と操作部の操作移動軌跡の曲率とを近似させることが可能となり(設計自由度が高い)、手持ち状態で釣竿とリール本体とを片手で把持しながらであっても、サミング操作からモータ出力操作へと至る一連の操作を優れた操作フィーリング(スプールの回転と同調したフィーリング)をもってスムーズに行なえる。
【0011】
上記構成では、より良い操作感を得るため、サミング操作位置から操作部の操作位置へと向かう方向をモータ出力の増加方向に合わせることが好ましい。また、上記構成において、「スプールのフランジの外縁から径方向外方の所定の範囲」とは、スプールの回転軸に対して直交する断面で見たときに、スプールの(スプールに対する糸巻き量を規定する)フランジの外縁の径方向外側に位置する環状領域の一部に対応する。そして、上記構成では、サミング操作状態から操作部を操作しようとする手の指が当接可能な操作部の少なくとも径方向最も内側の部位(最内部位)が円弧状に移動し(すなわち、本発明において、円弧状に移動する操作部の部位は、少なくとも径方向最も内側の部位で規定される)、その最内部位が少なくともその移動経路の始点から終点に至る全体にわたって前記所定の範囲内に位置している必要がある。また、上記構成における「円弧状の移動」では、その移動軌跡の曲率半径は任意であるが、スプール回転軸(スプール軸)を中心として、スプールのフランジの外縁(スプールの最大外径部)の半径をRとし、操作部の円弧移動部位(少なくとも前記最内部位)の円弧移動半径をR1としたときに、R1=R×1.0〜1.5となることが特に好ましい。すなわち、前記「所定の範囲」は、スプールの回転軸を中心とする半径がRの円と半径が1.5×Rの円との間の環状領域であることが好ましい。これは、前記「所定の範囲」がRよりも小さいと、操作部の配置形態によってはスプールに巻回される釣糸と操作部とが干渉してしまう場合があり、一方、1.5Rよりも大きいと、操作部がスプールから離れすぎて、サミング操作から操作部によるモータ出力操作へのスムーズな移行が難しくなるとともに、リール本体のコンパクト化を図れなくなるからである。
【0012】
なお、本発明では、スプールから釣糸が繰り出される方向にあるリール本体の側が前方、その反対方向すなわちスプールが配置されるリール本体の側が後方、左右側板が配置されるリール本体の側が左右(側方、側部)、釣竿に取り付けられるリール本体の側が下方、その反対側が上方として方向が規定される。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記操作部が前記スプールの回転軸を中心に回動することを特徴とする。
【0014】
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部がスプールの回転軸を中心に回動するため、操作部の円弧移動範囲(前記「所定の範囲」)を小さくすることができ、ひいては、操作部の設置に関与するフレームの小型化を図ることもできる。また、このように操作部がスプールの回転軸を中心に回動する構成では、特にスプール軸よりも前方に操作部を設ける形態(後述する本発明の第2の実施形態参照)において、リール本体に設けられる制御ケースの下側に操作部の移動軌跡を潜り込ませることもでき、省スペース化を図ることが可能になる。なお、上記構成において、操作部の回動中心はスプールの回転中心から若干ずれていても構わない。10mm程度のずれであれば、良好な操作フィーリングが得られる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記操作部の少なくとも一部が前記側板間の前記スプール上方に位置されることを特徴とする。
【0016】
この請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部の少なくとも一部が側板間のスプール上方に位置されるため、手持ち状態で釣竿とリール本体とを片手で把持しながらの操作部の操作が容易になることは勿論のこと、重量バランスも良好となるため、把持に伴う疲れが少ない。また、サミング操作からそのまま指を上方へ動かすだけで操作部によるモータ出力操作を行なうことができ、操作性が良好である。なお、本構成では、スプールの回転軸よりも前方に操作部を設けることが好ましい。そのようにすることにより、サミング操作スペースを広く確保でき、操作がし易くなる上、糸絡みやバックラッシュの際の修復も容易になる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記操作部の少なくとも一部が前記スプールのフランジ近傍に位置されることを特徴とする。
【0018】
この請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部の少なくとも一部がスプールのフランジ近傍に位置されるため、サミング操作する指をそのまま斜め横上方へ移動させるだけで操作部によるモータ出力操作を行なうことができ、目視上においても、サミング操作フィーリングとモータ巻取り操作フィーリングとの同調を良好に図ることができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記操作部が前記側板間に架設されることを特徴とする。
【0020】
この請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部が側板間を跨いで架橋状に配置されているため、大きな負荷に対して強く、竿とリールとを握持保持した状態での操作に適する。特に、本構成では、スプールの上方に操作部が位置する結果となるため、リールの重心位置とのずれが小さく(したがって、操作に伴う回転モーメントが小さく)、操作に疲れを来たすことがない。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記操作部の操作回転角を検出するための角度センサを更に備え、前記操作部に設けられるラックが前記角度センサに設けられるピニオンと噛合することにより前記操作部の操作回転角が前記角度センサに伝えられることを特徴とする。
【0022】
この請求項6に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部から角度センサへと操作回転角を伝達するための構造がラック・ピニオンにより簡略化されるため、故障し難い。また、このような構造により、角度センサの収容スペースを確保し易くなる。
【0023】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記リール本体に取り付けられ、前記駆動モータを制御する制御部および表示部を具備する制御ケースを更に備え、前記角度センサが前記制御ケースに固定されることを特徴とする。
【0024】
この請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、角度センサと制御ケースとのユニット化も可能になり、生産性および組み込み性を高めることもできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、手持ち状態で、釣竿とリール本体とを片手で把持しながら、サミング操作からモータ出力操作へと至る一連の操作をスムーズに行なえる操作フィーリングに優れた魚釣用電動リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図である。
【図2】内部機構が部分的に示される図1に示す魚釣用電動リールの平面図である。
【図3】図1に示す魚釣用電動リールをハンドル側から見た側面図である。
【図4】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図6】操作部を前方に移動させた状態の本発明の第2の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図である。
【図7】図6に示す魚釣用電動リールをハンドル側から見た側面図である。
【図8】操作部を前方に移動させた状態の図6のC−C線に沿う断面図である。
【図9】図6のD−D線に沿う断面図である。
【図10】操作部を後方に移動させた状態の図6に示す魚釣用電動リールの平面図である。
【図11】操作部を後方に移動させた状態の図6のC−C線に沿う断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図である。
【図13】図12のE−E線に沿う断面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図である。
【図15】図14のF−F線に沿う断面図である。
【図16】図14に示す魚釣用電動リールの操作部と角度センサとのラック・ピニオン構造部の断面図である。
【図17】本発明の第2の実施形態におけるサミング操作からスプールの巻き取り操作に至る一連の操作の流れを示す説明図(断面図)である。
【図18】本発明の第4の実施形態におけるサミング操作からスプールの巻き取り操作に至る一連の操作の流れを示す説明図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0028】
図1〜図5は本発明の第1の実施形態を示している。図1に示されるように、本実施形態に係る魚釣用電動リール1は、左右のフレーム3a,3bに左右カバー4a,4bを取着して構成される左右側板5A,5Bを具備したリール本体5を有している。リール本体5を構成する一方の側板(右側板5B)側には、巻取り操作される手動ハンドル6が設けられており、左右側板5A,5B間には、釣糸が巻回されるスプール7がスプール軸7a(図4および図5参照)を中心に回転可能に支持されている。また、本実施形態では、図2,4,5に示すように、スプール7の前方側における左右側板5A,5B間に駆動モータ8を保持しており、スプール7は、手動ハンドル6の巻取り操作および駆動モータ8の回転駆動によって、動力伝達機構10(図2参照)を介して釣糸巻取り方向に回転駆動される。
【0029】
なお、駆動モータ8については、スプール7の内部に設置する構成であっても良いが、本実施形態のように、スプール7の前方に設置することで、スプール7の糸巻き量を確保しつつ、リール本体5を可及的にコンパクト化することが可能となる。また、動力伝達機構10については、駆動モータ8の回転駆動力を減速してスプール7側に伝達する機能(減速機構102および伝達ベルト100(図2参照)などによって果たされる)、駆動モータ8が回転駆動しても手動ハンドル6を連れ回しさせない機能や手動ハンドル6の逆回転を防止する機能(ラチェット104を含む)などを備えた公知のものによって構成することが可能である。また、そのような動力伝達機構10については、左側板5A側に配設されていても良いし、右側板5B側に配設されていても良く、或いは、左右側板それぞれに振り分けて配設されていても良い。なお、図中(特に図2)、116はハンドル6に結合されたハンドル軸、118は、ハンドル軸116に回転可能に支持されたドライブギア、120はドライブギア118に噛合するピニオンであり、これらは前述した動力伝達機構10を構成する。また、図中、125は魚釣時にスプール7から釣糸が繰り出された際にスプール7の回転にドラグ力を付与する公知のドラグ機構である。また、リール本体5とハンドル6との間には、ドラグ機構125によるドラグ力の調整を行なうための星型のドラグ調整ノブ(スタードラグ)139が設けられている。また、図中300はスプール調整ダイヤルである。
【0030】
また、スプール7の前方の左右側板5A,5B間には、スプール7に対して均等に釣糸を巻回する機能を備えた公知のレベルワインド機構142(図4および図5参照)が設置されている。さらに、リール本体5を構成する左右側板5A,5B間にはスプール7の前方側に位置して、駆動モータ8を制御する制御部(図示せず)を具備する制御ケース15が配設されている。制御ケース15は、特に図4および図5に示すように、スプール7よりも上方に位置して、レベルワインド機構142および駆動モータ8を覆うような大きさを備えている。また、制御ケース15の表面には、繰り出された釣糸の長さ(糸長情報)などを表示する表示部(液晶表示部)16が設けられており、また、その周囲には、各種の情報が設定可能な複数の操作ボタン216が配設されている。なお、本実施形態において、操作ボタン216は、図1に明確に示されるように、制御ケース15の上面において、表示部16と後述する操作部25との間で且つ釣竿とともにリール本体5を把持保持した状態で親指Tが届く位置とされている。
【0031】
また、リール本体5内には、ピニオン120を軸方向に移動させてスプール7を釣糸巻き取り状態/フリー回転状態に切り換える公知のクラッチ機構17(図示せず)が配置されている。このクラッチ機構は、動力伝達機構10に介在されて手動ハンドル6および駆動モータ8からの動力伝達を継脱する機能を備えており、本実施形態では、例えば右側板5B側に設置される。このクラッチ機構を構成するクラッチプレートには、図1に示されるように、動力伝達をON状態からOFF状態に切り換えるクラッチOFF切り換え部材18と、動力伝達をOFF状態からON状態に切り換えるクラッチON切り換え部材19が係合している。
【0032】
本実施形態におけるクラッチOFF切り換え部材18は、スプール7をサミングしながら操作が可能となるように、スプール7の後方側の左右側板5A,5B間に架設された構成となっており、図4および図5に示す状態から押し下げ操作することで、クラッチ機構をON状態からOFF状態に切り換えるよう構成されている。クラッチOFF切り換え部材18は、図示しない振り分け保持バネによって、図4および図5に示すクラッチON位置とクラッチOFF位置(図示せず)との間で振り分け保持される。
【0033】
また、本実施形態におけるクラッチON切り換え部材19は、右側板5B側に設置されており、振り分け保持によって、クラッチON位置とクラッチOFF位置との間で揺動可能となるよう振り分け保持され、クラッチOFF時に突出するようになっている。
【0034】
リール本体5には、駆動モータ8に対して電力を供給するための給電部20が設けられている。この給電部20は、左側板5Aの前方側の下面領域に形成されており、この給電部20に対しては、着脱可能な携帯バッテリを装着したり、或いは、足元に置いたバッテリや釣り船に設置されている電源部から電力供給される給電コードが装着される。
【0035】
制御ケース15の後方部分には、駆動モータ8の出力を調整する操作部25が配置されている。この操作部25は、スプール7の上方に位置して、前後方向(釣竿方向)に変位できるように支持されている。ここで、操作部25の特に後述する操作部位25a(親指が当接する操作領域)は、スプール7に釣糸が巻回された状態において、釣竿とともにリール本体5を把持保持しつつサミング操作しながら操作可能となるように(リール本体5をリール脚取付け部5aを介して釣竿に装着した際に、釣竿とともにリール本体5を把持保持した状態の手の親指が届くように)位置されている。具体的に、本実施形態の操作部25は、スプール7の釣糸巻き取り量を規定するフランジ7bの外縁から径方向外方の所定の範囲内でスプール7の回転方向に沿って円弧状に移動可能に支持されている。ここで、「スプールのフランジの外縁から径方向外方の所定の範囲」とは、スプールの回転軸に対して直交する断面で見たときに、スプール7のフランジ7bの外縁よりも径方向外側に位置する環状領域の一部に対応する。そして、この場合、サミング操作状態から操作部25を操作しようとする手の指が当接可能な操作部位25aの少なくとも径方向最も内側の部位(最内部位)が円弧状に移動し(すなわち、円弧状に移動する操作部25の部位は、少なくとも操作部位25aの径方向最も内側の部位で規定される)、その最内部位が少なくともその移動経路の始点から終点に至る全体にわたって前記所定の範囲内に位置している必要がある。
【0036】
より具体的には、操作部25は、側板5A,5B間に架設され且つ釣竿とともにリール本体5を把持保持した状態の手の親指によって操作可能な操作部位25aと、左右のフレーム3a,3bにそれぞれ円弧状に移動可能に設けられて操作部位25aと一体を成す(操作部位25aと例えばネジ止めされる)移動体25b,25cとを有する(したがって、操作部25は、その少なくとも一部(操作部位25a)が側板5A,5B間のスプール7上方に位置されるようになっている)。なお、操作部位25aと移動体25b,25cは一体成形部材であってもよい。ここで、図4および図5に示されるように、操作部位25aの略楕円断面の両端部25a’は、左右フレーム3a,3bの円弧状に延びる長溝(穴、凹部、あるいは、貫通孔であってもよい)75に移動可能に係止されている。なお、前記両端部25a’は、組み込み性を考慮すると操作部25とは別部材であるのが好ましく、その断面形状は、円弧状の移動が可能なら楕円でなく、例えば、円形であってもよい。また、各移動体25b,25cは、左右フレーム3a,3bの円弧状に延びる凹溝74内に移動可能に収容されている。言うまでもなく、長溝75および凹溝74はいずれも、操作部25の移動軌跡と姿勢とを制御するものである。
【0037】
操作部25の円弧状の移動軌跡の曲率半径は任意であるが、特に本実施形態では、操作部25がスプール7の回転中心(回転軸)O(スプール軸7aの中心O/図4および図5参照)周りに回動するようになっている。そのため、左右フレーム3a,3bの凹溝74は、回転軸Oを中心とする円を描くように一定の曲率をもって延び、また、左右フレーム3a,3bの長溝75も、回転軸Oを中心とする円を描くように一定の曲率をもって延びている。そして、特に、本実施形態では、円弧状に移動する前記最内部位Pが、操作部位25aの径方向最も内側の後端縁となっている(図4および図5参照)。この場合、スプール7の回転軸Oを中心として、スプール7のフランジ7bの外縁(スプールの最大外径部)の半径をRとし、操作部25の円弧移動部位(少なくとも前記最内部位P)の円弧移動半径をR1としたときに、R1=R×1.0〜1.5となることが特に好ましい(例えば、R=19.5m、R1=23mm)。すなわち、前記「フランジ7bの外縁から径方向外方の所定の範囲」は、スプール7の回転軸Oを中心とする半径がRの円と半径が1.5×Rの円との間の環状領域であることが好ましい。これは、前記「所定の範囲」がRよりも小さいと、特に本実施形態のように操作部位25aが側板5A,5B間に架設される配置形態ではスプール7に巻回される釣糸と操作部位25aとが干渉してしまう場合があり、一方、1.5Rよりも大きいと、操作部位25aがスプール7から離れすぎて、サミング操作から操作部25によるモータ出力操作へのスムーズな移行が難しくなるとともに、リール本体5のコンパクト化を図れなくなるからである。
【0038】
また、本実施形態では、より良い操作感を得るため、サミング操作位置から操作部25の操作位置へと向かう方向をモータ出力の増加方向に合わせることが好ましい。すなわち、操作部25を前方に向けて回動操作することで駆動モータ8の出力が上昇するように制御ケース15の制御部が設定されている。このようにすると、釣糸の巻き取りをする際、サミングしている親指をそのまま前方に延ばして、操作部25を押し上げるような操作をすることで釣糸の巻き取り操作が行えるため、操作性の向上が図れるようになる。なお、サミングは必ずしも釣糸放出時のみの操作に限らず、クラッチON状態でアタリを待つ間にも行われる(ダイレクトにアタリが指に伝わる)。
【0039】
なお、操作部25の回転操作量と駆動モータ8の出力との関係については任意であるが、本実施形態では、操作部25の基準位置をモータの出力値0として、約15°前方に回動操作した際、モータ出力がMaxになるように設定されている。すなわち、前方に向けて操作した際に増速とすることで、釣竿とリール本体を持つ手に負荷がかかる高速巻き取り時に、より重心に近い前方を把持できるので、把持保持性が高くなり、操作性が良く、疲れ難くなる。特に本実施例のようなフロントモータータイプには有効である。
【0040】
また、本実施形態では、調整ダイヤル300の反対側(ハンドル6側)に、操作部25の操作回転角を検出するための角度センサ130が設けられる。この角度センサ130は制御ケース15に固定されており、それに関連して、右カバー4bには、角度センサ130の一部を収容する収容凹部を形成する凸状部91(図1および図2参照)が設けられる。なお、角度センサ130は、操作部25の操作量(操作回転角)に応じた信号を生成する機能を備えたものであれば良く、例えば、操作部25の操作量に応じた抵抗値の変化を出力するポテンショメータを備えたもの、或いは、操作量に応じたパルスを生成するエンコーダを備えたものなど、様々な構造のものを適用することが可能である。
【0041】
また、角度センサ130は、ラック・アンド・ピニオン方式により操作部25の操作量を検出するようになっている。具体的には、図4および図5に明確に示されるように、一方(本実施形態では右側)の移動体25cから角度センサ130側へ延びる肉厚の薄い延出部25c’の外面には一体に或いは別体でラック72が設けられており、このラック72には角度センサ130に設けられるピニオンギア71が噛合している。したがって、移動体25c(操作部25)が凹溝74に沿って前後に移動することにより、ピニオンギア71が回転し、それに伴って角度センサ130が操作部25の操作量を検出できる。なお、本実施形態では、ピニオンギア71が角度センサ130に対してナット73により取り付けられる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、操作部25がスプール7のフランジ7bの外縁から径方向外方の所定の範囲内でスプール7の回転方向に沿って円弧状に移動可能に支持されるため、スプール7に対するサミンング操作に関与するスプール糸巻き面の曲率と操作部25の操作移動軌跡の曲率とを近似させることが可能となり(設計自由度が高い)、手持ち状態で釣竿とリール本体5とを片手で把持しながらであっても、サミング操作からモータ出力操作へと至る一連の操作を優れた操作フィーリング(スプール7の回転と同調したフィーリング)をもってスムーズに行なえる。すなわち、図5に示されるように、スプール7の表面上に親指(T1)を接触させたサミング状態から、親指(T1)を前方上斜めに押し上げることにより親指(T2)を操作部25にスムーズに接触させることができ、そのまま、その親指T2で操作部25を回転操作することができる。このように、操作部25を、釣竿とともにリール本体5を把持保持した状態でサミング操作しながら操作可能な位置に配設したことで、釣竿とリール本体5を保持した姿勢で片手操作を行うことが可能となる(したがって、巻取り速度を変えながら腕を伸ばしてシャクリ(誘い)をかけることも可能になる)。また、親指でサミングしながら、親指の指先で操作部25に触れていることが可能であるため、サミングによるアタリを感知しながら、即座にモータ駆動による巻き取りが可能となる。さらに、操作部25は、略前後方向に移動可能となっていることから、同時にサミングしたり離したりする(接触させたり離す)指の動きと同一方向となり、操作性が良好となる。
【0043】
また、本実施形態によれば、操作部25がスプール7の回転軸Oを中心に回動するため、操作部25の円弧移動範囲(前記「所定の範囲」)を小さくすることができ、ひいては、操作部25の設置に関与するフレーム3a,3bの小型化を図ることもできる。なお、本実施形態において、操作部25の回動中心はスプール7の回転中心Oから若干ずれていても構わない。10mm程度のずれであれば、良好な操作フィーリングが得られる。
【0044】
また、本実施形態によれば、操作部25の少なくとも一部が側板5A,5B間のスプール7上方に位置されるため、手持ち状態で釣竿とリール本体5とを片手で把持しながらの操作部25の操作が容易になることは勿論のこと、重量バランスも良好となるため、把持に伴う疲れが少ない。また、サミング操作からそのまま指を上方へ動かすだけで操作部25によるモータ出力操作を行なうことができ、操作性が良好である。
【0045】
また、本実施形態によれば、操作部25が側板5A,5B間を跨いで架橋状に配置され、特に、操作部位25aが移動体25b,25cに両端支持された状態で側板5A,5B間に架設されているため、大きな負荷に対して強く、竿とリールとを握持保持した状態での操作に適する。また、本構成では、スプール7の上方に操作部25(操作部位25a)が位置する結果となるため、リールの重心位置とのずれが小さく(したがって、操作に伴う回転モーメントが小さく)、操作に疲れを来たすことがない。また、操作部25の移動機構の配置スペースとしてスプール周りの空間を有効利用できるため、設計の自由度も高い。
【0046】
また、本実施形態によれば、操作部25から角度センサ130へと操作量(操作回転角)を伝達するための構造がラック・ピニオンにより簡略化されるため、故障し難い。また、このような構造により、角度センサ130の収容スペースを確保し易くなる。
【0047】
また、本実施形態によれば、角度センサ130が制御ケース15に固定されるため、角度センサ130と制御ケース15とのユニット化も可能になり、生産性および組み込み性を高めることもできる。
【0048】
図6〜図11は本発明の第2の実施形態を示している。これらの図から分かるように、本実施形態では、操作部25の操作部位25aがスプール7の回転軸O(スプール軸7a)よりも前方に設けられている。具体的には、操作部位25aの長手方向中心軸O1は、図6,8,9に示されるように操作部25が前方へと最大に移動された状態から図10および図11に示されるように操作部25が後方へと最大に移動された状態へと至る操作部25の移動経路の全体にわたってスプール7の回転軸Oよりも前方に位置されるようになっている。また、本実施形態では、外面にラック72が設けられる移動体25cの延出部25c’が肉厚に形成されており、第1の実施形態に比べてラック72がピニオンギア71に対して近付くように設定されている。したがって、ピニオンギア71を小型化して組み込みスペースを小さくすることができる(ひいては、リールの小型化を図れる)。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。
【0049】
このように、本実施形態においても、第1の実施形態と同様、図17にも示されるようにサミング操作からモータ出力操作へと至る一連の操作を優れた操作フィーリング(スプール7の回転と同調したフィーリング)をもってスムーズに行なえるとともに、操作部25の操作部位25aがスプール7の回転軸O(スプール軸7a)よりも前方に設けられているため、サミング操作スペースを広く確保でき、操作がし易くなる上、糸絡みやバックラッシュの際の修復も容易になる。また、リール本体5に設けられる制御ケース15の下側に操作部25の移動軌跡を潜り込ませることもでき(図8,9,11,17参照)、省スペース化を図ることが可能になる。また、このように制御ケース15の下側に操作部25の移動軌跡を潜り込ませることができれば、制御ケース15が操作部25の移動軌跡を制御する(上方に抜けることがない)ことになり、左右フレーム3a,3bの円弧状に延びる長溝75を省くことも可能になる。
【0050】
図12および図13は本発明の第3の実施形態を示している。これらの図から分かるように、本実施形態では、操作部25(操作部25の少なくとも一部)がスプール7のフランジ7b近傍に位置されている。具体的には、操作部位25aは、側板5A,5B間を跨ぐことなく、スプール7のフランジ7b近傍で右側の移動体25cから片持ち梁状に短く延びている。したがって、左側の移動体25bは省かれる。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。
【0051】
このような構成によれば、サミング操作する指をそのまま斜め横上方へ移動させるだけで操作部25によるモータ出力操作を行なうことができ、目視上においても、サミング操作フィーリングとモータ巻取り操作フィーリングとの同調を良好に図ることができる。また、操作部位25aが側板5A,5B間を跨いでいないため、サミング操作スペースを広く確保でき、操作がし易くなる上、糸絡みやバックラッシュの際の修復も容易になる。
【0052】
図14〜図16は本発明の第4の実施形態を示している。これらの図から分かるように、本実施形態では、操作部25がリール本体5の後部(第1の実施形態においてクラッチOFF切り換え部材18が配置されていた部位)に上下方向に回動(円弧状に移動)可能に設けられている。この場合、側板5A,5B間を跨いで配置される操作部位25aは、ラック付きプレート77にネジ99を介して支持されており、ラック付きプレート77は、操作部位25aをその長手方向に貫通して延びるとともに、操作部位25aの一方の端部で前方へ向けて折り曲げられる屈曲部位にラック72を有している。この場合、屈曲部位は円弧状に形成されており(図16参照)、その内面にラック72が設けられている。そして、このラック72には、側板5A側でリール本体5に固定される角度センサ130のピニオンギア71が噛合されている。また、本実施形態では、操作25を下方へ向けて回動操作した際に、駆動モータ8の出力が上昇するように設定されている。更に、操作部位25aに対する上側からの押圧操作がし易くなるだけでなく下側から上側への引き上げ操作もし易くなるように、操作部位25aの外面は凹凸状に形成されている(図15,16,18参照)。また、本実施形態では、クラッチOFF切り換え部材18の代わりに、クラッチON/OFF切り換え可能なレバー320が右側板5B側に設けられる。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。
【0053】
このような構成では、図18に示されるようにスプールをサミングしている親指T2の第一関節を折り曲げるなどして下方へ移動させる(T2→T1)だけで操作部25を操作する(駆動モータを増速回転させる)ことができ、操作性の良い構成となる。なお、本操作形態の特性により、操作部25の最内部位Pは、操作部位25aの径方向最も内側の上端縁となっている(例えば図18参照)。
【符号の説明】
【0054】
1 魚釣用電動リール
5 リール本体
5A,5B 左右側板
7 スプール
7a スプール軸
7b フランジ
8 駆動モータ
15 制御ケース
16 表示部
25 操作部
71 ピニオン
72 ラック
130 角度センサ
O 回転中心(回転軸)
【技術分野】
【0001】
本発明は魚釣用電動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用電動リールは、主に深場の釣りに適用させるべく、仕掛けの放出から巻き取りに至るまで、釣竿を船縁に装着された竿掛けに置いたままの状態で行えるように構成されたものが多いが、最近では、手持ち状態で操作が行えるように、よりコンパクト化された構成も製品化されている。
【0003】
一方、魚釣用電動リールは、スプールを巻き取り操作するための操作部材を、様々な位置に配置することが知られている。例えば、特許文献1に開示されているように、リール本体の後方に、モータ出力を調整できるように回動レバー式に構成した操作部材、あるいは、スライドタイプに構成した操作部材を配置することが知られている。また、特許文献2には、制御ケースの上面から円板状の回転摘み(操作部材)の一部を露出させ、上方から親指を押し付けながら回転操作することで、モータ出力を連続的に可変させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−169700号
【特許文献2】特開2003−92959号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、最近の魚釣用電動リールでは、ルアーフィッシングに用いられる魚釣用(ベイトキャスティング)リールと同様、手持ち状態で操作することが可能なタイプも望まれているが、従来の小型化された魚釣用電動リールでは、操作性の面で更に改良すべき余地がある。具体的には、釣竿とともにリール本体を把持した状態で、アタリを感知しながらのサミング操作やシャクリ操作、フッキング、釣糸巻き取り操作などの一連の操作を、釣竿とともにリール本体を把持している側の手で違和感なく行えるようにすることが望ましい。
【0006】
しかしながら、上記した従来のタイプの魚釣用電動リールでは、これら一連の操作を手持ち状態で行なうことが難しい。すなわち、特許文献1に開示されている構成では、スプールの巻き取り操作を行なう操作部材を、リール本体を把持している手のみで操作するのは、操作部材の位置や把持状態、リールの重心バランスとの関係から困難である。
【0007】
一方、特許文献2に開示されている構成では、リールの高さ寸法が大きくなってしまい、竿を持つ片手でリールも把持しながら操作部材を操作するのが困難となる。また、サミング操作とモータ出力操作の際の指の移動方向(力を受けたり、力を入れる方向)に差があり、サミング操作から巻き取り操作へと至る一連の操作を良好に行なうことが難しい。
【0008】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、手持ち状態で、釣竿とリール本体とを片手で把持しながら、サミング操作からモータ出力操作へと至る一連の操作をスムーズに行なえる操作フィーリングに優れた魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、リール本体の左右側板間に回転可能に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、前記リール本体に設けられ、前記スプールを回転駆動する駆動モータと、前記駆動モータの出力を調整する操作部とを有する魚釣用電動リールであって、前記操作部は、前記スプールのフランジの外縁から径方向外方の所定の範囲内で前記スプールの回転方向に沿って円弧状に移動可能に支持されることを特徴とする。
【0010】
この請求項1に記載の発明によれば、操作部がスプールのフランジの外縁から径方向外方の所定の範囲内でスプールの回転方向に沿って円弧状に移動可能に支持されるため、スプールに対するサミンング操作に関与するスプール糸巻き面の曲率と操作部の操作移動軌跡の曲率とを近似させることが可能となり(設計自由度が高い)、手持ち状態で釣竿とリール本体とを片手で把持しながらであっても、サミング操作からモータ出力操作へと至る一連の操作を優れた操作フィーリング(スプールの回転と同調したフィーリング)をもってスムーズに行なえる。
【0011】
上記構成では、より良い操作感を得るため、サミング操作位置から操作部の操作位置へと向かう方向をモータ出力の増加方向に合わせることが好ましい。また、上記構成において、「スプールのフランジの外縁から径方向外方の所定の範囲」とは、スプールの回転軸に対して直交する断面で見たときに、スプールの(スプールに対する糸巻き量を規定する)フランジの外縁の径方向外側に位置する環状領域の一部に対応する。そして、上記構成では、サミング操作状態から操作部を操作しようとする手の指が当接可能な操作部の少なくとも径方向最も内側の部位(最内部位)が円弧状に移動し(すなわち、本発明において、円弧状に移動する操作部の部位は、少なくとも径方向最も内側の部位で規定される)、その最内部位が少なくともその移動経路の始点から終点に至る全体にわたって前記所定の範囲内に位置している必要がある。また、上記構成における「円弧状の移動」では、その移動軌跡の曲率半径は任意であるが、スプール回転軸(スプール軸)を中心として、スプールのフランジの外縁(スプールの最大外径部)の半径をRとし、操作部の円弧移動部位(少なくとも前記最内部位)の円弧移動半径をR1としたときに、R1=R×1.0〜1.5となることが特に好ましい。すなわち、前記「所定の範囲」は、スプールの回転軸を中心とする半径がRの円と半径が1.5×Rの円との間の環状領域であることが好ましい。これは、前記「所定の範囲」がRよりも小さいと、操作部の配置形態によってはスプールに巻回される釣糸と操作部とが干渉してしまう場合があり、一方、1.5Rよりも大きいと、操作部がスプールから離れすぎて、サミング操作から操作部によるモータ出力操作へのスムーズな移行が難しくなるとともに、リール本体のコンパクト化を図れなくなるからである。
【0012】
なお、本発明では、スプールから釣糸が繰り出される方向にあるリール本体の側が前方、その反対方向すなわちスプールが配置されるリール本体の側が後方、左右側板が配置されるリール本体の側が左右(側方、側部)、釣竿に取り付けられるリール本体の側が下方、その反対側が上方として方向が規定される。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記操作部が前記スプールの回転軸を中心に回動することを特徴とする。
【0014】
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部がスプールの回転軸を中心に回動するため、操作部の円弧移動範囲(前記「所定の範囲」)を小さくすることができ、ひいては、操作部の設置に関与するフレームの小型化を図ることもできる。また、このように操作部がスプールの回転軸を中心に回動する構成では、特にスプール軸よりも前方に操作部を設ける形態(後述する本発明の第2の実施形態参照)において、リール本体に設けられる制御ケースの下側に操作部の移動軌跡を潜り込ませることもでき、省スペース化を図ることが可能になる。なお、上記構成において、操作部の回動中心はスプールの回転中心から若干ずれていても構わない。10mm程度のずれであれば、良好な操作フィーリングが得られる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記操作部の少なくとも一部が前記側板間の前記スプール上方に位置されることを特徴とする。
【0016】
この請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部の少なくとも一部が側板間のスプール上方に位置されるため、手持ち状態で釣竿とリール本体とを片手で把持しながらの操作部の操作が容易になることは勿論のこと、重量バランスも良好となるため、把持に伴う疲れが少ない。また、サミング操作からそのまま指を上方へ動かすだけで操作部によるモータ出力操作を行なうことができ、操作性が良好である。なお、本構成では、スプールの回転軸よりも前方に操作部を設けることが好ましい。そのようにすることにより、サミング操作スペースを広く確保でき、操作がし易くなる上、糸絡みやバックラッシュの際の修復も容易になる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記操作部の少なくとも一部が前記スプールのフランジ近傍に位置されることを特徴とする。
【0018】
この請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部の少なくとも一部がスプールのフランジ近傍に位置されるため、サミング操作する指をそのまま斜め横上方へ移動させるだけで操作部によるモータ出力操作を行なうことができ、目視上においても、サミング操作フィーリングとモータ巻取り操作フィーリングとの同調を良好に図ることができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記操作部が前記側板間に架設されることを特徴とする。
【0020】
この請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部が側板間を跨いで架橋状に配置されているため、大きな負荷に対して強く、竿とリールとを握持保持した状態での操作に適する。特に、本構成では、スプールの上方に操作部が位置する結果となるため、リールの重心位置とのずれが小さく(したがって、操作に伴う回転モーメントが小さく)、操作に疲れを来たすことがない。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記操作部の操作回転角を検出するための角度センサを更に備え、前記操作部に設けられるラックが前記角度センサに設けられるピニオンと噛合することにより前記操作部の操作回転角が前記角度センサに伝えられることを特徴とする。
【0022】
この請求項6に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、操作部から角度センサへと操作回転角を伝達するための構造がラック・ピニオンにより簡略化されるため、故障し難い。また、このような構造により、角度センサの収容スペースを確保し易くなる。
【0023】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記リール本体に取り付けられ、前記駆動モータを制御する制御部および表示部を具備する制御ケースを更に備え、前記角度センサが前記制御ケースに固定されることを特徴とする。
【0024】
この請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、角度センサと制御ケースとのユニット化も可能になり、生産性および組み込み性を高めることもできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、手持ち状態で、釣竿とリール本体とを片手で把持しながら、サミング操作からモータ出力操作へと至る一連の操作をスムーズに行なえる操作フィーリングに優れた魚釣用電動リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図である。
【図2】内部機構が部分的に示される図1に示す魚釣用電動リールの平面図である。
【図3】図1に示す魚釣用電動リールをハンドル側から見た側面図である。
【図4】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図6】操作部を前方に移動させた状態の本発明の第2の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図である。
【図7】図6に示す魚釣用電動リールをハンドル側から見た側面図である。
【図8】操作部を前方に移動させた状態の図6のC−C線に沿う断面図である。
【図9】図6のD−D線に沿う断面図である。
【図10】操作部を後方に移動させた状態の図6に示す魚釣用電動リールの平面図である。
【図11】操作部を後方に移動させた状態の図6のC−C線に沿う断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図である。
【図13】図12のE−E線に沿う断面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図である。
【図15】図14のF−F線に沿う断面図である。
【図16】図14に示す魚釣用電動リールの操作部と角度センサとのラック・ピニオン構造部の断面図である。
【図17】本発明の第2の実施形態におけるサミング操作からスプールの巻き取り操作に至る一連の操作の流れを示す説明図(断面図)である。
【図18】本発明の第4の実施形態におけるサミング操作からスプールの巻き取り操作に至る一連の操作の流れを示す説明図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0028】
図1〜図5は本発明の第1の実施形態を示している。図1に示されるように、本実施形態に係る魚釣用電動リール1は、左右のフレーム3a,3bに左右カバー4a,4bを取着して構成される左右側板5A,5Bを具備したリール本体5を有している。リール本体5を構成する一方の側板(右側板5B)側には、巻取り操作される手動ハンドル6が設けられており、左右側板5A,5B間には、釣糸が巻回されるスプール7がスプール軸7a(図4および図5参照)を中心に回転可能に支持されている。また、本実施形態では、図2,4,5に示すように、スプール7の前方側における左右側板5A,5B間に駆動モータ8を保持しており、スプール7は、手動ハンドル6の巻取り操作および駆動モータ8の回転駆動によって、動力伝達機構10(図2参照)を介して釣糸巻取り方向に回転駆動される。
【0029】
なお、駆動モータ8については、スプール7の内部に設置する構成であっても良いが、本実施形態のように、スプール7の前方に設置することで、スプール7の糸巻き量を確保しつつ、リール本体5を可及的にコンパクト化することが可能となる。また、動力伝達機構10については、駆動モータ8の回転駆動力を減速してスプール7側に伝達する機能(減速機構102および伝達ベルト100(図2参照)などによって果たされる)、駆動モータ8が回転駆動しても手動ハンドル6を連れ回しさせない機能や手動ハンドル6の逆回転を防止する機能(ラチェット104を含む)などを備えた公知のものによって構成することが可能である。また、そのような動力伝達機構10については、左側板5A側に配設されていても良いし、右側板5B側に配設されていても良く、或いは、左右側板それぞれに振り分けて配設されていても良い。なお、図中(特に図2)、116はハンドル6に結合されたハンドル軸、118は、ハンドル軸116に回転可能に支持されたドライブギア、120はドライブギア118に噛合するピニオンであり、これらは前述した動力伝達機構10を構成する。また、図中、125は魚釣時にスプール7から釣糸が繰り出された際にスプール7の回転にドラグ力を付与する公知のドラグ機構である。また、リール本体5とハンドル6との間には、ドラグ機構125によるドラグ力の調整を行なうための星型のドラグ調整ノブ(スタードラグ)139が設けられている。また、図中300はスプール調整ダイヤルである。
【0030】
また、スプール7の前方の左右側板5A,5B間には、スプール7に対して均等に釣糸を巻回する機能を備えた公知のレベルワインド機構142(図4および図5参照)が設置されている。さらに、リール本体5を構成する左右側板5A,5B間にはスプール7の前方側に位置して、駆動モータ8を制御する制御部(図示せず)を具備する制御ケース15が配設されている。制御ケース15は、特に図4および図5に示すように、スプール7よりも上方に位置して、レベルワインド機構142および駆動モータ8を覆うような大きさを備えている。また、制御ケース15の表面には、繰り出された釣糸の長さ(糸長情報)などを表示する表示部(液晶表示部)16が設けられており、また、その周囲には、各種の情報が設定可能な複数の操作ボタン216が配設されている。なお、本実施形態において、操作ボタン216は、図1に明確に示されるように、制御ケース15の上面において、表示部16と後述する操作部25との間で且つ釣竿とともにリール本体5を把持保持した状態で親指Tが届く位置とされている。
【0031】
また、リール本体5内には、ピニオン120を軸方向に移動させてスプール7を釣糸巻き取り状態/フリー回転状態に切り換える公知のクラッチ機構17(図示せず)が配置されている。このクラッチ機構は、動力伝達機構10に介在されて手動ハンドル6および駆動モータ8からの動力伝達を継脱する機能を備えており、本実施形態では、例えば右側板5B側に設置される。このクラッチ機構を構成するクラッチプレートには、図1に示されるように、動力伝達をON状態からOFF状態に切り換えるクラッチOFF切り換え部材18と、動力伝達をOFF状態からON状態に切り換えるクラッチON切り換え部材19が係合している。
【0032】
本実施形態におけるクラッチOFF切り換え部材18は、スプール7をサミングしながら操作が可能となるように、スプール7の後方側の左右側板5A,5B間に架設された構成となっており、図4および図5に示す状態から押し下げ操作することで、クラッチ機構をON状態からOFF状態に切り換えるよう構成されている。クラッチOFF切り換え部材18は、図示しない振り分け保持バネによって、図4および図5に示すクラッチON位置とクラッチOFF位置(図示せず)との間で振り分け保持される。
【0033】
また、本実施形態におけるクラッチON切り換え部材19は、右側板5B側に設置されており、振り分け保持によって、クラッチON位置とクラッチOFF位置との間で揺動可能となるよう振り分け保持され、クラッチOFF時に突出するようになっている。
【0034】
リール本体5には、駆動モータ8に対して電力を供給するための給電部20が設けられている。この給電部20は、左側板5Aの前方側の下面領域に形成されており、この給電部20に対しては、着脱可能な携帯バッテリを装着したり、或いは、足元に置いたバッテリや釣り船に設置されている電源部から電力供給される給電コードが装着される。
【0035】
制御ケース15の後方部分には、駆動モータ8の出力を調整する操作部25が配置されている。この操作部25は、スプール7の上方に位置して、前後方向(釣竿方向)に変位できるように支持されている。ここで、操作部25の特に後述する操作部位25a(親指が当接する操作領域)は、スプール7に釣糸が巻回された状態において、釣竿とともにリール本体5を把持保持しつつサミング操作しながら操作可能となるように(リール本体5をリール脚取付け部5aを介して釣竿に装着した際に、釣竿とともにリール本体5を把持保持した状態の手の親指が届くように)位置されている。具体的に、本実施形態の操作部25は、スプール7の釣糸巻き取り量を規定するフランジ7bの外縁から径方向外方の所定の範囲内でスプール7の回転方向に沿って円弧状に移動可能に支持されている。ここで、「スプールのフランジの外縁から径方向外方の所定の範囲」とは、スプールの回転軸に対して直交する断面で見たときに、スプール7のフランジ7bの外縁よりも径方向外側に位置する環状領域の一部に対応する。そして、この場合、サミング操作状態から操作部25を操作しようとする手の指が当接可能な操作部位25aの少なくとも径方向最も内側の部位(最内部位)が円弧状に移動し(すなわち、円弧状に移動する操作部25の部位は、少なくとも操作部位25aの径方向最も内側の部位で規定される)、その最内部位が少なくともその移動経路の始点から終点に至る全体にわたって前記所定の範囲内に位置している必要がある。
【0036】
より具体的には、操作部25は、側板5A,5B間に架設され且つ釣竿とともにリール本体5を把持保持した状態の手の親指によって操作可能な操作部位25aと、左右のフレーム3a,3bにそれぞれ円弧状に移動可能に設けられて操作部位25aと一体を成す(操作部位25aと例えばネジ止めされる)移動体25b,25cとを有する(したがって、操作部25は、その少なくとも一部(操作部位25a)が側板5A,5B間のスプール7上方に位置されるようになっている)。なお、操作部位25aと移動体25b,25cは一体成形部材であってもよい。ここで、図4および図5に示されるように、操作部位25aの略楕円断面の両端部25a’は、左右フレーム3a,3bの円弧状に延びる長溝(穴、凹部、あるいは、貫通孔であってもよい)75に移動可能に係止されている。なお、前記両端部25a’は、組み込み性を考慮すると操作部25とは別部材であるのが好ましく、その断面形状は、円弧状の移動が可能なら楕円でなく、例えば、円形であってもよい。また、各移動体25b,25cは、左右フレーム3a,3bの円弧状に延びる凹溝74内に移動可能に収容されている。言うまでもなく、長溝75および凹溝74はいずれも、操作部25の移動軌跡と姿勢とを制御するものである。
【0037】
操作部25の円弧状の移動軌跡の曲率半径は任意であるが、特に本実施形態では、操作部25がスプール7の回転中心(回転軸)O(スプール軸7aの中心O/図4および図5参照)周りに回動するようになっている。そのため、左右フレーム3a,3bの凹溝74は、回転軸Oを中心とする円を描くように一定の曲率をもって延び、また、左右フレーム3a,3bの長溝75も、回転軸Oを中心とする円を描くように一定の曲率をもって延びている。そして、特に、本実施形態では、円弧状に移動する前記最内部位Pが、操作部位25aの径方向最も内側の後端縁となっている(図4および図5参照)。この場合、スプール7の回転軸Oを中心として、スプール7のフランジ7bの外縁(スプールの最大外径部)の半径をRとし、操作部25の円弧移動部位(少なくとも前記最内部位P)の円弧移動半径をR1としたときに、R1=R×1.0〜1.5となることが特に好ましい(例えば、R=19.5m、R1=23mm)。すなわち、前記「フランジ7bの外縁から径方向外方の所定の範囲」は、スプール7の回転軸Oを中心とする半径がRの円と半径が1.5×Rの円との間の環状領域であることが好ましい。これは、前記「所定の範囲」がRよりも小さいと、特に本実施形態のように操作部位25aが側板5A,5B間に架設される配置形態ではスプール7に巻回される釣糸と操作部位25aとが干渉してしまう場合があり、一方、1.5Rよりも大きいと、操作部位25aがスプール7から離れすぎて、サミング操作から操作部25によるモータ出力操作へのスムーズな移行が難しくなるとともに、リール本体5のコンパクト化を図れなくなるからである。
【0038】
また、本実施形態では、より良い操作感を得るため、サミング操作位置から操作部25の操作位置へと向かう方向をモータ出力の増加方向に合わせることが好ましい。すなわち、操作部25を前方に向けて回動操作することで駆動モータ8の出力が上昇するように制御ケース15の制御部が設定されている。このようにすると、釣糸の巻き取りをする際、サミングしている親指をそのまま前方に延ばして、操作部25を押し上げるような操作をすることで釣糸の巻き取り操作が行えるため、操作性の向上が図れるようになる。なお、サミングは必ずしも釣糸放出時のみの操作に限らず、クラッチON状態でアタリを待つ間にも行われる(ダイレクトにアタリが指に伝わる)。
【0039】
なお、操作部25の回転操作量と駆動モータ8の出力との関係については任意であるが、本実施形態では、操作部25の基準位置をモータの出力値0として、約15°前方に回動操作した際、モータ出力がMaxになるように設定されている。すなわち、前方に向けて操作した際に増速とすることで、釣竿とリール本体を持つ手に負荷がかかる高速巻き取り時に、より重心に近い前方を把持できるので、把持保持性が高くなり、操作性が良く、疲れ難くなる。特に本実施例のようなフロントモータータイプには有効である。
【0040】
また、本実施形態では、調整ダイヤル300の反対側(ハンドル6側)に、操作部25の操作回転角を検出するための角度センサ130が設けられる。この角度センサ130は制御ケース15に固定されており、それに関連して、右カバー4bには、角度センサ130の一部を収容する収容凹部を形成する凸状部91(図1および図2参照)が設けられる。なお、角度センサ130は、操作部25の操作量(操作回転角)に応じた信号を生成する機能を備えたものであれば良く、例えば、操作部25の操作量に応じた抵抗値の変化を出力するポテンショメータを備えたもの、或いは、操作量に応じたパルスを生成するエンコーダを備えたものなど、様々な構造のものを適用することが可能である。
【0041】
また、角度センサ130は、ラック・アンド・ピニオン方式により操作部25の操作量を検出するようになっている。具体的には、図4および図5に明確に示されるように、一方(本実施形態では右側)の移動体25cから角度センサ130側へ延びる肉厚の薄い延出部25c’の外面には一体に或いは別体でラック72が設けられており、このラック72には角度センサ130に設けられるピニオンギア71が噛合している。したがって、移動体25c(操作部25)が凹溝74に沿って前後に移動することにより、ピニオンギア71が回転し、それに伴って角度センサ130が操作部25の操作量を検出できる。なお、本実施形態では、ピニオンギア71が角度センサ130に対してナット73により取り付けられる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、操作部25がスプール7のフランジ7bの外縁から径方向外方の所定の範囲内でスプール7の回転方向に沿って円弧状に移動可能に支持されるため、スプール7に対するサミンング操作に関与するスプール糸巻き面の曲率と操作部25の操作移動軌跡の曲率とを近似させることが可能となり(設計自由度が高い)、手持ち状態で釣竿とリール本体5とを片手で把持しながらであっても、サミング操作からモータ出力操作へと至る一連の操作を優れた操作フィーリング(スプール7の回転と同調したフィーリング)をもってスムーズに行なえる。すなわち、図5に示されるように、スプール7の表面上に親指(T1)を接触させたサミング状態から、親指(T1)を前方上斜めに押し上げることにより親指(T2)を操作部25にスムーズに接触させることができ、そのまま、その親指T2で操作部25を回転操作することができる。このように、操作部25を、釣竿とともにリール本体5を把持保持した状態でサミング操作しながら操作可能な位置に配設したことで、釣竿とリール本体5を保持した姿勢で片手操作を行うことが可能となる(したがって、巻取り速度を変えながら腕を伸ばしてシャクリ(誘い)をかけることも可能になる)。また、親指でサミングしながら、親指の指先で操作部25に触れていることが可能であるため、サミングによるアタリを感知しながら、即座にモータ駆動による巻き取りが可能となる。さらに、操作部25は、略前後方向に移動可能となっていることから、同時にサミングしたり離したりする(接触させたり離す)指の動きと同一方向となり、操作性が良好となる。
【0043】
また、本実施形態によれば、操作部25がスプール7の回転軸Oを中心に回動するため、操作部25の円弧移動範囲(前記「所定の範囲」)を小さくすることができ、ひいては、操作部25の設置に関与するフレーム3a,3bの小型化を図ることもできる。なお、本実施形態において、操作部25の回動中心はスプール7の回転中心Oから若干ずれていても構わない。10mm程度のずれであれば、良好な操作フィーリングが得られる。
【0044】
また、本実施形態によれば、操作部25の少なくとも一部が側板5A,5B間のスプール7上方に位置されるため、手持ち状態で釣竿とリール本体5とを片手で把持しながらの操作部25の操作が容易になることは勿論のこと、重量バランスも良好となるため、把持に伴う疲れが少ない。また、サミング操作からそのまま指を上方へ動かすだけで操作部25によるモータ出力操作を行なうことができ、操作性が良好である。
【0045】
また、本実施形態によれば、操作部25が側板5A,5B間を跨いで架橋状に配置され、特に、操作部位25aが移動体25b,25cに両端支持された状態で側板5A,5B間に架設されているため、大きな負荷に対して強く、竿とリールとを握持保持した状態での操作に適する。また、本構成では、スプール7の上方に操作部25(操作部位25a)が位置する結果となるため、リールの重心位置とのずれが小さく(したがって、操作に伴う回転モーメントが小さく)、操作に疲れを来たすことがない。また、操作部25の移動機構の配置スペースとしてスプール周りの空間を有効利用できるため、設計の自由度も高い。
【0046】
また、本実施形態によれば、操作部25から角度センサ130へと操作量(操作回転角)を伝達するための構造がラック・ピニオンにより簡略化されるため、故障し難い。また、このような構造により、角度センサ130の収容スペースを確保し易くなる。
【0047】
また、本実施形態によれば、角度センサ130が制御ケース15に固定されるため、角度センサ130と制御ケース15とのユニット化も可能になり、生産性および組み込み性を高めることもできる。
【0048】
図6〜図11は本発明の第2の実施形態を示している。これらの図から分かるように、本実施形態では、操作部25の操作部位25aがスプール7の回転軸O(スプール軸7a)よりも前方に設けられている。具体的には、操作部位25aの長手方向中心軸O1は、図6,8,9に示されるように操作部25が前方へと最大に移動された状態から図10および図11に示されるように操作部25が後方へと最大に移動された状態へと至る操作部25の移動経路の全体にわたってスプール7の回転軸Oよりも前方に位置されるようになっている。また、本実施形態では、外面にラック72が設けられる移動体25cの延出部25c’が肉厚に形成されており、第1の実施形態に比べてラック72がピニオンギア71に対して近付くように設定されている。したがって、ピニオンギア71を小型化して組み込みスペースを小さくすることができる(ひいては、リールの小型化を図れる)。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。
【0049】
このように、本実施形態においても、第1の実施形態と同様、図17にも示されるようにサミング操作からモータ出力操作へと至る一連の操作を優れた操作フィーリング(スプール7の回転と同調したフィーリング)をもってスムーズに行なえるとともに、操作部25の操作部位25aがスプール7の回転軸O(スプール軸7a)よりも前方に設けられているため、サミング操作スペースを広く確保でき、操作がし易くなる上、糸絡みやバックラッシュの際の修復も容易になる。また、リール本体5に設けられる制御ケース15の下側に操作部25の移動軌跡を潜り込ませることもでき(図8,9,11,17参照)、省スペース化を図ることが可能になる。また、このように制御ケース15の下側に操作部25の移動軌跡を潜り込ませることができれば、制御ケース15が操作部25の移動軌跡を制御する(上方に抜けることがない)ことになり、左右フレーム3a,3bの円弧状に延びる長溝75を省くことも可能になる。
【0050】
図12および図13は本発明の第3の実施形態を示している。これらの図から分かるように、本実施形態では、操作部25(操作部25の少なくとも一部)がスプール7のフランジ7b近傍に位置されている。具体的には、操作部位25aは、側板5A,5B間を跨ぐことなく、スプール7のフランジ7b近傍で右側の移動体25cから片持ち梁状に短く延びている。したがって、左側の移動体25bは省かれる。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。
【0051】
このような構成によれば、サミング操作する指をそのまま斜め横上方へ移動させるだけで操作部25によるモータ出力操作を行なうことができ、目視上においても、サミング操作フィーリングとモータ巻取り操作フィーリングとの同調を良好に図ることができる。また、操作部位25aが側板5A,5B間を跨いでいないため、サミング操作スペースを広く確保でき、操作がし易くなる上、糸絡みやバックラッシュの際の修復も容易になる。
【0052】
図14〜図16は本発明の第4の実施形態を示している。これらの図から分かるように、本実施形態では、操作部25がリール本体5の後部(第1の実施形態においてクラッチOFF切り換え部材18が配置されていた部位)に上下方向に回動(円弧状に移動)可能に設けられている。この場合、側板5A,5B間を跨いで配置される操作部位25aは、ラック付きプレート77にネジ99を介して支持されており、ラック付きプレート77は、操作部位25aをその長手方向に貫通して延びるとともに、操作部位25aの一方の端部で前方へ向けて折り曲げられる屈曲部位にラック72を有している。この場合、屈曲部位は円弧状に形成されており(図16参照)、その内面にラック72が設けられている。そして、このラック72には、側板5A側でリール本体5に固定される角度センサ130のピニオンギア71が噛合されている。また、本実施形態では、操作25を下方へ向けて回動操作した際に、駆動モータ8の出力が上昇するように設定されている。更に、操作部位25aに対する上側からの押圧操作がし易くなるだけでなく下側から上側への引き上げ操作もし易くなるように、操作部位25aの外面は凹凸状に形成されている(図15,16,18参照)。また、本実施形態では、クラッチOFF切り換え部材18の代わりに、クラッチON/OFF切り換え可能なレバー320が右側板5B側に設けられる。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。
【0053】
このような構成では、図18に示されるようにスプールをサミングしている親指T2の第一関節を折り曲げるなどして下方へ移動させる(T2→T1)だけで操作部25を操作する(駆動モータを増速回転させる)ことができ、操作性の良い構成となる。なお、本操作形態の特性により、操作部25の最内部位Pは、操作部位25aの径方向最も内側の上端縁となっている(例えば図18参照)。
【符号の説明】
【0054】
1 魚釣用電動リール
5 リール本体
5A,5B 左右側板
7 スプール
7a スプール軸
7b フランジ
8 駆動モータ
15 制御ケース
16 表示部
25 操作部
71 ピニオン
72 ラック
130 角度センサ
O 回転中心(回転軸)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の左右側板間に回転可能に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、前記リール本体に設けられ、前記スプールを回転駆動する駆動モータと、前記駆動モータの出力を調整する操作部とを有する魚釣用電動リールであって、
前記操作部は、前記スプールのフランジの外縁から径方向外方の所定の範囲内で前記スプールの回転方向に沿って円弧状に移動可能に支持されることを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項2】
前記操作部が前記スプールの回転軸を中心に回動することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リール。
【請求項3】
前記操作部の少なくとも一部が前記側板間の前記スプール上方に位置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項4】
前記操作部の少なくとも一部が前記スプールのフランジ近傍に位置されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項5】
前記操作部が前記側板間に架設されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項6】
前記操作部の操作回動角を検出するための角度センサを更に備え、前記操作部に設けられるラックが前記角度センサに設けられるピニオンと噛合することにより前記操作部の操作回転角が前記角度センサに伝えられることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項7】
前記リール本体に取り付けられ、前記駆動モータを制御する制御部および表示部を具備する制御ケースを更に備え、
前記角度センサが前記制御ケースに固定される、
ことを特徴とする請求項6に記載の魚釣用電動リール。
【請求項1】
リール本体の左右側板間に回転可能に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、前記リール本体に設けられ、前記スプールを回転駆動する駆動モータと、前記駆動モータの出力を調整する操作部とを有する魚釣用電動リールであって、
前記操作部は、前記スプールのフランジの外縁から径方向外方の所定の範囲内で前記スプールの回転方向に沿って円弧状に移動可能に支持されることを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項2】
前記操作部が前記スプールの回転軸を中心に回動することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リール。
【請求項3】
前記操作部の少なくとも一部が前記側板間の前記スプール上方に位置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項4】
前記操作部の少なくとも一部が前記スプールのフランジ近傍に位置されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項5】
前記操作部が前記側板間に架設されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項6】
前記操作部の操作回動角を検出するための角度センサを更に備え、前記操作部に設けられるラックが前記角度センサに設けられるピニオンと噛合することにより前記操作部の操作回転角が前記角度センサに伝えられることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項7】
前記リール本体に取り付けられ、前記駆動モータを制御する制御部および表示部を具備する制御ケースを更に備え、
前記角度センサが前記制御ケースに固定される、
ことを特徴とする請求項6に記載の魚釣用電動リール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−161300(P2012−161300A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25877(P2011−25877)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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